JP2008222803A - 高分子担持キラルジルコニウム触媒の製造方法 - Google Patents
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Abstract
本発明は、空気中でも安定で、長期保存の可能な実用的な高分子固定型のキラルなジルコニウム触媒を提供する。
【解決手段】
本発明は、キラルな配位子を有するキラルジルコニウムにおいて、当該ジルコニウムがさらにポリマーに結合したイミダゾール基を配位子とていることを特徴とするキラルなジルコニウム化合物、その製造方法、及びそれを用いた触媒に関する。
【選択図】 なし
Description
本発明者らは以上の問題を解決する方法として、長期保存に於いても高い触媒能を維持し、安定で反応後の回収、再利用も可能なキラルジルコニウム触媒の創成を目指し、ゼオライトに担持させたマンニッヒ型反応に適切な実用的キラルジルコニウムを開発した(特許文献3参照)。
一方、本発明者らは、マンニッヒ型に適した触媒を調製した後にヘキサンを加えることにより発生する不溶性固体もまた触媒的不斉マンニッヒ型反応を効果的に促進し、目的物を高収率且つ高選択的に合成する手法を見いだし、この不溶性固体もまた、長期に亘って安定に保存可能であることを明らかとした(非特許文献2参照)。この不斉触媒の安定化にはアミンや溶媒の寄与が大きく、実際ここで単離した粉末は、ジルコニウム成分:配位子:安定化剤が1:2:2の割合でジルコニウム金属周りの6配座空間を埋めていることが示されている。
上記触媒は反応終了後、ヘキサン等の貧溶媒を加えることにより、再び不溶性固体となって回収、再使用できるが、粉末状の為取り扱いに難がある。そのため、汎用される解決法としては不斉配位子を高分子上に固定化するのが一般的であるが、この触媒系に於いては中心金属と不斉配位子が1:2の形を取っているため、事実上不可能であった。ちなみに1:1の形を取っているアザディールス−アルダー反応用の3、3−アリール型においては高分子固定化に成功している(特許文献4参照)。
また、本発明は、重合可能な有機基を結合しているイミダゾリル基を配位したキラルなジルコニウム化合物を、単独又は他のモノマーの存在下に重合させて、前記した本発明のキラルなジルコニウム化合物を製造する方法に関する。
さらに、本発明は、前記した本発明のキラルなジルコニウム化合物を含有してなる触媒、より詳細には不斉マンニッヒ型反応の触媒に関する。
(1) キラルな配位子を有するキラルジルコニウムにおいて、当該ジルコニウムがさらにポリマーに結合したイミダゾール基を配位子としていることを特徴とするキラルなジルコニウム化合物。
(2) ポリマーが、ポリスチレンである前記(1)に記載のキラルなジルコニウム化合物。
(3) キラルなジルコニウム化合物が、次の一般式(1)、
で表されるキラルなジルコニウム化合物である前記(1)又は(2)に記載のキラルなジルコニウム化合物。
(4) 前記一般式(1)におけるL1及びL2が、次の一般式(2)、
で表されるビナフタレン誘導体から誘導されたものである前記(3)に記載のキラルなジルコニウム化合物。
(5) 前記一般式(1)におけるY1及びY2が、炭素数3〜30の直鎖状又は分岐状のアルキレン基である前記(3)又は(4)に記載のキラルなジルコニウム化合物。
(6) 前記一般式(1)におけるZ1及びZ2で表されるポリマーが、それぞれ独立してポリスチレン又はスチレン共重合体である前記(3)〜(5)のいずれかに記載のキラルなジルコニウム化合物。
(7) スチレン共重合体が、スチレン−ジビニルベンゼン−アクリル酸エステル共重合体である前記(6)に記載のキラルなジルコニウム化合物。
(8) 次の一般式(3)、
で表される重合可能なイミダゾリル基を配位したキラルなジルコニウム化合物を、単独又は他のモノマーの存在下に重合させて、前記(3)〜(7)のいずれかに記載のキラルなジルコニウム化合物を製造する方法。
(9) 前記一般式(3)におけるR2の重合可能な基がビニル基である前記(8)に記載の方法。
(10) 他のモノマーが、ジビニルベンゼン、アクリル酸エステル、及び置換基を有してもよいスチレンからなる群から選ばれる1種又は2種以上のモノマーである前記(9)に記載の方法。
(11) 前記一般式(3)で表される重合可能なイミダゾリル基を配位したキラルなジルコニウム化合物が、ジルコニウム塩、次の一般式(4)及び/又は一般式(5)、
HO−L1−OH (4)
HO−L2−OH (5)
(式中、L1及びL2は、それぞれ独立して隣接する酸素原子と共にキラリティーを有する配位子を示す。)
で表されるジヒドロキシ化合物、並びに、次の一般式(6)及び/又は一般式(7)、
で表されるイミダゾール誘導体を反応させて製造されるものである前記(8)〜(10)のいずれかに記載の方法。
(12) 前記(1)〜(7)のいずれかに記載のキラルなジルコニウム化合物を含有してなる触媒。
(13) 触媒が、不斉マンニッヒ型反応の触媒である前記(12)に記載の触媒。
本発明のジルコニウム化合物は、イミダゾールを配位子としていることを特徴とし、そして、さらに当該イミダゾール基がリンカー基を介してポリマーに結合していることを特徴とするものであり、これによりジルコニウム錯体の固定化に成功している。また、イミダゾール基による配位子が触媒活性において特異的な挙動を示すことが触媒活性を維持することができた原因であると考えられる。本発明のジルコニウム化合物の触媒作用を次の反応式で示す。
このように、本発明の固定化されたジルコニウム化合物は、従来の固定化方法とは全く異なる原理で固定化されているものであり、全く新しい発想に基づく固定化方法に成功したものである。
したがって、本発明のジルコニウム錯体は、
(1)従来の触媒活性を有するキラルなジルコニウム錯体であって、
(2)配位子として、さらにイミダゾール基を含有するものであって、かつ、
(3)当該イミダゾール基によりポリマーに固定化されている
ことを特徴とするものであり、固定化されているにもかかわらず、非固定化の錯体と同等な触媒活性を有していることを特徴とするものである。
本発明の一般式(1)及び(3)で表されるキラルなジルコニウム化合物におけるL1及びL2の、「隣接する酸素原子と共にキラリティーを有する配位子」としては、2配座のキラリティーを有する配位子であれば特に限定はない。キラリティーは、不斉原子によるキラリティーであってもよいし、回転障害による軸不斉であってもよい。一般式(1)及び(3)においては、酸素原子での配位を示しているが、ジルコニウムと錯体を形成できるのであれば、他の原子、例えば窒素原子、リン原子などであってもよい。本発明におけるL1及びL2の配位子としては、触媒活性を有し、キラリティーを有し、かつジルコニウムと錯体を形成できるものであれば、制限が無いことは当業者には容易に理解できるところである。
以下の例においては、回転障害を有する2,2’−ビナフトールを例として挙げているが、本発明はこの例に何ら限定されるものではない。
このようなアルキレン基としては、炭素数3〜30、好ましくは炭素数5〜20、炭素数5〜15の直鎖状又は分岐状のアルキレン基が挙げられる。例えば、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基などが具体的には挙げられる。
以下の例ではポリスチレン、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、スチレン−アクリル酸エステル−ジビニルベンゼン共重合体などが例示されているが、これらのポリマーに限定されるものではない。
本発明における好ましいジルコニウム化合物を例示すれば、次の一般式、
で表される化合物が挙げられる。なお、前記式は、ジルコニウムの中心部分のみを示している。好ましい置換基R1としては、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基などのパーフルオロアルキル基などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
好ましい「重合可能な基を有する有機基」としては、スチリル基、アクリロイル基、ジビニルフェニル基などが挙げられるが、これに限定されるものではない。簡便性の点からはスチリル基が好ましい。
前記一般式(III')における好ましいR2’基としては、炭素数3〜30、好ましくは炭素数5〜20、炭素数5〜15の直鎖状又は分岐状のアルキレン基が挙げられる。例えば、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基などが具体的には挙げられる。
また、このジルコニウム化合物をコモノマーとし、適当なモノマー(例えば、好ましくはスチレン、ジビニルベンゼン等、特に好ましくはこれらの混合物)との共重合反応により調製される高分子固定型キラルジルコニウム触媒として有用なジルコニウムを製造することができる。
本発明の触媒を使用により、再使用が容易となるだけでなく、反応後の触媒の分離が容易となり、また生成物中や反応系外に触媒として使用される金属成分が混入することが少なくなり、医薬品や食品やそれらの中間体などの製造プロセスにおいて工業的にも有用なものとなる。
以下の実施例及び製造例において、1H−NMR及び13C−NMRは溶媒としてCDCl3を内部標準としてテトラメチルシランを用い、日本電子株式会社製JNM−ECX400又は600MHzの装置により測定した。
製造例1(配位子の合成)
次に示す反応式により配位子のスチリル基部分を製造した。
1H−NMR (CDCl3,400MHz): δ:
1.43-1.49 (m, 2H), 1.58-1.66 (m, 2H), 1.83-1.90 (m, 2H),
2.59 (t, 2H, J = 7.6 Hz), 3.37 (t, 2H, J = 6.9 Hz),
5.18 (d, 1H, J = 10.5 Hz), 5.69 (d, 1H, J = 16.9 Hz),
6.68 (dd, 1H, J = 11.0, 17.4 Hz), 7.12 (d, 2H, J = 7.8 Hz),
7.32 (d, 2H, J = 7.8 Hz).
13C−NMR (CDCl3,100MHz): δ:
27.7, 30.5, 32.6, 33.7, 35.4, 112.9, 126.1, 128.5, 135.1, 136.6, 142.0.
製造例2(配位子の合成)
次に示す反応式により配位子のイミダゾール誘導体を製造した。
1H−NMR (CDCl3,400MHz): δ:
1.29-1.37 (m, 2H), 1.59-1.67 (m, 2H), 1.75-1.82 (m, 2H),
2.58 (t, 2H, J = 7.6 Hz), 3.90 (t, 2H, J = 7.1 Hz),
5.19 (d, 1H, J = 11.0 Hz), 5.70 (d, 1H, J = 17.9 Hz),
6.69 (dd, 1H, J = 11.0, 17.4 Hz), 6.88 (s, 1H), 7.05 (s, 1H),
7.10 (d, 2H, J = 8.2 Hz), 7.33 (d, 2H, J = 8.2 Hz), 7.44 (s, 1H).
13C−NMR (CDCl3,100MHz): δ:
26.1, 30.8, 31.0, 35.3, 46.9, 113.0, 118.7, 126.2, 128.5, 129.4, 135.3,
136.6, 137.0, 141.8.
1H−NMR (CD2Cl2,600MHz): δ:
1.11-1.16 (m, 2H), 1.44-1.47 (m, 2H), 1.50-1.52 (m, 2H),
2.50 (t, 2H, J = 7.6 Hz), 3.49 (t, 2H, J = 7.6 Hz),
5.19 (d, 1H, J = 11.0 Hz), 5.71 (d, 1H, J = 18.6 Hz), 6.32 (s, 1H),
6.44 (s, 1H), 6.51 (d, 2H, J = 8.9 Hz), 6.69 (dd, 1H, J = 11.0, 17.9 Hz),
6.87 (m, 2H), 6.89 (s, 1H), 7.07 (d, 2H, J = 7.6 Hz),
7.31 (d, 2H, J = 7.6 Hz), 7.69 (s, 4H), 7.75 (d, 2H, J = 2.1 Hz).
13C−NMR (CD2Cl2,150MHz): δ:
25.5, 26.2, 30.6, 31.0, 35.5, 48.1, 64.5, 113.1, 115.5, 118.4, 125.9,
126.5, 127.3, 127.8, 128.4, 128.9, 129.8, 129.9, 132.7, 135.6, 136.9,
142.3, 159.9.
正確に恒量した高分子固定化触媒(A)(約20.0mg)に濃硫酸(1.0ml)を加え180℃で30分間加熱した。このものに室温で硝酸(0.5ml)を加え、再び180℃で90分間加熱することにより高分子を分解した。このものを蛍光X線分析又はプラズマ発光分析することによりジルコニウム含量(0.072mmol/g)を決定した。
生成物の収率、エナンチオ選択性、及び反応時における金属の漏れ出しを、以下の方法で決定した。
また、上述の回収した塩化メチレン溶液のもう一方は、塩化メチレンを濃縮後、濃硫酸(1.0ml)を加え180℃で30分間加熱した。このものに室温で硝酸(0.5ml)を加え、再び180℃で90分間加熱することにより回収した有機物を分解し、このものを蛍光X線分析若しくはプラズマ発光分析することにより反応中に分解し漏れ出してきたジルコニウム含量を決定した。漏れ出したジルコニウム含量はいずれも使用量の10%以下であった。
これらの結果を次の表1に示す。
Claims (13)
- キラルな配位子を有するキラルジルコニウムにおいて、当該ジルコニウムがさらにポリマーに結合したイミダゾール基を配位子としていることを特徴とするキラルなジルコニウム化合物。
- ポリマーが、ポリスチレンである請求項1に記載のキラルなジルコニウム化合物。
- 前記一般式(1)におけるY1及びY2が、炭素数3〜30の直鎖状又は分岐状のアルキレン基である請求項3又は4に記載のキラルなジルコニウム化合物。
- 前記一般式(1)におけるZ1及びZ2で表されるポリマーが、それぞれ独立してポリスチレン又はスチレン共重合体である請求項3〜5のいずれかに記載のキラルなジルコニウム化合物。
- スチレン共重合体が、スチレン−ジビニルベンゼン−アクリル酸エステル共重合体である請求項6に記載のキラルなジルコニウム化合物。
- 前記一般式(3)におけるR2の重合可能な基がビニル基である請求項8に記載の方法。
- 他のモノマーが、ジビニルベンゼン、アクリル酸エステル、及び置換基を有してもよいスチレンからなる群から選ばれる1種又は2種以上のモノマーである請求項9に記載の方法。
- 前記一般式(3)で表される重合可能なイミダゾリル基を配位したキラルなジルコニウム化合物が、ジルコニウム塩、次の一般式(4)及び/又は一般式(5)、
HO−L1−OH (4)
HO−L2−OH (5)
(式中、L1及びL2は、それぞれ独立して隣接する酸素原子と共にキラリティーを有する配位子を示す。)
で表されるジヒドロキシ化合物、並びに、次の一般式(6)及び/又は一般式(7)、
で表されるイミダゾール誘導体を反応させて製造されるものである請求項8〜10のいずれかに記載の方法。 - 請求項1〜7のいずれかに記載のキラルなジルコニウム化合物を含有してなる触媒。
- 触媒が、不斉マンニッヒ型反応の触媒である請求項12に記載の触媒。
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