JP2008220786A - 血管内皮細胞の摩擦抵抗低減材料 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】N,N’−ジメチルアクリルアミドと、二つ以上のエチレン性不飽和結合を有する架橋剤により合成される、血液と接触する環境下で使用される医療用具用ゲル材料。前記架橋剤は、メチレンビスアクリルアミドが好ましく、前記ゲル材料を合成する際の、N,N’−ジメチルアクリルアミドに対する前記架橋剤の比が、1〜10モル%が好ましい。
【選択図】なし
Description
本発明に係る医療用具用材料は、N,N’−ジメチルアクリルアミドと、少なくとも二つ以上のエチレン性不飽和結合を有する架橋剤により構成されるゲルである。ここで、当該ゲルは、N,N’−ジメチルアクリルアミド(以下、「DMAAm」という)が、主成分として含まれるゲルであれば特に限定されず、例えば、DMAAmと、架橋剤となる二以上のエチレン性不飽和結合を有する化合物の混合物を重合することにより合成される。ここで、主成分とは、ゲルを構成するモノマーの中で、好適には90mol%以上、より好適には91mol%以上、更に好適には95%含有されている成分モノマーを指す。また、DMAAmが主成分である限り、どのようなモノマー成分を用いてもよく、例えば、他のノニオン系モノマー、例えば、アルコキシアルキル(メタ)アクリレートを挙げることができる。ここで、「アルコキシ」や「アルキル」の炭素数は、例えば1〜4である。
摩擦力
血管内皮細胞とゲルの摩擦力(ずり応力)は、滑り速度10−4m/sの条件において、15Pa以下が好適であり、10Pa以下がより好適であり、4Pa以下が更に好適であり、血管内を通過する血液と血管内壁の摩擦力に相当する2〜3Paが最も好適である。ここで、摩擦力(ずり応力)とは、本明細書の「摩擦力測定」(段落番号0000)に示した方法で測定した摩擦力を指す。
血清及び血漿に含まれる血小板の吸着が、50cell/104μm2以下であることが望ましい。
カテーテルの基材は特に限定されない。有機材料、複合材料であっても、超弾性合金のパイプや金属よりなるコイル状物、メッシュ状物等を含んだものであってもよい。ただし、基材表面には、有機高分子化合物が存在していることが好ましい。該高分子単体で成形加工された基材であってもかまわないし、ポリマーアロイを成形加工した基材表面であってもよい。有機高分子材料としては、ポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステルやそれらの共重合体等を例示できる。
重合方法
ゲルの重合方法は、特に限定されず、例えば、ラジカル重合操作によって行うことができる。このようなフリーラジカル重合として、光開始、放射線開始、熱開始、又は酸化還元開始による重合開始が挙げられうる。典型的開始剤として、ベンゾインエーテルやベンゾイルペルオキシド、2−オキソグルタル酸が挙げられる。
前記重合方法により得られたゲルを一週間、大量の水で膨潤させた後に、更に緩衝生理食塩水にて、一週間、溶媒交換を行うことにより、試料を調製する。
医療用具上へのゲル材料の適用方法は、特に限定されず、周知手法により適用可能である。例えば、バルーンやカテーテルチューブの該表面にゲル化層を設ける方法は、グラフト法、架橋不溶化法、コーティング法、表面重合法等、材料の種類によって適宜選択することができる。例えば、グラフト法では、材料表面に重合開始点を形成させた後モノマーをグラフト重合してゲル化層を形成する方法や予め高分子を合成した後材料表面に結合させる方法等がある。また、高分子間の架橋反応を伴って材料表面に結合させる方法も、材料表面で重合と架橋を同時に行う方法や合成した高分子を架橋する方法等がある。ゲルの架橋度や強度は、投与する医薬品の分子量や電荷により、目的に応じて設定される。
本発明に係るゲル材料は、血液と接触する環境下に配される医療用具であれば特に限定されず、例えば、各種カテーテルやガイドワイヤー類、人工血管をはじめとする人工臓器を挙げることができる。
モノマー溶液を調製する。N,N’−ジメチルアクリルアミド(DMAAm)1M、UV開始剤(2−オキソグルタル酸 0.1mol%)、架橋剤{N,N’−メチレンビス(アクリルアミド)(MBAA)}0.04Mを蒸留水に溶解させ、窒素バブリングによって、ラジカル重合の妨げとなる溶存酸素の窒素置換を行った。続いて、得られたモノマー溶液を2枚のガラス基板の間に1.5mmのシリコンスペーサーを挟んだ鋳型に流し込み、室温でUVを6時間照射し、重合を行なった。これにより4mol%PDMAAmゲルを得た。
・ポリ(p−スチレンスルホン酸ナトリウム)(PNaSS):
架橋密度4mol%、10mol%
・ポリ(NaSS−co−DMAAm)共重合ゲル:
FNaSS=0.05、0.1、0.5(すべて、架橋密度4mol%)
ここで、FNaSSとは、仕込みモノマーのうちNaSSが含まれるモル比率を表す値であり、すなわち、FNaSS=NaSS/(NaSS+DMAAm)である。
前記製造例において重合して得られたゲルを大量の蒸留水で一週間膨潤した後、pH7.4の4−(2−ヒドロキシエチル)−ピペラジンー1−エタンスルホン酸(HEPES)buffer(NaHCO3 1.55x10−2M,HEPES 5x10−3M,NaCl 0.14M)中でさらに一週間溶媒交換した。
本実施例においては、擬似血管として、血管と同等の性質を有する、表面にグリコカリックス層を有する細胞シートを作成した。そして、当該細胞シートに対する円盤状のゲル試料の摩擦力を測定した。ここで、当該試験において、この細胞シートが実際の血管と同一視できる理由は以下の通りである。
前記平行膨潤により得られたゲルを直径15mmの円盤形に調製した。
平衡膨潤した10mol%PNaSS(直径15mm、厚さ約3m)をシャーレに移し、121℃、20分でオートクレーブ後、直径15mmの円盤に切り出した。各基板上に4x104cell/mlのHuman Umbilical Vein Endothelial Cells(HUVECs)の懸濁液を1mlずつ加えた。細胞を乗せた基板を37℃、5%CO2のインキュべータ内に入れて、細胞を培養した。細胞を位相差観微鏡(OLYMPUS Japan)で観察した。
PGsの合成を促進させる方法
Transforming growth factor−β (TGF−β)シグナルは、細胞増殖や分化、アポトーシス、遊走、細胞外マトリックスの産生と分解等を調節することが知られているサイトカイン(細胞の働きを調節する分泌性蛋白の一種)である。TGF−β1が内皮細胞表皮proteoglycans(PGs)の合成を促進させることが報告されている(THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY:2000,275,1463 1470)。細胞培養液中にTGF−β1を加えて細胞表面proteoglycans(PGs)の合成を促進させた(Kasinath BS. Glomerular EC proteoglycan regulation by TGF−β1. Archives Biochem Biophys 1993;305:370−7.)。
Heparinase I(へパリナーゼI)を用いてheparan sulfate proteoglycanを分解する。
10mol%PNaSS上にコンフルエントまで培養した細胞シートと前記方法により調製した細胞シートと摩擦基板(ガラス、ゲル)は回転型レオメーターの平行平板にセットし、摩擦基板へ60gの加重により、圧縮した。
培養した細胞シート表面に対し、一方向で回転する摩擦基板とのトルクを測定し、単位面積あたりの摩擦応力(ずり応力)に換算して、これを、「摩擦力」とした(摩擦速度:7.5x10−6m/s〜7.5x10−3m/s)。摩擦力測定は37℃の無血清培地中で行なわれた。測定時間に伴って、大量の細胞(80%以上)が残っており、且つ、摩擦力が一定値を示した時間における測定値を用いた。
図2は、未処理の細胞シート、heparinase Iで処理した細胞シート(グリコカリックスを分解させたもの)及びTGF−β1で処理した細胞シート(グリコカリックス含量を促進させたもの)とガラスに滑らせたときの細胞表面の摩擦カの速度依存性を示している。細胞表面のグリコカリックスを分解させたときでは、処理していない細胞表面のそれに比べて摩擦力の増大が見られる。細胞表面のグリコカリックスの含量を促進させたときでは、処理していない細胞表面に比べて摩擦力の減少が見られる。そして、処理していない細胞表面の摩擦力は滑り速度に依存しないのに対して、処理した細胞表面の摩擦力は滑り速度依存性が見られる。遅い滑り速度(7x10−6m/sと1.25x10−5m/s)ときの摩擦力の変化は速い滑り速度(7.5x10−5m/s)ときのそれに比べて顕著である。これらの結果から、内皮細胞表面のグリコカリックスが摩擦に関して重要な役割を果たしていることを明らかとなった。
図3は、未処理の細胞シート、heparinase Iで処理した細胞シート(グリコカリックスを分解させたもの)及びTGF−β1で処理した細胞シート(グリコカリックス含量を促進させたもの)と4mol%PNaSSゲルに滑らせたときの細胞表面の摩擦力の速度依存性を示している。Heparinase Iで細胞表面のグリコカリックスを分解させたときでは、処理してない細胞表面のそれに比べて摩擦力の増大が見られた。TGF−β1で細胞表面のグリコカリックスの含量を促進させたときでは、処理していない細胞表面のそれに比べて摩擦力の減少が見られた。細胞シートとガラス、4mol% PNaSSゲルと滑らせたとき、heparinase Iで細胞表面のHSPGsを分解したとき、滑り速度の増加に伴ってその摩擦力の減少が見られた。つまり、摩擦力が滑り速度に対して負の依存性を示している。この場合、細胞が基板(ガラス、PNaSSゲル)表面に吸着することが考えられる(吸着系)。TGF−β1で細胞表面のHSPGsの合成を促進したときは、滑り速度の増加に伴ってその摩擦力の増大が見られた。この場合、細胞と基板間に反発力が働くことが考えられる(反発系)。これらの摩擦力の滑り速度依存性の変化は、基板に対して細胞が吸着的相互作用から反発的相互作用に変化していることを示している。これらのことからグリコカリックスの量の調整によって、細胞表面に電荷変化が起こったと示唆された。ところで、細胞−ゲル間の摩擦は細胞−ガラス間の摩擦より大きい。これについてニつの理由が考えられる。ひとつはPNaSSゲルの電荷密度はガラスの電荷密度より小さい。もうひとつはゲルが粘弾性であり、その表面に存在する高分子鎖と細胞表面のグリコカリックスがつりあって、摩擦力は大きくなったのではないかと考えられる。
例19〜30 負の電荷密度による影響
図4に細胞シートと電荷密度が違うゲルとの摩擦力の滑り速度依存性を示している。ゲルの電荷密度はPoly(NaSS−co−DMAAm)共重合ゲル中NaSSのモル量(F)で調整し、それぞれ0.05、0.1、0.5である。これらのゲルの弾性率はほぼおなじ値を示している。F=0.5の場合、滑り速度は7.5x10−5m/s、1.25x10−5m/s、7.5x10−6m/sのとき、摩擦力はそれぞれ292Pa、238Pa、617Paである。これら値と細胞−PNaSSゲル間の摩擦力に近い。ところで、摩擦基板はF=0.1の場合、滑り連度は7.5x10−5m/s、1.25x10−5m/s、7.5x10−6m/sのとき、摩擦力はそれぞれ21Pa、28Pa、42Paである。そして、F=0.05ときの摩擦力とF=0.1ときと近い値を示している。つまり、摩擦基板の電荷密度の減少に伴って、細胞摩擦力は約一桁下がることを示している。
例19〜30の結果から、中性ゲルと滑らせたとき、細胞シート−ゲル間の摩擦はもっと減少すると予想される。これを証明するため、細胞シートPDMAAm(4mol%、弾性率152.5kPa)ゲル間の摩擦測定を行った。図5に細胞シート−PDMAAmゲル間の摩擦力の滑り速度依存性を示している。滑り速度は、7.5x10−5m/s、1.25x10−5m/s、7.5x10−4m/s、2.73x10−4m/sのとき、摩擦力はいずれの細胞に対しても約2〜4Paである。このように摩擦力が低く、これらの滑り速度の範囲中に細胞シートの摩擦は200s〜1800s間に80%以上の細胞は残ったため、長い時間にわたって細胞シートの摩擦測定ができた。そして、高い滑り速度での摩擦力の測定が実現した。滑り速度は7.5x10−3m/s、7.5x10−2m/sのとき、摩擦力は約9〜14Paである。これらの滑り速度範囲中に細胞シートの摩擦は50s〜100s間80%以上の細胞は残った。以上の結果から細胞シートPDMAAm間の摩擦力は血管中のせん断応力に近いことが分かった。
細胞シート−中性ゲル間の摩擦は細胞シート−負の電荷を持つゲルより低いという結果を受けて、細胞シート−正の電荷を持つゲル間の摩擦確認試験を行った。正の電荷を持つゲルはPDMPAA−Q(10mol%)用いた。その結果、細胞シート−PDMPAA−Qゲル問の摩擦は1000Paという高い値を示した。そして、摩擦測定後、PDMPAA−Qゲル表面に細胞シートと同じサイズの跡がみられた。これは細胞シートがPDMPAA−Qゲルに吸着して残った跡と考えられる。このことから細胞シートは主に負の電荷を帯びていることが分かった。
先に記載した製造例の方法に従い、以下に示すゲルを合成し、更に平衡膨潤させた。各種ゲルの構造を図9に示した。
・ポリ(アクリル酸):
(PAA)架橋密度1mol%、2mol%
・ポリ(p−スチレンスルホン酸ナトリウム):
(PNaSS)架橋密度4mol%、10mol%
・ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルー1ープロパンスルホン酸ナトリウム):
(PNaAMPS)架橋密度 2mol%、4mol%、10mol%
前記の平衡膨潤したゲルをシャーレに移し、121℃、20分でオートクレーブ後、直径15mmの円盤に切り出した。ポリエチレンテレフタレート(PET)とポリスチレン(PS)をコントロールとして用いた。直径15mmのPETとPS基板を75%のアルコールで滅菌した。減菌した基板を24穴PSディッシュに入れた。種々ゲルを無血清培地、血清培地中で平衡膨潤した。一種類基板につき、3〜4個を用いた。
ヒト肘静脈より3.8%クエン酸ナトリウム1/9容を加えて採血した血液を1200rpmで5分間遠心し、この上澄みを分離した(上澄みに血小板が含まれている)。血小板を活性化させないように静かに別の容器に移した。これをPRP(多血小板血漿)とした。残りの血液を3500rpmで10分間遠心し、上澄みを分離した。これをPPP(乏血小板血漿)とした。そして、PRPとPPPを合わせて血小板血漿とした。
ゲル基板に上記の血小板血漿を150mlずつキャストし、37℃で2時間インキュベートした。2時間後基板上の血小板血漿を軽く除去し、PBS溶液で2回洗浄した。これを2.5%グルタルアルデヒド溶液に浸漬し、37℃で2時間静置した。架橋後基板についているグルタルアルデヒド溶液を軽く拭き取った後、PBS溶液1回、Milli−Q水で50%に希釈したPBS溶彼1回、続いてMilli−Q水で1回洗浄した。
血小板がサイズ的に小さいため、光学顕微鏡で形を観察するのが難しい。そのため、SEMでの観察が必要になる。サンプルは凍結乾燥する前に2.5%グルタルアルデヒド溶液で細胞を固定した。サンプルを凍結乾燥機に入れて、凍結乾燥機の温度を−40℃まで冷やして、−40℃保ったまま5h凍結乾燥し、次に−25℃に保ったまま4h凍結乾燥し、更に25℃保ったまま4h凍結乾燥した。当該方法で準備したHUVECがコンフルエントまで増殖したサンプルをSEMで観察したところ、伸展した細胞が形を保ったまま観測された。
各ゲルについて、倍率1000倍で5視野撮影し、粘着している血小板を以下のように分類し,それぞれの個数をカウントする。
I型 球状を保っている正常血小板。
II型 球状を保っているが、偽足を出している活性化された血小板。
III型 完全に伸展している一番活性化された血小板。
コントロールとしてPETとPSを用いた。PETは血小板粘着実験のnegativeコントロールとしてよく用いられる基板である。PSは細胞培養に広く使われている。
図10にコントロール基板上で吸着した血小板のSEM写真を示している。基板上吸着した血小板の数は図17に示している。PET、PS上にそれぞれ27cells/104μm2、320cells/104μm2血小板の吸着がみられた。PS上で吸着した血小板が直径2〜4μmの正常の球状を示しているのに対して、PET上で吸着した血小板の活性化が認められた。PET上で吸着した血小板のうち約53.9%が伸展、43.1%が偽足の形に示し、僅か3%が正常の球状を示している。これらの値から、PET、PS基板上に大量の血小板の吸着し、PET基板上では血小板が活性化しやすいことが分かった。
無血清培地と血清培地中で平衡膨潤した中性のPDMAAmゲル表面でははっきりとした網目が観察され、血清と血漿中含むタンパク質や血小板の吸着は認められなかった(図11)。
無血清培地と血清培地中で平衡膨潤した2mol%PAAゲル表面にファイバと塊まり状のタンパク質の集合体と見られるものが吸着された(図12)。1mol%PAAゲルを用いた場合であっても、同じ結果を示した。無血清培中にはタンパク質が含まれていないため、無血清培中で平衡膨潤したPAAゲル表面の吸着したタンパク質は、血小板血漿中に含まれていたものと考えられる。無血清培地と血清培地中で平衡膨潤した1mol%のPAAゲル上に、それぞれ密度70、74cells/104μm2球状を保っている血小板(2〜4μm)の吸着が観察された。無血清培地と血清培地中で平衡膨潤した2mol%のPAAゲル上に、それぞれ密度329、247cells/104μm2血小板の吸着を観察された。その中でそれぞれ約15%、12%が偽足を出していた。2mol% PAAゲル上に吸着した血小板の数が1mol%のPAAゲル上に比べてやく4倍多い。これらの結果より、血清の存在に関係なく、血小板がPAAゲルに吸着しやすく、さらには、血小板の吸着がPAAゲルの架橋密度に敏感に依存していることが分かった。
無血清培地中で平衡膨潤したPNaAMPSゲル表面には、たくさんのタンパク質の集合体と見られるものが吸着している(図13)。無血清培地中にタンパク質は、含まれていないため、ゲル表面に吸着したタンパク質は、血小板血漿中に含まれていたものと考えられる。2mol%、4mol%、10mol%のPNaAMPSゲルに、球状を保っている血小板(2〜4 μm)が、それぞれ36、2、8cells/104μm2の密度で吸着している様子が観察された。血清培地中で平衡膨潤した2mol%、4mol%、10mol%のPNaAMPSゲルに、球状を保っている血小板(2〜4 μm)が、それぞれ123、44、6 cells/104μm2の密度で吸着している様子が観察された。
血清培地中で平衡膨潤したPNaAMPSゲル表面にたくさんのタンパク質の集合体と見られるものが吸着している(図14)。さらにタンパク質の集合体に中心として球状の血小板(2〜4 μm)の吸着がみられた。これらの結果から、血清培地中で平衡膨潤したPNaAMPSゲル上に血小板が吸着しやすいことが分かった。
無血清培地中で平衡膨潤したPNaSSゲル上にタンパク質の集合体と見られるものの吸着が観察されなかった(図15)。血清培地中で平衡膨潤したPNaSSゲル上に密度高いファイバ状のタンパク質と見られるものの吸着が観察された。無血清培地中で平衡膨潤したPNaSSゲル上に僅かな血小板の吸着が観察されたのに対して、血清培地中で平衡膨潤した4mol%と10mo1%のPNaSSゲル上に、血小板が、それぞれ68、172cells/104μm2の密度で吸着している様子が観察された。さらにその上に、ゲル表面は、タンパク質の線維が均一に覆われている(図16)。このため、吸着した血小板の形態がよく分からない。これらの結果から、血清培地中で平衡膨潤したPNaSSゲル上に血小板が吸着しやすいことが分かった。
図17に種々のゲル上で吸着した血小板の数を示している。これらの結果より、無血清培地中で平衡膨潤したゲルの場合では、血小板の粘着がPAA>PNaAMPS>PNaSS>PDMAAmの順で減少し、血清培地中で平衡膨潤したゲルの場合では、血小板の粘着がPAA>PNaAMPS〜PNaSS>PDMAAmの順で減少することが分かった。何れの場合にも、PAAゲル上での血小板の粘着が強い。そしで、血小板の吸着がPAAゲルの架橋密度に敏感に依存していることが分かった。血清培地中で平衡膨潤したPAA、PNaAMPS、PNaSSゲル表面に血清タンパク質のファイバとみられるものが観察された。とくに、タンパク質の集合体の上とその周りに、血小板の粘着が顕著であった。これらの結果から、血清タンパク質が血小板の粘着を誘導するのではないかと示唆された。
Claims (3)
- N,N’−ジメチルアクリルアミドと、二つ以上のエチレン性不飽和結合を有する架橋剤により合成される、血液と接触する環境下で使用される医療用具用ゲル材料。
- 前記架橋剤が、メチレンビスアクリルアミドである、請求項1記載の医療用具用ゲル材料。
- 前記ゲル材料を合成する際の、N,N’−ジメチルアクリルアミドに対する前記架橋剤の比が、1〜10モル%である、請求項1又は2記載の医療用具用ゲル材料。
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