JP2008208607A - 多孔質天然石を利用したサイディング及びサイディング工法 - Google Patents
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Abstract
【課題】サイディングにより、夏期は室内を冷却し、冬期は保温することができ、冷暖房のエネルギー消費を低減して、ヒートアイランド現象の緩和ならびに地球温暖化対策に貢献する。
【解決手段】基板3の表面に溶岩板4を固定し、基板3と溶岩板4の少なくとも一方に溝、凹部等の保水構造を施す。夏期には、保水構造により、水を積極的に壁面に取り込むことによって冷却効果をもたらし、室内温度を低く保持でき、また、冬期においては、溶岩板によって基板が外気と直接触れることなく放熱が抑制され、室内への外気温の影響を緩和できる。
【選択図】図1
【解決手段】基板3の表面に溶岩板4を固定し、基板3と溶岩板4の少なくとも一方に溝、凹部等の保水構造を施す。夏期には、保水構造により、水を積極的に壁面に取り込むことによって冷却効果をもたらし、室内温度を低く保持でき、また、冬期においては、溶岩板によって基板が外気と直接触れることなく放熱が抑制され、室内への外気温の影響を緩和できる。
【選択図】図1
Description
本発明は、建築用外装材に溶岩や軽石等の多孔質天然石を用いたサイディング及びサイディング工法に関する。
従来、建築用の外装材や内装材には、表面に溶岩などの天然石を用いたものが提案されている。例えば、特許文献1に記載されている天然石貼着パネルは、断熱材、断熱紙、及び鉄板製の貼着板からなるサイディングボードの貼着板表面に接着剤で天然原石を切断加工した天然石を貼り付けている。
また、特許文献2に記載されている溶岩製建築用内外装材は、気孔を有する溶岩を板状に加工して、建築物の内外装材としたものである。
特許文献1に記載されている天然石貼着パネルは、金属製サイディング等と同様に、景観を重視したものであり、貼着板の背面に設けられた断熱材が夏期に太陽の直射日光を受けて高温に熱せられた天然石と鉄板製の貼着板と室内との間を断熱して室温の上昇を抑え、冬期に天然石と貼着板が低温になった場合に室温を保持する効果を有しているが、夏期のように外気温が高いときに積極的に室温を下げる効果を得られない問題があった。
一方、特許文献2に記載されている溶岩製建築用内外装材は、主に溶岩が発生する遠赤外線を利用した健康増進効果や暖かい質感や雰囲気をもたらすことを意図しており、これも特許文献1のものと同様、夏期のように外気温が高いときに積極的に室温を下げる効果が得られない問題があった。
そこで、本発明は、前述したような従来の技術における問題を解消し、多孔質天然石外装材により、夏期は室内を冷却し、冬期は保温することができ、冷暖房のエネルギー消費を低減して、ヒートアイランド現象の緩和ならびに地球温暖化対策に貢献することができるサイディング及びサイディング工法を提供することを目的とする。
本発明のサイディングは、金属製、窯業製(セラミック)等の基板の表面に溶岩や軽石などの多孔質天然石板を固定し、基板と多孔質天然石板の少なくとも一方に保水構造を施すようにしたものである。
本発明のサイディングは、保水構造が、基板の表面と多孔質天然石板の裏面の少なくとも一方の面に形成された保水性を有する溝、凹部、または、凸部であることが望ましい。
また、本発明のサイディング工法においては、基板の表面と多孔質天然石板の裏面の少なくとも一方の面に形成した溝内に給水パイプを配設することも望ましい。さらに、保水構造が、多孔質天然石板表面に形成された保水性を有する溝、凹部または凸部であることも望ましい。
また、本発明のサイディング工法においては、基板の表面と多孔質天然石板の裏面の少なくとも一方の面に形成した溝内に給水パイプを配設することも望ましい。さらに、保水構造が、多孔質天然石板表面に形成された保水性を有する溝、凹部または凸部であることも望ましい。
また、本発明のサイディングは、基板の表面に保水性を有する溶岩砂等の多孔質天然石の砂を接着固定するようにしたものである。
本発明によれば、基板と多孔質天然石板の少なくとも一方に保水構造を施すことによって、水を積極的に壁面に取り込んで冷却効果をもたらし、また、基板表面が多孔質天然石板により覆われているため、真夏の炎天下時などの太陽の直射による基板の温度上昇を防止できるので室内温度を低く保持することができる。
また、冬期においては、多孔質天然石板によって基板が外気と直接触れることなく放熱が抑制され、特に、多孔質天然石板は、放置されて乾いた状態では、多孔質の多孔質天然石内の空気によって断熱効果が得られ、かつ、太陽熱を受けた多孔質天然石板から二次的に放射される遠赤外線によって基板が暖められるため、室内への外気温の影響を緩和することができる。
その結果、冷暖房に費やされるエネルギー消費量を低減することができ、現在の社会的ニーズとしてのヒートアイランド現象の緩和、ならびに、地球温暖化対策に貢献することができる。
その結果、冷暖房に費やされるエネルギー消費量を低減することができ、現在の社会的ニーズとしてのヒートアイランド現象の緩和、ならびに、地球温暖化対策に貢献することができる。
また、保水構造を、基板の表面と多孔質天然石板の裏面の少なくとも一方の面に形成された保水性を有する溝、凹部、または、凸部で構成しているため、基板と多孔質天然石板の上方の隙間から取り込まれた水が、これらの溝、凹部、または、凸部の内部に溜まり、これらの場所に溜まった水が徐々に蒸発あるいは流下して基板から効率良く熱を奪い去ることができる。
夏期に給水パイプに冷水を流すことにより、多孔質天然石板や基板の冷却効果をより高めることができる。また、冬期には、給水パイプに空気を取り込むことにより、断熱効果を高めることができる。
保水構造を多孔質天然石板表面に形成された保水性を有する溝、凹部または凸部で構成しているため、多孔質天然石板表面に溜まった水に直接太陽光が当たって蒸発が促進されるため、真夏の炎天下時等において、多孔質天然石板表面の温度上昇を効果的に抑えることができる。
基板の表面に多孔質な溶岩砂等を固着しているため、表面に水を流した場合に保水性に優れており、しかも、基板表面を覆っている砂粒全体の蒸発面積が極めて大きく、水が蒸発する際に多量の気化熱が奪われるため、特に夏期において、基板を効果的に冷却することができる。
また、冬期においては、多孔質天然石板全体の大きな表面積に太陽光が当たるため、基板に放射される遠赤外線の量が多く基板を効果的に暖めることができる。
以下、本発明を実施例の図面に基づいて説明する。本実施例は溶岩を使用した例で説明するが、本発明は溶岩に限定されるものではない。
図1は、本発明のサイディングの実施例であって概念的断面図である。図1(a)のサイディング1においては、断熱材2を室内側の面に取り付けた基板3の表面に、平板状に加工した溶岩板4を複数縦横に並べて固定したものである。
図1は、本発明のサイディングの実施例であって概念的断面図である。図1(a)のサイディング1においては、断熱材2を室内側の面に取り付けた基板3の表面に、平板状に加工した溶岩板4を複数縦横に並べて固定したものである。
基板3は、金属製サイディング材、窯業サイディング材(セラミックス)、木系サイディング材などである。上下左右に隣接する溶岩板4の間には隙間5が設けられており、この隙間5には砂または溶岩砂が固着させてあり、砂の間が細かな水路となり、また、毛細管現象によって細かな水路を水が上昇するので、壁面に水が保持された状態となる。
溶岩板4に上方から水を流したり、また、雨が当たると、水は溶岩板4の上端から隙間5を重力によって落下しながら扇状に拡がって落下し、砂と砂の間の細管による毛細管現象により、さらには溶岩板の微細孔によってサイディング1全体が万遍なく濡れるとともに、上下に隣接する溶岩板4どうしの隙間5に水が貯留される。
夏期においては、溶岩板4の表面が太陽光で熱せられて、水分が蒸発する際に気化熱によって溶岩板4の温度が低下し、基板3を冷却するため、外気温が高い場合でも室温の温度上昇は緩和されて快適に保たれる。
また、冬期においては、基板3の室内側の面に設けられている断熱材2とともに、多孔質の溶岩板4が断熱層を形成し、室内から屋外への熱の移動を妨げるので断熱効果が高まり、暖房費が節約できる。また、多孔質な溶岩板4を用いることにより吸音効果や遮音効果も得られ、さらに溶岩板4を様々な輪郭形状に加工することで、外壁面の景観を趣向性に富んだものとすることができる。
なお、溶岩板4を基板3に固定する方法としては、例えば、溶岩板4と基板3に孔を開けてビスやボルトを通して固定する方法、固定金具に溶岩板4を挟み込んで基板3に取り付ける方法、溶岩板4を基板3に掛け止め金具を用いて掛け止めする方法、あるいは、溶岩板4を直接基板3に接着剤で固着する方法等、種々の方法を用いることができる。
図1(b)に示すサイディング1Aは、平板状に加工した多孔質な溶岩板4Aの下方部分に水が浸透しないようにコーキングKを施したものであり、上方から溶岩板4Aの内部に浸透した水をコーキングKの部分で受け止めることで保水力を高めたものである。
さらに、図1(c)に示すサイディング1Bは、溶岩板4Bの裏面に溝6を形成したものであって、この中に水を通して溶岩板4Bを冷却するようにしたものである。また、溝6の中には給水パイプ7を通してもよく、夏期には、溝6や給水パイプ7内に水を流して溶岩板4Bを冷却することにより、室温を下げることができる。
なお、前記給水パイプ7には、水が外側に漏出する微細な孔を形成しておくことで、前記孔から漏出した水が溶岩板4Bの溝6内に流れ出るようにしてもよい。また、冬期には、溝6や給水パイプ7内に空気を取り込むことで断熱効果を高めることができる。
本実施例においては、溝6は、溶岩板4Bの裏面に設けた一本の横溝としているが、これに限らず縦溝としてもよく、また、複数条の横溝または縦溝としたり、多数の横溝と縦溝とを格子状に組み合わせて構成してもよい。
また、図1(d)に示すサイディング1Cは、溶岩板4Cの裏面側に凹み8を設けたものであって、夏期には溶岩板4Cの上方から供給された水を凹み8の中に水を取り込んで、これを少しずつ落下または蒸発させることで、溶岩板4Cを冷却するようにしたものである。なお、冬期には、凹み8内の空気により断熱効果を高めることができる。
図2に示すサイディングは、別の実施例の断面図であって、図2(a)に示すサイディング1Dは、溶岩板4Dの表面に多数の凹凸9を形成したものであって、これらの凹凸9内に水が保持され、これを少しずつ蒸発させることで、溶岩板4Dが冷却されるようにしたものである。
本実施例においては、長期に亘って設置されている溶岩板4Dには、凹凸9の中に埃が積もり、この埃がさらに保水力を高める。なお、このような凹凸9の代わりに、溶岩板4Dの表面に多数の微細な溝を形成してもよい。
本実施例においては、長期に亘って設置されている溶岩板4Dには、凹凸9の中に埃が積もり、この埃がさらに保水力を高める。なお、このような凹凸9の代わりに、溶岩板4Dの表面に多数の微細な溝を形成してもよい。
図2(b)に示すサイディング1Eは、基板3の表面に上方が楔状に尖った形状の溶岩板4Eを取り付けているもので、上方から供給された水は、基板3と溶岩板4Eとの間で形成される楔状部分に貯留され、ここに溜まった水を少しずつ落下または蒸発させることで、溶岩板4Eや基板3が冷却される。
なお、前記楔状部分に埃が積もることで、保水力がさらに高められる。また、乾燥した冬期には、埃で埋まった楔状部分が断熱効果をもたらす。
なお、前記楔状部分に埃が積もることで、保水力がさらに高められる。また、乾燥した冬期には、埃で埋まった楔状部分が断熱効果をもたらす。
図2(c)に示すサイディング1Fは、基板3の表面に溶岩砂4Fを接着固定したものであり、上方から供給された水は、溶岩砂4Fの間に貯えられ、これが徐々に蒸発することによって気化熱が奪われて基板3が冷却される。
図3は、実施例における、基板の表面構造を示すもので、図3(A)、(B)、(C)、(D)のそれぞれの実施例について、(a)は基板の正面、(b)はその断面を表している。
図3(A)に示す基板3Aは、図示していない溶岩板が装着される表面に複数条の横溝10を形成してあり、隣接する横溝10間は、ところどころ連通溝11によって連通されている。
溶岩板と基板3Aの上端の隙間に侵入した水は、これらの横溝10に取り込まれて貯えられるとともに、少しずつ横溝10に沿って流れて広範囲に拡がりながら、下方に流下したり、蒸発して基板3Aの表面を冷却する。また、連通溝11は、上下に隣接する横溝10間で水を下方に導く役割を果たすものである。
溶岩板と基板3Aの上端の隙間に侵入した水は、これらの横溝10に取り込まれて貯えられるとともに、少しずつ横溝10に沿って流れて広範囲に拡がりながら、下方に流下したり、蒸発して基板3Aの表面を冷却する。また、連通溝11は、上下に隣接する横溝10間で水を下方に導く役割を果たすものである。
図3(B)に示す基板3Bは、表面に前記横溝10と組み合わせて縦溝12が格子状に形成されており、また、隣接する横溝10間は、ところどころ連通溝11で連通しており、図示しない溶岩板と基板3Bの上端の隙間から取り込まれた水は、これらの格子状の横溝10と縦溝12、ならびに、連通溝11に誘導されて基板3Bの表面全体に拡がっていき、基板3Bの表面を冷却する。
図3(C)に示す基板3Cは、断面V字状のカット溝13を水平方向に複数条形成したもので、カット溝13を形成したことにより、多量の水を溝内に保水することができる。
図3(D)に示す基板3Dは、表面を粗面14としたものであり、この粗面14によって溶岩板と基板3Dとの間を流下する水の流れを遅くして、基板3Dを効果的に冷却することができるとともに、基板3Dと溶岩板との間の摩擦が大きくなるため、溶岩板の固定を容易にすることができる。さらに、粗面14は、溶岩砂を付着させる場合にも接着が容易である。
図3(D)に示す基板3Dは、表面を粗面14としたものであり、この粗面14によって溶岩板と基板3Dとの間を流下する水の流れを遅くして、基板3Dを効果的に冷却することができるとともに、基板3Dと溶岩板との間の摩擦が大きくなるため、溶岩板の固定を容易にすることができる。さらに、粗面14は、溶岩砂を付着させる場合にも接着が容易である。
なお、図3に示したそれぞれの基板3A、3B、3C、3Dに溶岩板を固定する場合には、溶岩板と基板との間に水が浸透するように、接着剤以外の固定金具等を使用した固着方法で固定する。
前述した溶岩板や溶岩砂の壁面に、夏期に蔓性植物をプランターとして使用可能な容器を取り付けて育成させることにより、蔓性植物の葉がこれらの壁面に日陰を作り、葉の表面からの水分の蒸発によって、壁面温度を下げることができる。
また、多孔質の溶岩には蔓性の植物の根がからむので、壁面が蔓性植物で覆われることによって緑化され、炭酸ガスの削減にも寄与する。蔓性植物は冬期には枯れるため、直射日光が溶岩板や溶岩砂の壁面に当たって暖めることができる。
前述した溶岩板や溶岩砂の壁面に、夏期に蔓性植物をプランターとして使用可能な容器を取り付けて育成させることにより、蔓性植物の葉がこれらの壁面に日陰を作り、葉の表面からの水分の蒸発によって、壁面温度を下げることができる。
また、多孔質の溶岩には蔓性の植物の根がからむので、壁面が蔓性植物で覆われることによって緑化され、炭酸ガスの削減にも寄与する。蔓性植物は冬期には枯れるため、直射日光が溶岩板や溶岩砂の壁面に当たって暖めることができる。
なお、前述した図1ならびに、図2の(a)、(b)中に示した各種溶岩板は、図3に示した構造の各種基板と適宜組み合わせて用いることができる。また、図1の(c)に示したサイディング1Bにおける溝6内に配設されている給水パイプ7は、図3の(A)あるいは(B)の基板3A、3Bのように表面に溝が形成されているものにおいては、基板の溝内に配設するようにしてもよい。
試験例
窯業製サイディング材を基板として溶岩板を貼り付けたサイディングについて熱的特性試験を実施した。窯業製サイディング材に溶岩板を貼り付けたもの3種類と、対照として溶岩板を貼り付けない窯業製サイディング材のみを用いて各々の熱的特性を測定した。
窯業製サイディング材のベース色と溶岩の色の組み合わせで次の3種類の試験体を作成して試験した。
A:黒色溶岩ボード(ベース:黒、溶岩:黒)
B:赤色溶岩ボード1(ベース:黒、溶岩:赤)
C:赤色溶岩ボード2(ベース:黒、溶岩:赤)
窯業製サイディング材を基板として溶岩板を貼り付けたサイディングについて熱的特性試験を実施した。窯業製サイディング材に溶岩板を貼り付けたもの3種類と、対照として溶岩板を貼り付けない窯業製サイディング材のみを用いて各々の熱的特性を測定した。
窯業製サイディング材のベース色と溶岩の色の組み合わせで次の3種類の試験体を作成して試験した。
A:黒色溶岩ボード(ベース:黒、溶岩:黒)
B:赤色溶岩ボード1(ベース:黒、溶岩:赤)
C:赤色溶岩ボード2(ベース:黒、溶岩:赤)
試験1:表面温度上昇特性の測定
サイディングの表面温度の上昇特性を約850W/m2の放射を与えた際の表面温度の変化を測定した。照射ランプは500Wハロゲンランプ2基を1組として用い、湿らせたボードと乾燥したボードの2つの試験体を同時に測定した。表面温度は放射温度計(OPTEX製:Thermo-Hunter)を用いてサイディングの5箇所を測定し、その平均値から求めた。測定は2分間隔で30分間行った。測定時の気温は17.2℃、相対湿度は81%であった。測定結果を図4に示す。
最も特徴的な温度変化を示したB:赤色溶岩ボード1の結果と、窯業製サイディング材板の測定結果を比較したものが図5である。
乾燥した状態では、窯業製サイディング材よりも温度上昇は早く、かつ高温になる。一方、湿った状態では窯業製サイディング材よりも温度上昇は遅く低温に保たれている。建物外装に用いた場合には、乾燥した状態であれば普通の建材よりも短時間で高温となり、水を与えて湿った状態であれば冷却効果を発揮することになる。
サイディングの表面温度の上昇特性を約850W/m2の放射を与えた際の表面温度の変化を測定した。照射ランプは500Wハロゲンランプ2基を1組として用い、湿らせたボードと乾燥したボードの2つの試験体を同時に測定した。表面温度は放射温度計(OPTEX製:Thermo-Hunter)を用いてサイディングの5箇所を測定し、その平均値から求めた。測定は2分間隔で30分間行った。測定時の気温は17.2℃、相対湿度は81%であった。測定結果を図4に示す。
最も特徴的な温度変化を示したB:赤色溶岩ボード1の結果と、窯業製サイディング材板の測定結果を比較したものが図5である。
乾燥した状態では、窯業製サイディング材よりも温度上昇は早く、かつ高温になる。一方、湿った状態では窯業製サイディング材よりも温度上昇は遅く低温に保たれている。建物外装に用いた場合には、乾燥した状態であれば普通の建材よりも短時間で高温となり、水を与えて湿った状態であれば冷却効果を発揮することになる。
試験2:冷却特性の測定
日射が翳った際の、表面温度の降下特性を次のようにして測定した。試験1の表面温度上昇特性の測定試験の後、ランプを消し、10分間の表面温度変化を測定した。測定方法は上昇時と同様にして実施した。
赤色溶岩ボード1の測定結果と、窯業製サイディング材の測定結果を比較したものが図6である。
初期段階での冷却速度は溶岩ボードの方が速いが、3〜4分後にはほぼ同じ冷却傾向を示した。いずれもアスファルトや厚いコンクリート板と比べれば冷却速度は速く、ヒートアイランドの原因素材にはなりにくい特性を示している。
日射が翳った際の、表面温度の降下特性を次のようにして測定した。試験1の表面温度上昇特性の測定試験の後、ランプを消し、10分間の表面温度変化を測定した。測定方法は上昇時と同様にして実施した。
赤色溶岩ボード1の測定結果と、窯業製サイディング材の測定結果を比較したものが図6である。
初期段階での冷却速度は溶岩ボードの方が速いが、3〜4分後にはほぼ同じ冷却傾向を示した。いずれもアスファルトや厚いコンクリート板と比べれば冷却速度は速く、ヒートアイランドの原因素材にはなりにくい特性を示している。
試験3:最大含水量・蒸発速度の測定
試験体を十分に水浸した後、垂直に立て掛けて5分間放置し、重量を測定した。この値と乾燥重量の差から、最大含水量を求めた。
また、ハロゲンランプを使用して約850W/m2の放射を与え、表面温度の変化が無くなるまで十分に照射した後、10分間の重量変化を測定して蒸発速度を求めた。
最大含水量と蒸発速度の測定結果を表1に示す。保水量が0.4〜0.7リットル/m2であるのに対して、真夏の正午の日射量相当の863W/m2の放射条件下では毎時0.7リットル/m2近い蒸発が生じることが示されている。従って屋根面に設置すると、真夏の晴天時、1時間に1回、0.7リットル/m2程度の給水を行うことによって、十分な冷却効果が期待できることになる。
試験体を十分に水浸した後、垂直に立て掛けて5分間放置し、重量を測定した。この値と乾燥重量の差から、最大含水量を求めた。
また、ハロゲンランプを使用して約850W/m2の放射を与え、表面温度の変化が無くなるまで十分に照射した後、10分間の重量変化を測定して蒸発速度を求めた。
最大含水量と蒸発速度の測定結果を表1に示す。保水量が0.4〜0.7リットル/m2であるのに対して、真夏の正午の日射量相当の863W/m2の放射条件下では毎時0.7リットル/m2近い蒸発が生じることが示されている。従って屋根面に設置すると、真夏の晴天時、1時間に1回、0.7リットル/m2程度の給水を行うことによって、十分な冷却効果が期待できることになる。
試験4:顕熱・潜熱の測定
約850W/m2の放射を与えた状態で、ボード上の純放射量およびボード裏面での熱流量を測定し、試験3で測定した蒸発量から求めた潜熱と合わせ、表面での熱収支を計算した。純放射量の測定にはKipp & Zonen, Net Radiometer NR Lite を、熱流の測定にはHukseflux, Heat Flux Plate を使用した。
測定値からの計算結果を図7に示す。純放射量をプラス側、伝導熱、潜熱、顕熱はマイナス側で表現している。
溶岩ボードのアルベド(日射計で測定した実測値)は乾燥状態で8〜9%、湿潤状態で3〜5%と非常に低い。そのため窯業製サイディング材板と比べると、同一放射条件下であれば純放射量が増大する。従って乾燥状態の溶岩ボードであれば、窯業製サイディング材よりも顕熱量、建物内伝導熱量ともに増加する。冬季の日中を想定すると、より周辺気温を高め、室内温度を上昇させる効果があることになる。
一方、湿潤状態の溶岩ボードの場合、アルベドの低下によって純放射量は一段と増加するが、潜熱分が純放射量の50%以上を占めるようになり、顕熱量、伝導熱量ともに窯業製サイディング材よりも著しく減少するので、夏期の日中にはヒートアイランド軽減効果や建物内部への熱伝導の減少をもたらす。
約850W/m2の放射を与えた状態で、ボード上の純放射量およびボード裏面での熱流量を測定し、試験3で測定した蒸発量から求めた潜熱と合わせ、表面での熱収支を計算した。純放射量の測定にはKipp & Zonen, Net Radiometer NR Lite を、熱流の測定にはHukseflux, Heat Flux Plate を使用した。
測定値からの計算結果を図7に示す。純放射量をプラス側、伝導熱、潜熱、顕熱はマイナス側で表現している。
溶岩ボードのアルベド(日射計で測定した実測値)は乾燥状態で8〜9%、湿潤状態で3〜5%と非常に低い。そのため窯業製サイディング材板と比べると、同一放射条件下であれば純放射量が増大する。従って乾燥状態の溶岩ボードであれば、窯業製サイディング材よりも顕熱量、建物内伝導熱量ともに増加する。冬季の日中を想定すると、より周辺気温を高め、室内温度を上昇させる効果があることになる。
一方、湿潤状態の溶岩ボードの場合、アルベドの低下によって純放射量は一段と増加するが、潜熱分が純放射量の50%以上を占めるようになり、顕熱量、伝導熱量ともに窯業製サイディング材よりも著しく減少するので、夏期の日中にはヒートアイランド軽減効果や建物内部への熱伝導の減少をもたらす。
試験5:サーモグラフ画像の撮影
屋外のコンクリート床板上に置いた溶岩ボードのサーモグラフ画像を撮影し、保水による温度低減効果の特性を把握した。使用したサーモグラフはNEC三栄製、サーモトレーサーTH5104である。
撮影には赤色溶岩ボード1および赤色溶岩ボード2を使用し、乾燥状態のものと湿潤状態のものを並べて撮影した。乾燥状態のサイディングは、概ねコンクリート面よりも10℃高温を示し、湿潤状態のサイディングは逆に、コンクリート面よりも10℃程度低温を示している。
試験1〜4で得られた温度上昇特性や熱収支特性と一致する結果であり、サイディング表面に与える水分量をコントロールすることによって、本発明のサイディングを加温と冷却を使い分けることが可能であることを示唆するものである。
また、白色系の多孔質天然石であれば、乾燥した場合では初期温度は変わらない。多孔質天然石は施工する場所やデザイン、目的によって選択することができる。
屋外のコンクリート床板上に置いた溶岩ボードのサーモグラフ画像を撮影し、保水による温度低減効果の特性を把握した。使用したサーモグラフはNEC三栄製、サーモトレーサーTH5104である。
撮影には赤色溶岩ボード1および赤色溶岩ボード2を使用し、乾燥状態のものと湿潤状態のものを並べて撮影した。乾燥状態のサイディングは、概ねコンクリート面よりも10℃高温を示し、湿潤状態のサイディングは逆に、コンクリート面よりも10℃程度低温を示している。
試験1〜4で得られた温度上昇特性や熱収支特性と一致する結果であり、サイディング表面に与える水分量をコントロールすることによって、本発明のサイディングを加温と冷却を使い分けることが可能であることを示唆するものである。
また、白色系の多孔質天然石であれば、乾燥した場合では初期温度は変わらない。多孔質天然石は施工する場所やデザイン、目的によって選択することができる。
本発明のサイディング及びサイディング工法は、木造建築物に限らず、種々の建築物の外壁面に適用可能である。
1、1A、1B、1C、1D、1E、1F サイディング
2 断熱材
3、3A、3B、3C、3D 基板
4、4A、4B、4C、4D、4E 溶岩板(多孔質天然石板)
4F 溶岩砂
5 隙間
6 溝
7 給水パイプ
8 凹部
9 凹凸
10 横溝
11 連通溝
12 縦溝
13 カット溝
14 粗面
K コーキング
2 断熱材
3、3A、3B、3C、3D 基板
4、4A、4B、4C、4D、4E 溶岩板(多孔質天然石板)
4F 溶岩砂
5 隙間
6 溝
7 給水パイプ
8 凹部
9 凹凸
10 横溝
11 連通溝
12 縦溝
13 カット溝
14 粗面
K コーキング
Claims (12)
- サイディング基板表面に多孔質天然石板を間隔をあけて固着したものであり、多孔質天然石板の間に砂または多孔質天然石砂がサイディング基板表面に固着してあるサイディング。
- 請求項1において、基板表面、または多孔質天然石板の裏面の少なくとも一方の面に溝、または凹部が形成してあるサイディング。
- 請求項1または2において、多孔質天然石板の表面に凹凸が形成してあるサイディング。
- 請求項1または2において、多孔質天然石板の上端が先鋭にカットしてあり多孔質天然石板と基板の間に空間が形成してあるサイディング。
- 請求項4において、カットした多孔質天然石板の下部をコーキングして保水性を持たせたサイディング。
- 請求項1、2、4、5のいずれかにおいて、多孔質天然石板の表面に多孔質天然石砂が接着してあるサイディング。
- 請求項1〜6のいずれかのサイディングを建築物外壁表面に固定し、上部からサイディング表面に水を流すようにしたサイディング工法。
- 請求項1〜6のいずれかのサイディングを建築物外壁表面に固定し、溝内及び軒天に給水パイプを配管するサイディング工法。
- 請求項8において、給水パイプには細孔が設けてあり、水が多孔質天然石板の表面に滲みだすようにしてあるサイディング工法。
- 請求項7〜9のいずれかにおいて、多孔質天然石板に蔓性植物をからませるサイディング工法。
- 請求項10において、蔓性植物はサイディングに取り付けた容器に植えたものであるサイディング工法。
- 請求項7〜9のいずれかにおいて、冬季には水を流さずに保温効果を高めるようにしたサイディング工法。
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