JP2008203460A - 透湿性に優れた光学用フィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】大きな透湿性と湿度変化に対する寸法安定性を両立した光学フィルムや光学シートを提供する。
【解決手段】JIS k7129 B法に従い、温度40℃、相対湿度90%で測定した水蒸気透過率が100(g/m・日/0.1mm)以上のフィルムであって、温度20℃で相対湿度を5%から85%まで変化させて測定した吸湿膨張係数βが10(ppm/RH%)以下である光学フィルム、または、疎水性のマトリックスポリマーに、透湿性ポリマーをナノ分散させてなる光学フィルム。
【選択図】なし

Description

本発明は透湿性に優れた光学用のフィルム・シートであって、しかも・透明性・寸法安定性にも優れたフィルムに関するものであり、特に液晶表示部材などの光学用途に相応しいフィルムを提供するものである。
従来の高分子フィルムの場合、透湿性の大きなフィルムとしては、吸水基である水酸基OHを有した、セルローストリアセテートTAC、ポリビニールアルコールPVA、セロファン、さらには、エーテル基を有したポリエステルエーテルエラストマー、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドなどが知られていた。
また、特定のアイオノマーとポリオレフィン等とをブレンドした組成物は従来から知られていたが(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)、これらを光学フィルムに使用することは知られておらず、また、その透湿性についても着目されておらず、特に検討されていなかった。
特開平8−134295号公報 国際公開第01/83612号パンフレット
ところが、上述の透湿性の大きなフィルムでは、透湿性は優れているものも、湿度変化による寸法安定性が大きく、少しの湿度変化でもフィルム寸法が変化し、その結果、フィルムの収縮や伸び、さらにはカールなどの問題点があるために、寸法安定性の要求の厳しい用途、例えば光学用の部材に用いると、光学特性が低下したり、外観が悪化するなど問題点が多く、このままで用いるには種々の問題点があった。
このために、これらの湿度変化を小さくするために、該透湿性に優れたフィルムにポリオレフィンフィルムの様な湿度を透過し難い素材を両面に積層することによって湿度による寸法変化は確かに小さくすることは出来るが、その代わりに透湿性が大きく低下してしまい、大きな透湿性と湿度による寸法安定性を両立することは出来なかったのである。
さらにこれらのフィルムを位相差などの光学用途に用いるためには、フィルムを構成する分子を一定方向に配向させる必要があり、この様に分子配向をさせることによって、該フィルムの湿度による寸法安定性はさらに悪化するばかりか、透湿性も低下するので、大きな透湿性と湿度による寸法安定性とを両立することは出来なくなるのである。
本発明の目的は、かかる従来の吸水性高分子では達成できなかった大きな透湿性と湿度による寸法安定性を両立した光学フィルムや光学シートを提供することである。
発明者らは鋭意検討の結果、特定の水蒸気透過率と、特定の吸湿膨張係数とを有するフィルムが、例えば偏光板保護フィルムとして使用した際に、貼り合せ時の外観、高湿下で放置した後の外観に優れるうえに、それ以外の光学フィルムにも好ましく使用することが可能であることを見出し、本発明に至った。
更に発明者らは、特定のマトリックスポリマーに、特定の透湿性ポリマーをナノ分散させてなるフィルムが、上記光学フィルムに好適な特性を有し、実用上高い価値を有することをも見出した。
すなわち本件第1発明は、
(1)JIS K7129 B法に従い、温度40℃、相対湿度90%で測定した水蒸気透過率が100(g/m・日/0.1mm)以上のフィルムであって、温度20℃で相対湿度を5%から85%まで変化させて測定した吸湿膨張係数βが10(ppm/RH%)以下である光学フィルムに関する。
以下、(2)から(5)は、それぞれ本件第1発明の好ましい実施形態の1つである。
(2)該フィルムの波長550nmにおける光線透過率が85%以上である上記(1)に記載の光学フィルム。
(3)ASTM D570に従い、温度23℃の水中に24時間浸漬した際の該フィルムの吸水率が0.2重量%以下である、上記(1)または(2)に記載の光学フィルム。
(4)該フィルムの波長589nmにおける光学リターデーションRの絶対値が0から120nmの範囲にある上記(1)から(3)のいずれか1項に記載の光学フィルム。
(5)疎水性のマトリックスポリマーに、透湿性ポリマーをナノ分散させてなる上記(1)に記載の光学フィルム。
また、本件第2発明は、
(6)疎水性のマトリックスポリマーに、透湿性ポリマーをナノ分散させてなる光学フィルムに関する。
以下、(7)は、本件第1発明、または本件第2発明の好ましい実施形態の1つである。
(7)前記透湿性ポリマーが、カリウム、ルビジウム、およびセシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属のイオンを有するアイオノマーポリマーである上記(5)または(6)に記載の光学フィルム。
本発明の光学フィルムによれば、大きな透湿性を有しているにもかかわらず、湿度による寸法変化の小さい光学フィルムを得ることが出来る。この様な光学フィルムは、例えば偏光フィルム等の含水フィルムのカバーフィルムに好ましく用いることが出来る。
また、本発明の光学フィルムは、帯電防止性にも優れているので、ゴミの付着が抑制され、クリーンな、表面欠点のない光学フィルムを比較的容易に得ることができる。
更に、本発明の光学フィルムは表面の易接着性にも優れているので、他の素材とのラミネート用の基材として使用しても、強力な層間接着力が比較的容易に得られる。

加えて、本発明の光学フィルムは機械的強度を向上させることが比較的容易であるので、マトリックスポリマーよりも機械的に強靱な光学フィルムを、比較的容易に得ることができる。
本件第1発明は、水蒸気透過率が100(g/m・日/0.1mm)以上、好ましくは120(g/m・日/0.1mm)以上の光学フィルムで、吸湿膨張係数βが10(ppm/RH%)以下、好ましくは6(ppm/RH%)以下で、さらに好ましくは光線透過率が85%以上、好ましくは90%以上の光学フィルムであり、さらに好ましくは吸水率が0.2%以下、好ましくは0.1%以下である光学フィルムである。
さらに該光学フィルムに分子配向を与え、光学リターデーションRの絶対値が120nm以下、好ましくは100nm以下の光学フィルムとすることが好ましい。
本件第1発明に係る光学フィルムの場合、JIS K7129 B法に従い、温度40℃、相対湿度90%で測定した水蒸気透過率が100(g/m・日/0.1mm)以上、好ましくは120(g/m・日/0.1mm)以上の光学フィルムである。水蒸気透過率がこの値よりも小さくなると、フィルムの水蒸気の透過率が小さくなり、その結果、該光学フィルムと他の素材との貼り合わせ積層体に水系の接着剤を用いた場合や、水系インキなどの印刷をしたのちにオーバーコートした場合などでは、中間にはさまれた溶剤・分散体の水が該積層外部に速やかに飛散することが出来なくなり、残存した水が該積層体の平面性悪化や、皺の発生、カールなどの外観不良や性能不良を起こすおそれがある。なお、この水蒸気透過率は500(g/m・日/0.1mm)以下、好ましくは400(g/m・日/0.1mm)以下であることが光学フィルムとしての形状安定の維持に好ましい。
上記水蒸気透過率が100(g/m・日/0.1mm)以上で、しかも温度20℃で相対湿度を5%から85%まで変化させて測定した吸湿膨張係数βが10(ppm/RH%)以下、好ましくは6(ppm/RH%)以下であることにより透湿性に優れ、しかも高湿度下での寸法安定性に優れた光学フィルムになるのである。この吸湿膨張係数βが10(ppm/RH%)以上であると、水蒸気の透過時や、高湿下で寸法に伸びや収縮やカールが発生し、寸法安定性が悪くなり、外観不良となるおそれがある。なお、この吸湿膨張係数βは小さいほど湿度に対しての寸法変化率が少なくて好ましく、特に下限は存在しないが、現状入手可能な材料では、通常1(ppm/RH%)以上となる。
従来の高透湿性フィルムを構成する通常の親水性高分子である、セルローストリアセテートTAC、ポリビニールアルコールPVA、セロファン、さらには、エーテル基を有したポリエステルエーテルエラストマー、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドなどでは200(g/m・日/0.1mm)以上の大きな水蒸気透過率を有するが、同時に20(ppm/RH%)以上の大きな湿度膨張係数βを有するので、従来高湿下での寸法安定性は得られなかった。
本発明の光学フィルムの波長550nmにおける光線透過率は、例えば85%以上、好ましくは90%以上、さらに好ましくは92%以上と、光線透過率の優れた光学フィルムであることが好ましく、この様な優れた透明性と大きな透湿性、小さな湿度膨張係数βを有した光学フィルムは、光学用のフィルム、特に液晶表示用部材用として好ましく用いることが出来る。すなわち、ポリビニールアルコール系偏光子の偏光板保護フィルムとして業界で広く用いられているトリアセチルセルロースTACの欠点を補った新しい高機能な光学フィルムとして用いることが出来る。
本発明の光学フィルムのASTM D570に従い、温度23℃の水中に24時間浸漬した際の吸水率は0.2重量%以下、好ましくは0.1重量%以下であることが寸法安定性の点で好ましい。なお、吸水率の下限値には特に限定はなく、小さいほど寸法安定性に優れるために好ましいが、現実に入手可能な材料では、通常0.01重量%以上となる。
さらに本発明光学フィルムに延伸等を施すことにより分子配向を与え、波長589nmにおける光学リターデーションRの絶対値を0〜120nm、好ましくは100nm以下のフィルムにする事により光学位相差フィルムとして用いることも出来る。光学位相差フィルムとして用いる場合、補償する用途にもよるが、リターデーションRの絶対値は、25nm以上が好ましく、30nm以上が更に好ましい。
本発明の光学フィルムの中心線平均表面粗さRaは、100nm以下、好ましくは50nm以下、さらに好ましくは20nm以下であることが好ましい。また、光学フィルムのヘイズ値は、80μm厚さで1.5%以下、好ましくは1.0%以下であるのが良い。さらに表面塗れ張力は45dyn/cm以上、好ましくは50dyn/cm以上が好ましく、表面比抵抗は1012Ω/□以下、好ましくは1010Ω/□以下、10Ω/□以上の範囲であるのが好ましい。
本件第1発明の光学フィルムは、上記の特定の水蒸気透過率および吸湿膨張係数を具備していれば良く、その材質、製法に特に制限はないが、例えば本件第2発明のフィルムを好適に使用することができる。本件第2発明に係るフィルムは、疎水性のマトリックスポリマーに、透湿性ポリマーをナノ分散させてなる光学フィルムである。ここで、「ナノ分散」とは、マトリックスポリマーに対して、分散するポリマーの数平均分散径が光学的に透明になる程度の大きさ、具体的には100nm以下、好ましくは10nm程度に微細に分散している状態をいう。
この様なフィルムは、例えば、疎水性のマトリックスポリマーに、特定の金属イオンを含有する透湿性ポリマーを、特定量を含有させて、これら金属イオンを含有する透湿性ポリマーを分子オーダーにまでナノ分散させることによって得ることが出来る。
(疎水性ポリマー)
ここで、「疎水性ポリマー」とは、ASTM D570に従い、温度23℃の水中に24時間浸漬した際の該フィルムの吸水率が1重量%以下のポリマーであって、具体的にはポリオレフィン、ポリスチレンPSt、ポリエステル、ポリカーボネートPC、ポロメチルメタアクリレートPMMA、ポリエーテルスルフォンPES、ポリスルフォンPSF、ポリエーテルエーテルケトンPEEK、ポリフェニレンスルフィドPPSなどに代表されるポリマーである。ポリオレフィンとしては、ポリエチレンPE、環状オレフィンCOP、COC、メチルペンテンポリマーPMPなどがある。
本発明の場合、特に光学用途を考える場合には、疎水性ポリマーとしては、透明性に優れたポリスチレンPSt、環状オレフィン重合体および共重合体COP、COC、メチルペンテンポリマーPMP、ポロメチルメタアクリレートPMMA、ポリカーボネートPCなどが特に好ましい。
環状オレフィンとしては、ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物をはじめとする各種COP、ジシクロペンタジエンまたはテトラシクロドデセンとエチレンとの共重合体をはじめとするCOCおよびその水素化物、およびノルボルネン系重合体などから選ばれた1種以上で、ガラス転移点が100℃以上、好ましくは130℃以上ものが好ましい。ジシクロペンタジエンの会館重合体の水素化物は、特公昭58−43412号公報、特開昭63−218727号公報などでよく知られている。またジシクロペンタジエンとエチレンとの共重合体は、特開昭63−314220号公報などでも知られており、ノルボルネン系重合体は米国特許第2883372号明細書、特公昭46−14910号公報、特開平1−149738号公報などに示されているようにジシクロペンタジエン類とジエノフイルとの混合物から4環体以上の多環ノルボルネン系化合物を得たのち重合体にしたものなどが知られている。もちろんジシクロペンタジエン類は、そのメチルやエチル置換体などのアルキル置換体や、エンド異性体、キキソ異性体またはこれらの混合物なども含んでも良い。該環状ポリオレフインの分子量は数平均分子量で30000以上、70000未満、好ましくは35000以上、60000未満であるのが、フイルムの機械強度、特に衝撃性、押出成形などの点で好ましい。
メチルペンテンポリマーPMPとは、4メチルペンテン-1ホモポリマーや、それに炭素数8,10,12、20などの任意の長さのコモノマーを2〜20モル%程度共重合させた共重合メチルペンテンポリマーなども含み、これらの主たるものは三井化学からTPX(登録商標)として市販されている。
(透湿性ポリマー)
本件第2発明において疎水性のマトリックスポリマーにナノ分散されて使用される透湿性ポリマーとは、水蒸気透過率が1000(g/m・日/0.1mm)以上、好ましくは2000(g/m・日/0.1mm)以上と大きな透湿性を有するポリマーである。上記条件を満たす限り、透湿性ポリマーの種類には特に制限はなく、各種の透湿性ポリマーを適宜使用することが出来るが、金属イオン含有透湿性ポリマーを使用することが特に好ましい。
(金属イオン含有透湿性ポリマー)
疎水性ポリマーにナノ分散される透湿性ポリマーとして特に好ましい金属イオンを含有する透湿性ポリマーとしては、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Ce)、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、などのアルカリ金属から選ばれた金属イオン基を有するアイオノマーポリマーを用いることが好ましい。本発明の場合には特にカリウム(K)イオンを含有したポリマーの含有が、フィルムの透湿性、相溶性、透明性の点で好ましい。金属イオン基を有するアイオノマーポリマーの代表例としては、ポリスチレンスルフォン酸塩(PSS)アイオノマー、エチレン系スルフォン酸塩アイオノマー等のスルフォン酸塩アイオノマー、エチレン・不飽和カルボン酸アイオノマーなどを挙げることができる。
一方、透湿性ポリマーとして、透湿性の大きな樹脂である水酸基(OH)を有するセルローストリアセテート(TAC)、ポリビニールアルコール(PVA)、セロファン、さらには、エーテル基を有するポリエステルエーテルエラストマー、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドなどを疎水性ポリマーに添加することもできる。但し、大きな透湿性と湿度に対する寸法安定性とを両立したフィルムやシートは得る観点からは、上記の金属イオン含有透湿性ポリマーを使用することが好ましい。

以上から、本件第2発明で使用する透湿性ポリマーは、金属イオンを含有するポリマーが本発明の組成としては非常に好ましいが、必ずしもこれには限定されることはなく、例えばポリエチレングリコールのようなエーテル化合物なども有効である。
金属イオンを含有するポリマーによって、この様な大きな透湿性と湿度に対する寸法安定性、透明性を特に容易に満足できる理由は明確ではないが、おそらくは、これら金属イオン基が疎水性の高分子内にイオンクラスターを形成しているか、あるいは疎水性の触媒残差などのイオン基に会合して自己組織化して疎水性ポリマーにナノオーダーで微分散しているためではないかと思われる。この透湿性ポリマーの含有量は要求する性能に依存するために、特に限定はしないが、通常は全ポリマーの重量を100重量%としたとき、これに対して1〜35重量%、好ましくは5〜25重量%程度である。
(エチレン・不飽和カルボン酸共重合体アイオノマー)
金属イオンを含有する透湿性ポリマーとして好ましく用いられるエチレン・不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマーとは、エチレン・不飽和カルボン酸ランダム共重合体のカルボキシル基の一部もしくは全部がアルカリ金属などで中和された構造のものである。ここに不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチルなどで、特にアクリル酸又はメタクリル酸が好ましい。また共重合成分となりうる他の単量体としては、酢酸ビニルのようなビニルエステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸nブチル、アクリル酸イソオクチル、メタクリル酸メチルのような不飽和カルボン酸エステル、一酸化炭素などを例示することができる。
上記エチレン・不飽和カルボン酸ランダム共重合体としてはエチレン成分が60〜90重量%、特に70〜88重量%、不飽和カルボン酸成分が10〜40重量%、特に12〜30重量%、その他不飽和単量体成分が0〜30重量%、特に0〜20重量%の割合で共重合されているものが好ましい。かかる共重合体は、例えば高温高圧下で各重合成分をランダム共重合することによって得る事ができる。また、総和が上記要件を満たす限り、不飽和カルボン酸成分単位の異なるものを2種以上用いてもよい。なお、アイオノマーのイオン源としては、アルカリ金属、すなわちリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、またはセシウムが好ましく用いられるが、特にカリウムが好適である。また、アイオノマーの中の不飽和カルボン酸成分としては、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノエチルエステル、無水マレイン酸などを例示することができる。アイオノマー中のアルカリ金属カチオン含有量は、アイオノマー1kg当たり0.4〜4モル、好ましくは0.6〜2モルの範囲にあることが望ましい。
本発明で好ましく用いられるアイオノマーとしては、190℃、2160g荷重におけるメルトフローレートが、0.01〜1000g/10分、特に0.1〜100g/10分のものを使用するのが好ましく、具体的には、三井デュポンポリケミカル株式会社製のエンティラ(商標)SD100、MK400、MK153などが特に好ましい例として挙げられる。
(スルフォン酸塩アイオノマー)
金属イオンを含有する透湿性ポリマーとして好ましく使用されるスルフォン酸塩アイオノマーとは、スルフォン酸塩を含む高分子アイオノマーであり、代表例としては、ポリスチレンスルフォン酸(PSS)アイオノマーやエチレン系スルフォン酸アイオノマーなどがある。スルフォン酸のH置換基としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属などの金属カチオン、等を好ましく用いることができる。これらの透湿性アイオノマーに、多価アルコールや、ポリオキシエチレングリコール、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のエーテル化合物等の親水性化合物を含有させることにより、さらなる透湿性の向上等の効果が期待できる。多価アルコールとしては、分子内に水酸基を3個以上持つ炭化水素化合物を挙げることができるが、炭素、水素及び酸素のみから構成される化合物であってもよく、炭素、水素、酸素の外にさらに窒素のようなヘテロ原子を含有するものであってもよい。これらは、通常分子量が400以下、好ましくは80〜300であって、室温で液体状であっても固体状であってもよい。分子量が400を越えるものでも良いが透湿性の改良効果は小さい。
このような多価アルコール化合物の具体例としては、グリセロール、ジグリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、1,1,1−トリス(ヒドロキシルメチル)エタン、2,2−ジ(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール、ソルビトール、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン、1,3,5−トリヒドロキシ安息香酸、トリス(ヒドロキシメチル)アミノプロパン、N,N,N´,N´−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N,N,N´,N´−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミンなどが例示できる。これらの中では、グリセロールまたはトリメチロールプロパンの如き脂肪族多価アルコールを用いるのが最も好ましい。
本発明の光学フィルムは、疎水性のマトリックスポリマー、および透湿性ポリマーのみで構成されていても良いし、それ以外の1種またはそれ以上の成分から構成されていても良い。従って、本発明の光学フィルムは、上記疎水性のマトリックスポリマー、および透湿性ポリマーのいずれにも該当しないポリマーを含有していても良いし、含有していなくとも良い。
また、本発明の光学フィルム中には公知の任意の添加剤、例えば着色防止剤、酸化防止剤、熱安定剤、結晶核剤、接着向上剤、すべり剤、ブロツキング防止剤、耐侯剤、消泡剤、透明化剤、粘度調整剤などを含有させても良い。帯電防止としては、ドデシルベンゼンスルフォン酸塩、ビス(オクチルポリオキシエチレン)ホスフエ−トソ−ダ、ドデシルベンゼンスルフォン酸ホスホニウム、アルキルスルフォン酸塩、アルキルスルフォン酸ホスホニウム、スチレンスルフォン酸などの公知の帯電防止剤などがあるが、これらの帯電防止剤の添加量としては、透明性およびブリードアウト性などの点から対ポリマ−重量で5%以下が好ましい。
次に本発明の光学フィルムの製造方法の好ましい1例について述べるが、本発明の光学フィルムの製造方法はこれに限定されるものではない。
疎水性ポリマーから水分、気体、溶融、揮発物、分解物などの分子量100未満の超低分子揮発物を除去し、その含有量を0.05重量%以下にした不純物の少ない原料を準備した。これに、例えば、カリウムイオンを含有するエチレンメタクリル酸ポリマー(例えば、三井デュポンポリケミカル株式会社製のエンティラ(登録商標))を1〜30重量%程度添加混合した原料をシート押出機で溶融させ、必要に応じて微細なフィルターを通過させたのちに口金より溶融シ−トを吐出させ冷却ドラムに密着固化させてキヤストシ−トを得る。なお、この際に積層シートとして、他のポリマーの層と積層することも可能である。なお、キヤスト密着方式は、静電印可密着方式が、高速製膜、無欠点製膜、取扱性などの観点で特に好ましい。この様な疎水性ポリマーにも静電密着方式が適用できるのは、例えば金属イオンを含有する透湿性ポリマー、特に好ましくはカリウムアイオノマーを用いたことによるものである。すなわち、静電密着性が付与されるためには、該樹脂の溶融温度での比抵抗が108〜10Ω・cm程度の値であることが必要であるが、マトリックスの疎水性ポリマー単独での溶融時の比抵抗は1013Ω・cm以上と高いために、適切な静電密着力を得ることが困難であった。
本発明の光学フィルムの製造は、上記の方法に限定されることはなく、ニツプロ−ル(ソフト&ハード)方式、ベルト方式、カレンダ−方式、エア−ナイフ方式、エア−キヤンバ−方式などを適宜用いることも出来る。また、ドラム材質はクロムメツキ、ステンレスまたはセラミックからなる最大表面粗さRy0.1μm以下の表面ドラムを用いることが好ましい。またドラム表面温度は、ポリマーの種類にもよるが、そのポリマーのガラス転移温度近傍がよい。COP、COCの場合、105〜165℃のものが好ましく用いられる。また、ドラフト比は10以下と小さい方が光学的に等方な光学フィルムとなるので好ましい。なお、フィルムとの用途との関係や、必要に応じて、熱処理や延伸を付加させても良く、他のポリマ−との共押出しやラミネ−トにより積層体を作製しても良い。さらに、コ−テイングなどによって、表面を変性したり、表面に種々の特性を付加、付与してもよい。
(実施例/比較例)
以下、実施例および比較例を参照しながら、本発明をより具体的に説明する。なお、本発明はいかなる意味においても、以下に示す実施例に限定されるものではない。
(物性の評価方法)
以下の実施例、比較例においては、フィルムの各種物性は、以下の測定方法に従って評価した。
(1) 水蒸気透過率
mocon社製のPERMTRAN−W1Aを用いて、JIS K7129 B法にしたがって40℃、90RH%で測定した。単位はg/m・日/0.1mmで表す。
(2)湿度膨張係数β
測定方向に沿ってサンプル幅10mmで測定サンプルを作成し、それを恒温恒湿槽にセットされている定荷重伸び量試験機の150mmのチャック間(L(150))にフィルムを把持させ、20℃、5RH%から85RH%に湿度変化△H=80RH%変化させたときの寸法変化量△Lから求めた。単位はppm/RH%で表す。
β=〔△L/L(150)〕/△H
(3)吸水率
ASTM D570に従い、23℃、24時間水中にサンプルを浸蹟したときの平衡重量増加率を測定した。単位は重量%で表す。
(4)光線透過率
日立製作所製の分光光度計U−3410を用いて測定し、波長300nmから700nmまでの可視光線の全光線透過率を測定し、550nmにおける値を採用した。単位は%で表す。
(5)リターデーションR
フィルムの複屈折△nにフィルムの厚さd(nm)を掛けたものでる。
ナトリウムD線(589nm)を光源として直交ニコル下の偏光顕微鏡に試料フイルム面が光軸と垂直となるように置き、該試料によって生じた位相ずれRがリターデーションであり、これをコンペンセ−タ−の補償値から求める。あるいは、アッベの屈折計から主軸方向の屈折率からそれと直角方向の屈折率をひいた複屈折に厚さを掛けて求めても良い。単位はnmで表し、表1、2には絶対値を示す。
(6)表面抵抗
主電極(50mmφ)、主電極と同心円のガ−ド電極(内径70mmφ、外径80mmφ)と対電極(80mmφ)との間にフイルムを挿み、1kVの電圧を印加した時の主電極からガ−ド電極に流れる電流値から抵抗を求め、これに60πを乗じて表面抵抗とした。測定は23℃で湿度は60%で行った。単位はΩ/□で表す。但し、表1、2においては、対数表示を行った。
(7) 表面粗さ
JIS B0601に従い、小坂研究所製の高精度薄膜段差計ET−10を用いて測定した。測定条件は、触針先端半径0.5μm、針圧5mg、測定長1mm、カットオフ0.08mm。中心線平均粗さRaは、粗さ曲線の中心線から上下にずれた成分の面積を引き算して出た差額の面積を測定長で割り、その値を中心線に加えたもの。単位はnmで表す。
(8) ヘイズ
JIS K6782の方法に従いト−タルヘイズを求めた。単位は%で表す。
(9) フィルム厚さ
JIS K7130 A法によりマイクロメータ法で測定する。単位はμmで表す。
(10) 表面張力
JIS C2151(2006)の濡れ張力測定法により測定する。単位はdyn/cmで表す。
(11)上限製膜速度
押出し製膜時に、溶融体を冷却ト゛ラムに密着させるが、この時溶融体シートと冷却ト゛ラムとの間に随伴気流の噛み込みがない上限の速度(m/min)である。噛み込みがあると、得られたシート表面にクレーター状の欠点が存在する。

(実施例1〜3、比較例1)
疎水性ポリマーAとして、環状オレフィンポリマー(APEL(登録商標)6013T:三井化学株式会社製)を用い、透湿性ポリマーAとして、エチレンアクリル酸系のカリウムアイオノマー(エンティラ(商標)MK400:三井デュポンポリケミカル株式会社製)を用いた。この疎水性ポリマーAに対して、透湿性ポリマーAを添加量0〜30重量%(疎水性ポリマーAと透湿性ポリマーAの合計は100重量%)の範囲で変えた組成の均一混合体(それぞれの実施例/比較例における混合比は、表1のとおり)を撹拌式加熱槽中で、105℃で4時間乾燥した。その後、これを押出機ホッパーに供給し、押出機内で285℃で溶融させ、異物を濾過後、口金より吐出させた。該溶融体上10mm離れたところから正の直流電圧1.2万V、電流値1mAで静電荷を印可して、80℃の鏡面クロムメッキドラム上で巻き取り(速度は削除)溶融体を密着・冷却後、フィルム表面にコロナ放電処理をして、厚さ80μmの光学フィルムを得た。かくして得られた光学フィルムの物性を表1に示す。
参考例として、セルローストリアセテート(TAC)フィルム(富士フイルム株式会社製)についても、上記実施例/比較例と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
本発明の1実施例である光学フィルムは、静電密着力に優れているために、高速で密着キャストが可能となり、生産性の優れたフィルムとなるばかりか、得られたフィルムの物性も吸湿寸法安定性に優れて、しかも、透湿性にも優れていると言う、従来では全く存在しなかった新規なフィルムであることが判る。さらに、帯電防止性・表面平滑性・透明性にも優れた光学フィルムであり、光学用の新しい部材として相応しい光学フィルムであることが判る。
本発明の実用的価値、例えば、偏光板の保護フィルムとしての価値を確認するため、以下の通り積層偏光板を作成し、その評価を行った。コ−タ−でアクリル系の水系の粘着剤を本発明光学フィルムに塗工加工を行ない、これをポリビニールアルコールPVA偏光子の両面に貼り合わせ、乾燥させた。
(偏光板の外観1)
得られた本発明光学フィルム/PVA偏光子/本発明フィルムからなる3層積層フィルムの貼り合せ時の外観状態を「偏光板の外観1」として以下の基準に従い評価した。結果を表1に示す。
○:優れた偏光性能を有し、カール、皺および斑点は発生しなかった。
×:偏光子と本発明光学フィルムとの間に水脹れ上の微小欠点が多数見られた。
本発明に該当する実施例1〜3のフィルムを使用した場合は、全て○であったのに対して、本発明外である比較例1では水蒸気透過率が小さいためか、×であった。フジタックを使用した参考例は、偏光板の外観1については、○に該当した。
(偏光板の外観2)
上記偏光板の外観1の評価で使用した3層積層フィルムを23℃、85RH%の高湿下で3日間放置した後の外観状態を「偏光板の外観2」として以下の基準で評価した。結果を表2に示す。
○:経時での外観の変化は発生しなかった。
×:カールや皺が発生した。
参考例は×に該当した。

(実施例4〜6、比較例2)
疎水性ポリマーBとして、メチルペンテンポリマー(TPX MX022:三井化学株式会社製)を用い、透湿性ポリマーBとしては、エチレンアクリル酸系のカリウムアイオノマー(“エンティラ”SD1000:三井デュポンポリケミカル株式会社製)を用いた。この疎水性ポリマーに対して、透湿性ポリマーを添加量0〜30重量%(疎水性ポリマーBと透湿性ポリマーBとの合計は100重量%)の範囲で変えた組成(それぞれの実施例/比較例における混合比は、表2のとおり)の均一混合体を撹拌式加熱槽中で、105℃で4時間乾燥した。その後、これを押出機ホッパーに供給し、押出機内で285℃で溶融させ、異物を濾過後、口金より吐出させた。該溶融体上10mm離れたところから正の直流電圧1.2万V、電流値1mAで静電荷を印可して、20℃の鏡面クロムメッキドラム上に速度10m/minで巻き取り溶融体を密着・冷却後、フィルム表面にコロナ放電処理をして、厚さ40μmの光学フィルムを得た。かくして得られた光学フィルムの物性を表2に示す。
実施例1〜3、比較例1および参考例について行ったのと同様に、3層積層フィルムの偏光板を作成し、(偏光板の外観1)および(偏光板の外観2)につき評価を行った、結果を併せて表2に占めす。
この様に本発明の光学フィルムは、例えば偏光板の保護フィルムとしても優れた特性を示すことがわかる。
本明光学フィルムは、静電密着力に優れているために、高速で密着キャストが可能となり、生産性の優れたフィルムとなるばかりか、得られた光学フィルムの物性も吸湿寸法安定性に優れて、しかも、透湿性にも優れていると言う、従来では全く存在しなかった新規な光学フィルムであることが判る。さらに、帯電防止性・表面平滑性・透明性にも優れたフィルムであり、光学用の新しい部材として相応しい光学フィルムであることが判る。
本発明の光学フィルムによれば、大きな透湿性を有しているにもかかわらず、湿度による寸法変化の小さい光学フィルムを得ることが出来る。この様な光学フィルムは、例えば偏光フィルム等の含水フィルムのカバーフィルムに好ましく用いることが出来る。
また、本発明の光学フィルムは、帯電防止性にも優れているので、ゴミの付着が抑制され、クリーンな、表面欠点のない光学フィルムを比較的容易に得ることができる。
更に、本発明の光学フィルムは表面の易接着性にも優れているので、他の素材とのラミネート用の基材として使用しても、強力な層間接着力が比較的容易に得られる。

加えて、本発明の光学フィルムは機械的強度を向上させることが比較的容易であるので、マトリックスポリマーよりも機械的に強靱な光学フィルムを、比較的容易に得ることができる。
したがって、本発明の光学フィルムは、液晶用の部材、例えば偏光フィルムなどの保護フイルムや位相差フィルム、さらにはコンパクトディスク、ビデオディスク、光カ−ドなどとして好適に用いられる。

Claims (7)

  1. JIS k7129 B法に従い、温度40℃、相対湿度90%で測定した水蒸気透過率が100(g/m・日/0.1mm)以上のフィルムであって、温度20℃で相対湿度を5%から85%まで変化させて測定した吸湿膨張係数βが10(ppm/RH%)以下である光学フィルム。
  2. 該フィルムの波長550nmにおける光線透過率が85%以上である請求項1に記載の光学フィルム。
  3. ASTM D570に従い、温度23℃の水中に24時間浸漬した際の該フィルムの吸水率が0.2重量%以下である、請求項1または2に記載の光学フィルム。
  4. 該フィルムの波長589nmにおける光学リターデーションRの絶対値が0から120nmの範囲にある請求項1から3のいずれか1項に記載の光学フィルム。
  5. 疎水性のマトリックスポリマーに、透湿性ポリマーをナノ分散させてなる請求項1に記載の光学フィルム。
  6. 疎水性のマトリックスポリマーに、透湿性ポリマーをナノ分散させてなる光学フィルム。
  7. 前記透湿性ポリマーが、カリウム、ルビジウム、およびセシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属のイオンを有するアイオノマーポリマーである請求項5または6に記載の光学フィルム。
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