JP2008200046A - トレハロースを含まないアミノ酸の製造方法 - Google Patents

トレハロースを含まないアミノ酸の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】アミノ酸、好ましくはリジン、トレオニン、メチオニンまたはグルタミン酸(glutamate)からなる群のアミノ酸を製造するための方法を提供する。
【解決手段】otsAB、treZおよびtreSからからなる群の少なくとも1つの遺伝子座が部分的または完全に欠損している、コリネバクテリウム属またはブレビバクテリウム属の微生物の培養、および、その後の培養培地からのアミノ酸の単離を含む、アミノ酸を製造する方法。
【選択図】なし

Description

概要
利用可能なコリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)ゲノム配列データの解析から、細菌中でのトレハロース生合成のすべての3つの既知の経路、すなわちUDP-グルコースおよびグルコース6リン酸(OtsA-OtsB経路)、マルトオリゴ糖もしくはα-1,4-グルカン(TreY-TreZ経路)、またはマルトース(TreS経路)からのトレハロース合成経路が存在するという提案が導かれた。3つの経路のうちの1つだけが染色体欠失により不活性化されてもC. グルタミカムの増殖には重大な影響は及ぼさなかったが、OtsA-OtsBおよびTreY-TreZ経路またはすべての3経路を同時に不活性化すると、相当する変異株はトレハロース合成ができず、最少培地中の種々の糖基質を用いて効果的に増殖できなかった。この増殖障害は、培養ブロスにトレハロースを加えることにより大幅に回復した。
さらに、グリコーゲンシンターゼ(GlgA)を含むADP-グルコースからのグリコーゲン合成のための可能な経路が発見された。C. グルタミカムは、糖過剰の条件下で増殖した場合にかなりの量のグリコーゲンを蓄積することが見出された。染色体glgA遺伝子が挿入により不活性化されるとC. グルタミカム細胞はグリコーゲンを蓄積できなくなり、またΔotsABバックグラウンドにおいてトレハロース産生が停止することは、TreY-TreZ経路を介するトレハロース産生が機能的グリコーゲン生合成経路に依存していることを示している。
このOtsA-OtsB経路およびTreY-TreZ経路が不活性化されたトレハロース非産生変異株をトレハロース不在下で最少ブロス中で増殖させた場合、細胞壁の脂質組成が変化していた。これらの条件下では、この変異株の細胞壁脂質画分は主なトレハロース含有糖脂質、すなわちトレハロースモノコリノミコレート(TMCM)およびトレハロースジコリノミコレート(TDCM)が両方とも欠如していた。本発明者らの得た結果は、トレハロース欠乏C. グルタミカム変異株の細胞壁脂質二重層の大幅な変化がこの菌株の最少培地中で観察された増殖障害の原因である可能性を示唆している。本明細書で報告されたC. グルタミカムにおけるトレハロース生合成の遺伝子的および生理学的精査の結果は、ミコール酸含有コリネ型細菌の系統学的グループ全体とも一般的な関連性がある可能性がある。

コリネバクテリウム・グルタミカムは、もともとそのグルタミン酸産生能、分泌能により単離されたグラム陽性土壌細菌である(Kinoshitaら 1957)。今日、この微生物を遺伝学的に改変した菌株を用いる産業的アミノ酸製造方法は、特にL-グルタミン酸およびL-リジンといったアミノ酸の増大する世界市場を満たすために用いられている。
細菌の分類システムにおいて、コリネバクテリウム属はマイコバクテリア、ノカルジア、ロドコッカスおよびいくつかの関連分類群と共に、ミコール酸含有放線菌類のグループに属する。これらの属はまた、系統学的にも関連している。グラム陽性細菌には珍しく、それらの細胞壁は原形質膜の外側に特徴的な疎水性層を含む。コリネ型細菌において、この層は薬物および基質透過性に重要な役割を果たすことが示された。外膜がリン脂質およびリポ多糖類からなるグラム陰性細菌とは対照的に、コリネバクテリウムおよび関連分類群の外側脂質層の主な構成成分はミコール酸エステルである。最近、コリネバクテリウムの細胞の外側疎水性バリアは、細胞壁と共有結合しているミコレート、および非共有結合している糖脂質の両方からなる脂質二重層を示すことが明らかにされた。2種類のトレハロース含有コリノミコール酸エステル、すなわちトレハロースモノコリノミコレート(TMCM)およびトレハロースジコリノミコレート(TDCM)は、この脂質二重層の主な遊離脂質画分であることが示された。C. グルタミカムにおけるトレハロースの存在は、これらの2つの構造的構成物質に限定されるものではない。C. グルタミカム細胞において、かなりの量の遊離トレハロースが高浸透圧ストレスに対する応答として観察される。さらに、トレハロースはリジン過剰産生C. グルタミカム菌株であるATCC 21253が発酵する際に、成長培地中に分泌される副産物の1つとして見出された。
自然界に広く分布する非還元性二糖類であるトレハロース(α-D-グルコピラノシルα-D-グルコピラノシド)は、細菌から植物、昆虫および哺乳動物までの多種多様な原核生物および真核生物において見出されている。トレハロースの生物学的役割はさまざまな生物においてかなり異なる。一方、細菌においては、炭素源として使用されるか(大腸菌(E. coli)、枯草菌(B. subtilis))、または浸透圧ショック条件下で適合溶質として合成されるか(大腸菌)、または構造物としての役割を果たす(コリネバクテリアセアエ)。酵母および糸状菌においては、トレハロースは主として貯蔵炭水化物として、または種々のストレス因子に対する防御物質として細胞内に貯蔵されている。 数種の昆虫においては、トレハロースは飛翔時に即、利用可能な糖質源として使用するために蓄積されている。
トレハロース生合成のためのいくつかの可能な経路が、さまざまな生物において認められた。最も多い経路、すなわちUDP-グルコースおよびグルコース6リン酸からのトレハロース 合成経路(OtsA-OtsB経路)は、原核生物では広く示されるが、真核生物ではただ1種のみが知られている。この経路の第1のステップは、グルコース6リン酸とUDP-グルコースの縮合であり、その結果トレハロース6リン酸の形成とUDPの放出が起こる。 次いでトレハロース6リン酸の脱リン酸化によりトレハロースが形成される。この生合成反応機構は、大腸菌および酵母のような細菌において見出される。大腸菌においては、この反応は酵素トレハロース6リン酸シンターゼ(OtsA)およびトレハロース6リン酸ホスファターゼ(OtsB)により触媒される。両酵素の転写は浸透圧ショックまたは定常増殖期に入る際に誘導される。サッカロミセス・セレビシエ(S. cerevisiae)においては、両方の反応が2つの触媒ポリペプチドTPS1およびTPS2、ならびにストレス条件下でのこの複合体の活性化を担う1つの調節サブユニットからなる酵素複合体により触媒される。相当する酵素のコード領域もまた、より高等な真核生物のゲノム中で同定された。
いくつかの細菌および古細菌において、グリコーゲンを開始基質として使用するトレハロース合成のための代替経路 (TreY-TreZ経路)が発見された。この場合、第1にα-グルカンポリマーの還元末端において、末端α(1→4)グリコシド結合がトランスグリコシル化を経てα(1→1)グリコシド結合へと変化し、結果として末端トレハロース単位が形成される。引き続いて、加水分解を経てポリマー末端からトレハロースが放出される。この経路に関与する酵素は、マルトオリゴシルトレハロースシンターゼ(TreY)およびマルトオリゴシルトレハロースヒドロラーゼ(TreZ)である。マルトースからのトレハロース産生に基づくトレハロース合成のためのさらなる経路が、いくつかの細菌において発見された。この場合、トレハロースはトレハロースシンターゼ(TreS)により触媒され、マルトースのα(1→4)グリコシド結合をα(1→1)結合に変換してトレハロースを形成する単独反応により合成される(TreS経路)。TreYおよびTreSは分子内でのトランスグリコシル化活性が似ているにもかかわらず、その基質特異性が異なるためにin vivoで互いに置き換えることができない。
研究されたほとんどの細菌においては、3つの生合成経路のうちのただ1つが見出されたが、ミコバクテリウム種は例外であった。この属の菌株は、in vitroアッセイにより、トレハロース合成のためのすべての3つの経路を有することが示されている。トレハロース生合成の3重の保証を必要とせしめる、これらの細菌におけるトレハロースの生物学的役割は一体何なのかという疑問が生じる。また、系統学的にミコバクテリウムと関連しているコリネバクテリウムが、同様の万全の装備のトレハロース生合成経路を有するかどうかを分析することは興味深い。
これらの疑問に答えるために、本発明者らはC. グルタミカムにおけるトレハロース生合成に使用される経路を同定する目的で、利用できるゲノムデータを徹底的に調査した。本発明者らは、同定された経路の酵素をコードしている染色体遺伝子を不活性化することにより、 トレハロースのin vivo合成における種々の経路の役割を綿密に調べることにした。また、本発明者らは、これらの遺伝子を不活性化することにより、C. グルタミカムにおけるこの糖質の生理学的役割を明らかにするために、トレハロース合成を減少、または停止させることを意図した。
本発明は、アミノ酸、好ましくはリジン、トレオニン、メチオニンまたはグルタミン酸(glutamate)からなる群のアミノ酸を製造するための方法であって、otsAB、treZおよびtreSからからなる群の少なくとも1つの遺伝子座を部分的または完全に欠損している、コリネバクテリウム属またはブレビバクテリウム属の微生物を培養すること、およびその後に培養培地からアミノ酸を単離することを含む方法を提供する。
本発明の好ましい実施形態は、部分的または完全に遺伝子座otsAB単独、または遺伝子座glgAもしくはglgAとtreSとの組み合わせを欠損している、コリネバクテリウム属またはブレビバクテリウム属の微生物を培養することを含む、アミノ酸を製造するための方法である。
本発明のもう1つの好ましい実施形態は、遺伝子座otsABとtreZ単独の組み合わせ、またはotsABと、treZおよびtreSとの組み合わせを欠損している微生物を培養することを含む、アミノ酸を製造するための方法である。
遺伝子座は以下のような意味を有する:
glgA:グリコーゲンシンターゼ
otsA:トレハロース6リン酸シンターゼ
otsB:トレハロース6リン酸ホスファターゼ
treS:トレハロースシンターゼ
treY:マルトオリゴシルトレハロースシンターゼ
treZ:マルトオリゴシルトレハロースヒドロラーゼ
otsABは、otsAもしくはotsB、またはotsAおよびotsBいずれかを意味する。
前記遺伝子座のコード部分の遺伝子配列は当技術分野では公知であり、例えばWO 2001/00843にはotsA(配列番号:17);otsB(配列番号:1139);treZ(配列番号:1145)またはWO 2002/51231にはtreS(配列番号:3)、またはEP 1108790にはglgA(配列番号:1238)が記載されている。
本発明によれば、好適な条件下で培養された場合にアミノ酸を産生できるコリネバクテリウム属またはブレビバクテリウム属の微生物の、該微生物におけるトレハロース合成を妨げる目的でトレハロース代謝に関与する特定の遺伝子がモジュレートされる。この微生物のモジュレーションは、結果として得られたモジュレートされた微生物がotsAB、treZおよびtreSからなる群の遺伝子座のうちの少なくとも1つを欠損するような方法で行われる。この欠損は、部分的または完全な欠損であり得る。
部分的欠損とは、遺伝子座の一部分が、この遺伝子座の1以上のヌクレオチドの挿入、欠失、もしくは置換により変化していることを意味する。欠損とは、その遺伝子座の正常な機能が変化していることを意味する。特定の遺伝子座が部分的に欠損している微生物とは、それぞれの遺伝子座がその本来の機能のうちのいくらかを保持していることを意味し、一方、完全に欠損している微生物とは、それぞれの遺伝子座がその本来の機能を完全に失っていることを意味する。
特定の遺伝子座を欠損している微生物を作製する好ましい方法は、該遺伝子座の1またはそれ以上のヌクレオチドを、全遺伝子座が完全に欠失するまで欠失させることである。この欠失は、各々の遺伝子座のコード領域、または例えばプロモーター領域などの調節領域中に作ることができる。
本発明の微生物は、トレハロース産生能が(0%まで)低下している。その結果として、この微生物のアミノ酸に関する生産性は改良されている。
材料および方法
<菌株、培地および培養>
本試験で用いたC. グルタミカム菌株およびプラスミドを表1に列挙した。加えて、大腸菌菌株XL1-blue(Bullockら, 1987)およびS17-1 (Simonら, 1983)を、プラスミド構築および組み込みベクターのC. グルタミカム中への移動にそれぞれ用いた。 制限欠損C. グルタミカム菌株R163(Lieblら, 1989a)を、C. グルタミカム型菌株におけるそれらのエレクロトポレーションに先立つプラスミド構築体の調製のために用いた。この菌株を必要に応じて抗生物質を補充したLBプレート上で維持した。
トレハロース合成の研究のために、本文中で記載されたように、種々の量のスクロースまたは他の炭素源を添加した所定のBMC培地 (Lieblet al., 1989b)上でC. グルタミカム菌株を増殖させた。5mlのLB中で一晩増殖 (30℃;210rpm)させたLBプレートから接種された細胞を、BMCブロス5ml入り試験管またはBMCブロス30ml入りフラスコへの接種のための前培養物として使用した。主培養物の接種密度はOD600で0.1〜0.2であった。必要に応じて、最終濃度20μg ml-1 のカナマイシンを培地に加えた。すべての培養物はロータリーシェーカー(30℃;210rpm)にて増殖させた。200rpmを超える速い振盪がトレハロース非産生変異株の増殖に重要であることが見出されている(本文を参照)。様々なインキュベーション時間の後にサンプルを回収した。培養物の増殖は、Ultrospec 3000分光光度計(Pharmacia, Uppsala, Sweden)を用いる600nmにおけるOD測定によりモニタリングした。必要ならば、ODが0.3よりも低くなるように測定前にサンプルを希釈した。
<組換えDNA技術>
プラスミド単離、DNA制限および連結反応などの基本的な方法は、Sambrookら (1989)の方法に従って行った。制限エンドヌクレアーゼおよびDNA改変酵素は、MBI Fermentas(St. Leon-Rot, Germany)またはNew England Biolabs(Frankfurt, Germany)から購入した。C. グルタミカムのプラスミドDNAは、アルカリ抽出法(Birnboim & Doly, 1979)を用いて、細胞を37℃にて10μgml-1のリゾチームで30分間前処置した後に単離した。C. グルタミカムのゲノムDNAはLewingtonら (1987)が記載しているように単離した。PCR反応は Pfuポリメラーゼ(Promega, Mannheim, Germany)を用いて行った。PCR産物のうちのいくつかは、使用説明書に従いTOPO(登録商標)クローニングキット(Invitrogen, Karlsruhe, Germany)を用いて、ベクターpCR4へ直接クローニングした。
<C. グルタミカムDSM20300のΔotsAB、ΔtreZ、ΔtreSおよびglgA::Km変異株の構築>
sacB遺伝子を担持するC. グルタミカムが高スクロース濃度の培地中で増殖できないことに基づく2段階の組換えシステム(Schaeferら, 1994)を、C. グルタミカムのトレハロース生合成遺伝子の染色体不活性化のために用いた。計画された不活性化実験それぞれのために、問題の遺伝子を含むが内部欠失を有し、このため、組換えのために2つの相同性領域を供与する、可動性C. グルタミカム組込みベクターを構築した。
otsA-otsB遺伝子を不活性化するために、2つの染色体DNA領域を別々に増幅して再連結すると、両方の遺伝子のインフレーム欠失が起こる。完全なotsA ORFを担持する1.5kbの断片を、プライマーtre351_fおよびtre351_r(表2)を用いて増幅し、pBluescript KSのEcoRV制限部位へクローニングし、pBlueKS::otsAを得た。次いで、otsBの一部分を担持している0.65 kbの領域を、プライマーotsAB_fおよびotsAB_rを用いて増幅した。HindIIIおよびSphIで切断したPCR産物をotsA担持プラスミドの0.90kb HindIII-SphI断片と置き換え、その結果otsA遺伝子の5'部分とotsB 遺伝子の3'部分がインフレーム融合する。C. グルタミカム染色体otsABの遺伝子座を不活性化するために、XbaIを用いて得られたΔotsAB ORFを可動性組込みベクターpCLiK8.2へクローニングした。
可動性treZ不活性化プラスミドは以下のように構築した。すなわち、2.5kbのtreZ断片を、プライマーtreZ_f およびtreZ_rを用いて増幅した。SalIを用いてtreZ中に内部0.65kbインフレーム欠失を誘導する前に、このPCR産物をXbaIをで切断し、pCLiK3へクローニングした。このΔtreZ遺伝子を、XbaIを用いて可動性組込みベクターpCLiK8.2へクローニングした。
treSの染色体不活性化のために、この遺伝子をPCRプライマーtreS_fおよびtreS_rを用いて増幅した後に、pBluescriptKS中でクローニングした。得られたプラスミドをEcoRVおよびStyIで消化し、Klenow酵素で処置し、このプラスミドを再連結して、クローニングされたtreS ORF中に0.65 kbインフレーム欠失を起こす。この末端切断型遺伝子を、XbaIを用いて、可動性プラスミドpK18mobsacへクローニングした(Schaeferら, 1994)。
OtsA-OtsB、TreY-TreZおよびTreS経路の不活性化のための、それぞれpCLiK8.2::ΔotsAB、pCLiK8.2::ΔtreZおよびpK18ms::ΔtreSで表されるこの3つの最終構築物を、大腸菌株S17-1中へ形質転換し、Schaeferら (1990)により記載された方法に従って熱ストレスを与えたC. グルタミカム中へ移動させた。成功した最初の組換え体(染色体組込み変異株)は、カナマイシンを20μgml-1含有するLBプレート上で平板培養することにより選択した。第2の組換え事象の選択のために、組込み変異株を5〜10%(w/v)スクロースを含有する寒天プレート上で平板培養した。場合によっては(結果を参照のこと)2 % (w/v)のトレハロースを加えた。
推定されるグリコーゲンシンターゼ遺伝子(glgA) は、1段階の染色体組込みによって不活性化した。この目的のために、0.6kbのglgA内部断片を、PCRプライマーとしてglg_fおよびglg_rを用いて増幅した。このPCR産物を、その唯一のXbaI部位を用いて組込みベクターpCLiK6へクローニングした。前記のように、大腸菌S17-1を用いて得られたプラスミドを移動させた。組込み変異株は、カナマイシンを補充したLB培地上で選択した。
得られた変異株の遺伝子型は、サザンブロット分析および特異的PCR反応により確認した。
<pWLQ2::otsAB、pWLQ2::otsA、pWLQ2::treZ、およびpWLQ2::treSの構築>
C. グルタミカム-大腸菌シャトル発現ベクターpWLQ2 を用いて、種々のトレハロース生合成遺伝子を担持している発現プラスミドを構築した(Lieblら, 1992)。前記のようにotsA遺伝子がPCR増幅後に最初にクローニングされているプラスミドpBlueKS::otsAを、otsA遺伝子を担持する発現プラスミドの構築のために使用した。otsA遺伝子を担持しているpBlueKS::otsAの1.6kb BamHI-SalI断片を、同じ酵素を用いて開裂させたpWLQ2 と連結させた。得られたプラスミド(pWLQ2::otsA)中では、otsA遺伝子はPtacプロモーターの制御下にある。pWLQ2::otsABを構築するために、プライマーotsB_fおよびotsB_rを用いてC. グルタミカム染色体からotsB遺伝子を増幅した。pCR4-TOPO中でこのPCR産物をクローニングした後、1kbのBamHI断片を切断してpWLQ2::otsAのBamHIへ挿入した。得られたプラスミドはpWLQ2::otsABと表され、ots遺伝子は両方ともPtacプロモーターの制御下で同時発現される。
pWLQ2::treZの構築のために、プライマーtreZ_f2およびtreZ_r2を用いて産生された2.5kb PCR産物を、pCR4-TOPO中にクローニングした。次いで、このtreZ遺伝子をBamHIをで切断し、pWLQ2のBamHI部位へ再クローニングした。得られたプラスミドは、 Ptacプロモーターに関して、treZが正しい方向かどうかを、制限分析を行って確認した。 pWLQ2::treSの構築のために、プライマーtreS_f3およびtreS_r3を用いて、C. グルタミカム染色体のtreS遺伝子を2kb断片として増幅した。pCR4-TOPOでの最初のクローニング後に、treS遺伝子を切断して、人為的に付加したSalI部位を用いてpWLQ2へ再クローニングした。treSがPtacプロモーターに対して共直線的に配向している、このプラスミドpWLQ2::treSを単離した。すべてのプラスミドは、通常、効率を高めるためにそれらを制限-欠損菌株に挿入した後、エレクトロポレーションによりC. グルタミカム菌株中へ形質転換させた(Lieblら, 1989a)。この菌株は、20μg ml-1のカナマイシン選択培地上で増殖させた。プロモーターPtacにより推進される遺伝子発現は、最終濃度1mMのIPTGの添加により誘導した。
<脂質の単離および分析>
細胞の脂質は、Puechら (2000)により記載された方法で単離した。前記のとおり(サンプル調製を参照)、約10時間のインキュベーションの後に(210rpm,30℃にて増殖)細胞を回収して洗浄した。脂質を抽出するために、湿細胞をCHCl3/CH3OH [1:1(v/v)]中に懸濁し、室温にて16時間振盪した。残存している細菌残渣をCHCl3/CH3OH [2:1(v/v)]で2回再抽出し、その有機相をプールして真空遠心分離により濃縮した。水溶性不純物は水[2:1 (v/v)]を用いてさらに抽出することにより除去し、この有機相を凍結乾燥して粗脂質抽出物を得た。脂質抽出物を最終濃度50μg μl-1 になるようクロロホルムに溶解させてTLC分析により分析した。サンプルは、シリカゲル被覆アルミニウムプレート(G-60型, 5 x 10 cm, Merck)にアプライして密閉チェンバー中でCHCl3/CH3OH/H2O [30:8/1(v/v)]を用いて4℃にて展開させた。濃硫酸中0.2%(w/v)アンスロン溶液を噴霧し、その後加熱(100℃にて10〜15分)することにより、糖脂質を可視化した。
脂質抽出物のトレハロース含量の定量は、Liu & Nikaido (1999)の変法に従って粗脂質抽出物をけん化した後に行った。すなわち、水による抽出前にサンプルのアリコートを採取し、凍結乾燥し、5%(w/v)水酸化カリウムに溶解させた。このサンプルを100℃にて1時間インキュベートし、冷却して、アリコートは直接、高-pH HPLCによるトレハロース測定(以下を参照)に使用した。
<トレハロースおよびグリコーゲン測定のためのサンプル調製>
培養物サンプル(1.5ml)を氷上で急激に冷却し、遠心分離した(13,000rpm,4℃,15分)。その後のすべての操作は4℃にて行った。その上清を回収して、後の細胞外トレハロース 測定のために-20℃で凍結させた。この細胞をBMC培地で洗浄して、同様にペレットとして-20℃で保存した。細胞外浸透圧条件の変化を最小限にとどめるために、洗浄には成長培地と同じ塩および糖組成の氷冷培地を用いた。洗浄した細胞のアリコートを細胞乾燥重量の測定に用いた。
細胞を、500μlの10mMナトリウム/カリウムリン酸バッファー(pH6)中で、音波処理(40 %振幅,0.5秒周期)により開裂させた。細胞破片を遠心分離(13,000rpm,4℃,15分)により除去し、その上清をトレハロースおよび/またはグリコーゲン測定に用いた。
<トレハロースの測定>
大腸菌由来の組換え型トレハラーゼを用いる、トレハロースのグルコース2分子への定量的酵素加水分解に基づく酵素学的トレハロース測定アッセイを用いた。この目的のために、De Smetら (2000)により記載されたとおり、大腸菌トレハラーゼTreAを過剰発現させて部分的に精製した。次いで、グルコースをオキシダーゼ/パーオキシダーゼ法により測定した。5〜20μlのサンプルを、90mlの10mMナトリウム/カリウムリン酸バッファー(pH6.0)中の組換え型トレハラーゼ(5U)添加または非添加で、37℃にて1時間インキュベートした。遊離されたグルコースを、市販のグルコース検出キット(Sigma 510-DA)の 900μlの用時調製酵素-色素試薬溶液を加えることによりアッセイした。37℃、30分間のインキュベーションの後に、グルコースを分光光度的にλ= 450nmにて測定した。トレハロースを、トレハラーゼ処理、非処理サンプル中のグルコース量の差から計算した。細胞外トレハロース測定時に、マルトース濃度が高い場合に(すなわち10%(w/v)マルトース含有BMCブロスの培養上清中で)かなり高いバックグラウンド値が観察され、これはトレハロースへのマルトースの混入または酵素学的トレハロースアッセイへのマルトースの非特異的干渉により引き起こされる。滅菌マルトースBMCサンプルの酵素学的アッセイによりこのバックグラウンド値を測定し、培養上清から得られた値からバックグラウンド値を差し引いた。
グルコースの高バックグラウンド値が認められる粗細胞抽出物などのより複雑なサンプのトレハロース測定のためには、クロマトグラフィー法を用いた。この場合、トレハロースは、室温にて、パルスアンペロメトリー検出器ED40を備えた DX500-HPLCシステム(DIONEX)にインストールされたCarbo-Pak PA1 カラムを用いて高pHイオンクロマトグラフィー(HPIC)法により測定した。粗抽出物を10倍希釈した25μlのサンプルをカラムに注入した。溶出液は150mM水酸化ナトリウム溶液中0〜80mMの酢酸ナトリウムの直線勾配で作成した。カラムは500mM酢酸ナトリウムでの10分間洗浄の後、150mM水酸化ナトリウムでの10分間の平衡化により再生させた。トレハロースは、保持時間約3.3分に単一のピークとして検出された。トレハロースの定量は定められた量のトレハロース標準溶液との較正に基づいて行った。
<グリコーゲンの測定>
C. グルタミカムの細胞内グリコーゲン量は、アミログルコシダーゼによる加水分解によりアッセイした。この目的のために、粗細胞抽出物(前記のとおり調製)のサンプル(200 μl)を2容量の97%(v/v)エタノールと混合し、ペレットとし、加熱しながら同容量の10mMナトリウム/カリウムリン酸バッファー(pH6.0)に再溶解させた。5〜50μlのサンプルを90mlの100mM酢酸ナトリウムバッファー(pH4.5)中のアミログルコシダーゼ (60 mU; Boehringer Mannheim)と共に37℃にて1時間インキュベートした。前記のとおり、遊離されたグルコース量を酵素学的に測定した。グリコーゲン量は、アミログルコシダーゼ処理サンプルとアミログルコシダーゼ非処理の対照サンプル間のグルコース濃度の差から計算した。
結果
<C. グルタミカムゲノム配列データの解析>
C. グルタミカムゲノム生データの利用可能な配列 (www.ncbi.nlm.nih.gov/PMGifs/Genomes/micr.html; 受託番号NC_003450)を、トレハロース代謝に関与することが知られている遺伝子と類似するORFの存在に関してスクリーニングした(表3に要約)。可能性のある候補の最初の同定には、提案されたゲノムアノーテーションを用いた。さらに、トレハロース生合成のための3つの既知の経路すべてを有する系統学的にコリネバクテリウム細菌と関連するヒト病原体である結核菌(Mycobacterium tuberculosis)のトレハロース合成のための酵素に基づくBLAST検索を行った(De Smetら, 2000)。異なる経路に関与するすべての5つの遺伝子との高い類似性を有するORFもまた、C. グルタミカムにおいて見出された。
このORF、Cgl2573およびCgl2575は、それらがOtsA-OtsB経路の酵素であるトレハロース6リン酸シンターゼおよびトレハロース6リン酸ホスファターゼと著しく類似するポリペプチドをコードすると推定されるため、それぞれotsAおよびotsBと表される。両方の遺伝子は、otsAおよびotsBと同じ配向のさらなるORF(Cgl2574)により分離されている。 加えて、同じ配向の2つのORF (Cgl2571, Cgl2572)がotsAの上流に存在する。近年、それらのうちの1つ(Cgl2571)が膜貫通トレオニンエクスポーターをコードすることが示された(Simicら, 2001)。ORF Cgl2572およびCgl2574の翻訳産物は、他のタンパク質とは有意の類似性を共有せず、このためC. グルタミカムにおけるそれらの生理学的役割は現在知られていない。しかし、それらはots遺伝子に非常に近いこと、またこれらの遺伝子に対する共直線性の配向から、それらが同時転写され、otsAおよびotsBと関係がある生理学的役割を担うであろうことを示唆している。最後に、逆配向のORFがotsBの下流に見出された。その予測されたアミノ酸配列は、転写レギュレーターのLacI-ファミリーと高度の類似性を示した。このORFがotsAおよびotsB 遺伝子の調節に関与しているかどうかは知られていない。
C. グルタミカムゲノムと結核菌トレハロース生合成酵素の配列とのBLAST検索から、グリコーゲンからのトレハロース合成に関与するTreY およびTreZ酵素とそれぞれ著しい類似性を示した2つのORF、Cgl2075およびCgl2066が明らかになった。C. グルタミカムにおけるそれらの染色体構成は、双方の遺伝子がクラスターとなり、しばしば互いに重複している他の微生物の類似遺伝子の染色体構成とは著しく異なっている(Marutaら, 1996a-c; Coleら, 1998)。C. グルタミカム染色体の同じ領域に位置するにもかかわらず、この微生物のtreYおよびtreZ 遺伝子は 7つのORFを含む8kbよりも長い鎖により分離されている。利用可能なアノーテーションおよびそれ自体の配列の比較に基づいて、treYおよびtreZ遺伝子とそのORFの間に生理学的関連性を提案することはできなかった。 好熱好酸性古細菌(Sulfolobus acidocaldarius)、結核菌およびアルスロバクター・エスピーQ36(Arthrobacter sp. Q36)において、treYおよびtreZ遺伝子は、treXと表される第3番目の遺伝子と共にオペロンを構成し、それはトレハロース生合成過程においてグリコーゲン脱分枝機能を有すると考えられている(Marutaら, 1996c; Marutaら, 2000; Coleら, 1998)。C. グルタミカムゲノムと、アルスロバクター・エスピーtreXから推定された配列とのBLAST検索から、ORF(Cgl2054)と別の細菌のtreY遺伝子の10kb上流に位置するグリコーゲン脱分枝酵素との類似性が明らかになった(データは示されていない)。treY、treZおよびCgl2054すべてがC. グルタミカムゲノム上で同じ配向性を有し、そして互いにわずか数kbしか離れていないことは、この分布が本来はクラスターを形成していた遺伝子のゲノム内再編成の結果であることを示すものであろう。
また、他の細菌のトレハロースシンターゼ遺伝子とかなり高い関連性を示すORF(Cgl2250)が、 C. グルタミカムゲノム中で同定された(表3)。この遺伝子を、treSと表した。このオープンリーディングフレームの開始点はtreS(Cgl2251;)のすぐ下流に位置し、treS ORFの3’-末と4bp重複している。Cgl2251と高い類似性を有するORFもまた、ストレプトミセス・コエリカラー(Streptomyces coelicolor)および結核菌中のtreSのすぐ下流に見出されている。青枯病土壌細菌(Ralstonia solanacearum)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)および嫌気好熱緑色硫黄細菌(Chlorobium tepidum)などの他の細菌においては、treSおよびCgl2251相同体は1つのORF中で融合している。これらの推定Cgl2251-類似タンパク質の生理学的役割の特徴については何も知られていないにもかかわらず、ゲノムデータはトレハロースシンターゼとの密接な機能的関連性を示唆している。
TreY-TreZ経路を介するトレハロース生合成のための基質としてのグリコーゲンの可能性を検討するために、グリコーゲン合成に関与している可能性のある酵素の推定遺伝子に関して、C. グルタミカムゲノムを 徹底的に調査した(Preiss & Greenberg, 1964)。2つのORF、Cgl1073およびCgl1072は、その翻訳産物が(推定)酵素ADP-グルコースピロホスホリラーゼ(GlgC)およびグリコーゲンシンターゼ(GlgA)と非常に類似していることが見出された(表3)。両方のORFは互いに隣り合って位置しているが配向性は異なり、それらの開始コドンは51bp離れている。さらなるORF、Cgl1071はglgA遺伝子のすぐ下流に位置し、既知のβ-フルクトシダーゼおよびレバナーゼに類似している。(推定)グリコーゲンシンターゼ酵素と非常に良く類似しているさらなるORF(Cgl0401)が見出された(表3)。しかし、Cgl1072の遺伝学的環境のために、Cgl0401ではなくこの遺伝子が、グリコーゲン合成におけるその役割を調査するためには好ましいものであった。
要約すると、C. グルタミカムゲノムデータの調査から、細菌で観察されるトレハロース生合成のためのすべての3経路の存在が示され、このことは関連する結核菌においてもこの目的のための類似遺伝子装備が存在することを示唆する。さらに、このゲノムデータは C. グルタミカムにおけるグリコーゲン合成経路の存在を示唆した。複数のトレハロース合成経路がこの微生物の増殖において果たす役割を調査し、C. グルタミカムにおけるグリコーゲン合成とトレハロース産生の相互連携の可能性を明らかにするために一連の実験が計画された。
<C. グルタミカムによる遊離トレハロースの蓄積>
C. グルタミカムのリジン過剰産生変異株は、産業的リジン製造に用いられる条件に近い条件下で、培養ブロス中に6g/lまでのトレハロースを蓄積する。C. グルタミカム標準菌株および浸透圧増加のためにNaCl添加を用いて、この著しいトレハロースの蓄積と成長培地の浸透圧の変化を結びつける試みは成功しなかった。一方、培地の浸透圧を調整するためにNaClの代わりにスクロースを用いると、細胞外トレハロースの長期にわたる顕著な増加が観察された。
2つの異なる糖濃度(すなわち0.5%(w/v)スクロースおよび10 %(w/v)スクロース)の最少BMC培地中でのC. グルタミカム標準菌株の増殖およびトレハロースの蓄積を追跡した。糖濃度の低い培地の場合、C. グルタミカムは基質の制限が原因でOD600 が約12の時にその増殖を停止した。この場合、培養ブロス中に蓄積したトレハロースは0.1g/lを超えなかった。これとは対照的に、スクロース過剰で増殖した場合、細菌はOD600の最終値が16を超えるところまで到達した。これらの条件下では、この型の菌株は対数増殖後期および定常期には0.9g/lまでトレハロースを蓄積した。細胞内トレハロースレベルのモニタリングの結果、高濃度のスクロースが供給された場合、細胞内レベルは約20μgトレハロース/mg細胞乾燥重量にまで達し、これはスクロース添加量が少ない場合に検出された最大細胞内トレハロースレベルの約4倍であった。定常期の細胞においては、スクロース量が少ない、ならびに多い条件下では、細胞内トレハロース濃度は極度に低い値まで下がった。
細胞外トレハロースの蓄積が培地中の糖過剰と相関している事実は、C. グルタミカムゲノム中にグリコーゲンまたは他のグルコ多糖類からのトレハロース産生のための推定遺伝子が存在するという知識とあいまって、本発明者らに細胞中でのトレハロース産生のための可能性のある基質としてのグリコーゲンの存在に関する調査を促した。実際には、アミログルコシダーゼ加水分解後のグルコースとしてのグリコーゲンの測定に基づくBranaら (1982)により記載された方法を用いて、C. グルタミカムは過剰のスクロースを供給された場合に、グリコーゲン産生が可能であることが示された。スクロース過剰の条件下では、グリコーゲンの蓄積はトレハロースの蓄積と相関することが見出された (図3)。
<C. グルタミカムのトレハロース生合成経路の不活性化>
C. グルタミカムにおけるin vivoトレハロース生合成のゲノムデータ分析から提案された種々の経路の役割を決定するために、各経路の少なくとも1つの遺伝子の染色体不活性化による3つの変異株を構築した。特異的な可動性遺伝子不活性化ベクターを、問題の染色体遺伝子座それぞれについて構築し、材料および方法に記載した2段階相同的組換え-依存性遺伝子交換法によりC. グルタミカムDSM20300の染色体中に欠失を導入するために用いた。OtsA-OtsB経路を不活性化するために、2.4kbの染色体断片を除去し、末端切断型 otsAおよびotsB遺伝子をインフレーム融合させた。C. グルタミカムΔotsABと表されるこの変異株において、otsA遺伝子の70%を超える部分、ORF Cgl2574全部、およびotsB遺伝子の95%を超える部分が欠失していた。TreY-TreZ経路の不活性化は、treZ遺伝子の645bpの断片をインフレーム欠失させることにより行った。この経路の第1の遺伝子(treY)を不活性化するというこれまでの試みは、おそらくこのような欠失がCgl2067オープンリーディングフレームに及ぼす極性効果のためにその試みが成功せず、断念した。C. グルタミカムにおけるトレハロース合成のための第3の提案された経路、すなわちマルトースを前駆体として使用するTreS経路は、この生合成経路において直接的に関与する唯一の遺伝子であるtreSの459bp内部断片をインフレーム欠失させることにより、不活性化した。未処理酵素および大腸菌における異種発現により得られた末端切断型酵素の、in vitro トレハロースシンターゼ活性を比較することにより、この場合、染色体treS遺伝子を置換しなければ、末端切断型遺伝子はもはや機能的トレハロースシンターゼ酵素をコードしないことが確認された(データは示されていない)。このようにして3つのC. グルタミカムDSM20300単一変異株が得られ、各々のケースにおいて不活性化の標的とされた経路名に従ってΔotsAB、ΔtreZおよびΔtreSと名づけた。
今述べた単一変異株に基づいて、すべての可能な組み合わせの二重変異株(ΔotsAB/ΔtreZ, ΔotsAB/ΔtreS, ΔtreZ/ΔtreS)、ならびにすべてのトレハロース合成経路が不活性化された三重変異株 (ΔotsAB/ΔtreZ/ΔtreS) を構築した。ΔotsAB/ΔtreZおよびΔotsAB/ΔtreZ/ΔtreS変異株の構築の際に、本発明者らは所望の欠失を担持する第2段階(ベクター切断)組換え体を得る困難に直面した。所望の欠失変異体数およびベクター組込み事象の復帰の結果得られるクローン数が同程度であるかわりに(Schaeferら, 1994)、後者のタイプの第2段階組換え体のみが得られたのである。この問題は、2 % (w/v)のトレハロースを第2組換え事象を担持するクローンのsacBに基づく選択に用いられる培地に加えることにより克服した。この興味深い所見は、これら2つの変異菌株が培地中にトレハロース無しに増殖するのが非常に困難であることの最初の現れであった。
ΔotsAB/ΔtreZおよびΔotsAB/ΔtreZ/ΔtreS変異菌株のいずれか1つをトレハロースを含まない液体最少培地中で緩やかに振盪(約150 rpm)させて増殖させる試みは、両方の 変異株がこれらの条件下では適切に増殖できないことを示した。2〜3時間のインキュベーションの後、これらの変異株は培養管の底にすぐに沈殿する細胞凝集体を作り、おそらくこれが酸素および栄養を制限する状態をもたらしてさらなる増殖を妨げる。培養物の攪拌を210rpmに増やすと増殖は改善するが、OtsA-OtsBおよびTreY-TreZ経路の両方に突然変異を担持している菌株は、他のトレハロース合成変異株および標準菌株と比較して最少培地中での増殖能力が著しく障害されている。
C. グルタミカム標準菌株および変異株による細胞内および細胞外トレハロースの蓄積を測定する実験を、5mlの10%(w/v)スクロース含有BMC培地入り試験管を用いて行った。ΔotsABまたはΔtreZ突然変異のいずれかを担持する変異株において細胞内トレハロース濃度の50%を超える減少が観察され、同時に両方の突然変異を担持する菌株においては細胞内トレハロースは全く認められなかった。また、野生型菌株と比較して、ΔotsAB、ΔtreZ、ΔotsAB/ΔtreSおよびΔtreZ/ΔtreS変異株は細胞外トレハロース蓄積レベルの著しい(約20〜50 %)減少を示した。二重変異株ΔotsAB/ΔtreZおよび三重変異株ΔotsAB/ΔtreZ/ΔtreSでは、有意な量の細胞外トレハロースは検出されなかった。これとは対照的に、TreS経路のみが不活性化された変異株では、標準菌株と比較した場合、細胞内トレハロースはわずかな減少、そして細胞外トレハロースレベルはほとんど変化を示さなかった。
スクロース含有最少培地上での増殖が障害された変異株ΔotsAB/ΔtreZおよびΔotsAB/ΔtreZ/ΔtreSの、C. グルタミカムが利用することが知られている別の基質を用いて増殖する能力に関して調査した(表4)。この目的のために、最終濃度1%(w/v)の種々の炭素源を添加した5mlのBMC培地を含有する試験管中で細胞を増殖させた。 培養は、30℃にて150 rpmで行った。C. グルタミカムDSM20300がトレハロースを唯一の炭素源およびエネルギー源として増殖できないことは、本文中で注目に値する。野生型菌株で試験したほとんどの糖基質は15を超える最大光学密度に達したが、一方変異菌株の増殖は著しく傷害されていた。これとは対照的に、酢酸またはピルビン酸を利用する変異株の増殖は、糖基質を利用する増殖ほどは大きく影響されなかった。トレハロースを添加したスクロース培養液中では、野生型菌株と比較して、両方の変異株はその増殖のわずかな減少を示した。トレハロース添加による変異株の補完現象は、増殖曲線を記録することによってより詳しく調査した。
<トレハロース添加によるΔotsAB/ΔtreZおよびΔotsAB/ΔtreZ/ΔtreSの補完>
変異株ΔotsAB/ΔtreZおよびΔotsAB/ΔtreZ/ΔtreSは、最少BMC培地におけるその増殖能が著しく障害されていたが、一方複合LB培地で増殖させた場合は、その増殖速度は標準菌株と著しく異なることはなかった(データは示されていない)。明らかにLB培地に存在するが最少培地には存在しない変異株の正常な増殖に必要とされる成分または複数の成分を探して、本発明者らはBMC最少培地に浸透圧保護剤L-プロリン、ベタインおよびまたトレハロースのような種々の低分子量成分を補おうと試みた。プロリンおよびベタインの添加(20mM)は、変異株の増殖を改善しなかったが(データは示されていない)、2 %(w/v)トレハロースをBMC培地に添加した場合、野生型の対照とほぼ同じ増殖速度および最終培養密度が得られた。これらのデータは、OtsA-OtsBおよびTreY-TreZ経路両方の同時不活性化がC. グルタミカムのトレハロース栄養要求性を導くことを示している。
<ΔotsAB/ΔtreZおよびΔotsAB/ΔtreZ/ΔtreSのマルトースを利用する増殖>
試験したほとんどの基質に関して、二重変異株 ΔotsAB/ΔtreZ および三重変異株ΔotsAB/ΔtreZ/ΔtreS が最少培地で良く似た増殖挙動を示すという事実 (表4) は、これらの条件下では無傷のtreS遺伝子の存在が増殖に対して大きな効果は持たないことを示す。トレハロースシンターゼ(TreS)がマルトースからのトレハロース産生を触媒することを考慮に入れつつ、本発明者らは1% (w/v)マルトースを唯一の炭素源として添加したBMC 最少培地における両方の変異株の増殖表現型を調査した(表4)。この培地において三重変異株ΔotsAB/ΔtreZ/ΔtreSの増殖は著しく障害されていたが、treS遺伝子が無傷であるΔotsAB/ΔtreZ菌株は、野生型菌株に匹敵する増殖速度を示した。
さらに、高マルトース濃度で増殖させた両方の変異株および標準菌株による細胞内および細胞外トレハロース蓄積を調査した。これらの条件下では、興味深いことに、変異株ΔotsAB/ΔtreZにおいて測定されたトレハロース細胞内濃度は、標準菌株でみられた濃度と類似しており、一方、三重変異株ΔotsAB/ΔtreZ/ΔtreSは細胞内にトレハロースを欠いていた。この結果は、マルトースで増殖したΔotsAB/ΔtreZおよびΔotsAB/ΔtreZ/ΔtreS変異株の間で、他の基質で増殖したものと比較しつつ、認められた差異とあわせて(表4)、TreS経路が機能しており、マルトース存在下でのみC. グルタミカムの増殖に十分な量のトレハロースを供給できることを示唆している。両方の変異株による有意な量の細胞外トレハロースの蓄積がないことは注目に値し、このことは、標準菌株においてOtsA-OtsBおよび/またはTreY-TreZ経路がトレハロースの細胞外出現の原因であることを示している。
<ΔotsAB突然変異のプラスミド補完>
otsA遺伝子(pWLQ2::otsA)および両方のots遺伝子(pWLQ2::otsAB)を担持する発現プラスミドを構築し、C. グルタミカムΔotsAB/ΔtreZ変異株中に形質転換した。この形質転換体の1% (w/v)スクロース含有BMC培地における増殖能をトレハロース不在下で調査した。 otsAおよびotsB両方を担持しているプラスミドは、これらの条件下で変異株の増殖障害を効果的に補完した。この所見は、変異株の増殖表現型が、染色体に導入された欠失によりもたらされた可能性のある極性効果の結果である可能性を排除するものであり、またプラスミドには供されていない染色体上のotsAおよびotsBの間に位置するORFである、ORF Cgl2574がトレハロース産生および最少培地における正常な増殖に必要なものではないことを示す。ΔotsAB/ΔtreZ二重変異株のpWLQ2::otsAを用いる形質転換は、1%(w/v)スクロースBMCブロスにおける増殖の著しい改善をもたらしたが、変異株の増殖障害を完全に補完するものではなかった。このことに対する説明としては、別の、おそらく非特異的なホスファターゼがトレハロースリン酸ホスファターゼ(OtsB)機能をin vivoで代行したか、またはC. グルタミカム細胞中でトレハロースの代わりとしてのトレハロース6リン酸の存在が、細菌の増殖の部分的な回復には十分であったとの仮説が考えられる。
<トレハロース非産生変異株C. グルタミカムΔotsAB/ΔtreZの脂質組成>
本明細書に示したように、トレハロース産生能を障害されたC. グルタミカム変異株は最少培地上で著しい増殖障害を示し、またこの増殖障害はトレハロースを培地に加えることにより補完し得る。グルタミカムの増殖にとってのトレハロースの重要性は、細胞におけるその構造的役割であると説明できるであろう。トレハロースはC. グルタミカム細胞中において、その遊離形態のみならず、コリノミコール酸のモノ-およびジ-エステルとして見出され、コリネ型細菌の外側細胞壁透過性バリアのために重要な役割を果たしている(Puechら 2001)。トレハロースモノ-(TMCM)およびジ-(TDCM)コリノミコレートは、C. グルタミカムの非共有的に結合しているコリノミコレート含有脂質画分の主たる成分であることが示されている(Puechら 2000)。本発明者らの結果は、現在のところC. グルタミカムがトレハロース合成できないことが、細胞壁脂質画分の組成に重要な影響を及ぼすことを示している。
ΔotsAB/ΔtreZ変異株を、2%(w/v)トレハロースを添加、または添加しない30mlの1%(w/v)スクロース含有BMCブロス中で増殖させた。 10時間の増殖の後にその細胞を回収し、材料および方法に記載した細胞壁脂質単離のために同量の湿細胞を用いた。トレハロース添加およびトレハロース非添加培養物由来の変異株細胞の脂質画分を特性決定し、同じ条件下で増殖した標準菌株から単離した脂質と比較した。この脂質をシリカゲルTLCプレートを用いて、クロロホルム/メタノール/水溶媒系で展開して分離した。アンスロン染色後に検出されたスポットは、 Puechら (2000)により記載されたC. グルタミカム糖脂質プロフィールに基づいて同定した。トレハロース不在下で増殖した場合は、変異菌株はその細胞壁脂質画分の主たるトレハロース含有糖脂質を両方とも欠いていた。欠如しているトレハロース-コリノミコレートは、他のトレハロース欠損コリノミコレートにより置換されることはなかった(csp1-不活性化C. グルタミカム変異株中での蓄積が観察されたグルコースモノコリノミコレートGMCMのように; Puechら, 2000)。培養ブロス中にトレハロースが存在する場合は、ΔotsAB/ΔtreZ変異株はトレハロースコリノミコレートを産生できる。しかし、野生型菌株とは対照的に、トレハロースを添加された変異株は主たる糖脂質としてTMCMを含有するがTDCMは欠如していた。おそらく、高濃度のトレハロースが培地に存在した結果としてTDCM合成反応の平衡がTMCMよりにシフトしたのであろう (Schimakata & Minatogawa, 2000)。
<glgA変異株の構築および特徴決定>
C. グルタミカムは、培養液中に過剰のスクロースが存在するとグリコーゲンを蓄積できる。この所見に従って、その推定翻訳産物がいくつかの細菌由来のグリコーゲン生合成酵素または推定酵素と高レベルの類似性を示す、オープンリーディングフレームのクラスター(Cgl1073-Cgl1072)がC. グルタミカムゲノム中で見出された(表3)。本発明者らは、2つのゴール:(i)この遺伝子クラスターを含有するこの遺伝子が実際にC. グルタミカムによるグリコーゲン産生に関与しているかどうかの調査、および(ii)グリコーゲン合成がトレハロース産生において役割を果たしているかどうかを見出すことを念頭において、グリコーゲンシンターゼ(glgA)を表すと疑われた推定グルコシルトランスフェラーゼをコードするORF Cgl1072を破壊することを決めた。
C. グルタミカムの染色体へ pCLiK6::glgA’を部位特異的に組込み、Cgl1072 ORFを破壊して、glgA::Kmと表される変異株を得た。この変異株は、スクロース過剰条件下でグリコーゲンを蓄積することができない。ΔotsABおよびΔotsAB/ΔtreS変異株の染色体中のCgl1072 ORFを破壊することにより、2つのさらなる変異株を作製した。この変異株はΔotsAB/glgA::KmおよびΔotsAB/ΔtreS/glgA::Kmとそれぞれ表された。C. グルタミカムΔotsAB/ΔtreZおよびΔotsAB/ΔtreZ/ΔtreS変異株と、さらにグリコーゲンシンターゼ (GlgA)を欠損している2つのアイソジェニックな変異株の表現型を比較したところ、4つの変異菌株のトレハロースを含まない最少培地中でのそれらの増殖能ならびにそれらのトレハロース産生能および蓄積能に関して差異は示されなかった。glgA::Km およびΔtreZ変異株が、ΔotsABならびにΔotsAB/ΔtreSバックグラウンドにおいて同一の表現型を示すという事実は、TreZおよびGlgAがトレハロース生合成のための1つの同じ経路に関与しているというアイデアを強く支持するものである。また、これらの結果はC. グルタミカムにおいてグリコーゲンからのトレハロース合成が重要である証拠を提供する。
考察
<C. グルタミカムにおけるトレハロースおよびグリコーゲン生合成経路の遺伝学的な詳細な分析、および種々の増殖条件下でのその操作>
利用可能なゲノム配列データの分析に基づいてC. グルタミカムでの存在が提案された3つのトレハロース合成経路それぞれの不活性化のために、経路の選択された遺伝子に欠失を導入することによる遺伝子突然変異を用いた。単一の経路がノックアウトされた変異株のいくつかはトレハロース合成の減少を示したが、それらのうちトレハロース産生の完全な欠如を示したものはなく、このことはC. グルタミカムにおけるこの二糖類の合成が単一の経路により遂行されるものではなく、2以上の、おそらくは協調的に調節された経路に基づいていることを示唆している。引き続いてトレハロース合成のための3つの提案された経路のうちただ1つがまだ有効である二重変異株を構築したが、細菌の要求に見合うレベルのトレハロース合成を保証するにはOtsA-OtsB経路またはTreY-TreZ経路のどちらかのみで十分であることが示された。突然変異した細菌がこれら生合成経路2つのうちの1つを有している限り、細胞外へのトレハロース排泄さえも大幅に減少することはなかった。一方、OtsA-OtsBおよびTreY-TreZ経路両方を不活性化すると、相当する変異株がトレハロース合成できなくなり、試験したほとんどの条件下で効率的に増殖できなくなった。すべての3つのトレハロース合成経路が不活性化された三重変異株を用いても、同様の結果が得られた。このように、経路不活性化実験は、C. グルタミカムのin vivoトレハロース合成のためのOtsA-OtsBおよびTreY-TreZを含む2経路の主たる役割を示す。
OtsA-OtsBおよびTreY-TreZ経路が野生型細胞において同時に使用されているかどうかは知られておらず、もしそうならば両方の経路のトレハロース産生への量的貢献度は類似している。エネルギーの観点から言えば、OtsA-OtsB経路はTreY-TreZ経路よりもより効率的である。OtsA-OtsB経路を介する1molのトレハロースの合成は、1molのグルコース6リン酸および1molのUDP-グルコースから行われるが、 TreY-TreZ経路を介する1molのトレハロース産生は、2モルのADP-グルコース(グリコーゲン合成のため)を消費する。もしトレハロースが主として細胞壁脂質TDCMおよびTMCMの合成のために産生され、そしてこの目的のために前駆体として必要とされるのが遊離トレハロースではなく、トレハロースリン酸塩であると仮定するならば(下記も参照; Shikimakata & Minatogawa, 2000)、リン酸化されたトレハロースはTreY-TreZ経路ではなくOtsA-OtsB経路の中間体であるために、エネルギーバランスはさらにOtsA-OtsB経路寄りとなる。従って、エネルギーおよび基質過剰条件下でのみ、TreY-TreZ経路がOtsA-OtsB経路よりも優先され得ると推測するのが合理的であると思われる。一方、本発明者らの結果は、TreY-TreZ経路のための基質として供し得るグリコーゲンは、低糖供給条件下でもC. グルタミカム細胞中に存在するが、糖過剰条件下では同様の量は存在しない。また、本発明者らはTreY-TreZ経路のみが糖過剰条件下のみならず、低糖条件下(0.5%(w/v)スクロース;データは示されていない)においてもC. グルタミカム増殖をサポートするのに十分であることを認めた。種々の増殖条件下での野生型C. グルタミカム細胞におけるトレハロース生合成に対する、OtsA-OtsBおよびTreY-TreZ経路それぞれの個々の貢献度を測定するためのさらなる実験が必要である。
本発明者らのデータは、トレハロース合成においてTreS経路が支援的な役割のみを果たしていることを示唆する。ΔotsAB/ΔtreZおよびΔotsAB/ΔtreZ/ΔtreS変異株の増殖およびトレハロース蓄積の特性の分析により、マルトース含有培地での増殖時にこの経路がトレハロース合成に関与していることが示された。野生型菌株とΔotsAB/ΔtreZ変異株が類似した細胞内トレハロースレベルを示す一方で、マルトースを利用する増殖後の細胞外トレハロースレベルがスクロース利用時とほぼ同じであった野生型よりも、ΔotsAB/ΔtreZ変異株は細胞外トレハロース蓄積がかなり少ないことに注目するのは興味深い。現在のところ、すべての3つの機能的トレハロース生合成経路を含む野生型菌株が、マルトースを利用する増殖時にTreS経路を優先的に利用するかどうかは知られていない。しかし、野生型菌株と、マルトースを利用する増殖後に唯一のトレハロース生合成経路としてTreS経路を保持している変異株の間の細胞外トレハロース蓄積の差異は、野生型においては、細菌が過剰のマルトースを利用して増殖する際には他の両方の経路もまたトレハロース合成のために主たる役割を担っていることを示唆する。
本発明者らの実験は、C. グルタミカム標準菌株が糖過剰の条件下で増殖した場合にかなりの量のグリコーゲンを蓄積することを示している。このゲノムデータは、他の細菌において観察されると同様に、ADPグルコースを前駆体として用いるグリコーゲン合成経路がC. グルタミカム中に存在することを予測している(Preiss & Greenberg, 1965)。染色体挿入突然変異を用いて本発明者らは、ORF Cgl1072が(隣接するCgl1073と共に) C. グルタミカムにおけるグリコーゲン合成を担っていることを示した。本発明者らはまた、グリコーゲン合成とトレハロース合成を結びつけることができ、グリコーゲン合成が同時に障害されているotsAB変異株(ΔotsAB/glgA::KmおよびΔotsAB/ΔtreS/glgA::Km)は、TreY-TreZトレハロース生合成経路が不活性化されているotsAB変異株(ΔotsAB/ΔtreZおよびΔotsAB/ΔtreZ/ΔtreS)と同一の増殖およびトレハロース合成表現型を示した。グリコーゲン合成とOtsA-OtsB経路を同時に遮断した変異株の増殖障害は、低濃度の(1 %)スクロースを含むほとんどの増殖条件で観察され、このことから、グリコーゲンからのトレハロース生合成の重要な役割が糖過剰の増殖条件下だけではないことが確認された。
<トレハロース生合成が増殖生理およびC. グルタミカムの細胞壁脂質組成に与える影響>
トレハロース合成のメカニズムのみを明らかにしても、C. グルタミカムにおけるその生理的役割の直接的な示唆は得られない。ΔotsAB/ΔtreZおよびΔotsAB/ΔtreZ/ΔtreS変異株の両方ともが、試験した大部分の基質を利用して増殖するためには、強いトレハロース依存性を示した。この結果は、C. グルタミカムおよび関連するミコバクテリア (De Smetら, 2000)が進化する間にトレハロース生合成のための3つの独立した経路を確立した事実と共に、これらの細菌にとっての二糖類が重要であることを示している。C. グルタミカム細胞におけるトレハロースの可能な役割の1つは、浸透圧ショックの際に細胞を保護している適合溶質として働くことであり、他の細菌においてトレハロースに関して提案された機能である(Argueellesら, 2000)。この仮説は、高浸透圧条件下のC. グルタミカムおよびブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム(Brevibacterium lactofermentum)細胞における、遊離トレハロース蓄積の観察により支持されている(Skjerdalら, 1996)。培地の浸透圧の変化に応答した細胞内および細胞外の遊離トレハロースの蓄積の分析をするために行った初期の実験は、培地の浸透圧濃度を調整するためにNaClを用いた場合は成功しなかった(本発明者らの未公表の結果)。遊離トレハロースレベルの著しい増加は、増殖培地中に高濃度の糖が存在する場合にのみ認められ、この結果はNaClまたはグルタミン酸よりもむしろスクロースにより高浸透圧ストレスが誘発された際に、標準菌株によりかなり多量のトレハロースが蓄積された観察結果と相関する (Skjerdalら, 1996)。トレハロースの役割をさらに特定するために、本発明者らはその合成が欠損している変異株ΔotsAB/ΔtreZおよびΔotsAB/ΔtreZ/ΔtreSを用いた。変異株は両方とも、トレハロース不在の最少培地中で、調査されたほとんどの炭素源を利用して効率的に増殖できなかった。他の適合溶質ではなくトレハロースを添加したときのみ、変異株の増殖が回復した。すべてのこれらの結果は、トレハロースが浸透圧の変化に応答して適合溶質としてC. グルタミカム中で合成されて蓄積されるという可能性と相反するものである。細胞内および細胞外両方におけるトレハロースの蓄積は、培地中の過剰の炭素源と関連があることが示され、その蓄積は対数増殖後期と定常期に観察された。これらすべてのトレハロース合成のための必要条件は、他の細菌において炭素およびグリコーゲンのようなエネルギー貯蔵化合物の蓄積に好ましいと知られている条件を思い出させる。いくつかの高等生物で観察される、トレハロースそのものがC. グルタミカム中で保存化合物とし貯蔵されるという可能性は、定常期細胞においては細胞内トレハロースレベルが極端に低いため起こりそうにない。コリネバクテリウム細胞において、トレハロースの蓄積はグリコーゲン増加のただの直接的な結果であるという可能性は、グリコーゲンからのトレハロース合成能が障害されている変異株(ΔtreZ,ΔtreZ/ΔtreS)が依然としてかなりの量のトレハロースを細胞内および細胞外両方に蓄積する事実と一致しない。
C. グルタミカム変異株ΔotsAB/ΔtreZおよびΔotsAB/ΔtreZ/ΔtreSは、種々の条件下で適切に増殖できず、トレハロースの添加のみが増殖を回復させる。これらの変異株が大きな細胞凝集体を形成する傾向があることは、それらの増殖問題が、それらの細胞表面または細胞分裂後期における異常と関連し得ることを示している。このことは、C. グルタミカム細胞にとってトレハロースが重要な構造的役割を果たしていることを示唆する。他のいくつかの近縁属の細菌と共に、ミコバクテリアおよびコリネバクテリア双方において、コリノミコール酸エステルの形態のトレハロースは、原形質膜の外側の第2の透過性バリアに含まれていることが示された (Puechら 2001, Sathyamoorthy & Takayama, 1987)。ΔotsAB/ΔtreZ 変異株のC. グルタミカム糖脂質画分の特性決定は、C. グルタミカムの外側脂質2重層の重要な構成成分と考えられているトレハロース含有TMCMおよびTDCMが欠如しているという、トレハロース合成不能によるひとつの印象的な結果を示す。トレハロース欠損変異株の増殖問題は、そのような細胞壁脂質層の構築不能と関連付けることが可能である。トレハロースはコリノミコール酸エステルの代謝の最終段階において必要不可欠であるのみならず、また、コリネバクテリウム・マトルチョッティ(C. matruchotii)におけるコリノミコール酸合成の全過程においてトレハロースリン酸として重要な役割を果たしていることが示され(Shimakata & Minatogawa, 2000)、すなわちトレハロース6リン酸は新しく合成されたコリノミコール酸のための受容体として使用されることが示唆された。その結果得られたTMCM は、細胞壁のすべてのエステル化コリノミコレートであるTDCM、および遊離コリノミコール酸合成のための、共通の前駆体である(Shimakata & Minatogawa, 2000; Puechら, 2000)。このようにして、ShikimakataおよびMinatogawa (2000)によるミコール酸生合成に関するこの提案に基づけば、ここで構築されたいくつかのC. グルタミカム変異株のトレハロースまたはトレハロース6リン酸合成不能は、トレハロース含有糖脂質のみならず、すべての他のコリノミコール酸エステルの欠如をも引き起こし得る。ここで記載された、トレハロースがコリノミコール酸のキャリアとして使用され、次いで(部分的に)細胞外に遊離されるというメカニズムは、細胞外トレハロースの存在に関する説明となり得る。
糖基質を利用する場合は極度に増殖が障害されるのとは対照的に、トレハロース欠損C. グルタミカム変異株が酢酸およびピルビン酸のようないくつかの基質を利用して実に正常に増殖でき、野生型菌株に類似する最終培養密度まで到達できることに注目するのは興味深いことである。この現象は、変化した細胞壁脂質二重層が種々の基質の取り込みに及ぼす効果の差異により説明し得る。興味深いことに、酢酸の場合は細胞壁結合コリノミコレートが50%減少すると酢酸の取り込みが容易になることが報告されている(Puechら, 2000)。
重要なことは、本明細書で報告されたC. グルタミカムにおけるトレハロース生合成の遺伝子学的および生理学的な詳細分析の結果が、医学上およびバイオテクノロジー上重要な種を含む多数の異なる属を含むミコール酸含有コリネ型細菌の系統学的グループ全体と一般的な関連性があることである(Liebl, 2001を参照)。トレハロース合成経路の調節を明らかにするためには、さらなる転写活性および酵素活性試験が必要である。調節試験では、糖過剰条件下での増殖時にC. グルタミカム中に蓄積された遊離細胞外トレハロースおよび細胞内トレハロースの生理学的役割に関するさらなる情報を明らかにすることが期待される。
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Claims (7)

  1. otsAB、treZおよびtreSからからなる群の少なくとも1つの遺伝子座が部分的または完全に欠損しているコリネバクテリウム属またはブレビバクテリウム属の微生物を培養すること、およびその後、培養培地からアミノ酸を単離することを含む、アミノ酸の製造方法。
  2. 前記微生物が遺伝子座otsABを欠損している、請求項1に記載の方法。
  3. 前記微生物が遺伝子座glgAをさらに欠損している、請求項2に記載の方法。
  4. 前記微生物が遺伝子座treSをさらに欠損している、請求項3に記載の方法。
  5. 前記微生物が遺伝子座treZをさらに欠損している、請求項2に記載の方法。
  6. 前記微生物が遺伝子座treSをさらに欠損している、請求項5に記載の方法。
  7. 前記アミノ酸がリジン、トレオニン、メチオニンおよびグルタミン酸からなる群から選択される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
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