<用語説明>
本明細書で言う各色の「階調」は、各色の明るさの度合いを示すパラメータとして用いられるものであり、例えば、所定ビット(例えば8ビット)の階調表現では、各色の階調が、最小値(例えば0階調)となる場合が最も暗く再現されることを意味し、最大値(例えば255階調)となる場合が最も明るく再現されることを意味している。また、第1の階調とは第1の色の階調を、第2の階調とは第2の色の階調を、第3の階調とは第3の色の階調を、第4の階調とは第4の色の階調をそれぞれ意味する。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
<基礎技術>
実施形態について説明する前に、後述する本発明の実施形態に係る画像表示装置の基礎となる画像表示装置(基礎技術に係る画像表示装置)について、図1から図8に基づいて説明する。ここでは、画像表示装置は、いわゆる電流値によって発光輝度を調節する有機ELディスプレイを備えて構成される。この画像表示装置では、多数の画素が配置され、各画素に有機EL素子が配置されている。
<画素回路の構成>
図1は、基礎技術に係る画像表示装置を構成する1画素分の画素回路(駆動回路)7の構成例を示す図である。
画素回路7は、有機EL素子(OLED)1、駆動トランジスタ2、閾値(Vth)補償用トランジスタ3、およびコンデンサ4を備える。
有機EL素子1は、有機物などで構成され、発光層を流れる電流の量(電流量)によって発光輝度が変化する発光素子である。この有機EL素子1は、アノード電極1aとカソード電極1bとを有しており、アノード電極1aは、給電線のうちで有機EL素子1の発光時に高電位側となる電源線としてのVDD線Lvdに対して電気的に接続される。一方、カソード電極1bは、給電線のうちで有機EL素子1の発光時に低電位側となる電源線としてのVSS線Lvsに対して駆動トランジスタ2を介して電気的に接続される。
駆動トランジスタ2は、有機EL素子1に対して電気的に直列に接続され、有機EL素子1における電流量を調整することで有機EL素子1の発光輝度を制御するトランジスタである。ここでは、駆動トランジスタ2は、キャリアが電子であるタイプ(n型)のMIS(Metal Insulator Semiconductor)構造を採用した電界効果トランジスタ(FET:Field Effect Transistor)の一種である薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)、すなわちn−MISFETTFTによって構成される。
この駆動トランジスタ2は、第1から第3電極2ds,2sd,2gを有している。第1電極2dsは、有機EL素子1のカソード電極1bに対して電気的に接続され、有機EL素子1が発光する際、すなわち有機EL素子1に対して順方向の電流が流れる際にドレイン電極(以下「ドレイン」と略称する)として機能する。一方、有機EL素子1に対して逆方向に電流が流れる際には、逆にソース電極(以下「ソース」と略称する)として機能する。また、第2電極2sdは、VSS線Lvsに対して電気的に接続され、有機EL素子1に対して順方向の電流が流れる際にソース電極(ソース)として機能する。一方、有機EL素子1に対して逆方向に電流が流れる際には、逆にドレイン電極(ドレイン)として機能する。更に、第3電極2gは、いわゆるゲート電極(以下「ゲート」と略称する)であり、コンデンサ4の一方の電極(第7電極4a)に対して電気的に接続される。
また、駆動トランジスタ2では、第3電極2gに印加される電位、より詳細には第1電極2dsまたは第2電極2sdと第3電極2gとの間(すなわちゲートとソースとの間)に印加される電圧値が調整されることで、第1電極2dsと第2電極2sdとの間(以下「第1−2電極間」とも称する)において流れる電流の量(電流量)が調整される。そして、この第3電極(ゲート)2gに印加される電位により、駆動トランジスタ2は、第1−2電極間(すなわちドレインとソースとの間)において電流が流れ得る状態(導通状態)と、電流が流れ得ない状態(非導通状態)とに選択的に設定される。
Vth補償用トランジスタ3は、駆動トランジスタ2が通電状態となる場合の、駆動トランジスタ2の第2電極2sdに対する第3電極2gの電位の下限値(所定の閾値電圧Vth)を検出するとともに、駆動トランジスタ2のゲート電圧を、閾値電圧Vth(以下「閾値Vth」と略称する)に調整するトランジスタである。なお、ここでは、Vth補償用トランジスタ3も、駆動トランジスタ2と同様にn−MISFETTFTによって構成される。
このVth補償用トランジスタ3は、第4から第6電極3ds,3sd,3gを有している。第4電極3dsは、駆動トランジスタ2の第1電極2dsと有機EL素子1のカソード電極1bとを電気的に接続する配線に対して導電可能に接続される。すなわち、第4電極3dsは、駆動トランジスタ2の第1電極2dsに対して電気的に接続される。また、第5電極3sdは、接続点T1において駆動トランジスタ2の第3電極(ゲート)2gとコンデンサ4とを電気的に接続する配線に対して導電可能に接続される。すなわち、駆動トランジスタ2のゲート2gに対して電気的に接続される。更に、第6電極3gは、いわゆるゲート電極であり、走査信号線Lssに対して電気的に接続される。
また、Vth補償用トランジスタ3では、第6電極3gに印加される電位、より具体的には第4電極3dsまたは第5電極3sdと第6電極3gとの間(すなわちゲートとソースとの間)に印加される電圧値が調整されることで、第4電極3dsと第5電極3sdとの間(以下「第4−5電極間」とも称する)において流れる電流の量(電流量)が調整される。そして、この第6電極(ゲート)3gに印加される電位により、Vth補償用トランジスタ3は、第4−5電極間(ドレインとソースとの間)において電流が流れ得る状態(導通状態)と、電流が流れ得ない状態(非導通状態)とに選択的に設定される。
ここで、有機EL素子1は、電流値によって発光輝度が制御されるため、発光時における駆動トランジスタ2のゲート電圧のゆらぎに対して、発光輝度が敏感に変動する。特に、駆動トランジスタ2がアモルファスシリコンを用いて構成された場合には、駆動トランジスタ2ごとに閾値Vthが異なる傾向にある。よって、画素毎に異なる閾値Vthを補償する機能(Vth補償機能)を持たせないと、所望の発光輝度と実際の発光輝度との間に若干の乖離が生じ、結果として画素間で発光輝度のムラが生じてしまう。
そこで、Vth補償用トランジスタ3は、発光前において各画素ごとに駆動トランジスタ2のゲート電圧を閾値Vthに合わせることで、駆動トランジスタ2における閾値Vthのばらつきを補償するVth補償機能を実現するために設けられている。
コンデンサ4は、駆動トランジスタ2の第3電極2gに対して電気的に接続される第7電極4aと、画像信号線Lisに対して電気的に接続される第8電極4bとを備えて構成されている。なお、コンデンサ4の保持容量を所定値Csとする。
ところで、有機EL素子1は、発光時と逆の電圧が印加されるとコンデンサとして機能し、この容量(EL素子容量)を所定値Coとする。また、駆動トランジスタ2は、第2電極2sdと第3電極2gとの間(以下「第2−3電極間」とも称する)の寄生容量CgsTdと、第1電極2dsと第3電極2gとの間(以下「第1−3電極間」とも称する)の寄生容量CgdTdとを有する。更に、Vth補償用トランジスタ3は、第5電極3sdと第6電極3gとの間(以下「第5−6電極間」とも称する)の寄生容量CgsTthと、第4電極3dsと第6電極3gとの間(以下「第4−6電極間」とも称する)の寄生容量CgdTthとを有する。なお、寄生容量CgsTd,CgdTd,CgsTth,CgdTthは、それぞれ駆動トランジスタ2、およびVth補償用トランジスタ3の構成によって決定される所定値の容量である。
図2は、図1で示した画素回路7の回路構成(図中太線で記載)に対して、寄生容量CgsTth,CgdTth,CgsTd,CgdTdとEL素子容量Coとに係る回路構成(図中細線で記載)を加えた模式図である。
図2で示すように、画素回路7では、有機EL素子1の両電極間にはEL素子容量Coを有するコンデンサ(素子コンデンサ)1cが存在し、駆動トランジスタ2の第2−3電極間には寄生容量CgsTdを有するコンデンサ2gsが存在する一方で、駆動トランジスタ2の第1−3電極間には寄生容量CgdTdを有するコンデンサ2gdが存在し、更に、Vth補償用トランジスタ3の第5−6電極間には寄生容量CgsTthを有するコンデンサ3gsが存在する一方で、Vth補償用トランジスタ3の第4−6電極間には寄生容量CgdTthを有するコンデンサ3gdが存在している状態と等価な状態が発生する。
なお、ここでは、1つの画素回路7に着目して説明したが、有機ELディスプレイ全体では、画素回路7が多数存在する。このため、走査信号線Lssも多数存在する。そこで、以下では、多数の走査信号線Lssを、適宜「第N走査信号線(Nは自然数)Lss」と称する。
<有機EL素子の発光に関する駆動方法>
図3は、有機EL素子1を発光させる際の信号波形(駆動波形)を示すタイミングチャートである。図3では、横軸が時刻を示し、上から順に、(a)VDD線Lvdに印加される電位(電位Vdd)、(b)VSS線Lvsに印加される電位(電位Vss)、(c)第1走査信号線Lssに印加される信号の電位(電位Vls1)、(d)第2走査信号線Lssに印加される信号の電位(電位Vls2)、(e)画像信号線Lisに印加される信号の電位(電位Vlis)、の波形が示されている。
また、図3では、有機EL素子1を1回発光させるための駆動波形が示されており、1回の発光に係る期間は、時間順次に、Cs初期化期間P1(時刻t11〜t12)、準備期間P2(時刻t12〜t13)、Vth補償期間P3(時刻t13〜t14)、書込期間P4(時刻t14〜t15)、素子初期化期間P5(時刻t15〜t16)、および発光期間P6(時刻t16〜)を備えて構成される。なお、書込期間P4における電位Vlisは、各有機EL素子1の発光輝度によって決まる任意の値であるため、図3では、当該電位が存在し得る範囲に斜線ハッチングが便宜的に付されている。
図4から図8は、基礎技術に係る画像表示装置を駆動させる際に、画素回路7に着目して、各期間において発生する画素回路7の電流の流れを例示する図である。図4から図8では、画素回路7のうち、電流の流れに寄与する回路は太線で示され、電流の流れにほとんど寄与しない回路は細線で示されている。
以下、図3および図4から図8を適宜参照しつつ、基礎技術に係る画像表示装置の駆動方法について説明する。
○Cs初期化期間P1:
図4では、Cs初期化期間P1(以下適宜「期間P1」と略する)での画素回路7における電流の流れが例示されている。
期間P1では、VDD線LvdおよびVSS線Lvsにそれぞれ所定の正の高電位VDD(例えば15V)が印加され、全走査信号線Lssに所定の正の高電位VgH(例えば15V)が印加され、画像信号線Lisに所定の基準電位(ここでは0V)が印加される。
このとき、Vth補償用トランジスタ3については、走査信号線Lssにおける高電位VgHの印加により、第6電極(ゲート)3gに高電位VgHに応じた正電位が印加され、導通状態となる。一方、駆動トランジスタ2については、VDD線LvdとVSS線Lvsとが略同電位であるため、駆動トランジスタ2が実質的にオフとなり、非導通状態となる。
したがって、期間P1では、図4において白抜きの矢印で示すように、VDD線LvdからVth補償用トランジスタ3の第4および第5電極3ds,3sdを介してコンデンサ4に向けて電流が流れ、コンデンサ4に所定量の電荷(例えば、15Vに応じた電荷量)が蓄積される。
なお、期間P1における時間経過とともにコンデンサ4に蓄積される電荷量が高まると、駆動トランジスタ2において、第3電極(ゲート)2gに所定値を超える正電位が印加され、導通状態となることもあり得る。しかし、VDD線LvdおよびVSS線Lvsがともに同電位VDDに設定されているため、駆動トランジスタ2の第1−2電極間で電流は流れない。
○準備期間P2:
図5では、準備期間P2(以下適宜「期間P2」と略する)での画素回路7における電流の流れが例示されている。
期間P2では、VDD線Lvdに負の所定電位−Vp(例えば−7V)が印加され、VSS線Lvsに所定の基準電位(ここでは0V)が印加され、全走査信号線Lssに所定の低電位VgL(例えば−10V)が印加され、画像信号線Lisに所定の高電位VdH(例えば10V)が印加される。
このとき、Vth補償用トランジスタ3については、走査信号線Lssにおける低電位VgLの印加により、第6電極(ゲート)3gにはほとんど正の電位が印加されないため、非導通状態となる。一方、駆動トランジスタ2については、画像信号線Lisにおける高電位VdHの印加により、第3電極(ゲート)2gに高電位VdHに応じた正電位(例えば15+10=25V)が印加され、導通状態となる。
そして、VDD線LvdよりもVSS線Lvsの方がVpだけ電位が高いため、図5において白抜きの矢印で示すように、VSS線Lvsから駆動トランジスタ2の第2および第1電極2sd,2dsを介して、有機EL素子1に向けて電流が流れる。その結果、有機EL素子1すなわち素子コンデンサ1cにVDD線LvdとVSS線Lvsとの間の電位差に応じた所定量の電荷(例えば7Vに応じた電荷)が蓄積される。
○Vth補償期間P3:
図6では、Vth補償期間P3(以下適宜「期間P3」と略する)での画素回路7における電流の流れが例示されている。
期間P3では、VDD線LvdおよびVSS線Lvsにそれぞれ所定の基準電位(ここでは0V)が印加され、全走査信号線Lssに高電位VgHが印加され、画像信号線Lisに高電位VdH(例えば10V)が印加される。
このとき、Vth補償用トランジスタ3については、走査信号線Lssにおける高電位VgHの印加により、第6電極(ゲート)3gに高電位VgHに応じた正電位が印加され、導通状態となる。また、駆動トランジスタ2については、期間P3の初期では、コンデンサ4に蓄積された電荷と画像信号線Lisに印加された電位VdHにより、導通状態となる。
したがって、期間P3の初期では、図6において白抜きの矢印で示すように、コンデンサ4に蓄積された電荷に伴う電流が、コンデンサ4からVth補償用トランジスタ3の第5および第4電極3sd,3ds、更には駆動トランジスタ2の第1および第2電極2ds,2sdを介してVSS線Lvsに向けて流れる。また、素子コンデンサ1cに蓄積された電荷に伴う電流が、駆動トランジスタ2の第1および第2電極2ds,2sdを介してVSS線Lvsに向けて流れる。
ところが、コンデンサ4に蓄積された電荷に伴う電流が、コンデンサ4からVSS線Lvsに向けて流れるにつれて、コンデンサ4に蓄積された電荷が減少する。そして、駆動トランジスタ2の第2電極2sdに対する第3電極2gの電位Vgs(以下「第3−2電極間」とも称する)が実質的に閾値Vthまで減少すると、駆動トランジスタ2は、非導通状態となる。このとき、コンデンサ4には、閾値Vthに応じた電荷が蓄積された状態となる。このように、期間P3では、閾値Vthに応じた電荷がコンデンサ4に蓄積されて、画素ごとに異なる閾値Vthのばらつきが補償される。
○書込期間P4:
図7では、書込期間P4(以下適宜「期間P4」と略する)での画素回路7における電流の流れが例示されている。
期間P4では、VDD線LvdおよびVSS線Lvsにそれぞれ基準電位0Vが印加されるとともに、画素データ信号に応じた電荷の蓄積を行う処理(データ書込処理)の実施対象画素において、走査信号線Lssに高電位VgHが印加され、画像信号線Lisに電位(VdH−Vdata)が印加される。なお、電位Vdataは、画素データ信号の電位であり、画像を構成する画素の輝度の階調に対応する値に応じた電位である。
このとき、Vth補償用トランジスタ3については、走査信号線Lssにおける高電位VgHの印加により、ゲートに高電位VgHに応じた正電位が印加され、導通状態となる。一方、駆動トランジスタ2については、画像信号線Lisに対して、期間P3における電位VdH以下の電位(VdH−Vdata)が印加され、ゲート電圧が閾値Vth以下となるため、非導通状態となる。
したがって、期間P4では、図7において白抜きの矢印で示すように、有機EL素子1(すなわち素子コンデンサ1c)からVth補償用トランジスタ3の第4および第5電極3ds,3sdを介してコンデンサ4に向けて電流が流れる。その結果、コンデンサ4に既に蓄積された閾値Vthに応じた電荷の上に電位Vdataに応じた電荷が加算されて蓄積される。すなわち、期間P4においては、コンデンサ4に有機EL素子1の発光輝度に応じた電荷が蓄積される。換言すれば、期間P4では、画素回路7において画素データ信号に応じた電荷がコンデンサ4に蓄積される。
なお、コンデンサ4の第7電極4aの電位(駆動トランジスタ2のゲート電位)の変化量は、画像信号線Lisの電位の変化量と、コンデンサ4の保持容量Csと素子コンデンサ1cのEL素子容量Coとの比(容量比)との積である。すなわち、本実施形態においては、画像信号線Lisの電位がVdHからVdataに変化する場合、駆動トランジスタ2のゲート電位が、(Vdata−VdH)・Cs/(Cs+Co)だけ変化する。例えば、VdH=10V,Vdata=5V、Cs:Co=1:2である場合には、画像信号線Lisの電位が−5V変化し、駆動トランジスタ2のゲート電位は、有機EL素子1からコンデンサ4に対する電荷の移動により、(5−10)・1/(1+2)=−5/3V変化する。このようにコンデンサ4に蓄積される電荷の移動により、画像信号線Lisの電位の変化が駆動トランジスタ2のゲート電位に反映される。
○素子初期化期間P5:
素子初期化期間P5(以下適宜「期間P5」と略する)については、VDD線LvdおよびVSS線Lvsにそれぞれ所定の負電位−Vpが印加され、全走査信号線Lssに低電位VgLが印加され、画像信号線Lisに高電位VdHが印加される。このとき、Vth補償用トランジスタ3が非導通状態となり、駆動トランジスタ2が導通状態となる。そして、VDD線LvdとVSS線Lvsとの間に電位差がなく、VSS線Lvsが負電位−Vpに設定されているため、有機EL素子1(すなわち素子コンデンサ1c)に蓄積された電荷が、VSS線Lvsに抜けて、有機EL素子1に蓄積された電荷が一掃される。
○発光期間P6:
図8では、発光期間P6(以下適宜「期間P6」と略する)での画素回路7における電流の流れが例示されている。
期間P6では、VDD線Lvdに正の高電位VDDが印加される一方で、VSS線Lvsに基準電位0Vが印加され、走査信号線Lssに低電位VgLが印加され、画像信号線Lisに高電位VdHが印加される。
このとき、Vth補償用トランジスタ3については、走査信号線Lssにおける低電位VgLの印加により、非導通状態となる。一方、駆動トランジスタ2については、画像信号線Lisに対して高電位VdHが印加されるため、期間P4においてコンデンサ4に蓄積された電荷量(電位Vdataに応じた電荷量)に応じた電位分だけVgsが、閾値Vthよりも高くなり、導通状態となる。
例えば、Vdata=5V、Cs:Co=1:2である場合には、期間P4においてコンデンサ4に蓄積される電荷が、閾値Vthよりも5/3Vだけ低い電位([Vth−5/3]V)に対応する。そして、期間P6では、画像信号線Lisに対して期間P4よりもVdata(=5V)分だけ高い電位が印加され、第3電極(ゲート)2gに対して、閾値Vthよりも10/3Vだけ高い電位([Vth+10/3]V=[Vth−(5/3)+5]V)が印加される。
そして、VDD線LvdがVSS線Lvsよりも電位VDD分だけ高電位であり、駆動トランジスタ2が電位Vdataに応じて第1−第2電極間で電流が流れる導通状態となる。このため、図8において白抜きの矢印で示すように、有機EL素子1に対して電位Vdataに応じた電流が流れる。その結果、有機EL素子1が電位Vdataに応じた輝度で発光する。つまり、期間P6では、各画素から画素データ信号に応じた輝度の光が出射される。
ここで、有機EL素子1が発光する際の駆動トランジスタ2に関して、Vgs,Vdata,Vthの間には、下式(1)が成立する。
上式(1)のa,dは定数である。
また、駆動トランジスタ2の第1−2電極間(ドレイン−ソース間)で流れる電流をIdsとすると、下式(2)が成立する。
有機EL素子1の発光輝度は、有機EL素子1を流れる電流の密度(電流密度)に略比例するため、図3で示した駆動波形を用いた制御により、各画素において所望の発光輝度が得られる。
<W画素を利用した発光効率の向上>
従来では、白(W)と同じ色度の光を表現するときの赤(R)緑(G)青(B)の光を発する各画素(R画素、G画素、B画素)の発光効率(単位[cd/A])の合算値よりも、W色の光を発する画素(W画素)の発光効率(単位[cd/A])のほうが常に良くなる技術が知られている。よって、各絵素をRGBの3色の画素にW画素を加えて構成することで、W画素の発光を最大限に利用する技術が提案されている。
下表1に、R,G,B,W画素の最大輝度Y、色度(CIE表色系の色度)の色度座標、および最大輝度における発光効率を例示する。
ここで、画像表示装置の白の色度が色度座標で(x,y)= (0.3127,0.329) 、ガンマ特性がγ=2.2、RGBW画素からなる絵素の数が320×240であると、例えば、8ビットの階調でW画素を使用しないで白を表現しようとすると、Rの階調が255、Gの階調が255、Bの階調が255となり、有機ELディスプレイ全体で232mAの電流が流れる。
これに対して、同じ白を、W画素を最大限使用して表現しようとすると、Rの階調が211、Gの階調が0、Bの階調が106、Wの階調が255となり、有機ELディスプレイ全体で173mAの電流が流れる。したがって、W画素を全く使用しない場合と比較して、W画素を最大限に使用する場合には、全有機EL素子に同じ電源電圧が付与されるのであれば、消費電力が約16.7%(=[232−173]/232×100%)削減される。
図9は、R,G,B画素およびR,G,B,W画素を用いて、最小の0階調(黒)から最大の255階調(白)まで、無彩色を表現したときの各色の階調と、各画素の有機EL素子を流れる電流との関係を例示する図である。図9では、横軸が各色の階調、縦軸が電流を示している。
具体的には、R,G,B画素を用いた場合について、R画素に係る階調と電流との関係が曲線Lr(細い破線)、G画素に係る階調と電流との関係が曲線Lg(細い二点鎖線)、B画素に係る階調と電流との関係が曲線Lb(細い一点鎖線)で示されている。また、R,G,B,W画素を用いた場合について、W画素に係る階調と電流との関係が曲線Lww(太線)で示され、R画素に係る階調と電流との関係が曲線Lrw(太い破線)で示され、B画素に係る階調と電流との関係が曲線Lbw(太い一点鎖線)で示されている。なお、図9では、W画素を使用する場合はG画素を使わない例が示されている。
図10は、図9で示す条件下での無彩色を表現したときの各色の階調(すなわち無彩色階調)と、有機ELディスプレイ全体における消費電力との関係を例示する図である。なお、ここでは、全有機EL素子にそれぞれ印加される電源電圧が15Vであるものとする。そして、図9の曲線Lr,Lg,Lbの条件、すなわちR,G,B画素を用いた場合に関し、階調と消費電力との関係が曲線Wrgb(破線)で示され、図9の曲線Lww,Lrw,Lbwの条件、すなわちR,G,B,W画素を用いた場合について、階調と消費電力との関係が曲線Wrgbw(実線)で示されている。また、図10では、横軸が各色の階調すなわち無彩色階調、縦軸が消費電力を示している。図10の白抜き矢印で示すように、W画素を最大限使用することで、大きく消費電力を低減することができる。
<問題点>
図10で示したように、W画素を最大限使用すると、大きく消費電力を低減することができるが、電流がW画素に集中して流れるため、他のR,G,B画素と比較してW画素の劣化が速くなり、色ずれ、発光輝度の劣化、焼き付きなどといった問題が生じてしまう。
このような問題に対し、W画素のサイズをRGBの各画素のサイズよりも大きくすることで、電流密度を下げる技術が提案されている(上記特許文献5など)が、画素のサイズが均一でないため、設計および製造上好ましくない。
また、高階調においてW画素を使用する比率を下げることで焼き付きを回避する技術が提案されている(上記特許文献8など)が、消費電力が大きくなる高階調においてW画素を使わなければ、W画素による省電力の効果が十分に得られない。
更に、表示位置によってW画素を使う比率を変更する技術が提案されている(上記特許文献9など)が、一般的なディスプレイでは全画面において画像表示を行うことが多く、不使用領域が定位置に現れる状態は殆どないため、本技術を適用することは容易でない。
そこで、本願発明者らは、画像表示装置において長寿命を維持しつつ消費電力を容易に低減することができる画像表示装置およびその駆動方法を創出した。これについて以下に説明する。
<実施形態>
<画像表示装置の概略構成>
図11は、本発明の実施形態に係る画像表示装置の概略構成を例示する図である。なお、本実施形態では、第1の色としてR(赤)、第2の色としてG(緑)、第3の色としてB(青)、第4の色として白(W)を用いた場合の例について説明する。
携帯電話機10は、本体部100と表示部200とを備えた携帯可能な電子機器であり、動画や静止画などといった各種画像を表示部200で表示する画像表示装置として機能する。このため、以下では、携帯電話機を適宜「画像表示装置」とも称する。
本体部100は、通信機能やバッテリーなどの給電機能や操作部などを備える。
表示部200は、例えば、略長方形の輪郭を有する有機ELディスプレイ(organic electroluminescence display)と、本体部100より供給される各種信号が入力されるドライバ手段とを備えて構成される。有機ELディスプレイは、有機材料に電流を流すことで材料自らが発光する自発光型の発光素子を有する自発光型画像表示装置である。
また、有機ELディスプレイは、発光輝度に対応するデータ信号(画素データ信号)を各画素に供給するための画像信号線と、当該画像信号線に対して略直交するように設けられ、各画素に走査信号を供給するための走査信号線とを有する。なお、走査信号は、各画素に画像信号線を介して画素信号を供給するタイミングを制御する信号である。
一方、ドライバ手段は、画像信号線に対して電気的に接続され、画素信号を画像信号線に供給するタイミングを制御するXドライバ(画像信号線駆動回路)と、走査信号線に対して電気的に接続され、走査信号を走査信号線に供給するタイミングを制御するYドライバ(走査信号線駆動回路)とを備える。例えば、携帯電話機1では、Xドライバは有機ELディスプレイの短辺に沿って配置され、Yドライバは有機ELディスプレイの長辺に沿って配置される。
図25は、本体部100と表示部200の内部構造を概略的に示す平面図である。図25に示すように、本体部100は制御手段としての制御用IC50を備えている。かかる制御用IC50は、後述する複数のRGB−RGBW変換テーブル(TB1〜TB3)を記憶・保持するROM及び所定のルールに従ってRGB−RGBW変換テーブル(TB1〜TB3)を選択する機能を有するCPUを含むものである。
表示部200は、ガラス等を組成とする素子基板51と、素子基板51上に形成された有機ELディスプレイAAと、有機ELディスプレイAAを構成する画素全体を取り囲むようにして環状に形成された封止材52と、封止材52を介して有機ELディスプレイAAを構成する画素全体を覆うように素子基板51上に配置されるガラス等からなる平板状の封止基板53と、を備えた構成を有している。
また表示部200の素子基板51には、Xドライバ54やYドライバ(図示せず)等、所定の素子が形成されている。
表示部200と本体部100とはFPC(Flexible Print Circuit board)55により接続されており、本体部100側の制御用IC50と表示部200側のXドライバやYドライバとの間の所要の通信は、このFPC55を通じて行われる。
<画像表示装置の機能構成>
図12は、画像表示装置10の機能構成を例示するブロック図である。
本体部100は、送受信部110、バッテリー120、および操作部130を備えて構成される。
送受信部110は、無線回線を介して音声データや画像データ(RGBの3色に係る画像データD0)などといった各種データを外部装置との間で送受信するものである。
バッテリー120は、本体部100に対して着脱自在に構成され、画像表示装置10の各部に対して電力を供給するものである。バッテリー120としては、例えば、リチウムイオン電池などといった充電式の蓄電池などが挙げられる。
操作部130は、数字や文字や選択指示などを示す各種情報を入力する操作ボタンを備えて構成されるものである。
表示部200は、制御部210、画像信号線駆動回路220、走査信号線駆動回路230、および電源回路240を備えて構成される。
制御部210は、例えば、各種回路やCPUやROMやRAMなどを備え、ROMなどの記憶媒体に格納されたプログラムをCPUが実行することで、表示部200の動作に係る各種機能や制御を実現する。例えば、制御部210は、送受信部110から送られてくる画像データD0を受け付けて、当該画像データD0に基づく画像を有機ELディスプレイにおいて表示するように制御する。
より詳細には、制御部210は、画像データD0に含まれるRGBの3色に関する階調(以下「RGB階調」と総称する)の情報から、所定の算出ルールに基づいて、RGBWの4色に関する階調(以下「RGBW階調」と総称する)を算出する。そして、当該RGBW階調の情報に基づいて、画像が有機ELディスプレイにおいて表示される。RGB階調からRGBW階調の算出については更に後述する。
画像信号線駆動回路220は、有機ELディスプレイに配設された画像信号線に対して画素データ信号を供給するタイミングを制御するものである。また、走査信号線駆動回路230は、有機ELディスプレイに配設された走査信号線に対して走査信号を供給するタイミングを制御するものである。画像信号線駆動回路220、および走査信号線駆動回路230の動作は、制御部210からの信号によって制御される。
電源回路240は、バッテリー120から供給される電力を、制御部210からの制御に基づいて、有機ELディスプレイの各画素に対して供給するものである。
<表示部の概略構成>
図13は、表示部200の機能構成の概略を示すブロック図である。なお、図13では、方位関係を明確化するために直交するXYの2軸が付されている。
表示部200は、有機ELディスプレイAA、制御部210、画像信号線駆動回路220、走査信号線駆動回路230、および電源回路240を備える。そして、制御部210には、タイミング発生回路TCが含まれる。
有機ELディスプレイAAには、多数の画素回路7が縦方向(Y方向)ならびに横方向(X方向)に沿ってマトリックス状(すなわち格子状)に配列されている。この画素回路7の構成および動作については、上述した基礎技術に係る画素回路7と同様であるため、ここでは、説明を省略する。そして、Y方向に平行な画素回路7の列ごとに画像信号線Lisがそれぞれ設けられ、各画像信号線Lisが複数の画素回路7に対して電気的に共通に接続される。また、X方向に平行な画素回路7の行ごとに、走査信号線Lssがそれぞれ設けられ、各走査信号線Lssが複数の画素回路7に対して電気的に共通に接続される。また、画素回路7は、複数の画素が配列された表示部200の輝度を画素ごとに制御するものである。
また、有機ELディスプレイAAでは、複数の絵素がマトリックス状(すなわち格子状)に配列される。そして、各絵素は、相互に異なる4色(ここでは、RGBWの4色)の光をそれぞれ発し、且つX方向に沿って空間順次に並ぶ4つの画素、すなわちR,G,B,W画素によって構成される。以下、R,G,B,W画素の4種類の画素の特性については、上表1の特性を有するものとして説明する。また、上記基礎技術と同様に、全有機EL素子にそれぞれ印加される電源電圧(すなわち電位VDD)は15Vであるものとする。
タイミング発生回路TCは、本体部100から送られてくる画像データD0に同期させて、画像信号線駆動回路220から各画像信号線Lisに対する画素信号の供給タイミングを制御する信号を画像信号線駆動回路220に対して送出する一方、走査信号線駆動回路230から各走査信号線Lssに対する走査信号の供給タイミングを制御する信号を走査信号線駆動回路230に対して送出する。
画像信号線駆動回路220は、タイミング発生回路TCからの信号に応答して、画像信号線Lisに対して画素信号を供給する。一方、走査信号線駆動回路230は、タイミング発生回路TCからの信号に応答して、走査信号線Lssに対して走査信号を供給する。このようなタイミング発生回路TCの制御により、画像信号線Lisを介して各画素回路7に画素データ信号が適宜供給される。
電源回路240は、制御部210の制御下で、各画素回路7に対して発光などに要する電力を供給する。
<RGB階調からRGBW階調への階調変換処理>
図14は、制御部210においてRGB階調をRGBW階調に変換する処理(以下「階調変換処理」とも称する)について示す図である。
制御部210は、内蔵するROM内などに格納されたプログラムを内蔵するCPUで読み込んで実行することで、図14で示す階調変換処理を実現する。図14において、一点鎖線で囲んだ部分、すなわち画素劣化検出手段DD、ラインバッファLB、RGB−RGBW変換テーブルTB1〜TB3、並びに変換部TPが本発明の制御手段に相当し、破線で囲んだ部分、すなわちRGB−RGBW変換テーブルTB1〜TB3及び変換部TPが本発明の基準階調変更手段に相当する。
制御部210では、ラインバッファLB、および機能構成としての画素劣化検出部DD(検出手段)と変換部TPを有する。
ラインバッファLBは、本体部100から入力されてくるRGBの3色に係る画像データD0に関し、各色の1ライン分の画素データを一時的に記憶するラインバッファが設けられたものである。なお、図14では、8ビットの階調に係るラインバッファが例示されている。
画素劣化検出部DDは、R,G,B,W画素、すなわち発光素子の劣化度合いをそれぞれ検出するものである。各画素の劣化度合いの検出手法としては、例えば、各画素が発光する際に当該各画素の発光素子を流れる電流を、時間積分することで積算しておき、当該電流の時間積分値を各画素の劣化度合いを示すパラメータ(画素劣化パラメータ)、すなわち各画素の劣化度合いとして検出する手法が挙げられる。このような手法を採用すると、簡単な構成でRGBW画素の発光素子の劣化度合いを精度良く検出することができる。
RGB−RGBW変換テーブルTB1〜TB3は、それぞれ、RGB階調をRGBW階調に変換するための算出ルールに係るデータが格納されたデータテーブルであり、例えば、内蔵するROM内などに格納される。RGB−RGBW変換テーブルTB1〜TB3は、それぞれ、多数のRGBの階調の組合せに対してそれぞれRGBWの階調の組合せが対応づけられた形式を有する。
ところで、図10で示したように、W画素の発光を有効活用すると、特に高輝度の発光を行う際に消費電力の低下を図ることができる。その一方、発光輝度が小さくなればなるほど消費電力を低下させる効果が小さくなる。また、上述したように、W画素の過度な使用は、W画素の劣化の促進を招き、有機ELディスプレイAAにおける、色ずれ、輝度劣化、焼き付きなどの問題を誘発する。
そこで、低消費電力化とW画素の劣化防止との両立を図るために、各RGB−RGBW変換テーブルTB1〜TB3では、比較的高輝度の発光を行う際にW画素の発光が行われ、比較的低輝度の発光を行う際にはW画素の発光が行われないように、RGB階調からRGBW階調に変換するような設定がなされている。
また、RGB−RGBW変換テーブルTB1〜TB3は、それぞれ各画素の劣化度合いに応じたデータテーブルとなっており、例えば相互に異なる3つの画素劣化パラメータが、RGB−RGBW変換テーブルTB1〜TB3に対してそれぞれ対応づけられている。
変換部TPは、RGB階調をRGBW階調に変換するものである。具体的には、変換部TPは、まず、画素劣化検出部DDからの検出情報に基づいて各画素の劣化度合いを認識して、RGB−RGBW変換テーブルTB1〜TB3から参照対象となる1つのRGB−RGBW変換テーブル(以下「参照対象テーブル」とも称する)を決定する。そして、変換部TPは、参照対象テーブルにおいて対応づけられたRGB階調とRGBW階調との関係に沿って、ラインバッファLBから入力される1絵素に係るRGBの階調から、RGBWの階調を算出する階調変換処理を行う。
また、変換部TPにおいては、例えば、1フレーム分の画像データの階調変換処理が終わるタイミングなどといった所定のタイミングで、画素劣化検出部DDからの検出情報に基づいて各画素の劣化度合いを認識し、RGB−RGBW変換テーブルTB1〜TB3のうちの参照対象となる1つのRGB−RGBW変換テーブル(参照対象テーブル)を変更する。
具体的には、RGB−RGBW変換テーブルTB1〜TB3は、W画素の過度な使用はW画素の発光素子の劣化の加速を招くために、各絵素ごとに、R,G,B画素の劣化度合いに対するW画素の劣化度合いに応じて、RGB階調からRGBW階調への階調変換後におけるW画素に係る階調(W階調)が、他のRGB画素に係る階調(R階調、G階調、B階調)に対して相対的に低下するように設定されている。
つまり、RGB−RGBW変換テーブルTB1〜TB3では、R,G,B画素の劣化度合いに対してW画素の劣化度合いが比較的小さい場合には、W画素の使用による低消費電力化の効果を重要視して、R階調、G階調、B階調に対するW階調の比率を相対的に上昇させる。逆に、R,G,B画素の劣化度合いに対してW画素の劣化度合いが比較的大きな場合には、W画素の使用による劣化の促進を抑制する効果を重要視して、R階調、G階調、B階調に対するW階調の比率が相対的に下降するように設定されている。すなわち、W画素の劣化度合いに応じて、R階調、G階調、B階調に対して、W階調が相対的に低下するように、階調変換処理の算出ルールが変更される。
なお、ここでは、制御部210に内蔵されるROM内にRGB−RGBW変換テーブルTB1〜TB3が格納されるものとして説明したが、これに限られず、RGB−RGBW変換テーブルTB1〜TB3のデータ量が多いことを考慮して、別途、記憶部を設けて、当該記憶部にRGB−RGBW変換テーブルTB1〜TB3が格納されても良い。
ここで、W画素の使用による低消費電力化ならびに各画素の劣化度合いを考慮した階調変換処理の具体的な設定について説明する。以下では、R,G,B画素の劣化度合いに対するW画素の劣化度合いが比較的低い場合に使用されるRGB−RGBW変換テーブルによる具体的な設定(以下「具体的設定1」と称する)と、R,G,B画素の劣化度合いに対するW画素の劣化度合いが比較的高い場合に使用されるRGB−RGBW変換テーブルによる具体的な設定(以下「具体的設定2」と称する)とを示して説明する。
○具体的設定1:
図15は、RGBの階調が同一である場合、すなわち無彩色の表示をする場合における画像データD0に係る無彩色の階調(=R階調=G階調=B階調)と、階調変換処理後のRGBW階調との関係を示す図である。図15では、横軸が無彩色の階調、縦軸がRGBW階調を示しており、W階調に係る関係が曲線Lw1(実線)、R階調に係る関係が曲線Lr1(破線)、B階調に係る関係が曲線Lb1(一点鎖線)、G階調に係る関係が曲線Lg1(二点鎖線)で示されている。
図15で示すように、具体的設定1では、R,G,B,W画素におけるW画素の使用比率が3段階で切り換えられる。詳細には、無彩色の階調が第1の所定値以下(ここでは128階調以下、具体的には0〜128階調)の場合には、W画素が全く使用されない(第1段階)。そして、無彩色の階調が第1の所定値から第2の所定値の範囲(ここでは128〜192階調)の場合には、無彩色の階調の増加とともにR,G,B,W画素におけるW画素の使用比率が徐々に増やされる(第2段階)。
つまり、具体的設定1によれば、変換部TPにより、無彩色の階調、すなわち略同一の関係にあるRGB階調が第1の所定値以上となる場合には、W画素の発光素子が発光する一方、当該無彩色の階調が第1の所定値未満となる場合には、W画素の発光素子が発光しないように制御される。別の観点から言えば、無彩色の階調、すなわち略同一の関係にあるRGB階調が第1の所定値未満となる場合には、変換部TPにより、RGB階調が変換されることなくそのまま採用されて、RGB画素の発光素子が発光するように制御される。
また、無彩色の階調が第2の所定値以上(ここでは192階調以上、具体的には192〜255階調)の場合には、W画素が最大限使用される(第3段階)。
図16は、図15で示す条件下において無彩色を表現したときの階調(すなわち無彩色の階調)と、R,G,B,W画素の有機EL素子でそれぞれ流れる電流との関係を例示する図である。図16では、横軸が無彩色の階調、縦軸が電流を示している。具体的には、W画素に係る階調と電流との関係が曲線Iw1(実線)、R画素に係る階調と電流との関係が曲線Ir1(破線)、G画素に係る階調と電流との関係が曲線Ig1(二点鎖線)、B画素に係る階調と電流との関係が曲線Ib1(一点鎖線)で示されている。図16で示されるように、W画素が使用されるのは高階調側に限られるため、W画素の劣化が抑制される。
図17は、図15および図16で示す条件下において無彩色を表現したときの階調(すなわち無彩色の階調)と、有機ELディスプレイ全体における消費電力との関係を例示する図である。図17では、図10と同様に、横軸が無彩色階調、縦軸が消費電力を示し、図16の曲線Ir1,Ig1,Ib1,Iw1の条件に関し、無彩色階調と消費電力との関係が曲線W1(太線)で示され、比較の為に、図10で示した曲線Wrgb(破線)および曲線Wrgbw(細線)も併せて示されている。
図17で示すように、低階調(ここでは0〜128階調)では、W画素を使用しないため、曲線W1は、RGB画素のみを用いた場合の消費電力を示す曲線Wrgbと一致する。一方、高階調(ここでは192〜255階調)では、W画素を最大限使用するため、曲線W1は、W画素を最大限使用した場合の消費電力を示す曲線Wrgbwと一致する。また、中間階調(ここでは128〜192階調)では、W画素の使用比率を徐々に高めるため、曲線W1は、曲線Wrgb上から曲線Wrgbw上へと徐々に移行する。
このように、具体的設定1では、全体として、W画素を最大限使用する場合よりも消費電力が若干増加するものの、高階調における消費電力が低減されているため、RGB画素のみを使用する場合と比較して消費電力を顕著に低減することができる。
また、W画素の劣化に伴って発光効率が低下した場合に、ある階調を挟んで急激に色度が変化してしまう不具合を回避するためには、具体的設定1の条件のように、階調の増減に対してR,G,B画素に対するW画素の使用比率、すなわちW画素の発光に係る輝度比を徐々に増加させることが好ましい。
○具体的設定2:
図18は、RGBの階調が同一である場合、すなわち無彩色の表示をする場合における画像データD0に係る無彩色の階調(=R階調=G階調=B階調)と、階調変換処理後のRGBW階調との関係を示す図である。図18では、図15と同様に、横軸が無彩色の階調、縦軸がRGBW階調を示しており、W階調に係る関係が曲線Lw2(実線)、R階調に係る関係が曲線Lr2(破線)、B階調に係る関係が曲線Lb2(一点鎖線)、G階調に係る関係が曲線Lg2(二点鎖線)で示されている。
図18で示すように、具体的設定2によれば、R,G,B,W画素におけるW画素の使用比率が2段階で切り換えられる。詳細には、無彩色の階調が所定値以下(ここでは0〜128階調)の場合にはW画素が全く使用されず(第1段階)、無彩色の階調が所定値以上(ここでは128〜255階調)の場合に、無彩色の階調の増加とともにR,G,B,W画素におけるW画素の使用比率が増やされる(第2段階)。
つまり、具体的設定2によっても、具体的設定1と同様に、変換部TPにより、無彩色の階調、すなわち略同一の関係にあるRGB階調が所定値以上となる場合にはW画素の発光素子が発光する一方、当該無彩色の階調が第1の所定値未満となる場合にはW画素の発光素子が発光しないように制御される。
別の観点から言えば、無彩色の階調、すなわち略同一の関係にあるRGB階調が所定値未満となる場合には、変換部TPにより、RGB階調が変換されることなくそのまま採用されて、RGB画素の発光素子が発光するように制御される。このため、容易にW画素の使用の要否を切り分けることができる。
更に、具体的設定2では、無彩色の階調が最大階調となる場合でも、W画素が最大限使用されない。
このように、具体的設定2では、具体的設定1と比較して、相対的に高階調側でR,G,B,W画素におけるW画素の使用比率が低減される。
図19は、図18で示す条件下での無彩色を表現したときの無彩色の階調と、R,G,B,W画素の有機EL素子でそれぞれ流れる電流との関係を例示する図である。図19では、横軸が無彩色の階調、縦軸が電流を示している。具体的には、W画素に係る階調と電流との関係が曲線Iw2(実線)、R画素に係る階調と電流との関係が曲線Ir2(破線)、G画素に係る階調と電流との関係が曲線Ig2(二点鎖線)、B画素に係る階調と電流との関係が曲線Ib2(一点鎖線)で示されている。図19で示されるように、W画素が使用されるのは具体的設定1よりも高階調側に限られ、更にW画素が最大限使用されないように設定されているため、具体的設定1よりもW画素の劣化が抑制される。
図20は、図18および図19で示す条件下において無彩色を表現したときの階調(すなわち無彩色の階調)と、有機ELディスプレイ全体における消費電力との関係を例示する図である。図20では、図10および図17と同様に、横軸が無彩色の階調、縦軸が消費電力を示し、図19の曲線Ir2,Ig2,Ib2,Iw2の条件に関し、階調と消費電力との関係が曲線W2(太線)で示され、比較の為に、図10で示した曲線Wrgb(破線)および曲線Wrgbw(細線)も併せて示されている。
図20で示すように、低階調(ここでは0〜128階調)では、W画素を使用しないため、曲線W2は、RGB画素のみを用いた場合の消費電力を示す曲線Wrgbと一致する。一方、中間および高階調(ここでは128〜255階調)では、W画素の使用比率が徐々に高まるため、曲線W2は、曲線Wrgb上から曲線Wrgbwへ近づく方向へ移行する。
このように、具体的設定2よれば、高階調でW画素を最大限使用する具体的設定1と比較して、全体として消費電力が増加するものの、RGB画素のみを使用する場合よりも消費電力が低減される。
以上、具体的設定1,2について説明したが、例えば、具体的設定1に従って、有機ELディスプレイAAにおいて最高階調近傍の白色を表示し続けると、W画素を流れる電流の積算値がR,G,B色の各画素を流れる電流の積算値よりも大きく、W画素が相対的に速く劣化してしまう。その結果、色ずれ、輝度劣化、焼き付きを招く。このため、R,G,B画素の劣化度合いに対するW画素の劣化度合いが所定の劣化度合いよりも高まった場合には、具体的設定1よりも相対的に高階調側でR,G,B,W画素におけるW画素の使用比率が低減される具体的設定2に移行される。
すなわち、R,G,B画素の劣化度合いに対するW画素の劣化度合いに応じて、W画素の発光素子の発光量が低減される一方で、他のR,G,B画素の発光素子の発光量が増やされる。このような構成により、W画素の発光素子の劣化が抑制され、画像表示装置における長寿命の維持と低消費電力化とを容易に実現することができる。
なお、例えば、具体的設定1がRGB−RGBW変換テーブルTB1によって規定され、具体的設定2がRGB−RGBW変換テーブルTB2によって規定される。
ここでは、R,G,B画素の劣化度合いに対するW画素の劣化度合いが所定の劣化度合いよりも高まった場合に、より高階調側でR,G,B,W画素におけるW画素の使用比率が低減されるように設定する例を挙げたが、これに限られない。例えば、R,G,B画素の劣化度合いに対するW画素の劣化度合いが所定の劣化度合いよりも高まった場合に、W画素を使用し始める階調が、R,G,B画素の劣化度合いに対するW画素の劣化度合いに応じて適宜変更されても良い。すなわち、変換部TPによって、R,G,B画素の劣化度合いに対するW画素の劣化度合いに応じて、W画素の使用を開始する階調(以下「W画素使用開始基準階調」とも称する)が高階調側に切り換えられても良い。このような構成によっても、W画素の発光素子の劣化が抑制されるため、画像表示装置において長寿命を維持しつつ消費電力を容易に低減することができる。
また、R,G,B画素の劣化度合いに対するW画素の劣化度合いが、更に進んで、所定の劣化度合いに到達した場合には、W画素が全く使用されないようにしても良く、この設定が、例えばRGB−RGBW変換テーブルTB3によって規定される。
このようにW画素を全く使用しない場合には、W画素の使用による省電力効果が得られない。しかしながら、W画素を使用していないうちにR,G,B画素の劣化が進むため、R,G,B画素の劣化度合いに対するW画素の劣化度合いが相対的に低下する。そして、W画素の劣化度合いに対してR,G,B画素の劣化度合いが上回れば、再度W画素を使用するようにしても良いし、R,G,B,W画素におけるW画素の使用比率を増大させるようにしても良い。このような構成によれば、W画素の使用による省電力効果が得られつつ、R,G,B,W画素の発光素子の劣化が均一化されるため、色ずれ、輝度劣化、焼き付きなどといった問題も解消される。
ここでは、便宜上、有機ELディスプレイAAにおいて、無彩色を表示する場合、すなわちR,G,B階調が略同一である場合について説明したが、有彩色を表示する場合、すなわちR,G,B階調が略同一でない場合には、R,G,B階調のうち、最も低い色の階調と、当該階調に対応する他の2色の階調とを、無彩色の成分とみなし、上記具体的設定1,2などのルールに従って、当該無彩色の成分が適宜RGBW階調に変換されるようにすれば良い。
なお、R,G,B,W画素の劣化の度合いが相互に異なる場合には、色度に応じて、R,G,B,W画素におけるW画素の使用比率が適宜変更されたり、W画素使用開始基準階調が適宜変更されることが好ましい。
<階調変換処理動作>
図21は、階調変換処理の動作フローを示すフローチャートである。本動作フローは、制御部210の制御下で実現され、例えば、本体部100から表示部200に対する画像データD0の出力開始に応答して、開始され、ステップSP1に進む。
ステップSP1では、画素劣化検出部DDによって、W画素の劣化度合いが検出される。
ステップSP2では、変換部TPによって、画素劣化検出部DDによるRGBW画素の劣化度合いの検出結果に応じて、RGB−RGBW変換テーブルTB1〜TB3のうちの1つのRGB−RGBW変換テーブルが参照対象テーブルとして決定される。
ステップSP3では、変換部TPによって、ラインバッファLBから入力されてくる画像データD0に係るRGB階調を、ステップSP2で決定された参照対象テーブルに従って、RGBW階調に変換する階調変換処理が開始される。
この階調変換処理では、上述したように、変換部TPによって、まず、RGB階調の情報が受け付けられ、RGB階調がそれぞれW画素使用開始基準階調以上である場合に、W画素の発光素子を発光させる一方、RGB階調がそれぞれW画素使用開始基準階調未満である場合に、W画素の発光素子を発光させない。また、変換部TPによって、W画素の発光素子の劣化度合いが検出され、当該劣化度合いに応じて、W画素の発光素子の発光量を減少させる一方で、RGB画素の発光素子の発光量を増加させる。
ステップSP4では、変換部TPによって、1フレーム分の画像データD0に係る階調変換処理が終了したか否か判定される。この判定は、例えば、垂直同期信号などを用いて実施することができる。ここでは、1フレーム分の画像データD0に係る階調変換処理が終了するまで、ステップSP4の判定が繰り返し行われ、1フレーム分の画像データD0に係る階調変換処理が終了すれば、ステップSP5に進む。
ステップSP5では、変換部TPにおける階調変換処理が終了され、ステップSP1に戻る。
このようなステップSP1〜SP5の処理を繰り返すことで、R,G,B,W画素の劣化の度合いをモニタしつつ、当該劣化度合いに応じて、階調変換処理を適宜変更し、各絵素において、階調変換処理後のRGBW階調に応じた輝度でRGBW画素がそれぞれ発光する。このため、省電力と長寿命とを併せて実現することができる。
以上のように、本発明の実施形態に係る画像表示装置10では、RGBの3色の階調がそれぞれ基準の階調以上となる場合にはW色に係る発光素子を発光させ、RGBの3色の階調がそれぞれ基準の階調未満となる場合にはW色に係る発光素子を発光させないように制御される。つまり、高階調では消費電力低減のためW画素を使い、低階調ではW画素の劣化を防ぐために使用を避ける。このような構成により、W画素の発光素子の劣化が抑制されるため、W画素の使用による省電力化とW画素の劣化速度抑制とを両立することができる。すなわち、画像表示装置において長寿命を維持しつつ消費電力を容易に低減することができる。
特に、絵素ごとに、W画素の発光素子の劣化度合いに応じて、W画素使用開始基準階調が高階調側に切り替えられる。このような構成により、絵素ごとにW画素の発光素子の劣化が抑制されるため、画像表示装置において長寿命を維持しつつ消費電力をより適正かつ容易に低減することができる。
更に、W画素の発光素子の劣化度合いに応じて、RGB色に係るR,G,B階調の情報から、RGBW色に係るR,G,B,W階調を算出するルールが、RGB階調に対してW階調が相対的に低下するように変更される。このように、有機EL素子の劣化の度合いに応じて、適宜W画素の使用比率が変更されることで、W画素の発光素子の劣化が抑制されるため、R,G,B,W画素の劣化が均一化される。したがって、画像表示装置において長寿命を維持しつつ消費電力を容易に低減することができる。
ところで、従来技術では、RGB階調からRGBW画素の階調比を求めるためには、少なくとも乗算または除算を含む複雑な計算が必要であった。しかしながら、当該従来技術では、毎フレームについて画像データをRGBW画素の階調に変換する必要があるため、複雑な計算を高速に行う回路が必要であった。また、有機EL素子を構成する材料の変更に伴って発光効率が変化した場合に計算方法を変更するのが難しかった。
これに対して、本実施形態では、画像データの各絵素に係る各RGB階調に基づいて、RGB−RGBW変換テーブルTB1〜TB3に含まれる参照対象テーブルを参照しつつ、RGBW階調を求めるようにしている。このため、画素の劣化の度合いに応じて複数のデータテーブルの中から参照対象テーブルを選択することにより、簡単な構成で、RGB階調からRGBW階調への変換を高速で行うことができる。また、RGB−RGBW変換テーブルTB1〜TB3を書き換え可能な記憶媒体に記憶するような構成を採用することで、有機EL素子を構成する材料が変更されても、回路構成を変更することなく、容易に計算方法を変更することができる。
<変形例>
以上、この発明の実施形態について説明したが、この発明は上記説明した内容のものに限定されるものではない。
◎例えば、上記実施形態では、RGB−RGBW変換テーブルTB1〜TB3が、RGB階調の全ての組合せに対してRGBW階調の組合せを対応付けたものであったが、これに限られない。例えば、RGB−RGBW変換テーブルTB1〜TB3を格納する記憶媒体の容量が限定される場合には、飛び飛びのRGB階調の組合せに対してRGBW階調の組合せを対応付けたRGB−RGBW変換テーブルと、飛ばされた中間の階調を求めるためのデータテーブルを新規に設けて、乗算・除算を排除しつつ、データテーブル全体としてデータ量を低減するようしても良い。以下、データテーブルのデータ量を低減する一手法について説明する。
図22は、データテーブルのデータ量を低減しつつ、制御部210においてRGB階調をRGBW階調に変換する処理(階調変換処理)について示す図である。なお、ここでは、データテーブルのデータ量を低減する点に着目して説明するため、発光素子の劣化度合いに応じた参照対象テーブルの変更については説明を省略する。
制御部210では、ラインバッファLBaと、機能としての下位ビット消去部BD、全ビット変換部TP1、上位ビット変換部TP2、下位ビット変換部TP3、輝度階調変換部TP4、減算部MC、および加算部PCとを有する。
ラインバッファLBaは、制御部210から入力されてくるRGBの3色に係る画像データD0に関し、各色の1ライン分の画素データを一時的に記憶するラインバッファが設けられたものである。ここでは、各色ごとに8ビットの階調表現がなされるものとして説明する。ラインバッファLBaは、各色8ビットの階調に係る情報を全ビット変換部TP1と下位ビット消去部BDに対して出力する。
下位ビット消去部BDは、各色ごとに8ビットの階調のうち、下位4ビットの階調を消去して、上位4ビットの階調に係る情報を上位ビット変換部TP2に出力する。一方、消去された下位4ビットの階調に係る情報については、下位ビット変換部TP3に出力される。
全ビット変換部TP1は、階調−輝度比参照テーブルTDを参照することで、画像データD0に係る絵素ごとにRGB階調をそれぞれ輝度に変換する。ここで、階調−輝度比参照テーブルTDは、例えば、制御部210に内蔵されたROMに格納されるデータテーブルであり、8ビット(0〜255)の階調表現と10ビットの輝度表現とを対応付けたものである。したがって、全ビット変換部TP1では、絵素ごとに、階調−輝度比参照テーブルTDにおける階調と輝度との対応付けに従って、8ビットのRGBの階調が、10ビットのRGBの輝度Ro,Go,Boに変換される。
上位ビット変換部TP2は、RGB−RGBW変換テーブルTC1を参照することで、絵素ごとに、上位4ビットのRGB階調をそれぞれRGBWの輝度に変換する。ここで、RGB−RGBW変換テーブルTC1は、例えば、制御部210に内蔵されたROMに格納されるデータテーブルであり、8ビット(0〜255)の階調表現のうちの上位4ビットの階調表現と、10ビット(0〜1023)の輝度表現とを対応付けたものである。ここで、上位4ビットの階調表現とは、各色の階調とも16階調おきに階調を表現したものである。したがって、上位ビット変換部TP2では、絵素ごとに、RGB−RGBW変換テーブルTC1における階調と輝度との対応付けに従って、8ビットのうちの上位4ビットのRGBの階調が、10ビットのRGBの輝度Rw,Gw,Bw,Wwに変換される。
下位ビット変換部TP3は、絵素ごとに、階調−輝度比参照テーブルTDにおける階調と輝度との対応付けに従って、下位4ビットのRGBの階調を、それぞれ10ビットのRGBの輝度Ru,Gu,Buに変換する。
減算部MCは、絵素ごとに、各色について、全ビット変換部TP1から出力される10ビットのRGBの輝度Ro,Go,Boから、下位ビット変換部TP3から出力される10ビットのRGBの輝度Ru,Gu,Buを減じる。つまり、輝度(Ro−Ru),(Go−Gu),(Bo−Bu)が生成されて出力される。
加算部PCは、絵素ごとに、各色について、減算部MCから出力される10ビットのRGBの輝度(Ro−Ru),(Go−Gu),(Bo−Bu)に対し、上位ビット変換部TP2から出力される10ビットのRGBの輝度Rw,Gw,Bw,Wwを加える。つまり、輝度(Ro−Ru+Rw),(Go−Gu+Gw),(Bo−Bu+Bw),Wwが生成されて出力される。
輝度階調変換部TP4は、絵素ごとに、輝度比−階調参照テーブルTEを参照することで、加算部PCから出力されるRGBWの輝度(Ro−Ru+Rw),(Go−Gu+Gw),(Bo−Bu+Bw),Wwをそれぞれ8ビットの階調に変換する。ここで、輝度比−階調参照テーブルTEは、例えば、制御部210に内蔵されたROMに格納されるデータテーブルであり、10ビット(0〜1023)の輝度表現と8ビット(0〜255)の階調表現とを対応付けたものである。したがって、輝度階調変換部TP4では、絵素ごとに、輝度比−階調参照テーブルTEにおける輝度と階調との対応付けに従って、10ビットのRGBWの輝度が、8ビットのRGBWの階調に変換される。
このようにして、8ビットのRGB階調が8ビットのRGBW階調に変換され、8ビットのRGBW階調で表現された画像データが生成される。
このような構成では、RGB−RGBW変換テーブルTC1では、RGBの階調の組み合わせが4096(=24×3)通りあるため、4096通りのRGBの階調の組み合わせに対して、それぞれRGBWの輝度の組み合わせが対応付けられる。また、階調−輝度比参照テーブルTDおよび輝度比−階調参照テーブルTEでは、8ビットで表現される階調と輝度とが対応付けられているため、ともに256通りの階調に対してそれぞれ輝度が対応づけられる。つまり、3つのデータテーブルTC1,TD,TEには、合計で4608通りの階調と輝度との対応が格納されている。
ところで、上記実施形態に係るRGB−RGBW変換テーブルTB1〜TB3では、1つのデータテーブルでも1677716通りのRGB階調に対してRGBW階調が対応付けられている。したがって、図22で示された構成により、データテーブル全体としてデータ量を低減することができる。
なお、図22では、発光素子の劣化度合いに応じた参照対象テーブルの変更については図示が省略されていたが、上位ビット変換部TP2が参照可能なRGB−RGBW変換テーブルを複数準備しておき、各画素の発光素子の劣化度合いに応じて、上位ビット変換部TP2が参照するRGB−RGBW変換テーブルを変更するようにしても良い。
◎また、上記実施形態では、絵素ごとに、RGBW画素の劣化度合いが検出され、絵素ごとにRGB画素の劣化度合いに対するW画素の劣化度合いに応じて、W画素使用開始基準階調が高階調側に変更されたが、これに限られず、例えば、所定数の絵素のうちの1つの絵素についてRGBW画素の劣化度合いが検出され、当該検出されたRGB画素の劣化度合いに対するW画素の劣化度合いに応じて、所定数の絵素ごとにW画素使用開始基準階調が高階調側に変更されても良い。
◎また、上記実施形態では、例えば、RGBW画素が発光する際に当該RGBW画素の各発光素子を流れる電流を、時間積分することで積算しておき、当該電流の時間積分値をW画素の劣化度合いとして検出したが、これに限られず、RGBW画素の劣化度合いの検出手法としては他の種々の検出手法を採用し得る。以下、検出手法の具体例を列挙する。
(具体例1)
まず、各画素の発光素子の両電極間に印加される電圧を測定する回路(電圧測定回路)を設ける。そして、所定の電流を各画素の発光素子に流して発光させる際に、電圧測定回路によって各画素の発光素子の両電極間に印加される電圧(実電圧)を測定する。次に、画素劣化検出部DDにおいて、実電圧と、所定の電流を各画素の発光素子の両電極間に流した時の初期値、すなわち基準となる電圧(基準電圧)とを比較して、各画素の発光素子の劣化度合いを検出するようにしても良い。ここでは、例えば、基準電圧から実電圧を除算した、電圧降下分を劣化度合いとして取り扱っても良い。なお、基準電圧の情報は、例えば、制御部210に内蔵されたROM内に予め格納しておけば良い。そして、このような構成によっても、各画素の劣化度合いを精度良く検出することができる。
(具体例2)
まず、各画素の発光素子から射出される光の輝度を測定するセンサ(輝度測定センサ)を設ける。そして、所定の各色の階調に基づいて各画素の発光素子を発光させる際に、上記輝度測定センサによって、各画素の発光素子から射出される光の輝度(各色光の実輝度)を測定する。次に、画素劣化検出部DDにおいて、各色光の実輝度と、所定の各色の階調に対して各画素の発光素子から射出される光の初期値、すなわち基準となる輝度(基準輝度)とを比較することで、各画素の発光素子の劣化度合いを検出するようにしても良い。ここでは、例えば、基準輝度から実輝度を除算した、輝度低下分を劣化度合いとして取り扱っても良い。なお、基準輝度の情報は、例えば、制御部210に内蔵されたROM内に予め格納しておけば良い。そして、このような構成によっても、各画素の劣化度合いを精度良く検出することができる。
◎また、上記実施形態では、RGBW画素の劣化度合いに応じて、RGBW画素におけるW画素の使用比率が変更されたが、これに限られず、例えば、RGBW画素の劣化度合いに応じて、W画素の使用頻度を変更しても、上記実施形態と同様な効果を得ることができる。この使用頻度の調整方法については、種々の手法を適用可能であるが、例えば、劣化度合いに応じて、乱数を発生させ、W画素を使用する手法などが挙げられる。以下、当該手法の具体例を説明する。
図23は、RGBW画素の劣化度合いに応じてW画素の使用頻度を変換するために、制御部210においてRGB階調をRGBW階調に変換する処理(階調変換処理)について示す図である。なお、ここでは、発光素子の劣化度合いに応じた参照対象テーブルの変更については説明を省略する。
ここでは、例えば、制御部210は、内蔵するROM内などに格納されたプログラムを内蔵するCPUで読み込んで実行することで、図23で示す階調変換処理を実現する。
制御部210では、ラインバッファLB、および機能構成としての画素劣化検出部DDと変換部TPaと乱数発生部RGとを有する。
ラインバッファLB、および画素劣化検出部DDは、上記実施形態のものと同様であるため、ここでは説明を省略する。なお、図23では、8ビットの階調に係るラインバッファが例示されている。
乱数発生部RGは、画素劣化検出部DDからの検出情報に基づいて各画素の劣化度合いを認識し、劣化度合いに応じて、乱数を発生させる。例えば、RGB画素の劣化度合いに対するW画素の劣化度合いが高まるにつれて、乱数の発生回数が高まる。
変換部TPaは、乱数発生部RGから発せられる乱数に応じて、W画素を使用する絵素を決定し、当該絵素では、RGB−RGBW変換テーブルTBを参照して、RGB階調をRGBW階調に変換する。なお、例えば、各絵素に識別番号を付しておけば、乱数に応じてW画素を使用する絵素を決定することができる。この変換部TPaによる階調変換処理により、適宜RGBW階調に係る画像データが生成される。ここで、RGB−RGBW変換テーブルTBとしては、例えば、上記実施形態のRGB−RGBW変換テーブルTB1と同様なものが挙げられる。
このような構成を採用すると、有機ELディスプレイAAに配列された多数の絵素のうち、W画素を使用する絵素の数、すなわち、W画素の使用頻度が、RGB画素の劣化度合いに対するW画素の劣化度合いに応じて変更される。
換言すれば、RGB画素の劣化度合いに対するW画素の劣化度合いに応じて、RGB画素の発光素子の発光頻度に対するW画素の発光素子の発光頻度が相対的に低下するように制御される。例えば、RGB画素の劣化度合いに対するW画素の劣化度合いが相対的に高まると、W画素を使用する絵素の比率、すなわちW画素の使用頻度が低下する。
図24は、図23に示した階調変換処理の動作フローを示すフローチャートである。本動作フローは、制御部210の制御下で実現され、例えば、本体部100から表示部200に対する画像データD0の出力開始に応答して、開始され、ステップST1に進む。
ステップST1では、図21のステップSP1と同様な処理が行われる。
ステップST2では、乱数発生部RGによって、画素劣化検出部DDによるRGBW画素の劣化度合いの検出結果に応じて、乱数が発生されることで、RGB階調からRGBW階調へ変換される頻度、すなわちW画素を使用する頻度が決定される。
ステップST3では、変換部TPaによって、ラインバッファLBから入力されてくる画像データD0に係るRGB階調を、ステップST2で決定されたW画素の使用頻度に応じた階調変換処理が開始される。この階調変換処理では、上述したように、乱数に応じた絵素について、RGB階調からRGBW階調への階調変換処理が行われる。
ステップST4では、図21のステップSP4と同様な処理が行われる。
ステップST5では、図21のステップSP5と同様な処理が行われる。
このようなステップST1〜ST5の処理が繰り返されることで、R,G,B,W画素の劣化の度合いをモニタしつつ、RGB画素の劣化度合いに対するW画素の劣化度合いの進行に応じて、RGB画素の使用頻度に対するW画素の使用頻度が低められる。このため、W画素の発光素子の劣化が抑制され、画像表示装置において長寿命を維持しつつ消費電力を容易に低減することができる。
◎なお、適宜デューティを変更することで、RGBW画素におけるW画素の使用比率を適宜変更しても良い。
◎また、上記実施形態では、絵素ごとに、RGBの3色にWの1色を加えた4種類の画素を用いる場合を挙げて説明したが、これに限られず、例えば、RGBの3色に、W以外のRGBの3色を適宜混合することで実現される色(以下「X色」と称する)を加えた4種類の画素を用いるようにしても良い。また、加える画素は1色の画素に限られず、2色以上の画素を適宜加えても良い。更に、元の3色はRGBの3色に限られず、例えば、黄色(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の3色など、相互に異なる3色であれば良い。このように、各絵素を構成する4色以上の画素の種類の変更に伴い、X色を実現するための3色の混合比を変えるようにすれば良い。但し、X色の発光効率は、他の3色を使用してX色と同等な色を実現する場合の発光効率よりも良いことが求められる。
また、上記実施形態では、RGB階調が、ともにW色の使用を開始するW画素使用開始基準階調以上となる場合に、W画素の使用を開始したが、X色を実現するための3色の混合比が略同一でない場合には、X色の画素の使用を開始する階調が、X色以外の3色の各色について異なる。第1の色の階調が第1基準階調以上であり、第2の色の階調が第2基準階調以上であり、第3の色の階調が第3基準階調以上である場合に、第4の色すなわちX色の画素の発光素子を発光させるようにすれば良い。
但し、上記実施形態のように、RGBの3色の混合比が略同一となるW色の画素を第4の画素として設けて、第1〜3基準階調を略同一とする方が、W画素の発光素子に係る発光の有無を容易に切り換えることができる。
また、上記実施形態では、R,G,B画素の発光素子の劣化度合いに対するW画素の発光素子の劣化度合いに応じて、W画素の発光素子の発光量を減少させる一方で、他のRGB画素の発光素子の発光量を増加させたが、これに限られない。例えば、1つの絵素が4色の画素によって構成され、X色が他の2色を混ぜ合わせることで実現される場合には、X色以外の画素の劣化度合いに対するX色の画素の劣化度合いの進行に応じて、X色の画素の発光素子の発光量を減少させる一方で、他の3色の発光素子のうちの少なくとも2色以上の発光素子の発光量を増加させるように制御すれば、X色の画素の発光素子の劣化が抑制され、画像表示装置における長寿命の維持と低消費電力化とを容易に実現することができる。