JP2008208070A - プラスミド送達用粒子 - Google Patents

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Abstract

【課題】経口投与等の簡便な投与方法においても核酸を生体細胞内に効率良く送達することができる、新規な核酸送達手段を提供すること。
【解決手段】プラスミドを抱合するシアノアクリレートポリマー粒子であるプラスミド送達用粒子を提供した。該粒子は、好ましくは、シアノアクリレートモノマー、糖類及びプラスミドの共存下において、前記モノマーをアニオン重合させることにより製造される。
【効果】本発明の粒子は、経口投与においても効率良くプラスミドを送達できる。また、生体に適合性のある材料で作製できるので、人体に対する安全性も高い。従って、本発明は臨床応用上極めて有利である。
【選択図】図1

Description

本発明は、経口投与で用いることが可能なプラスミド送達用粒子に関する。
近年では、各種遺伝疾患の遺伝子治療や、ガン及びウイルス疾患に対するDNAワクチンの開発など、核酸を生体内で発現させて疾病の予防・治療を行う方法が研究されている。しかしながら、プラスミドDNAをそのままの形で筋肉注射により投与しても、注射量の多くは分解酵素の作用等により分解されてしまい、生体細胞内で実際に機能するDNAは注射量のごく一部であると考えられている。大量投与法として最も簡便な経口投与の場合でも、投与されたDNAの大部分が消化管において分解されてしまうので、効果的にDNAの機能を発現し得ない。ウイルスベクターを用いた核酸の送達方法は、プラスミドDNAを用いた方法よりも効果が高いが、その反面、免疫原性や病原性を発揮するおそれがあるため、臨床応用上は安全性の面で問題がある。従って、所望の核酸を生体内で効率良く機能させる安全性の高い手段の確立が望まれているが、現在までのところそのような手段は確立していない。
一方で、近年では、薬剤の徐放化や局所投薬を目的に、リポソーム、ナノミセル、ナノスフェアーなどのナノカプセル技術を用いた薬剤の開発や、標的臓器への薬物送達システム(DDS)の研究が行なわれている。ナノカプセル技術を用いた薬剤の例としては、ポリシアノアクリレート粒子が知られている。特許文献1には、インスリンを含有するポリシアノアクリレート粒子が記載されている。また、特許文献2には、シクロデキストリン等の環状オリゴ糖を有効成分と複合化させたポリシアノアクリレート粒子が記載されている。しかしながら、これらの文献には、核酸を生体細胞内に効率良く送達し、効果的に機能させるための手段については、全く記載も示唆もされていない。
特表平11−503148号公報 特表2002−504526号公報 Christine Vauthier et al., Adv. Drug Deliv. Rev., 55, 519-548 (2003)
従って、本発明の目的は、核酸を生体細胞内に簡便かつ効率良く送達するための手段を提供することである。
本願発明者は、鋭意研究の結果、シアノアクリレートポリマー粒子にプラスミドDNAを抱合させることにより、経口投与等においても効率良く生体細胞内へプラスミドDNAを送達可能になることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、プラスミドを抱合するシアノアクリレートポリマー粒子であるプラスミド送達用粒子を提供する。また、本発明は、上記本発明の粒子を媒体中に含むプラスミド送達用組成物を提供する。さらに、本発明は、シアノアクリレートモノマー、マンナン及び核酸の共存下において、前記シアノアクリレートモノマーをアニオン重合させることを含む、核酸を抱合するシアノアクリレートポリマー粒子の製造方法を提供する。
本発明により、経口投与等の簡便な大量投与方法においても、生体細胞内に効率良くプラスミドを送達できる手段が初めて提供された。経口投与でもプラスミドを効率良く送達できる手段は従来になく、また、該プラスミド抱合粒子は、生体に適合性のある材料で作製できるので、人体に対する安全性も高い。従って、本発明は臨床応用上極めて有利である。特に、プラスミド抱合粒子を製造する際に、糖類の共存下でアニオン重合を行なった場合には、粒子の粒径のばらつきを小さくして均一な粒子を調製できるため、プラスミドの送達効率をより高めることができる。さらに、この場合において、糖類としてマンナン及び/又はマンノースを用いると、マンノースレセプターを有する樹状細胞等の各種免疫細胞との親和性を高めることができるため、DNAワクチンの製造に特に有利である。
本発明の粒子のシアノアクリレートポリマー部分は、シアノアクリレートモノマーをアニオン重合して得られる。用いられるシアノアクリレートモノマーは、アルキルシアノアクリレートモノマー(アルキル基の炭素数は好ましくは1〜8)が好ましく、特に、外科領域において傷口の縫合のための接着剤として用いられている、下記式で表されるn-ブチル-2-シアノアクリレート(nBCA)が好ましい。
Figure 2008208070
前記アニオン重合では、特に限定されないが、重合開始及び重合安定化のために糖類を用いることができる。従って、本発明でいう「シアノアクリレートポリマー粒子」には、糖類のような重合開始及び安定剤を含むものも包含される。糖類は特に限定されず、従来公知のシアノアクリレートポリマー粒子の重合に用いられているデキストラン等を用いることができるが、水酸基を有する単糖類、水酸基を有する二糖類及びマンナンから成る群より選ばれる少なくとも1種の糖類を用いると、粒径のばらつきを小さくすることができ、均一な粒子を調製できるので好ましい。前記単糖類及び二糖類としては、水酸基を有するものであればいずれの糖でもよく、好ましい例として、グルコース、マンノース、リボース、フルクトース、マルトース、トレハロース、ラクトース及びスクロースを挙げることができる。これらの糖は、環状、鎖状のいずれの形態であってもよく、また、環状の場合、ピラノース型やフラノース型等のいずれであってもよい。また、糖には種々の異性体が存在するがそれらのいずれでもよい。通常、単糖は、ピラノース型又はフラノース型の形態で存在し、二糖は、それらがα結合又はβ結合したものであり、このような通常の形態にある糖をそのまま用いることができる。単糖、二糖及びマンナンは、単独で用いることもできるし、2種以上を組み合わせて用いることもできる。後述するとおり、マンノース及び/又はマンナンを用いると、樹状細胞等の免疫細胞との親和性を高めることができるため、本発明の粒子を免疫誘導の目的で用いる場合には、マンノース及び/又はマンナンを用いることが好ましい。
ポリマー粒子にプラスミドを抱合させる方法としては、プラスミドの共存下で上記アニオン重合を行なう方法が好ましい。例えば、プラスミドの非共存下でポリマー粒子を作製した後、粒子をプラスミドの水溶液中に浸漬すること等によっても、粒子の内部にプラスミドを抱合させることができるが、プラスミドの共存下で重合反応を行なうことにより、プラスミドの抱合率が高い粒子を簡便に得ることができる。すなわち、本発明の好ましい態様として、上記アニオン重合はプラスミドの共存下で行なわれる。
重合反応の溶媒としては、水を用いることもできるが、アルコール溶媒が好ましい。下記実施例に記載される通り、アルコール溶媒を用いてプラスミド抱合粒子を製造すると、重合反応時のプラスミドの分解を防ぐことができるため、プラスミドの構造を維持した状態でポリマー粒子に抱合させることができる。アルコール溶媒としては、プラスミド等の核酸の抽出操作等において核酸の安定化のために用いられるいずれのアルコール溶媒を用いることができ、特に限定されないが、例えば20〜60%程度の濃度のエタノール水溶液を用いることができる。
アニオン重合は、水酸イオンにより開始されるので、反応液のpHは、重合速度に影響する。反応液のpHが高い場合には、水酸イオンの濃度が高くなるので重合が速く、pHが低い場合には重合が遅くなる。通常、pHが2〜4程度の酸性下で適度な重合速度が得られる。反応液を酸性にするために添加する酸としては、特に限定されないが、反応に悪影響を与えず、反応後に揮散する塩酸を好ましく用いることができる。
反応開始時の重合反応液中のシアノアクリレートモノマーの濃度は、特に限定されないが、通常、0.5重量%〜2重量%程度、好ましくは0.8重量%〜1.2重量%程度である。また、重合反応に糖類を共存させる場合、反応開始時の重合反応液中の糖類の濃度(複数種類用いる場合はその合計濃度)は、特に限定されないが、通常、0.05w/v%〜10w/v%、好ましくは0.1w/v%〜5w/v%程度である。重合反応にプラスミドを共存させる場合、反応開始時の重合反応液中のプラスミドの濃度は、使用時に必要な用量等に応じて適宜設定することができ、特に限定されないが、通常、0.001w/v%〜0.01w/v%程度である。また、反応温度は、特に限定されないが、室温で行なうことが簡便で好ましい。反応時間は、特に限定されないが、通常、10分〜2時間程度、好ましくは、15分〜1時間程度である。重合反応は、撹拌下に行なうことが好ましい。なお、粒子は、通常、中性の粒子として用いられるので、反応終了後、水酸化ナトリウム水溶液等の塩基を反応液に添加して中和することが好ましい。
粒子内に抱合させるプラスミドは、生体細胞内で機能させるべき所望の核酸を含み、該核酸を発現可能なプラスミドである。そのようなプラスミドの例としては、所望のポリペプチドをコードする核酸を含むプラスミド、siRNAを生産可能なプラスミド、及びアンチセンスRNAを生産可能なプラスミド等を挙げることができる。所望のポリペプチドをコードする核酸としては、例えば、抗原物質をコードする核酸、生体内での発現が低下又は欠損している有用ポリペプチドをコードする核酸が挙げられる。抗原物質をコードする核酸を含むプラスミドを抱合させた粒子を投与した場合には、生体細胞内に送達された該プラスミドが抗原物質を生産することにより、該抗原物質に対する免疫を生体に誘導することができるので、抗原に起因する疾患の治療及び予防に有用である。この場合、樹状細胞等の免疫細胞に親和性の高い粒子を製造すれば、より効果的に免疫を誘導することができるため好ましい。樹状細胞等の免疫細胞は、細胞表面にマンノースレセプターを有しているため、プラスミド抱合粒子にマンノースやマンナンを含ませれば、免疫細胞とプラスミド抱合粒子の親和性を高めることができる。従って、免疫誘導を目的として本発明の粒子を用いる場合には、ポリマー粒子のアニオン重合の際に共存させる糖類としては、マンノース及び/又はマンナンが特に好ましい。また、粒子に抱合させるプラスミドとして、生体内で発現が低下又は欠損している有用ポリペプチドをコードする核酸を含むプラスミドを用いた場合には、生体細胞内に送達されたプラスミドが該ポリペプチドを生産することにより、生体に不足している有用ポリペプチドを補うことができる。このような有用ポリペプチドの例として例えば、パーキンソン病の治療に用いられるドーパミン合成酵素等を挙げることができるがもちろんこれに限定されるものではない。また、siRNA又はアンチセンスRNAを生産可能なプラスミドを用いた場合には、該プラスミドが送達された生体細胞内で過剰発現している遺伝子の発現を抑えることができる。従って、本発明の粒子は、遺伝子治療にも用いることができる。前記プラスミドとしては、投与対象である生体の細胞内で発現可能なプラスミドであればいかなるものであってもよく、例えば哺乳動物細胞内で発現可能なプラスミドを好ましく用いることができる。そのようなプラスミドは種々のものが公知であり、市販もされているため、容易に入手することができる。
また、粒子に抱合させるプラスミドとしては、近年研究開発が進んでいるDNAワクチンとして知られる種々のプラスミドを用いることができる。公知のDNAワクチンの例としては、ウイルス(HIV等)、原虫(マラリア原虫等)、結核菌等による感染症に対するワクチンや、ガン等の疾患に対するDNAワクチンが挙げられ、より具体的な例としては、例えば、J. Gene Med. (2003) 5:609-617に記載される、HIVエンベロープタンパク質遺伝子をプラスミドに組み込んだ、ヒト免疫不全症候群に対するDNAワクチンを挙げることができるが、これらに限定されない。DNAワクチンも、樹状細胞等の免疫細胞への送達効率を高めることでワクチンの効果をより高めることができる。従って、粒子にDNAワクチンを抱合させる場合にも、粒子の重合反応に用いる糖類としてマンナン及び/又はマンノースを用いることが好ましい。
上記の重合反応により、シアノアクリレートモノマーがアニオン重合し、プラスミドを抱合したシアノアクリレートポリマーから成る粒子が生成する。上記方法により得られる粒子のサイズ(直径)は、特に限定されないが、通常、ナノサイズ(1μm未満)、好ましくは40nm〜800nm程度である。なお、粒子のサイズは、反応液中のシアノアクリレートモノマーの濃度や反応時間を調節することにより調節することが可能である。また、粒子の製造に糖類を用いる場合には、糖類の濃度や種類を変えることによっても、粒子サイズを調節することができる(下記実施例参照)。
本発明で用いられる粒子のサイズは、上記の通り、通常、ナノサイズ(1μm未満)であるので、組織や細胞に適用した場合に膜を通過して組織や細胞の内部に入りやすい。そして、粒子内部に抱合されているプラスミドは、徐々に放出される。従って、本発明のプラスミド送達用粒子は、優れたプラスミド送達効果を発揮する。下記実施例に記載される通り、HIVに対するDNAワクチンを抱合したポリマー粒子を投与したマウスでは、該DNAワクチンを単独で皮下注射した場合よりも強く免疫が誘導されており、DNAワクチンプラスミドの送達効率が高いことが具体的に示されている。
本発明はまた、上記本発明のプラスミド抱合粒子を媒体中に含むプラスミド送達用組成物をも提供する。本発明の組成物は、公知の担体、賦形剤等と混合し、投与方法に適した形態の組成物として調製することもできる。
本発明の粒子又は組成物の投与方法としては、皮下、筋肉内、腹腔内、動脈内、静脈内、直腸内等への非経口投与の他、経口投与が挙げられる。具体的には、例えば、下記実施例に記載されるように、プラスミド抱合粒子を1%程度のグルコース溶液に懸濁して経口投与及び注射による非経口投与に用いることができるが、これに限定されず、例えば生理緩衝食塩水に粒子を懸濁させたようなものでもよい。下記実施例に記載される通り、本発明の粒子又は組成物は、経口投与によっても、非経口投与と同等又はそれ以上のプラスミド送達効果を奏する。経口投与は最も簡便な投与方法であり、大量投与も容易であるため、本発明の粒子又は組成物を経口投与用として調製した場合には、臨床応用上極めて有利である。
本発明の粒子の投与量は、ポリマー粒子のプラスミド抱合率及び抱合されるプラスミドの性質、並びに粒子のプラスミド抱合粒子の含有量に応じて適宜設定される。例えば、粒子に抱合されるプラスミドがDNAワクチンの場合には、そのDNAワクチンについて定められた適用量のDNAワクチンが抱合される量の抱合粒子を投与できればよく、粒子としての投与量は、粒子中の抱合粒子の含有量に基づいて定められる。例えば、ウイルスに対するDNAワクチンの場合、成人に対する適用量は1回当り通常0.05mg〜50mg程度、特に0.1mg〜10mg程度なので、ポリマー粒子のプラスミド抱合率が90%の場合には、0.06mg〜56mg程度、特に0.12mg〜12mg程度の量のポリマー粒子を投与すればよい。なお、投与したプラスミドの効果が経時的に減少した場合には、再び粒子を投与することができ、その後も繰返し投与することができる。
以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
実施例1 pDNA抱合粒子の製造(アルコール溶媒)
ポリマー粒子に抱合させるプラスミドDNA(pDNA)としては、J. Gene Med.(2003) 5:609-617に記載のDNAワクチンであるpCMVrev/envを用いた。該プラスミドは、プラスミドpIIIenv3-1(NIH Research and Reference Reagent Program, 国立衛生研究所、米国メリーランド州;カタログ番号289)から制限酵素SalI/XhoIで切り出した、HIVIIIBのエンベロープタンパク質gp160遺伝子とRev遺伝子とを含む核酸断片を、市販の発現プラスミドpcDNA3.1(Invitrogen社)に組み込んだものであり、gp160遺伝子及びRev遺伝子の発現はCMVプロモーターにより制御されるものであった。
マンナン100mgを0.002N塩酸溶液(pH2.8)6.5mlに溶解し、上記したpDNA 0.3mgを該溶液に加えた。撹拌しながらEtOH 3ml(反応液中濃度30v/v%)を加えた。次いで、100μLのnBCA (Histoacryl(登録商標)、Braun社、独国Melsungen)(反応液中濃度1.0v/v%)を撹拌下加えた。600rpmで30分間撹拌しながら重合反応を続けた。その後、0.1N水酸化ナトリウム溶液を滴下し、中和後15分間撹拌した。Millex-SV (5μm)filter(MILLIPORE社)で濾過後、濾液をCentriprep-YM10 Filter (MILLIPORE社)を用いて2000rpmで10分間遠心濾過した。フィルターを通過しなかった液に滅菌水を加え、再度遠心濾過することにより、粒子の洗浄を行なった。この洗浄操作を合計3回行ない、pDNA抱合粒子3mgを得た。
得られたpDNA抱合粒子液を滅菌水に懸濁して10倍希釈し、粒子径とZeta電位を測定した(表1)。
pDNAの粒子への抱合率は、次のようにして算出した。すなわち、Centriprep-YM10 Filterを通過した液について、260nmにおける吸光度を測定し、抱合されなかったDNA量を吸光度法により求めた後、下記式によって抱合率を算出した(表1)。
DNA抱合量=DNA添加量−抱合されなかったDNA量
DNA抱合率(%)=DNA抱合量÷DNA添加量×100
実施例2 pDNA抱合粒子の製造(水溶媒)
マンナン100mgを0.002N塩酸溶液(pH2.8) 10mlに溶解し、上記したpDNA 0.3mgを該溶液に加えた。次いで、100μLのHistoacryl(登録商標)(反応液中濃度1.0v/v%)を撹拌下加えた。600rpmで30分間撹拌しながら重合反応を続けた。その後、0.1N水酸化ナトリウム溶液を滴下し、中和後15分間撹拌した。Millex-SV (5μm)filter(MILLIPORE社)で濾過後、濾液をCentriprep-YM10 Filter(MILLIPORE社)を用いて2000rpmで10分間遠心濾過した。フィルターを通過しなかった液に滅菌水を加え、再度遠心濾過することにより、粒子の洗浄を行なった。この洗浄操作を合計3回行ない、pDNA抱合粒子を得た。
粒子径とZeta電位の測定及びpDNAの抱合率は、上記の通りにして求めた(表1)。
Figure 2008208070
Centriprep-YM10 Filterを通過した液の一部を電気泳動すると、アルコール溶媒で重合反応を行なった実施例1の抱合粒子では、pDNAのバンドが確認された。しかしながら、水溶媒で重合反応を行なった実施例2の抱合粒子では、pDNAのバンドが確認されなかった。これらのことより、実施例2におけるCentriprep-YM10 Filter通過液で測定されたOD260は、pDNAの加水分解産物についての測定値であることが考えられた。すなわち、これらのことは、水溶媒中で重合反応を行なった粒子中に抱合されているpDNAは、大部分が分解してしまっていること、及び、アルコール溶媒中で重合反応を行なうことにより、pDNAの分解を抑え、pDNAの構造を保持した状態で粒子に抱合できることを示唆している。
実施例3 pDNA抱合粒子の製造(異なる粒子径の合成1)
マンノース200mgを0.002N塩酸溶液(pH3.4)12mlに溶解し、上記したpDNA 1mgを該溶液に加えた。撹拌しながらEtOH 8ml(反応液中濃度40v/v%)を加えた。次いで、200μLのHistoacryl (登録商標)(反応液中濃度1.0v/v%)を撹拌下加えた。600rpmで15分間撹拌しながら重合反応を続けた。その後、0.1N水酸化ナトリウム溶液を滴下し、中和後15分間撹拌した。Millex-SV (5μm)filter (MILLIPORE社)で濾過後、濾液をCentriprep-YM10 Filter (MILLIPORE社)を用いて2000rpmで10分間遠心濾過した。フィルターを通過しなかった液に2.5%グルコース水溶液を加え、再度遠心濾過することにより、粒子の洗浄を行なった。この洗浄操作を合計4回行ない、pDNA抱合粒子を得た。
粒子径とZeta電位の測定及びpDNAの抱合率は、上記の通りにして求めた(表2)。
実施例4 pDNA抱合粒子の製造(異なる粒子径の合成2)
マンナン20mgとマンノース200mgを0.002N塩酸溶液(pH3.4)12mlに溶解し、上記したpDNA 1mgを該溶液に加えた。撹拌しながらEtOH 8ml(反応液中濃度40v/v%)を加えた。次いで、200μLのHistoacryl (登録商標)(反応液中濃度1.0v/v%)を撹拌下加えた。600rpmで15分間撹拌しながら重合反応を続けた。その後、0.1N水酸化ナトリウム溶液を滴下し、中和後15分間撹拌した。Millex-SV (5μm)filter (MILLIPORE社)で濾過後、濾液をCentriprep-YM10 Filter (MILLIPORE社)を用いて2000rpmで10分間遠心濾過した。フィルターを通過しなかった液に2.5%グルコース水溶液を加え、再度遠心濾過することにより、粒子の洗浄を行なった。この洗浄操作を合計4回行ない、pDNA抱合粒子を得た。
粒子径とZeta電位の測定及びpDNAの抱合率は、上記の通りにして求めた(表2)。
Figure 2008208070
参考例1〜4 マンナン及び/又はマンノースを用いた粒子の製造
糖類として、マンノース500mg(参考例1)、マンノース100mg(参考例2)、マンナン10mg(参考例3)又はマンナン10mg及びマンノース100mg(参考例4)を用いた。
マンナン及び/又はマンノースを上記した量で0.002N塩酸溶液(pH3.1)6mlに溶解した。撹拌しながらEtOH 4ml(反応液中濃度40v/v%)を加えた。次いで、100μLのHistoacryl (登録商標)(反応液中濃度1.0v/v%)を撹拌下加えた。600rpmで30分間撹拌しながら重合反応を続けた。その後、0.1N水酸化ナトリウム溶液を滴下し、中和後15分間撹拌した。作製した粒子懸濁液を滅菌水で10倍希釈し、粒子径とZeta電位を測定した(表3)。
Figure 2008208070
実施例5 マウスにおける免疫誘導効果の検討
実施例1で得られた粒子をマウスに投与し、J. Gene Med.(2003) 5:609-617に記載される方法によりテトラマーアッセイを行なって免疫誘導効果を評価した(J. Gene Med.(2003) 5:609-617)。
pDNA抱合量60μgに相当する量の抱合粒子(すなわち実施例1で得た抱合粒子を0.6mg)を1%グルコース水溶液に懸濁してマウスに投与した。投与方法としては、腹腔内投与、皮下注射、静脈注射及び経口投与を行なった。また、対照として、ポリマー粒子に抱合していないpDNAを60μg/0.5mlリン酸緩衝食塩液(PBS)溶液としてマウスに皮下注射した。
抱合粒子及びpDNAの投与から1週間後、マウスから脾臓を取り出して脾細胞を得た。該脾細胞を、正常マウス血清4%PBS溶液で30分間、4℃にてインキュベートした。該細胞を、106細胞に対し0.5μgのFITC標識抗マウスCD8抗体(Ly-2, PharMingen)にて、4℃で30分間染色した。染色緩衝液(3%FCS、0.1%NaN3のPBS溶液)で2回洗浄した後、細胞をH-2Dd/p18テトラマー試薬(AIDS Research and Reference Reagent Program (国立衛生研究所、米国メリーランド州))で37℃にて15分間インキュベートし、フローサイトメトリーで解析した。
上記したH-2Dd/p18テトラマーは、マウスのMHCクラスI分子H-2Ddと、HIVの構造タンパク質p18とを結合させたものである。CD8陽性T細胞は、MHCクラスI分子と結合した低分子の抗原ペプチドを特異的に認識するので、HIVを特異的に認識できるCD8陽性T細胞は、上記テトラマーを認識して結合できる。すなわち、マウス脾細胞中に上記テトラマーと結合できるT細胞がどの程度存在するかを調べることにより、マウスにおけるHIVに対する免疫誘導のレベルを評価することができる。
フローサイトメトリーでの解析結果を図1に示す。図1の縦軸は、フローサイトメトリーで測定されたフィコエリトリンの蛍光強度の相対値であり、テトラマーを特異的に認識して結合したHIV特異的T細胞の相対量を表す。すなわち、図1の縦軸は、マウスにおけるHIVに対する免疫誘導のレベルを表す。図1に示されるとおり、上記の方法で製造したpDNA抱合粒子は、いずれの投与方法においてもpDNA単独での皮下注射よりも免疫誘導効果が高かった。特に、抱合粒子では、経口投与において皮下注射よりも高い免疫誘導効果が認められ、該粒子が経口投与でも好適にプラスミド送達作用及びそれに続く免疫誘導効果を発揮できることが示された。
テトラマーアッセイの結果を示す図である。縦軸は、フローサイトメトリーで測定された蛍光強度の相対値を示す。pDNA;粒子に抱合されないプラスミドDNAを皮下注射したマウス、native;非処置マウス、ip;プラスミドDNA抱合粒子を腹腔内投与したマウス、is;プラスミドDNA抱合粒子を皮下注射したマウス、iv;プラスミドDNA抱合粒子を静脈注射したマウス、oral;プラスミドDNA抱合粒子を経口投与したマウス。

Claims (15)

  1. プラスミドを抱合するシアノアクリレートポリマー粒子であるプラスミド送達用粒子。
  2. 前記粒子が、シアノアクリレートモノマー、糖類及びプラスミドの共存下において、前記モノマーをアニオン重合させることにより製造される請求項1記載の粒子。
  3. 前記糖類が、水酸基を有する単糖類、水酸基を有する二糖類及びマンナンから成る群より選ばれる少なくとも1種の糖類である請求項2記載の粒子。
  4. 前記糖類がマンノース及び/又はマンナンである請求項3記載の粒子。
  5. 前記アニオン重合がアルコール溶媒中で行なわれる請求項2ないし4のいずれか1項に記載の粒子。
  6. 前記アルコール溶媒が20〜60%エタノール水溶液である請求項5記載の粒子。
  7. 前記シアノアクリレートがn−ブチルシアノアクリレートである請求項1ないし6のいずれか1項に記載の粒子。
  8. 前記粒子の平均粒径が40nm〜800nmである請求項1ないし7のいずれか1項に記載の粒子。
  9. 前記プラスミドが抗原物質をコードする核酸を含み、該抗原物質を発現可能なプラスミドである請求項1ないし8のいずれか1項に記載の粒子。
  10. 前記プラスミドがDNAワクチンである請求項1ないし8のいずれか1項に記載の粒子。
  11. DNAワクチンが、HIV用のDNAワクチンである請求項10記載の粒子。
  12. 経口投与用である請求項1ないし11のいずれか1項に記載の粒子。
  13. 請求項1ないし12のいずれか1項に記載の粒子を媒体中に含むプラスミド送達用組成物。
  14. シアノアクリレートモノマー、マンナン及び核酸の共存下において、前記シアノアクリレートモノマーをアニオン重合させることを含む、核酸を抱合するシアノアクリレートポリマー粒子の製造方法。
  15. 前記アニオン重合がマンナン及びマンノースの共存下で行なわれる請求項14記載の方法。
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