JP2008218269A - 電極触媒 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は金属イオン溶解による電極性能の低下を抑制・防止できる電極を提供することを目的とする。
【解決手段】イオン伝導性部材と、電子伝導性部材と、触媒活性を有する部材と、金属水素化物とを含む電極
【選択図】なし
【解決手段】イオン伝導性部材と、電子伝導性部材と、触媒活性を有する部材と、金属水素化物とを含む電極
【選択図】なし
Description
本発明は、電池に使用される電極、特に固体高分子型燃料電池に使用される電極に関する。
燃料電池は、一般的にリン酸型燃料電池(PAFC)、アルカリ型燃料電池(AFC)、固体高分子型燃料電池(PEFC)などがあり、なかでも固体高分子型燃料電池(PEFC)は、常温で起動でき、電解質の散逸の問題が少なく、高電流密度などの利点を有する。
しかし、現在のPEFCでは膜の加湿とともにカソードで生成する水および膜内を移動する水を含めた総合的な水管理が電池性能と寿命にとって極めて重要である。このカソードで生成する水および膜内を移動する水を含めた総合的な水管理をする技術として例えば特許文献1に開示されている。
特許文献1には、触媒金属(主にPt)を担持させた導電性担体と、テフロンなどの疎水性粒子を金属酸化物などの親水性粒子の表面に担持させた粒子と、ナフィオンなどのプロトン導電性部材とを含む金属触媒層が開示されている(特許文献1 明細書 段落「0024」〜「0025」、実施例など)。これにより、高電流密度の運転においても、供給ガス拡散のための細孔を確保することが可能となり、供給ガスを均一に拡散することができ、高い発電効率が得られる。また、供給ガスの湿度が急に低下した場合でも親水性粒子内に溜め込まれた水分が放出されるため系の水管理を調整でき、電池性能の低下を防止することができる。
特開2005−174835号公報
しかしながら、特許文献1のようなテフロンなどの疎水性粒子を金属酸化物などの親水性粒子の表面に担持させた粒子を触媒層に含ませた場合、高電流密度(低電位)運転行なうと、金属酸化物による酸素還元反応により生成した過酸化水素による金属酸化物の自己溶解や、担体による酸素還元反応によって生成する過酸化水素による金属酸化物が溶解することにより金属イオンが生成し、金属酸化物の添加効果および発電性能が低下する問題がある。
かかる金属酸化物の溶出と考えられる推定メカニズムは以下に示すようなことが考えられる。
低電位(<0.68V)において酸素還元電極に添加した金属酸化物または金属酸化物近傍の担体表面で二電子還元が進行し、過酸化水素が生成する(式1)。
酸性環境中で過酸化水素が共存すると遷移金属酸化物の溶解が促進される(式2)。
また、上記の過酸化水素の生成はローカルで起こるため周囲に過酸化水素分解触媒を置いたとしても防げないという問題があった。
したがって、本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、過酸化水素が生成することがなく金属イオン溶解による電極性能の低下を抑制・防止できる電極を提供することを目的とする。
本発明者が上記課題に鑑みて鋭意検討した結果、イオン伝導性部材と、電子伝導性部材と、触媒活性を有する部材と、金属水素化物とを含む電極により上記課題を解決する。
本発明によれば、高電密運転を行なっても添加した金属成分の添加効果を長期に持続させることが可能な上、金属イオン溶出によるイオン伝導性部材、いわゆるアイオノマー劣化などによる発電性低下を大幅に抑制することができる。
本発明の第一は、イオン伝導性部材と、電子伝導性部材と、触媒活性を有する部材と、金属水素化物とを含む電極である。
これにより、金属成分の自己溶出が大幅に抑制できるため、金属成分の効果を長期に持続しかつ金属イオン溶解による電極性能低下を抑制・防止することができる。
また、本発明に係る電極は金属水素化物を含むことから、当該金属水素化物は、一般的に水と容易に反応し金属水酸化物と水素を生成するため、系の水素量の調節や、例えば金属水素化物として、チタン、マンガン、ジルコニウム、ニッケルなどの遷移元素の合金をベースとしたAB2型;希土類元素、ニオブ、ジルコニウム1に対して触媒効果を持つ遷移元素(ニッケル、コバルト、アルミニウムなど)5を含む合金をベースとした(LaNi5などが挙げられる)AB5型;比較的空隙の多い体心立方晶の金属間化合物をなすTi−Fe系;V系;Mg系;Ni系の水素吸蔵金属または合金を使用した場合、温度や圧力により水素を可逆的に貯蔵または放出することができるため、いわゆる水素ボンベとして利用することができると考えられる。
本明細書に係る「触媒活性を有する部材」とは、酸素を電気化学的に還元する機能および/または水素を電気化学的に酸化する機能を有する部材をいい、いわゆる触媒をいう。そのため「触媒活性を有する部材」とは、触媒成分と同義である。また、例えば本発明に係る電極を構成する各部材は、それぞれ異なる材料で独立に酸素を電気化学的に還元する機能を有していても良いし、一つの部材が複数の機能を有する、例えば電子とプロトンとの両方を導電可能な混合導電体のようなものを使用しても良い。
すなわち、本発明に係る電極を例えば、膜−電極接合体や固体高分子型燃料電池に使用した場合、本発明に係る電極は、電子伝導性部材の表面に触媒活性を有する部材として、いわゆる触媒成分を担持させた触媒成分担持電子伝導性部材と、イオン導電性部材と、金属水素化物とを含む電極触媒層として用いることが好ましい。
さらに、当然のことながら、上記の電極触媒(層)は、カソード電極触媒(層)および/またはアノード電極触媒(層)を含む概念であり、本発明の第一である、イオン伝導性部材と、電子伝導性部材と、触媒活性を有する部材と、金属水素化物とを含む電極は、カソード電極またはアノード電極の少なくとも一方だけに用いても、カソード電極およびアノード電極の両方に用いても良いが、好ましくは少なくともカソード電極に用いることが好ましい。また、電子伝導性部材に触媒活性を有する部材が分散担持されていることがより好ましい。
本発明に係る触媒活性を有する部材として、カソード電極触媒(層)では、酸素の還元反応に触媒作用を有するものであれば特に制限はなく、公知の触媒が同様にして使用できる。また、アノード電極触媒(層)に用いられる触媒活性を有する部材は、水素の酸化反応に触媒作用を有するものであれば特に制限はなく公知の触媒が同様にして使用できる。具体的には、白金、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、タングステン、鉛、鉄、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、バナジウム、モリブデン、ガリウム、アルミニウム等の金属、及びそれらの合金等などから選択される。これらのうち、触媒活性、一酸化炭素等に対する耐被毒性、耐熱性などを向上させるために、少なくとも白金を含むものが好ましく用いられる。
前記合金の組成は、合金化する金属の種類にもよるが、白金が30〜90原子%、合金化する金属が10〜70原子%とするのがよい。カソード触媒をして合金を使用する場合の合金の組成は、合金化する金属の種類などによって異なり、当業者が適宜選択できるが、白金が30〜90原子%、合金化する他の金属が10〜70原子%とすることが好ましい。なお、合金とは、一般に金属元素に1種以上の金属元素または非金属元素を加えたものであって、金属的性質をもっているものの総称である。
合金の組織には、成分元素が別個の結晶となるいわば混合物である共晶合金、成分元素が完全に溶け合い固溶体となっているもの、成分元素が金属間化合物または金属と非金属との化合物を形成しているものなどがあり、本願ではいずれであってもよい。この際、カソード触媒(層)に用いられる触媒活性を有する部材及びアノード触媒(層)に用いられる触媒活性を有する部材は、上記の中から適宜選択できる。以下の説明では、特記しない限り、カソード電極触媒(層)及びアノード電極触媒(層)用の触媒活性を有する部材についての説明は、両者について同様の定義であり、一括して、「触媒活性を有する部材」と称する。しかしながら、カソード触媒(層)及びアノード触媒(層)用の触媒としての成分は同一である必要はなく、上記したような所望の作用を奏するように、適宜選択される。
上記の触媒活性を有する部材の形状や大きさは、特に制限されず公知のいわゆる触媒成分と同様の形状及び大きさが使用できるが、本発明に係る触媒活性を有する部材は、粒状であることが好ましい。この際、触媒スラリーに用いられる触媒活性を有する部材の平均粒子径は、小さいほど電気化学反応が進行する有効電極面積が増加するため酸素還元活性も高くなり好ましいが、実際には平均粒子径が小さすぎると却って酸素還元活性が低下する現象が見られる。従って、触媒スラリーに含まれる触媒活性を有する部材の平均粒子径は、1〜30nm、より好ましくは1.5〜20nm、さらにより好ましくは2〜10nm、特に好ましくは2〜5nmの粒状であることが好ましい。担持の容易さという観点から1nm以上であることが好ましく、触媒としての利用率の観点から30nm以下であることが好ましい。なお、本発明における「触媒活性を有する部材の平均粒径」は、X線回折における触媒成分の回折ピークの半値幅より求められる結晶子径あるいは透過型電子顕微鏡像より調べられる触媒活性を有する部材の粒子径の平均値により測定することができる。
本発明に係る触媒活性を有する部材の平均粒子径の測定方法としては、透過型電子顕微鏡像から代表サンプルについて数〜数10視野中に観察される粒子の粒径を測定する方法が挙げられる。なお、この測定方法では観察するサンプルや視野によって平均粒子径に有意差が生じる。より簡易的にはX線回折プロファイルからある特定の反射ピークの半値幅から求められる結晶子径を触媒成分の平均粒子径として用いることも出来る。
本発明の触媒活性を有する部材の平均粒子径は透過型電子顕微鏡像の任意の8視野中に観察される導電性材料の1次粒子の粒径をすべて測定し(総計N>120)、その粒径の中央値を、触媒活性を有する部材の平均粒子径とする条件で行なった。
本発明に係る電子伝導性部材としては、本発明に係る触媒活性を有する部材を所望の分散状態で担持させるための比表面積を有し、集電体として十分な電子導電性を有しているものであればよく、主成分がカーボンであるのが好ましい。具体的には、カーボンブラック、活性炭、コークス、天然黒鉛、人造黒鉛などからなるカーボン粒子が挙げられる。また、かようなカーボン材料として、より具体的には、アセチレンブラック、バルカン、ケッチェンブラック、ブラックパール、黒鉛化アセチレンブラック、黒鉛化バルカン、黒鉛化ケッチェンブラック、黒鉛化カーボン、黒鉛化ブラックパール、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン、及びカーボンフィブリルから選ばれる少なくとも一種を主成分として含むものなどが挙げられる。なお、本発明において「主成分がカーボンである」とは、主成分として炭素原子を含むことをいい、炭素原子のみからなる、実質的に炭素原子からなる、の双方を含む概念である。場合によっては、燃料電池の特性を向上させるために、炭素原子以外の元素が含まれていてもよい。なお、実質的に炭素原子からなるとは、2〜3質量%程度以下の不純物の混入が許容されることを意味する。
前記電子伝導性部材のBET比表面積は、触媒活性を有する部材を高分散担持させるのに十分な比表面積であればよいが、好ましくは20〜1600m2/g、より好ましくは80〜1200m2/gとするのがよい。前記比表面積が、20m2/g未満であると前記電子伝導性部材への触媒活性を有する部材および高分子電解質の分散性が低下して十分な発電性能が得られない恐れがあり、1600m2/gを超えると触媒活性を有する部材および高分子電解質の有効利用率が却って低下する恐れがある。
また、前記電子伝導性部材の大きさは、特に限定されないが、担持の容易さ、触媒利用率、電極触媒層の厚みを適切な範囲で制御するなどの観点からは、平均粒子径が5〜200nm、好ましくは10〜100nm程度とするのがよい。
前記電子伝導性部材に本発明に係る触媒活性を有する部材が担持された電極触媒において、当該部材の担持量は、電極触媒の全量に対して、好ましくは10〜80質量%、より好ましくは30〜70質量%とするのがよい。前記担持量が、80質量%を超えると、触媒活性を有する部材の電子伝導性部材上での分散度が下がり、担持量が増加するわりに発電性能の向上が小さく経済上での利点が低下する恐れがある。また、前記担持量が、10質量%未満であると、単位質量あたりの触媒活性が低下して所望の発電性能を得るために多量の電極触媒が必要となり好ましくない。なお、本発明に係る触媒活性を有する部材の担持量は、誘導結合プラズマ発光分光法(ICP)によって調べることができる。
また、電子伝導性部材への酸素還元電極に含まれる部材の担持は公知の方法で行うことができる。例えば、含浸法、液相還元担持法、蒸発乾固法、コロイド吸着法、噴霧熱分解法、逆ミセル(マイクロエマルジョン法)などの公知の方法が使用できる。または、電極触媒は、市販品を用いてもよい。
本発明に係る電極(電極を電極触媒(層)とも称する)におけるイオン伝導性部材は、特に限定されず公知のものを用いることができ、以下に記載するように、本発明を固体高分子型燃料電池の高分子電解質に用いられるものと同様の材料が挙げられ、少なくとも高いイオン伝導性を有する材料であればよい。本発明のカソード電極/アノード電極(以下、単に「電極層」とも称する)には、電極触媒の他に、高分子電解質が含まれる。この際使用できる高分子電解質は、高分子骨格の全部又は一部にフッ素原子を含むフッ素系電解質と、高分子骨格にフッ素原子を含まない炭化水素系電解質とに大別される。
前記フッ素系電解質として、具体的には、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)、アシプレックス(登録商標、旭化成株式会社製)、フレミオン(登録商標、旭硝子株式会社製)等のパーフルオロカーボンスルホン酸系高分子、ポリトリフルオロスチレンスルフォン酸系高分子、パーフルオロカーボンホスホン酸系高分子、トリフルオロスチレンスルホン酸系高分子、エチレンテトラフルオロエチレン−g−スチレンスルホン酸系高分子、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリビニリデンフルオリド−パーフルオロカーボンスルホン酸系高分子などが好適な一例として挙げられる。
また、炭化水素系電解質としても、特に制限されず、公知の炭化水素系電解質が使用される。具体的には、スルホン酸基を有する炭化水素系樹脂系、リン酸などの無機酸を炭化水素系高分子化合物にドープさせたもの、一部がプロトン導電体の官能基で置換された有機/無機ハイブリッドポリマー、高分子マトリックスにリン酸溶液や硫酸溶液を含浸させたプロトン導電体などが使用されるが、耐酸化性、低ガス透過性、製造の容易さ及び低コストなどを考慮すると、スルホン酸基を有する炭化水素系膜が好ましい。本発明で使用される炭化水素系膜としては、特に制限されず、公知の炭化水素系電解質膜が使用されるが、例えば、スルホン化ポリエーテルスルホン(S−PES)、PBI(ポリベンズイミダゾール)、PBO(ポリベンズオキサゾール)、S−PPBP(スルホン化ポリフェノキシベンゾイルフェニレン)、S−PEEK(スルホン化ポエーテルエーテルケトン)、スルホンアミド型ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン、スルホンアミド型ポリエーテルエーテルケトン、スルホン化架橋ポリスチレン、スルホンアミド型架橋ポリスチレン、スルホン化ポリトリフルオロスチレン、スルホンアミド型ポリトリフルオロスチレン、スルホン化ポリアリールエーテルケトン、スルホンアミド型ポリアリールエーテルケトン、スルホン化ポリ(アリールエーテルスルホン)、スルホンアミド型ポリ(アリールエーテルスルホン)、ポリイミド、スルホン化ポリイミド、スルホンアミド型ポリイミド、スルホン化4−フェノキシベンゾイル−1,4−フェニレン、スルホンアミド型4−フェノキシベンゾイル−1,4−フェニレン、ホスホン酸型4−フェノキシベンゾイル−1,4−フェニレン、スルホン化ポリベンゾイミダゾール、スルホンアミド型ポリベンゾイミダゾール、ホスホン酸型ポリベンゾイミダゾール、スルホン化ポリフェニレンスルフィド、スルホンアミド型ポリフェニレンスルフィド、スルホン化ポリビフェニレンスルフィド、スルホンアミド型ポリビフェニレンスルフィド、スルホン化ポリフェニレンスルホン、スルホンアミド型ポリフェニレンスルホン、スルホン化ポリフェノキシベンゾイルフェニレン、スルホン化ポリスチレン−エチレン−プロピレン、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン、スルホン化ポリフェニレンイミド、ポリベンズイミダゾール−アルキルスルホン酸、スルホアリル化ポリベンズイミダゾールなどが好適な一例として挙げられる。原料が安価で製造工程が簡便であり、かつ材料の選択性が高いといった製造上の観点からは、これらの炭化水素系電解質膜が好ましく用いられる。なお、上述した電解質(イオン交換樹脂)は、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。また、上述した材料のみに制限されず、その他の材料が用いられてもよいことは勿論である。
高分子電解質は、耐熱性、化学的安定性などに優れることから、フッ素原子を含むのが好ましく、なかでも、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)、アシプレックス(登録商標、旭化成株式会社製)、フレミオン(登録商標、旭硝子株式会社製)などのフッ素系電解質が好ましく挙げられる。
尚、電解質膜と電極層とで用いる高分子電解質は、異なってもよいが、膜と電極の接触抵抗などを考慮すると同じものを用いるのが好ましい。
前記高分子電解質は、接着の役割をする高分子として電極触媒を被覆しているのが好ましい。これにより、電極の構造を安定に維持できるとともに、電極反応が進行する三相界面を十分に確保して、高い触媒活性を得ることができる。電極中に含まれる前記固体高分子電解質の含有量は、特に限定されないが、触媒成分の全量に対して25〜35質量%とするのがよい。
前記電極触媒層の空孔率は、30〜70%が好ましく、より好ましくは40〜60%である。空孔率が30%〜70%だとでは、電極触媒層の強度が十分であり、転写プロセスにおいて空孔率を維持することができる。
本発明に係る金属水素化物は、Ti、Nb、Zr、Y、Mg、La、Ni、およびCeからなる群から選択される少なくとも1種の金属を含むことが好ましい。
これにより本発明に係る電極は、酸化還元反応がおこる電位範囲においても安定に使用可能な金属水素化物が得られるため、添加効果が長期に持続し、金属イオンの溶出が抑制・防止することができる。
さらに、上記のTi、Nb、Zr、Y、Mg、La、Niなどは水素吸蔵金属または合金に用いられる金属であるため、温度や圧力により水素を可逆的に貯蔵または放出することができ、いわゆる水素ボンベとして利用可能であると考えられる。
本発明に係る電極は比較的高い電位領域で使用するため、該電極に含まれる各部材はそのような電位領域で安定に存在できなければならない。このような目的に対して少なくともTi、Nb、Zr、Y、Mg、La、Ni、およびCeからなる群から選択される少なくとも1種の金属を含んだ金属水素化物を用いることが好ましい。このような金属水素化物の金属成分と水素成分のモル比(原子比)は、化学式をMxHyとすると、x:y=1:0.5〜1:2の範囲であることが好ましく、1:0.75〜1:2の範囲であることがより好ましく、1:1〜1:2の範囲であることがさらに好ましい。なお、Mが金属原子、Hが水素原子を意味する。
金属水素化物の金属成分に対する水素成分のモル比が0.5未満だと十分な耐性が得られず、金属水素化物の金属成分に対する水素成分のモル比が2を超えると、金属水素化物は十分な耐性が得られるものの、金属水素化物そのものが非常に脆いため微粉末状であっても外部からの圧力(PEFCの場合で言えばスタッキングによる締め付け)等によって電極層の形状を維持することができなくなり、電極層の微細構造を変化させてしまう要因になり電極性能を低下させてしまう恐れがあり、金属水素化物の金属成分に対する水素成分のモル比が、0.5〜2の範囲であると十分な耐性が得られ、なおかつ金属水素化物の電極用途としては十分な靭性を持つため高い電極性能を長期に持続可能な電極を得ることが出来る。
本発明に係る金属水素化物は、水素解離平衡圧が1気圧となる温度が200℃以上であることが好ましい。
本発明に係る電極は、比較的高い電位領域で使用するため、酸素還元電極に含まれる部材はそのような電位領域で安定に存在できなければならない。このような目的に対して水素解離平衡圧が1気圧となる温度が200℃以上〜800℃以下である金属水素化物を用いることが好ましく、より好ましくは水素解離平衡圧が1気圧となる温度が250℃以上〜750℃以下、さらに好ましくは水素解離平衡圧が1気圧となる温度が300℃以上〜700℃以下である。
本発明に関する金属水素化物の含有体積は、電極の見かけ体積の1〜50%であることが好ましい。
本明細書の「電極の見かけ体積」は、電極の幾何面積(いわゆる断面積)と電極の平均厚さの積で求める。ここで「電極の見かけ体積」とは、電極反応が進行する電極触媒成分が含まれる部分を指し、仮に固体高分子型燃料電池に用いた場合、ガス拡散電極において電極触媒成分を含まない電子導電性部材で構成される成分、例えばガス拡散層(GDL)の体積は含まないと定義する。
すなわち、「電極の見かけ体積」とは、イオン伝導性部材と、電子伝導性部材と、触媒活性を有する部材と、金属水素化物とを含む電極(下記で説明する金属窒化物をさらに含む場合は金属窒化物を含む)の全体の体積をいう。
また、本発明に関する金属水素化物の含有体積は、電極の見かけ体積の2〜45%であることがより好ましく、電極の見かけ体積の5〜40%であることがさらに好ましい。
上記の金属水素化物の含有体積は、電極中の金属水素化物含有重量を比重で割ることによって求めることが出来る。金属水素化物の含有体積率が1%未満では金属水素化物の添加効果が得られず、50%を超では金属水素化物の添加効果は十分に得られるものの金属水素化物の電子導電性が不十分であることから電極の電子導電抵抗が増加するため、電極として性能低下に繋がる。
本発明に係る触媒活性を有する部材が電子伝導性部材に担持された電極触媒において、金属水素化物の量は、電極触媒の全量に対して、好ましくは2〜80質量%、より好ましくは4〜60質量%とするのがよい。
本発明に係る金属水素化物の製造方法は、5〜100体積%の水素を含んだ不活性ガス雰囲気中400〜1200℃の水素化処理を行なうことが好ましい。
これにより、高電流密度(低電位)で長期に運転しても金属イオンの溶出が少ない金属水素化物が得られる。
金属水素化物を調製する際は所望のガス組成の流通ガス雰囲気中で400〜1200℃に加熱することが出来る装置であれば用いることが出来る。通常、固定床流通式の焼成炉を使用することができる。
水素が5体積%未満では水素分圧が低いため水素化が十分に進行しない。水素のバランスガスとして酸化性ガスを用いると金属水素化物の生成が困難であり、水素以外の還元性ガス例えば一酸化炭素や炭化水素ガスを用いると金属炭化物が生成するため同様に金属水素化物の生成が困難になる。水素化処理時に水素のバランスガスとしては不活性ガスが好ましく、アルゴン、ネオン、ヘリウム、窒素などを用いることが出来るが、中でも窒素を用いたとき高電流密度(低電位)で長期に運転しても金属イオンの溶出がより少ない金属水素化物が得られる。必要に応じて雰囲気ガスは加圧状態でもよい。
焼成温度は400℃未満では金属成分の水素化が十分に進行しないため金属イオンの溶出がより少ない金属水素化物が得られず、1200℃超では水素化は十分に進行するためこれ以上の温度で行うのは不経済である。また焼成温度は、好ましくは450〜1100℃、より好ましくは500〜1000℃とするのがよい。
昇温および降温速度は速い方が短時間で熱処理が完了するため経済的であるが、速すぎる場合、金属成分の溶出耐性が十分でないものが得られることがある。この原因の詳細は明らかではないが、表面層とバルク層の水素化組成の違いに起因する表面とバルクの熱膨張率の差により表面でミクロな割れを生じるためかもしれない。昇温および降温速度は1〜50℃/分が好ましい。1℃/分以下では熱処理時間に長時間を要するので不経済である。
熱処理中200℃超では所定組成のガス(>5%H2−不活性ガスバランスガス)雰囲気になっていることが好ましい。一方、昇温過程および降温過程において200℃以下であるときは所定組成のガス(>5%H2−不活性ガスバランスガス)あるいは不活性ガス雰囲気であることが好ましい。
また本発明に係る水素化処理の時間は、0.1〜10時間が好ましく、1〜6時間がより好ましい。0.1〜10時間だと均一な水素化を進行させることができ、これ以上長い時間行うことは不経済である。
また、本発明の第一である、イオン伝導性部材と、電子伝導性部材と、触媒活性を有する部材と、金属水素化物とを含む電極には、前記金属水素化物の代わりにまたはさらに金属窒化物を含んでも良い。金属窒化物は金属水素化物単独でも十分な耐性を有するが、金属窒化物も含ませるとさらに耐性を高めることが出来ることがわかった。詳細な理由は不明であるが、金属窒化物が金属水素化物の脆性を補って電極層として靭性を高めることが出来るためであると推測される。
本発明に係る金属窒化物は、Ti、Nb、Zr、Y、Mg、La、Ni、およびCeからなる群から選択される少なくとも1種の金属を含むことが好ましい。
このような金属窒化物の金属成分と窒素成分のモル比は、化学式をMaNbとすると、a:b=1:0.5〜1:2の範囲であることが好ましく、1:0.5〜1:1.5の範囲であることがより好ましく、1:0.66〜1:1.5の範囲であることがさらに好ましい。なお、Mが金属原子、Nが窒素原子を意味する。
金属窒化物の金属成分に対する窒素成分のモル比が1:0.5〜1:2の範囲であるとさらに電極層の耐性を高めることが出来る。
本発明に係る触媒活性を有する部材が電子伝導性部材に担持された電極触媒において、金属窒化物の量は、電極触媒の全量に対して、好ましくは1〜30質量%、より好ましくは5〜20質量%とするのがよい。
請求項1〜4のいずれか1項に記載の電極を用いることを特徴とする固体高分子型燃料電池が好ましい。
本明細書における「膜−電極接合体」は、高分子電解質膜の片面にアノード電極触媒(層)が配置され、他方の面にカソード電極触媒(層)が配置され、かつアノード電極触媒(層)および/またはカソード電極触媒(層)ガス拡散層をさらに有しているものをいう。
本発明の酸素還元電極は特に固体高分子型燃料電池のカソードとして用いたときに金属水素化物添加効果が得られかつ長期にその効果を持続することが出来る。固体高分子型燃料電池、特に自動車用途の場合高電流密度での運転時間が長いため本発明により得られる効果が大きい
本発明の膜−電極接合体に用いられる高分子電解質膜としては、特に限定されず、上記の電極触媒(層)に用いたイオン伝導性部材のものと同様の高分子電解質からなる膜が挙げられる。また、デュポン社製の各種のNafion(デュポン社登録商標)やフレミオンに代表されるパーフルオロスルホン酸膜、ダウケミカル社製のイオン交換樹脂、エチレン−四フッ化エチレン共重合体樹脂膜、トリフルオロスチレンをベース高分子とする樹脂膜などのフッ素系高分子電解質や、スルホン酸基を有する炭化水素系樹脂系膜など、一般的に市販されている高分子型電解質膜、高分子微多孔膜に液体電解質を含浸させた膜、多孔質体に高分子電解質を充填させた膜などを用いてもよい。前記高分子電解質膜に用いられる高分子電解質と、各電極触媒層に用いられる高分子電解質とは、同じであっても異なっていてもよいが、各電極触媒(層)と高分子電解質膜との密着性を向上させる観点から、同じものを用いるのが好ましい。
本発明の膜−電極接合体に用いられる高分子電解質膜としては、特に限定されず、上記の電極触媒(層)に用いたイオン伝導性部材のものと同様の高分子電解質からなる膜が挙げられる。また、デュポン社製の各種のNafion(デュポン社登録商標)やフレミオンに代表されるパーフルオロスルホン酸膜、ダウケミカル社製のイオン交換樹脂、エチレン−四フッ化エチレン共重合体樹脂膜、トリフルオロスチレンをベース高分子とする樹脂膜などのフッ素系高分子電解質や、スルホン酸基を有する炭化水素系樹脂系膜など、一般的に市販されている高分子型電解質膜、高分子微多孔膜に液体電解質を含浸させた膜、多孔質体に高分子電解質を充填させた膜などを用いてもよい。前記高分子電解質膜に用いられる高分子電解質と、各電極触媒層に用いられる高分子電解質とは、同じであっても異なっていてもよいが、各電極触媒(層)と高分子電解質膜との密着性を向上させる観点から、同じものを用いるのが好ましい。
前記高分子電解質膜の厚みとしては、得られる膜−電極接合体の特性を考慮して適宜決定すればよいが、好ましくは10〜75μm、より好ましくは15〜70μm、特に好ましくは20〜60μmである。製膜時の強度や膜−電極接合体作動時の耐久性の観点から10μm以上であることが好ましく、膜−電極接合体作動時の出力特性の観点から75μm以下であることが好ましい。
また、上記高分子電解質膜としては、上記したようなフッ素系高分子電解質や、スルホン酸基を有する炭化水素系樹脂による膜に加えて、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などから形成された多孔質状の薄膜に、リン酸やイオン性液体等の電解質成分を含浸したものを使用してもよい。
本発明に係るガス拡散層(以下GDLと称する)に用いられる材料としては、カーボンペーパー、不織布、炭素製の織物、紙状抄紙体、フェルトなどからなるシート状材料が提案されている。GDLが優れた電子伝導性を有していると、発電反応により生じた電子の効率的な運搬が達成され、燃料電池の性能が向上する。またGDLが優れた撥水性を有していると、生成した水が効率的に排出される。
高い撥水性を確保するために、GDLを構成する材料を撥水処理する技術も提案されている。例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフッ素系樹脂を含む溶液中にカーボンペーパーなどのGDLを構成する材料を含浸させ、大気中または窒素などの不活性ガス中に乾燥させる。場合によっては、親水化処理がGDLを構成する材料に施されてもよい。
その他に、カーボンペーパー、不織布、炭素製の織物、紙状抄紙体、フェルトなどからなるシート状GDL上に、カーボン粒子およびバインダーを配置して、両者をガス拡散層として使用してもよく、カーボン粒子およびバインダーからなるフィルム自体をガス拡散層として使用してもよい。この結果、フィルム自体に均一に撥水材料、カーボン粒子が形成されているため、上記の塗布に比較して撥水効率の上昇がみられる。
前記撥水材料としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)などのフッ素系樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレンなどが挙げられる。なかでも、撥水性、電極反応時の耐食性などに優れることから、フッ素系樹脂が好ましい。尚、「バインダー」とは接着の役割を有する物質をいう。
前記膜−電極接合体中に含まれる撥水材料の含有量は、全固体高分子型燃料電池を構成する材料の合計質量に対して1〜30質量%が好ましく、より好ましくは5〜20質量%である。撥水材料の含有量が1%〜30%であると十分な撥水効果が期待することができ、かつ固体高分子型燃料電池用電極として強度が十分になる。
以下、本発明に係る膜−電極接合体の好ましい製造方法について説明する。
(金属水素化物の作製方法)
不活性ガスとして窒素ガスを用い、5〜100体積%の水素ガスが含む雰囲気下で、金属水素化物を400〜1200℃0.1〜10時間熱処理を行なった後、熱処理後の金属水素化物を振動ミルで粉砕し、好ましくは0.05〜1μm、より好ましくは0.05〜0.8μm、さらに好ましくは0.05〜0.45μmの大きさにするため篩でわけして、本発明に係る金属水素化物を作製する。
不活性ガスとして窒素ガスを用い、5〜100体積%の水素ガスが含む雰囲気下で、金属水素化物を400〜1200℃0.1〜10時間熱処理を行なった後、熱処理後の金属水素化物を振動ミルで粉砕し、好ましくは0.05〜1μm、より好ましくは0.05〜0.8μm、さらに好ましくは0.05〜0.45μmの大きさにするため篩でわけして、本発明に係る金属水素化物を作製する。
なお、金属酸化物の形状は、粉末、タブレット状、フレーク状、ペレット状など形状は特に制限されないが粉末のものが好ましい。また、粉砕する方法やその装置、および篩い分けはする方法や装置は公知の方法を利用でき、特に制限されない。
熱処理後の金属水素化物の大きさは(一次粒子径であり、上述の触媒活性を有する部材の平均粒子径の測定方法と同様の方法で測定した)、0.05〜1μmの範囲だと他の電極層構成成分粒子(Pt担持カーボンなど)と同程度の粒子径であるため電極層内に均一に分布させやすく電極層内全体にわたって効果を得られる。
(金属水素化物含有膜−電極接合体の製造)
本発明の膜−電極接合体の製造方法では、上記したような電極触媒として触媒活性を有する部材(1〜10質量部)と、イオン伝導性部材(1〜10質量部)と、電子伝導性部材(1〜10質量部)と、上記の方法により作製した金属水素化物(0.1〜4質量部)(および/または金属窒化物(0.1〜4質量部))と、および溶剤(60〜95質量部)と、必要により添加剤(0.1〜5質量部)とを所定量含む触媒インクを、転写用台紙に塗布することによって、触媒層が形成される。この際、溶剤としては、特に制限されず、触媒層を形成するのに使用される通常の溶剤が同様にして使用できる。具体的には、水、シクロヘキサノールやエタノールや2−プロパノール等の低級アルコールが使用できる。また、溶剤の使用量もまた、特に制限されず公知と同様の量が使用できるが、触媒インクにおいて、電極触媒は、所望の作用、即ち、水素の酸化反応(アノード側)及び酸素の還元反応(カソード側)を触媒する作用を十分発揮できる量であればいずれの量で、使用されてもよい。電極触媒が、触媒インク中、5〜30質量%、より好ましくは9〜20質量%となるような量で存在することが好ましい。
本発明の膜−電極接合体の製造方法では、上記したような電極触媒として触媒活性を有する部材(1〜10質量部)と、イオン伝導性部材(1〜10質量部)と、電子伝導性部材(1〜10質量部)と、上記の方法により作製した金属水素化物(0.1〜4質量部)(および/または金属窒化物(0.1〜4質量部))と、および溶剤(60〜95質量部)と、必要により添加剤(0.1〜5質量部)とを所定量含む触媒インクを、転写用台紙に塗布することによって、触媒層が形成される。この際、溶剤としては、特に制限されず、触媒層を形成するのに使用される通常の溶剤が同様にして使用できる。具体的には、水、シクロヘキサノールやエタノールや2−プロパノール等の低級アルコールが使用できる。また、溶剤の使用量もまた、特に制限されず公知と同様の量が使用できるが、触媒インクにおいて、電極触媒は、所望の作用、即ち、水素の酸化反応(アノード側)及び酸素の還元反応(カソード側)を触媒する作用を十分発揮できる量であればいずれの量で、使用されてもよい。電極触媒が、触媒インク中、5〜30質量%、より好ましくは9〜20質量%となるような量で存在することが好ましい。
本発明の触媒インクは、増粘剤を含んでもよい。増粘剤の使用は、触媒インクが転写用台紙上にうまく塗布できない場合などに有効である。この際使用できる増粘剤は、特に制限されず、公知の増粘剤が使用できるが、例えば、グリセリン、エチレングリコール(EG)、ポリビニルアルコール(PVA)、プロピレングリコール(PG)などが挙げられる。増粘剤を使用する際の、増粘剤の添加量は、本発明の上記効果を妨げない程度の量であれば特に制限されないが、触媒インクの全質量に対して、好ましくは5〜20質量%である。
本発明の触媒インクは、触媒活性を有する部材、イオン伝導性部材、電子伝導性部材、金属水素化物(および/または金属窒化物)、および溶剤、ならびに必要であれば撥水性高分子および/または増粘剤、が適宜混合されたものであればその調製方法は特に制限されない。例えば、電解質を極性溶媒に添加し、この混合液を加熱・攪拌して、電解質を極性溶媒に溶解した後、これに電極触媒を添加することによって、触媒インクが調製できる。または、電解質を、溶剤中に一旦分散/懸濁された後、上記分散/懸濁液を電極触媒と混合して、触媒インクを調製してもよい。また、電解質が予め上記他の溶媒中に調製されている市販の電解質溶液(例えば、デュポン製のナフィオン(登録商標)溶液:1−プロパノール中に5wt%の濃度でナフィオン(登録商標)が分散/懸濁したもの)をそのまま上記方法に使用してもよい。
上記したような触媒インクを、転写用台紙上に塗布して、各触媒層が形成される。この際、高分子電解質膜上へのカソード/アノード電極触媒(層)の形成条件は、特に制限されず、公知の方法が同様にしてあるいは適宜修飾を加えて使用できる。例えば、触媒インクを高分子電解質膜上に、乾燥後の厚みが5〜20μmになるように、塗布し、真空乾燥機内にてまたは減圧下で、25〜150℃、より好ましくは60〜120℃で、5〜30分間、より好ましくは10〜20分間、乾燥する。なお、上記工程において、触媒層の厚みが十分でない場合には、所望の厚みになるまで、上記塗布・乾燥工程を繰り返す。
上記方法において、転写用台紙としては、特に制限されず、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)シート、PET(ポリエチレンテレフタレート)シート等の、ポリエステルシートなどの公知のシートが使用できる。なお、転写用台紙は、使用する触媒インク(特にインク中のカーボン等の導電性担体)の種類に応じて適宜選択される。また、上記工程において、触媒層の厚みは、水素の酸化反応(アノード側)及び酸素の還元反応(カソード側)の触媒作用が十分発揮できる厚みであれば特に制限されず、従来と同様の厚みが使用できる。具体的には、触媒層の厚みは、1〜30μm、より好ましくは1〜20μmである。また、転写用台紙上への触媒インクの塗布方法は、特に制限されず、スクリーン印刷法、沈積法、あるいはスプレー法などの公知の方法が同様にして適用できる。また、塗布された触媒層の乾燥条件もまた、触媒層から極性溶媒を完全に除去できる条件であれば特に制限されない。具体的には、触媒インクの塗布層(触媒層)を真空乾燥機内にて、室温〜100℃、より好ましくは50〜80℃で、30〜60分間、乾燥する。この際、触媒層の厚みが十分でない場合には、所望の厚みになるまで、上記塗布・乾燥工程を繰り返す。
次に、このようにして作製された電極触媒層2枚電解質膜を挟持した後、当該積層についてホットプレスを行なう。この際、ホットプレス条件は、電極触媒層及び電解質膜が十分密接に接合できる条件であれば特に制限されないが、100〜200℃、より好ましくは110〜170℃で、電極面に対して1〜5MPaのプレス圧力で行なうのが好ましい。これにより高分子電解質膜と電極触媒層との接合性を高めることができる。ホットプレスを行なった後、転写用台紙を剥がすことにより、電極触媒層と高分子電解質膜とからなるMEAを得ることができる。
なお、上記では、転写法により、電解質膜にアノード/カソード電極触媒層を形成する方法について述べてきたが、本発明の膜−電極接合体は、電解質膜へ直接触媒インクを印刷する直接塗布法などの他の方法によって製造されてもよい。具体的には、上記したような触媒インクを、本発明の電解質膜上に塗布して、各触媒層が形成される。この際、電解質膜上へのカソード/アノード電極触媒層の形成条件は、特に制限されず、公知の方法が同様にしてあるいは適宜修飾を加えて使用できる。例えば、触媒インクを高分子電解質膜上に、乾燥後の厚みが5〜20μmになるように、塗布し、真空乾燥機内にてまたは減圧下で、25〜150℃、より好ましくは60〜120℃で、5〜30分間、より好ましくは10〜20分間、乾燥する。なお、上記工程において、電極触媒層の厚みが十分でない場合には、所望の厚みになるまで、上記塗布・乾燥工程を繰り返す。
なお、本発明による膜−電極接合体は、上記に詳述されるように、一般的にガス拡散層をさらに有してもよく、この際、ガス拡散層は、上記方法において、転写用台紙を剥がし、得られた接合体をさらにガス拡散層で挟持することによって、触媒層と電解質膜との接合後にさらに各触媒層に接合することが好ましい。または、触媒層を予めガス拡散層表面上に形成して触媒層−ガス拡散層接合体を製造した後、上記したのと同様にして、この触媒層−ガス拡散層接合体で電解質膜をホットプレスにより挟持・接合することもまた好ましい。
前記燃料電池の種類としては、特に限定されず、上記した説明中では高分子電解質型燃料電池を例に挙げて説明したが、この他にも、アルカリ型燃料電池、リン酸型燃料電池に代表される酸型電解質の燃料電池、ダイレクトメタノール型燃料電池、マイクロ燃料電池などが挙げられる。なかでも小型かつ高密度・高出力化が可能であるから、固体高分子電解質型燃料電池が好ましく挙げられる。また、前記燃料電池は、搭載スペースが限定される車両などの移動体用電源の他、定置用電源などとして有用であるが、特にシステムの起動/停止や出力変動が頻繁に発生する自動車用途で特に好適に使用できる。
前記高分子電解質型燃料電池は、定置用電源の他、搭載スペースが限定される自動車などの移動体用電源などとして有用である。なかでも、比較的長時間の運転停止後に高い出力電圧が要求されることによるカーボン担体の腐食、および、運転時に高い出力電圧が取り出されることにより高分子電解質の劣化が生じやすい自動車などの移動体用電源として用いられるのが特に好ましい。
前記燃料電池の構成としては、特に限定されず、従来公知の技術を適宜利用すればよいが、一般的には膜−電極接合体をセパレータで挟持した構造を有する。
前記セパレータとしては、緻密カーボングラファイト、炭素板等のカーボン製や、ステンレス等の金属製のものなど、従来公知のものであれば制限なく用いることができる。セパレータは、空気と燃料ガスとを分離する機能を有するものであり、それらの流路を確保するための流路溝が形成されてもよい。セパレータの厚さや大きさ、流路溝の形状などについては、特に限定されず、得られる燃料電池の出力特性などを考慮して適宜決定すればよい。
また、各触媒層に供給されるガスが外部にリークするのを防止するために、ガスケット層上の触媒層が形成されていない部位にさらにガスシール部が設けられてもよい。前記ガスシール部を構成する材料としては、フッ素ゴム、シリコンゴム、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、ポリイソブチレンゴム等のゴム材料、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)等のフッ素系の高分子材料、ポリオレフィンやポリエステル等の熱可塑性樹脂などが挙げられる。また、ガスシール部の厚さとしては、2mm〜100μm、望ましくは1mm〜50μm程度とすればよい。
さらに、燃料電池が所望する電圧等を得られるように、セパレータを介して膜−電極接合体を複数積層して直列に繋いだスタックを形成してもよい。燃料電池の形状などは、特に限定されず、所望する電圧などの電池特性が得られるように適宜決定すればよい。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。なお、本発明は、これらの実施例のみに限定されることはない。また、当該実施例において、「%」は特記しない限り質量百分率を表わすものとする。
「金属水素化物の調製」
(TiHxの調製)
固定床流通式の電気炉を用いてTi粉末を窒素:水素=1:2の大気圧雰囲気下で800℃4時間熱処理を行った。昇温速度、降温速度ともに5℃/分とした。この熱処理試料を室温アルゴン雰囲気中において振動ミルでさらに粉砕処理を加えた。粉砕した粉末は0.45μm以下の粒径の粒子を篩で分けたものを使用した。
(TiHxの調製)
固定床流通式の電気炉を用いてTi粉末を窒素:水素=1:2の大気圧雰囲気下で800℃4時間熱処理を行った。昇温速度、降温速度ともに5℃/分とした。この熱処理試料を室温アルゴン雰囲気中において振動ミルでさらに粉砕処理を加えた。粉砕した粉末は0.45μm以下の粒径の粒子を篩で分けたものを使用した。
(NbHxの調製)
Nb粉末をTiHxと同様の調製方法で調製した。
Nb粉末をTiHxと同様の調製方法で調製した。
(ZrNiHxの調製)
ZrNi合金粉末をTiHxと同様の調製方法で調製した。ただし熱処理温度は400℃とした。
ZrNi合金粉末をTiHxと同様の調製方法で調製した。ただし熱処理温度は400℃とした。
(LaNi5Hxの調製:比較例)
LaNi5合金粉末をTiHxと同様の調製方法で調製した。ただし熱処理温度は80℃とした。
LaNi5合金粉末をTiHxと同様の調製方法で調製した。ただし熱処理温度は80℃とした。
「電極触媒層の作製」
電極触媒層の作製については以下のように行った。
電極触媒層の作製については以下のように行った。
Pt担持カーボン粉末(田中貴金属製:TEC10E50E)の重量に対して5倍量の精製水を加えた後、0.5倍量のイソプロピルアルコールを加え、さらにはNafionの重量が0.8倍量になるようにNafion溶液(Aldrich社製5wt.%Nafion含有)を加えた。ここに金属水素化物などの添加物粉末を所定の占有体積率になるように添加する。混合スラリーを超音波ホモジナイザでよく分散させ、それに続いて減圧脱泡操作を加えることによって触媒インクを作製した。これをカーボンペーパー(東レ製TGP−H−060)の片面にスクリーン印刷法によって所定量の触媒インクを印刷し、60℃で24時間乾燥させることにより電極層を作製した。
「MEAの作製」
MEA(膜―電極接合体)の作製については触媒を塗布した面を電解質膜に合わせて120℃、1.2MPaで10分間ホットプレスを行うことによりMEAを作製した。すべてについてアノード触媒としては比較例1触媒を用いた。
MEA(膜―電極接合体)の作製については触媒を塗布した面を電解質膜に合わせて120℃、1.2MPaで10分間ホットプレスを行うことによりMEAを作製した。すべてについてアノード触媒としては比較例1触媒を用いた。
比較例、実施例ともに使用したMEAはPt使用量を見かけの電極面積1cm2あたりアノードでは0.3mg、カソードでは0.5mgとし、電極面積は25cm2とした。また、電解質膜としてNafion112(厚さ:約50μm)を用いた。
「単セル評価」
作製したMEAを用いて燃料電池単セルを構成し、発電運転試験を以下のような方法で行った。
作製したMEAを用いて燃料電池単セルを構成し、発電運転試験を以下のような方法で行った。
燃料電池のアノード側には燃料として水素を供給し、カソード側には空気を供給した。両ガスとも供給圧力は大気圧とし、燃料電池本体の温度は80℃に設定し、水素利用率は67%、空気利用率は40%、水素は80℃において湿度60%、空気は80℃において湿度80%になるように加湿して供給した。発電運転は電流密度1 A/cm2を4分間、その後電流密度0.2 A/cm2を1分の発電運転を1サイクルとして繰り返し発電を行い、1000時間経過後の電流密度1 A/cm2のときのセル電圧の変化を各電極に対して調べた。
表1は、その結果を示す表であって、各実施例電極を用いた燃料電池では先述の1000時間の発電試験後のセル電圧は高く保たれていることがわかる。比較例2の金属酸化物を添加したものや、比較例3の金属水素化物を添加した電極においては、何も添加物を加えていない比較例1電極よりも明らかに発電性能が低下していることがわかる。この結果から、本発明における金属水素化物を添加した電極においては長時間高電流密度発電運転を行っても添加物の劣化に起因すると思われる発電性能の低下を大きく抑えることが出来ることがわかる。その上、添加物を加えていない電極に対しても優位性を示すことが明らかであるといえる。
Claims (6)
- イオン伝導性部材と、電子伝導性部材と、触媒活性を有する部材と、金属水素化物とを含む電極。
- 前記金属水素化物は、水素解離平衡圧が1気圧となる温度が200℃以上であることを特徴とする請求項1に記載の電極。
- 前記金属水素化物は、Ti、Nb、Zr、Y、Mg、La、NiおよびCeからなる群から選択される少なくとも1種の金属を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の電極。
- 金属水素化物の含有体積は、電極の見かけ体積の1〜50%であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電極。
- 請求項1に記載の電極にはさらに金属窒化物を含むことを特徴とする電極。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の電極を用いることを特徴とする燃料電池。
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