JP2008217922A - 光学素子、光ピックアップ、補完光学部材及び光学素子の製造方法 - Google Patents

光学素子、光ピックアップ、補完光学部材及び光学素子の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】光学フィルムを用いることなく、膜の剥離や膜割れ等の問題を回避しつつ、所定の光学的機能を満たすような光学素子を得ることを目的とする。
【解決手段】透明基板11上に光学的機能を発揮する基本光学膜BCが形成された基本光学部材12に、基本光学膜BCの不足分の光学的機能を補完するための補完光学膜SCが透明基板11上に形成された補完光学部材13が貼り合わせられて積層されている。微小量の補完を行う補完光学膜SCは、透明基板11に形成されているため、基本光学膜BCの不足分は、補完光学膜SCを直接基本光学膜BCに形成するのではなく、補完光学部材13を基本光学部材12に光学接着剤等により積層させている。これにより、膜の剥離や割れ等の問題を招来することなく、所定の光学的機能を得ることができる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、光学素子の光学的機能を補完するための補完光学部材を有する光学素子、この光学素子を有する光ピックアップ、前記の補完光学部材及び前記の光学素子を製造する光学素子の製造方法に関するものである。
光ピックアップや液晶プロジェクタ等の光学装置においては、種々の光学素子、例えば偏光ビームスプリッタやダイクロイックミラー等の種々の素子が用いられる。光学素子を製造する手法としては、例えば特許文献1に開示されるように、真空蒸着法やスパッタリング等によりガラス基板に光学的機能を発揮する光学膜を形成する手法が一般的である。また、例えば特許文献2に開示されるように、ガラス基板上に位相差機能等の光学的機能を発揮する光学フィルムを貼合する手法によっても、製造することができる。
特許文献1では、高い透過率を有する反射防止膜を形成するために、光学的膜厚や材料を適宜選択しているが、ガラス基板上には、一般的な手法である真空蒸着法やスパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンアシスト蒸着法により材料が形成されている。また、基板の再利用を可能にするために、基板に積層される第1層にアルカリ溶液に容易に溶解可能な材料(Al膜)を用いている。一方、特許文献2では、複数の位相差フィルムを積層して全体として波長板として機能させている。そして、迷光によるコントラストの低下を防止するために、最外層に反射防止膜を形成している。
特開2002−267803号公報 特開2001−83326号公報
ところで、特許文献1のように、真空蒸着法等の蒸着手段によってガラス基板上に光学膜を形成する場合、蒸着精度を高精度にコントロールして、光学膜の蒸着精度の向上を図っている。しかし、蒸着精度は様々な要因によって低下し、ガラス基板上に完全な精度をもって材料を蒸着させるのは極めて困難である。
蒸着精度を低下させる要因としては、例えば蒸着装置内の真空度の低下や蒸着源の蒸発時間等がある。また、光学素子は大量生産の観点から、蒸着装置内に大量のガラス基板を配置しておき、一度に蒸着させることから、各個体が配置される位置により蒸着精度に微妙にばらつきが生じる(蒸着源と各個体との位置関係が異なることに起因する)。特に、短波長の光を利用する光学装置においては、光学膜の膜層数は多層化するため、各膜に生じる誤差が累積し、光学的機能の劣化が顕著なものとなる。
このように、最終的に製造された光学素子が所定の光学的機能を発揮しない場合には、基本的には不良品として破棄される。また、特許文献1にあるように、光学膜をアルカリ溶液に浸漬させて光学膜を剥離してから再利用するという手法もあるが、剥離可能とするためにAl膜を積層させる必要がある。このようなAl膜は光学膜を剥離するために用いられるものであり、基本的には光学的機能に寄与しない膜である。このような光学膜を使用すると、その分のコストがかかるということは勿論、光学的に不要なAl膜が積層されることにより、光学的機能の低下という問題を招来する。また、剥離可能としても、再び最初から材料をガラス基板上に蒸着させなければならず、生産の効率化・迅速化の観点から好ましくない。
そこで、光学素子が生成された後に、微小な不足分の膜付けを行って、所定の光学的機能を満たすという手法が考えられる。例えば、生成された光学素子が光学的機能を99%満たしている場合(1%不足している場合)には、残りの1%分の膜付けを後付で行えば、所定の光学的機能を満たすことができる。しかし、この場合は、光学的機能を発揮するか否かの検査を行った後に、再度、高温状態の雰囲気下にある蒸着装置内に光学素子を戻して膜付けを行うことになる。そうすると、光学素子の光学膜に対して強力なストレスが加わることになる。このため、光学膜に剥離や膜割れ、ヒビの発生、結晶状態が不連続になる等といった光学的機能に欠陥を生じることになる。
また、特許文献2では、各位相差フィルムを遅相軸の角度を調整するようにして積層しているため、各位相差フィルムとも光学的機能を満たすために均等の役割を発揮している。従って、不足分を補完するという役割を発揮するという機能は有していない。また、素材としてフィルムを使用すると、フィルムは熱膨張係数が高いため、温度の上昇により歪み易いといった耐候性の問題がある。また、複数の樹脂を貼り合せると、樹脂同士を接合するための接着剤の厚さが不均質となり易く、入射光の波面を乱す結果、所定の光学的機能を得ることができないといった問題もある。
以上の点に鑑みて、本発明は、光学フィルムを用いることなく、膜の剥離や膜割れ等の問題を回避しつつ、所定の光学的機能を満たすような光学素子を得ることを目的とする。
以上の課題を解決するために、本発明の請求項1の光学素子は、所定の光学的機能を発揮する光学素子であって、光学的機能を発揮するための基本光学膜が透明基板上に形成された基本光学部材と、前記基本光学膜の前記光学的機能を発揮するための不足分を補完して、前記光学的機能を発揮させるための補完光学膜が透明基板上に形成された1又は複数の補完光学部材と、を有し、前記基本光学部材に前記1又は複数の補完光学部材を貼り付けた構成としたことを特徴とする。
以上の構成を採用したことにより、基本光学部材の基本光学膜が所定の光学的機能を発揮するために不足している分は、補完光学部材の補完光学膜が補うことにより、所定の光学的機能を得ることができる。補完光学膜は、透明基板に形成された補完光学部材として構成しているため、不足分の補完光学膜は、直接基本光学膜に蒸着をするのではなく、補完光学膜が透明部材に形成された補完光学部材の状態で追加されることになる。このため、単純に補完光学部材を基本光学部材に光学接着剤等の接合手段で貼り合わせればよいため、製造された光学素子に改めて材料を蒸着する必要がない。これにより、光学的機能が不足している場合でも不良品として廃棄されないことから歩留まりの向上を図ることができ、同時に膜の剥離や膜割れ、ヒビの発生、結晶状態が不連続になる等といった問題を回避することができる。
ここで、基本光学膜とは光学素子の光学的機能を発揮するための膜であることを意味し、補完光学膜は基本光学膜が不足している微小量の補完を行う膜であることを意味する。また、基本光学部材とは光学素子を構成する主要な部材であることを意味し、補完光学部材とは基本光学部材の光学的機能を補完するための補助的・付随的な部材であることを意味する。
基本光学膜にも補完光学膜にも蒸着誤差は生じるが、基本光学膜の蒸着誤差は光学的機能に比較的大きな影響を与えるのに対し、補完光学膜の蒸着誤差が全体の光学的機能に与える影響は殆ど無視できる誤差となる。例えば、基本光学膜及び補完光学膜に3%の誤差が生じているものと仮定すると、補完光学膜が1%の補完を行うものである場合には、1%に3%を乗じた誤差(0.03%の誤差)となり極めて微小な誤差となる。
さらに、基本光学膜は光学的機能を発揮する主要な役割を担っているため、多層化する傾向にあるが、補完光学膜はあくまでも補完を行うものであるため、膜数は少ない。このため、各膜に生じた蒸着誤差が累積する基本光学膜とは異なり、膜数の少ない補完光学膜にはそれほど蒸着誤差は累積しないため、補完光学膜の誤差は、基本光学膜に比べてさらに少なくなる。
補完光学部材は1つであってもよいし、複数であってもよい。複数の場合には、複数の補完光学部材に形成されている補完光学膜の全体で、基本光学膜の不足分を補完するような膜構成を採用し、基本光学部材に複数の補完光学部材を順次追加して貼り合わせる(このため、積層構造になる)。また、基本光学部材と補完光学部材との間、及び複数の補完光学部材同士の間の接合には、接合層(接合部材が形成されている層)は光が透過することから、光学接着剤を用いることが好ましい。ただし、接着剤や粘着剤、オプティカルコンタクト、水ガラスによる接着等の任意の接合手段を適用することができる。
本発明の請求項2の光学素子は、請求項1記載の光学素子であって、前記基本光学部材に形成された前記基本光学膜と前記1又は複数の補完光学部材に形成された前記補完光学膜とは、平行な状態となるように形成したことを特徴とする。
基本光学膜と1又は複数の補完光学膜とは平行な状態でなくても、補完光学膜は基本光学膜の補完を行うことができるが、あくまでも補完光学膜は基本光学膜の補完を行うものであるため、両者は平行な状態であることが好ましい。そして、複数の補完光学膜により補完機能が果たされている場合には、全体で1つの補完機能を果たすべく、全ての補完光学膜が平行な状態であることが好ましい。また、基本光学膜と1又は複数の補完光学膜とが平行な状態でない場合には、製造上も困難であるため、全ての膜が平行であることが好ましい。
本発明の請求項3の光学素子は、請求項1又は2記載の光学素子であって、前記補完光学部材は、前記透明基板に予め定められた微小量の補完を行う単位補完光学膜が形成された単位補完光学部材として構成され、前記基本光学膜が前記光学的機能を発揮するための不足分に応じた数の前記単位補完光学部材を前記基本光学部材に貼り合わせて積層したことを特徴とする。
補完光学膜は、基本光学膜の不足量に応じた膜構成を採用してもよいが、一定量の補完を行う補完光学膜(単位補完光学膜)が形成された補完光学部材(単位補完光学部材)を予め多数製造しておき、不足分に応じた数の単位補完光学部材を追加して積層することにより、補完することが可能となる。このときの単位補完光学膜は極めて微小量(微小量は、1%前後であることが好ましい)の補完を行うことが好ましい。光学素子は、一般的に一度に大量に生産されることから、各個体によって光学的機能に微小なばらつきがある。特に、蒸着装置内に配置される位置関係によっては、光学的機能は比較的ばらついてしまう。そこで、極めて微小量の補完を行う補完光学膜が形成された補完光学部材を多数製造しておき、ストックしておけば、ばらつきがある各個体に合わせて必要な数の補完光学部材を追加することができる。
補完光学部材は、複数種類を予め用意しておくこともできる。例えば、1%の補完を行う補完光学膜が形成された補完光学部材と2%の補完を行う補完光学膜が形成された補完光学部材との2種類を用意しておけば、不足分が3%のときには、1%の補完光学部材を3つ使用することもできるし、1%及び2%の2つの補完光学部材を使用することもできる。また、3%の補完の補完を行う補完光学膜が形成された補完光学部材を用意しておけば、不足分の3%を1つの補完光学部材で補完することができる。
本発明の請求項4の光学素子は、請求項1乃至3何れか1項に記載の光学素子であって、前記光学素子の最上層又は最下層のうち少なくとも一方には、前記光学素子の形状を整えるための形状調整用透明部材が積層されて一体化されていることを特徴とする。
光学素子は、所定の固定部材により固定されて光学装置内に配置されることから、製造される各固体の形状は統一される必要がある。しかし、追加される補完光学部材の数は製造された各光学素子によってばらつきがあり、各個体で形状が異なる場合がある。そこで、基本光学部材に1又は複数の補完光学部材が積層された光学素子の最上層又は最下層のうち少なくとも一方に光学素子全体としての形状を整えるための形状調整用透明部材を積層させる。形状調整用透明部材は、形状が加工された部材であり、この形状調整用透明部材を積層させることにより、光学素子全体としての形状の統一性を満たすことができる。
従って、形状調整用透明部材の形状は追加される補完光学部材の数によって変化するが、予め追加された補完光学部材の数に応じた複数種類の形状調整用透明部材を製造しておけば、追加される補完光学部材の数が変化しても、容易に形状の統一性を取ることができる。
ここで、最上層及び最下層とは、基本光学部材に1又は複数の補完光学部材が積層された積層体において、最も外側に位置する2つの部材を意味し、補完光学部材が1つの場合には、基本光学部材及び補完光学部材が夫々最上層(又は最下層)及び最下層(又は最上層)を構成し、補完光学部材が複数の場合には、基本光学部材及び当該基本光学部材から最も離れた位置にある補完光学部材が夫々最上層(又は最下層)及び最下層(又は最上層)を構成する。
本発明の請求項5の光学素子は、請求項1乃至4何れか1項に記載の光学素子であって、前記基本光学膜及び前記補完光学膜は、高屈折率膜と低屈折率膜とを交互に積層した誘電体多層膜であって、前記光学素子に入射する光線の光軸と直交する直交平面上に相互に直交するX軸とY軸とを設定したときに、前記基本光学膜と前記1又は複数の補完光学膜とは、前記X軸又は(及び)前記Y軸に対して所定角度傾斜しており、前記傾斜した前記基本光学膜と前記1又は複数の補完光学膜とにより、入射光の相互に直交する2つの偏光成分の光の間に所定の位相差を与えることを特徴とする。
誘電体多層膜が前記のX軸又は(及び)Y軸に対して傾斜している場合、相互に直交する2つの偏光成分の光(X偏光光とY偏光光)を有する光が誘電体多層膜に入射すると、X偏光光とY偏光光とは、夫々異なる屈折率の作用を受けることになる。X偏光光とY偏光光との伝搬速度は異なるため、2つの偏光光の間には位相差が与えられることになる。そこで、基本光学膜を前記の誘電体多層膜のように傾斜させて、相互に直交する偏光光の間に位相差を与える位相差板として機能させる。与える位相差は、基本光学膜の膜構成及び傾斜角によって任意に決定することができる。
補完光学膜は基本光学膜の位相差板としての機能を補完する。例えば、光学素子としては90度の位相差を与えたい場合に、基本光学部材の光学膜が88度の位相差を与えているときには、2度の位相差を与える補完光学膜が形成された補完光学部材を1つ追加するか、又は1度の位相差を与える補完光学膜が形成された補完光学部材を2つ追加することができる。
本発明の請求項6の光学素子は、請求項5記載の光学素子であって、前記光軸をZ軸と設定したときに、前記基本光学膜に入射する入射光の入射面、又は前記基本光学膜と前記1若しくは複数の補完光学膜とを前記Z軸周りに所定角度回転させることにより、前記光学素子を波長板として機能させることを特徴とする。
請求項5の光学素子は、基本光学膜は傾斜しているものの、入射光がX偏光光又はY偏光光の何れか一方の偏光光である場合には、屈折率差を異ならせる相手方の偏光光が存在しないために、伝搬速度に差を持たせることができない。このため、位相差を与える機能を発揮し得ない。そこで、基本光学膜をZ軸周りに回転させることにより、1方向の偏光光がX偏光光とY偏光光との2つの偏光成分の光になり、両偏光光の一方を進相軸(遅相軸)、他方を遅相軸(進相軸)として作用させることができ、透過後の光に所定の位相差を与えることができる。この結果、光学素子を波長板として機能させることができる。補完光学膜も基本光学膜を補完するために、常に基本光学膜と同様にZ軸周りに回転される。なお、入射面を回転させることができる場合、例えば光源を回転させて入射面を回転させることができる場合には、基本光学膜及び補完光学膜を回転させる必要はない。
本発明の請求項7の光ピックアップは、請求項5記載の光学素子を有することを特徴とする。また、本発明の請求項8の補完光学部材は、光学素子の光学的機能の不足分を補完して、前記光学的機能を発揮させるための補完光学膜が透明基板上に形成されたことを特徴とする。
本発明の請求項9及び10の光学素子の製造方法は、前述したような光学素子を製造することを特徴とする。
基本光学膜及び補完光学膜としては、誘電体多層膜や誘電体単層膜、金属膜等の種々の膜を採用することができる。
透明基板としては、ガラスやプラスティック等の光透過性の素材が使用される。また、基本光学部材の透明基板と補完光学部材の透明基板との形状(例えば、厚み)は同一であってもよいし、異なっていてもよい。光学的機能は基本光学膜と補完光学膜とによって発揮されるため、透明基板に如何なる素材、形状が使用されても、光学的機能に影響を与えないためである。同様に、形状調整用透明部材についても、任意の素材、形状を用いることができる。
基本光学膜や補完光学膜を透明基板に形成する手法としては、真空蒸着法、イオンプレーティング法、イオンアシスト法、スパッタ法、CVD(化学気相成長法:Chemical Vapor Deposition)等の種々の手法を適用できる。また、基本光学膜と補完光学膜とは同一の手法を用いて基板上に形成されてもよいし、異なる手法を用いて基板上に形成されてもよい。
光学素子の形状としては、立方体の形状、直方体の形状、円柱の形状、三角柱の形状等の任意の形状を採用することができる。
光学素子の用途としては、前述した位相差板等の他に、偏光ビームスプリッタ、ダイクロイックミラー、反射ミラー等の種々の光学膜が形成された光学素子に適用することができる。また、このような光学素子を有する光学装置としては、前述した光ピックアップの他に、液晶プロジェクタに代表される投射型表示装置等にも適用することができる。
また、前述してきたものは、基本光学膜が主要な役割を担い、補完光学膜はあくまでも補完する役割を担っている。しかし、基本光学膜と補完光学膜といった関係ではなく、光学素子の光学的機能を複数の膜に分散させることもできる。例えば、光学素子の光学的機能のうち20%の光学的機能を発揮する光学膜(分割光学膜とする)が5つあれば、全体として予定されている光学的機能を100%発揮する。20%の光学的機能を発揮する分割光学膜は、100%の場合に比較して、同程度の蒸着誤差が生じたとしても、誤差量は1/5となる。また、20%の光学的機能を発揮する分割光学膜の膜数は、100%の光学的機能を発揮する場合に比較して少なく済む。このため、誤差量はさらに低減される。
従って、比較的良好な膜特性を得ることができる。そして、分割光学膜が透明基板に形成された部材(分割光学部材とする)を5つ積層させれば、膜の剥離や割れ等の問題を招来することなく、所定の光学的機能を発揮することができる。
本発明は、光学的機能を発揮する基本光学膜が形成された基本光学部材に、基本光学膜の光学的機能を補完する補完光学膜が形成された補完光学部材を積層することにより、光学的機能の不足分が発生しても不良品として廃棄されないため、歩留まりの向上を図ることができ、また基本光学膜に再度膜付けをすることなく、単純な接合により不足分を補完することができるため、膜の剥離や膜割れ等の問題を回避することができる。また、光学フィルムを用いていないため、耐候性や耐光性に優れ、光学的機能を満足する光学素子を得ることができる。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。図1において、本発明の光学素子10は、光学的機能を発揮する基本光学膜BCが透明基板11に形成された基本光学部材12と、基本光学膜BCの不足分の光学的機能を補完するための補完光学膜SCが透明基板11に形成された補完光学部材13と、光学素子10の全体の形状を調整するための形状調整用透明部材14、15とを有して構成される。
図1では、透明基板11は薄型の平板状の形状をしており、基本光学部材12と補完光学部材13とは同一の透明基板11を使用している。
基本光学部材12の基本光学膜BCは、光学素子10の光学的機能を担う膜であり、高屈折率膜と低屈折率膜との交互積層による誘電体多層膜であるものとする。本来なら、基本光学膜BCが形成されていることにより、光学素子10は所定の光学的機能を発揮するはずであるが、蒸着精度等の問題により、特性を完全には満たしていない。以下、基本光学膜BCは、予定されていた機能のうち97%の機能を発揮しているものとする。
補完光学部材13は、基本光学部材12に積層されて基本光学部材12と一体となって、所定の光学的機能を発揮する。基本光学膜BCの3%の不足分を補完するため、3%の補完を行う補完光学膜SCが形成された補完光学部材13を1つ用いてもよいし、1%の補完を行う補完光学膜SCが形成された補完光学部材13を3つ用いてもよい。
形状調整用透明部材14、15は、基本光学部材12に3つの補完光学部材13を積層した積層体16の最上層(図1のUの方向において最も外側:基本光学部材12から最も離れた位置にある補完光学部材13に積層されている)及び最下層(図1のDの方向において最も外側:基本光学部材12に積層されている)にさらに積層される。図1の場合は、3つの補完光学部材13が積層されているが、基本光学膜BCの光学的機能にばらつきがあるときには、追加する補完光学部材13の数も異なる。例えば、基本光学膜BCが98%の光学的機能を満たしているときには、追加される補完光学部材13の数は2つとなる。従って、形状調整用透明部材14、15の形状は、追加される補完光学部材13の数によって異なるため、予め複数種類の形状調整用透明部材14、15を生成しておく。
図1では、形状調整用透明部材14、15の2つが積層されているが、形状調整機能という観点からは1つであってもよい。この場合には、露出している基本光学膜BCを保護するという観点から、最下層に形状調整用透明部材15を積層する。また、形状調整が必要ない場合、つまり積層体16の形状が光学素子10の形状と一致している場合には、形状調整用透明部材は必須構成要素ではなくなる。
図1のような光学素子10を製造する製造方法について説明する。製造方法については、主に2つある。1つ目は、予め所定の量の補完を行う補完光学膜SC(この場合は、単位補完光学膜となるが、以下において補完光学膜SCとして説明する)が形成された複数の補完光学部材13(この場合は単位補完光学部材となるが、以下において補完光学部材13として説明する)を予め複数生成しておき、基本光学膜BCの不足量に応じた数の補完光学部材13を積層する方式である。2つ目は、基本光学膜BCが形成された基本光学部材12を生成し、不足量に応じた補完光学膜SCを透明基板11に形成した補完光学部材13を基本光学部材12に積層する方式である。
まず、1つ目の方式について、図2のフローチャートを用いて説明する。最初に、多数の薄型の平板状の透明基板11の一面に対して補完光学膜SCを形成して補完光学部材13を多数生成する(ステップS1:補完光学部材生成工程)。透明基板11には補完光学膜SCが形成されるため、透明基板11は予め鏡面研磨を行い、高い平面度を出しておく。
透明基板11に補完光学膜SCを形成するために、例えば真空蒸着法を適用する。真空蒸着法は、蒸着装置内の上面に多数の透明基板11を配置し、蒸着材料(補完光学膜SCの材料)が充填された蒸着源を下面に設けて、この蒸着源を蒸発させて蒸着材料を透明基板11に蒸着させる。補完光学膜SCは誘電体多層膜であるため、2種類以上の蒸着源を蒸着装置内に配置しておき、各蒸着源から透明基板11に蒸着材料を蒸着させることにより、補完光学部材13を得ることができる。
次に、前述と同様の予め表面研磨が行われた透明基板11の一面に対して基本光学膜BCを形成して基本光学部材12を生成する(ステップS2:基本光学部材生成工程)。透明基板11に基本光学膜BCを形成させる方式は、基本的には補完光学膜SCと同様の方式が適用されるが、基本光学膜BCは光学素子10の光学的機能を担う膜であるため、例えば付着強度が良好なイオンプレーティング法等の他の蒸着手段を適用することもできる。
基本光学部材12も、補完光学部材13と同様に大量生産されるが、補完光学部材13は基本光学部材12に対して複数追加されることがあることから、両者とも大量生産されるという点は共通しているが、基本光学部材12の生産数よりも補完光学部材13の生産数を多くする。ただし、基本光学部材12も補完光学部材13も、実際上は大量生産されることになるが、最も少ない組み合わせとしては、基本光学部材12と補完光学部材13とは夫々1個の生産で足りる(1個の基本光学部材12に対して1個の補完光学部材13を追加して積層すれば、基本光学部材12の光学的機能の不足分を補完光学部材13が補完している関係になる)。
蒸着が終了すると、基本光学部材12を蒸着装置内から取り出して、全ての基本光学部材12について、所定の光学的機能を満たすための不足分を検査する(ステップS3:検査工程)。
ステップS3の検査の結果、3%の不足分を認識するため、1%の補完を行う補完光学部材13を3つ積層して、積層体16を生成する(ステップS4:積層体生成工程)。補完光学部材13の積層は光学接着剤を用いて行われる。
前述のようにして生成された積層体16が、予定している光学素子10の形状と一致している場合には、この積層体16が光学素子10として得られることになる。一方、通常は、形状調整用透明部材14、15が積層されるため、積層体16の最上層及び最下層に形状調整用透明部材14、15が積層されて光学素子10が得られることになる(ステップS5:形状調整用透明部材積層工程)。
次に、前記の2つ目の方式について説明する。2つ目の方式は、1つ目の方式のステップS2である基本光学部材生成工程が最初に行われる。そして、基本光学膜BCの検査を行う検査工程が次に行われ、検査の結果により認識された不足量に応じた補完を行う補完光学膜SCを透明基板11に形成して補完光学部材13を生成する。そして、補完光学部材13を基本光学部材12に積層する積層工程を行った後に、前記のステップS5の形状調整用透明部材積層工程を行う。
1つ目の方式では、予め所定量の補完を行う多数の補完光学部材13を生成してストックすることができるため、生成された基本光学部材12に対して、ストックしてある補完光学部材13を容易に追加することができる。一方、2つ目の方式では、不足量に合わせて補完光学膜SCにより補完光学部材13が生成されるため、きめ細やかな補完を行うことができる。
以上のようにして、基本光学部材が光学的機能を満たしていない場合には、不足分の補完光学部材を追加して貼り合わせて積層することにより、所定の光学的機能を満たすことができる。基本光学膜に対して補完光学膜を直接膜付けする方法と対比すると、補完光学部材は補完光学膜が透明基板に形成された部材であるため、一度生成された基本光学部材の検査を行った後に再度蒸着装置に戻して膜付けを行う必要がない。つまり、補完光学部材を基本光学部材に接合するだけで済むため、基本光学膜に対して剥離や膜割れ、ヒビの発生、結晶状態が不連続になる等といった光学的機能に欠陥を生じることなく、所定の光学的機能を満たすことができる。次に、本実施形態を応用した実施例について、説明していく。
本実施例では、光学素子は波長板として機能する。波長板は、入射する光の相互に直交する偏光成分の光に与える位相差によって機能が変わる。λ/2波長板は180度、λ/4波長板は90度、λ/8波長板は45度の位相差を与える。つまり、位相差によって波長板の機能は任意に変化する。ここでは、波長板はλ/4波長板として機能するものとする。
図3(a)は波長板20を示している。波長板20は、基本光学部材22(基本光学膜BCが透明基板21に形成された部材)と、3つの補完光学部材23(補完光学膜SCが透明基板21に形成された部材)と形状調整用光学部材24、25とを有して構成される。同図(a)波長板20が、前述した実施形態と異なっているのは、基本光学膜BCと3つの補完光学膜SCとが角度制御されている点である。
図3(b)は、相互に直交するX軸、Y軸、Z軸を設定したときに、各軸における基本光学膜BCの角度制御について説明している図である(同図(b)において点線で形成される面はZ=0のXY平面を表す)。図3(b)においては、基本光学膜BCだけが描かれているが、同図(a)に示されるように、基本光学膜BCと平行になるように3つの補完光学膜SCが並列している。そして、図4(a)及び(b)は、波長板20に形成される基本光学膜BCの角度制御を説明するための説明図である。
ここで、Z軸は波長板20に入射する光(以下、入射光とする)の光軸と一致するものとし、Z軸と直交する仮想平面上に相互に直交するX軸とY軸とが設定されている。
波長板20をλ/4波長板として機能させるために、(1)波長板20に入射する光線の相互に直交するX偏光光(Y=0のXZ平面上を振動している偏光光)とY偏光光(X=0のYZ平面上を振動している偏光光)との間に90度の位相差を与える誘電体多層膜であること、(2)基本光学膜BCに入射する入射面に対して基本光学膜BCを相対的に所定角度回転させること、の2つの要件を充足させる。補完光学膜SCは基本光学膜BCと一体となって光学的機能を発揮するため、補完光学膜SCは常に基本光学膜BCと平行な状態で、入射面に対して相対的に所定角度回転させられる。
一般に、(1)の条件を充足するためには、基板上に高屈折率膜と低屈折率膜とを交互に積層して多層膜となし、基本光学膜BCに入射するX偏光光とY偏光光との間に90度の位相差を生じさせるような膜構成を採用する必要がある。上記(1)の機能を発揮するための膜構成は、高屈折率膜と低屈折率膜との材料の選択(つまり、所定の屈折率を有する膜の選択)、選択された高屈折率膜及び低屈折率膜の膜厚の制御、そして交互積層の積層数を適宜制御することにより実現することができる。
例えば、高屈折率膜の材料として酸化ニオブを選択し、低屈折率膜の材料として酸化ケイ素を選択したときに、両者の蒸着時間をコントロールして所定の膜厚を得て、さらに蒸着回数を制御することにより、所定の積層数を得ることができる。このとき、上記(1)の機能を発揮するために必要となる積層数は、おおよそ100層前後の積層数が必要となる。勿論、高屈折率膜と低屈折率膜との種類、膜厚又は入射角度によっては、積層数は増減する。
一方、補完光学膜SCも、高屈折率膜と低屈折率膜との交互積層により形成されるが、あくまでも基本光学膜BCの補完を行うための膜であるため、膜層数は少ない。例えば、高屈折率膜の材料として酸化ニオブを選択して、低屈折率膜の材料として酸化ケイ素を選択した場合には、おおよそ2層前後の積層数(補完光学部材が1%の補完を行う場合の積層数)が必要となる。
次に、波長板20をλ/4波長板として機能させるためには、上記(1)の特性を満足する基本光学膜BCと3つの補完光学膜SCとに入射する入射光の入射面に対して所定角度回転させる(上記(2)の条件)。
最初に、図4(a)に示されるように、Z軸に直交する複数の直交平面43(XY平面に平行な複数の平面)を設定する。ただし、直交平面43は実際に形成される面ではなく、仮想的な平面である。当該直交平面43に基本光学膜BC(及び3つの補完光学膜SC)が実際に形成されても、入射光の光軸(Z軸)は垂直であるため、入射面は形成されない。従って、如何なる偏光光が入射したとしても、基本光学膜BCと3つの補完光学膜SCとにより、何らの作用も及ぼされることはない。
次に、図4(b)に示されるように、直交平面43をX軸又は(及び)Y軸の軸回りに所定角度(図中ではX軸の軸回りに20度)傾斜した面を仮想的な傾斜平面44とする(つまり、直交平面43の法線をX軸の軸回りに20度傾斜させる)。これにより、傾斜平面44の法線nと入射光の光軸(Z軸)とにより入射面Nが形成される。図4(b)での傾斜角は任意の角度を採用することができ、またX軸及びY軸の軸周りに任意の角度で傾斜させてもよい。
このとき、傾斜平面44はX軸の軸周りに20度傾斜しているために、傾斜平面44上(つまり、傾斜平面44に平行な複数の平面上)に基本光学膜BC(及び3つの補完光学膜SC)が形成されている場合は、X偏光光に対する屈折率とY偏光光に対する屈折率とは異なるため、X偏光光とY偏光光とで光の伝搬速度が異なる。このときに、波長板20に対してX偏光光とY偏光光との2つの偏光成分を有する光が入射すれば、X偏光光とY偏光光との間に所定の位相差を与える位相差板として機能させることができる。
一方で、X偏光光又はY偏光光のうち何れか一方の光が入射した場合には、位相差を与える相手方が存在しないため、位相差を与えることができない。例えば、光学装置としての光ピックアップにおいては、波長板は偏光ビームスプリッタの後段に配置されることが一般的であるが、この場合には、何れか一方の偏光光となっているため、位相差を与える機能を発揮しない。つまり、X偏光光又はY偏光光のうち何れか一方の偏光光が入射したとしても、何らの作用も及ぼさず、そのまま透過する(波長板として機能しない)。
そこで、傾斜平面44に対して入射面NをZ軸の軸回りに回転することにより、入射光の偏光方向は、X偏光のみではなく、X偏光とY偏光とからなる直線偏光となる。つまり、傾斜平面44を基準としてみると、傾斜平面44に入射する光の偏光方向が変化することになる。このとき、入射面Nの回転角度を制御することにより、X偏光光とY偏光光との間に位相差を与えることができ、λ/4波長板として機能させることができる。
ただし、波長板20に入射する光は、あくまでもZ軸を光軸とする光であり、その偏光方向はX偏光光であるため、波長板20に入射する入射光の入射面Nそのものを回転させない。そこで、入射面Nを回転させるのではなく、傾斜平面44を回転した平面を仮想的な回転傾斜平面45とする。つまり、入射面Nを固定したときに、相対的に傾斜平面44を回転することにより、実質的に傾斜平面44に対して入射面Nを回転させることが可能となる。このときの傾斜平面44の回転角度は、傾斜平面44を固定した場合において、入射面Nが所定角度回転された状態となるように行う(本実施例では20度回転している)。
そして、回転傾斜平面45と平行な複数の平面に、実際に基本光学膜BC(及び3つの補完光学膜SC)が形成される。基本光学膜BCに入射した光は、X偏光光を進相軸又は遅相軸とし、Y偏光光を遅相軸又は進相軸として透過し(ここでは、X偏光光が進相軸、Y偏光光が遅相軸とする)、透過後の光はX偏光光とY偏光光との間に位相差が生じることになる。つまり、結晶軸がなくとも進相軸と遅相軸として作用させることができる。このため、基本光学膜BCが単独で波長板20の光学的機能を満足している場合には、進相軸と遅相軸との間に90度の位相差が与えられ、透過光は直線偏光から円偏光に変換される。
ただし、基本光学膜BCは単独で90度の位相差を与えることができないと、透過光を完全に円偏光とすることはできない。例えば、基本光学膜BCが87度の位相差を与える場合には、円偏光に近い楕円偏光になる。そこで、1度の位相差を与える補完光学膜SCを3つ追加し、基本光学膜BCと3つの補完光学膜SCとにより、透過光を完全に円偏光とする。
なお、X偏光光を進相軸又は遅相軸とし、Y偏光光を遅相軸又は進相軸として作用させるためには、入射面Nに対して傾斜平面44が相対的に回転すれば足りる。従って、光源が回転可能であるならば(つまり、光源から射出する光の偏光方向が回転可能であるならば)、傾斜平面44を回転する必要はない。
ここで、傾斜平面44の傾斜角、回転傾斜平面45の回転角は、それほど大きくない。傾斜角、回転角を大きくすると、並列した状態の基本光学膜BCと3つの補完光学膜SCとは、X軸、Y軸、Z軸の3軸に対して大きく広がることになる。そうすると、波長板20全体の形状が非常に大型化する。しかし、傾斜角、回転角が小さい場合には、X偏光光とY偏光光との間に作用される屈折率差がそれほど大きくならず、与える位相差が大きくならない。このため、位相差を大きくするためには、膜層数を多層にする。つまり、傾斜角、回転角の不足分を、膜層数を多層化により補うことになる。
この場合、膜層数が多層化するため、基本光学膜BCの累積誤差も増大し、その結果所定の光学的機能を満たさなくなる。従って、波長板20全体の形状をコンパクトにしつつ(傾斜角、回転角を小さくしつつ)、波長板20の光学的機能を発揮するためには、基本光学膜BCの光学的機能の補完を行う補完光学部材23の役割はさらに重要になる。
以上のように、基本光学膜BCと3つの補完光学膜SCとは、仮想的には回転傾斜平面45上に設定されるが、実際上は図3の透明基板21上に形成される面となる。そこで、以下、仮想的な回転傾斜平面45を実際上の図3の透明基板21としたときの、波長板20を製造するための製造方法について、図5のフローチャートを用いて説明する。
最初に、図6に示されるように、大型の透明基板51を多数用意する。透明基板51の形状は、薄型の平板形状(薄い直方体の形状)をしており、予め両面が研磨されている。大型の透明基板51に対して、補完光学膜SCを形成して補完光学部材53を生成する(ステップT1:補完光学部材生成工程)。また、大型の透明基板51に対して基本光学膜BCを形成して基本光学部材52を生成する(ステップT2:基本光学部材生成工程)。
次に、基本光学部材52の基本光学膜BCが所定の光学的機能を満たしているか否かの検査を行う(ステップT3:検査工程)。このとき、波長板20において基本光学膜BCは光軸に対して傾斜(回転傾斜平面45と平行な方向の傾斜)しているため、検査を行うための光(検査光)は、基本光学膜BCに対して直交する方向から入射させるのではなく、図6に示されるように、波長板20において制御されている角度の斜め方向から入射させて、透過光を検査する。具体的には、X偏光光又はY偏光光の何れか一方の偏光光を検査光として入射させて、透過光の偏光状態を検査する。
図6では、基本光学膜BCを水平状態に置き、検査光を斜め方向から入射させているが、基本光学膜BCが回転傾斜平面45と平行な角度に基本光学部材52を配置し、検査光を垂直方向から入射させることもできる。また、X偏光光及びY偏光光の両方の偏光光を入射させれば、回転傾斜平面45と平行な角度ではなく、傾斜平面44と平行な角度に基本光学膜BCを配置すればよい。
図6では、基本光学部材52に対して直接検査光を入射させているが、実際には、形状調整用透明部材が基本光学部材52に積層されるため、検査光を基本光学部材52に入射させるときには、基本光学部材52を図示しない検査用の2つのガラス部材に挟み込ませた状態で行う(例えば、形状調整用透明基板54、55に相当する2つの検査用のガラス部材に挟み込ませて検査を行う)。
この場合においては、例えば透過光が完全な円偏光とはならず、若干楕円偏光となっており、与えられた位相差が90度ではなく、87度であると認識される。このときには、不足分の補完光学部材53として、1度の位相差を与える補完光学部材53を3つ基本光学部材52に積層して、大型の積層体56を生成する(ステップT4:積層体生成工程)。そして、大型の形状調整用透明部材54、55を最上層、最下層に積層して、図7のような被切断体60を得る(ステップT5:形状調整用透明部材積層工程)。
被切断体60は、大型の部材同士が積層された積層構造となっているため、全体として非常に大型となる。そこで、この被切断体60を、格子状に切断することにより、多数の小型の被研磨体61が得られる(ステップT6:被切断体切断工程)。被切断体60を切断するときには、被研磨体61が立方体(直方体でもよい)の形状となるように切断を行う。ここでは、被研磨体61を多数得るために大型の部材同士を積層させた後に切断を行っているが、被研磨体61と同じサイズの小型の部材同士を積層させれば、被研磨体61と同一の部材を得ることができる。
この後、被研磨体61に対して研磨を行って、最終的に波長板20の形状に整えていくため、被研磨体61は予め波長板20のサイズよりも大きくなるように被切断体60の切断を行う。次に、研磨の方法について説明していく。
図8に示すように、治具90に設けられた傾斜部91の傾斜固定面91Sに被研磨体61を載置して、接着剤等を用いて固定する。図9は、図8を側方から視ている図である。図9において、8つの頂点のうち4つの頂点(傾斜面91Sに当接していない4つの頂点)を61A、61B、61C、61Dとし、残りの4つの頂点を61E、61F、61G、61Hとしたときに、1つの頂点が下流側に向くように被研磨体61を配置する。図8では、頂点61Aが下流側に向くように配置され、頂点61Aと61Dとを結ぶ対角線が傾斜部91の傾斜方向と等しくなるように、頂点61Bと頂点61Cとを結ぶ対角線が傾斜部91の傾斜方向と直交するように、被研磨体61を載置して固定する。
被研磨体61は、6つの面が研磨される。図9では、研磨される1つ目の面VA及び2つ目の面VBについて説明している。面VBは傾斜固定面91Sに当接されている面(頂点61E、61F、61G、61Hを結ぶ面)であり、面VAは面VBの反対面(頂点61A、61B、61C、61Dを結ぶ面)である。まず、1つ目の面VAを研磨するときには、図8及び図9のように被研磨体61を傾斜固定面91Sに固定させた状態で、頂点61Dを境界とした水平面G1の位置まで研磨していく(ステップT7:上面研磨工程)。
次に、傾斜固定面91Sから被研磨体61を剥離して、傾斜固定面91Sを取り外した治具90に、被研磨体61をステップT7のときとは反対にした状態(面VBが上側に向く状態)で固定する。治具90は、図10に示すように、被研磨体61が固定される面が水平状態を維持する水平固定面92として臨んでいる。水平固定面92に被研磨体61を前記の状態で固定して、頂点61Hを境界とした水平面G2の位置まで研磨していく(ステップT8:下面研磨工程)。
次に、治具90から被研磨体61を剥離して、図11のような垂直状態を維持する面(垂直固定面93)を有する治具95の垂直固定面93に、ステップT7の上面研磨工程又はステップT8の下面研磨工程で研磨された2つの面のうち何れか一方の面を垂直固定面93に貼り付けて固定して、4つの側面(被研磨体61のうち面VA及び面VB以外の面:第1の側面VS1、第2の側面VS2、第3の側面VS3、第4の側面VS4とする)を順次研磨していく。図9に示すように、第1の側面VS1と第2の側面VS2とは反対面に位置しており、第3の側面VS3と第4の側面VS4とは反対面に位置している。図9では、第1の側面VS1と第3の側面VS3とが見えており、第2の側面VS及び第4の側面VS4は隠れている状態になっている(隠れている第2の側面VS2及び第4の側面VS4は括弧で示している)。
図11では、第1の側面VS1が上側になるように垂直固定面93に固定した状態で研磨を行う(ステップT9:第1の側面研磨工程)。この研磨は、垂直固定面93と直交する方向、つまり水平面方向に行われる。従って、第1の側面研磨工程で研磨された研磨面とステップT7及びT8で研磨された研磨面とは相互に直交する関係となる。そして、垂直固定面93から被研磨体61を剥離して、図12のように、第1の側面研磨工程で研磨された面が下側になるように、再度固定垂直面93に貼り付け固定して、第2の側面VS2の研磨を行う(ステップT10:第2の側面研磨工程)。この研磨も、垂直固定面93と直交する方向、つまり水平面方向に行われる。同様に、被研磨体61の剥離、垂直固定面93への貼り付け固定を繰り返して、第3の側面VS3の研磨(ステップT11:第3の側面研磨工程)及び第4の側面VS4の研磨(ステップT12:第4の側面研磨工程)を行う。
このとき、ステップT9〜T12の研磨を行うときには、全ての研磨された面が隣接するような研磨を行うようにする。従って、ステップT7〜T12の被研磨体61の研磨により、研磨されて生成された6つの面は全て直交している状態になり、基本光学膜BCと補完光学膜SCとが所定の角度をもった最終的な波長板20を得ることができる。
図9〜図12では、1個の被研磨体61から1個の波長板20を製造する過程を示した。しかし、被切断体60から多数の被研磨体61が生成されるため、多数の被研磨体61が同時に研磨される。例えば、ステップT7の上面研磨を行うときには、図13のように、治具90には複数の傾斜部91を設け、1つの傾斜部91には複数の被研磨体61を貼り付けて固定する。そして、貼り付けられた多数の被研磨体61に対して、同時に上面VAを研磨していく。ステップT8〜T12も同様である。以上のように、多数の被研磨体61を同時に研磨していくことで、多数の波長板20を大量生産することができる。
以上は波長板20をλ/4波長板として機能させる場合について説明したが、波長板20をλ/2波長板として機能させるときは、(1)X偏光光とY偏光光との間に180度の位相差を与える膜構成で設計された基本光学膜BCを用い、(2)基本光学膜BCに入射する入射面に対して基本光学膜BCを相対的に所定角度回転させること、により実現することができる。勿論、上記(1)及び(2)の条件を適宜制御すれば、λ/8波長板その他の任意の波長板を実現することができる。
本実施例では、キューブタイプの波長板20について説明したが、基本光学膜BCと補完光学膜SCとが回転傾斜平面45上に形成されていれば、キューブ以外の形状、例えば直方体の形状等の任意の形状とすることができる。
通常は、フィルムや水晶を用いて結晶軸の作用により波長板の機能が実現されるが、フィルムは熱膨張係数が高いため、高温状態では歪みが発生すること等から耐候性に問題があり、水晶は大型化が困難であることや高価であること等、種々の問題がある。本実施例では、誘電体多層膜である基本光学膜を回転傾斜平面に形成することにより、膜によって波長板を実現することができる。
光学素子の側面図である。 光学素子を製造する工程を示すフローチャートである。 光学素子の斜視図及びX軸、Y軸、Z軸上における基本光学膜を示す図である。 直交平面及び傾斜平面を示す図である。 波長板を製造する工程を示すフローチャートである。 基本光学部材の検査を行うときの説明図である。 被切断体の斜視図である。 治具に被研磨体を固定したときの斜視図である。 被研磨体を傾斜固定面に固定したときの説明図である。 下面の研磨を説明する説明図である。 第1の側面の研磨を説明する説明図である。 第2の側面を説明する説明図である。 複数の被研磨体を複数の治具に固定したときの斜視図である。
符号の説明
10 光学素子 11 透明基板
12 基本光学部材 13 補完光学部材
14、15 形状調整用透明部材 16 積層体
20 波長板 43 直交平面
44 傾斜平面 45 回転傾斜平面
60 被切断体 61 被研磨体
90 治具 91 傾斜部
91S 傾斜固定面 92 水平固定面
93 垂直固定面 95 治具
BC 基本光学膜 SC 補完光学膜

Claims (10)

  1. 所定の光学的機能を発揮する光学素子であって、
    前記光学的機能を発揮するための基本光学膜が透明基板上に形成された基本光学部材と、
    前記基本光学膜の前記光学的機能を発揮するための不足分を補完して、前記光学的機能を発揮させるための補完光学膜が透明基板上に形成された1又は複数の補完光学部材と、を有し、
    前記基本光学部材に前記1又は複数の補完光学部材を貼り付けた構成としたことを特徴とする光学素子。
  2. 請求項1記載の光学素子であって、
    前記基本光学部材に形成された前記基本光学膜と前記1又は複数の補完光学部材に形成された前記補完光学膜とは、平行な状態となるように形成したことを特徴とする光学素子。
  3. 請求項1又は2記載の光学素子であって、
    前記補完光学部材は、前記透明基板に予め定められた微小量の補完を行う単位補完光学膜が形成された単位補完光学部材として構成され、
    前記基本光学膜が前記光学的機能を発揮するための不足分に応じた数の前記単位補完光学部材を前記基本光学部材に貼り合わせて積層したことを特徴とする光学素子。
  4. 請求項1乃至3何れか1項に記載の光学素子であって、
    前記光学素子の最上層又は最下層のうち少なくとも一方には、前記光学素子の形状を整えるための形状調整用透明部材を積層したことを特徴とする光学素子。
  5. 請求項1乃至4何れか1項に記載の光学素子であって、
    前記基本光学膜及び前記補完光学膜は、高屈折率膜と低屈折率膜とを交互に積層した誘電体多層膜であって、
    前記光学素子に入射する光線の光軸と直交する直交平面上に相互に直交するX軸とY軸とを設定したときに、前記基本光学膜と前記1又は複数の補完光学膜とは、前記X軸又は(及び)前記Y軸に対して所定角度傾斜しており、
    前記傾斜した前記基本光学膜と前記1又は複数の補完光学膜とにより、入射光の相互に直交する2つの偏光成分の光の間に所定の位相差を与えることを特徴とする光学素子。
  6. 請求項5記載の光学素子であって、
    前記光軸をZ軸と設定したときに、前記基本光学膜に入射する入射光の入射面、又は前記基本光学膜と前記1若しくは複数の補完光学膜とを前記Z軸周りに所定角度回転させることにより、前記光学素子を波長板として機能させることを特徴とする光学素子。
  7. 請求項6記載の光学素子を有する光ピックアップ。
  8. 光学素子の光学的機能の不足分を補完して、前記光学的機能を発揮させるための補完光学膜が透明基板上に形成されたことを特徴とする補完光学部材。
  9. 入射光に対して光学的機能を発揮する光学素子を製造する光学素子の製造方法であって、
    前記光学的機能の所定の微小量の補完を行う補完光学膜を透明基板上に形成して複数の補完光学部材を生成する補完光学部材生成工程と、
    前記光学的機能を発揮する基本光学膜を透明基板上に形成して基本光学部材を生成する基本光学部材生成工程と、
    生成された前記基本光学部材の前記光学的機能に対する不足分を検査する検査工程と、
    前記不足分に応じた数の前記補完光学部材を、前記基本光学部材に積層して積層体を生成する積層体生成工程と、を有することを特徴とする光学素子の製造方法。
  10. 入射光に対して光学的機能を発揮する光学素子を製造する光学素子の製造方法であって、
    前記光学的機能を発揮する基本光学膜を透明基板上に形成して基本光学部材を生成する基本光学部材生成工程と、
    前記基本光学膜の光学的機能の不足分を検査する検査工程と、
    前記基本光学膜の光学的機能の不足分を補完するための補完光学膜を透明基板上に形成して補完光学部材を生成する補完光学部材生成工程と、
    前記基本光学部材に、前記補完光学部材を積層して積層体を生成する積層体工程と、を有することを特徴とする光学素子の製造方法。
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