JP2008207764A - 車両用シート - Google Patents

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和也 福谷
Yuka Ishida
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Abstract

【課題】車両側面衝突時や横転時に、シートベルト装置のウェビングによって乗員をシートバック及びシートクッションに正常な着座姿勢に拘束した状態で、エアバッグによって乗員を保護することが可能な車両用シートを提供する。
【解決手段】シートクッション10と、シートバック50と、シートベルト装置60と、着座した乗員A,Bと車両側部との間にエアバッグ81を膨張展開させて乗員を保護するサイドエアバッグ装置80とを備えた車両用シートSであって、シートベルト装置60は、側突時又は横転時にウェビング61による乗員A,Bの拘束力を高めるようにウェビング61を牽引するプリテンショナ67,72を備え、サイドエアバッグ装置80は、シートベルト装置60がプリテンショナ67,72によりウェビング61を牽引して乗員の拘束力を高めた状態で、エアバッグ81の膨張展開により乗員を保護する。
【選択図】図12

Description

本発明は、車両用シートに係り、特にシートベルト装置及びサイドエアバッグ装置を備えた車両用シートに関する。
従来、着座した乗員をウェビングによって拘束するシートベルト装置と、車両側突時や車両横転時に乗員を保護するサイドエアバッグ装置とを備えた車両の車両用シートが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載のシートベルト装置では、ウェビングの一端がピラー下部に配置されたリトラクタに巻き取り可能に保持され、他端が車両用シートの車両外側の側部に配設されたアンカーに固定されている。ウェビングは、リトラクタから上方に延び、ピラー上部に配置されたガイドで乗員側に方向転換される。ウェビングは、ガイドとアンカーとの間にタングが取り付けられており、タングが車両用シートの車両中央側の側部に配設されたバックルに係着されることにより乗員を拘束可能となる。
また、上記シートベルト装置では、側突時にウェビングを牽引して弛みを低減するためのプリテンショナがアンカーに設けられている。この車両用シートでは、側突時にサイドエアバッグ装置が作動し、エアバッグで乗員を保護する。また、この車両用シートでは、側突時にプリテンショナがサイドエアバッグ装置よりも遅れて作動するようになっており、側突によりピラーが車両内に侵入してウェビングに弛みが生じても、遅れて作動するプリテンショナによってウェビングの弛みが牽引される。これにより、上記車両用シートでは、側突時に乗員がウェビングによって拘束状態に保持され、乗員保護性が向上されるようになっている。
特表2001−518424号公報
しかしながら、上記車両用シートでは、エアバッグが展開したときにエアバッグによって乗員の胸部が例えば車両中央側に押され、上体が捩れた状態でプリテンショナがウェビングの弛みを牽引してしまうので、乗員を正常な着座姿勢でシートバックに拘束することができないという問題があった。
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、車両側面衝突時や横転時に、シートベルト装置のウェビングによって乗員をシートバック及びシートクッションに正常な着座姿勢に拘束した状態で、サイドエアバッグ装置のエアバッグによって乗員を保護することが可能な車両用シートを提供することを目的としている。
上記の目的を達成するために、本発明は、シートクッションと、このシートクッションに対して起立したシートバックと、着座した乗員をウェビングにより拘束するシートベルト手段と、着座した乗員と車両側部との間にエアバッグを膨張展開させて乗員を保護するサイドエアバッグ手段とを備えた車両用シートであって、シートベルト手段は、側突時又は横転時にウェビングによる乗員の拘束力を高めるようにこのウェビングを牽引するプリテンショナを備え、シートベルト手段及びサイドエアバッグ手段は、シートベルト手段がプリテンショナによりウェビングを牽引して乗員の拘束力を高めた状態で、サイドエアバッグ手段がエアバッグの膨張展開により乗員を保護するように構成されていることを特徴としている。
このように構成された本発明によれば、サイドエアバッグ手段が、エアバッグを膨張展開させて乗員の保護機能を発揮し始める前に、シートベルト手段が、プリテンショナによりウェビングを牽引し、シートバック及びシートクッションへの乗員の拘束力を高めるように構成されている。これにより、車両用シートは、ウェビングによって乗員をシートバック及びシートクッションに対して正常な着座姿勢に拘束した状態でエアバッグを展開させることが可能であり、乗員の保護性を向上させることができる。
また、本発明において好ましくは、プリテンショナは、ウェビングの牽引により乗員の胸部の拘束力を高めるように構成される。
一般に、プリテンショナの作動により、ウェビングを牽引して、これにより乗員の胸部(骨格)の変形を抑制し、胸部への衝撃荷重の伝達(局所的に過剰な荷重伝達等)を軽減することが意図される。しかしながら、サイドエアバッグ手段のエアバッグが展開された後にプリテンショナが機能する構成であると、展開したエアバッグが乗員の胸部に干渉して胸部が正常な着座姿勢から変位するため、この状態でプリテンショナが作動しても胸部変形の抑制を適切に行うことができない。これに対し、本発明のように、エアバッグが保護機能を発揮する前に、プリテンショナによりウェビングを牽引して乗員の胸部の拘束力を高め、予め乗員の胸部の姿勢を適切に保持することで、胸部への異常な衝撃荷重伝達を抑制することができる。
また、本発明において好ましくは、サイドエアバッグ手段は、エアバッグをシートバックの側端面から着座した乗員の胸部側方に向けて展開するように構成される。より具体的には、エアバッグは、シートバックの側端面に形成された凹部に配置され、この凹部の開口から乗員側に展開するように構成される。
このように構成された本発明によれば、エアバッグの展開に際し、着座した乗員の上体と当接するシートバックの変形が抑制されるため、エアバッグ展開による乗員の胸部姿勢の変位を抑制でき、胸部の異常な衝撃荷重伝達をより抑制することが可能である。
また、本発明において好ましくは、エアバッグは、着座した乗員の胸部及び腹部を保護するように膨張する胸腹保護部を備え、この胸腹保護部は、所定の小柄な乗員の上腕に対応する部位が該部位より下の他の部位よりも車幅方向に薄く膨張するように形成される。
一般に、エアバッグ展開時、小柄な乗員(代表的には米国基準のAF05)や、それより少し大きい中柄な乗員は、上腕が胸腹保護部に押圧されて胸部変形が大きくなってしまうが、上記構成の本発明によれば、胸腹保護部は、上腕が当接する部位が車幅方向に薄く膨張するように形成されるので、エアバッグによって胸部変形が促進されるのを抑制することができる。
また、本発明において好ましくは、プリテンショナは、ウェビングの牽引により乗員の腰部付近の拘束力を高めるように構成される。このように構成された本発明によれば、エアバッグが保護機能を発揮して腰部付近に干渉する前に、プリテンショナが腰部付近のウェビングの拘束力を高めるように機能するので、エアバッグ展開時に、腰部付近でエアバッグとウェビングとが干渉して展開性を悪化させるのを防止することができる。
また、本発明において好ましくは、エアバッグは、展開状態で乗員の腰部の車幅方向外側に位置する腰保護部を備え、シートバック内に埋設された状態で格納され、このシートバックのサイドサポート部の前端部近傍からこのシートバック外に展開されるように構成される。このように構成された本発明によれば、エアバッグが乗員の腰部に近い領域を通って展開する場合でも、ウェビングとの干渉を防止することができる。
本発明の車両用シートによれば、車両側面衝突時や横転時に、シートベルト装置のウェビングによって乗員をシートバック及びシートクッションに正常な着座姿勢に拘束した状態で、サイドエアバッグ装置のエアバッグによって乗員を保護することができる。
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。先ず、図1〜図14により、本発明の第1実施形態による車両用シートを説明する。
図1は車両1の前席左側に位置する運転席用の車両用シートSの正面図、図2は車両外側から見た車両用シートSの側面図である。車両用シートSは、ピラー3に隣接して車両フロア2に固定されており、シートクッション10と、シートクッション10に対して起立したシートバック50と、シートベルト装置60と、サイドエアバッグ装置80とを備えている。
車両用シートSに着座する乗員の体格は種々なものであるが、ここでは、代表例として、乗員A及び乗員Bの場合を説明する。乗員Aは、米国の連邦規制基準CRF49ch.5でAM50と呼ばれる米国成人男性のうちの平均的な体型の乗員に相当し、一方、乗員Bは、この米国基準でAF05と呼ばれる米国成人女性のうちの最も小柄から5%目の人の平均的な体型の乗員に相当する。
シートクッション10は、乗員A,Bが着座する着座面を有する座部11と、車両フロア2に固定された基部16と、座部11を基部16に対して上下方向に移動可能に支持するリフト機構部20とを備えている。
基部16は、車両前後方向にほぼ平行に配置された一対のシートレール17a,17bと、各シートレール17a,17bに長手方向に摺動可能に保持されたスライダ18a,18bとを備えている。シートレール17a,17bは、ブラケット17cによって車両フロア2に固定されている。
一対のスライダ18a,18bは、薄板状の支持プレート19によって連結され、シートレール17a,17bに対して一体に移動し、ロック機構(図示せず)により所望の位置に固定されるようになっている。
また、各スライダ18a,18bには、車両前後方向に離間した2箇所に上方に突出するようにリフト機構部20と連結するための取付部18c,18dが設けられている。取付部18cが取付部18dの車両前方に位置する。
座部11は、クッション材を表皮で覆って構成されたクッション体12と、クッション体12の左右両側部を支持する左右一対のサイドフレーム13,14を備えている。
車両外側のサイドフレーム13と車両中央側のサイドフレーム14は、車両前後方向にほぼ平行に延び、車幅方向に延びるクロスバー(図示せず)によって連結されている。サイドフレーム13,14は、それぞれリフト機構部20の支持部20A,20Bを介してスライダ18a,18bに連結されている。
シートバック50は、クッション材を表皮で覆って構成されたクッション体52と、クッション体52を支持する正面視でほぼ逆U字形のシートバックフレーム53等によって構成されている。
シートバックフレーム53の下方に延びる両端部は、サイドフレーム13,14の後部を連結する車幅方向に延びるヒンジシャフト15にリクライニング機構(図示せず)を介して回動可能に連結されている。これにより、シートバック50をシートクッション10に対して回動させて所定の角度に保持することができる。
図3〜図7に基づいてリフト機構部20について説明する。図3は車両外側のサイドフレーム13に設けられたリフト機構部20の側面図であり、図5は車両中央側のサイドフレーム14に設けられたリフト機構部20の側面図である。なお、図3は車両中央側から見た図であり、図5は車両外側から見た図である。図4はブレーキ機構の分解斜視図、図6は図5のI−I線断面図、図7は図6のII−II線断面図である。
リフト機構部20は、座部11の車幅方向両側をそれぞれ支持する支持部20A,20Bを有している。各支持部20A,20Bは、座部11と基部16を連結する前リンク部材21及び後リンク部材22を備えている。また、車両外側の支持部20Aには、前リンク部材21及び後リンク部材22を変位させて座部11を所定の高さに調整するための操作機構24が設けられ、車両中央側の支持部20Bには、外力による座部11の上方及び下方への変位を抑制する上方及び下方変位抑制機構40が設けられている。
一対の前リンク部材21は、それぞれ一端がスライダ18a,18bの前側の取付部18cに車幅方向に延びる連結ピン23aにより回動可能に連結され、他端がサイドフレーム13,14の前側に車幅方向に延びる連結ピン23bにより回動可能に連結されている。
また、一対の後リンク部材22は、それぞれ一端がスライダ18a,18bの後側の取付部18dに車幅方向に延びる連結ピン23cにより回動可能に連結され、他端がサイドフレーム13,14の後側に車幅方向に延びる連結ピン23dにより回動可能に連結されている。
座部11は、平行リンクである前リンク部材21及び後リンク部材22が連結ピン23a,23cを支点として揺動することにより、基部16又は車両フロア2からの高さ及び前後位置が変位するようになっている。図3,図5から分かるように、シートクッション10が最上方位置に達するまでは、前リンク部材21及び後リンク部材22は後傾となる。
また、図3に示すように、シートクッション10を上下移動させるための操作機構24は、車両外側のサイドフレーム13に設けられている。
この操作機構24は、後リンク部材22に一端(後端)が連結された中間リンク部材25と、中間リンク部材25の他端(前端)が連結されたセクターギヤ部材26と、セクターギヤ部材26と噛合する歯車27と、歯車27に取り付けられた回転シャフト28と、回転シャフト28の回動を規制する支持機構部としてのドラム式のブレーキ機構30と、回転シャフト28を回転操作するための操作レバー29とを備えている。
セクターギヤ部材26は、連結ピン23b,23dの間でサイドフレーム13の下縁付近にシャフト26cにより回動自在に取り付けられている。
セクターギヤ部材26は、車両前側外周に形成された歯26aと、車両上方へ延出する作動端26bとを有している。また、セクターギヤ部材26には、巻きバネ26dが取り付けられている。巻きバネ26dは、内端部がシャフト26cに係止され、外端部がセクターギヤ部材26に係止されており、セクターギヤ部材26を図3の時計方向(すなわち、前リンク部材21及び後リンク部材22を起立させる方向)に回動付勢している。
後リンク部材22は連結ピン23dを越えて上方に延びており、後リンク部材22の上端部とセクターギヤ部材26の作動端26bとが、中間リンク部材25によって連結されている。中間リンク部材25は、それぞれ連結ピン25a,25bを介して後リンク部材22,セクターギヤ部材26に回動自在に連結されている。
回転シャフト28は、車幅方向にサイドフレーム13を貫通し、サイドフレーム13に回動可能に支持されている。この回転シャフト28は、車両内側端に歯車27が取り付けられている。歯車27の歯27aは、セクターギヤ部材26の歯26aと噛合されている。また、回転シャフト28は、サイドフレーム13から車両外側に突出する部分に、ブレーキ機構30を介して操作レバー29が連結されている。
ブレーキ機構30は、乗員の操作レバー29による座部11の上下移動は規制しないが、座部11に掛かる所定値以下の上向き荷重及び下向き荷重によって操作機構24が作動することを規制するように構成されている。すなわち、上方及び下方変位抑制機構としても機能するブレーキ機構30は、座部11を支持する所定の支持力を有し、所定の荷重まで座部11が上下移動してしまうことを規制することができるように構成されている。したがって、ブレーキ機構30は、側突時及び横転時に、特に車両外側が先に大きく変位してしまうのを抑制することができる。
図4に示すように、ブレーキ機構30は、外筒31と、内筒32とを有し、外筒31のフランジ部31bがサイドフレーム13の外面にリベット等で固定される。外筒31と内筒32との間には一対のブレーキスプリング33A、33Bが介装される。回転シャフト28は、外端部28aが外筒31の中心穴31aで支持され、内端部28bがサイドフレーム13で回転自在に支持される。回転シャフト28の中間部には、ピニオン34が回動可能に取り付けられている。回転シャフト28の外端部28aは、内筒32の中心穴32aに挿通された状態で、内筒32が回転シャフト28に固定されている。
外側のブレーキスプリング33Aは、一方端部33aが内筒32の切り込み32cに係止され、他方端部33dがピニオン34のスリット34aに係止され、内側のブレーキスプリング33Bは、一方端部33cがピニオン34のスリット34aに係止され、他方端部33bが内筒32の切り込み32dに係止されている。
ブレーキ機構30は、回転シャフト28を操作レバー29によって回転させるときは、ブレーキスプリング33A,33Bの端部33b,33d(又は、33c,33a)が縮径方向に作用して内筒32が回動可能になる。したがって、操作機構24では、操作レバー29の先端部を引き上げると、図3で回転シャフト28が反時計方向に回転される。歯車27の反時計方向の回転により、セクターギヤ部材26はシャフト26cを中心に時計方向に回転する。セクターギヤ部材26の時計方向の回転により、中間リンク部材25を介して後リンク部材22は連結ピン23cを中心に時計方向に回動する。また、これに従動して、前リンク部材21が連結ピン23aを中心に時計方向に回動する。これにより、車両外側のサイドフレーム13が上方及び前方に移動する。
更に、車両外側のサイドフレーム13の上方及び前方への移動に連動して、クロスバーによってサイドフレーム13と連結されているサイドフレーム14も上方及び前方に移動する。これにより、座部11が上方及び前方に移動する。
また、図3で操作レバー29の先端部を引き下げると、上述した動作と逆の動作が生じ、座部11が、後方及び下方に移動される。
このように、操作機構24は、乗員による操作レバー29によって座部11の高さ調整を行うことができ、座部11が所望の高さに移動したときに操作レバー29の操作を停止すれば、ブレーキ機構30によってその高さに保持される。
しかしながら、ブレーキ機構30は、座部11に作用した上方及び下方の荷重によってピニオン34を回動させる力が加わると、ブレーキスプリング33A,33Bの端部33c,33a(又は、33d,33b)が拡径方向に作用して外筒31の内周面に接触して回転シャフト28を回転不能にする。これにより、ブレーキ機構30は、所定の荷重までは座部11の上方及び下方への変位を規制することができる。
なお、ブレーキ機構30は、所定の荷重まで座部11の上方及び下方への変位を規制することができるものであればよく、他の公知な構成のものを採用してもよい。
図5に示すように、上方及び下方変位抑制機構40は、車両中央側のサイドフレーム14に設けられている。変位抑制機構40は、後リンク部材22の上端部と一端(後端)が連結された中間リンク部材41と、中間リンク部材41の他端(前端)と連結されたギヤ部材42と、ギヤ部材42の回動を抑制するロータリーダンパ44とを有している。
中間リンク部材41の一端は、車幅方向に延びる連結ピン41aによって後リンク部材22に回動可能に連結され、他端は、車幅方向に延びる連結ピン41bによってギヤ部材42と回動可能に連結されている。
ギヤ部材42は、車幅方向に延びるシャフト42cによってサイドフレーム14に回動可能に連結されており、外周には歯42aが形成されている。歯42aは、ロータリーダンパ44のギヤ部材47と噛合している。
図6,図7に示すように、ロータリーダンパ44は、ベース部材45と、ベース部材45に回動可能に支持されるロータ46と、ロータ46に固定されたギヤ部材47とを有している。
ベース部材45は、円板状の支持部45aと、支持部45aの中央部にロータ46側に突出するように形成された軸部45bと、軸部45bと同軸に軸部45bを囲むように形成された円筒状の周壁部45cと、支持部45aから径方向外側に延びて形成された取付部45dを有する。ベース部材45は、取付部45dに設けられた取付孔にボルトを挿通してサイドフレーム14に固定されている。また、周壁部45cの先端部には、円板状のキャップ45eが液密的に嵌め込まれている。
ロータ46は、周方向にほぼ等角度間隔に設けられた径方向に延びる4つの羽根部46aを有する。また、ロータ46は、軸方向の底面中央に凹部46bが形成され、頂面中央に円柱状の軸部46cが軸方向に突出するように形成されている。
ロータ46は、凹部46bに軸部45bが差し込まれ、軸部45bに回動可能に支承される。この状態では、ロータ46は、羽根部46aが周壁部45c内に収容され、羽根部46aの先端と周壁部45cの内周面との間には所定の隙間が形成される。また、軸部46cは、キャップ45eの中央に穿設された孔部45fを通って車両外側に突出する。
ベース部材45の支持部45a,周壁部45c,キャップ45e及びロータ46で囲まれる空間は、所定の粘性を有するオイル46dで満たされた油室45gを形成している。羽根部46aの先端と周壁部45cの内周面との間に形成された隙間は、オリフィス45hを構成する。
ギヤ部材47は、ロータ46の軸部46cに同軸的に取り付けられ、ギヤ部材47とロータ46とは一体に回動するようになっている。ギヤ部材47は、有底円筒状であり、円板部47aの縁部から軸方向に延びる周壁部47bがベース部材45の周壁部45cの径方向外側を覆っている。周壁部47bの径方向外側面には、ギヤ部材42の歯42aと噛合するギヤ歯47cが形成されている。
なお、軸部46cとキャップ45eとの摺動部分には、図示しないオイル漏れ防止機構が設けられている。
このような構成により、ロータリーダンパ44では、ギヤ部材47を介してロータ46を回動させようとする外力が掛かると、ロータ46の回動に伴いオイル46dがオリフィス45hを通過して油室45g内を移動しようとする。このとき、ロータ46は、オイル46dの粘性抵抗によって羽根部46aを介して回転速度に比例した制動力を受け、回転が抑制される。すなわち、座部11側から伝達される外力によってロータ46の角速度が大きくなるほど制動力が大きくなるので、ロータ46は急激な回動が抑制される。
例えば、車両1に側突時等には、座部11に下向き荷重が掛かることがあるが、この荷重は、図5で後リンク部材22を時計方向に回動させようとする。後リンク部材22の時計方向の回動は、中間リンク部材41を車両後方へ移動させ、さらにギヤ部材42を時計方向に回動させようとする。
しかしながら、ギヤ部材42はロータリーダンパ44に連結されているので、上述のようにロータ46の回動を規制する制動力によってギヤ部材42は、その回動が抑制される。これにより、座部11の下向きの急激な変位が抑制される。
また、車両1の側突時や横転時には、座部11に上向き荷重が掛かる場合があるが、下向き荷重が掛かった場合と逆の動作により、上方及び下方変位抑制機構40によって座部11の急激な上方変位が抑制される。
一方、操作レバー29によって座部11を上下動操作する場合は、ロータ46の角速度が小さいので制動力も小さくなる。したがって、操作レバー29による上下動操作の場合には、座部11の上下動はほとんど抑制されない。
次に、図1,図2に基づいて、着座した乗員A,Bを車両用シートSに拘束するためのシートベルト装置60について説明する。
シートベルト装置60は、乗員A,Bを拘束する帯状のウェビング61と、ウェビング61の一端側を繰り出し可能に収納するリトラクタ70と、ウェビング61に取り付けられたフック部材64を係止する係止部66とを有する。ウェビング61の他端は、シートクッション10の車両外側の側部(スライダ18a)に固定されたアンカー62に取り付けられている。なお、アンカー62は、リフト機構部20よりも下方の基部16や車両フロア2の固定部に固定されることが望ましい。
リトラクタ70は、車両1のピラー3の下部に配設され、トリムカバー4によって覆われている。リトラクタ70は、ウェビング61を巻き取るように付勢している。
また、リトラクタ70は、ショルダプリテンショナ72を内蔵している。ショルダプリテンショナ72は、側突時又は横転時にウェビング61による乗員A,Bの拘束力を高めるようにウェビング61をリトラクタ70内に牽引するものであり、ウェビング61を瞬時に巻き取るための機構を有すると共に、フォースリミッタ付のロック機構(図示せず)を備えている。
ウェビング61は、リトラクタ70からピラー3の上部に配設されたガイド63までピラー3に沿って案内され、ガイド63に摺動可能に保持されると共に車両用シートS側へ方向転換されるように配置されている。
係止部66は、支持プレート19に固定されたラッププリテンショナ67と、ラッププリテンショナ67によって牽引されるワイヤ68と、ワイヤ68の先端に取り付けられフック部材64と着脱可能に係合するバックル69とを有する。ワイヤ68は、カバーによって覆われている。なお、ラッププリテンショナ67は、リフト機構部20よりも構造的に下方であれば、基部16や車両フロア2を含む所定の固定部に固定してもよい。
ワイヤ68は、シートクッション10の車両中央側の側部まで引き出され、バックル69は、シートクッション10の車両中央側の側部に配置されている。
図1に示すように、フック部材64をバックル69に係着した状態では、ウェビング61は、バックル69から乗員A,Bの上体を斜めに横切って肩部付近と当接しつつガイド63まで延びるショルダ部61aによって乗員A,Bの胸部及び腹部を拘束すると共に、アンカー62からバックル69まで車幅方向に延びるラップ部61bによって乗員A,Bの腰部を拘束する。
ショルダプリテンショナ72は、後述するコントローラ90からの作動信号によって作動し、ウェビング61をリトラクタ70内に引き込むことにより、主にショルダ部61aによって乗員A,Bの胸部の拘束力を高めた状態で乗員A,Bをシートバック50に拘束する。
また、ラッププリテンショナ67は、コントローラ90からの作動信号によって作動し、ワイヤ68を介してバックル69及びフック部材64を車両下方へ引き込むことにより、主にラップ部61bによって乗員A,Bの腰部付近の拘束力を高めた状態で乗員A,Bをシートクッション10及びシートバック50に拘束する。
ラッププリテンショナ67の引き込み長さは、ショルダプリテンショナ72の引き込み長さよりも短く設定されているため、ラップ部61bが作動開始から最大テンションに達する時間(1〜2ms)の方が、ショルダ部61aが作動開始から最大テンションに達する時間(2〜3ms)よりも短くなっている。なお、本実施形態では、ラッププリテンショナとしてバックル側を牽引するようにしたが、これに替えて、アンカー62側をプリテンショナで牽引してもよい。この場合、アンカー62を車体側のピラー部や車両フロアに設置してもよい。
次に、図1,図2,図8,図9に基づいて、サイドエアバッグ装置80について説明する。図8はエアバッグ81が膨張展開した状態のシートバック50の断面図、図9は車幅方向から見た膨張したエアバッグ81の側面図である。
サイドエアバッグ装置80は、車両ドア等の車両側部と着座した乗員A,Bとの間に膨張展開して乗員A,Bを保護するエアバッグ81と、コントローラ90からの作動信号に基づいてガスを供給してエアバッグ81を膨張展開させるインフレータ89を備えており、エアバッグ81が折り畳まれた状態でインフレータ89と共にユニット化されている。エアバッグ81は、作動開始から4〜10msで乗員A,Bの保護機構を果たすように膨張展開する。
図8に示すように、シートバック50の車両外側のサイドサポート部52aには、側端面56に車両中央側に向けて所定深さの凹部54が形成されており、凹部54にユニット化されたエアバッグ81及びインフレータ89が格納されている。凹部54の開口は、カバー部材55で覆われている。エアバッグ展開時には、膨張するエアバッグ81によってカバー部材55のテアラインが破断し、カバー部材55は車両後方端をヒンジとして車両側方へ展開する。これにより、エアバッグ81は、車両外側且つ前方に向けて展開可能となる。
図9に示すように、展開状態のエアバッグ81は、車幅方向から見て、車両用シートSのシートクッション10に着座した乗員A,Bの胸及び腹を保護するように胸部側方に向けて展開する胸腹保護部82と、乗員A,Bの腰を保護するように腰部側方に向けて展開する腰保護部83を備えている。これらの胸腹保護部82及び腰保護部83は、展開状態で車幅方向内側と外側に位置する同じ形状の二枚の布を縫製部84で縫製することにより形成されている。
また、胸腹保護部82と腰保護部83とは、縫製部84の一部である連結部84aにより連結され、一体的に膨張展開するようになっている。また、連結部84aの最後端部には、縫製部84の一部である非膨張部84bが形成され、その部位が破断しないように強度を向上させている。
胸腹保護部82と腰保護部83は、それぞれの上方部で連通領域85において連通しており、その連通領域85の近傍に位置する腰保護部83の部位に形成されたガス流入口86にインフレータ89のガス噴出口(図示せず)が接続されている。
図2及び図9に示すように、胸腹保護部82のうち、小柄な乗員(例えば、上述したAF05に対応する乗員B)の上腕部B1に対応する部位付近には、膨張抑制部である凹部87が形成されている。より具体的には、凹部87は、胸腹保護部82の前縁部82aに、車幅方向から見て、前縁部上部82bと前縁部下部82cの間で後方に窪むように形成され、さらに、この凹部87は、胸腹保護部82の上半分側に形成されている。胸腹保護部82は、この凹部87が形成された部位が他の部位よりも、車幅方向に薄く膨張するように形成されている。例えば、薄く膨張する部位は、対向する布の内面が所定長さの糸で連結され、これにより対向する布が所定以上離間しないように構成することができる。
また、前縁部上部82bの近傍及び前縁部下部82cの近傍には、それぞれベントホール82d,82eが形成されている。
腰保護部83は、上述のように胸腹保護部82と連結され、エアバッグ展開時には、車両用シートSのシートクッション10の座面に接触するように展開するように形成されている。これにより、エアバッグ81は、安定して展開し、展開安定性を高めることができる。
エアバッグ膨張展開時には、腰保護部83はウェビング61を介在させて乗員A,Bの腰部に横方向(車幅方向外側)から当接して腰部を車両中央側へ押圧し、乗員A,Bの腰部の保護を図ることができる。
また、エアバッグ展開時には、エアバッグ81の胸腹保護部82が乗員A,Bの胸部及び腹部に横方向から当接して胸部及び腹部を車両中央側へ押圧し、乗員A,Bの胸部及び腹部の保護を図ることができる。
一般に、小柄な乗員Bは、上腕部B1が胸腹保護部によって押圧され、胸部の変位が促進されてしまう。しかしながら、本実施形態の胸腹保護部82は、凹部87が形成された部位が他の部位よりも車幅方向に薄く膨張するように形成され、且つ、上腕部B1が凹部87に入り込むので、胸腹保護部82によって上腕部B1及び胸部が車両中央側に過度に押されず、上体がねじられてしまうことが抑制される。これにより、エアバッグ膨張展開時に、乗員A,Bは正常な着座姿勢を保持し易くなる。
なお、側面視で凹部87のシートバック側に凹んだ部分が、シートバックの延設方向に沿って上側に延びるようにエアバッグを形成し、小柄な乗員から中柄な乗員に対応させてもよい。
次に、上述の第1実施形態による車両用シートの作用について説明する。
シートベルト装置60及びサイドエアバッグ装置80は、車両1に設けられた側突センサ91,横転センサ92からの検知信号によって、コントローラ90が、ショルダプリテンショナ72,ラッププリテンショナ67,インフレータ89を所定のタイミングで作動させることにより、乗員A,Bを保護するようになっている。
図10は、これらの装置の電気ブロック図である。図10に示すように、車両1に設けられたECU等のコントローラ90には、側突センサ91,横転センサ92,ショルダプリテンショナ72,ラッププリテンショナ67,インフレータ89が電気的に接続されている。
側突センサ91は、車両1の側突を検知したとき、検出信号をコントローラ90に出力するように構成されている。横転センサ92は、車両1の横転を検知したとき、より具体的には、車両1が所定角度以上傾いたことを検知したときに、検出信号をコントローラ90に出力するように構成されている。
図11に基づいてコントローラ90の処理フローについて説明する。コントローラ90は、所定時間毎に側突センサ91及び横転センサ92からの出力信号を取得する(ステップS1)。コントローラ90は、出力信号を取得すると、その出力信号に基づいて車両1が側突又は横転状態にあるか否かを判定する(ステップS2)。具体的には、ステップS2では、コントローラ90は、出力信号が側突又は横転を検出した検知信号であるか否かを判定する。
そして、コントローラ90は、ステップS2で側突又は横転と判定しなかった場合(ステップS2;No)には処理を終了し、側突又は横転と判定した場合(ステップS2;Yes)にはステップS3に進む。
コントローラ90は、ステップS3でショルダプリテンショナ72,ラッププリテンショナ67,インフレータ89に作動信号を出力し、所定のタイミングで作動させて処理を終了する。
図12は、図11のステップS3の処理のタイミングチャートである。ここでは、時間t0に側突又は横転と判定されている。コントローラ90は、側突又は横転と判定するとほぼ同時に、ショルダプリテンショナ72,ラッププリテンショナ67,インフレータ89を作動させる。
ラッププリテンショナ67は、時間t1(時間t0から1〜2ms後)に、ラップ部61bを最大テンションにする。ショルダプリテンショナ72は、時間t1からわずかに遅れて時間t2(時間t0から2〜3ms後)に、ショルダ部61aを最大テンションにする。さらに、展開途中のエアバッグ81は、時間t2からさらに遅れて時間t3(時間t0から4〜10ms後)に、乗員A,Bを押圧し始めて保護機能を発揮する。
ここで、従来技術のように、エアバッグが展開された後にプリテンショナが機能する構成の場合、まず展開したエアバッグが乗員A,Bの胸部に干渉して、乗員A,Bの上体が車両外側から車両中央側へ押され、上体が捩れ胸部の変形が生じる。このため、胸部は正常な着座姿勢から変位してしまう。そして、この状態でプリテンショナによってウェビングが牽引され拘束力が高められても、胸部変形の抑制が適切に行われないため、乗員A,Bを正常な着座姿勢に拘束することができない。このため、乗員A,Bの胸部へ衝撃荷重が伝達(局所的に過剰な荷重伝達等)されるおそれがある。
これに対し、本実施形態の車両用シートSでは、展開したエアバッグ81が乗員A,Bの胸部や腰部に干渉する前、すなわちエアバッグ81が乗員保護機能を発揮する前に、シートベルト装置60のショルダプリテンショナ72,ラッププリテンショナ67が作動完了し、ウェビング61により乗員A,Bの拘束力を高めるように機能する。そして、車両用シートSでは、乗員A,Bをシートクッション10及びシートバック50に正常な着座姿勢に拘束した状態でエアバッグ81を機能させることができる。これにより、乗員A,Bの胸部(骨格)の変形が抑制され、胸部への衝撃荷重の伝達(局所的に過剰な荷重伝達等)を効果的に軽減することができる。
また、本実施形態の車両用シートSでは、エアバッグ81がシートバック50の側端面56から車両前方に展開する構成であるので、エアバッグ展開に際し、乗員A,Bと当接するシートバック50の変形が軽減される。これにより、エアバッグ展開による乗員A,Bの胸部姿勢の変位が抑制され、乗員A,Bの胸部への異常な衝撃荷重伝達をより抑制することが可能である。
なお、エアバッグ81が、ケースに収納された状態でシートバック50の凹部54に配置された構成であってもよい。このように構成すると、エアバッグ展開時に、シートバック50のクッション体52の変形をより抑制することができる。これにより、さらに乗員A,Bの胸部への異常な衝撃荷重伝達を抑制することが可能となる。
また、本実施形態の車両用シートSでは、上述のように、エアバッグ81は、小柄な乗員Bの上腕部B1が当接する部位が他の部位よりも車幅方向に薄く膨張するように形成され、且つ、膨張時に上腕部B1が凹部87に入り込むように構成されている。これにより、小柄な乗員Bであっても、展開するエアバッグ81によって上体が過度に捩れた状態になることが抑制され、より乗員の保護性が向上される。
また、本実施形態の車両用シートSでは、エアバッグ81の腰保護部83が乗員A,Bの腰部に当接する前に、予めラップ部61bがラッププリテンショナ67によって拘束力の高いテンションを与えられるので、ラップ部61bは、展開するエアバッグ81の腰保護部83の展開動作と干渉せず、正常な拘束位置で、且つ、エアバッグ81を挟み込むことなく乗員A,Bを拘束することができる。これにより、車両用シートSでは、ラッププリテンショナ67により牽引されたウェビング61によって、乗員A,Bを正常な着座姿勢でシートバック50及びシートクッション10に拘束することができる。
また、本実施形態の車両用シートSでは、シートクッション10は、座部11がリフト機構部20によって所定の支持力で所定高さに保持されている。このため、側突時や横転時の衝撃に起因して座部11に上下方向に支持能力を超えた大きな荷重が掛かると、座部11は基部16に対して離接方向に変位しようとする。
しかしながら、シートクッション10には、車両外側のサイドフレーム13に座部11の上下変位を抑制するブレーキ機構30が設けられ、車両中央側のサイドフレーム14に上方及び下方変位抑制機構40がそれぞれ設けられているので、座部11の急激な上方及び下方変位を抑制することができる。
さらに、本実施形態の車両用シートSでは、ウェビング61は、リフト機構部20よりも下方である基部16に固定されたラッププリテンショナ67及びアンカー62と、車体に固定されたリトラクタ70とに連結されているので、ラッププリテンショナ67及びショルダプリテンショナ72が作動することにより、側突時及び横転時に、ウェビング61は乗員A,Bと座部11を基部16側、すなわち車両フロア2側に押し付けることができる。
したがって、側突時及び横転時に座部11に大きな上向き荷重が掛かったときでも、ブレーキ機構30及び変位抑制機構40に加えて、ウェビング61により座部11の上方変位を抑制することができる。
また、側突時にラッププリテンショナ67及びショルダプリテンショナ72が作動すると、座部11には、側突による大きな下向き荷重に加えて、牽引されたウェビング61によって追加的に下向き荷重が掛かるが、ブレーキ機構30及び変位抑制機構40によって座部11の下方変位が抑制される。
このように、本実施形態の車両用シートSでは、大きな上向き及び下向き荷重が座部11に掛かっても、乗員A,B及び座部11の挙動変化が減少されることにより、乗員A,Bに局所的に過剰な荷重が集中してしまうことが抑制され、乗員の保護性能の向上を図ることができる。
なお、上記実施形態では、ブレーキ機構30を含む操作機構24がサイドフレーム13の支持部20Aに設けられ、変位抑制機構40がサイドフレーム14の支持部20Bに設けられていたが、これに限らず、操作機構24が支持部20Bに設けられ、変位抑制機構40が支持部20Aに設けられてもよい。
また、上記実施形態では、変位抑制機構部40は、ロータリーダンパ44によって座部11の急激な上方及び下方変位を抑制する構成であったが、これに限らず、座部11に当接するストッパによって座部11の上方及び下方変位を規制する構成であってもよい。
また、上記実施形態では、ラッププリテンショナ67及びショルダプリテンショナ72が設けられた構成であったが、これに限らず、いずれか一方のみが設けられた構成であってもよい。
次に、コントローラ90によるステップS3の処理の変形例を図13,図14に基づいて説明する。
図13は、インフレータ89をショルダプリテンショナ72及びラッププリテンショナ67よりも先に作動開始させるが、ウェビング61が最大テンションとなった後に、エアバッグ81が保護機能を発揮する程度に膨張展開する例を示している。この例では、コントローラ90は、インフレータ89を時間t0に作動開始させ、ショルダプリテンショナ72を時間t0よりわずかに遅れて時間t4に作動開始させ、ラッププリテンショナ67をさらに時間t4よりも遅れて時間t5に作動開始させている。
ショルダプリテンショナ72及びラッププリテンショナ67は時間t6にウェビング61を最大テンションにするが、インフレータ89は時間t6よりも後の時間t7にエアバッグ81を最大容積に膨張させる。このように作動させるように構成しても、ウェビング61によって乗員A,Bを正常な姿勢で確実に拘束した状態で、エアバッグ81によって乗員A,Bを保護することができる。
また、図13の例では、ショルダプリテンショナ72及びラッププリテンショナ67がウェビング61を最大テンションとする時期をほぼ一致させているので、乗員A,Bをシートバック50及びシートクッション10により確実に拘束することができる。
なお、図13の例で、エアバッグ81が乗員の保護機能を発揮する前に、ショルダプリテンショナ72及びラッププリテンショナ67がウェビング61を最大テンションにすれば、ラッププリテンショナ67をショルダプリテンショナ72よりも先に作動開始させてもよい。
図14は、ショルダプリテンショナ72及びラッププリテンショナ67をインフレータ89よりも先に作動開始させる例を示している。この例では、ショルダプリテンショナ72及びラッププリテンショナ67を、時間t0に作動開始させ、インフレータ89を時間t0よりも遅れて時間t8に作動開始させている。これにより、ラッププリテンショナ67は時間t9にウェビング61を最大テンションにし、ショルダプリテンショナ72は時間t10にウェビング61を最大テンションにし、インフレータ89は時間t10よりも後の時間t11にエアバッグ81を最大容積に膨張させる。このように作動するように構成すると、ウェビング61によって乗員A,Bをより確実に正常な着座姿勢に拘束した状態で、エアバッグ81によって乗員A,Bを保護することができる。
次に、図15〜図17により、本発明の第2実施形態による車両用シートSを説明する。図15はエアバッグ181が展開した状態の車両用シートSの正面図、図16は車両外側から見た車両用シートSの側面図、図17はエアバッグ181が膨張展開した状態のシートバック50の断面図である。なお、以下の実施形態では、第1実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
第2実施形態の車両用シートSでは、ユニット化されたサイドエアバッグ装置180がシートバック50内に埋設された状態で格納され、シートバック50の車両外側の側端面56の前縁近傍からエアバッグ181がシートバック50外に展開するように構成されている。サイドエアバッグ装置180以外の構成は、上記実施形態の車両用シートSと同様であり、奏する効果も同様である。
なお、エアバッグ181は、胸腹保護部,腰保護部及び凹部87を備えている点でエアバッグ81と同様の基本構造を有し、凹部87は他の部位よりも車幅方向に薄く膨張するように形成されている。
図17に示すように、シートバック50のサイドサポート部52a内には、車両外側にシートバックフレーム53に隣接して凹部150が形成されており、この凹部150にサイドエアバッグ装置180が配設されている。サイドサポート部52aは、車両前方に隆起しており、前端部、すなわち側端面56の前縁が頂部をなしている。
クッション体52には、凹部150の前端からサイドサポート部52aの前端部付近に掛けてスリット151が形成されており、サイドサポート部52aの表皮には、スリット151の出口に整合して、側端面56の前縁近傍に破断部152が設けられている。
次に、第2実施形態による車両用シートの作用を説明する。
インフレータ89が作動すると、膨張途中のエアバッグ181は、スリット151を車幅方向に拡げながらスリット151を通過し、破断部152を破断させてシートバック50外に展開する。このように、エアバッグ181は、シートバック50の車両側の側端面56の前縁からほぼ車両前方に展開するように構成されている。これにより、エアバッグ181は、腰保護部が乗員A,Bの腰に近い領域を通って展開し、乗員A,Bの腰部の車幅方向外側に位置する。このように展開することで、エアバッグ181が乗員A,Bを車両中央側へ押圧する程度が軽減され、乗員A,Bの上体の変形が抑制される。
また、第2実施形態の車両用シートSでも、第1実施形態と同様にエアバッグ181が乗員保護機能を発揮する程度まで膨張展開するよりも前に、ウェビング61は最大テンションで乗員A,Bを拘束する。したがって、第2実施形態の車両用シートSのようにエアバッグ181が乗員A,Bの腰に近い領域を通って展開する場合でも、ウェビング61とエアバッグ81の腰保護部との干渉を防止することができる。なお、第1及び第2実施形態では、ラッププリテンショナ67を設けたが、ショルダプリテンショナ72のみでもよい。
次に、図18により、本発明の第3実施形態による車両用シートを説明する。図18はエアバッグ81が展開した状態の車両用シートSの正面図である。
第3実施形態の車両用シートSは、第1実施形態の車両用シートSとほぼ同様の構成であるが、所謂シートベルトインタイプのシートベルト装置160を備えている点で相違する。この車両用シートSでは、リトラクタ70が支持プレート19に固定され、引出支持部としてのガイド65がシートバックフレーム53の車両外側の上端部近傍からクッション体52を貫通して上方に突出するように取り付けられている。
ウェビング61は、リトラクタ70からシートバック50の内部を通ってガイド65まで案内され、ガイド65で摺動可能に支持されシートクッション10側へ方向転換するように配置されている。
このように車両用シートSでは、ウェビング61が、リフト機構部20よりも構造的に下部の支持プレート19に取り付けられたリトラクタ70及びラッププリテンショナ67と、スライダ18aに取り付けられたアンカー62とに連結され、シートバック50上部に取り付けられたガイド65を経由して乗員A,Bを拘束するように配索される。
次に、第3実施形態による車両用シートの作用を説明する。
上述の構成により、第3実施形態の車両用シートSでは、ラッププリテンショナ67とショルダプリテンショナ72が作動してウェビング61が牽引されると、乗員A,B及び座部11が基部16側へ押さえ付けられる。
そして、側突時及び横転時に座部11を基部16に対して上方又は下方変位させるような荷重が掛かっても、ショルダプリテンショナ72及びラッププリテンショナ67によって牽引されたウェビング61,ブレーキ機構30及び変位抑制機構40によって、乗員A,Bと座部11の上方及び下方変位が抑制され、座部11の挙動を安定させることができる。
次に、図19に基づいて、変形例に係るリフト機構部20について説明する。図19は車両中央側のサイドフレーム14に設けられたリフト機構部20の側面図である。なお、図19は車両外側から見た図である。
図19の例は、上方及び下方変位抑制機構40が、ロータリーダンパ44の替わりにショックアブソーバ144を有する例である。つまり、このリフト機構部20では、上方及び下方変位抑制機構40は、中間リンク部材41と、中間リンク部材41の前端と連結されたほぼ三角形状の連結部材142と、連結部材142に連結されたショックアブソーバ144とを有している。
連結部材142は、車幅方向に延びるシャフト142cによってサイドフレーム14に回動可能に連結されている。また、連結部材142には、中間リンク部材41の前端が車幅方向に延びる連結ピン41bによって回動可能に連結され、ショックアブソーバ144のピストンロッド144bの先端部が連結ピン144cによって回動可能に連結されている。
ショックアブソーバ144は、シリンダ144aと、シリンダ144aに対して進退動可能なピストンロッド144bとを備えている。シリンダ144aの先端部は、連結ピン144dによってサイドフレーム14に回動可能に連結されている。
ショックアブソーバ144は、ピストンロッド144bを進退動させるような外力が掛かった場合に、ピストンロッド144bの移動速度に比例する制動力を発生し、ピストンロッド144bの移動速度を低減するように構成されている。
側突時又は横転時に座部11が基部16に対して上方又は下方変位する荷重が座部11に掛かった場合、荷重方向に応じて後リンク部材22が時計方向又は反時計方向に回動しようとし、これに伴って中間リンク部材41が車両前後方向に移動しようとする。
中間リンク部材41が車両前方に移動する場合には連結部材142が反時計方向に回動し、中間リンク部材41が車両後方に移動する場合には連結部材142が時計方向に回動する。この連結部材142の回動は、ショックアブソーバ144のピストンロッド144bをシリンダ144aに対して進退動させようとする。このとき、上述のようにピストンロッド144bには制動力が掛かる。したがって、この制動力によって連結部材142及び中間リンク部材41を介して後リンク部材22の回動が抑制される。これにより、座部11の上方及び下方変位を抑制することができる。
本発明の第1実施形態の車両用シートを示す正面図である。 図1の車両用シートの側面図である。 図1の車両用シートのリフト機構部の側面図である。 図1の車両用シートのブレーキ機構の分解斜視図である。 図1の車両用シートのリフト機構部の側面図である。 図5のI−I線断面図である。 図6のII−II線断面図である。 図1の車両用シートのエアバッグが膨張展開した状態のシートバックの断面図である。 図1の車両用シートの膨張展開したエアバッグの側面図である。 図1の車両用シートの電気ブロック図である。 図1の車両用シートのコントローラの処理フローである。 図1の車両用シートのコントローラの処理のタイミングチャートである。 変形例のコントローラの処理のタイミングチャートである。 変形例のコントローラの処理のタイミングチャートである。 本発明の第2実施形態の車両用シートを示す正面図である。 図15の車両用シートの側面図である。 図15の車両用シートのエアバッグが膨張展開した状態のシートバックの断面図である。 本発明の第3実施形態の車両用シートの正面図である。 変形例のリフト機構部の側面図である。
符号の説明
1…車両、 2…車両フロア、 10…シートクッション、
11…座部、 13,14…サイドフレーム、 16…基部、
17a,17b…シートレール、 18a,18b…スライダ、
19…支持プレート、 20…リフト機構部、
21…前リンク部材、 22…後リンク部材、 24…操作機構、
25…中間リンク部材、 26…セクターギヤ部材、 27…歯車、
28…回転シャフト、 29…操作レバー、 30…ブレーキ機構、
40…上方及び下方変位抑制機構、 41…中間リンク部材、
42…ギヤ部材、 44…ロータリーダンパ、 47…ギヤ部材、
50…シートバック、 52…クッション体、
53…シートバックフレーム、 54…凹部、 55…カバー部材、
60,160…シートベルト装置、 61…ウェビング、
62…アンカー、 63…ガイド、 64…フック部材、
66…係止部、 67…ラッププリテンショナ、 68…ワイヤ、
69…バックル、 70…リトラクタ、 72…ショルダプリテンショナ、
80,180…サイドエアバッグ装置、 81,181…エアバッグ、
89…インフレータ、 90…コントローラ、 91…側突センサ、
92…横転センサ、 A,B…乗員、 B1…上腕部、 S…車両用シート

Claims (7)

  1. シートクッションと、このシートクッションに対して起立したシートバックと、着座した乗員をウェビングにより拘束するシートベルト手段と、着座した乗員と車両側部との間にエアバッグを膨張展開させて乗員を保護するサイドエアバッグ手段とを備えた車両用シートであって、
    前記シートベルト手段は、側突時又は横転時に前記ウェビングによる乗員の拘束力を高めるようにこのウェビングを牽引するプリテンショナを備え、
    前記シートベルト手段及びサイドエアバッグ手段は、前記シートベルト手段が前記プリテンショナにより前記ウェビングを牽引して乗員の拘束力を高めた状態で、前記サイドエアバッグ手段が前記エアバッグの膨張展開により乗員を保護するように構成されていることを特徴とする車両用シート。
  2. 前記プリテンショナは、前記ウェビングの牽引により乗員の胸部の拘束力を高めるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用シート。
  3. 前記サイドエアバッグ手段は、前記エアバッグを前記シートバックの側端面から着座した乗員の胸部側方に向けて展開するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用シート。
  4. 前記エアバッグは、前記シートバックの側端面に形成された凹部に配置され、この凹部の開口から乗員側に展開するように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の車両用シート。
  5. 前記エアバッグは、着座した乗員の胸部及び腹部を保護するように膨張する胸腹保護部を備え、
    この胸腹保護部は、所定の小柄な乗員の上腕に対応する部位が該部位より下の他の部位よりも車幅方向に薄く膨張するように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用シート。
  6. 前記プリテンショナは、前記ウェビングの牽引により乗員の腰部付近の拘束力を高めるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用シート。
  7. 前記エアバッグは、展開状態で乗員の腰部の車幅方向外側に位置する腰保護部を備え、前記シートバック内に埋設された状態で格納され、このシートバックのサイドサポート部の前端部近傍からこのシートバック外に展開されるように構成されていることを特徴とする請求項6に記載の車両用シート。
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