JP2008216367A - ネガ型平版印刷版原版 - Google Patents

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Abstract

【課題】低純度アルミニウム原料により形成された支持体を用いた、耐汚れ性、及び耐刷性等の印刷性能に優れるネガ型平版印刷版原版を提供すること。
【解決手段】アルミニウム純度が99.4〜95質量%であるアルミニウム基板上に、該アルミニウム基板表面と直接化学結合しうる反応性基、及び、該アルミニウム基板表面と架橋構造を介して化学結合しうる反応性基のうちの少なくとも1種の反応性基を有する親水性ポリマーが化学結合してなる層と、ネガ型画像形成層と、をこの順に有するネガ型平版印刷版原版。
【選択図】なし

Description

本発明は、ネガ型平版印刷版原版に関する。詳しくは、アルミニウム純度が99.4〜95質量%の安価なアルミニウムを用いてなるネガ型平版印刷版原版に関する。
平版印刷版に用いられる平版印刷版用アルミニウム支持体(以下、単に「平版印刷版用支持体」という。)は、平版印刷版の耐刷性を向上させることなどを目的として、アルミニウム基板に粗面化処理その他の表面処理を施すことにより製造されている。粗面化処理の方法としては、例えば、機械的粗面化処理、電気化学的粗面化処理(以下「電解粗面化処理」ともいう。)、化学的粗面化処理(化学的エッチング)、更に、これらの粗面化処理を組み合わせた方法が知られている。
平版印刷版原版では、支持体表面に形成される画像形成層の組成や、支持体と画像形成層との密着性が耐刷性に大きな影響を与え、この観点からも、粗面化の状態を制御することで画像形成層との密着性を向上させる技術が一般に採用されている。
中でも、機械的粗面化処理により比較的大きな凹凸と、それに引き続き行われる電気化学的粗面化処理によるより小さな凹凸を形成することで、画像形成層の密着性、耐刷性やアルミニウム支持体表面の親水性向上を図る技術が有用である。
機械的粗面化処理としては、回転するナイロンブラシとアルミニウム板との間に研磨剤のスラリーを吹き付ける方法が一般的に知られている。また、電解粗面化処理としては塩酸又は硝酸電解液中で交流又は直流により行う方法が知られている。
また、平版印刷版用支持体としては、粗面化処理が容易であることから、純アルミニウム基板或いは、アルミニウム純度が99.5%以上で、微量の異元素(例えば、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタンなど)を含む合金板が一般に使用されている。このように、従来の技術においては、高純度のアルミニウム材を平版印刷版用支持体の原料として用いるのが一般的であった。
一方、使用済みアルミニウム飲料缶を原料とするアルミニウム地金(Used Beverage Can、以下、UBCともいう)などの、アルミニウム純度が95〜99.4質量%のアルミニウム材が、安価な材料として知られている。このUBC材は、平版印刷版用支持体として使用することが可能であれば、安価に製品を製造できる可能性を有していると共に、リサイクル性が高いことから環境に対する負荷が低減できる材料である。
このことから、UCBアルミニウム基板に、特定の表面処理をして平版印刷版原版用の支持体を製造する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。この方法では、ナイロンブラシと研磨材による機械的粗面化処理を実施しているが、混在する不純物の影響によって電解粗面化の処理性が低下し、平版印刷版用支持体として用いるのに適した表面が得られない場合があり、従来のアルミニウム基板と比べて刷版としての性能が劣るなどの課題があった。
また、更に電気化学的粗面化を実施した場合、不純物金属の偏在する箇所において、該不純物とアルミニウムとの合金部分が剥離して開口部ができ、微細で均一な粗面化を行うことが困難であった。
また、支持体表面の親水性向上に関しては、例えば、基板表面に親水性グラフト鎖を有し、かつ、Si、Ti,Zr,Alから選択される金属アルコキシドの加水分解、重縮合により形成された架橋構造を含有することを特徴とする平版印刷版用支持体が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。該特許文献2によれば、JIS 1050の高純度アルミニウムを支持体とした場合に、表面親水化に有効であると記載されている。このような表面処理技術は、均質性の高いアルミニウム基板についてのみ検討されてきており、UBCのような低純度アルミニウム基板を適用して平版印刷版原版用の支持体を製造する態様、及びその効果について従来は全く知られていないことから、低純度アルミニウム中に含まれる不純物の影響について従来の技術から予想することは困難である。
なお、上記のようにして表面が親水化された支持体上に、架橋性基を有するポリウレタン系バインダーポリマーを含有する画像形成層を少なくとも有するネガ型平版印刷版原版を作製した例についても、従来は知られていない。
近年、近赤外から赤外域に発光波長を有するレーザを光源とし、ディジタルデータから直接製版を行うダイレクト刷版用のネガ型平版印刷版原版が広く用いられている。このような走査露光可能なネガ型平版印刷版原版として、親水性基板上に、光重合開始剤、付加重合可能なエチレン性不飽和化合物、及びアルカリ現像液に可溶な特定構造の繰り返し単位を有するバインダーポリマーを含有する光重合型の画像形成層、並びに必要に応じて酸素遮断性の保護層を設けたものが提案されている(例えば、特許文献3参照)。
また、製版工程における生産性の向上を目的として、親水性基板上に、光重合型の画像形成層と、無機質の層状化合物を添加した酸素遮断性の保護層と、を設けたネガ型平版印刷版原版も提案されている(例えば、特許文献4参照)。
このような赤外線レーザ用ネガ型平版印刷版原版を、低純度アルミニウム基板を用いて作製した例については、従来は知られていない。
特開2003−39846号公報 特開2003−127561号公報 特開2004−318053号公報 特開平11−38633号公報
本発明者らの検討によれば、特に、低純度アルミニウム基板を用いた支持体上に、赤外線吸収剤と、ラジカル発生剤(ラジカル重合開始剤)と、発生したラジカルにより重合反応を起こして硬化するラジカル重合性化合物と、を含有し、好ましくはバインダーポリマーを含有する画像形成層を有する高性能のネガ型平版印刷版原版を作製した場合においては、支持体表面の粗面化の不良や合金の剥離による不均一性によって、従来の高純度アルミニウム基板を用いた場合に比較して、耐刷性や非画像部の耐汚れ性などの性能が劣るなどの課題があった。
そこで、上記課題を考慮した本発明の目的は、低純度アルミニウム原料により形成された支持体を用いた、耐汚れ性、及び耐刷性等の印刷性能に優れるネガ型平版印刷版原版を提供することにある。
本発明者らが鋭意研究した結果、アルミニウム純度が99.4〜95質量%であるアルミニウム基板上に、特定の反応性基を有する親水性ポリマーが化学結合してなる中間層を形成することで、上記目的を達成できることを新たに見出し、本発明を成すに至った。
すなわち、本発明のネガ型平版印刷版原版は、アルミニウム純度が99.4〜95質量%であるアルミニウム基板上に、該アルミニウム基板表面と直接化学結合しうる反応性基、及び、該アルミニウム基板表面と架橋構造を介して化学結合しうる反応性基のうちの少なくとも1種の反応性基を有する親水性ポリマーが前記アルミニウム基板表面に化学結合してなる層と、ネガ型画像形成層と、をこの順に有することを特徴とする。
また、本発明におけるネガ型画像形成層が、架橋性基を有するポリウレタン樹脂を含有することが好ましい態様である。
本発明では、アルミニウム基板表面と架橋構造を介して化学結合しうる反応性基における架橋構造が、Si、Ti、Zr、Alから選択される元素を含むアルコキシド化合物の加水分解、及び縮重合により形成されたものであることが好ましい。
また、本発明における親水性ポリマーが、下記一般式(1)中の構造単位(i)及び構造単位(ii)を含むことが好ましい。
Figure 2008216367
上記一般式(1)は、構造単位(ii)で表されるポリマーユニットの末端に、構造単位(i)で表されるシランカップリング基を有する高分子化合物である。一般式(1)中、R、R、R、及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜30の置換基を表し、mは0、1又は2を表し、L、及びLは、それぞれ独立に、単結合又は有機連結基を表し、Yは炭素数1〜30の置換基を表す。
本発明における親水性ポリマーが、下記一般式(2)中の構造単位(iii)及び構造単位(iv)を含むことが好ましい。
Figure 2008216367
上記一般式(2)中、R、R、R、R、R、及びR10は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜30の置換基を表し、nは0、1又は2を表し、L、及びLは、それぞれ独立に、単結合又は有機連結基を表し、Yは炭素数1〜30の置換基を表す。
なお、一般式(2)において、Lが単結合であり、且つ、Yが−CONHであることがより好ましい態様である。
本発明のネガ型平版印刷版原版において、アルミニウム基板が、Fe:0.3〜1質量%、Si:0.15〜1質量%、Cu:0.1〜1質量%、Mg:0.1〜1.5質量%、Mn:0.1〜1.5質量%、Zn:0.1〜1.5質量%、Cr:0.01〜0.1質量%、Ti:0.01〜0.5質量%、Al:99.4〜95質量%から構成される組成であることが好ましく、更に、アルミニウム基板表面がシリケート処理されている物であることがより好ましい。
また、本発明のネガ型平版印刷版原版において、ネガ型画像形成層が、赤外線レーザで記録可能なことが好ましく、赤外線吸収剤を含有することがより好ましい。
本発明によれば、低純度アルミニウム原料により形成された支持体を用いた場合であっても、耐汚れ性、及び耐刷性等の印刷性能に優れるネガ型平版印刷版原版を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明のネガ型平版印刷版原版は、アルミニウム純度が99.4〜95質量%であるアルミニウム基板(以下、単に「基板」と称する場合がある。)上に、該アルミニウム基板表面と直接化学結合しうる反応性基、及び、該アルミニウム基板表面と架橋構造を介して化学結合しうる反応性基のうちの少なくとも1種の反応性基を有する親水性ポリマーが前記アルミニウム基板表面に化学結合してなる層(以下、「中間層」と称する場合がある。)と、ネガ型画像形成層と、をこの順に有することを特徴とする。
ここで、基板と中間層とネガ型画像形成層とをこの順に有するとは、基板上にこれらの層がこの順で積層されていることを意味し、必要に応じて設けられる層、例えば、バックコート層、下塗り層、オーバーコート層などの公知の層の存在を否定するものではない。
以下、本発明の平版印刷版原版を構成する基板、中間層、及びネガ型画像形成層について順次説明する。
<アルミニウム純度が99.4〜95質量%であるアルミニウム基板>
本発明の平版印刷版原版においては、支持体として、アルミニウム純度(含有量)が99.4〜95質量%であるアルミニウム基板を用いることを特徴とする。このような基板は、寸度的に安定なアルミニウムを主成分とする合金板である。
本発明においては、使用済みアルミニウム飲料缶を溶解させたUBC(Used Beverage Can:使用済み飲料缶)地金を圧延して得られるアルミニウム材、或いは、UBC地金と他のアルミニウム地金とを任意の割合で混合して調整した材料を好適に用いることができる。
一般に、アルミニウム基板に含まれてもよい異元素には、例えば、ケイ素、鉄、銅、チタン、ガリウム、バナジウム、亜鉛、クロム、ジルコニウム、バリウム、コバルト等があり、合金中の異元素の含有量は5質量%以下である。
また、アルミニウム基板に含まれる不可避不純物としては、例えば、鉛、ニッケル、スズ、インジウム、ホウ素等が挙げられる。
本発明におけるアルミニウム基板としては、アルミニウムの他に含まれる元素とその含有量について述べれば、好ましくは、Fe:0.3〜1質量%、Si:0.15〜1質量%、Cu:0.1〜1質量%、Mg:0.1〜1.5質量%、Mn:0.1〜1.5質量%、Zn:0.1〜1.5質量%、Cr:0.01〜0.1質量%、Ti:0.01〜0.5質量%であり、更に好ましくは、Fe:0.30超〜0.70質量%、Si:0.20〜0.50質量%、Cu:0.10〜0.50質量%、Ti:0.02〜0.3質量%、Mg:0.50〜1.5質量%、Mn:0.1〜1.3質量%であり、Cr:0.01〜0.08質量%、Zn:0.1〜1.3質量%であって、残部がアルミニウム(含有量は95〜99.4質量%の範囲)と不可避不純物とからなるものが用いられる。
特に好ましくは、Fe:0.40超〜0.50質量%、Si:0.25超〜0.30質量%、Cu:0.10〜0.15質量%、Ti:0.02〜0.05質量%、Mg:0.80〜1.5質量%、Mn:0.10〜1.00質量%であり、Cr:0.01〜0.05質量%、Zn:0.1〜0.3質量%、残部がAl含有量95〜99.4質量%と不可避不純物とからなるアルミニウム材が用いられる。
なお、これらの好ましい態様においても、アルミニウム基板に含まれるAl以外の元素であるFe、Si、Cu、Mg、Mn、Zn、Cr、Ti、及び、不可避不純物の総量は、5質量%以下であることは言うまでもない。
アルミニウム基板中の異元素は、電気化学的粗面化処理において生成するピットの均一性に大きく影響し、耐刷性、耐汚れ性及び露光安定性を高い水準でバランスよく実現することができる均一なピットを生成させるためには、異元素の種類、添加量等の高度な調整が必要である。本発明によれば、異元素の含有量が多いアルミニウム基板を使用した場合においても、後述する中間層を、基板とネガ型画像形成層との間に位置させることで、良好な印刷性能を与える優れた平版印刷版原版を作成することが可能である。
以下に、本発明におけるアルミニウム基板に含まれていてもよい異元素の好ましい含有量と、基板を作製する際の影響について詳細に説明する。
Feは、新地金においても0.1〜0.2質量%前後含有される元素で、アルミニウム中に固溶する量は少なく、ほとんどが金属間化合物として残存する。Feは、アルミニウム板の機械的強度を高める作用があるが、1質量%より多いと圧延途中に割れが発生しやすくなり、また、Fe含有量が0.15質量%未満では、機械的強度が保てなくなり、これにより圧延途中で得率低下等の問題が生じる場合がある。
本発明においては、Fe含有量は、0.3〜1質量%である。好ましくは、0.30超〜0.70質量%、より好ましくは、0.30超〜0.50質量%である。
Siは、新地金においても0.02〜0.1質量%前後含有される元素である。Siはアルミニウム中に固溶した状態で、又は、金属間化合物若しくは単独の析出物として存在する。また、平版印刷版用支持体の製造過程で加熱されると、固溶していたSiが単体iとして析出することがある。本発明者らの知見によれば、単体Siが過剰の場合、固溶していたSiが単体Siとして析出しやすく耐苛酷インキ汚れ性が低下する場合がある。
また、Si含有量は、アルミニウム板の電気化学的粗面化に影響を及ぼし、0.03質量%未満では、電気化学的粗面化処理においてピットが溶解し均一な表面構造とならない場合がある。
本発明においては、Si含有量は、0.15〜1質量%である。好ましくは0.20〜0.50質量%、より好ましくは、0.20超〜0.40質量%である。
CuはJIS2000系、4000系材料のスクラップに多く含まれる元素であり、比較的Al中に固溶しやすい。
Cuの含有量は、電気化学的粗面化処理に大きく影響する。特に、硝酸を含有する電解液中での交流を用いた電気化学的粗面化処理(以下、単に「硝酸交流電解」という。)では、Cuの含有量が0.0001質量%より少ないと電解の温度変動に対してラチチュードが狭くなる場合がある。
Cuの含有量は、0.1〜1質量%である。好ましくは、0.10〜0.50質量%より好ましくは、0.10〜0.30質量%である。
Tiは通常結晶微細化材として0.005〜0.04質量%添加される元素である。JIS5000系、6000系、7000系のスクラップには不純物金属として比較的多めに含まれる。Tiの含有量は、結晶微細化の程度(アルミニウム板の結晶粒の大きさの程度)及び電気化学的粗面化に影響する。Tiの含有量が0.0010質量%より少ないと結晶微細化の効果がみられない場合がある。
Tiの含有量は0.01〜0.5質量%である。好ましくは、0.02〜0.3質量%、より好ましくは、0.02〜0.05質量%である。
Mgの含有量は、電気化学的粗面化処理に影響する。Mgの含有量が0.0001質量%より少ないと硝酸交流電解において未エッチ部が生じやすい。
Mgの含有量は0.1〜1.5質量%である。好ましくは、0.30〜1.5質量%、より好ましくは、0.50〜1.35質量%である。
Mnの含有量は、電気化学的粗面化処理に影響する。Mnの含有量が0.0001質量%より少ないと塩酸交流電解において未エッチ部が生じやすい。
Mnの含有量は0.1〜1.5質量%である。好ましくは、0.30〜1.40質量%、より好ましくは、0.50〜1.30質量%である。
Cr及びZnは、それぞれ0.00005質量%以上の添加で、耐苛酷インキ汚れを向上させる効果を示し、電解粗面化処理後にアルミニウム溶解量が少ないアルカリエッチング処理を行う場合、そのアルカリエッチング処理後の表面構造に影響を与える。即ち、これらは、極小エッチングでの微細構造に影響する。CrはJISA5000系、6000系、7000系のスクラップに少量含まれる異元素である。
また、これらの含有量が多すぎると、効果が飽和し、かつ、コスト的に不利になるので好ましくない。本発明においては、Cr含有量は0.01〜0.1質量%であり、好ましくは、0.01〜0.08質量%、より好ましくは、Cr含有量が0.01〜0.05質量%である。
Zn含有量は0.1〜1.5質量%である。好ましくは、0.1〜1.3質量%、より好ましくは、0.1〜0.3質量%である。
アルミニウム合金を板材とするには、例えば、下記の方法を採用することができる。
まず、所定の合金成分含有量に調整したアルミニウム合金溶湯に、常法に従い、清浄化処理を行い、鋳造する。清浄化処理には、溶湯中の水素等の不要ガスを除去するために、フラックス処理、アルゴンガス、塩素ガス等を用いる脱ガス処理、セラミックチューブフィルタ、セラミックフォームフィルタ等のいわゆるリジッドメディアフィルタや、アルミナフレーク、アルミナボール等をろ材とするフィルタや、グラスクロスフィルタ等を用いるフィルタリング処理、或いは、脱ガス処理とフィルタリング処理を組み合わせた処理が行われる。
これらの清浄化処理は、溶湯中の非金属介在物、酸化物等の異物による欠陥や、溶湯に溶け込んだガスによる欠陥を防ぐために実施されることが好ましい。溶湯のフィルタリングに関しては、特開平6−57432号、特開平3−162530号、特開平5−140659号、特開平4−231425号、特開平4−276031号、特開平5−311261号、特開平6−136466号の各公報等に記載されている。また、溶湯の脱ガスに関しては、特開平5−51659号公報、実開平5−49148号公報等に記載されている。本願出願人も、特開平7−40017号公報において、溶湯の脱ガスに関する技術を提案している。
次いで、上述したように清浄化処理を施された溶湯を用いて鋳造を行う。鋳造方法に関しては、DC鋳造法に代表される固体鋳型を用いる方法と、連続鋳造法に代表される駆動鋳型を用いる方法がある。
DC鋳造においては、冷却速度が0.5〜30℃/秒の範囲で凝固する。1℃未満であると粗大な金属間化合物が多数形成されることがある。DC鋳造を行った場合、板厚300〜800mmの鋳塊を製造することができる。その鋳塊を、常法に従い、必要に応じて面削を行い、通常、表層の1〜30mm、好ましくは1〜10mmを切削する。その前後において、必要に応じて、均熱化処理を行う。均熱化処理を行う場合、金属間化合物が粗大化しないように、450〜620℃で1〜48時間の熱処理を行う。熱処理が1時間より短い場合には、均熱化処理の効果が不十分となることがある。なお、均熱処理を行わない場合には、コストを低減させることができるという利点がある。
その後、熱間圧延、冷間圧延を行ってアルミニウム板の圧延板とする。熱間圧延の開始温度は350〜500℃が適当である。熱間圧延の前若しくは後、又はその途中において、中間焼鈍処理を行ってもよい。中間焼鈍処理の条件は、バッチ式焼鈍炉を用いて280〜600℃で2〜20時間、好ましくは350〜500℃で2〜10時間加熱するか、連続焼鈍炉を用いて400〜600℃で6分以下、好ましくは450〜550℃で2分以下加熱するかである。連続焼鈍炉を用いて10〜200℃/秒の昇温速度で加熱して、結晶組織を細かくすることもできる。
以上の工程によって、所定の厚さ、例えば、0.1〜0.5mmに仕上げられたアルミニウム板は、更に、ローラレベラ、テンションレベラ等の矯正装置によって平面性を改善してもよい。平面性の改善は、アルミニウム板をシート状にカットした後に行ってもよいが、生産性を向上させるためには、連続したコイルの状態で行うことが好ましい。また、所定の板幅に加工するため、スリッタラインを通してもよい。また、アルミニウム板同士の摩擦による傷の発生を防止するために、アルミニウム板の表面に薄い油膜を設けてもよい。
油膜には、必要に応じて、揮発性のものや、不揮発性のものが適宜用いられる。
本発明に用いられるアルミニウム板は、JISに規定されるH18の調質が行われているのが好ましい。
このようにして製造されるアルミニウム板には、以下に述べる種々の特性が望まれる。
アルミニウム板の強度は、平版印刷版用支持体として必要な腰の強さを得るため、0.2%耐力が120MPa以上であるのが好ましい。また、バーニング処理を行った場合にもある程度の腰の強さを得るためには、270℃で3〜10分間加熱処理した後の0.2%耐力が80MPa以上であるのが好ましく、100MPa以上であるのがより好ましい。なお、この0.2%耐力については、理化学事典第4版(岩波書店)、743ページに記載されており、汎用の引っ張り試験機を用いることにより測定することができる。
特に、アルミニウム板に腰の強さを求める場合は、MgやMnを添加したアルミニウム材料を採用することができるが、腰を強くすると印刷機の版胴へのフィットし易さが異なってくるため、用途に応じて、材質及び微量成分の添加量が適宜選択される。
また、アルミニウム板は、引張強度が140〜300N/mm、JIS Z2241及びZ2201に規定される伸びが1〜10%であるのがより好ましい。
アルミニウム板の結晶組織は、化学的粗面化処理や電気化学的粗面化処理を行った場合、アルミニウム板の表面の結晶組織が面質不良の発生の原因となることがあるので、表面においてあまり粗大でないことが好ましい。アルミニウム板の表面の結晶組織は、幅が200μm以下であるのが好ましく、100μm以下であるのがより好ましく、50μm以下であるのが更に好ましく、また、結晶組織の長さが、5000μm以下であるのが好ましく、1000μm以下であるのがより好ましく、500μm以下であるのが更に好ましい。
このようにして得られたアルミニウム板は、平版印刷版用支持体として用いるために、必要に応じて、粗面化処理、陽極酸化処理、シリケート処理などの表面処理を行なってもよい。このような表面処理について簡単に説明する。
(粗面化処理)
アルミニウム板を粗面化するに先立ち、所望により、表面の圧延油を除去するための例えば界面活性剤、有機溶剤又はアルカリ性水溶液などによる脱脂処理が行われる。
アルミニウム板の表面の粗面化処理は、種々の方法により行われるが、例えば、機械的に粗面化する方法、電気化学的に表面を溶解粗面化する方法及び化学的に表面を選択溶解させる方法により行われる。機械的方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法、バフ研磨法などの公知の方法を用いることができる。また、電気化学的な粗面化法としては塩酸又は硝酸電解液中で交流又は直流により行う方法がある。また、特開昭54−63902号公報に開示されているように両者を組み合わせた方法も利用することができる。
アルミニウム純度が低いアルミニウム板においては、良好で且つ均一な粗面化を達成するという観点から、機械的に粗面化する方法、電気化学的に表面を溶解粗面化する方法及び化学的に表面を選択溶解させる方法の一部又は全部を施すことが困難である場合があるが、その場合であっても、本発明において後述する特定親水性ポリマーを用いてなる中間層を形成することで、表面親水性、及びネガ型画像形成層との密着性が良好な平版印刷版用支持体を得ることが可能である。
本発明では、上述のように、特に、前記粗面化処理の全てを行わなくても、良好な表面性状を有する支持体を得られることから、電気化学的粗面化処理を行わずに支持体を作製することが、コスト面、設備面などから好ましい。即ち、本発明においては、電気化学的粗面化処理を行うことなく、耐刷性・現像性などの印刷適性を保つことができる平版印刷版用支持体を提供することができる。
(陽極酸化処理)
このように粗面化されたアルミニウム板は、必要に応じて、アルカリエッチング処理及び中和処理された後、所望により表面の保水性や耐摩耗性を高めるために陽極酸化処理が施される。アルミニウム板の陽極酸化処理に用いられる電解質としては、多孔質酸化皮膜を形成する種々の電解質の使用が可能で、一般的には硫酸、リン酸、蓚酸、クロム酸或いはそれらの混酸が用いられる。それらの電解質の濃度は電解質の種類によって適宜決められる。
陽極酸化の処理条件は用いる電解質により種々変わるので一概に特定し得ないが、一般的には電解質の濃度が1〜80質量%溶液、液温は5〜70℃、電流密度5〜60A/dm、電圧1〜100V、電解時間10秒〜5分の範囲であれば適当である。形成された陽極酸化皮膜の量が1.0g/mより少ないと耐刷性が不十分であったり、平版印刷版の非画像部に傷が付き易くなって、印刷時に傷の部分にインキが付着するいわゆる「傷汚れ」が生じ易くなる。
(シリケート処理)
また、本発明においては、上記のように処理されたアルミニウム板表面に、シリケート処理を施すことが、中間層との密着強度向上の観点から好ましい。
シリケート処理を施す方法としては、特に制限はなく、従来公知の方法を任意に使用することができるが、例えば、アルカリ金属ケイ酸塩を溶解した水溶液に、上記アルミニウム基板を浸漬する方法などが挙げられる。
この場合のアルカリ金属ケイ酸塩水溶液の濃度は、1〜30質量%程度が好ましく、2〜15質量%程度がより好ましい。また、該水溶液のpHは、25℃でpH10〜13程度が好ましい。本発明に係るシリケート処理は、このような水溶液を15〜80℃、好ましくは15〜50℃に保ち、上記のアルミニウム板を0.5〜120秒間、好ましくは5〜60秒間、該水溶液に浸漬することにより実施される。
シリケート処理に用いられるアルカリ金属ケイ酸塩としては、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウムなどが使用される。
また、上記アルカリ金属ケイ酸塩水溶液には、該水溶液のpHを高くするために、水酸化物を添加してもよい。そのような水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどが挙げられる。このような水酸化物の添加量は、該水溶液中0.01〜10質量%程度が好ましく、0.05〜5.0質量%程度がより好ましい。
更に、上記アルカリ金属ケイ酸塩水溶液には、アルカリ土類金属塩若しくは第IVB族金属塩を添加してもよい。そのようなアルカリ土類金属塩としては、硝酸カルシウム、硝酸ストロンチウム、硝酸マグネシウム、硝酸バリウムのような硝酸塩や、硫酸塩、塩酸塩、リン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、ホウ酸塩などの水溶性の塩が挙げられる。第IVB族金属塩としては、四塩化チタン、三塩化チタン、フッ化チタンカリウム、シュウ酸チタンカリウム、硫酸チタン、四ヨウ化チタン、塩化酸化ジルコニウム、二酸化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、四塩化ジルコニウムなどを挙げることができる。このようなアルカリ土類金属塩若しくは第IVB族金属塩は、単独又は2種以上組み合わせて使用することができる。金属塩の添加量は、該水溶液中0.01〜10質量%程度がこのましく、0.05〜5.0質量%程度がより好ましい。
また、シリケート処理の別の方法としては、米国特許第3,658,662号明細書に記載されているようなシリケート電着も有効である。
更に、本発明においては、特公昭46−27481号、特開昭52−58602号、特開昭52−30503号に開示されているような電解グレインを施したアルミニウム板と、上記陽極酸化処理及びシリケートによる親水化処理を組合せた表面処理なども適用可能である。
このようなシリケート処理によって得られた金属ケイ酸塩皮膜はSi元素量として2〜40mg/m、より好ましくは4〜30mg/mで形成される。皮膜量はケイ光X線分析法により測定することができる。
本発明で用いられるアルミニウム基板の厚みは、およそ0.1mm〜0.6mm程度、好ましくは0.15mm〜0.4mm、特に好ましくは0.2mm〜0.3mmである。
<中間層>
本発明においては、前記アルミニウム基板上に、該アルミニウム基板表面と直接化学結合しうる反応性基、及び、アルミニウム基板表面と架橋構造を介して化学結合しうる反応性基のうちの少なくとも1種の反応性基を有する親水性ポリマーが化学結合してなる層(中間層)を備えることを特徴とする。
つまり、本発明における中間層は、アルミニウム基板と結合しうる反応性基を有する親水性ポリマー(以下、「特定親水性ポリマー」と称する場合がある。)を用いて構成される。
以下、この特定親水性ポリマーについて説明する。
〔特定親水性ポリマー〕
本発明の中間層は、アルミニウム基板上に、親水性ポリマーが化学結合することにより形成される。
ここで、アルミニウム基板表面と直接化学結合しうる反応性基としては、アルミニウム基板表面に存在する−Al3+或いは−OH等の官能基と化学結合可能な官能基、例えば、例えば、ヒドロキシシリル基、アルコキシシリル基、アリールオキシシリル基、ハロシリル基(クロロシリル基など)、アミノシリル基のような官能基が挙げられる。
アルミニウム基板表面と架橋構造を介して化学結合しうる反応性基としては、例えば、例えば、ヒドロキシシリル基、アルコキシシリル基、アリールオキシシリル基、ハロシリル基(クロロシリル基など)、アミノシリル基、水酸基、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、ビニル基のような官能基が挙げられる。
このような反応性基は、親水性ポリマーの鎖状構造の末端、側鎖のいずれにあってもよいが、高保水性の観点からは末端に位置するほうが好ましく、膜強度の点からは側鎖にある方が好ましく、これらから適宜選択又は組み合わせればよい。
本発明において、架橋構造を形成するためには、後述するゾルゲル架橋構造や、ビニル重合性基、エポキシ重合性基、オキセタン重合性基の如き構造を用いればよい。また、これらのうち、架橋構造を介して支持体表面に化学結合する親水性層の好適、且つ、具体的な態様としては、親水性層が、Si、Ti、Zr、Alから選択される元素を含むアルコキシド化合物の加水分解、縮重合により形成された架橋構造を有する態様が挙げられる。
また、親水性ポリマーは、その分子内に少なくとも親水性を有するか、或いは、親水性を発現しうる部分構造を有する極性基などを有することを要する。
本発明において中間層の形成に用いられる親水性ポリマーの一例として、下記一般式(1)に記載の構造単位(i)及び構造単位(ii)を含有する親水性ポリマーが挙げられる。以下、この親水性ポリマーを、「特定親水性ポリマー(1)」と称することがある。
Figure 2008216367
一般式(1)で表される構造単位を含む親水性ポリマー(特定親水性ポリマー(1))について説明する。
本発明に用いうる特定親水性ポリマー(1)は、一般式(1)における、構造単位(ii)で表される繰返し単位が複数結合してなる構造の末端の少なくとも一方に、構造単位(i)で表されるシランカップリング基を有する高分子化合物である。
ここで、特定親水性ポリマー(1)を構成する構造単位(ii)で表される繰り返し単位は、一種類でも二種類以上でもよい。また、特定親水性ポリマー(1)は、構造単位(ii)で表される繰り返し単位以外の共重合成分を含むものであってもよい。
一般式(1)において、R、R、R、及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜30の置換基を表す。中でも、好ましくは、炭素数1〜20の置換基であり、更に好ましくは、炭素数1〜15の置換基であり、特に好ましくは炭素数1〜8の置換基である。
、R、R、Rとしては、より具体的には、直鎖、分岐又は環状のアルキル基、アリール基、ヘテロ環基などが挙げられる。
アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基等が挙げられる。
また、アリール基としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基などが挙げられる。
更に、ヘテロ環基としては、フラニル基、チオフェニル基、ピリジニル基などが挙げられる。
これらの基は更に置換基を有していてもよい。置換基としては、水素を除く一価の非金属原子団が用いられる。好ましい例としては、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルジチオ基、アリールジチオ基、アミノ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、Ν−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイルオキシ基、N,N−ジアルキルカルバモイルオキシ基、N,N−ジアリールカルバモイルオキシ基、N−アルキル−N−アリールカルバモイルオキシ基、アルキルスルホキシ基、アリールスルホキシ基、アシルチオ基、アシルアミノ基、N−アルキルアシルアミノ基、N−アリールアシルアミノ基、ウレイド基、N’−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアルキルウレイド基、N’−アリールウレイド基、N’,N’−ジアリールウレイド基、N’−アルキル−N’−アリールウレイド基、N−アルキルウレイド基、N−アリールウレイド基、N’−アルキル−N−アルキルウレイド基、N’−アルキル−N−アリールウレイド基、N’,N’−ジアルキル−N−アルキルウレイト基、N’,N’−ジアルキル−N−アリールウレイド基、N’−アリール−Ν−アルキルウレイド基、N’−アリール−N−アリールウレイド基、N’,N’−ジアリール−N−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアリール−N−アリールウレイド基、N’−アルキル−N’−アリール−N−アルキルウレイド基、N’−アルキル−N’−アリール−N−アリールウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N,N−ジアリールカルバモイル基、
N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホ基(−SOH)及びその共役塩基基(以下、スルホナト基と称す)、アルコキシスルホニル基、アリーロキシスルホニル基、スルフィナモイル基、N−アルキルスルフィナモイル基、N,N−ジアルキルスルフィナモイル基、N−アリールスルフィナモイル基、N,N−ジアリールスルフィナモイル基、N−アルキル−N−アリールスルフィナモイル基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N,N−ジアリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基ホスフォノ基(−PO)及びその共役塩基基(以下、ホスフォナト基と称す)、ジアルキルホスフォノ基(−PO(alkyl))、ジアリールホスフォノ基(−PO(aryl))、アルキルアリールホスフォノ基(−PO(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスフォノ基(−POH(alkyl))及びその共役塩基基(以後、アルキルホスフォナト基と称す)、モノアリールホスフォノ基(−POH(aryl))及びその共役塩基基(以後、アリールホスフォナト基と称す)、ホスフォノオキシ基(−OPO)及びその共役塩基基(以後、ホスフォナトオキシ基と称す)、ジアルキルホスフォノオキシ基(−OPO(alkyl))、ジアリールホスフォノオキシ基(−OPO(aryl))、アルキルアリールホスフォノオキシ基(−OPO(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスフォノオキシ基(−OPOH(alkyl))及びその共役塩基基(以後、アルキルホスフォナトオキシ基と称す)、モノアリールホスフォノオキシ基(−OPOH(aryl))及びその共役塩基基(以後、アリールフォスホナトオキシ基と称す)、モルホリノ基、シアノ基、ニトロ基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基が挙げられる。
、R、R、Rとして、効果及び入手容易性の観点から、特に好ましい例としては、水素原子、メチル基、又はエチル基を挙げることができる。
一般式(1)において、L及びLは、それぞれ独立に、単結合又は有機連結基を表す。ここで、有機連結基とは、非金属原子からなる多価の連結基を示し、具体的には、1個から60個までの炭素原子、0個から10個までの窒素原子、0個から50個までの酸素原子、1個から100個までの水素原子、及び0個から20個までの硫黄原子から成り立つものである。より具体的な有機連結基としては下記の構造単位又はこれらが組合わされて構成されるものを挙げることができる。
Figure 2008216367
として、特に好ましい構造としては、−(CH−S−が挙げられる。ここで、nは、好ましくは1〜8、更に好ましくは1〜5、特に好ましくは2〜4の整数である。
として、特に好ましい構造としては、単結合や以下に示すものが挙げられる。
Figure 2008216367
一般式(1)において、Yは炭素数0〜30の置換基を表す。置換基の例としては、直鎖、分岐又は環状のアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロ環基、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルジチオ基、アリールジチオ基、アミノ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、Ν−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイルオキシ基、N,N−ジアルキルカルバモイルオキシ基、N,N−ジアリールカルバモイルオキシ基、N−アルキル−N−アリールカルバモイルオキシ基、アルキルスルホキシ基、アリールスルホキシ基、アシルチオ基、アシルアミノ基、N−アルキルアシルアミノ基、N−アリールアシルアミノ基、ウレイド基、N’−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアルキルウレイド基、N’−アリールウレイド基、N’,N’−ジアリールウレイド基、N’−アルキル−N’−アリールウレイド基、N−アルキルウレイド基、N−アリールウレイド基、N’−アルキル−N−アルキルウレイド基、N’−アルキル−N−アリールウレイド基、N’,N’−ジアルキル−N−アルキルウレイト基、
N’,N’−ジアルキル−N−アリールウレイド基、N’−アリール−Ν−アルキルウレイド基、N’−アリール−N−アリールウレイド基、N’,N’−ジアリール−N−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアリール−N−アリールウレイド基、N’−アルキル−N’−アリール−N−アルキルウレイド基、N’−アルキル−N’−アリール−N−アリールウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N,N−ジアリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホ基(−SOH)及びその共役塩基基(以下、スルホナト基と称す)、アルコキシスルホニル基、アリーロキシスルホニル基、スルフィナモイル基、N−アルキルスルフィナモイル基、N,N−ジアルキルスルフィナモイル基、N−アリールスルフィナモイル基、N,N−ジアリールスルフィナモイル基、N−アルキル−N−アリールスルフィナモイル基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N,N−ジアリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基ホスフォノ基(−PO)及びその共役塩基基(以下、ホスフォナト基と称す)、ジアルキルホスフォノ基(−PO(alkyl))、ジアリールホスフォノ基(−PO(aryl))、アルキルアリールホスフォノ基(−PO(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスフォノ基(−POH(alkyl))及びその共役塩基基(以後、アルキルホスフォナト基と称す)、モノアリールホスフォノ基(−POH(aryl))及びその共役塩基基(以後、アリールホスフォナト基と称す)、ホスフォノオキシ基(−OPO)及びその共役塩基基(以後、ホスフォナトオキシ基と称す)、ジアルキルホスフォノオキシ基(−OPO(alkyl))、ジアリールホスフォノオキシ基(−OPO(aryl))、アルキルアリールホスフォノオキシ基(−OPO(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスフォノオキシ基(−OPOH(alkyl))及びその共役塩基基(以後、アルキルホスフォナトオキシ基と称す)、モノアリールホスフォノオキシ基(−OPOH(aryl))及びその共役塩基基(以後、アリールフォスホナトオキシ基と称す)、シアノ基、ニトロ基などが挙げられる。
で表される置換基は、中間層の表面親水性を維持するという観点から、−CONH、−CON(R11)(R12)、−CO13、−OH、−COM、又は−SOMが好ましく挙げられる。また、Yがこれらの置換基のいずれかを表す場合、Lでは単結合であることが好ましい。
一般式(1)において、Lが単結合であり、且つ、Yが−CONHであることが特に好ましい態様である。
ここで、R11、R12、及びR13は、それぞれ独立に、水素原子、又は炭素数1〜30の置換基を表す。好ましくは、炭素数1〜20であり、更に好ましくは、炭素数1〜15であり、特に好ましくは炭素数1〜8である。R11、R12、及びR13で表される置換基として具体的には、直鎖、分岐又は環状のアルキル基、アリール基、ヘテロ環基などが挙げられ、好ましい例としては、前述のR、R、R、及びRの好ましい例を挙げることができる。また、R11とR12は、互いに結合して環を形成していてもよい。
また、Mとしては、水素原子;リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属、又は、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウムなどのオニウムが挙げられる。
一般式(1)において、最も好ましくは、Lが単結合であり、且つ、Yが−CONHである態様である。
本発明において、一般式(1)で表される構造単位を含む親水性ポリマーにおいては、構造単位(ii)が単一のものからなる単独重合体であっても、構造単位(ii)が複数の成分からなる共重合体であってもよい。更に、構造単位(ii)に加えて、それ以外の共重合成分(構造単位)を含む共重合体であってもよい。
本発明における特定親水性ポリマー(1)としては、構造単位(i)におけるLが−(CH−S−(ここで、nは、1〜8の整数を表す)であり、構造単位(ii)として、Lが単結合であり、且つ、Yが−CONHであるものを含んで構成されるものが好ましい。
本発明において用いられる特定親水性ポリマー(1)の分子量としては、1,000〜100,000が好ましく、1,000〜50,000が更に好ましく、1,000〜30,000が最も好ましい。
本発明に好適に用い得る特定親水性ポリマー(1)の具体例〔例示化合物(1−1)〜(1−30)〕を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
Figure 2008216367
Figure 2008216367
Figure 2008216367
Figure 2008216367
また、本発明において中間層の形成に用いられる親水性ポリマーの他の一例として、下記一般式(2)中の構造単位(iii)及び構造単位(iv)を含むものが挙げられる。以下、この親水性ポリマーを、「特定親水性ポリマー(2)」と称することがある。
Figure 2008216367
一般式(2)で表される構造単位を含む親水性ポリマー(特定親水性ポリマー(2))について説明する。
本発明に用いうる特定親水性ポリマー(2)は、シランカップリング基を有する構造単位(iii)で表される繰返し単位と、構造単位(iv)で表される繰返し単位と、を共に有する高分子化合物である。また、構造単位(iii)、及び構造単位(iv)で表される繰返し単位は、それぞれ単一でも複数の種類であってもよく、更に、構造単位(iii)、或いは構造単位(iv)で表される繰返し単位以外の共重合成分を含んでいてもよい。
一般式(2)における、構造単位(iii)と構造単位(iv)とのモル組成比は、99.5:0.5〜0.5:99.5であることが好ましく、99:1〜50:50が更に好ましく、98:2〜70:30が特に好ましい。
、R、R、R、R、及びR10は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜30の置換基を表す。好ましくは、炭素数1〜20であり、更に好ましくは、炭素数1〜15であり、特に好ましくは炭素数1〜8である。
、R、R、R、R、及びR10としては、直鎖、分岐又は環状のアルキル基、アリール基、ヘテロ環基などが挙げられる。
、R、R、R、R、及びR10の具体的な例としては、前述のR、R、R、及びRの例などが挙げられる。
及びLは、それぞれ独立に、単結合又は有機連結基を表す。L及びLの具体的な例としては、それぞれ前述のL及びLの例と同様のものが挙げられる。
は炭素数1〜30の置換基を表す。Yの具体的な例としては、前述のYの例などが挙げられる。本発明においてYで表される置換基の好ましい例としては、前述のYで表される置換基の好ましい例と同様のものを挙げることができ、この場合も、特定親水性ポリマー(1)と同様に、Lは単結合であることが好ましい。
特に、一般式(2)において、Lが単結合であり、且つ、Yが−CONHであることが好ましい態様である。
特定親水性ポリマー(2)の分子量としては、1,000〜100,000が好ましく、1,000〜50,000が更に好ましく、1,000〜30,000が特にも好ましい。
以下に、本発明に好適に用い得る特定親水性ポリマー(2)の具体例〔例示化合物(2−1)〜(2−7)〕を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
Figure 2008216367
前記特定親水性ポリマー(1)、又は特定親水性ポリマー(2)は、既知のいかなる方法によっても合成可能であるが、その合成にはラジカル重合法が好ましく用いられる。一般的なラジカル重合法は、例えば、新高分子実験学3、高分子の合成と反応1(高分子学会編、共立出版)、新実験化学講座19、高分子化学(I)(日本化学会編、丸善)、物質工学講座、高分子合成化学(東京電気大学出版局)等に記載されており、これらを適用することができる。
また、先に述べたように、特定親水性ポリマー(1)では、前記一般式(1)における構造単位(ii)で表される繰り返し単位、特定親水性ポリマー(2)では、前記一般式(2)における構造単位(iii)、及び構造単位(iv)で表される繰り返し単位以外の構造単位(繰り返し単位)を有する共重合体であってもよい。
ここで、構造単位(ii)、構造単位(iii)、及び構造単位(iv)で表される繰り返し単位以外の構造単位としては、既知の種々のモノマーに由来する構造単位(繰り返し単位)を挙げることができる。
好ましい例としては、アクリル酸エステル類、メタクリルエステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、ビニルエステル類、スチレン類、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、無水マレイン酸、マレイン酸イミド等の公知のモノマーものに由来する構造単位などが挙げられる。このように、他の構造単位を用いて共重合体とすることで、製膜性、膜強度、親水性、疎水性、溶解性、反応性、安定性等の諸物性を改善或いは制御することができる。
アクリル酸エステル類の具体例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、(n−又はi−)プロピルアクリレート、(n−、i−、sec−又はt−)ブチルアクリレート、アミルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート、クロロエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシペンチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、アリルアクリレート、トリメチロールプロパンモノアクリレート、ペンタエリスリトールモノアクリレート、ベンジルアクリレート、メトキシベンジルアクリレート、クロロベンジルアクリレート、ヒドロキシベンジルアクリレート、ヒドロキシフェネチルアクリレート、ジヒドロキシフェネチルアクリレート、フルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、フェニルアクリレート、ヒドロキシフェニルアクリレート、クロロフェニルアクリレート、スルファモイルフェニルアクリレート、2−(ヒドロキシフェニルカルボニルオキシ)エチルアクリレート等が挙げられる。
メタクリル酸エステル類の具体例としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、(n−又はi−)プロピルメタクリレート、(n−、i−、sec−又はt−)ブチルメタクリレート、アミルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、クロロエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシペンチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、アリルメタクリレート、トリメチロールプロパンモノメタクリレート、ペンタエリスリトールモノメタクリレート、ベンジルメタクリレート、メトキシベンジルメタクリレート、クロロベンジルメタクリレート、ヒドロキシベンジルメタクリレート、ヒドロキシフェネチルメタクリレート、ジヒドロキシフェネチルメタクリレート、フルフリルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ヒドロキシフェニルメタクリレート、クロロフェニルメタクリレート、スルファモイルフェニルメタクリレート、2−(ヒドロキシフェニルカルボニルオキシ)エチルメタクリレート等が挙げられる。
アクリルアミド類の具体例としては、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−プロピルアクリルアミド、N−ブチルアクリルアミド、N−ベンジルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−トリルアクリルアミド、N−(ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(スルファモイルフェニル)アクリルアミド、N−(フェニルスルホニル)アクリルアミド、N−(トリルスルホニル)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチル−N−フェニルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチル−N−メチルアクリルアミド等が挙げられる。
メタクリルアミド類の具体例としては、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミド、N−ブチルメタクリルアミド、N−ベンジルメタクリルアミド、N−ヒドロキシエチルメタクリルアミド、N−フェニルメタクリルアミド、N−トリルメタクリルアミド、N−(ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、N−(スルファモイルフェニル)メタクリルアミド、N−(フェニルスルホニル)メタクリルアミド、N−(トリルスルホニル)メタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N−メチル−N−フェニルメタクリルアミド、N−ヒドロキシエチル−N−メチルメタクリルアミド等が挙げられる。
ビニルエステル類の具体例としては、ビニルアセテート、ビニルブチレート、ビニルベンゾエート等が挙げられる。スチレン類の具体例としては、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、プロピルスチレン、シクロヘキシルスチレン、クロロメチルスチレン、トリフルオロメチルスチレン、エトキシメチルスチレン、アセトキシメチルスチレン、メトキシスチレン、ジメトキシスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、ヨードスチレン、フルオロスチレン、カルボキシスチレン等が挙げられる。
このようなモノマーに由来する構造単位は、特定親水性ポリマーにおいて、構造単位(ii)、構造単位(iii)或いは、構造単位(iv)の共重合成分として、0〜60モル%含まれることが好ましく、0〜50モル%含まれることがより好ましく、0〜40%含まれることが特に好ましい。
本発明の作用機構は明確ではないが、特定親水性ポリマーが、その分子内に、更にアルミニウム基板表面に直接化学結合するか、或いは、架橋構造を介して化学結合しうる反応性基を有するため、該親水性ポリマーがそのアルミニウム基板表面に存在する−Al3+或いは−OH等の官能基と強固に結合されるものと推定される。更に、特定親水性ポリマーの末端基以外の置換基は、本発明に係る中間層表面に比較的自由な状態で存在するため、その置換基に由来する親水性などの性質を基板表面に付与することができていると推定される。
本発明においては、特定親水性ポリマーがグラフト構造を有し、且つ、Si、Ti、Zr、Alから選択される元素を含むアルコキシド化合物の加水分解、縮重合により形成された架橋構造を介してアルミニウム基板に化学結合する態様が好ましい。また、アルミニウム基板が表面粗面化処理、陽極酸化処理、並びにシリケート処理を施されていることが好ましい。このような態様によれば、アルミニウム基板、即ち、平版印刷版用支持体表面は、グラフト鎖の状態で導入された官能基が表面に比較的自由な状態で高密度に偏在するとともに、アルコキシドの加水分解、縮重合により、高密度の架橋構造を有する有機無機複合体皮膜が形成されているために、高強度の皮膜を形成し、本発明の効果が一層顕著であるものと考えられる。
本発明に係る中間層としては、特定親水性ポリマー中の反応性基が、直接、アルミニウム基板表面の−SiONa、−Al3+、或いは−OH基などの官能基と化学結合したものでもよく、或いは、特定親水性ポリマーを含有する親水性塗布液を調製し、アルミニウム基板表面に塗布、乾燥することで、反応性基の加水分解、縮重合により、架橋構造(ゾルゲル架橋構造)を形成したものであってもよい。
(架橋成分)
上記のように、本発明に係る中間層を得る際に、ゾルゲル架橋構造を形成するにあたっては、特定親水性ポリマーと、下記一般式(3)で表される架橋成分とを混合して、基板表面に塗布・乾燥することが好ましい。下記一般式(3)で表される架橋成分としては、その構造中に重合性の官能基を有し、架橋剤としての機能を果たす化合物であり、前記特定親水性ポリマーと縮重合することで、架橋構造を有する強固な皮膜を形成する。
Figure 2008216367
一般式(3)中、R14は水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、R15はアルキル基又はアリール基を表し、XはSi、Al、Ti又はZrを表し、nは0〜2の整数を表す。
14及びR15がアルキル基を表す場合の炭素数は好ましくは1から4である。アルキル基又はアリール基は置換基を有していてもよく、導入可能な置換基としては、ハロゲン原子、アミノ基、メルカプト基などが挙げられる。
なお、この化合物は分子量1000以下であることが好ましい。
以下に、一般式(3)で表される架橋成分の具体例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。
XがSiの場合、即ち、加水分解性化合物中にケイ素を含むものとしては、例えば、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリプロポキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、γ−クロロプリピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等を挙げることができる。
これらのうち特に好ましいものとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトルイメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等を挙げることができる。
また、XがAlである場合、即ち、加水分解性化合物中にアルミニウムを含むものとしては、例えば、トリメトキシアルミネート、トリエトキシアルミネート、トリプロポキシアルミネート、テトラエトキシアルミネート等を挙げることができる。
XがTiである場合、即ち、チタンを含むものとしては、例えば、トリメトキシチタネート、テトラメトキシチタネート、トリエトキシチタネート、テトラエトキシチタネート、テトラプロポキシチタネート、クロロトリメトキシチタネート、クロロトリエトキシチタネート、エチルトリメトキシチタネート、メチルトリエトキシチタネート、エチルトリエトキシチタネート、ジエチルジエトキシチタネート、フェニルトリメトキシチタネート、フェニルトリエトキシチタネート等を挙げることができる。
XがZrである場合、即ち、ジルコニウムを含むものとしては、例えば、前記チタンを含むものとして例示した化合物に対応するジルコネートを挙げることができる。
[中間層の形成方法]
<塗布液の調製>
本発明における中間層形成用塗布液を調製するにあたっては、前記した如き、特定親水性ポリマーを用いることを要するが、このような特定親水性ポリマーの含有量は、固形分換算で、10質量%以上、50質量%未満とすることが好ましい。特定親水性ポリマーの含有量が上記範囲の場合に、十分な膜強度を有し、且つ、皮膜特性が良好でクラック発生の懸念がない塗膜を形成することができるため、好ましい。
また、好ましい態様である塗布液組成物の調製に、前記一般式(3)で表される如き架橋成分を添加する場合の添加量としては、中間層形成用塗布液に含まれる特定親水性ポリマー中のシランカップリング基(反応性基)に対して、架橋成分が5mol%以上となるように添加されることが好ましく、10mol%以上となる量であることが更に好ましい。架橋成分添加量の上限は本発明のポリマーと十分架橋できる範囲内であれば特にないが、大過剰に添加した場合、架橋に関与しない架橋成分により、作製した表面がべたつくなどの問題を生じる可能性があり、その観点からは、1000mol%以下であることが好ましい。
シランカップリング基を主鎖末端に有する特定親水性ポリマー(1)、或いは、側鎖に有する特定親水性ポリマー(2)、好ましくは、更に架橋成分を溶媒に溶解し、よく攪拌することで、これらの成分が加水分解し、重縮合することにより製造される有機無機複合体ゾル液が、本発明に係る中間層形成用塗布液となる。この塗布液を用いることにより、表面の親水性などの物性が制御され、高い膜強度を有する中間層が形成される。
中間層形成用塗布液である有機無機複合体ゾル液の調製において、加水分解及び重縮合反応を促進するために、触媒として、酸性触媒又は塩基性触媒、或いは、金属キレート化合物を併用することが好ましく、実用上好ましい反応効率を得ようとする場合、このような触媒は必須である。本発明においては、特に、金属キレート化合物を触媒として用いることが好ましい。
酸性触媒又は塩基性触媒としては、酸又は塩基性化合物をそのまま用いるか、或いは水又はアルコールなどの溶媒に溶解させた状態のものを用いる。溶媒に溶解させる際の濃度については特に限定はなく、用いる酸、或いは塩基性化合物の特性、触媒の所望の含有量などに応じて適宜選択すればよいが、濃度が高い場合は加水分解、重縮合速度が速くなる傾向がある。但し、濃度の高い塩基性触媒を用いると、ゾル溶液中で沈殿物が生成する場合があるため、塩基性触媒を用いる場合、その濃度は水溶液での濃度換算で1N以下であることが望ましい。
酸性触媒或いは塩基性触媒の種類は特に限定されないが、濃度の濃い触媒を用いる必要がある場合には乾燥後に塗膜中にほとんど残留しないような元素から構成される触媒がよい。
具体的には、酸性触媒としては、塩酸などのハロゲン化水素、硝酸、硫酸、亜硫酸、硫化水素、過塩素酸、過酸化水素、炭酸、蟻酸や酢酸などのカルボン酸、そのRCOOHで表される構造式のRを他元素又は置換基によって置換した置換カルボン酸、ベンゼンスルホン酸などのスルホン酸などが挙げられ、塩基性触媒としては、アンモニア水などのアンモニア性塩基、エチルアミンやアニリンなどのアミン類などが挙げられる。
また、本発明に用いられる金属キレート化合物の具体例としては、例えば、トリ−n−ブトキシエチルアセトアセテートジルコニウム、ジ−n−ブトキシビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、n−ブトキシトリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(n−プロピルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(アセチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(エチルアセトアセテート)ジルコニウムなどのジルコニウムキレート化合物;ジイソプロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタニウム、ジイソプロポキシ・ビス(アセチルアセテート)チタニウム、ジイソプロポキシ・ビス(アセチルアセトン)チタニウムなどのチタニウムキレート化合物;トリス(アセチルアセトン)アルミニウム、ジイソプロポキシエチルアセトアセテートアルミニウム、ジイソプロポキシアセチルアセトナートアルミニウム、イソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、イソプロポキシビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノアセチルアセトナート・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウムなどのアルミニウムキレート化合物などが挙げられる。これらの金属キレート化合物のうち好ましいものは、トリ−n−ブトキシエチルアセトアセテートジルコニウム、ジイソブロボキシビス(アセチルアセトナート)チタニウム、トリス(アセチルアセトン)アルミニウム、ジイソプロポキシエチルアセトアセテートアルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウムである。これらの金属キレート化合物は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
本発明に係る金属キレート化合物の添加量は、中間層形成用塗布液の全固形分に対して、通常0.01〜15質量%程度であり、0.1〜15質量%が好ましく、0.1〜10質量%が更に好ましい。
中間層形成用塗布液の調製は、特定親水性ポリマー(1)、又は特定親水性ポリマー(2)、好ましくは更に架橋成分を、水、メタノール、或いはエタノールなどの溶媒に溶解後、所望により上記触媒を加え、攪拌することで実施できる。
反応温度は室温〜80℃であり、反応時間、即ち攪拌を継続する時間は1〜72時間の範囲であることが好ましく、この攪拌により両成分の加水分解・重縮合を進行させて、有機無機複合体ゾル液を得ることができる。
本発明において、特定親水性ポリマー、及び、好ましくは架橋成分を含有する中間層形成用塗布液を調製する際に用いる溶媒としては、これらを均一に、溶解、分散しうるものであれば特に制限はないが、例えば、メタノール、エタノール、水等の水系溶媒が好ましい。
以上述べたように、中間層を形成するための有機無機複合体ゾル液(中間層形成用塗布液)の調製はゾルゲル法を利用している。ゾルゲル法については、作花済夫「ゾル−ゲル法の科学」(株)アグネ承風社(刊)(1988年)、平島硯「最新ゾル−ゲル法による機能性薄膜作成技術」総合技術センター(刊)(1992年)等の成書等に詳細に記述され、それらに記載の方法を本発明に係る中間層形成用塗布液の調製に適用することができる。
本発明に係る中間層形成用塗布液中には、上記以外にも、親水性の程度の制御、物理的強度の向上、層を構成する各成分の相互の分散性の向上、塗布性の向上、印刷適性の向上などの種々の目的の化合物を添加することができる。例えば、可塑剤、顔料、色素、界面活性剤、微粒子等が挙げられる。
以下に、中間層形成用塗布液に添加しうる各成分について説明する。
微粒子としては、特に限定されないが、好ましくはシリカ、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、アルギン酸カルシウム等が挙げられる。これらは、親水性を助長したり、皮膜の強化などに用いることができる。より好ましくは、シリカ、アルミナ、酸化チタン又はこれらの混合物である。
シリカは、表面に多くの水酸基を持ち、内部はシロキサン結合(−Si−O−Si−)を構成している。本発明において、好ましく用いることができるシリカとしては、コロイダルシリカとも称される、水若しくは、極性溶媒中に分散した粒子径1〜100nmのシリカ超微粒子である。具体的には、加賀美敏郎、林瑛監修「高純度シリカの応用技術」第3巻、(株)シーエムシー(1991年)に記載されている。
また、好ましく用いることができるアルミナとしては、5〜200nmのコロイドの大きさをもつアルミナ水和物(ベーマイト系)で、水中の陰イオン(例えば、フッ素イオン、塩素イオン等のハロゲン原子イオン、酢酸イオン等のカルボン酸アニオン等)を安定剤として分散されたものである。又好ましく用いることができる酸化チタンとしては、平均一次粒径が50〜500nmのアナターゼ型或いはルチル型の酸化チタンを、必要に応じ、分散剤を用い、水若しくは、極性溶媒中に分散したものである。
本発明において、好ましく用いることができる親水性の微粒子の平均一次粒径は、1〜5000nmであり、より好ましくは、10〜1000nmである。本発明における中間層中において、これらの親水性の微粒子は、1種単独で用いても、2種以上を併用して用いてもよい。その使用量は、親水性の中間層の総固形分質量に対して、5質量%〜80質量%、好ましくは10質量%〜70質量%、より好ましくは20質量%〜60質量%である。
上記のようにして調製した中間層形成用塗布液を、前記本発明に係るアルミニウム基板上に塗布、乾燥することで、アルミニウム基板表面に、中間層を形成することができる。中間層の膜厚は目的により選択できるが、一般的には乾燥後の塗布量で、0.01〜3.0g/mの範囲であり、好ましくは0.01〜1.0g/mの範囲であり、更に好ましくは0.03〜1.0g/mの範囲である。塗布量が上記範囲において、十分な膜強度が得られ、表面親水性、基板との密着性、高感度化などの本発明の効果が発現される。
<ネガ型画像形成層>
本発明の平版印刷版原版は、前述の中間層上にネガ型画像形成層(以下、単に「画像形成層」と称する場合がある。)を設けてなる。
本発明における画像形成層は、既知の任意の物であってもよい。また、画像形成層は単層であっても、複数の画像形成層からなる積層構造を有していてもよい。
なお、本発明においては、効果の観点から、赤外線レーザで記録可能な画像形成層が好ましく、赤外線吸収剤を含有する画像形成層であることがより好ましい。より具体的には、赤外線吸収剤と、ラジカル発生剤(ラジカル重合開始剤)と、発生したラジカルにより重合反応を起こして硬化するラジカル重合性化合物と、を含有し、好ましくはバインダーポリマーを含有する画像形成層が特に好ましい。
以下、本発明において用いられるネガ型画像形成層について説明する。
本発明において用いられるネガ型画像形成層としては、露光によりアルカリ水溶液に対する溶解性が変化する画像形成層や、インク受容性領域を形成し得る疎水化前駆体を含有するものであって、露光により疎水化領域が形成される画像形成層など、公知のネガ型画像形成層が任意に選択される。
≪1.露光によりアルカリ水溶液に対する溶解性が変化する画像形成層≫
まず、アルカリ水溶液に対する溶解性が変化する画像形成層について説明する。このような画像形成層は、赤外線レーザによる像様露光により、露光部のアルカリ現像性が低下し、露光部が画像部領域となるものである。
このような機構の画像形成層としては、公知の酸触媒架橋系(カチオン重合も含む)画像形成層(以下、酸架橋層と称する場合がある。)、重合硬化系画像形成層(以下、重合硬化層と称する場合がある。)が挙げられる。これらは、光照射や加熱により発生する酸が触媒となり、画像形成層を構成する化合物が架橋反応を起こし硬化して画像部を形成するもの、或いは、光照射や加熱により生成するラジカルにより重合性化合物の重合反応が進行し、硬化して画像部を形成するものである。
以下、重合硬化系画像形成層、及び酸触媒架橋系画像形成層について詳細に説明する。
〔重合硬化系画像形成層(重合硬化層)〕
本発明におけるネガ型画像形成層の1つとして、重合硬化系画像形成層(重合硬化層)が挙げられる。この重合硬化層は、(A)増感色素(赤外線吸収剤)と、(B)ラジカル発生剤(ラジカル重合開始剤)と、発生したラジカルにより重合反応を起こして硬化する(C)ラジカル重合性化合物と、を含有し、更に、(D)バインダーポリマーを含有することが好ましい。
この重合硬化層は、(A)増感色素に吸収されたエネルギーにより、オニウム塩等の(B)ラジカル重合開始剤が分解し、ラジカルを発生する。そして、(C)ラジカル重合性化合物は、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有し、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれるものであって、上記のようにして発生したラジカルにより連鎖的に重合反応が生起し、硬化する。
なお、(A)増感色素が赤外線吸収剤の場合の重合硬化層では、赤外線吸収剤が吸収した赤外線を熱に変換し、この際発生した熱により、(B)ラジカル重合開始剤を分解させることで、ラジカルが発生する。
〔酸触媒架橋系画像形成層(酸架橋層)〕
また、本発明におけるネガ型画像形成層の1つとして、酸触媒架橋系画像形成層(酸架橋層)が挙げられる。この酸架橋層は、(E)光又は熱により酸を発生する化合物(以下、酸発生剤と称する)と、(F)発生した酸により架橋する化合物(以下、架橋剤と称する)とを含有し、更に、これらを含有する層を形成するための、酸の存在下で架橋剤と反応しうる(G)アルカリ可溶性ポリマーを含むことが好ましい。
この酸架橋層においては、光照射又は加熱により、(E)酸発生剤が分解して発生した酸が、(F)架橋剤の働きを促進し、(F)架橋剤同士或いは(F)架橋剤と(G)アルカリ可溶性ポリマーとの間で強固な架橋構造が形成され、これにより、アルカリ可溶性が低下して、現像剤に不溶となる。
このとき、露光のエネルギーを効率よく使用するため、画像形成層中には(A)増感色素(赤外線吸収剤)が配合されることが好ましい。
以下、上記重合硬化層、及び酸架橋層を構成する各成分について、詳細に説明する。
まず、本発明における重合硬化層の構成成分(A)〜(D)について説明する。
[(A)増感色素]
前述の重合硬化層、及び酸架橋層には、露光に対する高感度化を目的として、当業界で公知の(A)増感色素を含有させてもよい。
本発明において用いうる増感色素としては、例えば、300〜450nmに極大吸収を有する増感色素や、500〜600nmに極大吸収を有する増感色素、750〜1400nmに極大吸収を有する赤外線吸収剤が用いられる。これらの増感色素を用いることで、各々、当業界で通常用いられている405nmのバイオレットレーザ、532nmのグリーンレーザ、803nmのIRレーザに対応した高感度なネガ型画像形成層を得ることができる。
(A−1)赤外線吸収剤
以下、本発明にて好適に用いられる750〜1400nmに極大吸収を有する赤外線吸収剤について詳述する。
ここに使用される赤外線吸収剤は、赤外線レーザの照射(露光)に対し高感度で電子励起状態となり、かかる電子励起状態に係る電子移動、エネルギー移動、発熱(光熱変換機能)などが、画像形成層中に併存する(B)ラジカル発生剤(ラジカル重合開始剤)や(E)酸発生剤に作用して、化学変化を生起させてラジカルや酸を生成させるものと推定されている。いずれせよ、赤外線吸収剤を添加することは、750nm〜1400nmの波長を有する赤外線レーザ光での直接描画される製版に特に好適であり、高い画像形成性を発現することができる。
本発明における赤外線吸収剤は、750nm〜1400nmの波長に吸収極大を有する染料又は顔料であることが好ましい。
染料としては、市販の染料及び例えば、「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)等の文献に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体等の染料が挙げられる。
好ましい染料としては、例えば、特開昭58−125246号、特開昭59−84356号、特開昭60−78787号等に記載されているシアニン染料、特開昭58−173696号、特開昭58−181690号、特開昭58−194595号等に記載されているメチン染料、特開昭58−112793号、特開昭58−224793号、特開昭59−48187号、特開昭59−73996号、特開昭60−52940号、特開昭60−63744号等に記載されているナフトキノン染料、特開昭58−112792号等に記載されているスクワリリウム色素、英国特許434,875号記載のシアニン染料等を挙げることができる。
また、米国特許第5,156,938号記載の近赤外吸収増感剤も好適に用いられ、また、米国特許第3,881,924号記載の置換されたアリールベンゾ(チオ)ピリリウム塩、特開昭57−142645号(米国特許第4,327,169号)記載のトリメチンチアピリリウム塩、特開昭58−181051号、同58−220143号、同59−41363号、同59−84248号、同59−84249号、同59−146063号、同59−146061号に記載されているピリリウム系化合物、特開昭59−216146号記載のシアニン色素、米国特許第4,283,475号に記載のペンタメチンチオピリリウム塩等や特公平5−13514号、同5−19702号に開示されているピリリウム化合物も好ましく用いられる。また、染料として好ましい別の例として、米国特許第4,756,993号明細書中に式(I)、(II)として記載されている近赤外吸収染料を挙げることができる。
これらの染料のうち特に好ましいものとしては、シアニン色素、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、ニッケルチオレート錯体、インドレニンシアニン色素が挙げられる。更に、シアニン色素やインドレニンシアニン色素が好ましく、特に好ましい例として下記一般式(a)で示されるシアニン色素が挙げられる。
Figure 2008216367
一般式(a)中、Xは、水素原子、ハロゲン原子、−NPh、X−L又は以下に示す基を表す。ここで、Xは酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子を示し、Lは、炭素原子数1〜12の炭化水素基、ヘテロ原子を有する芳香族環、ヘテロ原子を含む炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。なお、ここでヘテロ原子とは、N、S、O、ハロゲン原子、Seを示す。X は後述するZ と同様に定義され、Rは、水素原子、アルキル基、アリール基、置換又は無置換のアミノ基、ハロゲン原子より選択される置換基を表す。
Figure 2008216367
及びRは、それぞれ独立に、炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。画像形成層塗布液の保存安定性から、R及びRは、炭素原子数2個以上の炭化水素基であることが好ましく、更に、RとRとは互いに結合し、5員環又は6員環を形成していることが特に好ましい。
Ar、Arは、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を示す。好ましい芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環及びナフタレン環が挙げられる。また、好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素原子数12個以下のアルコキシ基が挙げられる。Y、Yは、それぞれ同じでも異なっていてもよく、硫黄原子又は炭素原子数12個以下のジアルキルメチレン基を示す。R、Rは、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、カルボキシル基、スルホ基が挙げられる。R、R、R及びRは、それぞれ同じでも異なっていてもよく、水素原子又は炭素原子数12個以下の炭化水素基を示す。原料の入手性から、好ましくは水素原子である。また、Z は、対アニオンを示す。ただし、一般式(a)で示されるシアニン色素が、その構造内にアニオン性の置換基を有し、電荷の中和が必要ない場合にはZ は必要ない。好ましいZ は、画像形成層塗布液の保存安定性から、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、及びスルホン酸イオンであり、特に好ましくは、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロフォスフェートイオン、及びアリールスルホン酸イオンである。なお、対イオンとして、ハロゲンイオンを含有してないものが特に好ましい。
好適に用いることのできる一般式(a)で示されるシアニン色素の具体例としては、特開2001−133969公報の段落番号[0017]から[0019]に記載されたものを挙げることができる。
更に特に好ましい例としては、以下に例示するような特開2002−278057号公報に記載の特定インドレニンシアニン色素が挙げられる。
Figure 2008216367
顔料としては、市販の顔料及びカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」CMC出版、1984年刊)に記載されている顔料が利用できる。
顔料の種類としては、黒色顔料、黄色顔料、オレンジ色顔料、褐色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料、その他、ポリマー結合色素が挙げられる。具体的には、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン及びペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、染付けレーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料、蛍光顔料、無機顔料、カーボンブラック等が使用できる。これらの顔料のうち好ましいものはカーボンブラックである。
これら顔料は表面処理をせずに用いてもよく、表面処理を施して用いてもよい。表面処理の方法には、樹脂やワックスを表面コートする方法、界面活性剤を付着させる方法、反応性物質(例えば、シランカップリング剤、エポキシ化合物、ポリイソシアネート等)を顔料表面に結合させる方法等が考えられる。上記の表面処理方法は、「金属石鹸の性質と応用」(幸書房)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)及び「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
顔料の粒径は0.01μm〜10μmの範囲にあることが好ましく、0.05μm〜1μmの範囲にあることが更に好ましく、特に0.1μm〜1μmの範囲にあることが好ましい。この好ましい粒径の範囲において、画像形成層中における顔料の優れた分散安定性が得られ、均一な画像形成層が得られる。
顔料を分散する方法としては、インク製造やトナー製造等に用いられる公知の分散技術が使用できる。分散機としては、超音波分散器、サンドミル、アトライター、パールミル、スーパーミル、ボールミル、インペラー、デスパーザー、KDミル、コロイドミル、ダイナトロン、3本ロールミル、加圧ニーダー等が挙げられる。詳細は、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
これらの赤外線吸収剤は、他の成分と同一の層に添加してもよいし、別の層を設けそこへ添加してもよい。
これらの赤外線吸収剤は、画像形成層中における均一性や画像形成層の耐久性の観点から、画像形成層を構成する全固形分に対し0.01〜50質量%、好ましくは0.1〜10質量%、染料の場合特に好ましくは0.5〜10質量%、顔料の場合特に好ましくは0.1〜10質量%の割合で添加することができる。
[(B)ラジカル発生剤(ラジカル重合開始剤)]
本発明で用いられる(B)ラジカル発生剤は、後述する(C)ラジカル重合性化合物の硬化反応を開始、進行させる機能を有するものであり、熱により分解してラジカルを発生する熱分解型のラジカル発生剤、赤外線吸収剤の励起電子を受容してラジカルを発生する電子移動型のラジカル発生剤、又は、励起した赤外線吸収剤に電子移動してラジカルを発生する電子移動型のラジカル発生剤など、エネルギーを付与することでラジカルを生成させるものであれば、いかなる化合物を用いてもよい。
例えば、オニウム塩、トリハロメチル基を有するトリアジン化合物、過酸化物、アゾ系重合開始剤、アジド化合物、キノンジアジド、活性ハロゲン化合物、オキシムエステル化合物、トリアリールモノアルキルボレート化合物などが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
ここで使用するラジカル発生剤は、高感度化・保存安定性などの観点からすると、オニウム塩、活性ハロゲン化合物、オキシムエステル化合物、ボレート化合物などが好適であり、特に、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、及びジアゾニウム塩などのオニウム塩がより好適に用いられる。
特に好適に用いられるスルホニウム塩としては、下記一般式(b−1)で表されるオニウム塩が挙げられる。
Figure 2008216367
一般式(b−1)中、R11、R12及びR13は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素原子数12個以下のアルキル基、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、又は炭素原子数12個以下のアリールオキシ基が挙げられる。(Z11はハロゲンイオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、カルボキシレートイオン、及びスルホン酸イオンからなる群より選択される対イオンを表し、好ましくは、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロフォスフェートイオン、カルボキシレートイオン、及びアリールスルホン酸イオンである。
以下に、一般式(b−1)で表されるオニウム塩の具体例([OS−1]〜[OS−12])を挙げるが、これらに限定されるものではない。
Figure 2008216367
Figure 2008216367
上記したものの他、特開2001−133696号公報、特開2002−148790号公報、特開2002−148790号公報、特開2002−350207号公報、特開2002−6482号公報に記載の特定の芳香族スルホニウム塩も好適に用いられる。
また、特に好適に用いられるヨードニウム塩及びジアゾニウム塩としては、下記一般式(b−2)及び(b−3)で表されるものが挙げられる。
Figure 2008216367
一般式(b−2)中、Ar21とAr22は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下のアリール基を示す。このアリール基が置換基を有する場合の好ましい置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素原子数12個以下のアルキル基、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、又は炭素原子数12個以下のアリールオキシ基が挙げられる。(Z21は(Z11と同義の対イオンを表す。
一般式(b−3)中、Ar31は、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下のアリール基を示す。好ましい置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素原子数12個以下のアルキル基、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、炭素原子数12個以下のアリールオキシ基、炭素原子数12個以下のアルキルアミノ基、炭素原子数12個以下のジアルキルアミノ基、炭素原子数12個以下のアリールアミノ基又は、炭素原子数12個以下のジアリールアミノ基が挙げられる。(Z31は(Z11と同義の対イオンを表す。
以下に、本発明において、好適に用いることのできるオニウム塩の具体例[OI−1]〜[OI−10]及び[ON−1]〜[ON−5](一般式(b−2)及び(b−3)で示されるオニウム塩を含む)を挙げるが、これらに限定されるものではない。
Figure 2008216367
Figure 2008216367
Figure 2008216367
なお、ここで用いられるラジカル発生剤は、極大吸収波長が400nm以下であることが好ましく、更に360nm以下であることが好ましい。このように吸収波長を紫外線領域にすることにより、平版印刷版原版の取り扱いを白灯下で実施することができる。
ラジカル発生剤の総含有量は、感度及び印刷時の非画像部における汚れの発生の観点から、画像形成層を構成する全固形分に対し0.1〜50質量%、好ましくは0.5〜30質量%、特に好ましくは1〜20質量%である。
また、ラジカル発生剤は1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上のラジカル発生剤を併用する場合は、例えば、好適に用いられるスルホニウム塩のみを複数種用いてもよいし、スルホニウム塩と他の重合開始剤とを併用してもよい。スルホニウム塩と他のラジカル発生剤とを併用する場合、その含有比(質量比)としては、100/1〜100/50が好ましく、100/5〜100/25がより好ましい。
なお、ラジカル発生剤は、他の成分と同一の層に添加してもよいし、別の層を設けそこへ添加してもよい。
ここで、ラジカル発生剤としてスルホニウム塩を用いる場合、高感度であるためにラジカル重合反応が効果的に進行し、形成された画像部の強度が非常に高いものとなる。更に、このような画像形成層上に後述する保護層を設けた場合には、該保護層の高い酸素遮断機能とあいまって、高い画像部強度を有する平版印刷版を作製することができ、その結果、耐刷性が一層向上する。また、スルホニウム塩重合開始剤はそれ自体が経時安定性に優れていることから、作製された平版印刷版原版を保存した際にも、所望されない重合反応の発生が効果的に抑制されるという利点をも有することになる。
[(C)ラジカル重合性化合物]
本発明で用いられる(C)ラジカル重合性化合物は、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物であり、エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれる。このような化合物群は当該産業分野において広く知られるものであり、これらを特に限定無く用いることができる。これらは、例えば、モノマー、プレポリマー、即ち2量体、3量体及びオリゴマー、又はそれらの混合物並びにそれらの共重合体などの化学的形態をもつ。モノマー及びその共重合体の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシル基やアミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能イソシアネート類或いはエポキシ類との付加反応物、及び単官能若しくは、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアネート基や、エポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、更にハロゲン基や、トシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン、ビニルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
脂肪族多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーの具体例としては、アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリメチロールエタントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ソルビトールペンタアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー等がある。
メタクリル酸エステルとしては、テトラメチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ソルビトールトリメタクリレート、ソルビトールテトラメタクリレート、ビス〔p−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕ジメチルメタン、ビス−〔p−(メタクリルオキシエトキシ)フェニル〕ジメチルメタン等がある。
イタコン酸エステルとしては、エチレングリコールジイタコネート、プロピレングリコールジイタコネート、1,3−ブタンジオールジイタコネート、1,4−ブタンジオールジイタコネート、テトラメチレングリコールジイタコネート、ペンタエリスリトールジイタコネート、ソルビトールテトライタコネート等がある。
クロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジクロトネート、テトラメチレングリコールジクロトネート、ペンタエリスリトールジクロトネート、ソルビトールテトラジクロトネート等がある。
イソクロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジイソクロトネート、ペンタエリスリトールジイソクロトネート、ソルビトールテトライソクロトネート等がある。
マレイン酸エステルとしては、エチレングリコールジマレート、トリエチレングリコールジマレート、ペンタエリスリトールジマレート、ソルビトールテトラマレート等がある。
その他のエステルの例として、例えば、特公昭46−27926、特公昭51−47334、特開昭57−196231記載の脂肪族アルコール系エステル類や、特開昭59−5240、特開昭59−5241、特開平2−226149記載の芳香族系骨格を有するもの、特開平1−165613記載のアミノ基を含有するもの等も好適に用いられる。更に、前述のエステルモノマーは混合物としても使用することができる。
また、脂肪族多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビス−アクリルアミド、メチレンビス−メタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−アクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−メタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド等がある。その他の好ましいアミド系モノマーの例としては、特公昭54−21726記載のシクロへキシレン構造を有すものを挙げることができる。
また、イソシアネートと水酸基の付加反応を用いて製造されるウレタン系付加重合性化合物も好適であり、そのような具体例としては、例えば、特公昭48−41708号公報中に記載されている1分子に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、下記一般式で示される水酸基を含有するビニルモノマーを付加させた1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。
CH=C(R)COOCHCH(R)OH・・・一般式
(ただし、R及びRは、H又はCHを示す。)
また、特開昭51−37193号、特公平2−32293号、特公平2−16765号に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58−49860号、特公昭56−17654号、特公昭62−39417号、特公昭62−39418号記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類も好適である。更に、特開昭63−277653号、特開昭63−260909号、特開平1−105238号に記載される、分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有する付加重合性化合物類を用いることによっては、非常に感光スピードに優れた光重合性組成物を得ることができる。
その他の例としては、特開昭48−64183号、特公昭49−43191号、特公昭52−30490号、各公報に記載されているようなポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタクリレートを挙げることができる。また、特公昭46−43946号、特公平1−40337号、特公平1−40336号記載の特定の不飽和化合物や、特開平2−25493号記載のビニルホスホン酸系化合物等も挙げることができる。また、ある場合には、特開昭61−22048号記載のペルフルオロアルキル基を含有する構造が好適に使用される。更に日本接着協会誌vol.20、No.7、300〜308ページ(1984年)に光硬化性モノマー及びオリゴマーとして紹介されているものも使用することができる。
これらの重合性化合物について、その構造、単独使用か併用か、添加量等の使用方法の詳細は、最終的な性能設計にあわせて任意に設定できる。例えば、付加重合性化合物の使用法は、酸素に対する重合阻害の大小、解像度、かぶり性、屈折率変化、表面粘着性等の観点から適切な構造、配合、添加量を任意に選択できる。
より具体的には、次のような観点が指摘できる。感光スピードの点では1分子あたりの不飽和基含量が多い構造が好ましく、多くの場合、2官能以上が好ましい。また、画像部、即ち硬化膜の強度を高くするためには、3官能以上のものがよく、更に、異なる官能数・異なる重合性基のものを併用することで、感光性と強度の両方を調節する方法も有効である。大きな分子量の化合物や疎水性の高い化合物は、感光スピードや膜強度に優れる反面、現像スピードや現像液中での析出といった点で好ましくない場合がある。また、画像形成層中の他の成分(例えば、バインダーポリマー、開始剤、着色剤等)との相溶性、分散性に対しても、重合性化合物の選択・使用法は重要な要因であり、例えば、低純度化合物の使用や、2種以上の併用により相溶性を向上させ得ることがある。
また、本発明の平版印刷版原版では、前述の中間層や後述の保護層等との密着性を向上せしめる目的で特定の構造を選択することもあり得る。更に、本発明における平版印刷版原版では、下塗り、上塗りといった層構成・塗布方法も実施し得る。
(C)ラジカル重合性化合物の含有量に関しては、感度、相分離の発生、画像形成層の粘着性、更には、現像液からの析出性の観点から、画像形成層中の固形分に対して、好ましくは5〜80質量%、更に好ましくは10〜75質量%、特に好ましく20〜60質量%の範囲で使用される。
また、画像形成層の抜けの抑制、更には、感度、画像形成性、相溶性という観点から、画像形成層中の重合性化合物とバインダーポリマー総量との質量比は、3:1〜1:3の範囲が好ましく、2:1〜1:2の範囲がより好ましく、1.5:1〜1:1.5の範囲が特に好ましい。
[(D)バインダーポリマー]
本発明に用いうる(D)バインダーポリマーとしては、側鎖に、アルカリ可溶性基と共に、架橋性基を有するコポリマーが好ましい。ここで架橋性基とは、平版印刷版原版を露光した際に画像形成層中で起こるラジカル重合反応の過程で高分子バインダーを架橋させる基のことである。このような機能の基であれば特に限定されないが、例えば、付加重合反応し得る官能基としてエチレン性不飽和結合基、アミノ基、エポキシ基等が挙げられる。また、光照射によりラジカルになり得る官能基であってもよく、そのような架橋性基としては、例えば、チオール基、ハロゲン基、オニウム塩構造等が挙げられる。
側鎖にアルカリ可溶性基と架橋性基とを有するコポリマーを用いることにより、露光に対する感度や画像形成性などの平版印刷版としての性能をより良好に発揮させることができる。
本発明において、側鎖にアルカリ可溶性基と架橋性基とを有するコポリマー(以下、適宜、「(D−1)バインダーポリマー」と称する。)としては、下記一般式(I)で表される繰り返し単位を含むものが好ましい。以下、(D−1)バインダーポリマーについて説明する。
−一般式(I)で表される繰り返し単位−
本発明において、側鎖にアルカリ可溶性基と架橋性基とを有するコポリマー(以下、適宜、「(D−1)バインダーポリマー」と称する。)としては、下記一般式(I)で表される繰り返し単位を含むものが好ましい。
Figure 2008216367
上記一般式(I)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは炭素原子、水素原子、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子からなる群より選択される2以上の原子を含んで構成され、その原子数が2〜82である連結基を表す。Aは酸素原子又は−NR−を表し、Rは水素原子又は炭素数1〜10の一価の炭化水素基を表す。nは1〜5の整数を表す。
一般式(I)におけるRは、水素原子、又はメチル基を表し、特にメチル基が好ましい。
一般式(I)においてRで表される連結基は、炭素原子、水素原子、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子からなる群より選択される2以上の原子を含んで構成され、その総原子数は2〜82であり、好ましくは2〜50であり、より好ましくは2〜30である。Rで表される連結基は置換基を有していてもよい。ここで示す総原子数とは、当該連結基が置換基を有する場合には、その置換基を含めた原子数を指す。より具体的には、Rで表される連結基の主骨格を構成する原子数が、1〜30であることが好ましく、3〜25であることがより好ましく、4〜20であることが更に好ましく、5〜10であることが最も好ましい。なお、本発明における「連結基の主骨格」とは、一般式(I)におけるAと末端COOHとを連結するためのみに使用される原子又は原子団を指し、特に、連結経路が複数ある場合には、使用される原子数が最も少ない経路を構成する原子又は原子団を指す。したがって、連結基内に環構造を有する場合、その連結部位(例えば、o−、m−、p−など)により算入されるべき原子数が異なる。
一般式(I)においてRで表される連結基として、より具体的には、アルキレン、置換アルキレン、アリーレン、置換アリーレン、或いはこれらの基を構成する任意の炭素原子上の水素原子を除き(n+1)価の基としたものなどが挙げられ、これらの基がアミド結合やエステル結合で複数連結された構造を有するものが好ましい。
鎖状構造の連結基としては、エチレン、プロピレン等が挙げられる。また、これらのアルキレンがエステル結合を介して連結されている構造が特に好ましい。
この中でも、一般式(I)におけるRで表される連結基は、炭素原子数3から30までの脂肪族環状構造を有する(n+1)価の炭化水素基であることが好ましい。より具体的には、任意の置換基によって一個以上置換されていてもよいシクロプロパン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロデカン、ジシクロヘキシル、ターシクロヘキシル、ノルボルナン等の脂肪族環状構造を有する化合物を構成する任意の炭素原子上の水素原子を(n+1)個除き、(n+1)価の炭化水素基としたものを挙げることができる。また、Rは、置換基を含めて炭素数3から30であることが好ましい。
脂肪族環状構造を構成する化合物の任意の炭素原子は、窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子から選ばれるヘテロ原子で、一個以上置き換えられていてもよい。耐刷性の点で、Rは縮合多環脂肪族炭化水素、橋架け環脂肪族炭化水素、スピロ脂肪族炭化水素、脂肪族炭化水素環集合(複数の環が結合又は連結基でつながったもの)等、2個以上の環を含有してなる炭素原子数5から30までの置換基を有していてもよい脂肪族環状構造を有する(n+1)価の炭化水素基であることが好ましい。この場合も炭素数は置換基が有する炭素原子を含めてのものである。
で表される連結基としては、特に、連結基の主骨格を構成する原子数が5〜10のものが好ましく、構造的には、鎖状構造であって、その構造中にエステル結合を有するものや、前記の如き環状構造を有するものが好ましい。また、Rで表される連結基には任意の置換基を含んでいても良い。
一般式(I)におけるAは、合成が容易であることから、酸素原子又は−NH−であることが好ましい。
一般式(I)におけるnは、1〜5の整数を表し、耐刷の点で好ましくは1である。
以下に、一般式(I)で表される繰り返し単位の好ましい具体例を示すが、特にこれらに限定されるものではない。
Figure 2008216367
Figure 2008216367
Figure 2008216367
Figure 2008216367
一般式(I)で表される繰り返し単位は、(D−1)バインダーポリマー中に1種類だけであってもよいし、2種類以上含有していてもよい。なお、(D−1)バインダーポリマーは、一般式(I)で表される繰り返し単位と、他の繰り返し単位(架橋性基を繰り返し単位を含む)とが組み合わされてなるコポリマーであるが、一般式(I)で表される繰り返し単位だけからなるポリマーを本発明におけるバインダーポリマーとして用いてもよい。
コポリマーにおける一般式(I)で表される繰り返し単位の総含有量は、その構造や、画像形成層の設計等によって適宜決められるが、好ましくは共重合成分の総モル量に対し、1〜99モル%が好ましく、より好ましくは5〜40モル%、更に好ましくは5〜20モル%の範囲で含有される。
コポリマーとして用いる場合の他の繰り返し単位としては、ラジカル重合可能なモノマーであれば従来公知のものを制限なく使用できる。具体的には、「高分子データハンドブック−基礎編−(高分子学会編、培風館、1986)」記載のモノマー類が挙げられる。このような他の繰り返し単位は1種類であってもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
なお、上記コポリマーとして用いる場合の他の繰り返し単位としては、側鎖に架橋性基を有する繰り返し単位をはじめ、側鎖にアミド基を有する繰り返し単位が好ましく用いられる。
−側鎖に架橋性基を有する繰り返し単位−
架橋性基を有する繰り返し単位において、好ましい架橋性基としては、特に限定されるものではないが、下記一般式(A)〜(C)で表される構造が挙げられる。
Figure 2008216367
(一般式(A)〜(C)中、R〜R14は、それぞれ独立に、水素原子、又は1価の置換基を表す。X、Yは、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、又は−N−R15−からなる群より選択される基を少なくとも含有する有機基を表し、Zは、酸素原子、硫黄原子、−N−R15−、又はフェニレン基からなる群より選択される基を少なくとも含有する有機基を表す。ここで、R15は、水素原子、又は1価の有機基を表す。)
一般式(A)において、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、又は1価の置換基を表すが、Rとしては、水素原子、又は置換基を有してもよいアルキル基など有機基が好ましく、中でも具体的には、水素原子、メチル基、メチルアルコキシ基、メチルエステル基がより好ましい。また、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、ジアルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアリールアミノ基、置換基を有してもよいアルキルスルホニル基、置換基を有してもよいアリールスルホニル基が好ましく、中でも、水素原子、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基がより好ましい。
ここで、これらの基に導入しうる置換基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、イソプロピオキシカルボニル基、メチル基、エチル基、フェニル基等が挙げられる。
Xは、酸素原子、硫黄原子、又は−N−R15−からなる群より選択される基を少なくとも含有する有機基を表し、更には酸素原子、硫黄原子、又は−N−R15−であることがより好ましい。なお、R15としては、置換基を有してもよいアルキル基が好ましい。
一般式(B)において、R〜R11は、それぞれ独立に、水素原子、又は1価の置換基を表すが、具体的には、例えば、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、ジアルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアリールアミノ基、置換基を有してもよいアルキルスルホニル基、置換基を有してもよいアリールスルホニル基が好ましく、中でも、水素原子、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基がより好ましい。
ここで、これらの基に導入しうる置換基としては、一般式(A)において導入しうる置換基として挙げたものが例示される。
Yは、酸素原子、硫黄原子、又は−N−R15−からなる群より選択される基を少なくとも含有する有機基を表し、更には酸素原子、硫黄原子、又は−N−R15−であることがより好ましい。なお、R15としては、一般式(A)におけるのと同様のものが好ましい。
一般式(C)において、R12〜R14は、それぞれ独立に、水素原子、又は1価の置換基を表すが、具体的には、例えば、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、ジアルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアリールアミノ基、置換基を有してもよいアルキルスルホニル基、置換基を有してもよいアリールスルホニル基が好ましく、中でも、水素原子、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基がより好ましい。
ここで、これらの基に導入しうる置換基としては、一般式(A)において導入しうる置換基として挙げたものが例示される。
Zは、酸素原子、硫黄原子、−N−R15−、又はフェニレン基からなる群より選択される基を少なくとも含有する有機基を表し、更には酸素原子、硫黄原子、−N−R15−、又はフェニレン基であることがより好ましい。なお、R15としては、一般式(A)におけるのと同様のものが好ましい。
これらの架橋性基の中でも、α−置換メチルアクリル基[−OC(=O)−C(−CHZ)=CH、Z=ヘテロ原子から始まる炭化水素基]、(メタ)アクリル基、アリル基、スチリル基などエチレン性不飽和結合基が好ましく、(メタ)アクリル基、アリル基又はスチリル基が特に好ましい。
前記一般式(A)〜(C)で表される構造の、側鎖に架橋性基を有する繰り返し単位として好ましい具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
Figure 2008216367
Figure 2008216367
Figure 2008216367
Figure 2008216367
−側鎖にアミド基を有する繰り返し単位−
本発明における(D−1)バインダーポリマーは、更に、側鎖にアミド基を有する繰り返し単位を含んでいてもよい。この側鎖にアミド基を有する繰り返し単位を有するコポリマーを用いることにより、被膜性の向上の観点で好ましい。
かかるアミド基としては、以下の一般式(D)で表される構造のアミド基であることが好ましい。
Figure 2008216367
一般式(D)中、R18、R19は、互いに独立して、水素原子、それぞれ置換基を有していてもよい、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、又は置換スルホニル基を表し、R18及びR19が互いに結合して環を形成してもよい。
本発明の平版印刷版原版における画像形成層に用いられる(D−1)バインダーポリマーとしては、前記一般式(I)で表される繰り返し単位と、上述した側鎖に架橋性基を有する繰り返し単位と、を含む共重合体であることがより好ましく、更に、前記一般式(I)で表される繰り返し単位と、上述した側鎖に架橋性基を有する繰り返し単位と、側鎖にアミド基を有する繰り返し単位と、の3つの繰り返し単位からなる共重合体であることが特に好ましい。なお、3つの繰り返し単位からなる共重合体である場合における、各繰り返し単位の共重合成分の総モル量に対する好ましい含有量は、一般式(I)で表される繰り返し単位は、前述の通り1〜99モル%、より好ましくは5〜40モル%、特に好ましくは5〜20モル%である。また、側鎖に架橋性基を有する繰り返し単位は、0.5〜98モル%であることが好ましく、より好ましくは20〜98モル%、特に好ましくは40〜90モル%である。また、側鎖にアミド基を有する繰り返し単位は、0.5〜70モル%であることが好ましく、より好ましくは5〜70モル%、特に好ましくは15〜40モル%である。
以下、(D−1)バインダーポリマーの好ましい具体例を示すが、これらに限定されるものではない。
Figure 2008216367
Figure 2008216367
Figure 2008216367
(D−1)バインダーポリマーの分子量は、画像形成性や耐刷性の観点から適宜決定される。通常、分子量が高くなると、耐刷性は優れるが、画像形成性は劣化する傾向にある。逆に、低いと、画像形成性は向上するが、耐刷性は低下する傾向がある。好ましい分子量としては、2,000〜1,000,000、より好ましくは5,000〜500,000、更に好ましくは10,000〜300,000の範囲である。
また、(D−1)バインダーポリマー中の架橋性基の含有量(ヨウ素滴定によるラジカル重合可能な不飽和二重結合の含有量)は、感度や保存性の観点から、バインダーポリマー1g当たり、好ましくは0.1〜10.0mmol、より好ましくは1.0〜8.0mmol、最も好ましくは2.0〜7.0mmolである。
更に、(D−1)バインダーポリマー中のアルカリ可溶性基の含有量(中和滴定による酸価)は、現像性や耐刷性の観点から、(D−1)バインダーポリマー1g当たり、好ましくは0.1〜3.0mmol、より好ましくは0.2〜2.0mmol、最も好ましくは0.3〜1.5mmolである。
また、このような(D−1)バインダーポリマーのガラス転移点(Tg)は、保存安定性や感度の観点から、好ましくは70〜300℃、より好ましくは80〜250℃、最も好ましくは90〜200℃の範囲である。
また、本発明における(D)バインダーポリマーは、(D−1)バインダーポリマーと共に、側鎖にカルボキシル基及び架橋性基を有し主鎖にポリウレタン骨格を有してなるバインダーポリマー(以下、適宜、「(D−2)バインダーポリマー」)を併用することが、画像形成層の抜けの抑制、高感度化と画像部の皮膜強度を向上、皮膜特性や現像性の向上の観点から特に好ましい。
なお、本発明における(D−2)バインダーポリマーは、側鎖にカルボキシル基及び架橋性基を有し主鎖にポリウレタン骨格を有してなるバインダーポリマーであり、前記一般式(I)で表される繰り返し単位を含まないものである。
また、(D−2)バインダーポリマーは、更に、ポリマー末端及び/又は主鎖に架橋性基を有するものがより好適に使用される。このようにすることによって、更に、架橋反応性が向上し、光硬化物強度が増す。その結果、耐刷力に優れる平版印刷版を与えることができる。
以下、本発明における(D−2)バインダーポリマーについて詳述する。
まず、(D−2)バインダーポリマーのポリウレタン基本骨格は、例えば、(1)少なくとも1種のジイソシアネート化合物と、(2)少なくとも1つのカルボキシル基を有するジオール化合物と、を重付加反応させて得ることができる。なお、(D−2)バインダーポリマーに架橋性を持たせるためには、エチレン性不飽和結合等の架橋性基を高分子の主鎖中又は側鎖中に導入すればよい。該架橋性基は、共重合により導入してもよいし、高分子反応によって導入してもよい。
架橋性基として好ましいものは、前述した(D−1)バインダーポリマーの「側鎖に架橋性基を有する繰り返し単位」の項にて説明した架橋性基と同じであり、前述の一般式(A)(B)(C)で表される官能基が好ましい。これらの架橋性基の中でも、特に、α−置換メチルアクリル基[−OC(=O)−C(−CHZ)=CH、Z=ヘテロ原子から始まる炭化水素基]、(メタ)アクリル基、アリル基、スチリル基などエチレン性不飽和結合基が好ましく、(メタ)アクリル基又はアリル基が特に好ましい。
合成上の観点から、(D−2)バインダーポリマーは、(1)少なくとも1種のジイソシアネート化合物、(2)少なくとも1つのカルボキシル基を有するジオール化合物、(3−1)少なくとも1つの架橋性基を有するジオール化合物及び/又は(3−2)少なくとも1つの架橋性基を有するジイソシアネート化合物、並びに、必要に応じて(4)カルボキシル基を有さないジオール化合物、を重付加反応させることにより得ることが好ましい。かかる方法によれば、ポリウレタン樹脂の反応生成後に所望の側鎖を置換、導入するよりも、容易に、側鎖にカルボキシル基及び架橋性基を有し主鎖にポリウレタン骨格を有してなる(D−2)バインダーポリマーを製造することができる。
特に好ましくは、(D−2)バインダーポリマーは、少なくとも1種のジイソシアネート化合物、少なくとも1つのカルボキシル基を有するジオール化合物、少なくとも1つの架橋性基を有するジオール化合物、並びに、必要に応じて、カルボキシル基を有さないジオール化合物、を重付加反応させることにより得ることが好ましい。
より具体的には、(D−2)バインダーポリマーは、ジイソシアネート化合物、及びジオール化合物を、非プロトン性溶媒中、それぞれの反応性に応じた活性の公知の触媒を添加し、加熱することにより合成される。合成に使用されるジイソシアネート化合物及びジオール化合物のモル比(M:M)は、1:1〜1.2:1が好ましく、アルコール類又はアミン類等で処理することにより、分子量或いは粘度といった所望の物性の生成物が、最終的にイソシアネート基が残存しない形で合成される。
(D−2)バインダーポリマーに含まれる架橋性基の導入量としては、当量で言えば、側鎖に架橋性基を0.3meq/g以上、更には0.35〜1.50meq/g含有することが好ましい。
更に、カルボキシル基の導入量としては、前述の通り、側鎖にカルボキシル基を0.2〜4.0meq/g、好ましくは0.3〜3.0meq/g、更に好ましくは0.4〜2.0meq/g、特に好ましくは0.5〜1.5meq/g、最も好ましくは0.6〜1.2meq/gの範囲で有することが望ましい。
なお、架橋性基の導入量を上記範囲とするためには、(3−1)少なくとも1つの架橋性基を有するジオール化合物、及び(3−2)少なくとも1つの架橋性基を有するジイソシアネート化合物の含有量を調整すればよい。
また、ジイソシアネート化合物及びジオール化合物のモル比(M:M)を上記範囲とするためには、(3−1)少なくとも1つの架橋性基を有するジオール化合物と(3−2)少なくとも1つの架橋性基を有するジイソシアネート化合物との含有量、並びに(4)カルボキシル基を有さないジオール化合物の含有量を調整すればよい。
(D−2)バインダーポリマーの分子量としては、好ましくは重量平均分子量で10,000以上であり、より好ましくは、40,000〜20万の範囲である。重量平均分子量が上記範囲内であれば、特に画像部の強度に優れ、アルカリ性現像液による非画像部の現像性に優れた画像形成層とすることができる。
前述の(D−1)バインダーポリマーと(D−2)バインダーポリマーとの配合比(質量比)は、特に限定されるものではないが、1:9〜9:1の割合が好ましく、2:8〜8:2の割合がより好ましい。
なお、画像形成層には、前記(D−1)バインダーポリマー及び(D−2)バインダーポリマーとは別に、他の公知のバインダーポリマーを併用しても構わない。この場合、他の公知のバインダーポリマーの含有量は、バインダー合計量に対して30質量%以下となることが好ましい。
なお、公知のバインダーポリマーとしては、水溶性線状有機ポリマーとして、ポリビニルピロリドンやポリエチレンオキサイド等が有用である。また、硬化皮膜の強度を上げるためにアルコール可溶性ナイロンや2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパンとエピクロロヒドリンのポリエーテル等も有用である。
画像形成層中でのバインダーポリマー((D−1)バインダーポリマーと(D−2)バインダーポリマー、並びに必要により用いられる他の公知のバインダーポリマー)の合計使用量は、特に限定されるものではないが、通常、画像形成層中の不揮発性成分の総質量に対し、10〜90質量%であり、好ましくは20〜80質量%、更に好ましくは30〜70質量%の範囲である。
本発明における画像形成層中に、バインダーポリマーとして、架橋性基を有するウレタン樹脂(具体的には、例えば、前述の(D−2)バインダーポリマー)を含有させることで、水素結合若しくは静電相互作用により、画像形成層と中間層との密着性を向上させることができる。
次に、本発明における酸架橋層の構成成分(E)〜(G)について説明する。
なお、本発明における酸架橋層においても、増感色素(赤外線吸収剤)を用いることができる。ここで用いられる増感色素は、前記重合硬化層における(A)増感色素(赤外線吸収剤)と同様のものを用いることができる。
増感色素(赤外線吸収剤)の好ましい含有量は、酸架橋層の全固形分質量に対し、0.01〜50質量%が好ましく、0.1〜10質量%がより好ましく、更に0.5〜10質量%が最も好ましい。この含有量の範囲において、高感度な記録が達成でき、更に、得られる平版印刷用の非画像部における汚れの発生が抑制される。
[(E)酸発生剤]
本発明に用いうる光又は熱により分解して酸を発生する化合物(酸発生剤)は、200〜500nmの波長領域の光を照射する、又は100℃以上に加熱することにより、酸を発生する化合物をいう。
このような酸発生剤としては、光カチオン重合の光開始剤、光ラジカル重合の光開始剤、色素類の光消色剤、光変色剤、或いは、マイクロレジスト等に使用されている公知の酸発生剤等、熱分解して酸を発生しうる、公知の化合物、及びそれらの混合物等が挙げられる。
上述の酸発生剤のうち、下記一般式(E−1)〜(E−5)で表される化合物が好ましく用いられる。
Figure 2008216367
上記一般式(E−1)〜(E−5)中、R、R、R、及びRは、同一でも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい炭素数20以下の炭化水素基を表す。Rは、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数10以下の炭化水素基、又は炭素数10以下のアルコキシ基を表す。Ar、Arは、同一でも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい炭素数20以下のアリール基を表す。Rは、置換基を有していてもよい炭素数20以下の2価の炭化水素基を表す。nは、0〜4の整数を表す。
一般式(E−1)〜(E−5)中、R、R、R、及びRは、炭素数1〜14の炭化水素基が好ましい。
前記一般式(E−1)〜(E−5)で表される酸発生剤の好ましい態様は、本願出願人が先に提案した特開2001−142230号公報の段落番号[0197]〜[0222]に一般式(I)〜(V)の化合物として詳細に記載されている。これらの化合物は、例えば、特開平2−100054号、特開平2−100055号公報に記載の方法により合成することができる。
また、(E)酸発生剤として、ハロゲン化物やスルホン酸等を対イオンとするオニウム塩も挙げることができ、中でも、下記一般式(E−6)〜(E−8)で表されるヨードニウム塩、スルホニウム塩、ジアゾニウム塩のいずれかの構造式を有するものを好適に挙げることができる。
Figure 2008216367
上記一般式(E−6)〜(E−8)中、Xは、ハロゲン化物イオン、ClO 、PF 、SbF 、BF 又はRSO を表し、ここで、Rは、置換基を有していてもよい炭素数20以下の炭化水素基を表す。Ar、Arは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数20以下のアリール基を表す。R、R、R10は、置換基を有していてもよい炭素数18以下の炭化水素基を表す。
このようなオニウム塩は、特開平10−39509号公報段落番号[0010]〜[0035]に一般式(I)〜(III)の化合物として記載されている。
(E)酸発生剤の添加量としては、画像形成層の全固形分質量に対し0.01〜50質量%が好ましく、0.1〜25質量%がより好ましく、0.5〜20質量%が最も好ましい。前記添加量が、0.01質量%未満であると、画像が得られないことがあり、50質量%を超えると、平版印刷用原版とした時の印刷時において非画像部に汚れが発生することがある。
また、前述の酸発生剤は単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
[(F)架橋剤]
次に、本発明に用いうる(F)架橋剤について説明する。架橋剤としては、以下の(i)〜(iii)の化合物が挙げられる。
(i)ヒドロキシメチル基若しくはアルコキシメチル基で置換された芳香族化合物
(ii)N−ヒドロキシメチル基、N−アルコキシメチル基若しくはN−アシルオキシメチル基を有する化合物
(iii)エポキシ化合物
以下、前記(i)〜(iii)の化合物について詳述する。
前記(i)ヒドロキシメチル基若しくはアルコキシメチル基で置換された芳香族化合物としては、例えば、ヒドロキシメチル基、アセトキシメチル基若しくはアルコキシメチル基でポリ置換されている芳香族化合物又は複素環化合物が挙げられる。但し、レゾール樹脂として知られるフェノール類とアルデヒド類とを塩基性条件下で縮重合させた樹脂状の化合物も含まれる。
ヒドロキシメチル基又はアルコキシメチル基でポリ置換された芳香族化合物又は複素環化合物のうち、中でも、ヒドロキシ基に隣接する位置にヒドロキシメチル基又はアルコキシメチル基を有する化合物が好ましい。
前記アルコキシメチル基でポリ置換された芳香族化合物又は複素環化合物では、中でも、アルコキシメチル基が炭素数18以下の化合物が好ましく、下記一般式(F−1)〜(F−4)で表される化合物がより好ましい。
Figure 2008216367
Figure 2008216367
前記一般式(F−1)〜(F−4)中、L〜Lは、それぞれ独立に、メトキシメチル、エトキシメチル等の、炭素数18以下のアルコキシ基で置換されたヒドロキシメチル基又はアルコキシメチル基を表す。
これらの架橋剤は、架橋効率が高く、耐刷性を向上できる点で好ましい。
前記(ii)N−ヒドロキシメチル基、N−アルコキシメチル基若しくはN−アシルオキシメチル基を有する化合物としては、欧州特許公開(以下、「EP−A」と示す。)第0,133,216号、西独特許第3,634,671号、同第3,711,264号に記載の、単量体、及びオリゴマー、メラミン−ホルムアルデヒド縮合物並びに尿素−ホルムアルデヒド縮合物、EP−A第0,212,482号明細書に記載のアルコキシ置換化合物等が挙げられる。
中でも、例えば、少なくとも2個の遊離N−ヒドロキシメチル基、N−アルコキシメチル基若しくはN−アシルオキシメチル基を有するメラミン−ホルムアルデヒド誘導体が好ましく、N−アルコキシメチル誘導体が最も好ましい。
前記(iii)エポキシ化合物としては、1以上のエポキシ基を有する、モノマー、ダイマー、オリゴマー、ポリマー状のエポキシ化合物が挙げられ、例えば、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの反応生成物、低分子量フェノール−ホルムアルデヒド樹脂とエピクロルヒドリンとの反応生成物等が挙げられる。
その他、米国特許第4,026,705号、英国特許第1,539,192号の各明細書に記載され、使用されているエポキシ樹脂を挙げることができる。
架橋剤として、前記(i)〜(iii)の化合物を用いる場合の添加量としては、画像形成層の全固形分質量に対し5〜80質量%が好ましく、10〜75質量%がより好ましく、20〜70質量%が最も好ましい。
前記添加量が、5質量%未満であると、得られる画像記録材料の画像形成層の耐久性が低下することがあり、80質量%を超えると、保存時の安定性が低下することがある。
本発明においては、架橋剤として、(iv)下記一般式(F−5)で表されるフェノール誘導体も好適に使用することができる。
Figure 2008216367
前記一般式(F−5)中、Arは、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環を表し、R、R及びRは水素原子又は炭素数12個以下の炭化水素基を表す。mは2〜4の整数を表し、nは1〜3の整数を表す。
原料の入手性の点で、前記芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環、ナフタレン環又はアントラセン環が好ましい。また、その置換基としては、ハロゲン原子、炭素数12以下の炭化水素基、炭素数12以下のアルコキシ基、炭素数12以下のアルキルチオ基、シアノ基、ニトロ基、トリフルオロメチル基等が好ましい。
上記のうち、高感度化が可能である点で、Arとしては、置換基を有していないベンゼン環、ナフタレン環、或いは、ハロゲン原子、炭素数6以下の炭化水素基、炭素数6以下のアルコキシ基、炭素数6以下のアルキルチオ基、炭素数12以下のアルキルカルバモイル基、又はニトロ基等を置換基として有するベンゼン環、又はナフタレン環がより好ましい。
前記R、Rで表される炭化水素基としては、合成が容易であるという理由から、メチル基が好ましい。Rで表される炭化水素基としては、感度が高いという理由から、メチル基、ベンジル基等の炭素数7以下の炭化水素基であることが好ましい。
更に、合成の容易さから、mは、2又は3であることが好ましく、nは1又は2であることが好ましい。
[(G)アルカリ可溶性ポリマー]
本発明に用いうる(G)アルカリ可溶性ポリマーとしては、ノボラック樹脂や側鎖にヒドロキシアリール基を有するポリマー等が挙げられる。また、(G)アルカリ可溶性ポリマーとして、架橋性基を有するウレタン樹脂(具体的には、例えば、前述の(D−2)バインダーポリマー)を用いることも好ましい態様である。
ノボラック樹脂としては、フェノール類とアルデヒド類を酸性条件下で縮合させた樹脂が挙げられる。
中でも、例えば、フェノールとホルムアルデヒドから得られるノボラック樹脂、m−クレゾールとホルムアルデヒドから得られるノボラック樹脂、p−クレゾールとホルムアルデヒドから得られるノボラック樹脂、o−クレゾールとホルムアルデヒドから得られるノボラック樹脂、オクチルフェノールとホルムアルデヒドから得られるノボラック樹脂、m−/p−混合クレゾールとホルムアルデヒドから得られるノボラック樹脂、フェノール/クレゾール(m−,p−,o−又はm−/p−,m−/o−,o−/p−混合のいずれでもよい)の混合物とホルムアルデヒドから得られるノボラック樹脂や、フェノールとパラホルムアルデヒドとを原料とし、触媒を使用せず密閉状態で高圧下、反応させて得られるオルソ結合率の高い高分子量ノボラック樹脂等が好ましい。
これらのノボラック樹脂は、重量平均分子量が800〜300,000で、数平均分子量が400〜60,000のものの中から、目的に応じて好適なものを選択して用いればよい。
また、(G)アルカリ可溶性ポリマーとしては、側鎖にヒドロキシアリール基を有するポリマーも好ましく、該ポリマー中のヒドロキシアリール基としては、OH基が1以上結合したアリール基が挙げられる。
前記アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基等が挙げられ、中でも、入手の容易性及び物性の観点から、フェニル基又はナフチル基が好ましい。
前記側鎖にヒドロキシアリール基を有するポリマーとしては、例えば、下記一般式(G−1)〜(G−4)で表される構成単位のうちのいずれか1種を含むポリマーを挙げることができる。但し、本発明においては、これらに限定されるものではない。
Figure 2008216367
上記一般式(G−1)〜(G−4)中、R11は、水素原子又はメチル基を表す。R12及びR13は、同じでも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数10以下の炭化水素基、炭素数10以下のアルコキシ基又は炭素数10以下のアリールオキシ基を表す。また、R12とR13が結合、縮環してベンゼン環やシクロヘキサン環を形成していてもよい。R14は、単結合又は炭素数20以下の2価の炭化水素基を表す。R15は、単結合又は炭素数20以下の2価の炭化水素基を表す。R16は、単結合又は炭素数10以下の2価の炭化水素基を表す。Xは、単結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合又はアミド結合を表す。pは、1〜4の整数を表す。q及びrは、それぞれ独立に0〜3の整数を表す。
これらのアルカリ可溶性ポリマーとしては、本願出願人が先に提案した特開2001−142230号公報の段落番号[0130]〜[0163]に詳細に記載されている。
本発明においては、アルカリ可溶性ポリマーは、1種類のみで使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
(G)アルカリ可溶性ポリマーの添加量としては、画像形成層の全固形分に対し5〜95質量%が好ましく、10〜95質量%がより好ましく、20〜90質量%が最も好ましい。アルカリ可溶性ポリマーの添加量が、5質量%未満であると、画像形成層の耐久性が劣化することがあり、95質量%を超えると、画像形成されないことがある。
[その他の成分]
前述の成分を含有する重合硬化層や酸架橋層のような画像形成層には、更に必要に応じて、種々の化合物を添加してもよい。
例えば、可視光域に大きな吸収を持つ染料を、画像部の着色剤として使用することができる。また、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、カーボンブラック、酸化チタンなどの顔料も好適に用いることができる。
また、本発明においては、画像形成層が重合硬化層である場合、塗布液の調製中或いは保存中においてラジカル重合性化合物の不要な熱重合を阻止するために、少量の熱重合防止剤を添加することが望ましい。
適当な熱重合防止剤としては、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩等が挙げられる。
熱重合防止剤の添加量は、組成物の全質量に対して約0.01質量%〜約5質量%が好ましい。また、必要に応じて、酸素による重合阻害を防止するためにベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体等を添加して、塗布後の乾燥の過程で画像形成層の表面に偏在させてもよい。高級脂肪酸誘導体の添加量は、全組成物の約0.1質量%〜約10質量%が好ましい。
また、本発明における画像形成層には、現像条件に対する処理の安定性を広げるため、特開昭62−251740号や特開平3−208514号に記載されているような非イオン界面活性剤、特開昭59−121044号、特開平4−13149号に記載されているような両性界面活性剤を添加することができる。
非イオン界面活性剤の具体例としては、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタントリオレート、ステアリン酸モノグリセリド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等が挙げられる。
両性界面活性剤の具体例としては、アルキルジ(アミノエチル)グリシン、アルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩、2−アルキル−N−カルボキシエチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、N−テトラデシル−N,N−ベタイン型(例えば、商品名アモーゲンK、第一工業(株)製)等が挙げられる。
上記非イオン界面活性剤及び両性界面活性剤の画像形成層中に占める割合は、0.05〜15質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜5質量%である。
更に、本発明における画像形成層を形成するための塗布液中には、必要に応じ、塗膜の柔軟性等を付与するために可塑剤が加えられる。例えば、ポリエチレングリコール、クエン酸トリブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、オレイン酸テトラヒドロフルフリル等が用いられる。
なお、本発明に係るネガ型画像形成層としては、特開平8−276558号公報に記載のフェノール誘導体を含有するネガ型画像記録材料、特開平7−306528号公報に記載のジアゾニウム化合物を含有するネガ型記録材料、特開平10−203037号公報に記載されている環内に不飽和結合を有する複素環基を有するポリマーを用いた、酸触媒による架橋反応を利用したネガ型画像形成材料などに記載された画像形成層を、本発明における酸架橋層として適用することもできる。
≪2.露光により疎水化領域が形成される画像形成層(疎水化前駆体含有画像形成層)≫
次に、本発明におけるネガ型画像形成層に適用される露光により疎水化領域が形成される画像形成層について説明する。このような画像形成層は、光照射や加熱により疎水性領域(インク受容性領域)を形成しうる化合物(疎水化前駆体)を含有するものである。
このような画像形成層は、疎水化前駆体として、(a)熱反応性官能基を有する微粒子ポリマー、又は、(b)熱反応性官能基を有する化合物を内包するマイクロカプセルなどのように、光照射や加熱により、互いに融着したり、例えば、マイクロカプセルであれば、その内包物が熱により化学反応を起こしたりして、画像部領域、即ち疎水性領域(インク受容性領域)を形成する化合物を含有する。これらの疎水化前駆体は、通常、親水性のバインダー中に分散されているので、画像形成(露光)後は、印刷機シリンダー上に平版印刷版原版を取付け、湿し水及び/又はインキを供給することで、特段の現像処理を行なうことなく、機上現像できることが特徴である。
本発明において用いられる疎水化前駆体である、(a)熱反応性官能基を有する微粒子ポリマー、又は、(b)熱反応性官能基を有する化合物を内包するマイクロカプセルについて説明する。
上記(a)及び(b)に共通の熱反応性官能基としては、例えば、重合反応を行うエチレン性不飽和基(例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基)、付加反応を行うイソシアネート基又はそのブロック体、その反応相手である活性水素原子を有する官能基(例えば、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基)、同じく付加反応を行うエポキシ基、その反応相手であるアミノ基、カルボキシル基、又はヒドロキシル基、縮合反応を行うカルボキシル基とヒドロキシル基又はアミノ基、開環付加反応を行う酸無水物とアミノ基又はヒドロキシル基が挙げられる。なお、本発明に用いられる熱反応性官能基は、これらに限定されず、化学結合が形成されるならば、どのような反応を行う官能基でもよい。
[(a)熱反応性官能基を有する微粒子ポリマー]
(a)微粒子ポリマーに好適な熱反応性官能基としては、例えば、アクリロイル基、メタクリルロイル基、ビニル基、アリル基、エポキシ基、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、イソシアネート基、酸無水物基、及びそれらを保護した基が挙げられる。熱反応性官能基のポリマー微粒子への導入は、ポリマーの重合時に行ってもよいし、重合後に高分子反応を利用して行ってもよい。
熱反応性官能基をポリマーの重合時に導入する場合は、熱反応性官能基を有するモノマーを用いて乳化重合又は懸濁重合を行うのが好ましい。
熱反応性官能基を有するモノマーの具体例としては、アリルメタクリレート、アリルアクリレート、ビニルメタクリレート、ビニルアクリレート、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、2−イソシアネートエチルメタクリレート、そのアルコールなどによるブロックイソシアネート、2−イソシアネートエチルアクリレート、そのアルコールなどによるブロックイソシアネート、2−アミノエチルメタクリレート、2−アミノエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、二官能アクリレート、二官能メタクリレートが挙げられるが、本発明ではこれらに限定されない。
また、これらのモノマーと共重合可能な、熱反応性官能基を有しないモノマーとしては、例えば、スチレン、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、アクリロニトリル、酢酸ビニルが挙げられるが、本発明ではこれらに限定されない。
一方、熱反応性官能基をポリマーの重合後に導入する場合に用いられる高分子反応としては、例えば、国際公開第96/34316号パンフレットに記載されている高分子反応が挙げられる。
上記(a)熱反応性官能基を有する微粒子ポリマーの中でも、画像形成性の観点からは、微粒子ポリマー同志が熱により容易に融着、合体するものが好ましく、また、機上現像性の観点から、その表面が親水性で、水に分散するものが、特に好ましい。また、微粒子ポリマーのみを塗布し、凝固温度よりも低い温度で乾燥して作製したときの皮膜の接触角(空中水滴)が、凝固温度よりも高い温度で乾燥して作製したときの皮膜の接触角(空中水滴)よりも低くなることが好ましい。
微粒子ポリマー表面の親水性をこのような好ましい状態にするには、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールなどの親水性ポリマー或いはオリゴマー、又は親水性低分子化合物を微粒子ポリマー表面に吸着させてやればよいが、微粒子の表面親水化方法はこれらに限定されるものではなく、公知の種々の表面親水化方法を適用することができる。
(a)熱反応性官能基を有する微粒子ポリマーの熱融着温度は、70℃以上であることが好ましいが、経時安定性を考えると80℃以上が更に好ましい。ただし、あまり熱融着温度が高いと感度の観点からは好ましくないので、80〜250℃の範囲が好ましく、100〜150℃の範囲であることが更に好ましい。
また、(a)熱反応性官能基を有する微粒子ポリマーの平均粒径は、0.01〜20μmであるのが好ましいが、その中でも0.05〜2.0μmであるのがより好ましく、0.1〜1.0μmであるのが好ましい。この範囲内で良好な解像度と経時安定性が得られる。
(a)熱反応性官能基を有する微粒子ポリマーの添加量は、画像形成層固形分の50〜98質量%が好ましく、60〜95質量%が更に好ましい。
[(b)熱反応性官能基を有する化合物を内包するマイクロカプセル]
ここで、熱反応性官能基を有する化合物に好適な熱反応性官能基としては、先に(a)、(b)に共通のものとして挙げた官能基の他、例えば、重合性不飽和基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボキシレート基、酸無水物基、アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基、イソシアネートブロック体などが挙げられる。
本発明における(b)熱反応性官能基を有する化合物を内包するマイクロカプセルは、上述のような熱反応性官能基を有する化合物を用いる。
重合性不飽和基を有する化合物としては、エチレン性不飽和結合、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物であるのが好ましい。そのような化合物群は当該産業分野において広く知られるものであり、本発明においては、これらを特に限定されずに用いることができる。これらは、化学的形態としては、モノマー、プレポリマー、即ち、二量体、三量体及びオリゴマー、又はそれらの混合物、及びそれらの共重合体である。
具体的には、例えば、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸)、そのエステル、不飽和カルボン酸アミドが挙げられる。中でも、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコールとのエステル、及び不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミンとのアミドが好ましい。
また、ヒドロキシル基、アミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル又は不飽和カルボン酸アミドと、単官能若しくは多官能のイソシアネート又はエポキシドと、の付加反応物、及び、単官能若しくは多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に用いられる。
更に、イソシアネート基、エポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル又はアミドと、単官能若しくは多官能のアルコール、アミン又はチオールとの付加反応物、及び、ハロゲン基やトシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル又はアミドと、単官能若しくは多官能アルコール、アミン又はチオールとの置換反応物も好適である。
また、別の好適な例として、上記の不飽和カルボン酸を、不飽和ホスホン酸又はクロロメチルスチレンに置き換えた化合物が挙げられる。
これらの具体的な化合物としては、本願出願人が先に提案した特開2001−27742号公報の段落番号〔0014〕乃至〔0035〕に、また、これらの化合物を内包するマイクロカプセルの詳細な製造方法については、同〔0036〕乃至〔0039〕に記載され、これらの記載は本発明にも適用し得る。
(b)マイクロカプセルに好適に用いられるマイクロカプセル壁は、三次元架橋を有し、溶剤によって膨潤する性質を有するものである。このような観点から、マイクロカプセルの壁材は、ポリウレア、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、又はこれらの混合物が好ましく、特に、ポリウレア及びポリウレタンが好ましい。また、マイクロカプセル壁に熱反応性官能基を有する化合物を導入してもよい。
また、(b)マイクロカプセルの平均粒径は、0.01〜20μmであるのが好ましく、0.05〜2.0μmであるのがより好ましく、0.10〜1.0μmであるのが特に好ましい。上記範囲内であると、良好な解像度と経時安定性が得られる。
(b)熱反応性官能基を有するマイクロカプセルを用いた画像形成機構では、マイクロカプセル材料、そこに内包物された化合物、更には、マイクロカプセルが分散された画像形成層中に存在する他の任意成分などが、反応し、画像部領域、即ち疎水性領域(インク受容性領域)を形成するものであればよく、例えば、前記したようなマイクロカプセル同士が熱により融着するタイプ、マイクロカプセル内包物のうち、塗布時にカプセル表面或いはマイクロカプセル外に滲み出した化合物、或いは、マイクロカプセル壁に外部から浸入した化合物が、熱により化学反応を起こすタイプ、或いは、それらのマイクロカプセル材料や内包された化合物が添加された親水性樹脂、或いは、添加された低分子化合物と反応するタイプ、2種類以上のマイクロカプセル壁材或いはその内包物に、それぞれ異なる官能基で互いに熱反応するような官能基をもたせるものを用いることによって、マイクロカプセル同士を反応させるタイプなどが挙げられる。
このように、熱によってマイクロカプセル同志が、溶融合体することは画像形成上好ましいことであるが、必須ではない。
(b)マイクロカプセルの画像形成層への添加量は、固形分換算で、10〜60質量%であるのが好ましく、15〜40質量%であるのがより好ましい。上記範囲であると、良好な機上現像性と同時に、良好な感度及び耐刷性が得られる。
(b)マイクロカプセルを含有する画像形成層を形成する場合、内包物が溶解し、かつ、壁材が膨潤する溶剤をマイクロカプセル分散媒中に添加することができる。このような溶剤によって、内包された熱反応性官能基を有する化合物の、マイクロカプセル外への拡散が促進される。
このような溶剤は、マイクロカプセル分散媒、マイクロカプセル壁の材質、壁厚及び内包物に依存するが、多くの市販されている溶剤から容易に選択することができる。例えば、架橋ポリウレア、ポリウレタン壁からなる水分散性マイクロカプセルの場合、アルコール類、エーテル類、アセタール類、エステル類、ケトン類、多価アルコール類、アミド類、アミン類、脂肪酸類等が好ましい。
マイクロカプセル分散液には溶解しないが、前記溶剤を混合すれば溶解する溶剤も用いることができる。添加量は、素材の組み合わせにより決まるものであるが、適性値より少ない場合は、画像形成が不十分となり、多い場合は分散液の安定性が劣化する。通常、塗布液の5〜95質量%であるのが好ましく、10〜90質量%であるのがより好ましく、15〜85質量%であるのが特に好ましい。
[その他の成分]
本態様の画像形成層には、前記画像形成性を有する(a)熱反応性官能基を有する微粒子ポリマー、又は、(b)熱反応性官能基を有する化合物を内包するマイクロカプセルのほか、目的に応じて種々の添加剤を併用することができる。
(反応開始剤、反応促進剤)
前記画像形成層においては、必要に応じて、これらの反応を開始し又は促進する化合物を添加してもよい。反応を開始し又は促進する化合物としては、例えば、熱によりラジカル又はカチオンを発生するような化合物が挙げられる。具体的には、例えば、ロフィンダイマー、トリハロメチル化合物、過酸化物、アゾ化合物、ジアゾニウム塩又はジフェニルヨードニウム塩などを含んだオニウム塩、アシルホスフィン、イミドスルホナートが挙げられる。
これらの化合物は、画像形成層固形分の1〜20質量%の範囲で添加するのが好ましく、3〜10質量%の範囲であるのがより好ましい。上記範囲内であると、機上現像性を損なわず、良好な反応開始効果又は反応促進効果が得られる。
(親水性ポリマー)
本発明におけるこのような画像形成層には、親水性ポリマーを用いることが好ましい。親水性ポリマーを用いることにより機上現像性が良好となるばかりか、画像形成層自体の皮膜強度も向上する。
親水性ポリマーとしては、例えば、ヒドロキシル、カルボキシル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、アミノ、アミノエチル、アミノプロピル、カルボキシメチルなどの親水基を有するものが好ましい。また、親水性ポリマーとして、架橋性基を有するウレタン樹脂(具体的には、例えば、前述の(D−2)バインダーポリマー)を用いることも好ましい態様である。
親水性ポリマーの具体例として、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、澱粉誘導体、カルボキシメチルセルロース及びそのナトリウム塩、セルロースアセテート、アルギン酸ナトリウム、酢酸ビニル−マレイン酸コポリマー類、スチレン−マレイン酸コポリマー類、ポリアクリル酸類及びそれらの塩、ポリメタクリル酸類及びそれらの塩、ヒドロキシエチルメタクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ヒドロキシエチルアクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ヒドロキシプロピルメタクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ヒドロキシプロピルアクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ヒドロキシブチルメタクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ヒドロキシブチルアクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ポリエチレングリコール類、ヒドロキシプロピレンポリマー類、ポリビニルアルコール類、並びに加水分解度が少なくとも60質量%、好ましくは少なくとも80質量%の加水分解ポリビニルアセテート、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、アクリルアミドのホモポリマー及びコポリマー、メタクリルアミドのホモポリマー及びポリマー、N−メチロールアクリルアミドのホモポリマー及びコポリマー等を挙げることができる。
親水性ポリマーの添加量は、画像形成層の固形分の5〜40質量%が好ましく、10〜30質量%が更に好ましい。この範囲内で、良好な機上現像性と皮膜強度が得られる。
[増感色素(赤外線吸収剤)]
このような画像形成層を、赤外線レーザによる走査露光等により画像形成するためには、増感色素として赤外線吸収剤を画像形成層に含有させることが好ましい。この増感色素(赤外線吸収剤)としては、前述の(A)増感色素と同様のものが用いられる。
この赤外線吸収剤の好ましい添加量は、画像形成層全固形分中、1〜30質量%が好ましく、5〜25質量%がより好ましい。含有量が上記範囲にあると、感度、画像形成性ともに優れた画像形成層となる。
[疎水化前駆体含有画像形成層の形成]
本発明において、疎水化前駆体含有画像形成層は、必要な上記各成分を溶剤に溶解、若しくは分散し、塗布液を調製し、前記アルミニウム基板上に形成された中間層表面に塗布されることで形成される。
なお、塗布液の固形分濃度は、好ましくは1〜50質量%である。
<平版印刷版原版の作製>
前述のアルミニウム基板上に形成された中間層表面に、ネガ型画像形成層を設けることで、本発明の平版印刷版原版が得られる。
ここで、画像形成層は、所望の層を形成するための塗布液に用いられる成分を、溶媒、若しくは分散して得られた塗布液を、中間層表面に塗布することにより形成される。
塗布液を塗布する方法としては、種々の方法を用いることができるが、例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げることができる。
ここで、画像形成層を形成する際に用いられる塗布液に使用する溶媒としては、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチロラクトン、トルエン等を、また、水溶性の画像形成層を用いる場合には、水、或いはアルコール類等の水性溶媒を挙げることができるがこれに限定されるものではなく、画像形成層の物性にあわせて適宜選択すればよい。これらの溶媒は単独或いは混合して使用される。
溶媒中の上記成分(添加剤を含む全固形分)の濃度は、好ましくは1〜50質量%である。
また、塗布、乾燥後に得られる中間層表面への塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、感光性平版印刷版について言えば、一般的に、0.5〜5.0g/mが好ましい。塗布量が少なくなるにつれて、見かけの感度は大になるが、画像形成層(画像形成層)の皮膜特性は低下する。
本発明の平版印刷版原版には、アルミニウム基板、中間層、及び画像形成層に加え、目的に応じて、オーバーコート層、樹脂中間層、下塗り層、バックコート層なども同様にして形成することができる。
以上のようにして、本発明の平版印刷版原版は、親水性が高く、また、その持続性に優れた親水性表面を備えているため、画像形成後には、非画像部の印刷汚れ性が改善され、厳しい印刷条件においても、高画質の印刷物が多数枚得られる。
〔保護層〕
本発明における画像形成層が前述の重合硬化層である場合、画像形成層上に保護層を設けることが好ましい。
本発明における保護層は、露光に用いる光の透過は実質阻害せず、画像形成層との密着性に優れ、かつ、露光後の現像工程で容易に除去できることが望ましい。このような保護層に関する工夫は従来、種々なされており、例えば、米国特許第3,458,311号明細書及び特開昭55−49729号公報に詳しく記載されている。このような保護層を本発明の平版印刷版原版にも適用することができる。
また、本発明におけるネガ型平版印刷版原版が重合硬化層を有する場合、露光時において大気中の酸素を遮断して重合阻害作用を呈する酸素遮断能を有する保護層を用いることが望ましい。一方で、保存時の安定性或いはセーフライト適性の観点で暗重合防止作用を呈する程度の酸素透過能を有することも望ましく、両機能を有する程度において、低酸素遮断性を有する保護層とすることが望ましい。
保護層に主成分として用いられる材料としては、比較的、結晶性に優れた水溶性高分子化合物を用いることが好ましく、具体的には、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、酸性セルロース類、ゼラチン、アラビアゴム、ポリアクリル酸などのような水溶性ポリマーが当業界でよく知られている。
これらの中で、ポリビニルアルコールを主成分として用いることが、酸素遮断性、現像除去性といった基本特性に最も良好な結果を与える。保護層に使用するポリビニルアルコールは、必要とされる酸素遮断性と水溶性を有するための、未置換ビニルアルコール単位を含有する限り、一部がエステル、エーテル、及びアセタールで置換されていても良い。また、同様に一部が他の繰り返し単位を有する共重合体であっても良い。
具体的には、(株)クラレ製のPVA−105、PVA−110、PVA−117、PVA−117H、PVA−120、PVA−124、PVA−124H、PVA−CS、PVA−CST、PVA−HC、PVA−203、PVA−204、PVA−205、PVA−210、PVA−217、PVA−220、PVA−224、PVA−217EE、PVA−217E、PVA−220E、PVA−224E、PVA−405、PVA−420、PVA−613、L−8等が挙げられる。上記の共重合体としては、88〜100%加水分解されたポリビニルアセテートクロロアセテート又はプロピオネート、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール及びそれらの共重合体が挙げられる。その他有用な水溶性高分子化合物としてはポリビニルピロリドン、ゼラチン及びアラビアゴム等が挙げられ、これらは単独又は併用して用いてもよい。
本発明における保護層には、前記高分子化合物に加え、フィラーを含有していてもよい。フィラーを含有することによって、画像形成層表面の耐キズ性の向上が図れ、更には、平版印刷版原版を、合紙を介することなく積層した場合に生じる隣接する平版印刷版原版との接着が抑制され、平版印刷版原版同士の剥離性を優れたものとしうるため、ハンドリング性が向上するという利点をも有することになる。かかるフィラーとしては、有機フィラー、無機フィラー、無機−有機複合フィラー等のいずれでもよく、またこれらのうち、2種以上を混合して用いてもよい。
保護層の塗布量は、得られる保護層の膜強度や耐キズ性、画質の維持、セーフライト適性を付与するための適切な酸素透過性を維持する観点で、0.1g/m〜4.0g/mが好ましく、0.3g/m〜3.0g/mがより好ましい。
本発明の平版印刷版原版は、その画像形成層に応じた公知の製版方法を適用し、平版印刷版を得ることができる。
その後、得られた平版印刷版は、印刷機にかけられ、多数枚の印刷に用いられる。
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明の範囲はこれらに特に限定されるものではない。
〔実施例1〜8、比較例1〕
<アルミニウム基板P−1〜P−4の作製>
使用済み飲料缶(UBC)地金を用いて溶湯を調製し、溶湯処理及びろ過を行った上で、厚さ500mm、幅1200mmの鋳塊をDC鋳造法で作成した。表面を平均10mmの厚さで面削機により削り取った後、550℃で、約5時間均熱保持し、温度400℃に下がったところで、熱間圧延機を用いて厚さ2.7mmの圧延板とした。更に、連続焼鈍機を用いて熱処理を500℃で行った。引き続き冷間圧延を行って、厚さ0.3mm、幅1060mmに仕上げ、アルミニウム板AL−1、AL−2を得た。それぞれの組成を表1に示す。
アルミニウム板AL−1、AL−2の組成を下記表1に示す。なお、表1中の数値の単位は質量%である。
Figure 2008216367
<表面疎面化処理>
得られた各アルミニウム板を以下に示す表面処理に供して、アルミニウム基板P−1〜P−4を作製した。
表面処理は、以下の(a)〜(e)の処理を連続的に(下記表2に記載の通り)行うことにより実施した。
Figure 2008216367
(a)ブラシと研磨剤を用いる機械的粗面化処理
比重1.13のパミストン(平均粒径30μm)を水に懸濁させた懸濁液を研磨スラリー液として用い、回転ブラシを1本とし、粗面化後のRaが0.58μmとなるようにブラシ回転数250rpmで機械的粗面化を行った。
ローラ状ブラシとしては、毛長50mm、毛の直径0.295mmの6・10ナイロンの毛を、直径300mmのステンレス鋼製ローラの表面に孔を開けて密になるように植設したものを用いた。
ブラシ下部の2本の支持ローラは、直径200mmのステンレス鋼製ローラを中心間の距離300mmで用いた。
ローラ状ブラシは、ブラシを回転させる駆動モータの負荷がブラシローラをアルミニウム板に押さえつける前の負荷に対して7kwプラスになる圧力で押し付け、粗面化面における回転方向がアルミニウムウェブWの搬送方向と同方向になるように回転させた。
研磨材スラリーの温度と比重とから研磨材の濃度を連続的に求め、濃度が一定になるように、水及びパミストンをスラリー回収槽に補充しつつ、機械的粗面化を行った。また、機械的粗面化において粉砕され、細粒化したパミストンは、粒子径調整部における分級器で除去し、前記研磨材スラリー中のパミストンの粒度分布がほぼ一定になるようにした。なお、分級器としては、サイクロンを用いた。
(b)アルカリ水溶液中でのエッチング処理
アルミニウム板に、カセイソーダ濃度370g/L、アルミニウムイオン濃度100g/L、温度60℃の水溶液をスプレー管から吹き付けて、エッチング処理を行った。アルミニウム板の後に電気化学的粗面化処理を施す面のエッチング量は、3g/mであった。その後、ニップローラで液切りし、自由落下カーテン状の液膜により水洗処理する装置を用いて水洗し、更に、扇状に噴射水が広がるスプレーチップを80mm間隔で有する構造を有するスプレー管を用いて5秒間水洗処理した後、ニップローラで液切りした。
(c)電気化学的粗面化処理
特開2005−35034号公報の35ページ(b)から36ページ(h)に記載の方法により、電気化学的粗面化処理を実施した。前述のUBCアルミニウム材を用いたアルミニウム板に対して電気化学的粗面化処理を行った基板P−1、P−3では、部分的な未エッチング部が発生して、均一な表面構造が得られなかった。
(d)陽極酸化処理
特開2005−35034号公報の図4に示される陽極酸化処理装置を用いて陽極酸化処理を行った。電解液としては、170g/L硫酸水溶液に硫酸アルミニウムを溶解させてアルミニウムイオン濃度を5g/Lとした電解液(温度33℃)を用いた。陽極酸化処理は、アルミニウム板がアノード反応する間(約16秒)の平均電流密度が15A/dmとなるように行い、最終的な酸化皮膜量は2.4g/mであった。なお、アルミニウム板がアノード反応にあずかる時間は16秒であった。
その後、ニップローラで液切りし、水洗し、更にニップローラで液切りした。
(e)シリケート処理
アルミニウム板をケイ酸ソーダ2.5質量%水溶液(液温20℃)に10秒間浸せきさせた。蛍光X線分析装置で測定したアルミニウム板表面のSi量は、3.5mg/mであった。その後、ニップローラで液切りし、水洗し、更にニップローラで液切りした。更に、90℃の風を10秒間吹き付けて乾燥させた。
<中間層の形成>
1.特定親水性ポリマーの合成
500ml三口フラスコにアクリルアミド50g、メルカプトプロピルトリメトキシシラン3.4g、及びジメチルアセトアミド220gを入れ、65℃窒素気流下、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.5gを加えた。6時間攪拌しながら同温度に保った後、室温まで冷却した。酢酸エチル2リットル中に投入し、析出した固体をろ取し、水洗して親水性ポリマーを得た。乾燥後の質量は52.4gであった。GPC(ポリエチレンオキシド標準)により重量平均分子量8000のポリマーであり、13C−NMR(DMSO−d)により末端にトリメトキシシリル基(50.0ppm)が導入された、前記例示化合物(1−1)の構造を有する特定親水性ポリマーであることが確認された。
他の特定親水性ポリマーについても、同様にして合成した。
2.ゾルゲル液組成物による修飾
2−1.塗布液組成物の調整
以下の組成によりポリマー溶液1、触媒液1をそれぞれ調製し、テトラメトキシシランと混合してゾルゲル液組成物1を作成した。ゾルゲル液組成物1は、20℃にて2時間撹拌した。なお、ポリマー溶液1の溶媒は、ポリマーの水への溶解性が低い場合には、メタノールを添加して調整した。
(ポリマー溶液1)
・本発明における特定親水性ポリマー[例示化合物(1−1)] 0.5g
・水 12.6g
(触媒液1)
・エタノール 54.9g
・アセチルアセトン 2.46g
・テトラエトキシチタン 2.81g
・水 0.44g
(ゾルゲル液組成物1)
・ポリマー溶液1 13.1g
・触媒液1 2.9g
・テトラメトキシシラン 1.49g
次いで、上記ゾルゲル液組成物1、並びに、下記により調整した希釈液1を用いて、中間層形成用塗布液1を作成した。
(希釈液1)
・水 74.1g
・日産化学工業(株)製 スノーテックスC(20%水分散物) 26g
・スルホコハク酸ジオクチルナトリウム(5%水溶液) 5.5g
(中間層形成用塗布液1)
・ゾルゲル液組成物1 17.54g
・希釈液1 10.1g
得られた中間層形成用塗布液1を、アルミニウム基板P−1〜P−4上に、乾燥後の塗布量が0.2g/mとなるように塗布し、120℃で10分間加熱乾燥させて中間層を形成し、平版印刷版用支持体1〜4を得た。
また、本発明における他の特定親水性ポリマー[下記表4に記載の種類]についても、同様にして中間層形成用塗布液を調製し、アルミニウム基板P−2上に中間層を形成することで、平版印刷版用支持体5〜8を得た。
また、アルミニウム基板P−2に中間層を設けなかったものを比較平版印刷版用支持体c−1とした。
3.中間層表面の接触角評価
得られた平版印刷版用支持体1〜4について、中間層の表面接触角(空中水滴)を協和界面科学(株)製、CA−Zを用いて測定し、また、中間層を設けていないアルミニウム基板P−1〜P−4表面の接触角も同様に測定し、それぞれを比較した。結果を表3に示す。
Figure 2008216367
上記表3から、以下のことがわかる。
即ち、本発明における中間層の存在により、好ましい親水化がなされ、低い接触角を示すことが確認できた。
また、平版印刷版用支持体1と2とを比較すると、電気化学的粗面化処理を行わない基板P−2を用いた方が接触角が小さく、また、平版印刷版用支持体1と3とを比較すると、シリケート処理を施した基板P−1を用いた方が接触角が小さいことがわかる。
<ネガ型画像形成層の形成>
−赤外線レーザ記録可能な重合硬化層−
下記組成のネガ型画像形成層塗布液1を調製し、得られた平版印刷版用支持体1〜8、及び比較平版印刷版用支持体c−1に、この塗布液を乾燥後の塗布量(画像形成層塗布量)が1.4g/mになるよう塗布し、乾燥させて重合硬化層を形成した。乾燥は、温風式乾燥装置にて115℃で34秒間行った。
(ネガ型画像形成層塗布液1)
・赤外線吸収剤(IR−1) 0.074g
・重合開始剤(OS−12) 0.280g
・添加剤(PM−1) 0.151g
・重合性化合物(AM−1) 1.00g
・バインダーポリマー(BT−1)(重量平均分子量:10万) 1.00g
・エチルバイオレット(C−1) 0.04g
・バインダーポリマー(BT−2)(n=15、重量平均分子量:9万) 1.00g
・フッ素系界面活性剤 0.015g
(メガファックF−780−F 大日本インキ化学工業(株)、メチルイソブチルケトン(MIBK)30質量%溶液)
・メチルエチルケトン 10.4g
・メタノール 4.83g
・1−メトキシ−2−プロパノール 10.4g
なお、上記ネガ型画像形成層塗布液1に用いた重合開始剤(OS−12)は、前述の一般式(b−1)で表されるオニウム塩の化合物例として挙げられているものを指す。また、赤外線吸収剤(IR−1)、添加剤(PM−1)、重合性化合物(AM−1)、バインダーポリマー(BT−1)、エチルバイオレット(C−1)、及び、バインダーポリマー(BT−2)の構造を以下に示す。
Figure 2008216367
Figure 2008216367
<保護層の形成>
前述のネガ型画像形成層(重合硬化層)上に、合成雲母(ソマシフME−100、8質量%水分散液、コープケミカル(株)製)と、ケン化度が91モル%以上のポリビニルアルコール(ゴーセランCKS−50:ケン化度99モル%、重合度300、スルホン酸変性ポリビニルアルコール日本合成化学工業株式会社製)と、界面活性剤(日本エマルジョン社製、エマレックス710)と、の混合水溶液(保護層用塗布液)をワイヤーバーで塗布し、温風式乾燥装置にて125℃75秒間乾燥させた。
この混合水溶液(保護層用塗布液)中の、雲母固形分/ポリビニルアルコール/界面活性剤の含有量割合は、16/76/2(質量%)であり、全塗布量(乾燥後の被覆量)は1.6g/mであった。
これにより、実施例1〜8、及び比較例1の平版印刷版原版を得た。
〔露光及び現像処理〕
得られた平版印刷版原版を、Creo社製Trendsetter800IIQuantumにて、解像度2400dpi、外面ドラム回転数200rpm、出力0〜8Wの範囲でlogEで0.15ずつ変化させて露光した。なお、露光は25℃50%RHの条件下で行った。露光後、加熱処理、水洗処理は行わず、富士フイルム(株)社製自動現像機LP−1310HIIを用い搬送速度(ライン速度)2m/分、現像温度30℃で現像処理した。なお、現像液は富士フイルム(株)製DH−Nの1:4(質量比)水希釈液を用い、現像補充液は富士フイルム(株)社製FCT−421の1:1.4(質量比)水希釈液、フィニッシャーは富士フイルム(株)社製GN−2Kの1:1(質量比)水希釈液を用いた。
〔評価〕
上記のようにして現像して得られた平版印刷版について、耐刷性、汚れ防止性、放置汚れ防止性を下記の方法で評価した。
(1)耐刷性の評価
得られた平版印刷版を、小森コーポレーション社製のリスロン印刷機で、大日本インキ化学工業社製のDIC−GEOS(N)墨のインキを用いて印刷し、ベタ画像の濃度が薄くなり始めたと目視で認められた時点の印刷枚数を指標とした。なお、この評価結果は、実施例1で得られた平版印刷版の印刷枚数を基準(100)とし、他の平版印刷版の耐刷性はその相対評価とした。値が大きいほど、感度が優れていることになる。
(2)汚れ防止性の評価
得られた平版印刷版を用い、三菱ダイヤ型F2印刷機(三菱重工業社製)で、DIC−GEOS(s)紅のインキを用いて印刷し、1万枚印刷した後におけるブランケットの汚れを目視で評価した。
なお、汚れ防止性をブランケットの汚れの程度が少ない方から◎、○、△、×の4段階で評価した。結果を表4に示す。
◎:全く汚れず
○:目視では汚れが確認できず(ルーペで確認できる程度)
△:部分的に汚れる
×:完全に汚れる
(3)放置汚れ防止性
上記汚れ防止性の評価において、1万枚印刷した後、版を1時間放置し、その後、再度印刷を開始して、非画像部のブランケットの汚れを目視で評価した。
なお、放置汚れ防止性の評価基準は、上記汚れ防止性の評価基準と同様のものを用いた。結果を表4に示す。
Figure 2008216367
表4から明らかなように、実施例1〜8の平板印刷版用原板によれば、画像形成層の膜減りが少なく耐刷性に優れ、また、汚れ防止性、及び放置汚れ防止性のいずれもが良好である平版印刷版が得られる。中でも、(e)シリケート処理を行い、(c)電気化学的粗面化処理を行っていないアルミニウム基板P−2、P−4を用いた、実施例2、実施例4〜8の平版印刷版は、汚れ防止性、及び放置汚れ防止性に特に優れた性能を示していることがわかる。これにより、本発明の平版印刷版原版を製造する際に、使用される平版印刷版用支持体の製造工程を、より簡略化することが可能であるといった、予想外の効果を有することがわかる。
これに対し、本発明における中間層を有しない比較例1では、本発明に比べて性能が劣っている。
〔実施例9〜12〕
−赤外線レーザ記録可能な疎水化前駆体含有画像形成層−
(マイクロカプセル(1)の合成)
油相成分として、キシレンジイソシアナート付加体(三井武田ケミカル(株)製、タケネートD−110N)5g、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートのオリゴマー(日本ポリウレタン工業(株)製、ミリオネートMR−200)3.8g、下記構造のビニルオキシ化合物4g、下記構造の赤外線吸収色素[IR−2]1.5g、及びパイオニンA−41−C(竹本油脂(株)製)0.1gを酢酸エチル18gに溶解した。
水相成分としてPVA−205の4質量%水溶液40gを調製した。油相成分及び水相成分を混合し、ホモジナイザーを用いて12000rpmで10分間乳化した。得られた乳化物を5%テトラエチレンペンタアミン水溶液25gに添加し、室温で30分攪拌後、40℃で3時間攪拌した。このようにして得られたマイクロカプセル液(1)の固形分濃度を、20質量%になるように蒸留水を用いて希釈した。また、マイクロカプセルの平均粒径は0.34μmであった。
Figure 2008216367
(画像形成層の形成)
下記組成のマイクロカプセル型画像形成層塗布液2を調製し、この画像形成層塗布液を、前記平版印刷版用支持体1〜4上に、乾燥後の塗布量(画像形成層塗布量)が1.0g/mになるようにそれぞれ塗布し、乾燥させて画像形成層を形成し、実施例9〜12の平版印刷版原版を得た。
(マイクロカプセル型画像形成層塗布液2)
・上記合成で得られたマイクロカプセル液(1) 25g
・下記構造の酸前駆体 0.5g
・水 75g
Figure 2008216367
〔露光・現像処理、及び評価〕
得られた平版印刷版原版を、水冷式40W赤外線半導体レーザを搭載したCreo社製Trendsetter3244VFSにて、版面エネルギー300mJ/cm、解像度2400dpiの条件で露光した後、現像処理することなく、ハイデルベルグ社製印刷機SOR−Mのシリンダーに取り付け、湿し水を供給した後、インキを供給し、印刷を行った。湿し水としては、富士フイルム(株)製IF−102の4%溶液を使用し、インキとしては、大日本インキ化学工業(株)製、バリウス墨を使用した。
その結果、何枚か印刷を繰り返すうちに画像形成層の非画像部が湿し水により除去され、問題なく機上現像することができた。
機上現像を開始してから、印刷物の非画像部に汚れがなくなるまで印刷を継続した後、引き続き印刷を行い、実施例1と同様の方法で、耐刷性、汚れ防止性、放置汚れ防止性を評価した。
その結果、得られた平版印刷版原版9〜12は、いずれも、耐刷性が100であり、汚れ防止性が「◎」であり、また、放置汚れ防止性が「◎」であった。
これにより、実施例9〜12の平版印刷版原版は、耐刷性、汚れ防止性、及び放置汚れ防止性に優れることが分かる。

Claims (10)

  1. アルミニウム純度が99.4〜95質量%であるアルミニウム基板上に、該アルミニウム基板表面と直接化学結合しうる反応性基、及び、該アルミニウム基板表面と架橋構造を介して化学結合しうる反応性基のうちの少なくとも1種の反応性基を有する親水性ポリマーが前記アルミニウム基板表面に化学結合してなる層と、ネガ型画像形成層と、をこの順に有するネガ型平版印刷版原版。
  2. 前記ネガ型画像形成層が、架橋性基を有するポリウレタン樹脂を含有することを特徴とする請求項1に記載のネガ型平版印刷版原版。
  3. 前記架橋構造が、Si、Ti、Zr、Alから選択される元素を含むアルコキシド化合物の加水分解、及び縮重合により形成されたものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のネガ型平版印刷版原版。
  4. 前記親水性ポリマーが、下記一般式(1)中の構造単位(i)及び構造単位(ii)を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のネガ型平版印刷版原版。
    Figure 2008216367
    〔一般式(1)は、構造単位(ii)で表されるポリマーユニットの末端に、構造単位(i)で表されるシランカップリング基を有する高分子化合物である。一般式(1)中、R、R、R、及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜30の置換基を表し、mは0、1又は2を表し、L、及びLは、それぞれ独立に、単結合又は有機連結基を表し、Yは炭素数1〜30の置換基を表す。〕
  5. 前記親水性ポリマーが、下記一般式(2)中の構造単位(iii)及び構造単位(iv)を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のネガ型平版印刷版原版。
    Figure 2008216367
    〔一般式(2)中、R、R、R、R、R、及びR10は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜30の置換基を表し、nは0、1又は2を表し、L、及びLは、それぞれ独立に、単結合又は有機連結基を表し、Yは炭素数1〜30の置換基を表す。〕
  6. 前記一般式(2)において、Lが単結合であり、且つ、Yが−CONHであることを特徴とする請求項5に記載のネガ型平版印刷版原版。
  7. 前記アルミニウム基板が、Fe:0.3〜1質量%、Si:0.15〜1質量%、Cu:0.1〜1質量%、Mg:0.1〜1.5質量%、Mn:0.1〜1.5質量%、Zn:0.1〜1.5質量%、Cr:0.01〜0.1質量%、Ti:0.01〜0.5質量%、Al:99.4〜95質量%から構成される組成であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のネガ型平版印刷版原版。
  8. 前記アルミニウム基板表面がシリケート処理されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のネガ型平板印刷版原板。
  9. 前記ネガ型画像形成層が、赤外線レーザで記録可能なことを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載のネガ型平版印刷版原版。
  10. 前記ネガ型画像形成層が、赤外線吸収剤を含有することを特徴とする請求項9に記載のネガ型平版印刷版原版。
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