JP3821437B2 - 河川状態シミュレーション方法 - Google Patents
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Description
【発明の技術分野】
本発明は、河川状態シミュレーション方法に関し、より詳細には、コンピュータにより、河川の不定流を適切にシミュレーションして監視領域の任意の地点及び所定時間後の水位及び流量を推定するための河川状態シミュレーション方法に関する。
【0002】
集中豪雨等による河川の不定流を解析することは、河川の水位上昇による洪水等の状況を検証し、かつ該検証に基づいて河川計画を立案する上で、極めて重要である。一方、公共事業の建設コストの削減が強く求められていることから、河川の治水システムの建設においても、コスト削減が求められている。
このような状況において、集中豪雨が発生したとき、及び河川の治水システムの計画時に、河川流域の水位及び流量等の水の状態量を的確に予測することができるシミュレーションが重要となっている。
【0003】
本発明者は、河道系を電気系に模して、運動方程式中の速度の時間変化項と速度の距離変化項を省略した、いわゆる等流の運動方程式と連続方程式を合わせたKinematic Wave法により不定流をシミュレーションすることにより、洪水流が相当程度にまで再現できることを、既に見いだした。しかしながら、電気系への相似においては、水位によって変化する河道の摩擦抵抗が、電流の通電時間の長期化によって変化してしまい、これにより、長い河道の不定流をシミュレーションすることが困難であった。
【0004】
また、不定流の連続方程式と運動方程式とを用い、陰形式の差分法により不定流を解析する方法も既に提案されている。陰形式の解法においては、M個の断面の計算を行うにあたって、初期条件と次の時点の上下端の条件とを与えた上で、2(M−1)個の連立方程式を解かなければならない。この解法においては、差分項の外側の値として前時点の値を用いるという仮定の下で連立方程式を解いているため、厳密には、次時点の運動方程式の条件が満たされていない場合がある。
【0005】
本発明は、上記した従来例の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、長い河道であっても、その不定流による水位及び流量の変化を高精度にシミュレーションすることができる不定流シミュレーション方法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記した目的を達成するために、本発明に係る、不定流状態の河川の監視領域中の所定地点の所定時間後の水位及び流量を、コンピュータにより連続方程式と運動方程式を用いて陰形式の差分法により演算推定するシミュレーション方法においては、
河川の対象領域の上流端及び下流端を含む複数の地点x0,x1,x2,…,xi,…,xm(ただし、上流端地点xi=x0、下流端地点xi=xmとする)それぞれにおける初期時点t0の水位及び流量を、複数の地点それぞれにおける初期水位H(i,0)及び初期流量Q(i,0)として設定する第1のステップと、
初期時点t0から所定時間tn後までをn個に分割した時点t1,t2,…,tj,…tnの、上流端地点x0の流量Q(0,j)又は水位H(0,j)及び下流端地点xmにおける水位H(m、j)を設定する第2のステップと、
複数の地点xi(ただし、x0を除く)それぞれにおける時点ti=t1での流量Q(i,j)=Q(i,1)を仮定する第3のステップと、
連続方程式及び運動方程式として、
δA/δt+δQ/δx=0
δH/δx+δ(v2/(2g))/δx+n2v2/R4/3=0
ただし、A:通水断面積
t:時間
Q:流量
x:距離
H:水位
v:流速(v=Q/A)
g:重力の加速度
n:Manningの粗度係数
R:径深
の内の運動方程式を用いて、設定された境界条件である流量Q(0,j)、水位H(m、j)、各地点xiの仮定された流量Q(i,1)を代入して演算することにより、各地点xiにおける時点tj=t1での水位H(i,j)=H(i,1)を演算する第4のステップと、
それぞれの地点xi(ただし、x0を除く)における時間t1後の水位に関する貯留量の流量換算値dRhi及び流量に関する貯留量である流量変化量dRqiを演算する第5のステップと、
dRhi及びdRqiの差が所定の許容範囲内にあるか否かを判定する第6のステップと、
dRhi及びdRqiの差が許容範囲にないとき、流量Q(i,j)=Q(i,1)を別の値に仮定して、第4及び第5のステップを反復実行する第7のステップと、
dRhi及びdRqiの差が許容範囲にあるとき、時点t2について、第3〜第7のステップを反復実行し、その後時点t3,…,tnについて順次第3〜第7のステップを反復実行する第8のステップと
からなることを特徴とする河川状態シミュレーション方法。
【0007】
上記した本発明に係る河川状態シミュレーション方法の一実施形態においては、水位に関する貯留量の流量換算値dRhi及び流量に関する貯留量である流量変化量dRqiは、以下の式
dRhi
=1/2・(A(i-1,j)+A(i,j)−A(i-1,j-1)−A(i,j-1))dxi/dt
dRqi
=1/2・(Q(i,j-1)+Q(i,j)−Q(i-1,j-1)−Q(i―1,j))
ただし、A(i,j):地点xiにおける時点tjの通水断面積
dt:計算時間間隔=tj−tj-1
dxi:計算距離間隔=xi−xi-1
により演算される。
また、第7のステップ及び第8のステップで実行される第7のステップにおける流量Q(i,j)の仮定は、
Q(i,j)
=dRqi−dRhi+Q(i-1,j-1)+Q(i-1,j)−Q(i,j-1)
により演算される。
【0008】
本発明はさらに、不定流状態の河川の監視領域中の所定地点の所定時間後の水位及び流量を推定する河川状態シミュレーション方法を実行するための、コンピュータ読み取り可能なプログラムを記憶した記憶媒体であって、該河川状態シミュレーション方法は、上記した記載の方法であることを特徴とする記憶媒体を提供する。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を説明する前に、本発明の原理について説明する。
本発明に係る不定流のシミュレーション方法は、陰形式による方式であり、運動方程式中の時間項を他の項に比べて小さいとして省略した不等流の運動方程式と連続方程式を陰形式の差分法として解くよう構成されている。そして、各時点において不等流の運動方程式を厳密に満足させるとともに、繰り返し計算を行うことによって連続方程式を満足させている。計算ステップとしては、最初に、河道断面及び粗度係数の設定、並びに、初期条件及び境界条件の設定を行い、次時点の各地点の流量を総て仮定し、不等流計算により対応する水位を求め、必要により、提案する方法による流量の再仮定を行い、それら流量を連続方程式を満足する真値に近づけるという手法をとっている。陰形式を用いることによって、計算時間間隔を大きく取ることができる。
【0010】
不定流の基本方程式は、連続方程式及び運動方程式で構成される。連続方程式は、質量保存の法則から導かれる。流水を非圧縮性として、横流入がない場合、以下の(1)式のように表される。また、運動方程式は、エネルギ保存の法則を元に、(2)式のように表される。
ただし、A:通水断面積
t:時間
Q:流量
x:距離
i:河床勾配
h:水深
v:流速(v=Q/A)
g:重力加速度
n:Manningの粗度係数
R:径深
式(2)において、1/g・δv/δtは、他項に比して微少であるため無視し、また、−i+δh/δxを水位Hを用いてδH/δxとおくと、式(2)は、
δH/δx+δ(v2/(2g))/δx+n2v2/R4/3=0 (3)
と表され、不等流の運動方程式が得られる。
【0011】
次に、(1)式及び(3)式を基本方程式として、解くことを考える。これら方程式には、未知数としてA,Q,H,v,Rがあるが、AとRはHの関数であり、vはQとAで表されるため、基本的な未知数はHとQとの2つである。
不定流の陰形式による差分法は、全計算区間をm個としたとき、tj=jΔt時点において、全区間において水位H(i,j)ならびに流量Q(i,j)が既知である場合、tj+1=(j+1)Δt時点の上流端流量Q(0,j+1)(又は、水位H(0,j+1))及び下流端水位H(m,j+1)を知って、その時点tj+1の全水理量を計算するものである。したがって、未知数の数は、2(m−1)である。方程式は、隣合った2つの断面間で運動方程式及び連続方程式の差分式で表されるから、その数は2(m−1)となり、未知数の数と方程式の数が一致するため、基本方程式が解けるはずである。
【0012】
本発明に係るシミュレーション方法は、図1の解析処理フローに示した演算ステップを含んだコンピュータによって実行されるが、これら演算ステップは、コンピュータにインストールされたソフトウエアによって実現されている。図1を参照して、シミュレーション方法を詳細に説明する。
まず、河川のシミュレーションの対象流域を、m個に分割し、それそれの地点を地点x0,x1,x2,…,xi,…,xmとする。ただし、上流端地点xi=x0、下流端地点xi=xmとする。また、初期時点から水位及び流量を推定したい所定時間後までの期間をn個に分割し、それぞれの時点をt0,t1,t2,…,tj,…tnとする。ただし、初期時点tj=t0、所定時間後の時点tj=tnとする。
【0013】
まず、ステップS1及びS2において、河道断面及び粗度係数の設定を行う。ステップS1における河道断面の設定は、監視区間の河川の断面形状を計算システムに組み込むことによって実行される。ステップS2における粗度係数の設定は、河道の粗度係数を横断形状に合わせて変化させることができるように設定する。
次いで、ステップS3及びS4において、初期条件及び境界条件を設定する。初期条件は、全地点xiにおける初期時点t0での水位H(i,0)及び流量Q(i,0)を、対象河川の実績水位及び流量に等しく、また、境界条件は、時点tj(j=1,2,…,n)での上流端流量Q(0,j)及び下流端水位H(m,j)に等しい。ステップS3及びステップS4において、これらの条件を既知の値として設定する。
次に、ステップS5において、j=1に設定し、ステップS6において、時点t1、すなわち、初期時点t0からΔtすなわち=dt時間後における流量Q(i,1)を、地点xi(i=1,2,3,…,m)について仮定する。そして、ステップS7において、仮定された全地点の時点t1での流量を用いて、下流端地点xmの水位H(m,1)を出発条件として、xm〜x1の範囲で各地点xiの水位H(i,1)を、式(3)により求める。このステップも差分化されて計算するものであるが、周知のことであり、本明細書においては、これ以上説明しない。
【0014】
その後、ステップS8に進み、ステップS6において仮定された流量Q(i,1)とステップS7で得られた水位H(i,1)が、式(1)を満足しているか(流量バランスが取れているか)否かを判定する。満足している場合(肯定判定YES)、これが、連立方程式の解となり、時点t1における各地点xiの流量及び水位の推定値が決定される。
ステップS8において、式(1)を満足していないと判定した場合(否定判定NO)、ステップS6に戻って、流量Q(1、j)の再仮定を行い、そしてステップS7及びS8を繰り返えす。そして、これを、ステップS8において肯定判定YESが得られるまで、反復実行する。
ステップS6における地点x1での流量Q(i,1)の仮定方法、及びステップS8における判定方法については、地点xiにおける時点tjでの流量Q(i,j)の仮定方法及びその連続方程式を用いた判定方法に関連して、以降で説明する。
【0015】
ステップS8において、肯定判定YESが得られると、ステップS9を介してステップS10に移行して「j=j+1」を設定し、次いで、ステップS6に戻って、次の時点t2における地点xiでのQ(i,2)を仮定する。そして、ステップS8において時点t2において肯定判定が得られるまで、ステップS6〜S8での処理を実行する。
このようにして、時点tjを更新しつつステップS6〜S10を繰り返すが、ステップS9において、「j<n?」の否定判定NOが得られた時点で、ステップS11に移行し、得られた水位H(i,j)及び流量Q(i,j)を、コンピュータのモニタ画面に表示し、必要に応じて情報を印字して出力する。このとき、計算結果の各地点及び各時点の水位や流量をまとめて、水位時間曲線や流量時間曲線、さらには流量観測地点の水位と流量との関係を示す曲線等を出力し、実測結果との対比を行い、計算の妥当性を検討することもできる。
【0016】
ところで、計算の過程で、ステップS7における不等流計算は、定流の不等流計算と違って計算区間の中央で流量が変わってくるという変化点があるが、通常行われている不等流計算である。以上のように捉えると、ステップS6における流量Q(i,j)の再仮定をどのように行うかが重要であり、流量Q(i,j)をどのように仮定するかについて、以下に説明する。
連続方程式を、地点xi−1と地点xiにおける時点tj−1と時点tjについて差分化すると、以下のように表すことができる。
1/2・(A(i−1,j)+A(i,j)−A(i−1,j−1)−A(i,j−1))/dt
+
1/2・(Q(i,j−1)+Q(i,j)−Q(i−1,j−1)−Q(i−1,j))/dxi
=0
(4)
ただし、A(i,j):地点xiにおける時点tjの通水断面積
dt:計算時間間隔=tj−tj−1
dxi:計算距離間隔=xi−xi−1
【0017】
これらの2つの地点xi-1、xiそれぞれの2つ時点tj-1、tjにおける水位H(i,j-1)、H(i,j)、H(i-1,j-1)、H(i-1,j)と流量Q(i,j-1)、Q(i,j)、Q(i-1,j-1)、Q(i-1,j)が既知であるとすると、水位に関する関係から、それらの間における貯留量の流量換算値の差分値dRhiは、以下の(5)式によって表すことができる。
同様に、流量に関する関係から、それらの間の流量貯留量である流量変化量dRqiは、以下の(6)式によって表すことができる。
dRqi
=1/2・(Q(i,j-1)+Q(i,j)−Q(i-1,j-1)−Q(i―1,j)) (6)
【0018】
上記(4)式の関係が成立すると、
dRhi=−dRqi (7)
の関係が成立する筈であるが、水位Hや流量Qに誤差が含まれている場合、(7)式は成立しない。なお、貯留量とは、これは流下過程における計算時間間隔における計算距離区間の流量変化量を意味するものである。
したがって、ステップS8では、水位に関する貯留量の流量換算値dRhi及び流量貯留量である流量変化量dRqiを(5)及び(6)式から演算し、これらの偏差が許容誤差範囲内であるか否かを判定する。そして、許容誤差範囲内であればステップS9に進み、許容誤差範囲外であればステップS6に進む。
【0019】
次に、ステップS6における再仮定について説明する。まず、流量変化量を、先の仮定によって得られた流量変化量dRqiと水位変化に現れた貯留量の流量変換値(すなわち、水位変化に現れた流量変化量)−dRhiとの平均値に設定する。すなわち、式(6)において、左辺のdRqiを(dRqi−dRhi)/2に設定する。この設定に基づき、
dRqi−dRhi
=(Q(i,j)+Q(i,j-1))−((Q(i-1,j)+Q(i-1,j-1)) (8)
を得ることができ、(8)式を変形すると、
Q(i,j)
=dRqi−dRhi+Q(i-1,j-1)+Q(i-1,j)−Q(i,j-1) (9)
が得られる。
ステップS6では、(9)式に基づいて、ある時点tjにおけるすべての地点xiの流量Q(i,j)を順次求め、得られた流量を仮定値として設定する。そして、ステップS7において、得られた各地点xiの流量Q(i,j)を用いて、下流端地点xmの境界条件H(m,j)(ステップS4で設定)を下に、時点tjにおけるH(i,j)を求める。
【0020】
上流端条件として流量Q(0,j)が与件(条件設定)される場合は上述の通りの演算を行うが、水位H(0,j)が与件される場合がある。この場合においても上流端の流量を与えなければ、下流に向けての各地点の流量の再設定はできない。この場合は、上流端の流量を想定しておき、想定流量を与えられた流量として(9)式による各地点の流量の再設定を行い、ステップS7により求められた上流端の水位が条件設定の許容範囲に入るかをチェックすることになる。演算された上流端の水位が与件された水位の所定の誤差範囲に入っていない場合は、上流端の流量を設定し直す。
【0021】
以下に、上流端条件が水位を与件とする場合について詳述する。この場合のシミュレーション方法は、図2の解析処理フローに示した演算ステップを含んだプログラムをコンピュータ上で実行することにより行われるが、この方法は、図1に示した解析処理フローと対比すると、
・ステップS4において、上流端の流量Q(0,j)の代わりに水位H(0,j)を設定し、
・ステップS6の前に、上流端流量の仮定のためのステップS6’を追加し、
・ステップS8のステップの次に、上流端の水位の一致度をチェックするステップS8’を追加したものである。
ステップS6’における上流端流量の仮定は、1回目は前時間からの上流端水位の上昇量を指標として設定し、2回目以降は、上流端の与件水位と計算結果の水位との差を指標として設定する。
ステップS8’における上流端水位のチェックは、ステップS6〜S8の計算により上流端の計算水位が安定してくるN回(約20回程度)の繰り返しの後に行う。このチェックにおいて、上流端与件水位と計算水位が所定の誤差範囲に入っていない場合は、ステップS6’に戻って、上流端流量の再仮定を行う。
【0022】
本発明のシミュレーション方法を用いて、大きな支川のない(すなわち、支流からの流入がほとんど無い)A河川の下流域約70kmの区間で、時間ステップを約10ステップ行った時点におけるシミュレーションにおける流量仮定の変化による近似度の推移状況を説明する。なお、このシミュレーションは、下流端、上流端とも水位が実測値として与えられているという条件で実行され、隣り合う2地点の離間距離δx=約2km、時間間隔δt=1時間として行った。不定流計算結果としては、各地点xi及び各時点tjの水位H(i,j)と流量Q(i,j)とを算定した。
【0023】
図3及び図4はそれぞれ、流量推定シミュレーションにおいて流量仮定を1回行った場合及び20回行った場合に得られた水位を、実際のA河川での水位(実測H)と対比的に示している。図3及び図4には、計算過程を理解するため、初期値としての水位H(i,0)及び流量Q(i,0)それぞれの縦断図と、次の時点t1の計算過程の水位H(i,1)と流量Q(i,1)、並びに、水位貯留量の流量換算値dRh及び流量変化量−dRqを併せて表示している。なお、上記したように、流量Qの仮定の繰り返しによる近似度の向上の程度については、(5)式及び(6)式に示した水位変化に関する貯留量dRhと流量変化に関する貯留量である流量変化量−dRqとの一致/不一致を見れば、調べることができるが、図2及び図3においては、dRh及び−dRqの値は、対比を容易にするために、10倍して表している。
【0024】
図3のグラフによれば、最初すなわち1回目の仮定時における−dRq及びdRhは大きく相違しているが、図4のグラフによれば、20回目の繰り返しでは、一部を除いて殆ど一致してきており、繰り返し計算の実施によって、近似度が向上することが分かる。
図3及び図4に示した流量Q(i,1)の差異を見ても、近似過程における縦断的な流量の仮定値の変化を知ることができる。
なお、本発明のシミュレーション方法の実機テストを通して、(2)式における速度の時間変化項1/g・δv/δtを算定すると、約5×10-6以下であった。したがって、速度の時間変化項を省略するという前提が妥当であることも、実証された。
【0025】
以上説明したように、本発明に係るシミュレーション方法は、
a)式(2)の運動方程式中の速度時間変化項を削除し、
b)各期間毎に各区間における貯留量がバランスしているか否かを、式(5)及び式(6)に基づいて演算した貯留量の流量換算値の偏差を見て判定し、
c)バランスしていない場合には、(9)式にもとづいて、各地点の仮定した流量を変化させ、これにより、貯留量のバランスが取れるようにしている。
したがって、本発明によれば、簡単な演算でありながら、河川の水位及び流量を高精度でシミュレーションすることができる。
【0026】
このとき、計算結果の各地点及び各時点の水位や流量をまとめて、水位時間曲線や流量時間曲線、さらには流量観測地点の水位と流量との関係を示す曲線等を出力し、実測結果との対比を行い、計算の妥当性を検討することもできる。
例えば、計算結果を下に、監視区間における水位観測箇所や流量観測箇所において計算結果の各時間水位や各時間流量を実測の時間水位や時間流量と比較し、合致の度合いにより粗度係数の妥当性を検討することができる。結果が合致しない場合は、粗度係数を修正して再計算する。
本発明に係るシミュレーション方法においては、設定された粗度係数に対応して、与えられた初期条件と境界条件とに基づき、各時点及び各地点の水位と流量とを求めるものであるが、それらの結果が検証せらるべき実測値と異なる場合には、上記したように、粗度係数を変更する必要が生じる。このような意味から、本発明に係るシミュレーション方法は、河道の粗度係数を検証する方式であるとも言える。
また、計算結果に基づいて、水位と流量の関係を作成し、実測値と対比することにより、計算の妥当性を検証するとともに、実測だけでは明確に把握しがたい水位と流量のとループの関係等を解明することが可能となる。これにより、洪水時における実流量の推定精度を上げることができる。
したがって、検証された粗度係数を用いることによって、河川の治水計画に役立たせることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る河川状態シミュレーション方法におけるコンピュータによる第1の実施形態の処理を説明するためのフローチャートである。
【図2】本発明に係る河川状態シミュレーション方法におけるコンピュータによる第2の実施形態の処理を説明するためのフローチャートである。
【図3】本発明の河川状態シミュレーション方法を実際に用いて、ある河川の水位及び流量を推定した場合のテスト結果を示すグラフであり、流量仮定を1回だけ行った場合の結果を示すグラフである。
【図4】本発明の河川状態シミュレーション方法を実際に用いて、ある河川の水位及び流量を推定した場合のテスト結果を示すグラフであり、流量仮定を20回行った場合の結果を示すグラフである。
Claims (2)
- 不定流状態の河川の監視領域中の所定地点の所定時間後の水位及び流量を、コンピュータにより連続方程式と運動方程式を用いて陰形式の差分法により演算推定するシミュレーション方法において、
河川の対象領域の上流端及び下流端を含む複数の地点x0,x1,x2,…,xi,…,xm(ただし、上流端地点xi=x0、下流端地点xi=xmとする)それぞれにおける初期時点t0の水位及び流量を、複数の地点それぞれにおける初期水位H(i,0)及び初期流量Q(i,0)として設定する第1のステップと、
初期時点t0から所定時間tn後までをn個に分割した時点t1,t2,…,tj,…tnの、上流端地点x0の流量Q(0,j)又は水位H(0,j)及び下流端地点xmにおける水位H(m、j)を設定する第2のステップと、
複数の地点xi(ただし、x0を除く)それぞれにおける時点ti=t1での流量Q(i,j)=Q(i,1)を仮定する第3のステップと、
連続方程式及び運動方程式として、
δA/δt+δQ/δx=0
δH/δx+δ(v2/(2g))/δx+n2v2/R4/3=0
ただし、A:通水断面積
t:時間
Q:流量
x:距離
H:水位
v:流速(v=Q/A)
g:重力の加速度
n:Manningの粗度係数
R:径深
の内の運動方程式を用いて、設定された境界条件である流量Q(0,j)、水位H(m、j)、各地点xiの仮定された流量Q(i,1)を代入して演算することにより、各地点xiにおける時点tj=t1での水位H(i,j)=H(i,1)を演算する第4のステップと、
それぞれの地点xi(ただし、x0を除く)における時間t1後の水位に関する貯留量の流量換算値dRhi及び流量に関する貯留量である流量変化量dRqiを、
dRhi
=1/2・(A(i−1,j)+A(i,j)−A(i−1,j−1)−A(i,j−1))dxi/dt
dRqi
=1/2・(Q(i,j−1)+Q(i,j)−Q(i−1,j−1)−Q(i―1,j))
ただし、A(i,j):地点xiにおける時点tjの通水断面積
dt:計算時間間隔=tj−tj−1
dxi:計算距離間隔=xi−xi−1
により演算する第5のステップと、
dRhi及びdRqiの差が所定の許容範囲内にあるか否かを判定する第6のステップと、
dRhi及びdRqiの差が許容範囲にないとき、流量Q(i,j)=Q(i,1)を、
Q(i,j)
=dRqi−dRhi+Q(i−1,j−1)+Q(i−1,j)−Q(i,j−1)
により演算して、第4及び第5のステップを反復実行する第7のステップと、
dRhi及びdRqiの差が許容範囲にあるとき、時点t2について、第3〜第7のステップを反復実行し、その後時点t3,…,tnについて順次第3〜第7のステップを反復実行する第8のステップと
からなることを特徴とする河川状態シミュレーション方法。 - 不定流状態の河川の監視領域中の所定地点の所定時間後の水位及び流量を推定する河川状態シミュレーション方法を実行するための、コンピュータ読み取り可能なプログラムを記憶した記憶媒体であって、河川状態シミュレーション方法は、請求項1記載の方法であることを特徴とする記憶媒体。
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