以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
<画像表示装置の構成>
図1で示される画像表示装置1は、有機発光ダイオードの発光を利用した装置(有機EL装置)であり、制御部2、パネル部3、および電源回路4を備えている。なお、ここでは、画像信号が、赤(R)、緑(G)、青(B)の3原色に係る信号によって構成されている例を挙げて説明する。
制御部2は、信号処理部20、記憶部21、およびタイミングジェネレータ(TG)22を備えている。
信号処理部20は、入力画像信号を処理し、処理後の画像信号を出力画像信号としてXドライバ回路32に付与する。記憶部21は、不揮発性のメモリ等によって構成され、信号処理部20における処理に必要なデータ等を記憶する。TG22は、画像信号の垂直および垂直同期信号に応じて、Yドライバ回路31およびXドライバ回路32に対して、駆動タイミングを制御するための信号を付与する。なお、信号処理部20およびTG22を構成する一部については、専用のハードウェア構成によって実現されても良いし、CPU等によってプログラムが実行されることで機能的に実現されても良い。
パネル部3は、有機EL表示部30、Yドライバ回路31、およびXドライバ回路32を備えている。
有機EL表示部30は、略長方形の輪郭を有する有機ELディスプレイ(organic electroluminescence display)であり、有機材料に電流を流すことで材料自らが発光する自発光型の発光素子(ここでは、有機発光ダイオード)を備える表示部(自発光型表示部)として構成されている。この有機EL表示部30には、多数の画素回路301がマトリックス状に配列されている。
また、多数の画素回路301は、赤色の光を発する発光素子を有する画素回路301と、緑色の光を発する発光素子を有する画素回路301と、青色の光を発する発光素子を有する画素回路301とによって構成されている。そして、各色の画素回路301がいわゆるサブピクセルに対応し、赤色に係る1つの画素回路301と緑色に係る1つの画素回路301と青色に係る1つの画素回路301とからなる画素回路群が1つのピクセルに対応する。
有機EL表示部30には、発光輝度に対応する出力画像信号を各画素回路301に供給するための複数の画像信号線L2(図2参照)が設けられている。この画像信号線L2は、垂直方向に並ぶ複数の画素回路301にそれぞれ接続されている。また、有機EL表示部30には、複数の画像信号線L2に対して略直交する複数の走査信号線L4(図2参照)が設けられている。ここでは、水平方向に配列される複数の画素回路からなる画素列(水平ライン)毎に1本の走査信号線L4が設けられており、各走査信号線L4に順次に走査信号が供給される。なお、走査信号は、画像信号線L2を介して出力画像信号に応じた電位を各画素回路301において設定するタイミングを制御する信号である。
また、有機EL表示部30には、各画素回路301に含まれる駆動トランジスタTd(図2参照)の閾値電圧Vthのばらつきを補償する動作(以下「閾値電圧補償動作」と称する)を行うために必要な信号を供給する補償制御線L3(図2参照)が設けられている。また、有機EL表示部30には、後述する第2切替トランジスタの状態を切り替えるために必要な信号を供給するマージ線L5(図2参照)が設けられている。更に、有機EL表示部30には、各画素回路301に含まれる有機発光ダイオードOLED(図2参照)の両極間に発光に必要な電圧を供給する電源線L1(図2参照)が設けられている。そして、水平ライン毎に、1本の電源線L1が設けられている。
Yドライバ回路31は、有機EL表示部30の垂直方向に沿った一辺(図1では左辺)に沿って設けられており、TG22からの信号に応じて、電源線L1、補償制御線L3、走査信号線L4、およびマージ線L5に対して電位を付与する。そして、Yドライバ回路31には、電源線L1に対して電源電圧を供給するための複数の出力回路311が設けられている。なお、Yドライバ回路31に対しては、電源回路4から電源電圧が供給され、各出力回路311から電源線L1を介して複数の画素回路301に電源電圧が供給される。
Xドライバ回路32は、有機EL表示部30の水平方向に沿った一辺(図1では上辺)に沿って設けられており、TG22からの信号に応じて、出力画像信号を各画像信号線L2に供給するタイミングを制御する。そして、電位設定部としてのXドライバ回路32は、各画素回路301において出力画像信号に応じた電位を設定する。
<画素回路の構成>
図2で示されるように、画素回路301は、有機発光ダイオードOLED、駆動トランジスタTd、補償用トランジスタTth、第1切替トランジスタTs、第2切替トランジスタTm、およびコンデンサC1を有している。なお、以下では、駆動トランジスタTd、補償用トランジスタTth、第1切替トランジスタTs、および第2切替トランジスタTmを、適宜「トランジスタ」と略称し、ここでは、各トランジスタTd,Tth,Ts,Tmが、NMOSトランジスタによって構成されている例を挙げて説明する。
有機発光ダイオードOLEDは、入力端子が接地され、出力端子が、トランジスタTdを介して、電源線L1に対して電気的に接続されている。
トランジスタTdについては、ゲートとドレインとが、トランジスタTdのゲート電圧の閾値電圧のずれを補償するためのトランジスタTthを介して電気的に接続されている。また、トランジスタTdのゲートが、コンデンサC1の一方電極に対して電気的に接続されている。このコンデンサC1の他方電極は、トランジスタTsを介して画像信号線L2に対して電気的に接続されているとともに、トランジスタTmを介して電源線L1に対して電気的に接続されている。なお、コンデンサC1は、トランジスタTthを介して電荷を蓄積することで、該電荷に応じた電位をトランジスタTdのゲート電圧に反映させることができる。
また、トランジスタTthのゲートが、補償制御線L3に対して電気的に接続され、トランジスタTsのゲートが、走査信号線L4に倒して電気的に接続され、トランジスタTmのゲートが、マージ線L5に対して電気的に接続されている。なお、以下では、電源線L1、画像信号線L2、補償制御線L3、走査信号線L4、およびマージ線L5を、適宜「配線」と総称する。
図3は、図2で示された画素回路301の回路図に対して、トランジスタの寄生容量(寄生キャパシタ)および有機発光ダイオードOLEDの容量(OLEDキャパシタ)を明示したものである。図3で示されるように、有機発光ダイオードOLEDでは、発光時とは逆方向に電圧が印加されると、入力端子と出力端子との間にOLEDキャパシタColedが生じる。トランジスタTdでは、ゲートとドレインとの間に寄生キャパシタC4が生じるとともに、ゲートとソースとの間に寄生キャパシタC5が生じる。トランジスタTthでは、ゲートとドレインとの間に寄生キャパシタC2が生じるとともに、ゲートとソースとの間に寄生キャパシタC3が生じる。
<画素回路の動作>
図4は、画素回路301の動作を示すタイミングチャートである。図4では、画像表示装置1に含まれる複数の画素回路301のうち、n(自然数)行目のものと(n+1)行目のものとに各配線L1〜L5から与えられる電位(すなわち隣接する2行の画素回路301それぞれに与えられる電位)が例示されている。
図4で示されるように、1行の画素回路301において1フレーム分の画像信号を可視的に出力するための動作期間(単位フレーム期間)は、準備のための期間T1と、トランジスタTdの閾値電圧Vthを検出するための期間T2と、書き込みのための期間T3と、発光のための期間T4とを有する。また、n行目の画素回路301と(n+1)行目の画素回路301とでは、単位フレーム期間が期間T3に相当する期間ずれている。この単位フレーム期間が、画像信号の電位が変化させられつつ(換言すれば画像信号線L2の電位が変化させられつつ)繰り返されることで、動画像の表示が実現される。
以下では、図5〜図8を参照しつつ、図4の期間T1〜T4における画素回路301の動作について説明する。なお、期間T1の開始時点では、前フレームの期間T4においてコンデンサC1に電荷が溜められているものとする。
まず、期間T1では、図4で示されるように、トランジスタTs,Tthのゲートが低電位(例えば0V)VgLに設定されるため、トランジスタTs,Tthが電流を流さない状態(非導通状態)となる。また、トランジスタTmのゲートが正の高電位VgHに設定されるため、トランジスタTmが電流を流す状態(導通状態)となる。このとき、コンデンサC1に蓄積された電荷により、トランジスタTdにおけるソースの電位に対するゲートの電位、すなわちゲート電圧Vgsが閾値電圧Vthよりも高くなるため、トランジスタTdが導通状態となる。従って、図5で示されるように、導通状態であるトランジスタTdを介して、正の高電位Vpに設定された電源線L1からOLEDキャパシタColedへ電荷が供給されて、OLEDキャパシタColedに電荷が蓄積される。
次に、期間T2では、図4で示されるように、トランジスタTsのゲートが低電位VgLに設定されるため、トランジスタTsが非導通状態に設定される。また、トランジスタTm,Tthのゲートが正の高電位VgHに設定されるため、トランジスタTm,Tthがそれぞれ導通状態となる。このとき、トランジスタTdは、導通状態であるトランジスタTthを介してゲートとドレインとの間が電気的に接続される。従って、図6で示されるように、トランジスタTdのゲート電圧Vgsが閾値電圧Vthに達するまで、コンデンサC1およびOLEDキャパシタColedに蓄積された電荷が、電位が0Vに設定された電源線L1へ抜ける。そして、トランジスタTdのゲート電圧Vgsが閾値電圧Vthに達すると、トランジスタTdは非導通状態となる。
次に、期間T3では、図4で示されるように、トランジスタTs,Tthのゲートが正の高電位VgHに設定されるため、トランジスタTs,Tthが導通状態となる。一方、トランジスタTmのゲートが低電位VgLに設定されるため、トランジスタTmが非導通状態となる。このとき、コンデンサC1の他方電極は、導通状態であるトランジスタTsを介して電位(−Vdata)に設定された画像信号線L2に対して電気的に接続されるため、図7で示されるように、OLEDキャパシタColedに蓄積された電荷がコンデンサC1へ移動する。なお、このとき、トランジスタTdは非導通状態に維持される。このようにして、期間T3では、各画素回路301において、出力画像信号に応じた電荷がコンデンサC1に蓄積されることで、トランジスタTdのゲートに対して出力画像信号に応じた電位が設定される。
次に、期間T4では、図4で示されるように、トランジスタTs,Tthのゲートが低電位VgLに設定されるため、トランジスタTs,Tthが非導通状態となる。一方、トランジスタTmのゲートが高電位VgHに設定されるため、トランジスタTmが導通状態となる。このとき、トランジスタTdのゲート電圧Vgsが閾値電圧Vthよりも高くなるため、トランジスタTdが導通状態となる。従って、図8で示されるように、導通状態であるトランジスタTdを介して、接地線から負電位(−VDD、ただし、VDD>0V)に設定された電源線L1へ電流が流れ、有機発光ダイオードOLEDが発光する。
このようにして、各画素回路301では、トランジスタTdのゲートに対して出力画像信号に応じた電位が付与されることで、該トランジスタTdによって有機発光ダイオードOLEDを流れる電流が調整されて、該有機発光ダイオードOLEDが発光する。
<画像表示装置における電源電圧の低下>
図9で示されるように、パネル部3には、水平ライン毎に1本の電源線L1と該電源線L1に電源電圧を供給する出力回路311とが設けられている。具体的には、電圧供給部としての1つの出力回路311は、複数の画素回路301が配列されている領域(以下「発光領域」とも称する)の一端側(ここでは左端側)から、共通の電源線L1を介して、1つの水平ラインに含まれる複数の画素回路301に対して電源電圧を供給する。そして、1つの水平ラインを構成する複数の画素回路301では、出力回路311からの電源電圧の供給に応じて、該複数の画素回路301にそれぞれ含まれる有機発光ダイオードOLEDが同時に発光する。
ところで、電源線L1は、いわゆる電気抵抗を有するため、各電源線L1では、各画素回路301の発光に伴って流れる電流に基づいて、各画素回路301に供給される電源電圧の低下を生じる。つまり、画素回路301毎に電源線L1から付与される電位が異なる。本実施形態では、電源線L1に付与される負の電位(−VDD)が減少することで、有機発光ダイオードOLEDの入力端子とトランジスタTdのソースとの間に印加される電源電圧が低下する。
図10は、水平ライン毎の電源電圧の降下量を例示する図である。図10では、横軸が有機EL表示部30の一端(ここでは左端)を基準とした水平方向の位置を示し、縦軸が有機EL表示部30の一端側に供給される電源電圧を基準とした電源電圧の降下量を示している。なお、ここでは、水平ラインの最も左端側に配置される画素回路301の位置を示す座標(X座標)を0、水平ラインの最も右端側に配置される画素回路301の位置を示す座標(X座標)を1とする。そして、図10では、4つの水平ラインについて、画素回路301の水平方向の位置と電源電圧の降下量との関係がそれぞれ曲線(ここでは、実線、破線、一点鎖線、二点鎖線)で示されている。
図10で示されるように、各水平ラインにおいて、出力回路311から離れれば離れるほど、すなわちYドライバ回路31から離れれば離れるほど、画素回路301に供給される電源電圧が低下する。但し、図2で示される画素回路301では、期間T4においては、コンデンサC1の他方電極がトランジスタTmを介して電源線L1に対して電気的に接続されるため、電源線L1の電位が変動しても、トランジスタTdのゲート電圧Vgsは変化しない。
しかしながら、電源線L1の電位の上昇、すなわち画素回路301に供給される電源電圧の低下に伴って、トランジスタTdのソースを基準としたソースとドレインとの間の電圧(いわゆるドレイン電圧)が低下する。このドレイン電圧の低下によって、図11で示されるように、トランジスタTdを流れる電流(ドレイン電流)が低下する。その結果、有機発光ダイオードOLEDの発光輝度が所望の発光輝度から低下する。従って、期間T4では、有機EL表示部30のうち、左側が明るく右側が暗くなる傾向となり、輝度ムラが視認されることになる。更に、図10でも示されるように、出力画像信号によって、水平ライン毎に電源電圧の低下の態様が異なる。
この様な不具合に対して、画像表示装置1では、上述した電源電圧の降下量に応じて、画像信号を補正することで、電源電圧の降下の影響を低減する。すなわち、電源電圧の降下に対する補償処理が行われる。この補償処理により、表示される画像において輝度ムラやクロストーク(高輝度の部分の横方向に暗い帯が見える)等の不具合が発生しないようにしている。以下、電源電圧の降下に対する補償処理について説明する。
<電源電圧の降下に対する補償処理>
本実施形態では、信号処理部20において、入力画像信号から電源電圧の降下量を示す近似式を導出するとともに、各画素回路301について、入力画像信号の電位に応じたトランジスタTdの増幅率μで電源電圧の降下量を除すことで補正値を決定し、該補正値をいわゆるガンマ変換後の入力画像信号の電位に加算することで、出力画像信号を生成する。このような処理により、電源電圧の降下に対する補償処理が実現される。
ここで、(A)電源電圧の予測される降下量を示す近似式を入力画像信号から導出する方法(予測電圧降下量の近似式の導出方法)、(B)補正値の決定方法、および(C)信号処理部20の機能的な構成について、順次に説明する。
<(A)予測電圧降下量の近似式の導出方法>
ここでは、有機EL表示部30のうちのYドライバ回路31が設けられている一端側(ここでは左端側)から順に配列される、1、2、3、・・・、N番目のピクセルにそれぞれ対応する各画素回路群が、この順番で共通の電源線L1に対して電気的に接続されている。そして、有機EL表示部30の左端側に配列されている1番目の画素回路群の横方向のX座標を0、有機EL表示部30の右端側に配列されているN番目の画素回路群の横方向のX座標を1、各X座標の画素回路群において発光時に電源電圧に応じて流れる電流(電流分布)をi(x)、各X座標の画素回路群における電源線L1の電気抵抗をrとする。また、Yドライバ回路31からX座標が0である画素回路群に至る迄における電源線L1の電気抵抗をRとする。
まず、X座標がxである画素回路群において発生する電源電圧の降下、すなわち電圧の降下率(電圧降下率)δV(x)は、X座標がxから1に至る迄の各画素回路群において電源電圧に応じて流れる電流を積算した値に、電気抵抗rを乗じたものであり、下式(1)で示される。
そして、X座標が0である画素回路群からX座標がxである画素回路群に至る迄に電源線L1において発生するものと予測される電源電圧の降下量(予測電圧降下量)V(x)は、下式(2)で示される。
上式(2)で示されるように、予測電圧降下量V(x)は、電圧降下率δV(x)をX座標が0〜xである区間について積分した値と、電流分布i(x)をX座標が0〜1である区間について積分した値に電気抵抗Rを乗じた値との和で示される。そして、電流分布i(x)は、フーリエ級数を用いれば、下式(3)で近似的に示される。
上式(3)で示されるように、電流分布i(x)が、電流分布i(x)の直流成分DCと、変数xに係る1次、2次、および3次の正弦関数の項と、変数xに係る1次、2次、および3次の余弦関数の項とによって近似的に示される。なお、上式(3)では、変数xに係る1次、2次、および3次の正弦関数の項の係数がそれぞれS1、S2、S3で示され、変数xに係る1次、2次、および3次の余弦関数の項の係数がそれぞれC1、C2、C3で示されている。ここでは、電流分布i(x)を、フーリエ級数を用いて近似的に表すことで、電流分布i(x)の積分が容易となり、演算の簡略化が図られることになる。
上式(3)の直流成分DCは、1つの水平ラインに含まれる全ての画素回路301を流れる電流の総和によって求められる。つまり、下式(4)で示されるように、電流分布i(x)を、X座標が0〜1である区間について積分することで、直流成分DCが求められる。
ところで、X座標がxである画素回路群については、電流分布i(x)が、下式(5)で示されるように、X座標がxである画素回路群に含まれる赤、緑、青の3色に係る画素回路301をそれぞれ流れる電流の和によって求められる。
上式(5)では、X座標がxである赤色に係る画素回路301を流れる電流がIr(x)で示され、X座標がxである緑色に係る画素回路301を流れる電流がIg(x)で示され、X座標がxである青色に係る画素回路301を流れる電流がIb(x)で示されている。そして、各電流Ir(x),Ig(x),Ib(x)は、入力画像信号に基づいて、例えば、下式(6)〜(8)によって予測される。
上式(6)〜(8)では、赤、緑、青の3色に係る画素回路301の各有機発光ダイオードOLEDの電流発光効率がそれぞれEr,Eg,Eb[cd/A]、最大階調における赤、緑、青の3色に係る画素回路301の発光時の光度がそれぞれYr,Yg,Yb[cd]、ガンマ変換に係る指数がγ(一般にγ=2.2)、X座標がxである赤、緑、青の3色の画素回路301にそれぞれ対応する入力画像信号が示す階調がLr(x),Lg(x),Lb(x)でそれぞれ表されている。
また、上式(3)で示されるサイン関数の1次の項の係数S1は、下式(9)によって求められ、コサイン関数の1次の項の係数C1は、下式(10)によって求められる。
そして、サイン関数のn次(nは自然数)の項の係数Snは、下式(11)によって求められ、コサイン関数のn次の項の係数Cnは、下式(12)によって求められる。
つまり、上式(3)の係数S1,S2,S3,C1,C2,C3は、上式(11)および(12)によってそれぞれ求められる。
ここで、電圧降下率δV(x)は、上式(1)で示されたように、電流分布i(x)をX座標がx〜1である区間について積分したものに、電気抵抗rを乗じることで求められる。そこで、まず、仮に上式(3)を積分すると、下式(13)が求められる。
そして、上式(13)を用いて、下式(14)で示される電圧降下率δV(x)が求められる。
また、ここで、予測電圧降下量V(x)は、上式(2)で示されたように、電圧降下率δV(x)をX座標が0〜xである区間について積分したものと、直流成分DCに電気抵抗Rを乗じたものとを合算することで求められる。そこで、まず、上式(14)を積分すると、下式(15)が求められる。
そして、上式(15)を用いて、下式(16)で示される予測電圧降下量V(x)が求められる。
上式(16)のうち、電気抵抗rおよび電気抵抗Rについては、パネル部3の設計によって求められる。また、上式(4)〜(12)で示されたように、各画素回路301に対応する入力画像信号に基づいて、電源線L1から各画素回路301に供給されるものと予測される電流(予測電流)を求め、該予測電流に応じて、直流成分DC、および係数S1,S2,S3,C1,C2,C3が導出される。すなわち、−r×{(C1/4π2)+(C2/16π2)+(C3/36π2)}+(R×DC)が定数として算出され、その他、xの1次および2次項、正弦関数のn次の項、および余弦関数のn次の項の各係数がそれぞれ算出される。
なお、上式(16)で示される予測電圧降下量V(x)の近似式は、有機EL表示部30の一端側を基準とした各画素回路301の位置を示す変数xに係る1次および2次の項と、該変数xに係る三角関数の項とを含む。ここで、三角関数の項は、各画素回路301に係る予測電流の大小に起因して生じるものと予測される電源電圧の変動を示している。
そして、上式(16)で示されるように、変数xに係る1次の項は、変数xと係数とを乗じた項を含む。より具体的には、変数xに係る1次の項が、(係数A)×xの形式で示される。また、変数xに係る2次の項が、変数xの2乗と係数とを乗じた項を含む。より具体的には、変数xに係る2次の項が、(係数B)×x2の形式で示される。
また、上式(16)で示されるように、三角関数の項には、各画素回路301の位置を示す変数xに係る正弦(サイン)と係数とを乗じた正弦関数の項と、該変数xに係る余弦(コサイン)と係数とを乗じた余弦関数の項とが含まれる。具体的には、三角関数の項が、変数xの異なる2以上の自然数倍(ここでは、1〜3倍)に係る正弦(サイン)と係数とを乗じた正弦関数の項、および変数xの異なる2以上の自然数倍(ここでは、1〜3倍)に係る余弦(コサイン)と係数とを乗じた余弦関数の項を含む。より詳細には、変数xの最大値をxmax(ここでは、1)とすると、変数xに係る1次の正弦関数の項が、(係数C)×sin{2π×(x/xmax)}の形式で示され、変数xに係る1次の余弦関数の項が、(係数D)×cos{2π×(x/xmax)}の形式で示される。そして、変数xに係るn次(nは、1〜3の自然数)の正弦関数の項が、(係数)×sin{2nπ×(x/xmax)}の形式で示され、変数xに係るn次の余弦関数の項が、(係数)×cos{2nπ×(x/xmax)}の形式で示される。
このように、予測電流i(x)をフーリエ級数を利用した形式で近似的に表現することで、上式(4),(9)〜(12)で示されるように、予測電流i(x)を1回積分する計算によって、予測電圧降下量V(x)の近似式が導出される。このため、予測電圧降下量V(x)を求めるための演算量が低減され、入力画像信号から予測電圧降下量V(x)を迅速に導出することが可能となる。
<(B)補正値の決定方法>
ある1つの画素回路301に着目すると、上述したように、トランジスタTdのドレイン電圧Vdが、供給される電源電圧の降下に応じて降下する。そして、トランジスタTdのドレイン電流Idは、ドレイン電圧Vdの降下に応じて降下する。そこで、ここでは、ドレイン電圧Vdの降下量(ドレイン電圧降下量)がdVd、ドレイン電流Idの降下量(ドレイン電流降下量)がdIdである場合に、発光時のトランジスタTdのゲート電圧VgsをdVgs上昇させることで、ドレイン電圧Vdの降下による影響を打ち消す処理を行うものとする。また、トランジスタTdのいわゆる相互コンダクタンスgmは、下式(17)で示される関係を有し、トランジスタTdのいわゆるドレイン抵抗rdは、下式(18)で示される関係を有している。なお、ドレイン抵抗rdは、入力画像信号の階調に応じて変化する。
ここで、上式(17)から下式(19)で示されるドレイン電流降下量dIdの式が導出されるとともに、上式(18)から下式(20)で示されるドレイン電流降下量dIdの式が導出される。
そして、上式(19)のドレイン電流降下量dIdに、上式(20)のドレイン電流降下量dIdが代入されて、計算が行われることで、下式(21)で示されるゲート電圧の上昇量(ゲート電圧上昇量)dVgsが求められる。なお、下式(21)の計算では、トランジスタTdの増幅率μがドレイン抵抗rdと相互コンダクタンスgmとを乗じたものであることが利用されている。
上式(21)で示されるように、ゲート電圧上昇量dVgsは、ドレイン電圧降下量dVdを増幅率μで除することで求められる。なお、本実施形態では、ある画素回路301におけるドレイン電圧降下量dVdは、その画素回路301における予測電圧降下量V(x)に等しい。このため、予測電圧降下量V(x)を増幅率μで除することで、ゲート電圧上昇量dVgsが求められる。したがって、出力画像信号の電圧Vdataが、ゲート電圧上昇量dVgsに応じて上昇されることで、ドレイン電圧Vdの降下による影響が打ち消される。なお、出力画像信号の電圧Vdataの上昇が、発光時のゲート電圧Vgsの上昇に寄与する度合いは、いわゆる書き込み効率αによって決まる。以下では、書き込み効率αが1、すなわち出力画像信号の電圧Vdataの上昇量が、そのまま発光時のゲート電圧上昇量dVgsに反映されるものとして説明する。
<(C)信号処理部の機能的な構成>
図12は、信号処理部20の機能的な構成を示す図である。信号処理部20は、ラインバッファ201、定数・係数導出部202、近似式導出部203、被乗数算出部204、乗数決定部205、ガンマ(γ)変換部206、補正値決定部207、および補正値加算部208を有する。
ラインバッファ201は、外部から順次に入力される入力画像信号を受け付けて、一次的に記憶する。なお、ここでは、入力画像信号が、6ビットの階調(64段階の階調)を表現している例を挙げて説明する。
定数・係数導出部202は、外部から順次に入力される入力画像信号に基づいて、上式(16)で示される予測電圧降下量V(x)の近似式に係る定数および係数を導出する。詳細には、定数・係数導出部202では、上式(4)〜(12)に沿った演算により、各画素回路301に対応する入力画像信号に基づいて、電源線L1から各画素回路301に供給されるものと予測される電流(予測電流)が求められ、更に該予測電流に基づいて、直流成分DC、および係数S1,S2,S3,C1,C2,C3が算出される。そして、具体的には、図13で示されるように、定数・係数導出部202は、電流予測部2021R,2021G,2021B、合算部2022、定数・係数算出部2023を備えている。
電流予測部2021Rは、上式(6)に従った演算により、座標xに係る赤色の画素回路301に対応する入力画像信号が示す階調に基づき、該赤色の画素回路301を流れる電流の予測値(予測電流)Ir(x)を導出する。電流予測部2021Gは、上式(7)に従った演算により、座標xに係る緑色の画素回路301に対応する入力画像信号が示す階調に基づき、該緑色の画素回路301を流れる電流の予測値(予測電流)Ig(x)を導出する。電流予測部2021Bは、上式(8)に従った演算により、座標xに係る青色の画素回路301に対応する入力画像信号が示す階調に基づき、該青色の画素回路301を流れる電流の予測値(予測電流)Ib(x)を導出する。
合算部2022は、上式(5)に従った演算により、各電流予測部2021R,2021G,2021Bから出力される予測電流Ir(x),Ig(x),Ib(x)を合算することで、座標xの画素回路群において発光時に流れるものと予測される電流(予測電流)i(x)を算出する。定数・係数算出部2023は、上式(4),(9)〜(12)に従った演算により、合算部2022で順次に算出される各画素回路群の予測電流i(x)を用いた積分演算によって、直流成分DC、および係数S1,S2,S3,C1,C2,C3を算出する。
近似式導出部203は、定数・係数導出部202で導出された定数および係数から予測電圧降下量V(x)の近似式を導出する。具体的には、定数・係数導出部202で導出された直流成分DC、および係数S1,S2,S3,C1,C2,C3の各値が、上式(16)に代入されるような演算が行われることで、予測電圧降下量V(x)の近似式が導出される。したがって、本実施形態では、定数・係数導出部202と近似式導出部203とが、各画素回路301に供給される電源電圧に係る予測電圧降下量V(x)を示す近似式を算出する部分(近似式算出部)に相当する。
被乗数算出部204は、記憶部21等に格納される三角関数テーブル211を参照しつつ、近似式導出部203で導出された予測電圧降下量V(x)の近似式から、各画素回路群に対応する予測電圧降下量を、被乗数として算出する。ここでは、三角関数テーブル211には、例えば、変数xの各値に対して1次の正弦関数であるsin(2πx)の値が関連付けられて格納されている。したがって、被乗数算出部204は、画像信号が補正される対象となる画素回路群(補正対象画素回路群)のX座標の値と三角関数テーブル211とから、予測電圧降下量V(x)の近似式のうちの三角関数の項の値を導出して、各補正対象画素回路群に対応する予測電圧降下量(すなわち被乗数)を順次に算出する。
乗数決定部205は、記憶部21等に格納される乗数テーブル212を参照することで、ラインバッファ201から入力される各画素回路301に対応する入力画像信号の電位に応じて、増幅率μの逆数1/μを乗数として決定する。ここでは、乗数テーブル212には、赤、緑、青の色毎に入力画像信号の各電位に対して、増幅率の逆数である1/μが関連付けられて格納されている。つまり、乗数決定部205は、乗数テーブル212を参照しつつ、画像信号が補正される対象となる画素回路(補正対象画素回路)に対応する入力画像信号の電位に応じて、対応する増幅率の逆数である1/μを決定する。
なお、増幅率μ、およびその逆数1/μは、環境温度によって変動する。このため、乗数テーブル212に、複数の温度について、赤、緑、青の色毎に入力画像信号の各電位に対して、増幅率μの逆数1/μが関連付けられて格納されており、環境温度に応じて、乗数決定部205によって決定される乗数(1/μ)が変更されることが好ましい。
γ変換部206は、各画素回路301に対応する入力画像信号に対して、いわゆるγ変換を施す。例えば、γ変換部206では、入力画像信号が示す階調が2.2乗されるような変換が行われる。このとき、6ビットの階調を表現する入力画像信号が、8ビットの階調を表現する画像信号(γ変換後の画像信号)に変換される。
補正値決定部207は、被乗数算出部204で算出された予測電圧降下量(すなわち被乗数)に対して、乗数決定部205で決定された増幅率μの逆数1/μ(乗数)を乗じることで、補正値を決定する。換言すれば、入力画像信号に応じたトランジスタTdの増幅率μで、予測電圧降下量を除することで補正値が導出される。
補正値加算部208は、γ変換後の画像信号の電位に対して、補正値決定部207で決定された補正値を加算することで、画像信号に対する補正を行う。このようにして、信号補正部としての補正値加算部208が、γ変換が施された後の画像信号に対して補正を行うことで、出力画像信号を生成する。この出力画像信号は、Xドライバ回路32に対して出力される。
なお、ある画素回路301に対応する入力画像信号について、信号処理部20に入力画像信号が入力されてから補正値決定部207において補正値が決定されるまでに要する時間の方が、γ変換部206においてγ変換が施されるのに要する時間よりも、長くなる。このため、この処理時間の差を、ラインバッファ201における入力画像信号の保持によって調節することで、入力画像信号の入力と、画像信号の補正との間におけるタイミングの調整が行われ、画像信号の補正が正しく行われる。
以上のように、本実施形態に係る画像表示装置1では、各画素回路群における予測電流i(x)をフーリエ級数を利用した形式で近似的に表現することで、少ない演算量で予測電圧降下量V(x)の近似式を求めることが可能である。このため、入力画像信号から予測電圧降下量V(x)を迅速に導出することが可能となる。その結果、外部からの複数フレームの画像信号の入力に応じて、迅速に該複数フレームの画像信号を可視的に出力することが可能となる。したがって、外部からの複数フレームの画像信号の入力に応じた該複数フレームの画像信号の迅速な可視的な出力と、画質の向上とを図ることが可能となる。
また、外部からの複数フレームの画像信号の入力に応じて、迅速に該複数フレームの画像信号を補正して、可視的に出力することが可能であるため、画像信号を一時的に保持するためのバッファメモリの容量が小さくて済む。したがって、画像表示装置1の小型化、ならびに製造における省資源化と低コスト化とを図ることが可能となる。
<変形例>
本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。
◎例えば、上記一実施形態では、図9で示されたように、水平ライン毎に1本の電源線L1と該電源線L1に電源電圧を供給する出力回路311とが設けられたが、複数の画素回路301に対する電源電圧の供給の態様は、これに限られない。例えば、図14で示されるように、水平ライン毎に1本の電源線L1が設けられるとともに、複数本(例えば4本)の電源線L1に対して一括して電源電圧を供給する出力回路311が設けられても良い。具体的には、1つの出力回路311から配線L1Aを介して、複数本(例えば、4本)の電源線L1に対して電源電圧が供給されても良い。
更に、図15で示されるように、複数本(例えば4本)の電源線L1が数画素(例えば4画素)おきに配線L1Bによって電気的に連結されても良い。但し、このような態様では、配線L1Bによって電気的に連結されている複数本(例えば4本)の水平ラインについては、近似的に電源電圧の低下の度合いが同様であるものと考えて、予測電圧降下量V(x)の近似式を導出することが好ましい。
◎また、上記一実施形態では、各画素回路301について、予測電圧降下量を、入力画像信号に対応する増幅率μで除することで、画像信号の補正値を決定したが、これに限られない。例えば、入力画像信号が示す階調(データ階調)を基準として、データ階調が1階調変化する毎にトランジスタTdのドレイン電流Idが変化する量で、トランジスタTdにおけるドレイン電流降下量dIdを除するとの考え方に沿って、入力画像信号に対する補正値を決定しても良い。なお、予測電圧降下量V(x)の近似式の導出方法については、上記実施形態と同様な方法で良く、以下では、本一変形例に係る補正値の決定方法、および信号処理部20Aの機能的な構成について、順次に説明する。
ここで、入力画像信号の階調をLINdata、入力画像信号の補正値をdLINdataとして、上式(18)で示されるドレイン抵抗rdを用いると、補正値dLINdataは、下式(22)で表される。
上式(22)で示されるように、ドレイン電圧降下量dVdを、ドレイン抵抗rdと、ドレイン電流降下量dIdをデータ階調の変化量dLINdataで除した値とで除することで、補正値dLINdataが求まる。ここで、ドレイン電流降下量dIdをデータ階調の変化量dLINdataで除した値(dId/dLINdata)は、データ階調の変化に対するドレイン電流Idの変化の傾きに相当する。そして、ドレイン抵抗rd、および傾き(dId/dLINdata)は、画素回路301の設計上、入力画像信号が示す階調に対して一義的に決まる。このため、例えば、入力画像信号が示す各階調毎に、ドレイン抵抗rdの逆数と傾き(dId/dLINdata)とを乗じた数値をテーブルに記憶しておくことで、入力画像信号の入力に応じて、対応するドレイン抵抗rdの逆数と傾き(dId/dLINdata)との積を求めることが可能である。
図16は、本一変形例に係る画像表示装置1Aの制御部2Aに含まれる信号処理部20Aの機能的な構成を示す図である。画像表示装置1Aは、上記一実施形態の画像表示装置1と比較して、信号処理部20の一部の構成が、異なる機能を有する構成に変更された信号処理部20Aとなったものである。以下では、信号処理部20と同様な構成については、同じ符号を付して重複説明を省略し、異なる構成について説明する。
図16で示されるように、信号処理部20Aは、ラインバッファ201、定数・係数導出部202、近似式導出部203、被乗数算出部204、乗数決定部205A、γ変換部206A、補正値決定部207A、および補正値加算部208Aを有する。
乗数決定部205Aは、記憶部21等に格納される乗数テーブル212Aを参照することで、ラインバッファ201から入力される入力画像信号の階調から、ドレイン抵抗rdの逆数と、傾き(dId/dLINdata)とを乗じた値{(dId/dLINdata)/rd}を乗数として決定する。ここでは、乗数テーブル212Aには、赤、緑、青の色毎に入力画像信号の各階調に対して、乗数の候補の値{(dId/dLINdata)/rd}が関連付けられて格納されている。つまり、乗数決定部205Aは、乗数テーブル212Aを参照しつつ、補正対象画素回路に対応する入力画像信号の階調に応じて、対応する乗数{(dId/dLINdata)/rd}を決定する。
なお、乗数の候補の値{(dId/dLINdata)/rd}は、環境温度によって変動する。このため、乗数テーブル212Aに、複数の温度について、赤、緑、青の色毎に入力画像信号の各階調に対して乗数の候補の値{(dId/dLINdata)/rd}が関連付けられて格納されており、環境温度に応じて、乗数決定部205Aによって決定される乗数{(dId/dLINdata)/rd}が変更されることが好ましい。
補正値決定部207Aは、被乗数算出部204で算出された予測電圧降下量(すなわち被乗数)に対して、乗数決定部205Aで決定された乗数{(dId/dLINdata)/rd}を乗じることで、補正値を決定する。
補正値加算部208Aは、γ変換前の画像信号(入力画像信号)の電位に対して、補正値決定部207Aで決定された補正値を加算することで、画像信号に対する補正を行う。このようにして、信号補正部としての補正値加算部208Aが、γ変換が施される前の画像信号に対して補正を行う。このとき、6ビットの階調を表現する入力画像信号が、8ビットの階調を表現する画像信号となる。
γ変換部206Aは、補正値加算部208Aで補正された各画素回路301に係る画像信号に対して、いわゆるγ変換を施す。例えば、γ変換部206Aでは、補正後の画像信号が示す階調が2.2乗されるような変換が行われる。このとき、8ビットの階調を表現する補正後の画像信号が、10ビットの階調を表現する出力画像信号(γ変換後の画像信号)に変換される。この出力画像信号は、Xドライバ回路32に対して出力される。
なお、本一変形例に係る画像表示装置1Aと比較して、上記一実施形態に係る画像表示装置1では、γ変換前の画像信号が表現する階調のビット数が少ないため、γ変換に要するハードウェア構成ならびにデータ量の低減が図られる。
◎また、上記一実施形態では、予測電圧降下量V(x)の近似式の三角関数の項に、変数xの1〜3倍に応じた正弦(サイン)と係数とを乗じた項、および変数xの1〜3倍に応じた余弦(コサイン)と係数とを乗じた項が含まれた。すなわち、三角関数の項に、変数xに係る1〜3次の正弦関数の項と、変数xに係る1〜3次の余弦関数の項とが含まれた。しかしながら、これに限られない。例えば、三角関数の項には、少なくとも、変数xに係る1次の正弦関数の項と、変数xに係る1次の余弦関数の項とが含まれれば良い。但し、予測電圧降下量V(x)の近似の精度の観点から言えば、三角関数の項に、変数xに係る1〜3次の正弦関数の項と、変数xに係る1〜3次の余弦関数の項とが含まれることが好ましい。
◎また、上記一実施形態では、画素回路301(図2)の構成上、電源線L1の電位が変化しても、トランジスタTdのゲート電圧Vgsが変化しなかったが、これに限られない。例えば、図17で示されるような電源線L1s,L1dの電位の変動に応じてトランジスタTdのゲート電圧Vgsが変化する画素回路301Aに対しても、本発明を適用することができる。
なお、画素回路301Aは、有機発光ダイオードOLED、トランジスタTd、トランジスタTth、およびコンデンサCsを備えており、発光時に相対的に高電位となる電源線L1dと、発光時に相対的に低電位となる電源線L1sとの間に、有機発光ダイオードOLEDとトランジスタTdとが直列に接続されている。また、トランジスタTdのドレインとゲートとの間に、トランジスタTthが設けられ、該トランジスタTthは、補償制御線L3の電位によって導通状態と非導通状態との間で切り替えられる。また、トランジスタTdのゲートと画像信号線L2とがコンデンサCsを介して接続されている。
このような構成を有する画素回路301Aでは、発光時において、電源線L1sの電位の変動に応じてトランジスタTdのゲート電圧Vgsが変化するとともに、電源線L1dと電源線L1sとの間における電位差(すなわち電源電圧)の低下に起因して、トランジスタTdのドレイン電圧Vdが低下する。したがって、画素回路301Aでは、ゲート電圧Vgsおよびドレイン電圧Vdの双方の低下によって、発光時におけるトランジスタTdのドレイン電流Idが低下する。このような構成では、上記一実施形態で説明した画像信号の補正方法と同様な方法によって、ドレイン電圧Vdの低下に起因するドレイン電流Idの低下を抑制することが可能である。すなわち、本発明は、発光素子と直列に接続される駆動トランジスタにおいて発光時におけるドレイン電圧Vdの低下によってドレイン電流Idが低下する画素回路を備える種々の画像表示装置に対して適用することができる。なお、ゲート電圧Vgsの低下に起因するドレイン電流Idの低下については、別個に画像信号の補正等を行うことで対処すれば良い。
◎また、上記一実施形態では、画素回路群毎に電源電圧の降下、すなわち、予測電圧降下量を求めたが、これに限られない。例えば、画素回路毎に予測電圧降下量を求めるようにしても良い。
◎なお、上記一実施形態では、各水平ラインに対応する入力画像信号については、Yドライバ回路31に最も近い画素回路301側から順に、対応する入力画像信号が順次に入力されても良いし、Yドライバ回路31から最も遠い画素回路301側から順に、対応する入力画像信号が順次に入力されても良い。
◎なお、上記一実施形態では、発光素子が有機発光ダイオードOLEDである場合について説明したが、これに限られず、発光素子が、無機材料等で構成された発光ダイオード等であっても構わない。
◎また、上記一実施形態および上記各変形例の全部または一部について、矛盾のない範囲で組み合わせても構わない。