JP2008220383A5 - - Google Patents
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Description
本発明は、作業用の各種の散布装置などのインプルメントを連結して走行作業を行う農用トラクタに関する。
農用トラクタから作業用動力を取り出するPTO系は、走行速度に同調した回転速度のPTO動力を伝達するグランドPTOと、走行速度に関係なく定速度のPTO動力を伝達するライブPTOとがある。ライブPTO動力で薬剤や肥料の散布を行うインプルメントを駆動する場合、圃場全体に均一な散布を行うために、トラクタ本機の走行速度に応じてインプルメントの散布量を変更制御することが行われることになり、例えば、特許文献1に示されているように、トラクタ本機に備えた車速センサからの検出信号に基づいて肥料の散布装置のシャッタ開度を制御するよう構成したものが知られている。
特開2004−329067号公報
上記構成によると、トラクタ本機の走行速度に対応した散布制御を行うことが可能となるものであるが、例えば、走行中にトラクタ本機においてPTOクラッチの切り操作が行われると、インプルメントにおいて薬剤や肥料の繰出し駆動は停止することになるが、車速センサからの検出信号に基づいた開度でシャッタが開かれたままとなるので、走行振動などによって貯留されている薬剤や肥料がこぼれ落ちて不要に散布されてしまうことになる。
本発明は、このような点に着目してなされたものであって、トラクタ本機側でのPTOの切り状態に対応して散布装置のシャッタ又はバルブを好適に遮断することができるようにすることを目的としている。
第1の発明は、インプルメントとして散布装置を備えると共に、前記散布装置に、貯留した散布剤の圃場への供給を遮断するシャッタ又はバルブを備え、PTOの入り切り状態を検出するPTO検出センサをトラクタ本機に備えると共に、トラクタ本機に備えた主制御装置に、インプルメント制御用信号を出力する出力手段と、前記PTO検出センサからの検出に基づいて前記インプルメント制御用信号を補正する出力補正手段とを備え、前記出力補正手段により補正された前記インプルメント制御用信号に基づいて、前記散布装置に備えた制御装置においてPTOが切り状態であると判別されると、前記制御装置が前記シャッタ又はバルブを閉じ制御するように構成してあることを特徴とする。
PTOの入り切りが行われると、PTO検出センサからの検出に基づいて出力補正手段によりインプルメント制御用信号が補正され、出力補正手段により補正されたインプルメント制御用信号に基づいて、散布装置に備えた制御装置においてPTOが切り状態であると判別されると、制御装置がシャッタ又はバルブを閉じ制御するので、駆動停止された散布装置(インプルメント)から機体振動などによって薬剤や肥料がこぼれたり漏れたりして不要に散布されてしまうことを回避することができる。
従って、第1の発明によると、トラクタ本機側でのPTOの切り状態に対応して散布装置のシャッタ又はバルブを好適に遮断することができる。
第2の発明は、上記第1の発明において、
前記出力補正手段による補正前の前記インプルメント制御用信号が、トラクタ本機の走行速度の大きさに対応したものである。
前記出力補正手段による補正前の前記インプルメント制御用信号が、トラクタ本機の走行速度の大きさに対応したものである。
上記構成によると、インプルメント制御用信号を受けるインプルメント側の制御装置でトラクタ本機の走行速度を識別することができ、例えば、シャッタ開度やバルブ開度を走行速度に応じて制御することで、走行速度が変化しても均一な散布を行うことが可能となる。
第3の発明は、上記第1又は第2の発明において、
前記散布装置がブームスプレーアであり、前記ブームスプレーアに、貯留した散布剤の圃場への供給を遮断するバルブを備えてあるものである。
前記散布装置がブームスプレーアであり、前記ブームスプレーアに、貯留した散布剤の圃場への供給を遮断するバルブを備えてあるものである。
上記構成によると、駆動停止されたブームスプレーアのバルブ閉じ制御を行って、貯留した散布剤が不要にこぼれ落ちるようなことを防止することが可能となる。
図1に本発明に係る農用トラクタの側面が、図2に背面図がそれぞれ示されている。この農用トラクタは、前輪2および後輪3が駆動されるキャビン付きのトラクタ本機1の後部に、油圧昇降されるリンク機構4を介してインプルメントの一例であるブームスプレーヤ5を連結し、トラクタ本機1から取り出したPTO動力でブームスプレーヤ5を駆動する散布機仕様に構成されている。
図3に、この農用トラクタの伝動系の概略が示されている。機体前部に搭載されたエンジン6の出力は、主クラッチ7を介して静油圧式無段変速装置(HST)からなる主変速装置8に伝達され、主変速装置8からの変速動力がギヤ式の副変速機構9で複数段に変速された後、主推進車輪である後輪3と操向用の前輪2に伝達される。主変速装置8に入力されたエンジン動力の一部が、変速されることなくPTOクラッチ10を経てPTO軸11からライブPTO動力として取り出され、ブームスプレーヤ5の送出ポンプ12に軸伝達されるようになっている。
副変速機構9の伝動下手に位置する適当な回転軸(例えば、最終変速軸)には回転センサ15が装備されており、図4に示すように、回転センサ15で検出された回転速度がトラクタ本機1に備えられたマイコン利用の主制御装置16に入力される。主制御装置16には、PTOクラッチ10の入り切り操作状態を検出するPTO検出センサ14、および、後輪3の外径情報を入力する車輪サイズ設定器18が接続されており、主制御装置16では、これらの検知情報に基づいてトラクタ本機1の走行速度Vが演算され、演算された走行速度Vに基づいてインプルメント制御用信号Eが出力される。
ブームスプレーヤ5には、薬剤貯留用のタンク19、PTO動力によって定速で駆動される前記送出ポンプ12、噴霧ノズル付きの起伏自在なブーム20、噴霧散布量を調整するバルブ機構21が装備されるとともに、その調整を行うためにマイコン利用の制御装置22が備えられている。図4に示すように、ブームスプレーヤ5の制御装置22には、バルブ機構21の開度を調整する電動モータあるいは電磁ソレノイドなどの電動アクチュエータ23、実バルブ開度を検出するフィードバック用の開度検出センサ24、単位面積当たりの散布量を人為的に調整設定する散布量設定器25、オン・オフスイッチ26、警報ランプやブザーなどの警報器27が接続されており、トラクタ本機1からのインプルメント制御用信号Eがコネクタ28を介して一線式に伝達されて、ブームスプレーヤ5の制御装置22に入力されるようになっている。
前記回転センサ15は、回転軸に備えられたギヤの外周に半導体磁気抵抗素子を対向配置して、ギヤ歯部の通過に応じてパルスを出力する仕様のものが用いられ、検出対象となる回転軸の回転速度に比例した周波数の高速パルスが出力されるようになっている。
主制御装置16から出力されるインプルメント制御用信号Eは図6,図7に示すように、演算された走行速度Vに正比例した低い周波数のパルス信号であり、例えば、走行速度Vが2km/hでは20Hz、走行速度Vが4km/hでは40Hzでパルス信号が出力される。トラクタ本機1が走行停止している時には、極低周波(例えば0.002Hz)のインプルメント制御用信号Eが出力される(図5のフロー図参照)。
このように、走行停止している時にも極低周波のインプルメント制御用信号Eが出力されることで、ブームスプレーヤ5の制御装置22において、トラクタ本機1が走行停止して状態と、トラクタ本機1からインプルメント制御用信号Eが伝達されない状態とを認識することができ、インプルメント制御用信号Eが伝達されないことが判別されると、警報器27を作動させて信号伝達系でのコネクタ28のつなぎ忘れや断線の発生を認識することができるようになっている。
ここで、前進走行時におけるインプルメント制御用信号Eは小さいデューティd1(デューティ比)であるのに対して、後進走行時におけるインプルメント制御用信号Eは大きいデューティd2(デューティ比)に設定されている。PTOクラッチ10が入り状態にある時のインプルメント制御用信号Eは上記デューティd1又はd2(デューティ比)であるのに対して、PTOクラッチ10が切り状態にある時のインプルメント制御用信号Eは、前後進に係わらず更に大きいデューティd3(デューティ比)となるように設定されている。
インプルメント制御用信号Eを受けたブームスプレーヤ5の制御装置22においては、単位走行距離に対して散布量設定器25で設定された散布を行う目標バルブ開度が割り出され、実際のバルブ開度が目標バルブ開度になるように電動アクチュエータ23が作動制御され、トラクタ本機1の走行速度Vが変更されても所定の散布量での均一な薬剤噴霧散布が行われる。インプルメント制御用信号Eのデューティが大きいデューティd3(デューティ比)に変更されたことからPTOクラッチ10が切られたことが判別されると、直ちにバルブ機構21が閉じられて、薬剤のこぼれ落ちが防止されることになる。
農用トラクタのメーカーにおいては、トラクタ本機1の機種、車輪サイズに係わらず、同じ走行速度Vに対しては同じ周波数のパルス信号がインプルメント制御用信号Eとして出力されるように、主制御装置16が調整されて出荷され、同じメーカーのいずれのトラクタ本機1にインプルメントを連結しても、インプルメント側の制御装置22でトラクタ本機1の走行速度Vを演算する必要はなく、トラクタ本機1からのインプルメント制御用信号Eを、そのままでトラクタ本機1の走行速度Vを示す情報として利用することができる。
〔他の実施例〕
(1)PTOクラッチ入り状態にある場合のインプルメント制御用信号Eを上記のように走行速度Vに正比例した周波数のパルス信号とし、PTOクラッチ切り状態が検出された場合のインプルメント制御用信号Eを、予め設定された作業用速度範囲から高速側に大きく外れた走行速度に相当する周波数のパルス信号とすることもできる。農用トラクタの作業用速度範囲は通常 0.1〜30(km/h)であるので、PTOクラッチ切り時に、例えば図8に示すように、実際に現出しない高速走行速度〔100(km/h)〕に相当する1000Hzのインプルメント制御用信号Eを出力して、インプルメント側でPTOクラッチ切り状態を認識できるようにして、バルブ機構21の閉じ制御に利用することもできる。
(1)PTOクラッチ入り状態にある場合のインプルメント制御用信号Eを上記のように走行速度Vに正比例した周波数のパルス信号とし、PTOクラッチ切り状態が検出された場合のインプルメント制御用信号Eを、予め設定された作業用速度範囲から高速側に大きく外れた走行速度に相当する周波数のパルス信号とすることもできる。農用トラクタの作業用速度範囲は通常 0.1〜30(km/h)であるので、PTOクラッチ切り時に、例えば図8に示すように、実際に現出しない高速走行速度〔100(km/h)〕に相当する1000Hzのインプルメント制御用信号Eを出力して、インプルメント側でPTOクラッチ切り状態を認識できるようにして、バルブ機構21の閉じ制御に利用することもできる。
(2)リンク機構4の昇降状態をトラクタ本機1におけるインプルメントに関わる作動状態として設定し、インプルメントが作業高さ範囲よりも上昇されたことが検知されると、上記のようにインプルメント制御用信号Eのデューティ(デューティ比)あるいは周波数を補正するように構成することもできる。これによると、トラクタ本機1が圃場の端に至って方向転換する際に、インプルメントを畦などにぶつけないように大きく上昇させた場合、補正されて送出されたインプルメント制御用信号Eからこの作動をインプルメント側で認識して、バルブ機構21の閉じ制御を行うことができる。
(3)トラクタ本機1の設定角度以上の大きい機体操向状態をインプルメントに関わる作動状態として設定し、トラクタ本機1が大きく方向転換されたことが検知されると、上記のようにインプルメント制御用信号Eのデューティ(デューティ比)あるいは周波数を補正するように構成することもできる。これによると、トラクタ本機1が圃場の端に至って方向転換すると、補正されて送出されたインプルメント制御用信号Eからインプルメント側で機体方向転換であることを認識して、バルブ機構21の閉じ制御を行うことができる。
(4)トラクタ本機1の左右傾斜状態をトラクタ本機1におけるインプルメントに関わる作動状態として設定することもできる。上記のようにインプルメントがブームスプレーヤ5の場合、トラクタ本機1が左右に傾くとブーム19が作物や地面に接触するおそれがあるので、トラクタ本機1が設定以上に左右に傾斜したことが検知されると、走行速度情報を伝達するインプルメント制御用信号Eを補正して送出し、この補正されたインプルメント制御用信号Eからトラクタ本機1の左右傾斜を判別して、ブーム19の起伏揺動制御に利用する行うことが可能となる。
(5)インプルメントに関わる作動状態を検知する対象を複数設定した場合、例えば、PTOクラッチ10の入り切り状態と、リンク機構4の昇降状態を共に検知するような場合には、補正したインプルメント制御用信号Eによっていずれの検知状態かを識別できるように、デューティ(デューティ比)あるいは周波数を差別化しておく必要がある。
(6)インプルメントがブロードキャスタ(肥料散布)やライムソワ(石灰散布)などの粉粒状の散布剤を扱う散布装置の場合、定速駆動によって確実かつ十分な攪拌および散布を行い、インプルメント制御用信号Eに基づいてシャッタ開度の制御を行って均一な散布を行い、補正されたインプルメント制御用信号Eを認識してシャッタ閉じ制御を行うことができる。
1 トラクタ本機
5 散布装置(インプルメント)
14 PTO検出センサ
16 主制御装置
21 バルブ機構
22 制御装置
E インプルメント制御用信号
V 走行速度
5 散布装置(インプルメント)
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