JP2008210201A - 複合河川における状態量のシミュレーションシステム - Google Patents

複合河川における状態量のシミュレーションシステム Download PDF

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Abstract

【課題】複合河川の水位及び流量を不定流解析により高精度でシミュレーションする。
【解決手段】精密法陰形式計算部21は、時点j+1における本川及び支川の上流端以外の各地点の流量の第1次近似値を時点jの値に仮定し、上流端与件水位の上昇量や前時点までの流量変化量或は与件水位と計算水位との差に基づいて2つの上流端仮定流量による2つの上流端計算水位を求め、本川下流端与件水位及び派川下流端与件水位を出発条件として結節点以外の各地点の時点j+1の水位を不定流的不等流計算により算定し、本川及び支川の結節点上流側水位を計算することにより、時点j+1における全領域の水位を計算する。また、結節点以外の次時点j+1の流量を下流に向けて再仮定し、更に、結節点から流れ出る流量である結節点下流流量を算定する。そして、本川最上流端から下流に向かって各地点の時点j+1における全領域の流量を計算する。
【選択図】図1−1

Description

本発明は、複合河川における状態量のシミュレーションシステムに関し、より詳細には、複雑な河川水系における水位及び流量等の状態量を、コンピュータにより陰形式差分法を用いてシミュレーションする際、監視領域河道に対する河道各断面の河道断面特性と河道に適合した粗度係数を組み込んで状態量を再現するシミュレーションモデルを作成し、該シミュレーションモデルを用いて、監視領域の任意の地点及び所定時間後の状態量を演算することにより、洪水流等のシミュレーションを行うことができるようにした、シミュレーションシステムに関する。
豪雨により発生する河川の不定流を解析することは、河川の水位上昇による洪水等の現象を検証し、かつ該検証に基づいて河川計画を立案し、建設過程における河川の管理を行い、洪水時における水位の予測を行い、河川管理施設の制御を行う上で、極めて重要である。一方、治水投資の効率化や守るべき地域への優先的な投資が望まれており、計画から管理に至るあらゆる段階において減災が強く求められている。
このような状況において、河道に対する深い理解が不可欠であり、不定流計算を行うことにより的確に洪水流を再現すること、洪水時における粗度係数を検証することが、河川理解の第一歩として求められている。また、このような洪水流を高精度で再現するモデルを用いて、河川の水位及び流量等の状態量を速やかにかつ的確に予測して洪水を予防する方法が必要となっている。このような洪水予防方法は、現状河道の危機管理対策としての減災方策を立案する上においても求められている。
河川の状態量を予測するための最も分かり易い方法の一つは、精度の高い不定流計算を行って、洪水到達よりも早く将来時間の下流の水位を算定する方法であり、高精度で不定流計算を行うためには、適切な計算方法を行うことと、計算に用いる河道特性や粗度係数が河道の実態を反映するものを用いる必要がある。
不定流計算による解析は、不定流としての洪水流の時間的・空間的変化を与えられた初期条件・境界条件より求めることであり、河道の横断形状が複雑であるため、実際上、数値計算で行われるのが普通である。離散化の方法としては、有限差分法、特性曲線法、有限要素法などがあり、いずれも陽形式スキームと陰形式スキームがある。陰形式スキームは、求めようとする次時点の値を織り込んで差分方程式を多元連立方程式に直して解く方式である。そのため、安定性が良いとされている。
なお、「不定流」とは、洪水のように時間的に変化する流れのことであり、不定流が河川に生じている場合における河川の各箇所の水位や流量等の状態量を解析する計算を不定流計算又は不定流解析という。
これに対して、「不等流」(厳密には、「定流不等流」)とは、上流から一定の流量が続く場合の流れを想定している。一定流量が長時間継続する可能性は低いが、例えば、洪水のピーク時にはこのような不等流が生じることがある。このような一定の流量が継続する場合であっても、河川の断面形状等の断続的変化により各断面位置の断面積や流速が異なり、このような不等の状態を呈する流れを不等流という。そして、不等流の状態を解析するための計算を不等流計算又は不等流解析という。
本発明者は、単一河川における不定流を陰形式差分法により解析する方法について、特開2003−228646号公報(特許文献1)として既に提案した。この方法は、運動方程式と連続方程式を用いて陰形式差分法により解析するものであり、計算に内在する誤差が許容誤差となるまで繰り返し計算を行い、計算誤差を低減する手法を採用している。そのため、計算結果の水位及び流量の再現性は良好である。
また、陰形式差分法により河川の水位及び流量をシミュレーションする方法として、以下の非特許文献1〜5に記載されている方法も提案されている。
特開2003−228646号公報 Dronkers,J.J, Tidal computations for rivers, coastal areas, and seas, Jour.ASCE, Vol.95,No.HY1, 1969 水理公式集昭和46年改定版・第1刷発行、土木学会水理公式集改定小委員会、1971 建設省土木研究所河川研究室:河川における不定流の計算法―陰形式差分法、土木研究所資料、第1569号、1980 建設省土木研究所河川研究室、河川における不定流計算法(IV)、土木研究所資料、土研資料2080号、1984 寒地土木研究所ホームページ、寒地河川チーム、プログラムライブラリ、一般断面の不等流計算、fiow08b.exe
上記したように、河川の洪水等を予測するために、高精度で不定流計算を行うことが求められているが、精度の状況や計算の成立条件の明確な不定流計算方法が求められており、以下のような多くの課題がある。
一般の河川は多くの支川を有しており、また、派川や遊水地などの結節部を有する場合があり、これらの条件を計算システムに組み込むことは必須の条件である。また、不定流状態の河川の水位及び流量を長区間長時間にわたって予測する場合、河川の横断面を適切に組み込むことが求められる。そのためには、支川、派川、遊水池等を有する複合河川における結節点の水位及び流量を高精度で求めること、及び横断面の条件を組み入れる必要がある。この課題に対して、今までにも提案がなされているが、解決には至っていない。
不定流を差分式により、再現するシステムにおいては、上流端においては流量を与件とし、下流端においては水位を与件とする事が多い。この場合、上流端においては、水位観測が行われているが、流量については観測が行われていない場合が多く、実際洪水の再現性の検討に際しては流量与件を与えることには困難があり、水位を与件として計算する方式の確立が求められている。一方、シミュレーションモデルが完成した場合においては、計画洪水流量波形や予測洪水流量波形などの流量を与件とした計算を必要とする場合が多い。そのため、上流端条件として、水位と流量の何れをも与件とすることができることが必要である。
陰形式差分法は、求めようとする次時点の値を織り込んで差分方程式を多元連立方程式に直して解く方式である。そのため、安定性が良いとされている。しかしながら、陰形式においても毎時点計算で求めた次時点の水位と流量を次々と次時点の計算のための初期条件としなければならない。各時点の計算において誤差を軽減する計算が行われることが望ましいが、そのような過程が行われない場合にあっても各時点における計算がどれだけの誤差を有しているか、また、全体の計算が終了した場合において誤差の集積がどのようであるかということを明確にしておくことが望ましい。しかしながら、このような誤差の集積を明確にする方法が提案されていない。
本発明は、上記した従来例の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、複合河川における水位及び流量を不定流解析により高精度でシミュレーションすることができるようにし、もって洪水等の発生を予見できるようにするためのシステムを提案することである。
上記した目的を達成するために、第1の本発明は、支川や派川或いは遊水地を含み、これらの間の接続点である1又は複数の結節点を含む複合河川を監視領域とする河川の所定地点の所定時間後の水位及び流量を、コンピュータにより運動方程式と連続方程式を用いて陰形式差分法により演算するシミュレーションシステムにおいて、
(a)監視領域を構成する河川の体系、監視時間、監視領域の河道各地点の河道断面特性、河道各地点の粗度係数特性、本・支川の複数の所定地点の複数の所定時間にわたる実測水位及び流量である実測時間水位及び実測時間流量、全監視領域の初期時点j=1(ただし、監視時点を時点j=1,2,3,・・・とする)の水位と流量、並びに、全監視時間の本川上流端、下流端、支川上流端の境界条件を設定するための入力欄を表示する入力欄表示手段と、
(b)時点j+1における、本川及び支川の上流端以外の各地点の流量の第1次近似値を、時点jの値に仮定する手段と、
(c)上流端与件水位の上昇量や前時点までの流量変化量或は与件水位と計算水位との差に基づいて、2つの上流端仮定流量による2つの上流端計算水位を求め、それらを用いて逐次上流端流量仮定の近似度を上げていく上流端流量計算手段と、
(d)本川下流端与件水位及び派川下流端与件水位を出発条件として、結節点以外の各地点の時点j+1の水位を不定流的不等流計算により算定する不定流的不等流計算手段と、
(e)本川及び支川の結節点に関し、結節点の種類に適合した結節点条件式を用いて結節点上流側水位を計算する結節点水位計算手段と、
(f)本川最下流端から上流に向かって順次それぞれの地点の時点j+1における全領域の水位を計算する手段であって、本川最下流端とその上流の結節点の間、結節点とその上流の結節点との間、及び最上流の結節点と最上流端との間、及び各支川の本川への合流点から上流端の間、派川の下流端から上流端の間の時点j+1の水位を不定流的不等流計算手段により算定させ、かつ、各結節点上流側水位を、結節点水位計算手段により算定させることにより、全領域の水位を算定させる全領域水位計算手段と、
(g)本川上流端及び支川上流端の流量を出発条件として、結節点以外の次時点j+1の流量を下流に向けて再仮定する流量再計算手段と、
(h)本川及び支川の結節点に関し、結節点の種類に応じて、支川、派川、或は遊水地等の流量と関係付けて、結節点の種類に適合した結節点条件式により、結節点から流れ出る流量である結節点下流流量を算定する結節点下流流量計算手段と、
(i)本川最上流端から下流に向かって順次それぞれの地点の時点j+1における全領域の流量を計算する手段であって、本川最上流端とその下流の結節点の間、結節点とその下流の結節点との間、及び最下流の結節点と最下流端との間、及び各支川の上流端から本川への合流点の間、派川の上流端から下流端の間の時点j+1の流量を流量再計算手段により算定させ、かつ、各結節点下流流量を、結節点下流流量計算手段により算定させることにより、全領域の流量を算定させる全領域流量計算手段と
からなることを特徴とするシミュレーションシステムを提供する。
上記した第1の本発明に係るシミュレーションシステムにおいて、境界条件が水位与件の場合における上流端流量計算手段は、
第1回の仮定
Q仮定1(IN,j+1)=Q計算1(IN,j)+C1(H与件(IN,j+1)−H計算1(IN,j))
(ただし、INは単一河川としての本川上流端及び支川区間の総断面数、Q計算1(IN,j)、H計算1(IN,j)は、時点jにおける最終の流量及び水位の計算結果であり、Q仮定1(IN,j+1)は時点j+1における上流端流量の仮定値、H与件(IN,j+1)は上流端の与件水位、C1は定数)
第2回の仮定
Q仮定2(IN,j+1)=Q仮定1(IN,j+1)+C1(H与件(IN,j+1)−H計算1(IN,j+1))
(ただし、H計算1(IN,j+1)は、時点j+1における流量の第1回の仮定により安定に達するに必要なMM回の繰り返し計算を行った後の上流端の水位)
なお、第1回の仮定を、上記のように設定する代わりに、
Q仮定1(IN,j+1)=Q計算1(IN,j)+前時点における上流端の流量変化量
前時点における上流端の流量変化量=Q計算1(IN,j)−Q計算1(IN,j−1)
(ただし、Q計算1(IN,j−1)は、時点j−1における最終の流量の計算結果である。)
と設定してもよい。
第K回の仮定(K=3,4,5,・・・)
Q仮定K(IN,j+1)=Q仮定(K−1)(IN,j+1)+(Q仮定(K−1)(IN,j+1)−Q仮定(K−2)(IN,j+1))/(H計算(K−1)(IN,j+1)−H計算(K−2)(IN,j+1))*(H与件(IN,j+1)−H計算(K−1)(IN,j+1))
(ただし、H計算(K−1)(IN,j+1)は、時点j+1における流量の第(K−1)回の仮定により安定に達するに必要なMM回の計算を行った後の上流端の計算水位)
の計算を実行することにより、上流端の計算水位を与件水位の許容誤差以内に近づけていくように構成されていることが好ましい。
本・支川の上流端境界条件が流量与件の場合は、(c)において上流端流量を仮定する必要がなく、上流端流量として与件流量を用いるとよい。
上記した第1の本発明に係るシミュレーションシステムにおいて、不定流的不等流計算手段は、本川及び支川それぞれの不定流的不等流計算を、
H(i,j+1)
=H(i−1,j+1)+1/2g*(v(i−1,j+1)−v(i,j+1))
+1/2*(n (i,j+1)/R4/3(i,j+1)
+ni−1 (i−1,j+1)/R4/3(i−1,j+1))*Δxi−1
+Δxi−1/2gΔt*(v(i,j+1)
+v(i−1,j+1)−v(i,j)−v(i−1,j))
ただし、i:単一河川の下流端から上流端までの位置
(i=2,3,…………, IN)
Δt:時点間隔(=(時点j+1)−(時点j))
Δx:距離間隔(=(位置i+1)−(位置i))
H:水位
v:流速(v=流量Q/通水断面積A)
g:重力の加速度
n:マニングの粗度係数
R:径深
により行うよう構成されていることが好ましい。
上記した第1の本発明に係るシミュレーションシステムにおいて、結節点水位計算手段は、
・合流点における結節点条件式として
本川合流点上流側水位 = 本川合流点下流側水位
・派川への分流点における結節点条件式として
本川分流点上流側水位 = 本川分流点下流側水位
・遊水地における結節点条件式として
本川遊水地直上流側水位 = 本川遊水地直下流側水位
・堰・落差工における結節点条件式として
上流側水位=下流側水位+funcV(上流側流量、下流側水位)
(ここに、funcV(上流側流量、下流側水位)は、結節点における諸条件を検討して求められている与件式である)
を用いて結節点上流の水位を計算するよう構成されていることが好ましい。
上記した第1の本発明に係るシミュレーションシステムにおいて、流量再計算手段は、下流に向けての時点j+1における流量の再仮定を、次の式で表される流量換算値dQRhi-1及び流量貯留量dQRqi-1
dRQhi-1=Δxi−1/2Δt*(A(i,j+1)+A(i−1,j+1)−A(i,j)−A(i−1,j))
dRQqi-1=(Q(i−1,j+1)+Q(i−1,j)−Q(i,j+1)−Q(i,j))/2
を用いて、
Q(i−1,j+1)=(dRQqi-1−dRQhi-1)−Q(i−1,j)+Q(i,j+1)+Q(i,j)
ただし、i=2,3,……………, IN
により算定するよう構成されていることが好ましい。
上記した第1の本発明に係るシミュレーションシステムにおいて、結節点下流流量計算手段は、
・合流点における結節点条件式として、
本川合流点上流流量+支川合流流量 = 本川合流点下流流量
を用いて結節点下流流量を算定し、
・派川への分流点における結節点条件式として、
本川分流点上流流量 = 本川分流点下流流量+派川側上流端流量
派川側上流端流量=funcI(本川分流点上流流量、本川分流点上流側水位)
本川分流点上流側水位 = 派川側上流端水位+損失水頭
損失水頭=funcII(本川分流点上流流量、本川分流点上流側水位)
(ただし、funcI(本川分流点上流流量、本川分流点上流側水位) 及びfuncII(本川分流点上流流量、本川分流点上流側水位)は、結節点における諸条件を検討して求められている与件式)であり、本川分流点上流側水位と損失水頭の関係式は、分流点の関係を損失水頭の関係で与える場合の関係式
を用いて、本川分流点下流流量を算定し、
・遊水地に関し、遊水地の結節点条件式を用いて、遊水地流入量を算定することにより遊水地内水位を求めると共に、本川遊水地下流流量の算定を行い、遊水地における結節点条件式として、
本川遊水地下流流量 = 本川遊水地上流流量 − 遊水地流入量
遊水地内水位 = funcIII(遊水地流入量累加量)
遊水地流入量 = funcIV(遊水地直上流側水位,遊水地内水位)
(ただし、funcIII(遊水地流入量累加量)及びfuncIV(遊水地直上流側水位,遊水地内水位)は、結節点における諸条件を検討して求められている与件式)
を用いて、本川遊水地下流流量を算定し、
・堰・落差工における結節点条件式として、
上流側流量=下流側流量
を用いて堰・落差工下流流量を算定するよう構成されている
ことが好ましい。
上記した第1の本発明に係るシミュレーションシステムにおいて、
該システムはさらに、不定流的不等流計算手段、結節点水位計算手段、全領域水位計算手段、流量再計算手段、結節点下流流量計算手段、及び全領域流量計算手段による計算を所定の回数であるMM回(MM回は、上流端流量計算手段により、上流端流量を設定して計算を行い、結果として求められる上流端水位が安定するに要する回数)行った後に、
得られた本川及び支川の最上流端の計算水位と境界条件水位とを比較・監視する上流端水位合致度監視手段と、
計算された2地点間の水位及び流量に基づき、その誤差が許容誤差を超えている地点iの数を検出して表示する連続方程式合致度監視手段と、
所定のKM回(KM回は、上流端流量の設定を繰り返す回数)の繰り返し計算が終了していない場合で、上流端水位合致度監視手段及び連続方程式合致度監視手段による監視結果がその時点における再計算を示している場合に、上流端流量計算手段、全領域水位計算手段、及び全領域流量計算手段を再度駆動して、全領域の水位及び流量を再度計算させる再計算指令手段と、
上流端水位監視手段及び連続方程式合致度監視手段による監視結果が時点の増分を示している場合、又は所定のKM回(KM回は、計算の精度を向上させるために、上流端流量の設定を繰り返す回数、15回を概ねの上限回数とする。)の繰り返し計算が終了した場合に、上流端流量計算手段、全領域水位計算手段、及び全領域流量計算手段を再度駆動して、次時点における全領域の水位及び流量を計算させる次時点移行指令手段と
を備えていることが好ましい。
上記した第1の本発明に係るシミュレーションシステムにおいて、
上流端境界条件が流量与件の場合は、上流端流量を仮定する必要が無いため、上記した上流端水位の合致度のチェツクをする必要がなく、上流端流量として与件流量を与え続けて、連続方程式合致度監視手段による監視結果が許容範囲となるまで繰り返し計算を行う。そのため、該システムは、不定流的不等流計算手段、結節点水位計算手段、全領域水位計算手段、流量再計算手段、結節点下流流量計算手段、及び全領域流量計算手段による計算を行った後に、
計算された2地点間の水位及び流量に基づき、その誤差が許容誤差を超えている地点iの数を検出する連続方程式合致度監視手段と、
連続方程式合致度監視手段による監視結果がその時点における再計算を示している場合に、
上流端流量計算手段、全領域水位計算手段、及び全領域流量計算手段を再度駆動して、全領域の水位及び流量を再度計算させる再計算指令手段と、
連続方程式合致度監視手段による監視結果が時点の増分を示している場合に、
上流端流量計算手段、全領域水位計算手段、及び全領域流量計算手段を再度駆動して、次時点における全領域の水位及び流量を計算させる次時点移行指令手段と
を備えていることが好ましい。
上記の通り、上流端境界条件が流量与件の計算方式は、上流端境界条件が水位与件の場合に包含されるものである。
上記した目的を達成するために、第2の本発明は、支川や派川或いは遊水地を含み、これらの間の接続点である1又は複数の結節点を含む複合河川を監視領域とする河川の所定地点の所定時間後の水位及び流量を、コンピュータにより運動方程式と連続方程式を用いて陰形式差分法により演算するシミュレーションシステムにおいて、
(a)監視領域を構成する河川の体系、監視時間、監視領域の河道各地点の河道断面特性、河道各地点の粗度係数特性、本支川の複数の所定地点の複数の所定時間にわたる実測水位及び流量である実測時間水位及び実測時間流量、全監視領域の初期時点j=1(ただし、監視時点を時点j=1,2,3.・・・とする)の水位と流量、並びに、全監視時間の本川上流端、下流端、支川上流端の境界条件を設定するための入力欄を表示する入力欄表示手段と、
(b)結節点の上流側の水位を全て仮定して、その仮定した結節点上流側水位と計算によって求められた結節点下流側水位との差が許容誤差範囲となるまで、
本川結節点上流側水位再仮定値
=α*仮定値(=本川結節点上流側水位)+(1−α)*計算結果(=本川結節点下流側水位)
(ここに、αは定数(αは1/4〜3/4の範囲の値であることが好ましく、特に、α≒1/2であることが好ましい)
の式を用いて、結節点の上流側水位の再仮定を行う結節点上流水位仮定手段であって、最初の本川結節点上流側水位の仮定値を前時点jの結節点上流側水位とする、結節点上流水位仮定手段と、
(c)仮定した結節点上流側水位を用い、本川上流端及び支川上流端境界条件を出発条件として、単一河川の陰形式計算により、結節点以外の次時点j+1の水位と流量を算定する単一河川簡略法陰形式計算手段と、
(d)本川及び支川の結節点に関し、結節点の種類に応じて、支川、派川、或は遊水地等の流量と関係付けて、結節点の種類に適合した結節点条件式により、各結節点から流れ出る流量である結節点下流流量を算定する結節点下流流量計算手段と、
(e)本川の最上流端から下流に向かって順次それぞれの地点の時点j+1における全領域の水位と流量を計算する手段であって、最上流端とその下流の結節点の間、結節点とその下流の結節点との間、及び最下流の結節点と最下流端との間、及び各支川の上流端から本川への合流点の間、派川の上流端から下流端の間の時点j+1の流量を単一河川簡略法陰形式計算手段により算定させ、かつ、各結節点下流流量を、結節点下流流量計算手段により算定させることにより、全領域の水位と流量を算定させる全領域水位流量計算手段と
を備えていることを特徴とするシミュレーションシステムを提供する。
上記した第2の本発明に係るシミュレーションシステムにおいて、単一河川簡略法陰形式計算手段は、
Q(i−1,j+1)=−qi−1H(i,j+1)−ti−1Q(i,j+1)+si−1
H(i,j+1)=r−pQ(i,j+1)
Q(i,j+1)=(r−H(i,j+1))/p
ただし、i=2,3,………………,IN
Q(i.j+1):各測点で計算しようとする時点j+1での流量
H(i,j+1):各測点で計算しようとする時点j+1での水位
i−1=1/(θi−1+pi−1),ti−1=ηi−1/(θi−1+pi−1
i−1=(μi−1+ri−1)/(θi−1+pi−1
=(ξi−1+σi−1i−1−νi−1i−1
/(σi−1i−1+νi−1
=(σi−1i−1+1)/(σi−1i−1+νi−1
(ただし、σi−1=1−νi−1i−1,r=H(1,j+1),p=0)
ηi−1=−Δxi−1/g(A(i,j)+A(i−1,j))Δt
+2(Q(i.j)+Q(i−1.j))/g(A(i,j)
+A(i−1,j))
−Δxi−1|Q(i.j)+Q(i−1.j)|/2(k(i,j)
+k(i−1,j))
θi−1=−Δxi−1/g(A(i,j)+A(i−1,j))Δt
−2(Q(i.j)+Q(i−1.j))
/g(A(i,j)+A(i−1,j))
−Δxi−1|Q(i.j)+Q(i−1.j)|/2(k(i,j)
+k(i−1,j))
μi−1=−Δxi−1*(Q(i.j)+Q(i−1.j))/g(A(i,j)
+A(i−1,j))Δt−(Q(i.j)+Q(i−1.j)))
*(A(i−1,j)−A(i,j))/g(A(i,j)
+A(i−1,j))
νi−1=−Δxi−1*(B(i,j)+B(i−1,j))/4Δt
ξi−1=νi−1*(H(i,j)+H(i−1,j))
により水位及び流量を計算するよう構成されていることを特徴とするシミュレーションシステムを提供する。
上記した第2の本発明に係るシミュレーションシステムにおいて、結節点下流流量計算手段は、基本的に第1の本発明に係る場合と同じであるが、派川への分派点における結節点条件式として、損失水頭の関係で与える
本川分流点上流流量 = 本川分流点下流流量+派川側上流端流量
本川分流点上流側水位 = 派川側上流端水位+損失水頭
損失水頭=funcII(本川分流点上流流量、本川分流点上流側水位)
を用いて計算するよう構成されていることが好ましい。
上記した第2の本発明に係るシミュレーションシステムにおいて、該システムはさらに、
得られた本川結節点下流側水位と本川結節点上流側(仮定)水位とを比較・監視する結節点水位合致度監視手段と、
所定のKM回(KM回は、結節点上流側水位の仮定を繰り返す回数)の繰り返し計算が終了しない場合で、結節点水位合致度監視手段による監視結果がその時点における再計算を示している場合に、全領域水位流量計算手段を再度駆動して、全領域の水位及び流量を計算させる再計算指令手段と、
結節点水位合致度監視手段による監視結果が時点の増分を示している場合、又は所定のKM回(KM回は、計算の精度を向上させるために結節点上流側水位の仮定を繰り返す回数であって、例えば15回を上限回数とする。)の繰り返し計算が終了した場合に、全領域水位流量計算手段を再度駆動して、次時点における全領域の水位及び流量を計算させる次時点移行指令手段と
を備えていることが好ましい。
上記した目的を達成するために、第3の本発明は、支川や派川或いは遊水地を含み、これらの間の接続点である1又は複数の結節点を含む複合河川区間を監視領域とする河川の所定地点の所定時間後の水位及び流量を、コンピュータにより運動方程式と連続方程式を用いて陰形式差分法により演算するためのシミュレーションプログラムであって、上記したシミュレーションシステムにおけるそれぞれの手段を実行することを特徴とするシミュレーションプログラムを提供する。
本発明に係る複合河川状態量シミュレーションシステム(以下、「シミュレーションシステム」)は、コンピュータ上で実現されるものであり、該コンピュータにインストールされるコンピュータプログラムによって実現されるものである。そして、本発明のシミュレーションシステム100は、図1−1に示すように、コンピュータシステムのディスプレイ(不図示)並びにキーボード及びマウス等の入力装置(不図示)に接続された複合河川条件設定/演算結果Excel表示部1、設定された複合河川体系及び予め記憶された所定の計算式に基づいて複合河川の状態量(水位及び流量)のシミュレーションモデルを生成し、かつ、生成されたシミュレーションモデルに基づいて該複合河川の状態量をシミュレーションする演算部2、シミュレーション結果をディスプレイ上にグラフ表示させるグラフ表示部3、及び、記憶部4で構成されている。
なお、本発明のシミュレーションシステムにおいては、複合河川状態量を精密法陰形式差分法及び簡略法陰形式差分法のいずれかの計算モードをオペレータが選択することにより、選択された計算モードでの計算を実行することができるようにするため、演算部2は、それぞれの計算を行うための精密法陰形式計算部21及び簡略法陰形式計算部22を備えている。当然ながら、一方の計算モードのみを実行するように、シミュレーションシステムを構成しても良い。また、これら計算部21及び22に共に含まれる機能(すなわち、プログラムモジュール)は、共通に使用するようにしても良い。
精密法陰形式差分法とは、不定流の基本式を省略することなく差分化して、次時点の全地点の流量を仮定して、その仮定値を許容誤差以内に入るまで繰り返し計算することにより、次時点の水位と流量を計算する手法である。一方、簡略法陰形式差分法とは、不定流の基本式を省略することなく差分化する点では前者と同様であるが、差分項の係数値として前時間の値を用いること等により、繰り返し計算を行うことなく次時点の水位と流量を計算する手法である。すなわち、精密法陰形式差分法及び簡略法陰形式差分法は、両者ともに、基本式に関しては省略なしに差分化しているものであるが、計算の繰り返しを無くすために、差分項の係数を前時間の値を用いたものを簡略法と称することにする。
上記したように、簡略法陰形式差分法の不定流計算法においては、差分項の係数にあたる断面積や径深の値の時間変化が微小であるという近似を用いている。この近似の誤差は、計算法導入における仮定の意味(時間変化量が微小である。)から洪水現象が進行し、水位が高まるに連れて水位変化による断面積変化等が少なくなるため、計算による誤差が発生しにくくなるものであるが、洪水の初期や上流端付近において発生し易いものである。簡略法の計算方法においては、誤差を軽減するための措置は設けられていない。そのため計算途中において、誤差発生の状態を監視することが好ましく、その方法の一つとして連続方程式の2項の間の誤差を監視する方法を導入したものである。
複合河川条件設定/演算結果Excel表示部1は、Excelシートをディスプレイ上に表示し、該シートの該当するセルにオペレータが数値を入力することにより、シミュレーションすべき複合河川の河川体系の設定を行う。河川は、本川、合流する支川、分派する派川、或は遊水地等の結びつきにより形成されている。本発明においては、このような結びつき地点のことを結節点と呼称する。なお、この結節点は点ではなく広がりを有しているが、ここでは点と称する。そして、構成する河川の結節点の間又は上流端或は下流端から結節点の間の河川を単一河川と称する。そのため、本川は支川等によって分断されて、複数の単一河川からなり、支川等についても複数の単一河川で構成されることがある。
このような複合河川体系の例として、2つの支川、1つの派川、1つの遊水地が存する4結節点の例を図2−1に示す。図2−1の河川体系においては、支川、派川、遊水地と結節する所で河川は分断されて、本川は5つの単一河川H1〜H5を含み、そして、2つの支川S1及びS2、1つの遊水地Y3、及び1つ派川B4を含み、計9つの単一河川からなるものである。結節点番号を上流から、第1,………,第k,………,第KN結節点(この例においては、KN=4)と呼称することにする。各単一河川の断面数は、単一河川名にNをつけ、H1N,H2N,S1N等の断面数を有するものとする。(ただし、下流端をそれぞれ1とする。)河川体系設定においては、構成する本川、合流する支川、分派する派川、遊水地等の結節点の数と結節位置、形成される単一河川の断面の数を設定する。
複合河川条件設定/演算結果Excel表示部1はさらに、図1−2に示すように、設定された複合河川を構成する各単一要素(単一河川、支川、派川、遊水池)の断面特性及び粗度係数特性、初期条件、実測状態量(実測時間水位、実測時間流量)、境界条件をオペレータが設定するための入力欄を提供する。
断面特性とは、河川断面形状を数値特性としてコンピュータに組み込むために、断面形状を複数の水位に対応する川幅、断面積、径深を断面形状指標として表している。河川の複雑な断面形状をコンピュータに入力して、当該断面の水位が与えられると、不定流計算に必要となる水位に対応する川幅や断面積、径深を算定する必要がある。従来は、非特許文献3の26頁〜29頁にあるように、複数の水位特性値〜川幅特性値〜断面積特性値〜径深特性値の関係を与える場合が多い。高水敷幅の変化が大きい河川においては、区分川幅、区分河床高を単区分とする複数区分の集合体により、区分川幅〜区分河床高を指標として断面形状を近似する方式が好ましい。
粗度係数とは、河川において流水の流下に伴うエネルギー損失を断面積や径深、流速等との組み合わせとして、表現する場合の係数であり、マニングの粗度係数が用いられる場合が多い。本発明においては、以下で説明するように、粗度係数特性として入力されるようにして、演算部2に全体粗度係数の計算機能を備えさせても良い。断面特性を区分川幅、区分河床高を単区分とする複数区分の集合体により断面形状を表現する場合には、区分川幅ごとにマニングの粗度係数特性を設定して全体粗度計数を算定する必要がある。
初期条件とは、初期時点における、対象全監視領域の水位と流量を表している。設定された単一河川毎の初期流量及び初期下流端水位を出発条件として不等流計算により全地点の水位を算定し、上流端水位との合い具合を確かめて、全監視領域の初期条件としての水位と流量を設定する。
境界条件とは、実測値を基に全監視時間にわたる本・支川上流端の水位又は流量、本川並びに派川の下流端の水位を表している。なお、従来、境界条件としての上流端条件は、流量与件とされていたが、水位も与件とすることができることが明らかになったので、観測資料の整っている水位を上流端の与件とすることが好ましい。
該Excelシートには、さらに、図1−2に示すように、当該複合河川の所定の地点の実測値である状態量(水位及び流量)をオペレータが入力するための入力欄も設けられている。実測状態量は、シミュレーションモデルが妥当であるか否かの検証に用いられる。
図3−1は、精密法陰形式差分法計算モードが選択された場合に、複合河川条件設定/演算結果Excel表示部1によってディスプレイ上に表示される表示例すなわちExcelシートを示している。ただし、図示の都合上、Excelシートの横軸を折り畳んで図示している。
該Excelシートに示すように、横軸の項目として、「区間番号NO」、「今の水位Hi,j」、「次の水位Hi,j+1」、「今の流量Qi,j」、「次の流量Qi,j+1」、「今の全面積Ai.j」、「次の全面積Ai,j+1」、「水位貯留dQRh*10」、「流量貯留-dQRq*10」、「仮定流量」、「誤差ΔER」、「実測水位WL」、「区間距離L」、「全流量TQi,j」、「水位(仮定)Hi,j」、「計算水位Hi,jcal」、「全川幅ΣBB」、「Σ(AR2/3/N)」、「全面積ΣAA」、「径深R」、「AR2/3」、「全体の粗度N」、「平均流速V」「エネルギー勾配IE」、「遊水断面積ΣRAA」、第h区間(h=1,2,3,・・・)についての「区間川幅BCh」、「河床高ZC h」、「区間粗度NCh」、「実川幅BB」、「径深RR」、「AR2/3/N」、「流水断面積AA」、第l遊水区間(l=1,2,3,・・・)についての「区間川幅RBCl」、「河床高RZCl」、「遊水断面積RAA」が含まれている。縦軸には、複合河川の各区間の複数の地点が設定される。
横軸において、第h区間(h=1,2,3,・・・)についての「区間川幅BCh」、「河床高ZCh」、「区間粗度NCh」、第l遊水区間(l=1,2,3,・・・)についての「区間川幅RBCl」、「河床高RZCl」は、表示されたExcelシート上でオペレータが数値を入力する項目であり、その他は、演算部2の演算により数値が算出されて自動的に表示される項目である。なお、図示の各項目は上部の計算補助欄を空けて表示している。この計算補助欄には、河川体系を指示する各単独河川の断面数、計算繰り返し回数MMとKM、上流端与件の条件(水位か流量か)、当該時間の境界条件の値、当該時間に対する観測水位、流量の値、上流端流量仮定値の推移とそれに対応する上流端計算水位の推移、遊水地流入量の安定値を設定した場合のその設定値と遊水地計算流入量等各時間の計算を管理するための諸量を表示する欄としている。
上記したExcelシートを監視時間数用意して、演算部2の指示にしたがって全監視時間にわたる計算を行う。
図3−2は、簡略法陰形式差分法計算モードが選択された場合に、複合河川条件設定/演算結果Excel表示部1によってディスプレイ上に表示される表示例すなわちExcelシートを示している。ただし、図示の都合上、Excelシートの横軸を折り畳んで図示している。
該Excelシートに示すように、横軸の項目として、「区間番号NO」、「今の水位Hi,j」、「次の水位Hi,j+1」、「今の流量Qi,j」、「次の流量Qi,j+1」、「今の全面積Ai,j」、「次の全面積Ai,j+1」、「水位貯留dQRh*10」、「流量貯留-dQRq*10」、「実測水位WL」、「区間距離L」、「ν」、「ξ」、「η」、「θ」、「μ」、「p」、「q」、「r」、「s」、「t」、「σ」、「全流量TQi,j」、「水位(仮定)Hi,j」、「計算水位Hi,jcal」、「全川幅ΣBB」、「Σ(AR2/3/N)」、「全面積ΣAA」、「径深R」、「AR2/3」、「全体の粗度N」、「平均流速V」「エネルギー勾配IE」、「遊水断面積ΣRAA」、第h区間(h=1,2,3,・・・)についての「区間川幅BCh」、「河床高ZCh」、「区間粗度NCh」、「実川幅BB」、「径深RR」、「AR2/3/N」、「流水断面積AA」、第l遊水区間(l=1,2,3,・・・)についての「区間川幅RBCl」、「河床高RZCl」、「遊水断面積RAA」が含まれている。なお、簡略法においては、これだけの数値は不要であるが、運動方程式を計算する機能を備えることによって計算のチェックを行うために用いているものもある。
縦軸には、複合河川の各区間の複数の地点が設定される。
横軸において、第h区間(h=1,2,3,・・・)についての「区間川幅BCh」、「河床高ZCh」、「区間粗度NCh」、第l遊水区間(l=1,2,3,・・・)についての「区間川幅RBCl」、「河床高RZCl」は、表示されたExcelシート上でオペレータが数値を入力する項目であり、その他は、演算部2の演算により数値が算出されて自動的に表示される項目である。なお、図示の各項目は上部の計算補助欄を空けて表示している。この計算補助欄には、河川体系を表す各単一河川の断面数、計算繰り返し回数KM、上流端与件の条件(水位か流量か)、当該時間の境界条件の値、当該時間に対する観測水位、流量の値、各結節点について、前時間の結節点上流水位・結節点上流仮定水位・結節点下流計算水位・結節点上流再仮定水位、遊水地流入量の安定値を設定した場合のその設定値と遊水地計算流入量等各時間の計算を管理するための諸量を表示する欄としている。
上記したExcelシートを監視時間数+1枚用意して、演算部2の指示にしたがって全監視時間にわたる計算を行う。
複合河川条件設定/演算結果Excel表示部1はさらに、図1−2に示すように、演算部2において演算された上流端水位の合致度及び連続方程式の合致度(精密法の場合)或は結節点水位の合致度(簡略法の場合)を数値(結節点水位誤差)として表示する。これらの合致度の演算部2における演算については、後述する。
演算部2は、以下に説明するように種々の演算処理を行うものであるが、例えば、Excelの表計算機能を利用して演算を実行するようにし、複合河川条件設定/演算結果Excel表示部1によりモニタ上に表示されたExcelシートのセルが選択されたときに、該セルに対応する演算を実行するように構成し、そしてその演算結果の数値を、複合河川条件設定/演算結果Excel表示部1を介して、表示されたExcelシートの該当するセルに表示することが好ましい。
演算部2の精密法陰形式計算部21(精密法陰形式差分法の計算を行う)は、図1−3に示すように、上流端流量計算部21−1、単一河川精密法陰形式計算(不定流的不等流計算)部21−2、結節点水位計算部21−3、全領域水位計算部21−4、流量再計算部21−5、結節点下流流量計算部21−6、全領域流量計算部21−7、上流端水位合致度監視部21−8、連続方程式合致度監視部21−9、再計算指令部21−10、次時点移行指令部21−11により構成されている。
これら各部の機能について、以下に説明する。
上流端流量計算部21−1
上流端境界条件が水位与件の場合は、本川及び支川それぞれの上流端流量を仮定する必要があり、上流端流量計算部21−1は、時点j+1における上流端流量を、上流端与件水位の上昇量や前時点までの流量変化量或いは与件水位と計算水位との差に基づいて仮定する。ただし、初期時点(j=1)のときの上流端流量はオペレータによりExcelシート上で入力される。上流端流量は、上流端与件水位の上昇量や前時間までの流量変化量或いは上流端与件水位と上流端の各繰り返し回の計算水位との差を指標として、以下のように上流端流量の仮定を行い、次時点の上流端計算水位と上流端与件水位の差を許容誤差以内に近づける。
第1回の仮定
Q仮定1(IN,j+1)=Q計算1(IN,j)+C1(H与件(IN,j+1)−H計算1(IN,j))
…………………(1)
ただし、INは単一河川としての本川上流端及び支川区間の総断面数、Q計算1(IN,j)、H計算1(IN,j)は、時点jにおける最終の計算結果であり、Q仮定1(IN,j+1)は最初の上流端流量の仮定値、H与件(IN,j+1)は上流端の与件水位、C1は定数であり、川幅B*流速vの次元((長さ)/時間)を有し、該積の近傍に値を設定することが好ましい。C1を計算時点の水位に連動して、計算水位に対応する川幅B*流速vの該積の近傍の値に変化させてもよい。
第2回の仮定
Q仮定2(IN,j+1)=Q仮定1(IN,j+1)+C1(H与件(IN,j+1)−H計算1(IN,j+1))
………………(2)
(ただし、H計算1(IN,j+1)は、時点j+1における第1回仮定流量による安定に達するに必要なMM回の繰り返し計算を行った後の上流端の計算水位である。)
なお、第1回の仮定を、上記のように設定する代わりに、
Q仮定1(IN,j+1)=Q計算1(IN,j)+前時点における上流端の流量変化量
前時点における上流端の流量変化量=Q計算1(IN,j)−Q計算1(IN,j−1)
(ただし、Q計算1(IN,j−1)は、時点j−1における最終の流量の計算結果である。)
と設定してもよい。
第3回の仮定
Q仮定3(IN,j+1)
=Q仮定2(IN,j+1)
+(Q仮定2(IN,j+1)−Q仮定1(IN,j+1))
/(H計算2(IN,j+1)−H計算1(IN,j+1))
*(H与件(IN,j+1)−H計算2(IN,j+1))
………………………………(3)
(ただし、H計算2(IN,j+1)は、時点j+1における流量の第2回の仮定により安定に達するに必要なMM回の計算を行った後の上流端の計算水位である。)
第4回以降の仮定
以下、第3回の仮定と同様に計算を繰り返し実行することにより、上流端の計算水位を与件水位の許容誤差以内に近づけていく。
上記した例は、近似度を上げるための一つの事例である。上流端流量の設定は、まず2つの流量を与える(設定する)ことができると、それらの結果として出てくるMM回の計算結果(水位)との関連の基に、直線近似によって次々と近似度を上げていくことができる。MM回の計算を繰り返した後に直線近似することにポイントがある。上記した上流端流量の仮定を5〜6回行うと、所定の回数であるMM回の繰り返し計算によって求められる水位が安定して繰り返し計算により得られる流量変化量が少なくなることがある。このような場合には、その流量を固定して(流量与件として)、連続方程式合致度監視手段による監視結果が許容範囲となり、時点の増分を示すまで繰り返し計算を行う。
上記したように、上流端水位与件の計算においては、上流端流量の仮定を繰り返して、上流端与件水位の許容誤差以内に入る流量を求めている。本・支川の上流端境界条件が流量与件の場合は、上流端水位与件の方式に包含されるもので、上流端水位の合致度のチェツクをする必要がなく、上流端流量として与件流量を与え続けて、連続方程式合致度監視手段による監視結果が許容範囲となり、時点の増分を示すまで繰り返し計算を行う。
単一河川精密法陰形式計算部21−2
単一河川精密法陰形式計算部21−2は、本川下流端与件水位及び派川下流端与件を出発条件として、結節点以外の各地点の時点j+1の水位を不定流的不等流計算により算定する手段である。そして、不定流的不等流計算を、
H(i,j+1)
=H(i−1,j+1)+1/2g*(v(i−1,j+1)−v(i,j+1))
+1/2*(n (i,j+1)/R4/3(i,j+1)
+ni−1 (i−1,j+1)/R4/3(i−1,j+1))*Δxi−1
+Δxi−1/2gΔt*(v(i,j+1)
+v(i−1,j+1)−v(i,j)−v(i−1,j)) ………………………………(4)
ただし、i:単一河川の下流端からの位置(i=2,3,…………………,IN)
Δt:時点間隔(=(時点j+1)−(時点j))
Δx:距離間隔(=(位置i+1)−(位置i))
H:水位
v:流速(v=流量Q/通水断面積A)
g:重力の加速度
n:マニングの粗度係数
R:径深
により行う。全地点の次時点の流量が仮定されていると、下流端の水位H(1,j+1)が既知であれば、次々と上流にむけてH(i,j+1)を算定していくことができる。なお、不定流的ということで加えられている右辺第5項は、他の項に比して小さい値であり、省略してもよい場合が多い。
結節点水位計算部21−3
結節点水位計算部21−3は、各区間(本川及び支川)の結節点に関し、結節点の種類(合流点、分流点或は遊水地などの)や用いる計算方法によって、その結節点に対応した条件式を用いて、未知量である次時点j+1の全結節点の水位を計算する。
結節点の条件式は、結節点の種類により、以下のような式を用いる。
・合流点における条件式
本川合流点上流側水位 = 本川合流点下流側水位 …………(5)
支川下流端水位 =本川合流点下流側水位 …………(5−1)
・分流点における条件式
本川分流点上流側水位 = 本川分流点下流側水位 …………(6)
・遊水地における条件式
本川遊水地直上流側水位 = 本川遊水地直下流側水位 …………(7)
・堰・落差工における条件式
上流側水位=下流側水位+funcV(上流側流量、下流側水位) …………(7−1)
ここに、funcV(上流側流量、下流側水位)は、結節点における諸条件を検討して求められている与件式である。
結節点においては、水位の関係と流量の関係があるが、ここでは水位の関係のみを掲げた。堰・落差工については流量の変化が無いと考えられるが、エネルギー損失を配慮する必要があるため、結節点として扱うこととした。
全領域水位計算部21−4
全領域水位計算部21−4は、最下流端から上流に向かって順次、全領域のそれぞれの地点の時点j+1における水位を計算する。該計算においては、本川最下流端とその上流の結節点の間、結節点とその上流の結節点との間、及び最上流の結節点と最上流端との間、各支川の本川への合流点から各支川の上流端の間、派川の下流端から上流端の間の時点j+1の水位を単一河川精密法陰形式計算部21−2により算定させ、かつ、各結節点上流側水位を、結節点水位計算部21−3により算定させることにより、最上流端までの水位を算定させる。
流量再計算部21−5
流量再計算部21−5は、本川上流端及び支川上流端の流量を出発条件として、結節点以外の時点j+1の流量を下流に向けて再算定(仮定)する。下流に向けての時点j+1における流量の再算定(仮定)は、次の式で表される流量換算値dQRhi-1及び流量貯留量dQRqi-1を、
dRQhi-1=Δxi−1/2Δt*(A(i,j+1)+A(i−1,j+1)−A(i,j)−A(i−1,j)) …(8)
dRQqi-1=(Q(i−1,j+1)+Q(i−1,j)−Q(i,j+1)−Q(i,j))/2 ……………(9)
を用いて、
Q(i−1,j+1)=(dRQqi-1−dRQhi-1)−Q(i−1,j)+Q(i,j+1)+Q(i,j) ……(10)
ただし、i=IN,IN−1,…………………,2
により算定する。
結節点下流流量計算部21−6
結節点下流流量計算部21―6は、結節点の種類に応じて、支川、派川、或は遊水地等の流量と関係付けて、結節点の種類に適合した結節点条件式により、結節点から流れ出る流量である結節点下流流量を算定(再仮定)する。それぞれの結節点条件式は、以下のとおりである。
・合流点における条件式
本川合流点上流流量+支川下流端流量 = 本川合流点下流流量 …………(11)
・派川への分流点における条件式
本川分流点上流流量 = 本川分流点下流流量+派川側上流端流量 …………(12)
派川側上流端流量 = funcI(本川分流点上流流量、本川分流点上流側水位) ……(13)
本川分流点上流側水位 = 派川側上流端水位+損失水頭 …………(13−1)
損失水頭 = funcII(本川分流点上流流量、本川分流点上流側水位) ………(13−2)
(ただし、funcI(本川分流点上流流量、本川分流点上流側水位) 及びfuncII(本川分流点上流流量、本川分流点上流側水位)は、結節点における諸条件を検討して求められている与件式である。)
を用い、式(13)に、分流点上流の諸量を入れて、派川側上流端流量を求めた上、式(12)により、本川分流点下流流量を算定する。
・遊水地における条件式
遊水地の結節点条件式を用いて、遊水地流入量を算定することにより遊水地内水位を求めると共に、本川遊水地下流流量の算定を行う。遊水地における結節点条件式として、
本川遊水地下流流量 = 本川遊水地上流流量 − 遊水地流入量 …………(14)
遊水地内水位 = funcIII(遊水地流入量累加量) …………(15)
遊水地流入量 = funcIV(遊水地直上流側水位,遊水地内水位) ………(16)
(ただし、funcIII(遊水地流入量累加量)及びfuncIV(遊水地直上流側水位,遊水地内水位)は、結節点における諸条件を検討して求められている与件式である。)
を用い、遊水地への流入形式は、本川水位と遊水地内水位により完全越流、潜り越流、潜り逆流、完全逆流の4つの場合があり、この形態を式(16)の関係として設定し、式(16)に、遊水地関係諸量(遊水地直上流側水位,遊水地内水位)を入れて、遊水地流入量を算定し、その結果を式(15)に入れて遊水地内水位を算定し、式(14)により本川遊水地下流流量を算定する。
・堰・落差工における条件式
上流側流量 = 下流側流量 …………(16−1)
全領域流量計算部21−7
全領域流量計算部21−7は、最上流端から下流に向かって順次それぞれの地点の時点j+1における全領域の流量を計算する。該計算においては、本川最上流端及び支川上流端とその下流の結節点の間、結節点とその下流の結節点との間、及び最下流の結節点と最下流端との間、派川の上流端から下流端の間の時点j+1の流量を流量再計算部21−5により算定させ、かつ、各結節点下流流量を、結節点下流流量計算部21−6により算定させることにより、最下流端までの流量を算定させる。
上流端水位合致度監視部21−8
境界条件が水位与件の場合、上流端水位合致度監視部21−8は、所定のMM回の計算後に得られた本川及び支川の最上流端の計算水位と境界条件水位とを比較・監視し、その結果を演算結果Excel表示部1を介してディスプレイ上に表示させる。
連続方程式合致度監視部21−9
連続方程式合致度監視部21−9は、全領域水位計算部21−4及び全領域流量計算部21−7によって計算された水位及び流量の、縦断的な各位置(すなわち2地点間)の誤差状況を監視できるようにするために、式(8),(9)で表されるdRQhi-1及び−dRQqi-1の値の誤差ΔERi-1=dRQhi-1+dRQqi-1を計算し、その結果を演算結果Excel表示部1を介して表示させる。また、その誤差が許容誤差を超えている地点iの数を検出し、該数も演算結果Excel表示部1を介して、図3−1の誤差ΔERの上のセルに、合致しない箇所数を表示させる。
再計算指令部21−10
再計算指令部21−10は、境界条件が水位与件の場合は、所定のKM回の繰り返し計算が終了していないことと、上流端水位合致度監視部21−8及び連続方程式合致度監視部21−9による監視結果に基づいて再計算すべきか否かを判定し、再計算すべきであると判定した場合に、上流端流量計算部21−1、全領域水位計算部21−4、及び全領域流量計算部21−7を再度駆動して、次時点j+1における全領域の水位及び流量を再度計算させる。
境界条件が流量与件の場合は、連続方程式合致度監視部21−9による監視結果に基づいて再計算すべきか否かを判定し、再計算すべきであると判定した場合に、上流端流量計算部21−1、全領域水位計算部21−4、及び全領域流量計算部21−7を再度駆動して、次時点j+1における全領域の水位及び流量を再度計算させる。
次時点移行指令部21−11
次時点移行指令部21−11は、境界条件が水位与件の場合は、上流端水位合致度監視部21−8及び連続方程式合致度監視部21−9による監視に基づいて次時点に進むべきか否かを判定し、次時点に進むべきであると判定した場合、又は予め設定したKM回の繰り返し計算が終了した場合に、時点を増分し(j=j+1)、そして、上流端流量計算部21−1、全領域水位計算部21−4及び全領域流量計算部21−7を再度駆動して、増分後の次時点における全領域の水位及び流量を計算させる。
境界条件が流量与件の場合は、連続方程式合致度監視部21−9による監視に基づいて次時点に進むべきか否かを判定し、次時点に進むべきであると判定した場合に、時点を増分し(j=j+1)、そして、上流端流量計算部21−1、全領域水位計算部21−4及び全領域流量計算部21−7を再度駆動して、増分後の次時点における全領域の水位及び流量を計算させる。
簡略法陰形式計算部22の詳細については、以降で説明する。
グラフ表示部3は、図1−4に示すように、実測/計算状態量比較表示部31、水位/流量関係表示部32、2時点縦断変化表示部33、遊水池水位・越流表示部34を備え、それぞれ、以下の機能を実行する。
実測/計算状態量比較表示部31は、実測により得られた状態量(水位及び流量)すなわちExcelシート上で入力された実測状態量と、シミュレーション演算により得られた状態量とを対比的にグラフ表示する。なお、水位と流量の二つの状態量を同時に比較表示することは、困難であり、水位と流量を別々に、時間水位実測/計算の比較状態及び時間流量実測/計算の比較状態をグラフ表示する。
水位/流量関係表示部32は、モデル複合河川の主要地点の、不定流計算結果及び不等流計算結果を水位と流量との関係としてグラフ表示する。
2時点縦断変化表示部33は、モデル複合河川における、2時点のシミュレーション結果の状態量の縦断変化をグラフ表示する。
遊水池水位・越流表示部34は、モデル複合河川における、シミュレーション結果の遊水池の前面水位(結節点での遊水池の水位)、逆流を含む越流量、遊水池内の水位をグラフ表示する。
ところで、本発明における精密法陰形式計算部21における単一河川精密法陰形式計算部21−2及び流量再計算部21−5(及び簡略法陰形式計算部22における単一河川簡略法陰形式計算部22−2)及び上流端水位合致度監視部21−8、連続方程式合致度監視部21−9の機能は、従来技術文献に開示されているものであるが、これらの機能を以下に簡単に説明する。
単一河川精密法陰形式計算部21−2において用いる基本式、すなわち、河川の流れに関する連続方程式及び運動方程式は、以下のとおりである。
連続方程式:
∂A/∂t+∂Q/∂x=0

………………………(17)
運動方程式:
−ii+∂h/∂x+∂/∂x(v2/2g)+n22/R4/3+(1/g)∂v/∂t
=0 ………………………(18)
−ii+∂h/∂xを水位Hを用いて、−ii+∂h/∂x=∂H/∂xとすると、式(18)は、
∂H/∂x+∂/∂x(v2/2g)+n22/R4/3+(1/g)∂v/∂t=0
………………………(19)
と変形され、さらに、Q=Avを代入すると、式(19)は、以下のように変形される。
(1/gA)∂Q/∂t+(2Q/gA2)∂Q/∂x−(Q2/gA3)∂A/∂x
+∂H/∂x+|Q|Q/k2=0 …………………(20)
ただし、A:通水断面積
t:時間
Q:流量
x:距離
H:水位
ii: 河床勾配
h:水深
v:流速(v=Q/A)
g:重力の加速度
n:マニングの粗度係数
:通水能
R:径深
また、河川において、多用されているマニングの粗度係数nを用いると、通水能は次のように表される。
=A4/3/n …………………(21)
より詳細に説明すると、基本式としては、式(17)と(19)を用い、それらを以下のように変形する。ただし、「i」は単一河川の下流端からの位置を表し、「j」は時点を表している。
運動方程式については、
(H(i−1,j+1)−H(i,j+1))/Δxi−1+1/2gΔxi−1*(v(i−1,j+1)
−v(i,j+1))+1/2*(n (i,j+1)/R4/3(i,j+1)
+ni−1 (i−1,j+1)/R4/3(i−1,j+1))+1/2gΔt*(v(i,j+1)
+v(i−1,j+1)−v(i,j)−v(i−1,j))=0 ……………………(22)
これを変形して、
H(i,j+1)=H(i−1,j+1)+1/2g*(v(i−1,j+1)−v(i,j+1))
+1/2*(n (i,j+1)/R4/3(i,j+1)+ni−1 (i−1,j+1)/R4/3(i−1,j+1))*Δxi−1+Δxi−1/2gΔt*(v(i,j+1)+v(i−1,j+1)−v(i,j)−v(i−1,j)) ………………………………(23)
(ただし、i=2,3,…………………,IN)
全地点の次時点の流量が仮定されていると、下流端の水位H(1,j+1)が既知であれば、次々と上流にむけてH(i,j+1)を算定していくことができる。
連続方程式については、
((A(i,j+1)+A(i−1,j+1))−(A(i,j)+A(i−1,j))) /2Δt
+(Q(i−1,j+1)+Q(i−1,j)−Q(i,j+1)−Q(i,j)) /2Δxi−1=0 … (24)
これを変形して、
Q(i−1,j+1)=−Q(i−1,j)+Q(i,j+1)+Q(i,j)
−(A(i,j+1)+A(i−1,j+1)−A(i,j)−A(i−1,j)) *Δxi−1/Δt …… (25)
ただし、i=IN,IN−1,…………………,2
上流端の流量Q(i,j+1)が既知であれば、次々と下流にむけてQ(i−1,j+1)を算定していくことができる。
それらの2点、2時点において水位と流量が既知であるとすると、水位に関する関係からそれらの間における貯留量の流量換算値dQRhi-1は、以下のように表すことができる。
dRQhi-1=Δxi−1/2Δt*(A(i,j+1)+A(i−1,j+1)−A(i,j)−A(i−1,j)) …(26)
同様に、流量の関係からそれらの間の流量貯留量dQRqi-1は、以下のように表すことができる。
dRQqi-1=(Q(i−1,j+1)+Q(i−1,j)−Q(i,j+1)−Q(i,j))/2 …………(27)
式(8)の関係が成立するとすると、
dRQhi-1=−dRQqi-1 ……………………………………(28)
の関係が成立する筈であるが、水位や流量に誤差が含まれていると一致しない。
この誤差ΔERは、
ΔERi-1=dRQqi-1+dRQhi-1 …………………………………(29)
と表される。この誤差ΔERi-1が許容基準を超えた場合、流量の変化量(流量貯留量)を水位貯留量と流量貯留量の平均と仮定し、式(27)を変換すると、
(dRQqi-1−dRQhi-1)=(Q(i−1,j+1)+Q(i−1,j)−Q(i,j+1)−Q(i,j)) ……(30)
式(25)の形にまとめると、下流に向けてのj+1時における流量は
Q(i−1,j+1)=(dRQqi-1−dRQhi-1)−Q(i−1,j)+Q(i,j+1)+Q(i,j) ……(31)
となる。式(25)の代わりに式(31)を用いて、逐次Q(i−1,j+1)を求めていく。これにより、上流端以外の全領域の流量が計算される。
不定流計算においては、初期条件が既知である必要がある。単一河川においては、上流端の流量又は水位並びに下流端の水位が境界条件として既知である、という条件の下に境界条件として与件とされた以外の全ての地点の水位と流量を求めるものである。この方法としては、以下の流れによって全体の解が求められている。
1)監視領域に対する各断面(位置)の断面特性を設定する。
2)各断面(位置)の粗度係数特性を設定する。
3)監視領域内で観測されている観測水位や観測流量を対応する1)で設定された断面(位置)と関係付けて入れる。
4)各断面(位置)に初期条件を設定する。
5)監視領域の上流端に水位又は流量、下流端に水位を全監視時間にわたる境界条件として設定する。
6)上流端の流量を仮定する。(流量与件の場合は既知である。)
7)上流端以外の全ての次時点の流量を仮定する。(最初の仮定値は、前時間の値とする。)
8)式(23)を用いて、次時点の下流端を出発条件として、全断面(位置)の水位を上流端まで求める。
9)各2地点について式(26)及び(27)を求め、式(31)により上流端を出発条件として、全断面(位置)の流量を下流端まで再仮定して、7)に戻る。繰り返し計算が、所定の回数であるMM回に達した場合は、式(29)式の合致の度を調べ、許容誤差を越える箇所が全体の5%を超える場合、及び、上流端の与件水位と8)の計算による上流端水位との誤差が許容誤差の条件を満足しない場合は、上流端流量の再仮定を行い、6)に戻り、6)〜9)を繰り返しする。
10)上記9)において許容誤差の条件を満足した場合には、求めた水位と流量が求める値であり、そして、これらの値を次時点の初期条件として次々と所要時間、監視領域の不定流計算を行う。
なお、9)に記載したMM回については、計算を実際に行ってどの程度の回数が適切であるかの判断を行う必要がある。上流端に流量を設定して計算を行う場合、結果として求められる上流端水位が安定するのに要する回数という意味がある。求められる水位が安定するに至る前に流量の設定値を変えていくと、以下の方法によって求められる上流端流量が、不安定になる可能性が高くなる。
9)の上流端流量の再仮定については、上流端与件が流量の場合は与件流量を与え続けるということで、取り扱いが大変簡単である。しかし、上流端で流量が観測されていない場合が多く、上流端与件を水位とせざるを得ない。水位与件の場合は、規則的な形で仮定していかなければならない。これについては、既知の方法においては、上流端与件水位の上昇量や与件水位と計算水位との差を指標として上流端流量を仮定する、とされている。これについては、上流端流量計算部21−1により、上記したように仮定を繰り返していく。
ここで、河川の断面に対する断面特性の設定について述べる。断面特性の設定は、不定流計算を行う場合において不可欠のものであり、既知の方法を応用するものであるが、複雑な河川横断形態に対して流水特性、遊水特性を表現できるものが好ましい。なお、高水敷が大きい河川においては、準2次元不等流計算法として、横断面を多くの区分断面により模式し、粗度係数特性をも区分断面ごとに設定する手法が提案されている。
本発明においては、以下に説明するように河川横断面を流水断面と遊水断面に分けて、水位が求められるか、与えられると不定流計算に必要な流水断面積、川幅、径深、全体粗度係数、遊水断面積等を算定する。ここに、流水断面とは河川横断面のうち流水が流れとして流下する断面部分をいい、遊水断面とは河川横断面のうち河川の水位が変化したとき、その変化に応じて水位が変化して遊水する断面部分をいう。
この方法は、図2−2に示すような河川の横断面の近似断面として、区分川幅BC(i,h)、区分河床高ZC(i,h)を単区分とする複数の区分数に区分して設定すると共に、この各単区分に区分粗度係数特性NC(i,h)を設定(仮定)する。洪水が遊水するのみの断面がある場合には、区分遊水断面として、区分遊水川幅RBC(i,l)、区分遊水河床高RZC(i,l)を設定する。河川の断面は、測量することによって横断面形状が測定される。また、河川には植生等が繁茂して流れ易さが変化する。このような形態に合わせて、高さや植生が同じような形態の部分を単区分として区分する。そのため、図2−2に示すように、近似断面の幅が変化する。このような要素を、断面特性の要素として、計算条件として導入する。この断面特性値を元に、洪水が流下する全断面に対する水理量である川幅B(i,j)、流水断面積A(i,j)、径深R(i,j)、遊水断面積RA(i,j)、全体粗度係数N(i,j)を求める訳である。
設定する断面特性をまとめると、BC(i,1)、ZC(i,1)、NC(i,1)、………,BC(i,h)、ZC(i,h)、NC(i,h)………, BC(i,IM)、ZC(i,IM)、NC(i,IM)、RBC(i,1)、RZC(i,1)、………,RBC(i,RIM)、RZC(i,RIM)である。
ここで、iは断面番号すなわち河川の断面(位置)に対する番号であり、h及びlは河川の各断面iの中における流水断面に対する区分番号及び遊水断面に対する区分遊水番号である。計測量としては、流水断面はIM区分(20区分以内)、遊水区間についてはRIM区分(5区分以内)とすることが好ましい。河川水位が定まった場合の流水川幅、流水断面積、断面平均の径深、断面平均の全体粗度係数を求めなければならない。このためには、区分毎に補助計算を行い、集計する。
水位H(i,j)が定まると、代表区分の流水実川幅、径深、流水断面積は、
BB(i,h)=if (H(i,j)−ZC(i,h))>0 then BC(i,h)
else 0
………(32)
RR(i,h)=if (H(i,j)−ZC(i,h))>0 then(H(i,j)−ZC(i,h))
Else 0
………(33)
AA(i,h)= BB(i,h)*RR(i,h) ……………(34)
と算定される。ただし、BB(i,h)は、i断面におけるh区分断面の区分実川幅を示す。同様にRR(i,h)、AA(i,h)は、区分実径深、区分実断面積を示す。
全体流量をQ(i,j)、区分分担流量をQQ(i,h)とすると、全体流量は区分分担流量の総計に等しいから、
Q(i,j)= QQ(i,1)+QQ(i,2)+………+QQ(i,h)+………+QQ(i,IM)
…………………(35)
全体のエネルギー勾配と区分のエネルギー勾配が等しいと考えられるから、全体エネルギー勾配をEI(i,j)、区分エネルギー勾配をEEI(i,h)とすると、
EI(i,j)= EEI(i,1) =EEI(i,2)=………= EEI(i,h)=………= EEI(i,IM)
…………………(36)
が得られる。エネルギー勾配の定義から、
EI(i,j)=( N(i,j)* Q(i,j))/(R(i,j)4/3*A(i,j))
とおいて、
( N(i,j)* Q(i,j))/(R(i,j)4/3*A(i,j)) = ( NC(i,1)* QQ(i,1))/(RR(i,1)4/3*AA(i,1)) = ………= ( NC(i,IM)* QQ(i,IM))/(RR(i,IM)4/3*AA(i,IM))
………………(37)
この式(37)を式(35)に代入して整理すると、
A(i,j)*R(i,j)2/3/ N(i,j) = ΣAA(i,h)*RR(i,h)2/3/ NC(i,h)
………………………(38)
ここで、B(i,j) = Σ(BB(i,h)) ………………………(39)
A(i,j) = Σ(AA(i,h)) ………………………(40)
である。式(38)にはR(i,j)とN(i,j)の未知数があり、式が一つであるから、相似形から、
A(i,j)*R(i,j)2/3 = ΣAA(i,h)*RR(i,h)2/3
とおくと、以下の式が得られる。
R(i,j) = (ΣAA(i,h)*RR(i,h)2/3/ A(i,j))3/2 ……………(41)
N(i,j) = A(i,j)*R(i,j)2/3 /Σ(AA(i,h)*RR(i,h)2/3/ NC(i,h))
………………(42)
また、遊水断面積については、
RAA(i,l)=if (H(i,j)−RZC(i,l) )>0 then(RBC(i,l)*(H(i,j)−RZC(i,l))
else 0 ………………(43)
RA(i,j) = Σ(RAA(i,l) ) ……………………(44)
が得られる。
以上により、区分川幅、区分河床高を単区分とする複雑な断面形状に対して、水位が与えられると、区分断面特性から断面平均の径深や全体粗度係数が算定される。
図4−1のフロー図にしたがって、上流端境界条件が水位与件の場合について、精密法陰形式計算部21における、図2−1に示すような複合河川の水位及び流量計算の主要部分の流れを説明する。必要な与件設定の下に、ステップS701において、KKK=1(KKK=1,2,・・・,KM、KKKは計算の精度を向上させるために上流端流量の計算を繰り返させる指標数であり、KMとしては15回を上限としている。)とし、ステップS702において、本川及び支川の上流端の時点j+1の流量を上流端流量計算部21−1により計算し、かつK=1(K=1,2,・・・,MM、Kは上流端水位が安定した値を呈するのに必要となる計算を繰り返させる指標数であり、MMは試算により求める。)とおく。
次に、ステップS703において、流量再計算部21−5が、本川及び支川の上流端以外の次時点j+1における各地点の流量を仮定する。最初は、前時点jの値に仮定する。次いで、単一河川精密法陰形式計算部21−2が、ステップS704において、本川下流端与件水位及び派川下流端与件を出発条件として、各地点の時点j+1の水位を不定流的不等流計算により算定する(不定流的不等流計算として、式(23)により計算する)。本川及び支川の合流点の水位は、結節点水位計算部21−3が、結節点条件式に基づいて結節点上流の水位として計算する。
結節点上流においては、計算された結節点上流水位を出発条件として、単一河川精密法陰形式計算部21−2により、本川及び支川の各地点の時点j+1の水位を不定流的不等流計算により算定する。結節点においては、結節点水位計算部21−3が、結節点条件式に基づいて結節点上流の水位を計算する。
このようにして、本川上流並びに各支川水位を上流端まで求める。このように、S704の計算過程により、全監視領域の水位を全領域水位計算部21−4で計算する。
次に、ステップS705において、支川全体及び第1結節点の本川上流側において、流量再計算部21−5により、時点j+1の流量を再仮定して結節点に至る。KK=1(KK=1,2,・・・,KN、KKは結節点の数だけ計算を繰り返させる指標であり、KNは結節点数)とおく。次いで、ステップS706において、結節点に関して結節点下流流量計算部21−6の結節点条件式により、結節点下流側流量を算定する。第一結節点では、結節点下流流量計算部21−6の合流点結節点の条件式により下流の本川流量を算定し、ステップS707において本川下流流量を、流量再計算部21−5により再仮定して結節点に至り、KK=KK+1とおく。
次いでステップS708において、KK<=KN(結節点の数)であるか否かを判断し、YESのときは、S706に戻る。結節点が遊水地に至ったときは、ステップS706において、結節点下流流量計算部21−6の遊水地の条件式により、遊水地流量を算定し、本川遊水地下流側の流量を求める。その本川下流区間の流量は、S707と同様にして求めて、KK=KK+1とおく。S708の同様のチェックを行い、分派点に至ったときはステップS706において、結節点下流流量計算部21−6の派川の条件式により、派川流量を算定し、本川派川下流側の流量を求める。派川区間、本川下流区間の流量は、S707と同様にして求める。
以上のように、ステップS705からS708の過程により、全監視領域の流量を全領域流量計算部21−7で計算する。
ステップS708においてKK<=KNがNOのときは、ステップS709において、K<MMであるか否かを判断し、YESのときは、ステップS704に戻り、かつS709を繰り返す。一方、K=MMのとき、ステップS710において、上流端水位合致度監視部21−8により、本川及び支川の上流端の計算水位を境界条件水位と比較する。また、連続方程式合致度監視部21−9により、連続方程式により、各2地点間の水位と流量のバランスを調べて、全地点の内、許容誤差を超える地点数を調べる。そして、KKK=KKK+1にする。良好でない(NO)の場合は、ステップS711において、KKK<KMであるか否かを判定する。KKK<KMのときは、再計算司令部21−10により、ステップS702に戻りステップS710までを繰り返す。KKK=KMまたはステップS710の比較結果が良好(YES)のときは、ステップS712に進み、時点j+1の全監視領域の計算を終了し、次時点移行司令部21−11により、次の時点に移行する。
図4−2は、図2−1に示すような複合河川の状態量(水位及び流量)を、精密法陰形式差分法を用いてシミュレーションする場合の、本発明のシミュレーションシステムにおける全体動作を示すフロー図である。図4−2に示すように、まず、ステップS1において、複合河川条件設定/演算結果Excel表示部1は、図3−1に示すようなExcelシートをディスプレイ上に表示させ、オペレータに監視領域の河道各地点の河道断面特性を設定させ、ステップS2において、河道各地点の区分断面に粗度係数特性を設定させる。また、ステップS3において、計算結果と比較するための本・支川の実測水位と流量を入力させ、ステップS4において、初期条件として、初期時点(例えば、洪水発生の初期時点)での全監視領域の水位と流量を初期条件として設定させる。
さらに、ステップS5において、時点j=1と設定し、ステップS6において、別途オペレータが一括して入力している境界条件が、j+1時点の本川上流端、下流端、支川上流端の境界条件として設定される。図5−1は境界条件として設定されて全監視時間にわたる諸量を図示して、設定結果を確認し易くしているものである。以上のような条件設定の基に、ステップS7において、精密法陰形式計算部21は、j+1時点の全監視領域の水位と流量を算定する。この計算は、図4−1を参照して先に説明したように実行される。次に、ステップS8において、j<jNであるか否かを調べる。j<jNのときはステップS9へ進み、j=j+1に設定してS6に戻り、ステップS6〜ステップS8の計算を繰り返す。NOのときは、ステップS10に進む。
このようにして、時点jNまでの計算が終了すると、ステップS8での判定結果がNOとなり、これは、先に設定した一群の粗度係数条件による計算が完了したことを意味するので、ステップS10において、実測/計算状態量比較表示部32並びに水位/流量関係比較表示部35により、不定流計算結果を対比的に表示する。
次に、ステップS11において、オペレータが、ステップS10での取りまとめの結果すなわち不定流計算結果と、ステップS3で設定した観測水位や観測流量とを比較し、また、不定流計算結果の時間水位/時間流量関係図と、予め計算しておいた不等流計算結果の水位/流量関係図の比較を行う。オペレータは、比較結果が良好でないと判断した場合、粗度係数の再設定指示を入力すると、ステップS2に戻って粗度係数の再設定を行い、そして、再計算を行う。観測値を単なる比較値とするのではなく、近づけるべき値、与件と捉えることができる。一つ与件が加わると、一つ粗度係数特性を修正できる。現実の問題としては、区分区分で設定する粗度係数特性については、該当河川における既往の研究結果を適用して当てはめておき、全体のエネルギー損失に影響の大きい低水路の粗度係数特性を中心に変更していく等の取り扱いを行う。不等流(定流不等流)計算における粗度係数の検証においては、予め合わせるべき実測水位(痕跡水位が用いられる)とピーク時の流量を設定しなければならないが、不定流計算の場合においては、観測水位の時間変動波形や実測流量の時間変動波形に合わせるという自然な行為により、粗度係数の微調整を行うものである。
一方、オペレータが、比較結果が良好であると判断した場合、オペレータは、ステップS12において、ディスプレイ上の確定ボタン等をクリックすることにより、対象とする複合河川の水流を再現するシミュレーションモデルが完成したことを確定する。確定されたシミュレーションモデルは、記憶装置4に記憶される。このようにして得られたシミュレーションモデルを応用して、ステップS13において、実際の河川の水流を予測し、洪水予測等を行う。
上流端境界条件が流量与件の場合における複合河川の水位及び流量計算の主要部分の流れは、図4−3のフロー図の通りである。図4−1と比較すると、S602が「仮定する」から「与件流量とする」ということで計算が単純化している。図4−1におけるS710の上流端水位の比較が必要なくなり、従って、S709のステップが無くなっている。図4−3のフローにおいては、MM回で計算を区切ってチェックすることなく、S609のステップにおいて連続方程式の合致度比較を満足するまで計算を繰り返す。
ここで、グラフ表示部3における各部の動作をフロー図で示した処理に関連付けて説明する。
実測/計算状態量比較表示部31は、図4−2のフロー図におけるステップS10において動作し、複合河川の状態量シミュレーションにより得られた時間水位(時間により変動する水位)と時間流量(時間により変動する流量)を、実測資料の入力により予め組み込まれた観測時間水位値や観測時間流量値とを比較する図を作成する。計算が完了すると直ちに、主要地点において組み込まれた実測(観測)による時間状態量(水位及び流量)とを比較する図(グラフ)を作成し、ディスプレイ上に表示する。時間状態量(水位及び流量)の計算が完了すると直ちに、主要地点において組み込まれた実測時間状態量と計算時間状態量を表示する。ステップS11においてオペレータが評価を行い、実測値との合致度をチェックする。
なお計算は、3支川、1派川及び3遊水地を含む図2−1よりやや複雑なモデル河川を用いて行った。境界条件は、前述の図5−1の通りである。本・支川共に水位与件の場合である。境界条件の設定ミスを防ぐために、表示してオペレータによるチェックを可能にしている。
図5−2及び図5−3は、実測/計算状態量比較表示部31によって表示されるグラフの一例である。これらの図においては、実測状態量としては、簡略法陰形式計算法による計算値を比較する観測値として併記している。各図の下方に凡例を示しているが、塗りつぶしの四角及び三角等が精密法の計算結果であり、記号無しの実線や点線で示しているのが観測値の代わりに簡略法陰形式計算法による計算値を示すものである。凡例に示している数字は、本川の河川位置を示している。40精とあるのは、河口から40km位置の精密法による計算結果ということを示す。ただ、派28とあるのは、派川の河口から28番目の断面位置を示している。この位置は、派川の最上流端位置であり、本川の120+0(本川120km位置(分流点)の+0m上流の分流点上流側水位)から分かれた位置にあたる。遊1、遊2、遊3は、3ケ設置されている遊水地の番号を示している。40簡とあるのは、40km位置の簡略法による計算値を観測値の代わりに示しているものである。
水位/流量関係表示部32は、図4−2のステップS10において実行され、ステップS11においてオペレータが評価を行い、計算誤差の蓄積をチェックするものである。不定流計算は、数日にわたる計算を各時点における次時点の計算結果を初期条件と置き換えて行うものである。そのため、各時点における計算誤差が累積している可能性がある。このことを調べる方法として、不等流計算による水位/流量の関係と不定流計算による時々刻々の水位/流量の関係の合致度を調べる方法が期待される。これら両者の関係は、洪水流のピーク付近においては同一流量が長時間継続するということから、現象論としては洪水のピーク付近においてほぼ等しいことが想定されるものであるが、計算には各種誤差が発生してそのような結果になるかどうかが懸念される。不定流計算の方には誤差の累積が懸念されるが、不等流計算についてはそのような問題が無く、誤差累積のチェックとしては有効な方法と考えられる。
図5−4は、水位/流量関係表示部32によって表示されるグラフの一例である。図の右側に凡例を示しているが、40st,78st等と書いているのは40km地点等の不等流計算による関係曲線を示し、40FL,78FL等と書いているのは40km地点等の不定流計算結果による時間水位と時間流量の関係線を示すものである。この図を見ると、上流部においてはほとんど同じ線上にあり、洪水時においても定流に近い関係であることが分る。中下流部について、支川の流入や遊水地への越流等があり、接続部の間で不等流計算の流量をどのように繋いでいくべきか課題を有しているが、併記された不等流計算による水位と流量の関係と不定流のそれらの関係とを比較すると、ピーク流量の所で両者がほぼ一致しており、下降時の関係を見ると同一水位に対する流量は不定流の下降時の方がやや少ない流量を示している。なお、ピーク付近でほぼ一致するだろうということは、従来から言われてきたことである。下降時においては、河道に貯留されていた量が絞り出されてくるため、下流ほど流量が多くなるという現象が生じることを考えると肯定されるものである。
2時点縦断変化表示部33は、計算する各2時点の水位縦断、流量縦断、実測水位、各区間水位貯留量、流量貯留量を記載した図を掲げているものであるが、この図の実測水位WLと計算水位との合致度を見ることによって計算が実態に近いかどうかの判断を行うことができる。また、本発明の計算状況監視の中心である水位貯留量(水位変化(上昇・下降)分)と流量貯留量(流量変化(増大・減少)分)の合致度の進展状況を監視するものである。
図5−5は、2時点縦断変化表示部33によって表示されるグラフの一例である。12時間おきの異なった時点における上記諸量の縦断的な関係を示している。図の左の縦第1軸は流量、右の縦軸第2軸は標高水位であり、凡例に示す通り2時点の計算流量と計算水位、各区間の水位貯留量、流量貯留量及び実測水位WLの代わりをする簡略法計算による計算水位を図示している。この図の横軸は位置を示しており、K,L,Mの添字は支川K,L,Mの位置(断面番号)、Hは派川、無印で数字のみ示すものは本川の位置(河口からのkm位置)を示している。本川と支川や派川を対比することによって、合流や分派の状況を把握することができる。この図には、連続方程式の2項の関係を水位貯留量と流量貯留量として示しているが、本発明の精密法ではこの誤差を許容誤差以内にすることを計算のしばりとしているものである。後述するように、簡略法においてもこの図を整理しているが、中身が異なるものである。
図5−6は、遊水池水位・越流表示部34によって表示されるグラフの一例である。凡例に示すとおり、遊水地への越流量や遊水地内水位、遊水地前面の河川水位の時間的な推移状況を図示するものである。遊1、2、3は、3ケ設置されている遊水地の番号を示している。遊水地については、河道特性の代わりに水位別の水面積、貯留量を設定しておき、遊水地地点の今水位、次水位、遊水地今内水位、遊水地次内水位、遊水地今越流量、遊水地次越流量、遊水地累加越流総量、遊水地内水位置き換え水位を設定して、累加越流総量に対応する遊水地内水位が求められるように設定している。遊水地については、完全越流から潜り越流に変化する時点、逆流に移行する時点、潜り逆流から完全越流逆流に移行する時点で計算不安定が生じることがある。大きな計算の繰り返し回数をKM回(15回としている。)で完了するようにしているため計算を進行することができるが、結果によっては移行時点の数時間について、越流量を欄外位置に設定して置くことも必要である。
本発明の複合河川の状態量のシミュレーションは、コンピュータプログラムにより行うものであるが、計算の条件となる初期条件、実測資料、境界条件等をExcelシート上で入力し、演算部2において、入力された条件及び予め設定された条件に基づいて演算を行う。そして、全監視領域(全監視地点)の所定期間における水位及び流量の計算が終了すると、実測/計算状態量比較のためのグラフ、主要地点水位/流量関係比較のためのグラフ、2時点縦断変化監視のためのグラフ等として即時的に見ることができるようにする。オペレータが、これらの成果図を見ることによって、直ちに河川の洪水現象の再現性についての評価、判断を行うことができる。また、Excel表示シートに従って、河道断面特性や粗度係数特性の設定変更さらには境界条件や観測資料の設定変更を容易に行うことが可能となるため、従来分かり難いとされてきた不定流計算を未熟練者においても計算を可能とするエキスパートシステムとすることができる。
次に、簡略法陰形式差分法による計算モードについて説明する。
この計算モードを実行する簡略法陰形式計算部22は、図1−3に示すように、結節点上流水位計算部22−1、単一河川簡略法陰形式計算部22−2、結節点下流流量計算部22−3、全領域水位流量計算部22−4、連続方程式合致度監視部22−5、結節点水位合致度監視部22−6、再計算指令部22−7、及び次時点移行指令部22−8を備えている。なお、結節点下流流量計算部22−3、再計算指令部22−7、次時点移行指令部22−8は、精密法陰形式計算部21にも同様な機能が備えられているので、これらを精密法陰形式計算部21及び簡略法陰形式計算部22とで共用しても良い。
以下に、精密法陰形式計算部21と相違する簡略法陰形式計算部22の機能部について説明する。
結節点上流水位計算部22−1
単一河川の簡略法陰形式計算は、境界条件として、単一河川の上流端の水位または流量及び下流端の水位が与えられると全ての水位と流量が求められる。複合河川において、この条件を作るためには、結節点の上流側の水位を全て仮定して、その仮定した結節点上流側水位と計算によって求められた結節点下流側水位が、許容誤差範囲で一致するまで次の式で再仮定を行うものである。
本川結節点上流側水位再仮定値
=α*仮定値(=本川結節点上流側水位)+(1−α)*計算結果(=本川結節点下流側水位)
………………………(45)
ここに、αは定数であり、1/4〜3/4の範囲の値であることが好ましく、収斂状況を調べ、それに応じて適宜の値に設定される。
なお、最初の本川結節点上流側水位の仮定値は、前時点の結節点上流側水位とする。
単一河川簡略法陰形式計算部22−2
複合河川水系における単一河川区間において、既知の方法である単一河川の簡略法陰形式計算法を用いて、単一河川区間の次時点j+1の水位と流量を求めるものである。
単一河川簡略法陰形式計算部22−2は、基本式として、上記した式(17)及び(20)を用いる。既知の手法であるため、式の展開は省略するが、基本式を基に差分式を展開して次の式(46)〜(50)を求めることができる。
単一河道に対する計算方法(下流端で水位、上流端で水位或は流量が与件として与えられている場合)は、未知数である水位及び流量を求める計算式は、以下のように集約される。
Q(i−1,j+1)=−qi−1H(i,j+1)−ti−1Q(i,j+1)+si−1
………………………(46)
H(i,j+1)=r−pQ(i,j+1) ………………………(47)
ただし、i=2,3,………………,IN
式の数が、(IN−1)*2ケであり、与件2ケを合わせると式が2*INケとなる。未知数の数と等しくなり、Q(i.j+1)とH(i,j+1)を求めることができる。
また、式(47)を変形して、
Q(i,j+1)=(r−H(i,j+1))/p …………………(48)
を得る。式(47)は同一箇所において流量から水位を求める式であるが、式(48)により、同一箇所において水位から流量を求めることができる。河川の上流端においては流量が観測されていない場合が多く、この式(48)により、与件を水位として流量を求めることができる。
なお、従来は、式(47)を用いて、同一箇所において流量から水位を算定するということは行われていたが、同一箇所において水位から流量を算出し得るということは行われていなかった。本発明者は、式(47)から式(48)を算出し、実際の河川へ適用することを通して式(48)の有効性を確かめることができた。これにより、不定流計算の与件の与え方が大変簡単になった。このことは、派川等の分派点の条件を与える上においても大変有効である。
ここで、Q(i.j+1)、H(i,j+1)は、各測点iで計算しようとするt=(j+1)Δt時刻の流量及び水位であり、qi−1,ti−1,si−1,p及びrはそれぞれ既知の水理量から計算される係数で、次の漸化式で定義される。
i−1=1/(θi−1+pi−1),ti−1=ηi−1/(θi−1+pi−1) …(49−1)
i−1=(μi−1+ri−1)/(θi−1+pi−1) ……(49−2)
=(ξi−1+σi−1i−1−νi−1i−1)/(σi−1i−1+νi−1)…(49−3)
=(σi−1i−1+1)/(σi−1i−1+νi−1) ……(49−4)
ただし、σi−1=1−νi−1i−1,r=H(1,j+1),p=0,であり、i=2,3,………………,INである。
また、式(49−1)〜式(49−4)の各係数は、次式で求められる。
ηi−1=−Δxi−1/g(A(i,j)+A(i−1,j))Δt+2(Q(i.j)
+Q(i−1.j))/g(A(i,j)+A(i−1,j))−Δxi−1|Q(i.j)
+Q(i−1.j)|/2(k(i,j)+k(i−1,j)) ……(50−1)
θi−1=−Δxi−1/g(A(i,j)+A(i−1,j))Δt−2(Q(i.j)
+Q(i−1.j))/g(A(i,j)+A(i−1,j))−Δxi−1|Q(i.j)
+Q(i−1.j)|/2(k(i,j)+k(i−1,j)) ……(50−2)
μi−1=−Δxi−1*(Q(i.j)+Q(i−1.j))/g(A(i,j)
+A(i−1,j))Δt−(Q(i.j)+Q(i−1.j)))*(A(i−1,j)
−A(i,j))/g(A(i,j)+A(i−1,j)) ……(50−3)
νi−1=−Δxi−1*(B(i,j)+B(i−1,j))/4Δt ……(50−4)
ξi−1=νi−1*(H(i,j)+H(i−1,j)) ……(50−5)
式(50−1)〜(50−5)、(49−1)〜(49−4)において、i=2,3,………………,INの順において、式(46)及び(47)の係数qi−1,ti−1,si−1,p及びrを計算する。すべての係数は、t=(j+1)Δtの時刻における河口水位H(1,j+1)とt=jΔt時刻における水理量である川幅B(i,j)、流水断面積A(i,j)、疎通能k(i,j)、水位H(i,j)、流量Q(i.j)で表される。水位H(i,j)が既知であるとき、上記の水理量が把握できるようにしておき、式(50)、式(49)を計算する。式(48)においてH(IN,j+1)が与えられているからQ(IN,j+1)が求められ、それを式(46)に代入するとQ(IN−1,j+1)が計算される。Q(IN−1,j+1)を式(47)に代入してH(IN−1,j+1)を求め、さらにH(IN−1,j+1)を式(46)に代入してQ(IN−2,j+1)を求める。この計算を順次繰り返すことにより、単一河川と見ることができる本川、支川、派川それぞれのすべての箇所で水位と流量が求められる。しかも、陽形式差分法に見られるような安定条件の問題は生じない。
簡略法陰形式の差分展開の詳細を説明していないが、上述の計算方法には繰り返し計算を減じるために、差分項の係数にあたる断面積や径深の値の時間変化が微小であるという仮定を用いて、j時点の値で近似している。この近似の誤差は、洪水現象が進行し、水位が高まるに連れて、変化量の割合が少なくなるものであり、計算が安定することを期待しているものであるが、洪水の初期や上流端付近においてはこの仮定を満足しない状況が発生し易いものである。
本簡略法の計算方法の基本は、上述の仮定をおくことによって、計算における繰り返しを無くすることに有り、その基本的考え方の基に誤差を軽減するための措置は設けられていない。このような計算方法に内在する誤差発生に対する配慮事項として、誤差発生の状態を監視することが好ましいと考えられる。
その一つの措置として、本発明の一つである精密法陰形式差分法の誤差軽減方策として用いた連続方程式の2項の差異の程度を監視することが考えられる。
連続方程式合致度監視部22−5
連続方程式合致度監視部22−5は、精密法陰形式計算法において用いられた下記の式で算定される水位貯留量dRQhi-1と流量貯留量−dRQqi-1を用いて、
dRQhi-1=Δxi−1/2Δt*(A(i,j+1)+A(i−1,j+1)−A(i,j)−A(i−1,j))…(26)
−dRQqi-1=−(Q(i−1,j+1)+Q(i−1,j)−Q(i,j+1)−Q(i,j))/2 ………(27)
連続方程式の合致の状態を監視する。
連続方程式を満足している場合は、dRQhi-1と−dRQqi-1は、ほぼ等しいものであるが、誤差が存在する場合は等しくないため、縦断的な各位置における両者の値を調べる。
連続方程式合致度表示部22−5の機能は、精密法陰形式計算部21−9の機能と同様のものであるが、精密法においては誤差を減じる機能を有しているに対し、簡略法においては表示するのみで、誤差を減じる機能を有していないという差異がある。
全領域水位流量計算部22−4
全領域水位流量計算部22−4は、最上流端から下流に向かって順次それぞれの地点の時点j+1における全領域の水位と流量を計算する。該計算においては、最上流端とその下流の結節点の間、結節点とその下流の結節点との間、及び最下流の結節点と最下流端との間、及び各支川の上流端から本川への合流点の間、派川の上流端から下流端の間の時点j+1の水位と流量を単一河川簡略法陰形式計算部22−2により算定させ、かつ、各結節点下流流量を、結節点下流流量計算部22−3により算定させることにより、最下流端までの流量を算定させる。
結節点下流流量計算部22−3
結節点下流流量計算部は、基本的に精密法陰形式差分法の場合と同じである。ただし、簡略法においては、境界条件として、上流端与件を水位とする場合においても、繰り返し計算無しに単一河川としての水位と流量を算定することができるということを利用することによって、派川が加わる計算を有効に行うことができる。
このときは、派川への分派点の式として下の関係式を用いる。
本川分流点上流流量 = 本川分流点下流流量+派川側上流端流量 ………(12)
本川分流点上流側水位 = 派川側上流端水位+損失水頭 ………(13−1)
損失水頭=funcII(本川分流点上流流量、本川分流点上流側水位) …………(13−2)
ここに、funcII(本川分流点上流流量、本川分流点上流側水位)は、結節点における諸条件を検討して求められている与件式である。
単一河川簡略法陰形式計算部により分流点上流河川区間の水位と流量が算定されて、本川分流点上流流量と本川分流点上流側水位が求められると、式(13−2)により損失水頭が求められるから、式(13−1)により派川側上流端水位が求められる。したがって、派川河川区間の全ての水位と流量が単一河川の簡略法陰形式計算部により求められる。ここで派川側上流端流量が求められるから、式(12)により本川分流点下流流量が求められる。これより下流の本川の水位と流量の算定は支川合流の場合と同様に算定して次の結節点に至ることができる。
簡略法陰形式計算部22は、全監視領域における河道各地点の河道断面特性及び粗度係数特性設定の下に、複合河川の河道各地点の初期条件並びにj+1時点における境界条件を与件として、j+1時点における全監視領域の水位と流量を算定する。この場合、単一河川としてのj+1時点の計算は、上下流の境界条件が与えられると瞬時に行われるという条件を利用して、全結節点上流側の水位を仮定することにより単一河川としての計算条件を整えることに始まる。
結節点水位合致度監視部22−6
結節点水位合致度監視部22−6は、仮定された本川結節点上流側水位と計算によって求められる本川結節点下流側水位との差が許容誤差範囲にあるかどうかを監視する。
図6−1のフロー図を参照して、簡略法陰形式計算部22の計算の主要部分の流れを説明する。必要な与件設定の下に、ステップS801において全監視領域のj+1時点における全結節点の上流側水位をj時点の水位と仮定し、K=1(K=1,2,………,KM、Kは計算の精度を向上させるために結節点上流側水位の仮定を繰り返させる指標数であり、KMとしては15回を上限としている。)、KK=1(KK=1,2,………,KN、KKは結節点の数だけ計算を繰り返させる指標数であり、KNは結節点数)とする。次に、ステップS802において、支川区間及び本川最上流区間において、単一河川簡略法陰形式計算部22−2により、j+1時点の水位、流量を算定し、結節点に至る。この計算に併行して連続方程式合致度監視部22−5により、連続方程式チェックのための計算を行う。
次いで、ステップS803において、結節点下流流量計算部22−3は、合流点結節点条件式を用いて、結節点下流側の流量を算定し、ステップS804において、本川区間のj+1時点の水位と流量を単一河川簡略法陰形式計算部22−2により算定し、結節点に至る。この計算に併行して、連続方程式合致度監視部22−5は、連続方程式チェックのための計算を行う。KK=KK+1として、ステップS805により、KK<=KNのチェックを行い、YESのときはS803に戻る。
遊水池結節点に至ると、ステップS803において、結節点下流流量計算部22−3の遊水地結節点の条件式により、遊水地流入量を算定し、本川遊水地直下流側流量を算定し、ステップS804において、本川区間のj+1時点の水位と流量を単一河川簡略法陰形式計算部22−2により算定し、結節点に至る。この計算に併行して連続方程式合致度監視部22−5により連続方程式チェックのための計算を行う。KK=KK+1として、ステップS805により、KK<KNのチェックを行い、YESのときはS803に戻る。
派川分流点に至ると、ステップS803において、結節点下流流量計算部22−3の派川結節点の条件式により、損失水頭を算定し、派川分流点上流側水位を算定し、派川について単一河川簡略法陰形式計算部22−2により、次時点の全ての水位と流量を算定し、本川分流点下流流量を算定する。そこで、ステップS804において、本川区間のj+1時点の水位と流量を単一河川簡略法陰形式計算部22−2により算定し、結節点に至る。この計算に併行して、連続方程式合致度監視部22−5により、連続方程式チェックのための計算を行う。KK=KK+1として、ステップS805により、KK<=KNのチェックを行い、YESのときはS703に戻る。
以上のように、S802からS805の過程の繰り返しにより、全領域の水位と流量を全領域水位流量計算部22−4で計算する。
ステップS805により、KK<=KNのチェックを行い、NOのときは最下流端までの計算が完了したとき、ステップS806でK=K+1とおき、ステップS807において、結節点水位合致度監視部22−6により、仮定した全結節点の上流側水位と算定した結節点下流側水位を比較する。
その誤差が許容基準を満足しない場合は、再計算指令部22−7は、ステップS808においてK<KM(=15)と判定した場合、ステップS809において、結節点上流水位計算部22−1により、本川結節点上流水位を再仮定し、ステップS802に戻り、ステップS808を繰り返す。一方、K>=KMの場合及びS807における誤差が許容基準以内のときは、ステップS810に進み、j+1時点の全監視領域の計算を終了し、次時点移行司令部22−8により、次の時点に移行する。
上記した簡略法陰形式計算部22の機能を用いて、複合河川の状態量(水位及び流量)をシミュレーションする方法について説明する。計算は精密法陰形式計算法により行ったと同じ河川状態、境界条件により行う。シミュレーションシステムは、図6−2のフロー図に従って不定流計算を行って、全監視時間における河川の状態量を得ることを基本としている。まず、複合河川条件設定/演算結果Excel表示部1は、図3−2に示すようなExcelシートを表示し、ステップS51において、監視領域の河道各地点の河道断面特性を設定させ、ステップS52において、河道各地点の区分断面に粗度係数特性を設定させ、ステップS53において、計算結果と比較するための本支川の観測水位と流量を入力させ、ステップS54において、発生した洪水の初期時点を捉えて、全監視領域の初期条件としての水位と流量を設定する。そして、ステップS55において、j=1として時点を1に設定し、ステップS56において、別途オペレータが一括して入力している境界条件が、j+1時点の本川上流端、下流端、支川上流端の境界条件として設定される。精密法陰形式差分法を用いた場合の境界条件設定の事例を図5−1に示したが、この設定方法は同様であり図は省略する。
ステップS57において、簡略法陰形式計算部22により、j+1時点の全監視領域の水位と流量を算定し、ステップS58において、j<jNであるか否かを調べる。j<jNのときはステップS59へ進み、次時点移行指令部22−8によりj=j+1に設定してステップS56に戻り、ステップS56〜ステップS58の計算を繰り返す。NOのときはステップS60に進む。
このようにして、時点jNまでの計算が終了すると、ステップS58での判定結果がNOとなり、これは、先に設定した一群の粗度係数条件による計算が完了したことを意味するので、ステップS60において、グラフ表示部3の実測/計算状態量比較表示部31並びに水位/流量関係表示部32により、不定流計算結果の取りまとめを行って、それぞれの比較結果をディスプレイ上に表示する。
ステップS61において、オペレータは、実測時間水位と計算時間水位、実測時間流量と計算時間流量、並びに主要地点の水位/流量関係図の比較を行う。また、連続方程式の満足状況を調べる。実測時間水位と計算時間水位、並びに実測時間流量と計算時間流量とに所定誤差以上のひらきがある場合、ステップS52に戻り、オペレータは粗度係数の変更を行い、そして、再度一連の計算を行う。
ステップS61における一連の比較の結果、所定誤差以内であると判断した場合は、洪水流再現シミュレーションが成功したものであり、ステップS62において、断面の設定、粗度係数の設定、結節点の条件が良好に行われたものとして、オペレータは、確定ボタン等をクリックすることにより、河川の水流を再現するシミュレーションモデルを確定する。確定されたシミュレーションモデルは、記憶装置4に記憶される。
本方法の応用として、新しい洪水が発生する可能性があるとき、簡略法陰形式計算部22により、確定した洪水流シミュレーションモデルを利用して、河川下流部の洪水予警報に利用する。このため、ステップS63において、上流域の降雨から上流端流量を予測する方法が既知となっている方法による上流域の予測流量波形及び下流端条件は近傍の潮位波形を与件として、確定した洪水流シミュレーションモデルの境界条件として設定し、そして、ステップS64において、新しく設定した境界条件により、ステップS56〜S61の計算を行い、実際の洪水が到達する前に当該地点の水位を計算することによって、洪水予警報に利用する。簡略法陰形式差分法の計算時間は非常に短時間で計算を終了させることができるため、このような利用が可能である。
簡略法陰形式差分法の場合、精密法陰形式差分法と相違して、複合河川条件設定/演算結果Excel表示部1は、図6−1のS807において、結節点水位合致度監視部22−6によって得られた結節点水位合致度の結果を表示する。またグラフ表示部3の実測/計算状態量比較表示部31は、図6−2のフロー図におけるステップS60において動作し、精密法陰形式差分法の場合と同様に、複合河川の状態量シミュレーションにより得られた時間水位(時間により変動する水位)と時間流量(時間により変動する流量)を、予め入力され記憶された実測時間水位値や実測時間流量値とを比較する図を作成する。計算が完了すると直ちに、主要地点において組み込まれた実測による時間状態量(水位及び流量)とを比較するグラフを作成し、ディスプレイ上に表示する。ステップS61においてオペレータがグラフをみて評価を行い、実測値との合致度をチェックする。
図7−1及び7−2は、実測/計算状態量比較表示部31によって表示されるグラフの一例である。凡例については、図5−1及び5−2の例において述べたと同様であるが、これらの図においては、実測状態量としては、精密法陰形式計算法による計算値を比較する実測値として併記している。なお、簡略法陰形式差分法の不定流計算における分流点の計算においては、結節点下流流量計算部22−3に示すように、本川の分派点上流の水位と流量から派川側上流端水位を求める方式(式(13−1)と(13−2)を使用)を用いており、精密法の場合の分流比を与える方式と異なる計算方式と異なるものとなっている。簡略法陰形式差分法においても、精密法陰形式差分法と同じ方式を採用して計算を行うことは容易であり、その場合における実測時間流量図の事例を示すと図7−3の通りである。図7−2、図7−3共に、比較する数値として、精密法の場合を併記している。分派点の流量を比較すると、水位法の場合は差が認められるが、分流比計算の場合は両者の値は酷似していることが認められる。
水位/流量関係表示部32は、図6−2のステップS60において実行され、ステップS61においてオペレータが評価を行い、計算誤差の蓄積をチェックするものである。不定流計算は、数日にわたる計算を各時点における次時点の計算結果を初期条件と置き換えて行うものである。そのため、各時点における計算誤差が累積している可能性がある。このことを調べる方法として、精密法陰形式差分法の場合と同様に、不等流計算による水位/流量の関係と不定流計算による時々刻々の水位/流量の関係の合致度を調べる方法が期待される。不定流計算の方には誤差の累積が懸念されるが、不等流計算についてはそのような問題が無く、誤差累積のチェックとしては有効な方法と考えられる。
図7−4は、水位/流量関係表示部32によって表示されるグラフの一例である。この例も図5−4と同様である。この図を見ると、上流部においてはほとんど同じ線上にあり、洪水時においても定流に近い関係であることが分る。中下流部について、支川の流入や遊水地への越流等があり、接続部の間で不等流計算の流量をどのように繋いでいくべきか課題を有しているが、併記された不等流計算による水位と流量の関係と不定流のそれらの関係とを比較すると、ピーク流量の所で両者がほぼ一致しており、下降時の関係を見ると同一水位に対する流量は不定流の下降時の方がやや少ない流量を示している。なお、ピーク付近でほぼ一致するだろうということは、従来から言われてきたことである。下降時においては、河道に貯留されていた量が絞り出されてくるため、下流ほど流量が多くなるという現象が生じることを考えると肯定されるものである。
簡略法の結果について、精密法の結果と比較しながら、併記された不等流計算による水位と流量の関係と不定流のそれを比較すると、ピーク付近以降においては同一水位において、120FL(120kmの不定流計算による値)の値が、120st(120kmの不等流計算による値)の値よりも少ないという傾向が現れている。この傾向は、精密法における場合と同じである。120kmより下流については、この関係が微妙に変化している。ピーク以降においても、不定流計算の値が、不等流の値よりも大きいという結果が表れている。この傾向が下流に向うほど顕著にあらわれており、40km地点においては大きな差が現れている。この関係を精密法と比べると大きな差異があり、精密法においては、ピーク付近以降においては不等流計算の方が流量が大き目にでるという形を示している。
このことについて、計算の中味に分け入って調べてみた。簡略法の計算結果を見ると、最下流部の一部区間において、不等流計算が良好に行われておらず、時間流量に対応する水位が低い目に表れており、不等流計算よりも不定流計算の方が流量が大き目に表れているということが分かった。一方、精密法の計算結果を見ると、不等流計算が良好に計算できていることが確認された。しかし、その状況は狭窄部の上流部で水位が急激に上昇するという形態が生じており、特殊な状況をなしている部分であった。
不等流計算が良好に組み込まれない条件というものがどのようなものか。その条件が明確ではないが、このような比較図による検証を行うことは重要なことと考えられる。
2時点縦断変化表示部33は、計算する各時点に、計算する各2時点の水位縦断、流量縦断、実測水位、各区間水位貯留量、流量貯留量を記載した図を掲げているものであるが、1時点〜KT時点にわたる図7−5の各2時間縦断変化監視図まとめ図を見ると、計算を開始して12〜13時点までは、水位貯留量と流量貯留量との間に差異が存在しているが、18〜19時点においてはその差異が少なくなり、その後も差異が少ない状態が続いている。なお、この2時点縦断変化監視図を、精密法計算結果である図5−5のWLとの差異を見ると、24〜25時点までは合致しているが、31〜32時点になって下流部の流量が10,000m/sを超えた頃から差異が大きくなる状況が見受けられる。
(図は、12時間おきの図のみを図示しており、中間の図は不記載。)この影響が水位/流量関係比較図でも見た不等流計算の不具合が現れているものと考えられる。なお、この図に図示されている連続方程式の2項の関係を示す水位貯留量と流量貯留量の2項の関係は、精密法と異なることは前述した通りである。
遊水地水位・越流表示部34は、遊水地への越流量や遊水地内水位、遊水地前面の河川水位の時間的な推移状況を図示するものである。図7−6は、遊水池水位・越流表示部によって表示されるグラフの一例である。精密法におけると同様な配慮によって、概ね同様の計算結果を得ることができる。
上記したように、本発明の簡略法による複合河川の状態量のシミュレーションは、各種プログラムにより行うものであるが、計算の条件となる初期条件、実測資料、境界条件等をExcelシート上で入力し、演算部2において、入力された条件及び予め設定された条件に基づいて演算を行う。そして、全監視領域(全監視地点)の所定期間における水位及び流量の計算が終了すると、実測/計算状態量比較のためのグラフ、主要地点水位/流量関係比較のためのグラフ、2時点縦断変化監視のためのグラフ等として即時的に見ることができるようにする。オペレータが、これらの成果図を見ることによって、直ちに河川の洪水現象の再現性についての評価、判断を行うことができる。また、Excel表示シートに従って、河道断面特性や粗度係数の設定変更さらには境界条件や観測資料の設定変更を容易に行うことが可能となるため、従来分かり難いとされてきた不定流計算を未熟練者においても計算を可能とするエキスパートシステムとすることができる。
本発明は、2つの方式の単一河川に対する陰形式差分法に対して、現実に存在する河川というものは単一河川が結節点において結合されて形成されているものであるという形態的特徴を捉えて、それを繰り返し計算により解を見出だすという方式を用いて解くものである。単一河川の解法が異なるために、結節点の解法も自ずから異なるものである。しかし、二つの解法には共通の部分も多く存在する。本発明を通して、精密法陰形式差分法は、全領域水位計算部と全領域流量計算部という2つの骨格より、運動方程式を満足させ、そして、連続方程式を満足させることを繰り返しながら、誤差を縮小して計算を遂行しており、現在河川の計画の基本となっている不等流計算を行うような形態で不定流計算を行っている。水位/流量関係表示部における不定流計算結果の時間水位と時間流量の関係と不等流計算結果による水位と流量を比較した図を調べても、計算結果が信頼できることが分かる。一方、簡略法陰形式差分法は、全領域水位流量計算部という統合した計算方法により誤差縮小という条件を行わないで、両者を一括して充足しようとしている。そのため、短時間で不定流計算を行い得るという利便性がある。両方式は、その解法を比較し、実測値との比較を行い、また、算定された結果を比較し合うことによって、相互の計算結果を評価、判断する資料とすることができる。
本発明は、以上のように、実河川の洪水現象を再現するためのツールとして使用することができる。洪水予警報を、具体的に水系に生じる現象である各地点の時々刻々の水位を計算することにより、具体的に目視できる図表として、実測結果と比較しながら実施できる方途を開くことができる。また、粗度係数を検証した状態量のシミュレーションモデルを構築した現実の河川に対して、既往の各種洪水や近い未来に想定される洪水流を具体的に計算することにより、現実河川の問題点や課題を詳細に把握し、効果的な対策案を立案することができる。
本発明に係る複合河川の状態量のシミュレーションシステムを示す全体ブロック図である。 図1−1に示したシミュレーションシステムにおける複合河川条件設定/演算結果Excel表示部の機能を示す図である。 図1−1に示したシミュレーションシステムにおける演算部の機能ブロック図である。 図1−1に示したシミュレーションシステムにおけるグラフ表示部の機能ブロック図である。 複合河川水系の模式図であり、2支川、1遊水地、1派川からなる複合河川を例示した図である。 複雑な形状を呈している河川の横断形状とそれを区分川幅と区分河床高で近似するイメージ図である。 本発明に係るシミュレーションシステムで実行される精密法陰形式計算モードにおいて表示されるExcelシートである。 本発明に係るシミュレーションシステムで実行される簡略法陰形式差分計算モードにおいて表示されるExcelシートである。 本発明に係るシミュレーションシステムにおいて実行される精密法陰形式差分計算モードでの、不定流計算による時点j+1における状態量計算のフロー図である。 本発明に係るシミュレーションシステムにおいて実行される精密法陰形式差分計算モードの全体フロー図である。 本発明に係るシミュレーションシステムにおいて実行される精密法陰形式差分計算モードでの、上流端境界条件が流量与件の場合における、不定流計算による時点j+1における状態量計算のフロー図である。 本発明に係るシミュレーションシステムにおいて実行される精密法陰形式差分計算モードにおける境界条件の設定状況を示している。 本発明に係るシミュレーションシステムにおいて実行される精密法陰形式差分計算モードで得られた結果を示すグラフであり、主要地点における時間水位図を示している。 本発明に係るシミュレーションシステムにおいて実行される精密法陰形式差分計算モードで得られた結果を示すグラフであり、主要地点における時間流量図を示している。 本発明に係るシミュレーションシステムにおいて実行される精密法陰形式差分計算モードで得られた結果を示すグラフであり、主要地点における水位/流量関係図を示している。 本発明に係るシミュレーションシステムにおいて実行される精密法陰形式差分計算モードで得られた結果を示すグラフであり、2時点縦断変化監視図を示している。 本発明に係るシミュレーションシステムにおいて実行される精密法陰形式差分計算モードで得られた結果を示すグラフであり、遊水地状態図を示している。 本発明に係るシミュレーションシステムにおいて実行される簡略法陰形式差分計算モードでの、不定流計算による時点j+1における状態量計算のフロー図である。 本発明に係るシミュレーションシステムにおいて実行される簡略法陰形式差分計算モードの全体フロー図である。 本発明に係るシミュレーションシステムにおいて実行される簡略法陰形式差分計算モードで得られた結果を示すグラフであり、主要地点における時間水位図を示している。 本発明に係るシミュレーションシステムにおいて実行される簡略法陰形式差分計算モードで得られた結果を示すグラフであり、主要地点における時間流量図を示している。 本発明に係るシミュレーションシステムにおいて実行される分流点の計算方法を変化させた場合における簡略法陰形式差分計算モードで得られた結果を示すグラフであり、主要地点における時間流量図を示している。 本発明に係るシミュレーションシステムにおいて実行される簡略法陰形式差分計算モードで得られた結果を示すグラフであり、主要地点における水位/流量関係図を示している。 本発明に係るシミュレーションシステムにおいて実行される簡略法陰形式差分計算モードで得られた結果を示すグラフであり、2時点縦断変化監視図を示している。 本発明に係るシミュレーションシステムにおいて実行される簡略法陰形式差分計算モードで得られた結果を示すグラフであり、遊水地状態図を示している。

Claims (5)

  1. 支川や派川或いは遊水地を含み、これらの間の接続点である1又は複数の結節点を含む複合河川を監視領域とする河川の所定地点の所定時間後の水位及び流量を、コンピュータ上で運動方程式と連続方程式を用いて陰形式差分法により演算するシミュレーションシステムにおいて、
    (a)監視領域を構成する河川の体系、監視時間、監視領域の河道各地点の河道断面特性、河道各地点の粗度係数特性、本・支川の複数の所定地点の複数の所定時間にわたる実測水位及び流量である実測時間水位及び実測時間流量、全監視領域の初期時点j=1(ただし、監視時点を時点j=1,2,3,・・・とする)の水位と流量、並びに、全監視時間の本川上流端、下流端、支川上流端の境界条件を設定するための入力欄を表示する入力欄表示手段と、
    (b)時点j+1における、本川及び支川の上流端以外の各地点の流量の第1次近似値を、時点jの値に仮定する手段と、
    (c)上流端与件水位の上昇量や前時点までの流量変化量或は与件水位と計算水位との差に基づいて、2つの上流端仮定流量による2つの上流端計算水位を求め、それらを用いて逐次上流端流量仮定の近似度を上げていく上流端流量計算手段と、
    (d)本川下流端与件水位及び派川下流端与件水位を出発条件として、結節点以外の各地点の時点j+1の水位を不定流的不等流計算により算定する不定流的不等流計算手段と、
    (e)本川及び支川の結節点に関し、結節点の種類に適合した結節点条件式を用いて結節点上流側水位を計算する結節点水位計算手段と、
    (f)本川最下流端から上流に向かって順次それぞれの地点の時点j+1における全領域の水位を計算する手段であって、本川最下流端とその上流の結節点の間、結節点とその上流の結節点との間、及び最上流の結節点と最上流端との間、及び各支川の本川への合流点から上流端の間、派川の下流端から上流端の間の時点j+1の水位を不定流的不等流計算手段により算定させ、かつ、各結節点上流側水位を、結節点水位計算手段により算定させることにより、全領域の水位を算定させる全領域水位計算手段と、
    (g)本川上流端及び支川上流端の流量を出発条件として、結節点以外の次時点j+1の流量を下流に向けて再仮定する流量再計算手段と、
    (h)本川及び支川の結節点に関し、結節点の種類に応じて、支川、派川、或は遊水地等の流量と関係付けて、結節点の種類に適合した結節点条件式により、結節点から流れ出る流量である結節点下流流量を算定する結節点下流流量計算手段と、
    (i)本川最上流端から下流に向かって順次それぞれの地点の時点j+1における全領域の流量を計算する手段であって、本川最上流端とその下流の結節点の間、結節点とその下流の結節点との間、及び最下流の結節点と最下流端との間、及び各支川の上流端から本川への合流点の間、派川の上流端から下流端の間の時点j+1の流量を流量再計算手段により算定させ、かつ、各結節点下流流量を、結節点下流流量計算手段により算定させることにより、全領域の流量を算定させる全領域流量計算手段と
    からなることを特徴とするシミュレーションシステム。
  2. 請求項1記載のシミュレーションシステムにおいて、該システムはさらに、不定流的不等流計算手段、結節点水位計算手段、全領域水位計算手段、流量再計算手段、結節点下流流量計算手段、及び全領域流量計算手段による計算を所定の回数であるMM回(MM回は、上流端流量計算手段により、上流端流量を設定して計算を行い、結果として求められる上流端水位が安定するに要する回数)行った後に、
    得られた本川及び支川の最上流端の計算水位と境界条件水位とを比較・監視する上流端水位合致度監視手段と、
    計算された2地点間の水位及び流量に基づき、その誤差が許容誤差を超えている地点iの数を検出する連続方程式合致度監視手段と、
    所定のKM回(KM回は、上流端流量の設定を繰り返す回数)の繰り返し計算が終了していない場合で、上流端水位合致度監視手段及び連続方程式合致度監視手段による監視結果がその時点における再計算を示している場合に、上流端流量計算手段、全領域水位計算手段、及び全領域流量計算手段を再度駆動して、全領域の水位及び流量を再度計算させる再計算指令手段と、
    上流端水位監視手段及び連続方程式合致度監視手段による監視結果が時点の増分を示している場合、又は所定のKM回(KM回は、上流端流量の設定を繰り返す回数)の繰り返し計算が終了した場合に、上流端流量計算手段、全領域水位計算手段、及び全領域流量計算手段を再度駆動して、次時点における全領域の水位及び流量を計算させる次時点移行指令手段と
    を備えていることを特徴とするシミュレーションシステム。
  3. 支川や派川或いは遊水地を含み、これらの間の接続点である1又は複数の結節点を含む複合河川を監視領域とする河川の所定地点の所定時間後の水位及び流量を、コンピュータ上で運動方程式と連続方程式を用いて陰形式差分法により演算するシミュレーションシステムにおいて、
    (a)監視領域を構成する河川の体系、監視時間、監視領域の河道各地点の河道断面特性、河道各地点の粗度係数特性、本・支川の複数の所定地点の複数の所定時間にわたる実測水位及び流量である実測時間水位及び実測時間流量、全監視領域の初期時点j=1(ただし、監視時点を時点j=1,2,3,・・・とする)の水位と流量、並びに、全監視時間の本川上流端、下流端、支川上流端の境界条件を設定するための入力欄を表示する入力欄表示手段と、
    (b)結節点の上流側の水位を全て仮定して、その仮定した結節点上流側水位と計算によって求められた結節点下流側水位との差が許容誤差範囲となるまで、
    本川結節点上流側水位再仮定値
    =α*仮定値(=本川結節点上流側水位)+(1−α)*計算結果(=本川結節点下流側水位)
    ただし、αは定数
    の式を用いて結節点の上流側水位の再仮定を行う手段であって、最初の本川結節点上流側水位の仮定値を前時点jの結節点上流側水位とする、結節点上流水位計算手段と、
    (c)仮定した結節点上流側水位を用い、本川上流端及び支川上流端境界条件を出発条件として、単一河川の陰形式計算により、結節点以外の次時点j+1の水位と流量を算定する単一河川簡略法陰形式計算手段と、
    (d)結節点の種類に応じて、支川、派川、或は遊水地等の流量と関係付けて、結節点の種類に適合した結節点条件式により、各結節点から流れ出る流量である結節点下流流量を算定する結節点下流流量計算手段と、
    (e)本川の最上流端から下流に向かって順次それぞれの地点の時点j+1における全領域の水位と流量を計算する手段であって、最上流端とその下流の結節点の間、結節点とその下流の結節点との間、及び最下流の結節点と最下流端との間、及び各支川の上流端から本川への合流点の間、派川の上流端から下流端の間の時点j+1の流量を単一河川簡略法陰形式計算手段により算定させ、かつ、各結節点下流流量を、結節点下流流量計算手段により算定させることにより、全領域の水位と流量を算定させる全領域水位流量計算手段と
    を備えていることを特徴とするシミュレーションシステム。
  4. 請求項3記載のシミュレーションシステムにおいて、該システムはさらに、
    得られた本川結節点下流側水位と本川結節点上流側水位とを比較・監視する結節点水位合致度監視手段と、
    所定のKM回(KM回は、結節点上流側水位の仮定を繰り返す回数)の繰り返し計算が終了しない場合で、結節点水位合致度監視手段による監視結果がその時点における再計算を示している場合に、全領域水位流量計算手段を再度駆動して、全領域の水位及び流量を計算させる再計算指令手段と、
    結節点水位合致度監視手段による監視結果が時点の増分を示している場合、又は所定のKM回(KM回は、結節点上流側水位の仮定を繰り返す回数)の繰り返し計算が終了した場合に、全領域水位流量計算手段を再度駆動して、次時点における全領域の水位及び流量を計算させる次時点移行指令手段と
    を備えていることを特徴とするシミュレーションシステム。
  5. 支川や派川或いは遊水地を含み、これらの間の接続点である1又は複数の結節点を含む複合河川を監視領域とする河川の所定地点の所定時間後の水位及び流量を、コンピュータ上で運動方程式と連続方程式を用いて陰形式差分法により演算するためのシミュレーションプログラムであって、請求項1−4いずれかに記載のシミュレーションシステムにおけるそれぞれの手段を実行することを特徴とするシミュレーションプログラム。
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