JP2008232365A - 乾式摩擦クラッチ - Google Patents
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Abstract
【課題】車両の急発進時等の急なクラッチ係合時に、過熱によりプレッシャプレートの摩擦係合部位の内周側部分で偏当たりが発生し、偏荷重により永久歪が生じてクラッチ性能が損なわれることを防止する。
【解決手段】外周側摩擦材30b、32bの熱膨張率が内周側摩擦材30a、32aよりも高いため、自動クラッチ10が急係合させられて過熱した場合に、外周側摩擦材30b、32bが熱膨張によって軸方向へ大きく膨張変形する一方、プレッシャプレート24の摩擦係合部位については、放熱量の差や径方向の膨張差等により内周側が熱膨張によってクラッチディスク20側へ大きく膨張変形するため、両者の変形量の差が互いに相殺されて偏当たりが抑制される。これにより、プレッシャプレート24の局部的な偏荷重や発熱により温度が更に上昇し、降伏点が低下して永久歪が生じることも抑制されるため、所定のクラッチ性能が安定して得られるようになる。
【選択図】図1
【解決手段】外周側摩擦材30b、32bの熱膨張率が内周側摩擦材30a、32aよりも高いため、自動クラッチ10が急係合させられて過熱した場合に、外周側摩擦材30b、32bが熱膨張によって軸方向へ大きく膨張変形する一方、プレッシャプレート24の摩擦係合部位については、放熱量の差や径方向の膨張差等により内周側が熱膨張によってクラッチディスク20側へ大きく膨張変形するため、両者の変形量の差が互いに相殺されて偏当たりが抑制される。これにより、プレッシャプレート24の局部的な偏荷重や発熱により温度が更に上昇し、降伏点が低下して永久歪が生じることも抑制されるため、所定のクラッチ性能が安定して得られるようになる。
【選択図】図1
Description
本発明は乾式摩擦クラッチに係り、特に、車両の急発進時等の急なクラッチ係合時に過熱により摩擦係合部位の内周側部分で偏当たりが発生し、プレッシャプレートなどが偏荷重により永久歪を生じてクラッチ性能が損なわれることを防止する技術に関するものである。
(a) 円板形状を成して軸心まわりに回転可能に配設されるとともに、両面の略同じ位置にその軸心を中心として円環状に摩擦材が設けられたクラッチディスクと、(b) そのクラッチディスクと同軸上に相対回転可能に、且つ軸方向においてそのクラッチディスクに隣接して配設されたフライホイールと、(c) 前記クラッチディスクを挟んで前記フライホイールと反対側において、そのフライホイールに対して軸心まわりの相対回転不能且つ軸方向の移動可能に配設され、前記クラッチディスクの摩擦材が設けられた部分をそのフライホイールに向かって押圧するプレッシャプレートと、を有し、(d) 前記クラッチディスクと前記フライホイールおよび前記プレッシャプレートとがそれぞれ前記摩擦材を介して摩擦係合させられることにより、それ等の間で回転を伝達し、前記プレッシャプレートによる押圧が解除されることによりその回転の伝達を遮断する車両用の乾式摩擦クラッチが知られている。特許文献1に記載の装置はその一例で、摩擦材の外周側部分の摩擦係数を、内周側部分よりも高くし、熱履歴により内周側部分で偏当たりが生じるようになった場合でも、摩擦係合範囲全体で略均一に摩擦力が発生し、所定のクラッチトルクが得られるようにしている。
特開平2−278022号公報
ところで、このような乾式摩擦クラッチにおいては、車両の急発進時等の急な係合時に、プレッシャプレートのうち摩擦材に接触する摩擦係合部位が過熱すると、放熱量の差や径方向への膨張の差等により摩擦係合部位の内周側部分では外周側部分よりも熱膨張による軸方向の変形量が大きく、その内周側部分で偏当たりが発生することがあった。このように偏当たりが発生すると、その部分の摩擦が大きくなるため、発熱により温度が更に上昇し、降伏点が低下するとともに大きな偏荷重で永久歪を生じることがある。そして、このような永久歪が生じると、通常のクラッチ係合時に外周側部分が偏当たりするようになり、十分なクラッチトルクが得られなくなって滑り易くなるなどクラッチ性能が低下する。また、プレッシャプレートが、摩擦材の摩耗に伴ってカムやスプリング等により機械的に板厚寸法を調整するアジャスト機構を備えている場合には、プレッシャプレートの永久歪でそのアジャスト機構が作動不良を生じることがある。
なお、フライホイールについては、プレッシャプレートに比較して熱容量が大きいため、内周側と外周側とで熱膨張による変形量に大きな差はなく、プレッシャプレートのような問題が生じることはない。また、車両用以外の他の乾式摩擦クラッチにおいても、プレッシャプレートのように比較的熱容量が小さい回転体を摩擦材に押圧して摩擦係合させる場合には、上記と同様の問題が発生するものと考えられる。
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、車両の急発進時等の急なクラッチ係合時に過熱により摩擦係合部位の内周側部分で偏当たりが発生し、偏荷重により永久歪が生じてクラッチ性能等が損なわれることを防止することにある。
かかる目的を達成するために、第1発明は、(a) 軸心まわりに回転可能に配設されるとともに、その軸心を中心として円環状に摩擦材が設けられた第1回転体と、(b) その第1回転体と同軸上に相対回転可能に、且つ軸方向においてその第1回転体に隣接して配設されるとともに、その第1回転体の摩擦材に相対的に軸方向に押圧されることにより、その第1回転体と摩擦係合させられる第2回転体と、を有し、(c) その第1回転体と第2回転体との間で前記摩擦材を介して回転を伝達するとともに、その摩擦材の押圧が解除されることにより回転の伝達を遮断する乾式摩擦クラッチにおいて、(d) 前記摩擦材、およびその摩擦材と摩擦係合させられる前記第2回転体の摩擦係合部位の少なくとも一方で、外周側部分の熱膨張率を内周側部分に比較して高くしたことを特徴とする。
第2発明は、(a) 円板形状を成して軸心まわりに回転可能に配設されるとともに、両面にその軸心を中心として円環状に摩擦材が設けられたクラッチディスクと、(b) そのクラッチディスクと同軸上に相対回転可能に、且つ軸方向においてそのクラッチディスクに隣接して配設されたフライホイールと、(c) 前記クラッチディスクを挟んで前記フライホイールと反対側において、そのフライホイールに対して軸心まわりの相対回転不能且つ軸方向の移動可能に配設され、前記クラッチディスクの摩擦材が設けられた部分をそのフライホイールに向かって押圧するプレッシャプレートと、を有し、(d) 前記クラッチディスクと前記フライホイールおよび前記プレッシャプレートとがそれぞれ前記摩擦材を介して摩擦係合させられることにより、それ等の間で回転を伝達し、前記プレッシャプレートによる押圧が解除されることにより回転の伝達を遮断する車両用の乾式摩擦クラッチにおいて、(e) 前記摩擦材、およびその摩擦材に押圧される前記フライホイールおよび前記プレッシャプレートの各摩擦係合部位の少なくとも一箇所で、外周側部分の熱膨張率を内周側部分に比較して高くしたことを特徴とする。
第1発明の乾式摩擦クラッチにおいては、第1回転体の摩擦材、およびその摩擦材と摩擦係合させられる第2回転体の摩擦係合部位の少なくとも一方で、外周側部分の熱膨張率が内周側部分に比較して高くされているため、乾式摩擦クラッチの急な係合時に第2回転体の摩擦係合部位が過熱した場合に、摩擦係合領域の内周側および外周側の熱膨張によるトータルの軸方向の変形量の差が小さくなり、偏当たりが抑制される。すなわち、第2回転体の摩擦係合部位の熱膨張率を変化させた場合には、放熱量の差や径方向の膨張差等により内周側が熱膨張によって軸方向へ大きく膨張変形しても、外周側の方が熱膨張率が高いことから、同じ熱膨張率の場合に比較して内外周部分の変形量の差が小さくなり、偏当たりが抑制される。また、摩擦材の熱膨張率を変化させた場合には、その摩擦材については過熱により外周側が熱膨張によって大きく変形する一方、第2回転体の摩擦係合部位については、従来と同様に過熱により内周側が熱膨張によって軸方向へ大きく膨張変形するため、両者の変形量の差が互いに相殺されて偏当たりが抑制される。
そして、このように偏当たりが抑制されると、局部的な偏荷重や発熱により温度が更に上昇し、降伏点が低下して永久歪が生じることも抑制されるため、所定のクラッチ性能が安定して得られるようになる。また、第2回転体が、摩擦材の摩耗に伴ってカムやスプリング等により機械的に板厚寸法を調整するアジャスト機構を備えている場合には、永久歪によってそのアジャスト機構が作動不良を生じることが防止される。
第2発明の乾式摩擦クラッチにおいては、クラッチディスクの摩擦材、およびその摩擦材に押圧されるフライホイールおよびプレッシャプレートの各摩擦係合部位の少なくとも一箇所で、外周側部分の熱膨張率が内周側部分に比較して高くされているため、車両の急発進時等に乾式摩擦クラッチが急係合させられ、プレッシャプレートの摩擦係合部位が過熱した場合に、摩擦係合領域の内周側および外周側の熱膨張によるトータルの変形量の差が小さくなり、偏当たりが抑制される。すなわち、プレッシャプレートの摩擦係合部位の熱膨張率を変化させた場合には、放熱量の差や径方向の膨張差等により内周側部分が熱膨張によって軸方向へ大きく膨張変形しても、外周側の方が熱膨張率が高いことから、同じ熱膨張率の場合に比較して内外周部分の変形量の差が小さくなり、偏当たりが抑制される。また、フライホイールの摩擦係合部位或いはクラッチディスクの摩擦材の熱膨張率を変化させた場合には、その外周側が過熱による熱膨張によって大きく変形する一方、プレッシャプレートの摩擦係合部位については、従来と同様に過熱により内周側が熱膨張によって軸方向へ大きく膨張変形するため、両者の変形量の差が互いに相殺されて偏当たりが抑制される。クラッチディスクは一般に可撓性を有し、フライホイールの摩擦係合部位における変形量の差がプレッシャプレート側にも影響し、プレッシャプレートの内外周部分の変形量の差が相殺されるのである。
そして、このように偏当たりが抑制されると、局部的な偏荷重や発熱により温度が更に上昇し、降伏点が低下して永久歪が生じることも抑制されるため、所定のクラッチ性能が安定して得られるようになる。また、プレッシャプレートが、摩擦材の摩耗に伴ってカムやスプリング等により機械的に板厚寸法を調整するアジャスト機構を備えている場合には、永久歪によってそのアジャスト機構が作動不良を生じることが防止される。
第2発明は、実質的に第1発明の一実施態様に相当し、第1発明の実施に際しては、車両用以外の乾式摩擦クラッチにも適用できる。乾式摩擦クラッチは、クラッチディスクおよびプレッシャプレートが1組の単板式が広く用いられているが、それ等を2組以上備えた多板式のクラッチにも本発明は適用され得る。
第2発明では、クラッチディスクの両面に摩擦材が設けられているが、その摩擦材の熱膨張率を変化させる場合、必ずしも両面の摩擦材の熱膨張率を変化させる必要はなく、プレッシャプレート側の摩擦材についてのみ熱膨張率を変化させるなど、何れか一方の摩擦材の熱膨張率を変化させるだけでも良い。
上記摩擦材の熱膨張率を変化させる場合、例えば熱膨張率が低い小径の円環状の内周側摩擦材と、熱膨張率が高い大径の円環状の外周側摩擦材とを別々に用意し、それ等の摩擦材を接着剤或いはボルト等の適宜の固定手段より第1回転体、或いはクラッチディスクのディスクプレートに同心円状に一体的に固設するようにすれば良い。
第2回転体、或いはフライホイールやプレッシャプレートの摩擦係合部位の熱膨張率を変化させる場合、例えば熱膨張率が低い小径の円環状の内周側摩擦係合部材と、熱膨張率が高い大径の円環状の外周側摩擦係合部材とを別々に用意し、それ等の摩擦係合部材を鋳ぐるみ或いは接着剤、ボルト等の適宜の固定手段より第2回転体、或いはフライホイールやプレッシャプレートに同心円状に一体的に固設するようにすれば良い。
プレッシャプレートは、例えばダイヤフラムスプリング等の押圧手段によってクラッチディスク側へ向かって押圧され、乾式摩擦クラッチを係合して接続状態とする一方、遮断手段によりその押圧手段による押圧が解除されることにより、乾式摩擦クラッチを解放して遮断状態とする。遮断手段は、電動モータや油圧シリンダ等のクラッチアクュエータにより自動的に遮断するものでも、運転者の操作力に基づいて機械的に遮断するものでも良い。第1発明の乾式摩擦クラッチも、第1回転体と第2回転体とを押圧する押圧手段や、その押圧を解除する遮断手段を有して構成される。
第2発明の車両用の乾式摩擦クラッチは、一般に車両の動力源(内燃機関など)と変速機との間に配設されるが、運転者の変速要求或いは走行状態(例えば車速およびスロットル弁開度等)に応じて変速アクチュエータにより自動的に変速を行う自動変速機が用いられる場合には、乾式摩擦クラッチも遮断手段により自動的に遮断されるように構成される。運転者の変速操作力に基づいて機械的に変速を行う手動変速機が用いられる場合は、乾式摩擦クラッチの遮断手段は、自動的に遮断するものでも運転者の操作力に基づいて機械的に遮断するものでも良い。
以下、本発明の実施例を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明が適用された車両用の自動クラッチ10を説明する概略断面図で、エンジン12と自動変速機14との間に配設されており、それ等の間の動力伝達を接続したり遮断したりする。エンジン12は、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン等の内燃機関である。また、自動変速機14は、例えば従来の手動変速機と同様の常時噛合型平行軸式変速機など、変速比が異なる複数のギヤ段を成立させることができる有段変速機で、シフトレバー等による運転者の変速要求に従ってシフトアクチュエータやセレクトアクチュエータ等によりギヤ段を自動的に切り換える。
図1は、本発明が適用された車両用の自動クラッチ10を説明する概略断面図で、エンジン12と自動変速機14との間に配設されており、それ等の間の動力伝達を接続したり遮断したりする。エンジン12は、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン等の内燃機関である。また、自動変速機14は、例えば従来の手動変速機と同様の常時噛合型平行軸式変速機など、変速比が異なる複数のギヤ段を成立させることができる有段変速機で、シフトレバー等による運転者の変速要求に従ってシフトアクチュエータやセレクトアクチュエータ等によりギヤ段を自動的に切り換える。
自動クラッチ10は、乾式単板式の摩擦クラッチで、エンジン12のクランクシャフト12cに取り付けられて一体的に回転駆動される円板形状のフライホイール16と、そのフライホイール16と同軸上に相対回転可能に配設されるとともにクラッチ出力軸(自動変速機14の入力軸)18に相対回転不能にスプライン嵌合された円板形状のクラッチディスク20と、そのクラッチディスク20と同軸上に相対回転可能に配設されるとともにフライホイール16に一体的に固設されたクラッチカバー22に軸方向の移動可能に配設された円環形状のプレッシャプレート24とを備えている。クラッチディスク20は、複数のダンパ26と、可撓性を有するディスクプレート28と、そのディスクプレート28の外周側部分の両面の略同じ位置に軸心を中心として円環状に設けられた一対の摩擦材30、32とを有する。
そして、上記フライホイール16、クラッチディスク20、およびプレッシャプレート24は、その順番で軸方向に互いに隣接して配設されており、プレッシャプレート24がダイヤフラムスプリング34によりクラッチディスク20側へ押圧されると、フライホイール16との間でクラッチディスク20を挟圧し、そのクラッチディスク20とフライホイール16およびプレッシャプレート24とがそれぞれ摩擦材30、32を介して摩擦係合させられ、それ等の間で回転を伝達する接続状態(係合状態)となる。ダイヤフラムスプリング34は押圧手段に相当し、クラッチカバー22により支持リング35を介して保持されており、支持リング35よりも外周側部分がプレッシャプレート24に係合させられて、そのプレッシャプレート24をクラッチディスク20側、すなわち図1の左方向へ押圧するようになっている。クラッチディスク20は第1回転体に相当し、フライホイール16およびプレッシャプレート24は第2回転体に相当する。
上記自動クラッチ10はまた、運転者の変速要求時等にダイヤフラムスプリング34によるプレッシャプレート24の押圧を自動的に解除し、回転の伝達を遮断する遮断状態(解放状態)とするための遮断手段36を備えている。この遮断手段36は、クラッチアクチュエータ38と、そのクラッチアクチュエータ38によりレリーズフォーク40を介して図の左方向へ移動させられることにより、ダイヤフラムスプリング34の内端部を図の左方向へ変位させてクラッチを遮断(解放)するレリーズスリーブ42とを有して構成されている。クラッチアクチュエータ38は、クラッチモータ(電動モータ)44と、そのクラッチモータ44の回転を減速して出力ロッド46へ伝達する減速機48とを有し、クラッチモータ44が図示しない電子制御装置からの指令に従って作動させられると、出力ロッド46が軸方向へ直線移動させられてレリーズフォーク40を揺動させ、上記ダイヤフラムスプリング34の内端部を変位させることにより、自動クラッチ10を接続状態或いは遮断状態とする。このクラッチアクチュエータ38には、上記出力ロッド46の移動ストロークを検出するためにロータリエンコーダ等のストロークセンサ50が設けられている。
前記プレッシャプレート24には、摩擦材30、32の摩耗に伴ってカムやスプリング等により機械的に板厚寸法(軸方向寸法)を調整するアジャスト機構52が設けられている。すなわち、摩擦材30、32が摩耗すると、ダイヤフラムスプリング34は、自身のばね力に従って外周側が図1の左方向へ変位し、軸心と直角な平面に対する傾斜が大きくなるため、遮断手段36によりレリーズスリーブ42を左方向へ駆動してクラッチを遮断する際に必要なモータトルクが大きくなる。したがって、このモータトルクの大きさにより摩擦材30、32の摩耗状態を検知し、モータトルクが所定値以上になった場合には通常の遮断時よりもダイヤフラムスプリング34を大きく変形させることにより、アジャスト機構52により自動的にプレッシャプレート24の板厚寸法が増大させられ、クラッチ接続時におけるダイヤフラムスプリング34の姿勢が略一定に維持される。これにより、自動クラッチ10の接続時のクラッチトルクや遮断する際の応答性等が良好に維持される。
ここで、本実施例の自動クラッチ10の摩擦材30、32は、何れも内周側摩擦材30a、32aと外周側摩擦材30b、32bとに分けて構成されており、それぞれ接着剤或いはボルト等の固定手段によりディスクプレート28に一体的に固設されているとともに、外周側摩擦材30b、32bは、内周側摩擦材30a、32aよりも熱膨張率が高いものが用いられている。図2は、クラッチディスク20を摩擦材32側から見た一部を切り欠いた正面図で、内周側摩擦材32aおよび外周側摩擦材32bには、それ等の範囲を容易に識別できるように逆方向の斜線が付してある。摩擦材30側も略同様に構成されている。
このように外周側摩擦材30b、32bの熱膨張率が内周側摩擦材30a、32aよりも高くされると、車両の急発進時等に自動クラッチ10が急係合させられ、プレッシャプレート24の摩擦係合部位が過熱した場合に、摩擦係合領域の内周側および外周側の熱膨張によるトータルの変形量の差が小さくなり、偏当たりが抑制される。すなわち、クラッチディスク20の外周側摩擦材30b、32bの熱膨張率が内周側摩擦材30a、32aよりも高いため、その外周側摩擦材30b、32bの部分が過熱による熱膨張によって軸方向の両側へ大きく膨張変形する一方、プレッシャプレート24の摩擦係合部位については、従来と同様に放熱量の差や径方向の膨張差等により過熱に伴って内周側部分が熱膨張により軸方向のクラッチディスク20側へ大きく膨張変形するため、両者の変形量の差が互いに相殺されて偏当たりが抑制されるのである。
そして、このように偏当たりが抑制されると、プレッシャプレート24が局部的な偏荷重や発熱により温度が更に上昇し、降伏点が低下して永久歪が生じることも抑制されるため、所定のクラッチ性能が安定して得られるようになる。また、本実施例のプレッシャプレート24は、摩擦材30、32の摩耗に伴ってカムやスプリング等により機械的に板厚寸法を調整するアジャスト機構52を備えているが、プレッシャプレート24の永久歪に起因してアジャスト機構52が作動不良を生じることも防止される。
なお、上記実施例では、一対の摩擦材30、32が、何れも熱膨張率が異なる内周側摩擦材30a、32aおよび外周側摩擦材30b、32bにて構成されていたが、プレッシャプレート24側の摩擦材32についてのみ熱膨張率が異なる内周側摩擦材30aおよび外周側摩擦材30bにて構成するなど、一対の摩擦材30、32の何れか一方の熱膨張率を外周側と内周側とで異ならせるだけでも良い。
また、図3の自動クラッチ60のように、クラッチディスク20の摩擦材30、32については、それぞれ内周側および外周側の区別なく熱膨張率が一定の単一の摩擦材にて構成し、プレッシャプレート24の摩擦係合部位に、熱膨張率が低い小径の円環状の内周側摩擦係合部材62、および熱膨張率が高い大径の円環状の外周側摩擦係合部材64を、鋳ぐるみ或いは接着剤、ボルト等の適宜の固定手段より同心円状に一体的に固設するようにしても良い。内周側摩擦係合部材62の材質としては、例えば鉄系材料等が好適に用いられ、外周側摩擦係合部材64の材質としては、例えばアルミニウム合金等が好適に用いられる。
このような自動クラッチ60によれば、車両の急発進時等に自動クラッチ60が急係合させられ、内周側摩擦係合部材62および外周側摩擦係合部材64がクラッチディスク20との摩擦で過熱した場合に、放熱量の差や径方向の膨張差等により内周側摩擦係合部材62が熱膨張によって軸方向のクラッチディスク20側へ大きく膨張変形しても、外周側摩擦係合部材64の方が熱膨張率が高いことから、同じ熱膨張率の場合に比較して両者の変形量の差が小さくなり、偏当たりが抑制される。これにより、前記実施例と同様の作用効果が得られる。
図4の自動クラッチ70は、フライホイール16の摩擦係合部位に、熱膨張率が低い小径の円環状の内周側摩擦係合部材72、および熱膨張率が高い大径の円環状の外周側摩擦係合部材74を、鋳ぐるみ或いは接着剤、ボルト等の適宜の固定手段より同心円状に一体的に固設した場合である。これ等の内周側摩擦係合部材72および外周側摩擦係合部材74は、例えば前記自動クラッチ60の内周側摩擦係合部材62、外周側摩擦係合部材64と同様の材質にて構成される。
このような自動クラッチ70においては、車両の急発進時等に自動クラッチ70が急係合させられ、内周側摩擦係合部材72および外周側摩擦係合部材74がクラッチディスク20との摩擦で過熱した場合に、外周側摩擦係合部材74の方が熱膨張率が高いことから、その外周側摩擦係合部材74が過熱による熱膨張によって軸方向のクラッチディスク20側へ大きく膨張変形する一方、プレッシャプレート24の摩擦係合部位については、従来と同様に放熱量の差や径方向の膨張差等により過熱に伴って内周側が熱膨張により軸方向のクラッチディスク20側へ大きく膨張変形するため、両者の変形量の差が互いに相殺されて偏当たりが抑制される。クラッチディスク20のディスクプレート28は可撓性を有し、フライホイール16の摩擦係合部位における変形量の差がプレッシャプレート24側にも影響し、プレッシャプレート24の内外周部分の変形量の差が相殺されて偏当たりが抑制されるのである。したがって、この場合にも前記実施例と同様の作用効果が得られる。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
10、60、70:自動クラッチ(乾式摩擦クラッチ) 16:フライホイール(第2回転体) 20:クラッチディスク(第1回転体) 24:プレッシャプレート(第2回転体) 30、32:摩擦材 30a、32a:内周側摩擦材 30b、32b:外周側摩擦材 62、72:内周側摩擦係合部材(摩擦係合部位) 64、74:外周側摩擦係合部材(摩擦係合部位)
Claims (2)
- 軸心まわりに回転可能に配設されるとともに、該軸心を中心として円環状に摩擦材が設けられた第1回転体と、
該第1回転体と同軸上に相対回転可能に、且つ軸方向において該第1回転体に隣接して配設されるとともに、該第1回転体の摩擦材に相対的に軸方向に押圧されることにより、該第1回転体と摩擦係合させられる第2回転体と、
を有し、該第1回転体と該第2回転体との間で前記摩擦材を介して回転を伝達するとともに、該摩擦材の押圧が解除されることにより回転の伝達を遮断する乾式摩擦クラッチにおいて、
前記摩擦材、および該摩擦材と摩擦係合させられる前記第2回転体の摩擦係合部位の少なくとも一方で、外周側部分の熱膨張率を内周側部分に比較して高くした
ことを特徴とする乾式摩擦クラッチ。 - 円板形状を成して軸心まわりに回転可能に配設されるとともに、両面に該軸心を中心として円環状に摩擦材が設けられたクラッチディスクと、
該クラッチディスクと同軸上に相対回転可能に、且つ軸方向において該クラッチディスクに隣接して配設されたフライホイールと、
前記クラッチディスクを挟んで前記フライホイールと反対側において、該フライホイールに対して軸心まわりの相対回転不能且つ軸方向の移動可能に配設され、前記クラッチディスクの摩擦材が設けられた部分を該フライホイールに向かって押圧するプレッシャプレートと、
を有し、前記クラッチディスクと前記フライホイールおよび前記プレッシャプレートとがそれぞれ前記摩擦材を介して摩擦係合させられることにより、それ等の間で回転を伝達し、前記プレッシャプレートによる押圧が解除されることにより回転の伝達を遮断する車両用の乾式摩擦クラッチにおいて、
前記摩擦材、および該摩擦材に押圧される前記フライホイールおよび前記プレッシャプレートの各摩擦係合部位の少なくとも一箇所で、外周側部分の熱膨張率を内周側部分に比較して高くした
ことを特徴とする乾式摩擦クラッチ。
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2016108072A (ja) * | 2014-12-04 | 2016-06-20 | 凸版印刷株式会社 | ウェット処理装置 |
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- 2007-03-22 JP JP2007075668A patent/JP2008232365A/ja active Pending
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JP2016108072A (ja) * | 2014-12-04 | 2016-06-20 | 凸版印刷株式会社 | ウェット処理装置 |
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