JP2008208918A - 発泡潤滑剤封入軸受 - Google Patents

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Abstract

【課題】潤滑剤保持力に優れ、外力による変形を受けても潤滑剤滲み出し量を必要最小限に抑制するとともに初期なじみ性に優れ、長寿命で低コストであり、生産性にも優れる軸受を提供する。
【解決手段】軸受31の内部にグリースまたは潤滑油である初期用潤滑剤37と、発泡潤滑剤38とが共存する軸受31であって、上記発泡潤滑剤38は、発泡・硬化して多孔質化する樹脂内に潤滑成分を含んでなり、上記軸受31の初期潤滑において、上記初期用潤滑剤37が上記軸受1の転がり部や摺動部に存在する。
【選択図】図5

Description

本発明はグリースまたは潤滑油である初期用潤滑剤と、発泡潤滑剤とが共存する発泡潤滑剤封入軸受に関する。
一般に、自動車や産業用機械に代表されるようなほとんどの機械の摺動部や回転部において転がり軸受が使用されている。通常、転がり軸受は、その内部にグリースを充填して転動体と軸受内外輪および保持器相互の摩擦面を潤滑しており、充填されたグリースが外部へ流出しないように、また、その内部へ塵や水分等が侵入しないように、シール等の密封装置が設けられている。しかし、密封装置付きの転がり軸受であっても、グリースを完全に密封することは困難であり、長時間使用すると徐々に流出したり、軸受内に外部から侵入した水分によってグリースが徐々に劣化することがある。このようなグリースの密封不良および劣化防止に関する問題点を解決するべく、潤滑油を増ちょうさせて保形性を持たせたグリースや、液体潤滑剤を保持してその飛散や垂れ落ちを防止できる固形潤滑剤も知られている。
例えば、潤滑油やグリースに、超高分子量ポリオレフィン、またはウレタン樹脂およびその硬化剤を混合し、樹脂の分子間に液状の潤滑成分を保持させて徐々に染み出る物性を持たせた固形潤滑剤が知られている(特許文献1〜特許文献3参照)。
また、潤滑剤の存在下でポリウレタン原料であるポリオールとジイソシアネートを潤滑成分中で反応させた自己潤滑性のポリウレタンエラストマーが知られている(特許文献4参照)。
発泡して連通気孔を形成した柔軟な樹脂に潤滑油を含浸し、その気孔内に潤滑油を保持させた含油固形潤滑剤も軸受や等速ジョイントの内部に充填して使用されることが知られている(特許文献5参照)。
このような固形潤滑剤は、軸受に封入して固化させると、潤滑油を徐々に染み出させるものであり、これを用いると潤滑油の補充のためのメンテナンスが不要になり、水分の多い厳しい使用環境や強い慣性力の働く環境などでも軸受寿命の長期化に役立つ場合が多い。
しかしながら、上記した従来技術による固形潤滑剤を充填した転がり軸受では、寿命が短い、高速回転においては焼きつきやすい、そして発熱が大きくなるために母材である樹脂成分が溶融してしまうために使用できないという欠点がある。また、フルパック仕様においては、前述固形潤滑剤を軸受内で固化させた後冷却する過程において、固形潤滑剤が収縮するために潤滑剤自身が転動体を抱きこんでしまい、回転トルクが大きくなりやすく発熱しやすいという問題点がある。
また、このような固形潤滑剤を製造する工程では、潤滑油やグリースを確実に含浸させるために多くの製造工程が必要になり、これでは低コスト化の要求に応えることも困難である。
また、多孔性固形潤滑剤封入軸受も、使い方によっては外力や温度上昇による初期の潤滑剤の放出が少ない場合がある。また、耐久性を考慮すると樹脂成分からの潤滑成分の放出は必要最小限であることが望ましい。潤滑成分の放出速度が小さければ、摺動部などに必要量の潤滑剤が到達する速度は遅くなる。そのため、初期に潤滑剤が枯渇状態となり、摺動部や転がり部でも摩耗や潤滑不良を引き起こす場合がある。
特開平6−41569号公報 特開平6−172770号公報 特開2000−319681号公報 特開平11−286601号公報 特開平9−42297号公報
本発明は、このような問題点に対処するためになされたものであり、潤滑剤保持力に優れ、外力による変形を受けても潤滑剤の滲み出し量を必要最小限に抑制するとともに初期潤滑におけるなじみ性に優れ、長寿命で低コストであり、生産性にも優れる発泡潤滑剤封入軸受を提供することを目的とする。
本発明の発泡潤滑剤封入軸受は、軸受内部にグリースまたは潤滑油である初期用潤滑剤と、発泡潤滑剤とが共存する軸受であって、上記発泡潤滑剤は、発泡・硬化して多孔質化する樹脂内に潤滑成分を含んでなり、上記軸受の初期潤滑において、上記初期用潤滑剤が上記軸受の摺動部または転がり部に存在することを特徴とする。
本発明において「初期潤滑」とは軸受の作動開始直後において発泡潤滑剤より潤滑成分が軸受の摺動部や転がり部に滲み出してこない状態から、軸受の作動にともない発泡潤滑剤より潤滑成分が軸受の摺動部などに滲み出してくるまでの期間における潤滑のことをいう。
上記発泡潤滑剤は、発泡・硬化して多孔質化する樹脂がゴム状弾性を有し、該樹脂内に含まれる潤滑成分がゴム状弾性体の変形により滲出性を有することを特徴とする。
上記発泡・硬化して多孔質化する樹脂がポリウレタン樹脂であることを特徴とする。
また、上記発泡・硬化して多孔質化する樹脂の連続気泡率が 50%以上であることを特徴とする。
また、上記軸受は、転がり軸受であることを特徴とする。
本発明の発泡潤滑剤封入軸受は、グリースまたは潤滑油である初期用潤滑剤と、発泡潤滑剤とが軸受内部に共存する軸受であって、上記発泡潤滑剤は、発泡・硬化して多孔質化する樹脂内に潤滑成分を含んでなり、上記軸受の初期潤滑において、上記初期用潤滑剤が軸受の摺動部や転がり部に存在するので、発泡潤滑剤より潤滑成分が十分に滲み出してくるまでの初期潤滑において潤滑に寄与するとともに、初期潤滑以降の発泡潤滑剤より滲み出してくる潤滑成分に潤滑機能をつなぐことができる。
このため、本発明の軸受は初期潤滑から不足することなく継続して摺動部などに潤滑成分が十分に存在するので、初期なじみ性に優れ、長寿命で低コスト化の要望を満たすことができる。
本発明に用いられる発泡潤滑剤は樹脂を発泡・硬化して多孔質化した固形物であり、かつ樹脂が発泡・硬化するときに、潤滑成分が該樹脂内に保持される。このため、樹脂のみで発泡・硬化して得られる発泡樹脂に潤滑成分を含浸させる場合に比較して、発泡潤滑剤中の潤滑成分の保持量が単なる気孔内の含浸による保持量よりも多くなるとともに、軸受の運転時において発泡潤滑剤中より潤滑を必要とする摺動部などの周囲に潤滑油が徐放されるので、高速回転でも運転が可能である。
初期潤滑において、グリースまたは潤滑油である初期用潤滑剤が潤滑剤として作用することができるので、初期用潤滑剤を発泡潤滑剤と共存させない場合に比較して、発泡潤滑剤からの潤滑成分の滲み出し速度をさらに小さく設定できる。そのため、長期間にわたって必要最小限の潤滑成分を安定に摺動部などに供給することができ、軸受をさらに長寿命化させることができる。
また、発泡潤滑剤を封入することで、軸受の摺動部近くに潤滑剤が存在でき、グリースまたは潤滑油単独の潤滑と比較して、より潤滑剤が摺動部位に供給されやすい。その上、多孔質な部分を多く有するので、軸受の軽量化を図ることができる。
本発明の発泡潤滑剤封入軸受を図面に基づいて具体的に説明する。図5は本発明の一実施例に係る深溝玉軸受の断面図である。
図5に示すように軸受31は、内輪32と、内輪32と同心に配置された外輪33と、これら内、外輪間に介在する複数個の転動体34と、この複数個の転動体34を保持する保持器36と、外輪33等に固定されるシール部材35とにより構成される。発泡潤滑剤38が、内輪32と、外輪33と、転動体34と、シール部材35とに囲まれた空間に配置され、グリースまたは潤滑油である初期用潤滑剤37が、転がり部である転動体34の近傍に配置される形で、発泡潤滑剤38と、初期用潤滑剤37とが軸受内部において共存している。発泡潤滑剤38および初期用潤滑剤37の封入方法等については後述する。
本発明の発泡潤滑剤封入軸受において、発泡潤滑剤中に含浸された状態で含まれる潤滑成分は、外力による発泡体の変形によっても急激に染み出すことがなく、潤滑成分を効率よく摺動部などに染み出させて用いることができる。その結果、該軸受は潤滑成分量が必要最小限でよく、長寿命で高速回転でも運転が可能である。
発泡潤滑剤は、「遠心力、圧縮、屈曲、膨張などの外的な応力等によって外部に潤滑成分を徐放する」ので、回転初期には、潤滑成分が摺動部などに十分存在していない場合がある。初期用潤滑剤は、前述の外的応力によって軸受内を移動できる。よって、軸受の転動体近傍、内外輪転走面近傍、保持器近傍に初期用潤滑剤を少量封入しただけでも、軸受転走面などに素早く移動し、発泡潤滑剤から潤滑成分が十分に放出されるまでの初期潤滑における潤滑剤として作用することができる。
本発明において、発泡潤滑剤の潤滑成分は、樹脂の柔軟性により、例えば圧縮、膨張、屈曲、ねじりなどの外力による変形により潤滑剤を滲みださせて樹脂の分子間から外部に徐放できる。この際、滲み出す潤滑油などの潤滑成分量は、外力の大きさに応じて弾性変形する程度を樹脂の選択などによって変えることにより、必要最小限にすることができる。
また、本発明に用いる発泡潤滑剤において樹脂は、発泡により表面積が大きくなっており、滲み出した余剰の潤滑成分である潤滑油を再び発泡体の気泡内に一時的に保持することもできて滲み出す潤滑油量は安定しており、また樹脂内に潤滑油を保持させるとともに発泡体の気泡内に含浸させることによって非発泡の状態より潤滑油の保持量も多くなる。
その上、本発明に用いる発泡潤滑剤は、非発泡体と比較して屈曲時に必要なエネルギーが非常に小さく、潤滑油を高密度に保持しながら柔軟な変形が可能である。よって、該発泡潤滑剤を固化させた後冷却する過程において、発泡潤滑剤が収縮し転動体を抱き込んだとしても屈曲・変形時に必要なエネルギーが小さいために容易に変形することができ、回転トルクが大きくなるという問題を防ぐことができる。また、発泡部分すなわち多孔質な部分を多く持つため、軽量化の点でも有利である。
また、本発明に用いる発泡潤滑剤は潤滑成分と、樹脂とを含む混合物を発泡・硬化させるだけであるので、特別な設備も不要であり、任意の場所に充填して成形することが可能である。
また、上記混合物の配合成分の配合量をコントロールすることにより発泡潤滑剤の密度を変化させることができる。
本発明において発泡潤滑剤を構成する発泡・硬化して多孔質化する樹脂としては、発泡・硬化後にゴム状弾性を有し、変形により潤滑成分の滲出性を有するものが好ましい。
発泡・硬化は、樹脂生成時に発泡・硬化させる形式であっても、樹脂に発泡剤を配合して成形時に発泡・硬化させる形式であってもよい。ここで硬化は架橋反応および/または液状物が固体化する現象を意味する。また、ゴム状弾性とは、ゴム弾性を意味するとともに、外力により加えられた変形がその外力を無くすことにより元の形状に復帰することを意味する。
発泡・硬化して多孔質化する樹脂としては、ゴムおよび樹脂を挙げることができる。
ゴムとしては、天然ゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、シリコーンゴム、ウレタンエラストマー、フッ素ゴム、クロロスルフォンゴムなどの各種ゴムが挙げられる。
また、プラスチックとしては、ポリウレタン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド4,6樹脂、ポリアミド6,6樹脂、ポリアミド6T樹脂、ポリアミド9T樹脂などの汎用プラスチックやエンジニアリングプラスチックが挙げられる。
上記樹脂の中で、容易に発泡・硬化して多孔質化するポリウレタン樹脂が好ましい。
本発明に使用できるポリウレタン樹脂は、イソシアネートとポリオールとの反応による発泡・硬化物であるが、分子内にイソシアネート基(−NCO)を有するウレタンプレポリマーの発泡・硬化物であることが好ましい。このイソシアネート基は他の置換基によってブロックされていてもよい。分子内に含まれるイソシアネート基は、分子鎖末端であっても、あるいは分子鎖内から分岐した側鎖末端に含まれていてもよい。また、ウレタンプレポリマーは分子鎖内にウレタン結合を有していてもよい。
ウレタンプレポリマーは、活性水素基を有する化合物とポリイソシアネートとの反応によって得ることができる。
活性水素基を有する化合物としては低分子ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ひまし油系ポリオール等が挙げられる。これらは単独で、または2種類以上の混合物として使用することができる。低分子ポリオールとしては、2価のもの例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、水添ビスフェノールA等、3価以上のもの(3〜8価のもの)例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、シュークローズ等が挙げられる。
ポリエーテル系ポリオールとしては上記低分子ポリオールのアルキレンオキサイド(炭素数2〜4のアルキレンオキサイド、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド)付加物およびアルキレンオキサイドの開環重合物が挙げられ、具体的にはポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールが含まれる。
ポリエステル系ポリオールとしては、ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオールおよびポリエーテルエステルポリオール等が挙げられる。ポリエステルポリオールはカルボン酸(脂肪族飽和または不飽和カルボン酸、例えば、アジピン酸、アゼライン酸、ドデカン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、二量化リノール酸およびまたは芳香族カルボン酸、例えば、フタル酸、イソフタル酸)とポリオール(上記低分子ポリオールおよび/またはポリエーテルポリオール)との縮合重合により得られる。
ポリカプロラクトンポリオールは、グリコール類やトリオール類の重合開始剤にε-カプロラクトン、α-メチル-ε-カプロラクトン、ε-メチル-ε-カプロラクトン等を有機金属化合物、金属キレート化合物、脂肪酸金属アシル化物等の触媒の存在下で付加重合により得られる。ポリエーテルエステルポリオールには、末端にカルボキシル基および/またはOH基を有するポリエステルにアルキレンオキサイド例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等を付加反応させて得られる。ひまし油系ポリオールとしては、ひまし油およびひまし油またはひまし油脂肪酸と上記低分子ポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールとのエステル交換あるいは、エステル化ポリオールが挙げられる。
ポリイソシアネートとしては、芳香族ジイソシアネート、脂肪族または脂環式およびポリイソシアネート化合物がある。
芳香族ジイソシアネートは、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネートおよびその混合物、1,5-ナフチレンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネートが挙げられる。
脂肪族または脂環式ジイソシアネートは、例えば、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,12-ドデカンジイソシアネート、1,3-シクロブタンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、イソプロパンジイソシアネート、2,4-ヘキサヒドロトルイレンジイソシアネート、2,6-ヘキサヒドロトルイレンジイソシアネート、1,3-ヘキサヒドロフェニルジイソシアネート、1,4-ヘキサヒドロフェニルジイソシアネート、2,4′パーヒドロジフェニルメタンジイソシアネート、4,4′-パーヒドロジフェニルメタンジイソシアネートが挙げられる。
ポリイソシアネート化合物としては、4,4′,4″-トリフェニルメタントリイソシアネート、4,6,4′-ジフェニルトリイソシアネート、2,4,4′-ジフェニルエーテルトリイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートが挙げられる。
また、これらイソシアネートの一部をビウレット、アロファネート、カルボジイミド、オキサゾリドン、アミド、イミド等に変性したものが挙げられる。
本発明に好適なウレタンプレポリマーとしては、注型用ウレタンプレポリマーとして知られている、ポリラクトンエステルポリオール、ポリエーテルポリオールにポリイソシアネートを付加重合させて得られるプレポリマー等が挙げられる。
上記ポリラクトンエステルポリオールはカプロラクトンを開環反応させて得られるポリラクトンエステルポリオールに短鎖ポリオールの存在下、ポリイソシアネートを付加重合させたウレタンプレポリマーが好ましい。
上記ポリエーテルポリオールとしては、アルキレンオキサイドの付加物または開環重合物が挙げられ、これらとポリイソシアネートを付加重合させたウレタンプレポリマーが好ましい。
本発明に好適に使用できるウレタンプレポリマーの市販品を例示すれば、ダイセル化学社製の商品名プラクセルEPが挙げられる。プラクセルEPは室温以上の融点を有する白色固体のウレタンプレポリマーである。また、ポリエーテルポリオールを例示すれば旭硝子社製の商品名プレミノールが挙げられる。プレミノールは 5000〜12000 の分子量を有するポリエーテルポリオールである。
上記ウレタンプレポリマーを硬化させる硬化剤としては、3,3′-ジクロロ-4,4′-ジアミノジフェニルメタン(以下、MOCAと記す)や4,4′-ジアミノ-3,3′-ジエチル-5,5′-ジメチルジフェニルメタン、トリメチレン-ビス-(4-アミノベンゾアート)、ビス(メチルチオ)-2,4-トルエンジアミン、ビス(メチルチオ)-2,6-トルエンジアミン、メチルチオトルエンジアミン、3,5−ジエチルトルエン-2,4-ジアミン、3,5-ジエチルトルエン-2,6-ジアミンに代表される芳香族ポリアミン、上記ポリイソシアネート、1,4-ブタングリコールやトリメチロールプロパンに代表される低分子ポリオール、ポリエーテルポリオール、ひまし油系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、水酸基末端液状ポリブタジエン、水酸基末端液状ポリイソプレン、水酸基末端ポリオレフィン系ポリオールやこれら化合物の末端水酸基をイソシアネート基やエポキシ基などで変性した化合物に代表される2個以上の水酸基を有する液状ゴム等を単独でまたは併用して用いることができる。これらの中で発泡性とゴム状弾性を両立でき、工業上容易に入手できる芳香族ポリアミンがポリラクトンエステルポリオールとポリイソシアネートを付加重合させたウレタンプレポリマーを硬化させるのに好ましい。
発泡潤滑剤を得るために樹脂を発泡させる手段としては、周知の発泡手段を採用すればよく、例えば、揮発性ガスを化学反応により生成する化学的発泡方法、水、アセトン、ヘキサン等の比較的沸点の低い有機溶媒を加熱し、気化させる物理的手法や、窒素などの不活性ガスや空気を外部から吹き込む機械的発泡方法、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、アゾジカルボンアミド(ADCA)等のように加熱処理や光照射によって化学分解させ、窒素ガスなどを発生させる分解型発泡剤を使用するなどの方法が挙げられる。
本発明に使用するウレタンプレポリマーは分子内にイソシアネート基を有するので、水を発泡剤として用いて、イソシアネート基と水分子との化学反応によって生じる二酸化炭素による化学的発泡方法を用いることが好ましい。また、この方法は連続気泡が生成しやすいので好ましい。
また、このような反応を伴う化学的発泡方法を用いる場合には必要に応じて触媒を使用することが好ましく、例えば、3級アミン系触媒や有機金属触媒などが用いられる。3級アミン系触媒としてはモノアミン類、ジアミン類、トリアミン類、環状アミン類、アルコールアミン類、エーテルアミン類、イミダゾール誘導体、酸ブロックアミン触媒などが挙げられる。
また、有機金属触媒としてはスタナオクタエート、ジブチルチンジアセテート、ジブチルチンジラウレート、ジブチルチンメルカプチド、ジブチルチンチオカルボキシレート、ジブチルチンマレエート、ジオクチルチンジメルカプチド、ジオクチルチンチオカルボキシレート、オクテン酸塩などが挙げられる。また、反応のバランスを整えるなどの目的でこれら複数種類を混合して用いてもよい。
上記樹脂に限られることなく、ウレタン系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリ酢酸ビニル系接着剤、ポリイミド系接着剤など各種接着剤を発泡および硬化させて使用することもできる。
本発明において発泡・硬化して多孔質化する樹脂中には必要に応じて各種添加剤を用いることができる。添加剤としてはヒンダードフェノール系に代表される酸化防止剤、補強剤(カ−ボンブラック、ホワイトカーボン、コロイダルシリカなど)、無機充填剤(炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、クレイ、硅石粉など)老化防止剤、難燃剤、金属不活性剤、帯電防止剤、防黴剤やフィラーおよび着色剤などが挙げられる。
上記発泡・硬化して多孔質化する樹脂内に含浸できる潤滑成分は、発泡体を形成する固形成分を溶解しないものであれば使用できる。潤滑成分としては、例えば潤滑油、グリース、ワックスなどを単独で、もしくは2種類以上組み合わせて使用できる。
潤滑油としては、パラフィン系やナフテン系の鉱油、エステル系合成油、エーテル系合成油、炭化水素系合成油、GTL基油、フッ素油、シリコーン油等が挙げられる。これらは単独でも混合油としても使用できる。
上記発泡・硬化して多孔質化する樹脂と潤滑油が極性などの化学的な相性によって溶解、分散しない場合には、粘度の近い潤滑油を使用することで、物理的に混合しやすくなり、潤滑油の偏析を防ぐことが可能となる。
グリースは、基油に増ちょう剤を加えたものであり、基油としては上述の潤滑油を挙げることができる。増ちょう剤としては、リチウム石けん、リチウムコンプレックス石けん、カルシウム石けん、カルシウムコンプレックス石けん、アルミニウム石けん、アルミニウムコンプレックス石けん等の石けん類、ジウレア化合物、ポリウレア化合物等のウレア系化合物が挙げられるが、特に限定されるものではない。
ジウレア化合物は、例えばジイソシアネートとモノアミンの反応で得られる。ジイソシアネートとしては、フェニレンジイソシアネート、ジフェニルジイソシアネート、フェニルジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、オクタデカンジイソシアネート、デカンジイソシアネート、へキサンジイソシアネート等が挙げられる。
モノアミンとしては、オクチルアミン、ドデシルアミン、へキサデシルアミン、オクタデシルアミン、オレイルアミン、アニリン、p-トルイジン、シクロヘキシルアミン等が挙げられる。
ポリウレア化合物は、例えば、ジイソシアネートとモノアミンおよびジアミンとの反応で得られる。ジイソシアネート、モノアミンとしては、ジウレア化合物の生成に用いられるものと同様のものが挙げられ、ジアミンとしては、エチレンジアミン、プロパンジアミン、ブタンジアミン、ヘキサンジアミン、オクタンジアミン、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、キシレンジアミン等が挙げられる。
上記グリースにおける基油の配合割合は、グリース成分全体に対して、基油が 1〜98 重量%、好ましくは 5〜95 重量%である。基油が 1 重量%未満であると、潤滑油を必要箇所に十分に供給することが困難になる。また 98 重量%より多いときには、低温でも固まらずに液状のままとなる。
ワックスとしては、炭化水素系合成ワックス、ポリエチレンワックス、脂肪酸エステル系ワックス、脂肪酸アミド系ワックス、ケトン・アミン類、水素硬化油などを挙げることができる。これらのワックスに油を混合してもよく、使用する油成分としては上述の潤滑油と同様のものを用いることができる。
以上述べた潤滑成分には、さらに二硫化モリブデン、グラファイト等の固体潤滑剤、有機モリブデン等の摩擦調整剤、アミン、脂肪酸、油脂類等の油性剤、アミン系、フェノール系などの酸化防止剤、石油スルフォネート、ジノニルナフタレンスルフォネート、ソルビタンエステルなどの錆止め剤、イオウ系、イオウ−リン系化合物などの極圧剤、有機亜鉛、リン系化合物などの摩耗防止剤、ベンゾトリアゾール、亜硝酸ソーダなどの金属不活性剤、ポリメタクリレート、ポリスチレンなどの粘度指数向上剤などの各種添加剤を含んでいてもよい。
本発明に用いる発泡潤滑剤は、上記潤滑成分と、樹脂と、硬化剤と、発泡剤とを含む混合物を発泡・硬化させて得られる。
上記潤滑成分の配合割合は、混合物全体に対して、1〜90 重量%、好ましくは 5〜80 重量%である。潤滑成分が 1 重量%未満であると、潤滑成分の供給量が少なく、十分な寿命を得ることができない、または潤滑剤不足により摩擦係数が増大し摩耗の原因になる。90 重量%より多いときには固化しなくなる。
樹脂の配合割合は、混合物全体に対して、8〜98 重量%、好ましくは 20〜80 重量%である。8 重量%より少ないときは固化せず、98 重量%より多いときには潤滑成分の供給量が少なく、十分な寿命を得ることができない。
上記硬化剤の配合割合は、樹脂の配合量と発泡倍率により、上記発泡剤の配合割合は、後述する発泡倍率との関係でそれぞれ定まる。
発泡潤滑剤を製造するときの各成分を混合する方法としては、特に限定されることなく、例えばヘンシェルミキサー、リボンミキサー、ジューサーミキサー、ミキシングヘッド等、一般に用いられる撹拌機を使用して混合することができる。
上記混合物は、市販のシリコーン系整泡剤などの界面活性剤を使用し、各原料分子を均一に分散させておくことが好ましい。また、この整泡剤の種類によって表面張力を制御し、生じる気泡の種類を連続気泡または独立気泡に制御することが可能となる。このような界面活性剤としては陰イオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤、両性界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤などが挙げられる。
本発明に用いる発泡潤滑剤は、発泡・硬化して多孔質化する樹脂内に潤滑成分を含んでなり、圧縮、屈曲、遠心力および温度上昇に伴う気泡の膨張などの外力によって潤滑油を外部に供給することが可能なものである。
本発明において発泡潤滑剤は、潤滑成分の存在下で樹脂の発泡反応と硬化反応とを同時に行なわせる反応型含浸法を採用することが望ましい。このようにすると潤滑成分を樹脂内部に高充填することが可能となり、その後には潤滑剤を含浸して補充する後含浸工程を省略できる。
これに対して発泡固形体をあらかじめ成形しておき、これに潤滑成分を含浸させる後含浸法だけでは、樹脂内部に十分な量の液体潤滑成分が滲み込まないので、潤滑剤保持力が十分でなく、短時間で潤滑油が放出されて長期的に使用すると潤滑油が供給不足となる場合がある。このため、後含浸工程は、反応型含浸法の補助手段として採用することが好ましい。
発泡・硬化時において発泡により多孔質化される際に生成させる気泡は気泡が連通している連続気泡であることが好ましい。外部応力によって潤滑成分を樹脂の表面から連続気泡を介して外部に直接供給するためである。気泡間が連通していない独立気泡の場合は樹脂中の潤滑成分の全量が一時的に独立気泡中に隔離され気泡間での移動が困難となり、必要なときに転がり部や摺動部に十分供給されない場合がある。
本発明において発泡潤滑剤の連続気泡率は 50%以上が好ましく、より好ましくは 70%以上である。連続気泡率が 50%未満の場合は、樹脂内の潤滑成分が一時的に独立気泡中に取り込まれている割合が多くなり、必要な時に外部へ供給されない場合がある。
本発明に用いる発泡潤滑剤の連続気泡率は以下の手順で算出できる。
(1)発泡硬化した発泡潤滑剤を適当な大きさにカットし、試料Aを得る。試料Aの重量を測定する。
(2)試料Aを 3 時間ソックスレー洗浄(溶剤:石油ベンジン)する。その後 80℃で 2 時間恒温槽に放置し、有機溶剤を完全に乾燥させ、試料Bを得る。試料Bの重量を測定する。
(3)連続気泡率を以下の手順で算出する。
連続気泡率=(1−(試料Bの樹脂重量−試料Aの樹脂重量)/試料Aの潤滑成分重量)×100
なお、試料A、Bの樹脂重量、潤滑成分重量は、試料A、Bの重量に組成の仕込み割合を乗じて算出する。
連続していない独立気泡中に取り込まれた潤滑成分は 3 時間ソックスレー洗浄では外部へ放出されないため試料Bの重量を減少させることがないので、上記の操作で試料Bの重量減少分は連続気泡からの潤滑成分の放出によるものとして連続気泡率が算出できる。
本発明に用いる発泡潤滑剤の発泡倍率は 1.1〜100 倍であることが好ましい。さらに好ましくは 1.1〜10 倍である。なぜなら発泡倍率 1.1 倍未満の場合は気泡体積が小さく、外部応力が加わったときに変形を許容できないし、または多孔質化した固形物が硬すぎるため、外部応力に追随した変形ができないなどの不具合がある。また、100 倍をこえる場合は外部応力に耐える強度を得ることが困難となり、破損や破壊に至ることがある。
発泡潤滑剤は、軸受内に上記混合物を流し込んだ後、発泡・硬化させてもよく、また常圧で発泡・硬化した後に裁断や研削等で目的の形状に後加工し、軸受内に組み込むこともできる。
また、発泡潤滑剤は柔軟なため、フルパック仕様にしても回転トルクが大きくなりにくく、発熱を抑えることができる。また、外部からの塵や水分等の侵入に対してはシールの役割をも果たす。
形状が複雑な軸受内の任意の部位にも容易に充填することが可能であり、発泡成形体を得るための成形金型や研削工程等も不要であることから、本発明では、混合物を発泡・硬化前に軸受内に流し込み、軸受内において発泡・硬化させる方法を採用することが好ましい。該方法を採用することで、製造工程が簡易となり低コスト化が図れる。
これらの発泡潤滑剤は、各種の周知な形式の軸受に封入することができる。例として、深溝玉軸受、アンギュラ玉軸受、スラスト玉軸受、円筒ころ軸受、針状ころ軸受、スラスト円筒ころ軸受、スラスト針状ころ軸受、円すいころ軸受、スラスト円すいころ軸受、自動調心玉軸受、自動調心ころ軸受、スラスト自動調心ころ軸受、すべり軸受などが挙げられる。また、これらの軸受に対して、シール部材またはシールド板の有無は問わず適用することができる。
軸受への発泡潤滑剤の封入方法の例を、図1〜図3に基づいて説明する。
図1は、本発明の他の実施例に係るラジアル玉軸受(シール部材なし)への封入例を示す模式図である。図1に示すように、軸受外径7より大きい鉄板5もしくはそれに類似する治具の上に内輪2と、外輪3と、内、外輪間に介在する転動体4とを有する軸受1を置き、よく撹拌した発泡直前の発泡潤滑剤成分の混合物6を内輪2と、外輪3と、鉄板5とに囲まれた空間に流し込み、発泡・硬化させる。この場合、混合物6を軸受1内に流し込んだ後にさらに軸受1上部に軸受外径7より大きい鉄板5もしくはそれに類似する治具をかぶせてもよい。鉄板もしくは治具をかぶせる場合、軸受内での発泡潤滑剤の充填率が向上する。混合物6の発泡・硬化終了後に初期用潤滑剤を転動体4近傍に注入し、鉄板5もしくはそれに類似する治具を外して、発泡潤滑剤封入軸受を得る。
図2は、本発明の他の実施例に係るラジアル玉軸受(シール部材付き)への封入例を示す模式図である。図2に示すように、内輪12と、外輪13と、内、外輪間に介在する転動体14と、片側のみに装着されたシール部材15を有する軸受11を、シール部材15を下側にして静置する。そして、よく撹拌した発泡直前の発泡潤滑剤成分の混合物16を軸受11に流し込み、発泡・硬化させる。この場合、図1と同様に軸受内での発泡潤滑剤の充填率が向上させるために、混合物16を軸受11内に流し込んだ後にさらに軸受11上部に軸受外径より大きい鉄板もしくはそれに類似する治具をかぶせてもよい。上側のシール部材は、充填率向上のための治具の代わりとして、発泡過程中に装着してもよいし、発泡・硬化が終わってから軸受11に装着してもよい。混合物16の発泡・硬化終了後に初期用潤滑剤を転動体14近傍に注入し、発泡潤滑剤封入軸受を得る。
図3は本発明の他の実施例に係るスラスト玉軸受への封入例を示す模式図である。図4は、図3にて円筒治具の使用を示す模式図である。図3および図4に示すように、スラスト玉軸受21が収まる金型25を準備し、内輪22と外輪23と、内、外輪間に介在する転動体24とを有する軸受21を設置する。軸受21の内径側からよく撹拌した発泡直前の発泡潤滑剤成分の混合物26を軸受21に流し込み、内径と同径の円筒治具27を内径部に差し込み、発泡・硬化させる。混合物26が発泡・硬化し発泡潤滑剤28となった後、円筒治具27を外して、初期用潤滑剤を転動体24近傍に注入し、金型25を外して、発泡潤滑剤封入軸受を得る。
また、軸受への発泡潤滑剤の封入には、射出成型機等を用いることもできる。この場合、軸受は金型に装着され、スクリュー内で混合された発泡潤滑剤成分である混合物はノズルより軸受内へ封入される。また、混合物の充填には、シリンダーとピストンを備えた周知の定量混合吐出器(混合ディスペンサーとも別称される。)などを用いることもできる。この方法を用いると充填量を簡単に調整でき、作業性を向上させることができる。
軸受に初期用潤滑剤を封入する方法は問わない。軸受に発泡潤滑剤成分の混合物を充填させる前に軸受内やその部品に初期用潤滑剤を塗布しておいてもよいし、軸受に発泡潤滑剤成分の混合物が発泡・硬化した後に注射器(もしくはそれに類似するもの)で目的の場所へ注入してもよい。
初期用潤滑剤を封入等する場所は特に問わない。初期潤滑において、この初期用潤滑剤が転がり部や摺動部に存在するようにするため、軸受内の転がり部や摺動部の近傍に封入することが好ましい。具体的には、転動体近傍、内外輪転走面近傍、保持器近傍に封入する。封入場所の一例としては、例えば図5に示すとおりである(初期用潤滑剤は図中37)。
軸受に封入する初期用潤滑剤の量は、軸受内部の空間容積の1〜30 体積%が好ましい。さらに好ましくは、3〜20 体積%である。少なすぎると初期潤滑として利用する潤滑剤量としては不十分であるし、多すぎると長期にわたって潤滑に寄与する発泡潤滑剤の封入量が少なくなってしまうため、耐久性に問題が生じる。
初期用潤滑剤としてグリースを用いる場合、グリースの増ちょう剤、基油としては、固形潤滑剤中の潤滑成分の一例として挙げたものを用いることができる。同様に各種添加剤を含むこともできる。
該グリースとしては、JIS K 2220 5.3に基づき測定した 60 回混和ちょう度が 300 以上であることが好ましい。ちょう度が 300 未満であると、初期潤滑として寄与するには流動性が足りず、転がり部や摺動部にすばやく供給されない場合がある。
また、該グリースとしては 70℃×24 時間における離油度が、0.7 重量%以上であることが好ましい。離油度が 0.7 重量%未満であると、初期潤滑として寄与するにはグリースから基油の滲み出しが足りず、上記同様、転がり部や摺動部にすばやく供給されない場合がある。
初期用潤滑剤として潤滑油を用いる場合、潤滑油としては、固形潤滑剤中の潤滑成分の一例として挙げたものを用いることができる。
該潤滑油としては、40℃における動粘度が 50 mm2/sec 以上であることが好ましい。動粘度が 50 mm2/sec 未満であると、転がり部や摺動部にすばやく供給されやすいが留まりにくい。また、油膜が形成しにくいため、金属接触が起こりやすい。
実施例1〜実施例4および比較例3に用いる初期用潤滑剤として以下に示すグリースおよび潤滑油を使用した。
<初期潤滑用グリース>
鉱油(タービン100:新日本石油社製)82 g 中で、ジフェニルメタン‐4,4‐ジイソシアナート 9.70 g、p-トルイジン 8.30 g を反応させ、生成したジウレア系化合物を均一に分散させて初期潤滑用グリースを得た。ちょう度を測定したところ、325 であった。また、JIS K 2220に準じて 70℃×24 時間における離油度を測定したところ、0.75 重量%であった。
<初期潤滑用潤滑油>
40℃における動粘度 523 mm2/sec の新日本石油社製スーパーオイルN460
実施例1
表1に示す組成のうち(a)、(d)、(e)を 80℃でよく混合し、次に 120℃で溶解したアミン系硬化剤(b)を加えて素早く混合した。最後に水(c)、アミン系触媒(h)を投入し撹拌して得た混合物を、テーパ軸受(NTN社製、30204 外径サイズ 47 mm )の内部空間に充填した。数秒後に発泡反応が始まり、100℃で 30 分間放置し硬化させた後、転動体近傍に上記初期潤滑用グリース 0.3 g を注射器にて注入して(図1参照)、発泡潤滑剤封入軸受の試験片を得た。得られた試験片を以下に示す初期特性試験および寿命試験に供し、初期特性の発現状況および寿命時間を測定した。また前述の連続気泡率の算出法に基づき発泡潤滑剤の連続気泡率を測定した。これらの結果を表1に併記する。
<実軸受を用いた初期特性試験>
目的の初期特性が得られているか評価するために、得られた軸受について、Fa=Fr=67 N の荷重を負荷し、120℃で 5000 rpm で 10 時間回転させた。試験後分解し、ローラ大端部にすべり痕が見られなかったものを可として「○」を、すべり痕が観察されたものを不可として「×」を記録する。
<実軸受を用いた寿命試験>
初期特性試験が可であったものについて、引き続き耐久試験を行なった。得られた試験片にラジアル荷重 67 N 、スラスト荷重 67 N を負荷し、120℃で 5000 rpm で回転させ、回転軸を駆動している電動機の入力電流が制限電流を超過した時(回転トルクが始動トルクの 2 倍をこえた時)までの寿命時間を測定した。
実施例2
表1に示す組成のうち(a)、(d)、(e)、(i)を 80℃でよく混合し、次に 120℃で溶解した(b)を加えて素早く混合した。最後に(c)、(h)を投入し撹拌して得た混合物を、テーパ軸受(NTN社製、30204 外径サイズ 47 mm )の内部空間に充填した。数秒後に発泡反応が始まり、100℃で 30 分間放置し硬化させた後、転動体近傍に上記初期潤滑用潤滑油 0.3 g を注射器にて注入して(図1参照)、発泡潤滑剤封入軸受の試験片を得た。実施例1同様の項目を測定した。結果を表1に併記する。
実施例3および実施例4
表1に示す組成でポリエーテルポリオール(g)にシリコーン系整泡剤(d)、潤滑油(i)、アミン系触媒(h)、発泡剤としての水(c)を加え、90℃で加熱しよく撹拌した。これにイソシアネート(f)を加えてよく撹拌して得た混合物を、テーパ軸受(NTN社製、30204 外径サイズ 47 mm )の内部空間に充填した。数秒後に発泡反応が始まり、90℃で 15 分間放置し硬化させた後、転動体近傍に表1に示す初期用潤滑剤 0.3 g を注射器にて注入して(図1参照)、発泡潤滑剤封入軸受の試験片を得た。実施例1同様の項目を測定した。結果を表1に併記する。
比較例1
表1に示す組成で実施例2と同様の手順で軸受試験片を作製したが、初期用潤滑剤は封入しなかった。実施例1同様の項目を測定した。結果を表1に併記する。
比較例2
表1に示す組成で実施例3と同様の手順で軸受試験片を作製したが、初期潤滑用グリースは封入しなかった。実施例1同様の項目を測定した。結果を表1に併記する。
比較例3
表1に示す組成で実施例3と同様の手順で軸受試験片を作製したが、シリコーン系整泡剤は使用しなかった。初期用潤滑剤には表1に示す初期潤滑用グリースを用いた。実施例1同様の項目を測定した。結果を表1に併記する。
Figure 2008208918
表1に示した結果でわかるように、実施例1〜実施例4は、良好な潤滑性を保つことができる。
本発明の軸受は、潤滑剤保持力に優れ、外力による変形を受けても潤滑剤の滲み出し量を必要最小限に抑制するとともに初期潤滑におけるなじみ性に優れ、長寿命で低コストであり、生産性にも優れるので、撚線機、電動機器、印刷機、自動車部品、電装補機、建設機械等の各種産業用機械に用いられる軸受として、特に自動車用軸受として好適に利用できる。
本発明の他の実施例に係るラジアル玉軸受(シール部材なし)への封入例を示す模式図である。 本発明の他の実施例に係るラジアル玉軸受(シール部材付き)への封入例を示す模式図である。 本発明の他の実施例に係るスラスト玉軸受(シール部材なし)への封入例を示す模式図である。 図3にて円筒治具の使用を示す模式図である。 本発明の一実施例に係る深溝玉軸受の断面図である。
符号の説明
1、11 ラジアル玉軸受
2、12、22、32 内輪
3、13、23、33 外輪
4、14、24、34 ボール(転動体)
5 鉄板
6、16、26 発泡潤滑剤成分の混合物
7 軸受外径
15、35 シール部材
21 スラスト玉軸受
25 金型
27 円筒治具
28 発泡潤滑剤
31 深溝玉軸受
36 保持器
37 初期用潤滑剤(初期潤滑用グリースまたは初期潤滑用潤滑油)
38 発泡潤滑剤

Claims (5)

  1. 軸受内部にグリースまたは潤滑油である初期用潤滑剤と、発泡潤滑剤とが共存する軸受であって、
    前記発泡潤滑剤は、発泡・硬化して多孔質化する樹脂内に潤滑成分を含んでなり、前記軸受の初期潤滑において、前記初期用潤滑剤が前記軸受の摺動部または転がり部に存在することを特徴とする発泡潤滑剤封入軸受。
  2. 前記発泡潤滑剤は、発泡・硬化して多孔質化する樹脂がゴム状弾性を有し、該樹脂内に含まれる潤滑成分がゴム状弾性体の変形により滲出性を有することを特徴とする請求項1記載の発泡潤滑剤封入軸受。
  3. 前記発泡・硬化して多孔質化する樹脂が、ポリウレタン樹脂であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の発泡潤滑剤封入軸受。
  4. 前記発泡・硬化して多孔質化する樹脂の連続気泡率が 50%以上であることを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3記載の発泡潤滑剤封入軸受。
  5. 前記軸受は、転がり軸受であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項記載の発泡潤滑剤封入軸受。
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