JP2008198406A - 燃料電池システム - Google Patents

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Abstract

【課題】燃料電池システムにおいて、蓄電部の劣化を抑えつつ、起動時のアノード内での水素の不均一を緩和して、炭素被毒による燃料電池の性能低下を抑えることである。
【解決手段】燃料ガス供給弁42と、燃料ガス循環流路46に設ける水素ポンプ48と、水素ポンプ48に電力を供給する二次電池50と、制御部68とを備える。制御部68は、二次電池50の充電量を検出する充電量監視手段と、水素ガスまたは水素オフガスが流れる流路の水素濃度を推定する燃料ガス濃度推定手段と、燃料ガス供給弁ポンプ制御手段とを備える。燃料ガス供給弁ポンプ制御手段は、起動時に、二次電池50の充電量の検出値と水素濃度の推定値とから水素ポンプ48の目標回転数を設定し、水素ポンプ48の目標回転数による回転開始から所定時間経過後に燃料ガス供給弁42を開弁するように制御する。
【選択図】図1

Description

本発明は、酸化ガスと燃料ガスとの電気化学反応により発電する燃料電池と、燃料電池に燃料ガスを供給する燃料ガス供給流路と、燃料ガス供給流路の上流側に設けられた燃料ガス供給弁と、燃料電池から排出される燃料ガスを燃料ガス供給流路に戻す燃料ガス循環流路と、燃料ガス循環流路に設けられた燃料ガス循環ポンプとを備える燃料電池システムに関する。
燃料電池スタックは、例えばアノード側電極、電解質膜およびカソード側電極から成る膜−電極アセンブリ(MEA)とセパレータとを1組の燃料電池セルとして、これを複数組積層することにより構成している。すなわち、各燃料電池セルは、高分子イオン交換膜から成る電解質膜の一方の面にアノード側電極を、他方の面にカソード側電極を、それぞれ配置して、さらに両側にセパレータを設けることにより構成している。そして、このような燃料電池セルを複数組積層し、さらに集電板、絶縁板およびエンドプレートで狭持することにより、高電圧を発生する燃料電池スタックを構成する。
このような燃料電池では、アノード側電極に燃料ガス、例えば水素を含むガスを供給すると共に、カソード側電極に、酸化ガス、例えば空気を供給する。これにより、燃料ガスおよび酸化ガスが電気化学反応に供されて、起電力を発生し、カソード側電極では、水が生成される。
従来から、特許文献1に記載されているように、空気と水素との電気化学反応により発電する燃料電池スタックと、燃料電池スタックに水素を供給する水素供給流路と、水素供給流路の上流側に設けられた水素供給源と、燃料電池スタックから排出される水素を水素供給流路に戻す水素循環流路と、水素循環流路に設けられた水素循環ポンプとを備える燃料電池システムが考えられている。また、燃料電池システムの起動時に、水素排出流路に設けられた水素パージ弁を開き、その後、水素循環ポンプを駆動し、続いて、水素供給源からの水素供給を開始する。そして、燃料電池スタックのアノードに供給される水素濃度を徐々に上昇させることにより、アノードの入口側と出口側とで水素と空気との不均一な分布が解消されるとされている。
ここで、図7は、特許文献1に記載された図であり、起動時における燃料電池スタック内部の様子を模式的に示す図である。燃料電池システムの起動時に、金属触媒を担持した炭素担体が表面に形成された電解質膜10のアノード12側に空気が入り込んだ状態となっており、ここに水素が供給されることにより、アノード12の入口側に水素が、出口側に酸素が偏在した状態となる。この場合、アノード12の入口側とこれに対応するカソード14側とで、式(1)(2)に表される電池反応が生じる。
→ 2H+2e ‐‐‐ (1)
+4H+4e → 2HO ‐‐‐ (2)
また、アノード12側の空気が偏在する部分で、電子の移動およびプロトンHの移動により、(3)式の反応が生じる。
+4H+4e → 2HO ‐‐‐ (3)
また、カソード14側で、アノード12側の空気が偏在する部分に対応する領域において、プロトンHの移動および電子の移動により、(4)式の反応が生じ、電解質膜10上で炭素被毒が生じて、電解質膜10が劣化するという問題があるとされている。また、炭素被毒の原因となる反応は、高電位であるほど加速されるとされている。
C+2HO→ CO+4H+4e ‐‐‐ (4)
特許文献1に記載された燃料電池システムは、このような問題を考慮して、起動時に燃料電池スタックのアノード12において、水素濃度が徐々に上昇するように制御するとされている。
また、特許文献2に記載された燃料電池システムの場合、アノード排ガスを循環させるガス循環流路と循環ポンプとを備え、燃料電池の起動時に、アノードガス供給流路の上流側に設けるアノードガス遮断弁を閉弁した状態で、循環ポンプをアノード排ガス流路からアノードガス供給流路にアノード排ガスを還流する方向に対して逆方向にガスが流れるように駆動させた後、アノードガス遮断弁を開弁するとされている。
また、非特許文献1では、燃料電池の起動時や停止処理時に、燃料電池内のアノード側の流路で水素と酸素とが偏在することにより、異常電位が発生して燃料電池が劣化する可能性があるとされている。
特開2005−166424号公報 特開2006−114226号公報 Carl A.Relser、外6名,「A Reverse−Current Decay Mechanism for Fuel Cells」、Electrochemical and Solid-State Letters、米国、The Electrochemical Society Inc、2005年、8(6)、p.A273−A276
上記の特許文献1に記載された燃料電池システムの場合、起動時に燃料電池スタックのアノード12(図7)において、水素濃度が徐々に上昇するようにするために、水素供給源により水素供給流路への水素の供給を開始する前に循環ポンプを駆動している。ただし、燃料電池の発電開始前においては、循環ポンプに二次電池等の蓄電部から電力を供給する必要がある。これに対して、蓄電部の充電量が少ない場合に、循環ポンプを充電量に対応する使用可能なエネルギよりも高いエネルギで駆動させるようにすると、蓄電部が早期に劣化する原因となる。
すなわち、自動車用のように、外部からエネルギを供給されない自立型においては、燃料電池の発電開始前の状態で、蓄電部の電力により循環ポンプを駆動することにより、アノード側の酸素と水素との不均一を緩和することが考えられる。ただし、蓄電部の充電量が所定充電量よりも低い場合には、蓄電部の使用可能なエネルギが通常時よりも極度に低下する可能性がある。例えば、運転停止後に、氷点下の環境で放置された場合、通常に比べて数分の1から数十分の1程度まで、蓄電部の使用可能なエネルギが減少する可能性がある。このように蓄電部の使用可能なエネルギが低下した場合、蓄電部の充電量を考慮せずに、循環ポンプを駆動したのでは、蓄電部が早期に劣化する可能性がある。
また、従来から二次電池の代わりに電気二重層キャパシタを使用することも考えられているが、この場合もキャパシタの充電量が所定充電量よりも低い場合に、循環ポンプの回転数を過度に高くすると、上記のように二次電池を使用した場合と同様の不都合が生じる可能性がある。
また、特許文献2に記載された燃料電池システムおよび非特許文献1に記載された燃料電池のいずれも、蓄電部の劣化を抑えつつ炭素被毒による燃料電池の性能低下を抑える手段を開示するものではない。
本発明の目的は、燃料電池システムにおいて、蓄電部の劣化を抑えつつ、起動時のアノード内での水素の不均一を緩和して、炭素被毒による燃料電池の性能低下を抑えることである。
本発明の第1の発明に係る燃料電池システムは、酸化ガスと燃料ガスとの電気化学反応により発電する燃料電池と、燃料電池に燃料ガスを供給する燃料ガス供給流路と、燃料ガス供給流路の上流側に設けられた燃料ガス供給弁と、燃料電池から排出される燃料ガスを燃料ガス供給流路に戻す燃料ガス循環流路と、燃料ガス循環流路に設けられた燃料ガス循環ポンプと、燃料ガス循環ポンプに電力を供給する蓄電部と、蓄電部の充電量を検出する充電量監視手段と、燃料ガスが流れる流路の燃料ガス濃度を推定する燃料ガス濃度推定手段と、燃料ガス供給弁ポンプ制御手段と、を備え、燃料ガス供給弁ポンプ制御手段は、起動時に、蓄電部の充電量と燃料ガス濃度の推定値とから燃料ガス循環ポンプの目標回転数を設定し、燃料ガス循環ポンプの目標回転数による回転開始から所定時間経過後に燃料ガス供給弁を開弁するように、燃料ガス循環ポンプと燃料ガス供給弁とを制御することを特徴とする燃料電池システムである。なお、蓄電部は、二次電池の他、電気二重層キャパシタも含む。
また、本発明の第2の発明に係る燃料電池システムは、酸化ガスと燃料ガスとの電気化学反応により発電する燃料電池と、燃料電池に燃料ガスを供給する燃料ガス供給流路と、燃料ガス供給流路の上流側に設けられた燃料ガス供給弁と、燃料電池から排出される燃料ガスを燃料ガス供給流路に戻す燃料ガス循環流路と、燃料ガス循環流路に設けられた燃料ガス循環ポンプと、燃料ガス循環ポンプに電力を供給する蓄電部と、蓄電部の充電量を検出する充電量監視手段と、燃料ガスが流れる流路の燃料ガス濃度を推定する燃料ガス濃度推定手段と、燃料ガス供給弁ポンプ制御手段と、を備え、燃料ガス供給弁ポンプ制御手段は、起動時に、蓄電部の充電量と燃料ガス濃度の推定値とから燃料ガス循環ポンプの目標回転数を設定し、燃料ガス循環ポンプを目標回転数により回転するとともに、燃料ガス供給弁を中間開度にした状態で燃料ガス供給流路に燃料ガスを供給するように、燃料ガス循環ポンプと燃料ガス供給弁とを制御することを特徴とする燃料電池システムである。なお、蓄電部は、二次電池の他、電気二重層キャパシタも含むのは第1の発明の場合と同様である。
また、本発明において、好ましくは、燃料ガス供給弁ポンプ制御手段は、燃料ガス供給流路に燃料ガスを供給することにより、燃料ガス供給流路内の燃料ガス濃度が上昇するのにしたがって、燃料ガス循環ポンプの回転数を徐々に高くする。
また、より好ましくは、燃料ガス供給弁ポンプ制御手段は、蓄電部の充電量により蓄電部の放出可能なエネルギを求め、このエネルギに対応する上限回転数以下に燃料ガス循環ポンプの回転数を制御する。
また、より好ましくは、燃料ガス濃度推定手段は、発電運転停止から発電運転開始の指令信号を受けるまでの放置時間の測定値または推定値と、燃料ガス供給流路または燃料ガス循環流路の圧力の検出値との少なくともいずれか1を用いて、燃料ガス濃度を推定する。
本発明に係る燃料電池システムによれば、蓄電部の充電量が低い場合に、エネルギ消費量を低減して、蓄電部の劣化を抑えつつ、燃料ガス循環ポンプの回転数を高くできる。このため、蓄電部の劣化を抑えつつ、燃料電池への燃料ガスの供給開始直後でも、燃料電池のアノードでの水素の偏在を少なくできる。すなわち、蓄電部の劣化を抑えつつ、起動時のアノード内での水素の不均一を緩和して、炭素被毒による燃料電池の性能低下を抑えることができる。
[第1の発明の実施の形態]
以下において、図面を用いて本発明に係る第1の実施の形態につき詳細に説明する。図1から図3は、第1の実施の形態を示している。図1に示すように、燃料電池システム16は、例えば、燃料電池車に搭載して使用するもので、燃料電池スタック18を有する。この燃料電池スタック18は、複数の燃料電池セルを積層すると共に、燃料電池スタック18の積層方向両端部に、集電板と、エンドプレートとを設けている。そして、複数の燃料電池セルと集電板とエンドプレートとをタイロッド、ナット等で締め付けている。なお、集電板とエンドプレートとの間に絶縁板を設けることもできる。
各燃料電池セルの詳細図は省略するが、例えば、電解質膜をアノード側電極とカソード側電極とにより狭持して成る膜−アセンブリと、その両側のセパレータとを備えたものとする。また、アノード側電極(以下、単に「アノード」という。)には燃料ガスである水素ガスを供給可能とし、カソード側電極(以下、単に「カソード」という。)には酸化ガスである空気を供給可能としている。そして、上記の図7に示した特許文献1に記載された燃料電池の模式図で説明したのと同様に、アノード12で触媒反応により発生した水素イオン、すなわちプロトンを、電解質膜10を介してカソード14まで移動させ、カソード14で酸素と電気化学反応を起こさせることにより、水を生成する。また、アノード12からカソード14へ外部回路を通じて電子を移動させることにより起電力を発生する。すなわち、図1に示す、複数の燃料電池セルを積層した燃料電池スタック18は、酸化ガスと燃料ガスとの電気化学反応により発電する。
また、燃料電池スタック18の内部で、セパレータの一部またはセパレータの近くに、図1で略示する内部冷却水流路20を設けている。この内部冷却水流路20に冷媒である冷却水を流すことにより、燃料電池スタック18の発電に伴う発熱により温度が上昇しても、その温度が過度に上昇しないようにしている。
また、酸化ガスである空気を燃料電池スタック18に供給するために、酸化ガス供給流路22を設けている。また、燃料電池スタック18から電気化学反応に供された後の空気である空気オフガスを排出するために、酸化ガス系排出流路24を設けている。酸化ガス供給流路22の上流部に、酸化ガス供給部であるエアコンプレッサ26を設けている。そして、エアコンプレッサ26により加圧された空気が、加湿器28で加湿された後、燃料電池スタック18のカソード側の酸化ガス流路に供給されるようにしている。また、空気を加湿器28に通過させてから燃料電池スタック18に供給する本経路30とは別に、本経路30と並行にバイパス経路32を設けている。バイパス経路32を通過する空気は、加湿器28を通過せずに、燃料電池スタック18に供給される。バイパス経路32の途中に加湿器バイパス弁34を設けている。
燃料電池スタック18に供給され、各燃料電池セルで電気化学反応に供された後の空気オフガスは、燃料電池スタック18から酸化ガス系排出流路24を通じて排出された後、加湿器28を通過してから圧力制御弁36を介して大気に放出される。圧力制御弁36は、燃料電池スタック18に送られる空気の供給圧力が、燃料電池スタック18の運転状態に応じた適切な圧力値になるように制御される。また、加湿器28は、燃料電池スタック18から排出された後の空気オフガスから得た水分を、燃料電池スタック18に供給される前の空気に与えて、加湿する役目を果たす。
また、燃料ガスである水素ガスを燃料電池スタック18に供給するために燃料ガス供給流路38を設けている。また、燃料電池スタック18から電気化学反応に供された後の水素ガスである水素オフガスを排出するために、燃料ガス系排出流路40を設けている。水素オフガスには、未反応の水素も含まれる。また、燃料ガス供給流路38の上流部に、燃料ガス供給部である、高圧水素タンク等の図示しない水素ガス供給装置を設けている。そして、水素ガス供給装置から電磁弁である燃料ガス供給弁42を介して燃料電池スタック18に水素ガスが供給されるようにしている。
燃料電池スタック18のアノード側の燃料ガス流路に供給され、電気化学反応に供された後の水素オフガスは、燃料電池スタック18から燃料ガス系排出流路40を通じて排出される。燃料ガス系排出流路40には気液分離器44を介して燃料ガス循環流路46を接続している。燃料ガス循環流路46は、燃料電池スタック18から排出された、未反応の水素ガスを含む水素オフガスを、燃料ガス供給流路38に戻すために設けている。また、燃料ガス循環流路46に燃料ガス循環ポンプである、水素ポンプ48を設けている。水素ポンプ48は、水素オフガスを、燃料ガス循環流路46を通じて燃料ガス供給流路38に戻し、水素ガス供給装置から送られる新たな水素ガスと合流させてから、再び燃料電池スタック18に供給する。水素ポンプ48は、蓄電部である二次電池50に接続され、二次電池50から電力を供給されて駆動する。水素ポンプ48は、回転数を調節可能としている。
また、燃料電池スタック18から排出された水素オフガスは、気液分離器44で、水分を除去されてから、燃料ガス循環流路46に送られる。気液分離器44に排気排水流路52を接続しており、排気排水流路52の途中に排気排水弁であり、電磁弁であるパージ弁54を設けている。排気排水流路52の下流側に送られたガスおよび水分は、酸化ガス系排出流路24を通じて送られる空気オフガスと図示しない希釈器で合流させ、水素濃度を十分に低下させてから外部に排出させるようにしている。なお、燃料ガス系排出流路40または燃料ガス循環流路46の途中の気液分離器44から外れた部分等、排気排水流路52とは別の部分に、電磁弁である排気弁を設けることもできる。
また、二次電池50はニッケル水素電池またはリチウムイオン電池である。ただし、二次電池50としては、ニッケルカドミウム電池等、すべての充電可能な電池を使用できる。また、二次電池50に燃料電池スタック18が接続されており、燃料電池スタック18で発電した電力の少なくとも一部を二次電池50で充電できるようにしている。
また、燃料電池スタック18を冷却するための冷媒である冷却水は、冷却水経路56を流れて、燃料電池スタック18に送られる。冷却水は、燃料電池スタック18内の内部冷却水流路20を流れた後、再び冷却水経路56に送られる。このように冷却水を冷却水経路56に循環させるために、吐出流量を変化させることができる冷却水ポンプ58を設けている。また、図1では、冷却水を冷却するためのラジエータ60、冷却水中の金属イオンを除去するためのイオン交換樹脂62、冷却水をラジエータに通過させずに流すためのバイパス経路64および三方弁66を、それぞれ設けている。
また、二次電池50は、制御部(ECU)68に接続している。制御部68は、二次電池50の充電量(SOC)を検出する充電量監視手段(SOC監視手段)を有する。二次電池50の充電量は、二次電池50の放電電流および充電電流から求めたり、二次電池50の電圧を測定する等により求める。
なお、二次電池50に温度検出部である温度センサ(図示せず)を接続して、二次電池50の温度を検出可能とすることもできる。この場合、温度センサの検出信号は、制御部68に入力する。また、制御部68には、燃料電池システム16のイグニッションスイッチとして機能する図示しない起動スイッチが接続されており、起動スイッチからオン状態に対応する発電開始信号を受け取ることを条件に、発電開始処理が実行され、オフ状態に対応する発電停止信号を受け取ることを条件に、発電停止処理が実行される。また、制御部68は、燃料ガス供給弁42の開閉を制御するための制御信号を出力するようにしている。
また、制御部68は、燃料ガス濃度推定手段と、燃料ガス供給弁ポンプ制御手段とを有する。燃料ガス濃度推定手段は、燃料ガス供給流路38または燃料ガス循環流路46の燃料ガス濃度である水素濃度を推定する機能を有する。例えば、燃料ガス濃度推定手段は、起動スイッチのオフに対応する燃料電池スタック18の発電運転停止後から、起動スイッチのオンに対応する発電運転開始の指令信号を受けるまでの放置時間を測定し、放置時間から水素ガスまたは水素オフガスが流れる流路、すなわちアノード側の流路の水素濃度を推定する。すなわち、放置時間が長くなるほど燃料電池スタック18の電解質膜を介してカソード側からアノード側に入り込む酸素および窒素の量が多くなり、アノード側の流路での水素濃度が低下する。このため、実験等により予め求めたアノード側の流路の水素濃度と、放置時間との関係を表すマップのデータを、制御部68のメモリに記憶させておくことにより、燃料ガス濃度推定手段は、測定された放置時間からマップのデータを参照して、アノード側の流路の水素濃度を推定できる。
また、燃料ガス供給弁ポンプ制御手段は、燃料電池システム16の起動時、すなわち、発電運転開始時に、燃料ガス濃度推定手段により求めた水素濃度の推定値と、充電量監視手段により求めた二次電池50の充電量の検出値とを用いて、水素ポンプ48を駆動する際の目標回転数を設定する。具体的には、二次電池50の充電量の検出値により二次電池50の放出可能なエネルギを求め、このエネルギに対応する、二次電池50の劣化を抑えることができる範囲での、水素ポンプ48の上限回転数を算出する。一方、燃料ガス濃度推定手段により求めた水素濃度の推定値から、燃料電池スタック18のアノードに偏在する空気量を求める。そして、水素ガス供給装置からの水素供給開始前に水素ポンプ48を駆動することで、水素供給を開始しても、アノードでの水素をほぼ均一化、または、燃料電池スタック18での炭素被毒を十分に問題ない程度に抑えることができるようにするための、水素ポンプ48の目標駆動力を算出する。
そして、目標駆動力が、二次電池50の充電量から算出された水素ポンプ48の上限回転数に対応する水素ポンプ48の駆動力以下であるならば、目標駆動力に対応する水素ポンプ48の回転数を、水素ポンプ48の目標回転数として設定する。これに対して、目標駆動力が、水素ポンプ48の上限回転数に対応する水素ポンプ48の駆動力未満であるならば、水素ポンプ48の上限回転数を、水素ポンプ48の目標回転数として設定する。言い換えれば、燃料ガス供給弁ポンプ制御手段は、二次電池50の放出可能なエネルギに対応する上限回転数以下に、水素ポンプ48の回転数を制御する。そして、燃料ガス供給弁ポンプ制御手段は、起動時に、まず、水素ポンプ48を一定の目標回転数で回転させ、続いて、水素ポンプ48の回転開始から所定時間経過後に燃料ガス供給弁42を開弁するように、水素ポンプ48と燃料ガス供給弁42とを制御する。
また、制御部68は、起動スイッチからの信号等に対応して、エアコンプレッサ26の作動状態、加湿器バイパス弁34、圧力制御弁36、パージ弁54等の制御を行う。
次に、図2に示すフローチャートを用いて、発電運転停止後から起動スイッチのオンに対応する発電運転開始指令を受けた後、燃料電池スタック18の発電運転を開始するまでの燃料電池システム16の制御方法を説明する。まず、ステップS1で、起動スイッチが停止される(オフになる)と、制御部68(図1)により発電停止処理が実行されて、エアコンプレッサ26の作動が停止されるとともに、燃料ガス供給弁42が閉弁するように、エアコンプレッサ26および燃料ガス供給弁42が制御される。また、この場合、制御部68は、パージ弁54も閉弁するように制御する。
次に、図2のステップS2で、タイマーカウントを開始し、ステップS3で起動スイッチがオンされると、ステップS4でタイマーカウントを終了して、放置時間を測定する。なお、発電停止処理の実行後、発電開始前においては、燃料電池スタック18(図1)のカソードだけでなく、アノードにも、窒素、酸素等の不純ガス成分が存在する状態となっている。すなわち、アノードには、放置時間中に、カソードから電解質膜を介して窒素や酸素等の不純ガス成分が入り込み、一方、カソードにはアノードから電解質膜を介して水素が入り込む、いわゆるクロスリークが生じる。
次いで、図2のステップS5において、燃料ガス濃度推定手段は、放置時間の測定値からアノード側の流路の水素濃度の推定値を、上記で説明したようにマップのデータを参照して求める。
次に、ステップS6において、水素濃度の推定値から水素ポンプ48(図1)の目標駆動力Pを算出する。このために、水素濃度の推定値から、燃料電池スタック18のアノードに偏在する空気量を求める。そして、水素ガス供給装置からの水素供給開始前に水素ポンプ48を駆動することで、水素供給を開始しても、アノードでの水素をほぼ均一化、または、燃料電池スタック18での炭素被毒を十分に問題ない程度に抑えることができるようにするための、目標駆動力Pを算出する。また、図2のステップS7において、充電量監視手段は、二次電池50(図1)の許容使用電力に対応する放出可能なエネルギEを求め、図2のステップS8において、燃料ガス供給弁ポンプ制御手段は、エネルギEと目標駆動力Pとから、上記で説明したようにして水素ポンプ48(図1)の目標回転数Rを設定する。
そして、図2のステップS9において、燃料ガス供給弁ポンプ制御手段は、目標回転数Rで水素ポンプ48(図1)を回転駆動させるように水素ポンプ48を制御し、燃料ガス循環流路46を介して、燃料ガス系排出流路40から燃料ガス供給流路38に水素オフガスを還流させる。そして、図2のステップS10において、燃料ガス供給弁ポンプ制御手段は、水素ポンプ48(図1)の回転開始から所定時間経過後に燃料ガス供給弁42を開弁するように、燃料ガス供給弁42を制御する。この結果、水素ガス供給装置から燃料ガス供給流路38に水素ガスが供給される。
ここで、図3は、起動スイッチのオンオフ状態、水素ポンプ48(図1)の回転数、燃料ガス供給弁42の開閉状態、アノードの水素濃度分布、燃料電池スタック18の異常電位の時間経過をそれぞれ示すタイムチャートである。「アノードの水素濃度分布」のタイムチャートは、燃料電池スタック18のアノードでの水素濃度の不均一さを表しており、高くなるほど不均一さが高くなることを表している。また、「異常電位」は、燃料電池スタック18に生じる異常電位を表している。図3に示すように、本実施の形態では、水素ポンプ48の回転開始から所定時間t経過後に、燃料ガス供給弁42(図1)を開弁させる。
なお、制御部68に、二次電池50の温度の検出値を表す信号を入力する場合には、二次電池50の温度の検出値と、充電量監視手段により求めた二次電池50の充電量の検出値とから、二次電池50の放出可能なエネルギEを求めることができる。すなわち、この場合には、発電運転開始指令を受けた時点での二次電池50の充電量と、二次電池50の温度とにより、二次電池50の放出可能なエネルギEを算出し、このエネルギEに対応する、二次電池50の劣化を抑えることができる範囲での、水素ポンプ48の上限回転数を求める。
このように本実施の形態の場合、燃料ガス供給流路38の上流側に設けられた燃料ガス供給弁42と、燃料電池スタック18からの水素オフガスを燃料ガス供給流路38に戻す燃料ガス循環流路46と、燃料ガス循環流路46に設けられた水素ポンプ48と、水素ポンプ48に電力を供給する二次電池50と、二次電池50の充電量を検出する充電量監視手段と、燃料ガス供給流路38または燃料ガス循環流路46の水素濃度を推定する燃料ガス濃度推定手段と、燃料ガス供給弁ポンプ制御手段と、を備える。また、燃料ガス供給弁ポンプ制御手段は、燃料電池システム16の起動時に、二次電池50の充電量の検出値と水素濃度の推定値とから水素ポンプ48の目標回転数Rを設定し、水素ポンプ48の回転開始から所定時間t(図2)経過後に燃料ガス供給弁42(図1)を開弁するように、水素ポンプ48と燃料ガス供給弁42とを制御する。このため、燃料電池スタック18への水素ガスの供給開始直後でも、燃料電池スタック18のアノードでの水素の偏在を十分に少なくできる。
すなわち、上記の図7に示した特許文献1に記載された燃料電池の模式図で説明したのと同様に、燃料電池スタック18(図1)のアノード12で、入口側と出口側とに水素と酸素とが不均一に存在するという問題に関して、水素ポンプ48(図1)の回転開始後に燃料ガス供給弁42を開弁するため、水素ポンプ48の回転開始と燃料ガス供給弁42の開弁とを同時に行う場合に比べて、水素ガスの供給開始直後でも、水素を燃料電池スタック18のアノード出口等、アノードの隅々まで速やかに送ることができる。このため、起動時のアノード内での水素の不均一を緩和して、炭素被毒による燃料電池スタック18の性能低下を十分に抑えることができる。すなわち、上記の図3の「アノード水素濃度分布」で示すように、アノード内での水素の不均一は、燃料ガス供給弁42(図1)の開弁直後に速やかに緩和できる。また、これに伴って、図3の「異常電位」に示すように、燃料電池スタック18(図1)の異常電位の発生を速やかになくすか、または十分に抑えることができる。しかも、二次電池50(図1)の充電量が低い場合に、エネルギ消費量を低減できるため、二次電池50の劣化を抑えることにより、過負荷による故障を防止しつつ、水素ポンプ48の回転数を高くできる。すなわち、二次電池50の劣化を抑えつつ、起動時でのアノード側の流路でのガスの循環量を高くして、アノード内の水素の不均一を緩和できる。
また、本実施の形態の場合、燃料ガス供給弁ポンプ制御手段は、二次電池50の充電量により二次電池50の放出可能なエネルギEを求め、このエネルギEに対応する上限回転数以下に水素ポンプ48の回転数を制御している。このため、二次電池50の出力性能が低下している場合に、より有効に消費エネルギを少なくして、二次電池50の劣化をより有効に抑えることができる。
また、燃料ガス供給弁ポンプ制御手段は、二次電池50の充電量および二次電池50の温度により二次電池50の放出可能なエネルギEを求め、このエネルギEに対応する上限回転数以下に水素ポンプ48の回転数を制御する構成とすることもできる。この構成によれば、二次電池50の出力性能が低下している場合に、より有効に消費エネルギを少なくして、二次電池50の劣化をより有効に抑えることができる。すなわち、二次電池50は充電量が同じでも温度が低い場合には、取り出せるエネルギが低くなるため、二次電池50の温度を考慮することにより、より効果的に二次電池50の劣化を抑えることができる。
なお、本実施の形態において、燃料ガス供給弁ポンプ制御手段は、二次電池50の温度が所定温度以下で、かつ、二次電池50の充電量が所定充電量以下の場合に、水素ポンプ48の回転数を他の条件の場合に比べて低くするように制御することもできる。このように構成した場合も、二次電池50の出力性能が低下している場合に、消費エネルギを少なくして、二次電池50の劣化を有効に抑えることができる。
なお、本実施の形態において、水素ポンプ48の回転開始と同時、または、燃料ガス供給弁42の開弁と同時等において、パージ弁54、または燃料ガス系排出流路40または燃料ガス循環流路46に設けた排気弁を開弁するように、パージ弁54または排気弁を制御することもできる。
さらに、本実施の形態において、燃料電池スタック18の温度を検出する温度センサを設けて、この温度センサからの検出信号を制御部68に入力することもできる。この場合、燃料ガス濃度推定手段は、発電停止処理実行時の燃料電池スタック18の温度と、発電開始処理実行時の燃料電池スタック18の温度との間の温度差を用いて、発電運転停止から発電運転開始の指令信号を受けるまでの放置時間を推定できる。すなわち、燃料電池スタック18の温度は発電停止処理実行時には、60℃や80℃等、比較的高くなるが、放置時間が長くなるのにしたがって燃料電池スタック18の温度は低下する。したがって、予め上記の温度差と放置時間との関係を表すマップのデータを制御部68のメモリに記憶させておくことで、燃料ガス濃度推定手段は、上記の温度差の推定値から上記のマップのデータを参照して、放置時間を推定できる。燃料ガス濃度推定手段は、このようにして得られた放置時間の推定値を用いて、本実施の形態で放置時間の測定値を使用する場合と同様に、アノード側の流路の水素濃度を推定する。
さらに、燃料ガス供給流路38、燃料ガス系排出流路40、燃料ガス循環流路46のいずれかの圧力を検出する圧力センサを設けるとともに、この圧力センサからの検出信号を制御部68に入力することもできる。この場合、燃料ガス濃度推定手段は、発電開始処理実行時に、圧力センサにより検出された圧力値から、アノード側の流路内の水素濃度を推定できる。
また、燃料ガス濃度推定手段は、燃料ガス供給弁42の開弁による燃料ガス供給流路38への水素ガスの供給開始後、燃料ガス供給流路38、燃料ガス系排出流路40、燃料ガス循環流路46のいずれかの圧力変化の検出値、アノード側の流路の異なる部分同士の間での圧力差の検出値、燃料電池スタック18の温度変化の検出値等から、水素ガス供給装置からの水素投入量を推定して、アノード側の流路内の水素濃度を一定時間経過毎等に推定することもできる。
また、このようにして得られた水素濃度の推定値から水素ポンプ48による目標駆動力P´を算出する一方、充電量監視手段により二次電池50の放出可能なエネルギE´を算出し、燃料ガス供給弁ポンプ制御手段は、E´に対応する水素ポンプ48の上限回転数以下で、目標駆動力P´に近い駆動力が得られるように、水素ポンプ48の目標回転数R´を設定することもできる。そして、燃料ガス供給弁ポンプ制御手段は、水素ポンプ48の回転数を目標回転数R´に制御する。これにより、二次電池50の劣化を有効に抑えつつ、水素ポンプ48の回転数を高くすることにより、アノード内での水素濃度の不均一さをより有効に緩和して、異常電位の発生をなくすかまたは十分に抑えることができる。
[第2の発明の実施の形態]
図4は、第2の発明の実施の形態を示す、図3に対応するタイムチャートである。なお、燃料電池システムの基本構成自体は、上記の図1に示した第1の実施の形態と同様であるため、以下、同等部分には図1の符号を付して説明する。なお、図4では、図3に示すタイムチャートにおいて、燃料供給弁の開弁状態の代わりに、燃料電池スタック18のアノードへの燃料供給の総量(アノード燃料供給総量)を示している。本実施の形態の場合、図4のタイムチャートで示すように、燃料ガス供給弁ポンプ制御手段は、燃料電池システム16の起動時において、水素ポンプ48の回転開始と同時に、燃料ガス供給弁42を開弁するように、水素ポンプ48および燃料ガス供給弁42を制御する。また、この際、燃料電池スタック18のアノードに供給する水素の総量を一定割合で徐々に多くする。すなわち、燃料ガス供給弁ポンプ制御手段は、燃料ガス供給弁42を開弁する際に、開度を(20%、50%等の)中間開度状態とするように燃料ガス供給弁42を制御する。そして、水素ガス供給装置から燃料ガス供給流路38への水素ガスの供給流量を予め定めた一定の少量とする。また、燃料ガス供給弁ポンプ制御手段は、起動時に、二次電池50の充電量と燃料ガス濃度推定値とから水素ポンプ48の目標回転数を設定し、水素ポンプ48を一定の目標回転数で回転するとともに、燃料ガス供給弁42を中間開度にした状態で燃料ガス供給流路38に水素ガスを供給するように、水素ポンプ48と燃料ガス供給弁42とを制御する。
このような本実施の形態によれば、図4のタイムチャートで示すように、アノードでの水素濃度の不均一を速やかに緩和できるとともに、異常電位の発生をなくすか、または十分に抑えることができる。すなわち、本実施の形態の場合には、燃料電池システム16の起動時において、水素ポンプ48の回転開始と同時に、燃料ガス供給弁42を全開で開弁する場合に比べて、水素ガスの供給開始直後でも、燃料電池スタック18のアノードにおいて、アノード入口等、アノードの一部で水素濃度が急激に高くなることを防止して、起動時のアノード内での水素の不均一を速やかに緩和した状態で、水素をアノードの隅々までほぼ均一に行き渡らせることができる。このため、異常電位の発生をなくすか、または十分に抑えて、炭素被毒による燃料電池スタック18の性能低下を抑えることができる。
その他の構成および作用は、上記の第1の実施の形態と同様であるため、重複する説明および図示を省略する。
なお、燃料ガス供給弁42の開弁による水素ガスの供給量は、水素ポンプ48の回転数、アノード側の流路での圧力の検出値等から、またはこれらの検出値の少なくともいずれか1を用いた関数から決定することもできる。
また、上記の図1から図3に示した第1の実施の形態において、水素ポンプ48の回転数、アノード側の流路での圧力の検出値等から、またはこれらの検出値の少なくともいずれか1を用いた関数から、水素供給量の最大量を決定することもできる。このようにすれば、水素投入量を十分に多くでき、起動時間の短縮を図れる。
[第3の発明の実施の形態]
図5は、第3の発明の実施の形態を示す、図4に対応するタイムチャートである。なお、燃料電池システム16の基本構成自体は、上記の図1に示した第1の実施の形態と同様であるため、以下、同等部分には図1の符号を付して説明する。また、図5において、「アノード水素濃度」は、燃料電池スタック18のアノード側の流路である、燃料ガス供給流路38内での水素濃度を表している。本実施の形態の場合、図5のタイムチャートで示すように、上記の図4に示した第2の実施の形態と同様に、燃料ガス供給弁ポンプ制御手段は、燃料電池システム16の起動時において、水素ポンプ48の回転開始と同時に、燃料ガス供給弁42を開弁するように水素ポンプ48および燃料ガス供給弁42を制御する。また、この際に、水素ポンプ48の回転数を、所定時間の経過時点まで徐々に高くするようにしている。そして、燃料ガス供給弁ポンプ制御手段は、燃料ガス供給流路38に水素ガスを供給することにより、燃料ガス供給流路38内の水素濃度が上昇するのにしたがって、水素ポンプ48の回転数を徐々に高くするようにしている。
このような本実施の形態の場合も、図5のタイムチャートの「アノード水素濃度分布」および「異常電位」で示すように、燃料電池スタック18のアノードでの水素濃度の不均一を十分に緩和できるとともに、異常電位の発生をなくすか、または十分に抑えることができる。
その他の構成および作用については、上記の図4に示した第2の実施の形態と同様であるため、重複する説明を省略する。
なお、上記の図1から図3に示した第1の実施の形態において、本実施の形態の場合と同様に、燃料ガス供給弁ポンプ制御手段は、燃料ガス供給流路38に水素ガスを供給することにより、燃料ガス供給流路38内の水素濃度が上昇するのにしたがって、水素ポンプ48の回転数を徐々に高くするようにすることもできる。
[本発明に関する参考例の第1例]
図6は、本発明に関する参考例の第1例を示す燃料電池システム16の基本構成を示す、図1に対応する図である。本参考例の場合には、上記の図1から図3に示した第1の実施の形態において、燃料ガス循環流路46から水素ポンプ48(図1参照)を省略している。その代わりに、本実施の形態の場合には、燃料ガス供給流路38の中間部において、燃料ガス循環流路46の下流部との接続部に、水素循環装置である水素エジェクタ70を設けている。水素エジェクタ70は、水素ガス供給装置からの水素ガスを通過させる絞り流路(図示せず)を備える。また、絞り流路と燃料ガス循環流路46の下流部とを通じさせ、水素ガス供給装置からの水素ガスが絞り流路内を高速で通過することにより生じた負圧により、燃料ガス循環流路46内の水素オフガスを吸引し、絞り流路を通じて燃料ガス供給流路38の下流側へ送るようにしている。この構成により、水素エジェクタ70で、燃料ガス供給装置からの水素ガスと、燃料ガス循環流路46からの水素オフガスとが合流して燃料ガス供給流路38の下流側へ供給される。
また、制御部68は、燃料電池システム16の起動時において、燃料ガス供給弁42の開度を中間開度とし、水素ガスが燃料電池スタック18のアノードに少量ずつ徐々に供給されるように、燃料ガス供給弁42を制御する。また、起動時において、燃料ガス供給弁42の開弁の前または開弁と同時に、排気排水弁であるパージ弁54または燃料ガス系排出流路40または燃料ガス循環流路46に設ける排気弁を開弁することもできる。
このような本参考例の場合も、上記の図4に示した第2の実施の形態と同様に、水素ガスの供給開始直後でも、燃料電池スタック18のアノードにおいて、アノード入口等、アノードの一部で水素濃度が急激に高くなることを防止して、起動時のアノード内での水素の不均一を速やかに緩和した状態で、水素をアノードの隅々までほぼ均一に行き渡らせることができる。このため、異常電位の発生をなくすか、または十分に抑えることができ、炭素被毒による燃料電池スタック18の性能低下を抑えることができる。
その他の構成および作用は、上記の図1から図3に示した第1の実施の形態と同様であるため、同等部分には同一符号を付して重複する説明を省略する。
[本発明に関する参考例の第2例]
また、図示は省略するが、本発明に関する参考例の第2例として、上記の図1から図3に示した第1の実施の形態において、制御部68は、燃料電池システム16の起動時に、水素ポンプ48を回転駆動せず、燃料ガス供給弁42の開弁と同時に、または開弁の前に、排気排水弁であるパージ弁54または燃料ガス系排出流路40または燃料ガス循環流路46に設ける排気弁を開弁するように制御することもできる。このような構成により、発電運転停止時において、燃料電池スタック18のアノードに存在する窒素、酸素等の不純ガス成分を、アノードから押し出しやすくでき、アノード内での水素の不均一を速やかに緩和した状態で、水素をアノードの隅々までほぼ均一に行き渡らせることができる。このため、異常電位の発生をなくすか、または十分に抑えることができる。
[本発明に関する参考例の第3例]
また、図示は省略するが、本発明に関する参考例の第3例として、上記の図1から図3に示した第1の実施の形態において、燃料ガス循環流路46と水素ポンプ48と気液分離器44とを省略して、水素オフガスの排出流路をいわゆる開放系とすることもできる。すなわち、このような構成の場合、燃料電池スタック18から排出された水素オフガスは、燃料ガス供給流路38に還流させることなく、排気排水弁を介して外部に排出する。このような構成の場合、制御部68は、燃料電池システム16の起動時に、燃料ガス供給弁42の開弁と同時に、または開弁の前に、排気排水弁を開弁するように制御する。このような構成の場合も、上記の参考例の第2例の場合と同様の効果を得られる。
第1の発明の実施の形態の燃料電池システムの基本構成を示す図である。 同じく発電運転停止後、起動スイッチのオンに対応する発電運転開始指令を受けた後、燃料電池スタックの発電運転を開始するまでの燃料電池システムの制御方法を示すフローチャートである。 同じく燃料電池システムの起動時において、起動スイッチのオンオフ状態、水素ポンプの回転数、燃料供給弁の開閉状態、アノードの水素濃度分布、燃料電池スタックの異常電位の時間経過をそれぞれ示すタイムチャートである。 第2の発明の実施の形態の燃料電池システムの起動時において、起動スイッチのオンオフ状態、水素ポンプの回転数、アノードへの燃料供給の総量、アノードの水素濃度分布、燃料電池スタックの異常電位の時間経過をそれぞれ示すタイムチャートである。 第3の発明の実施の形態の燃料電池システムの起動時において、起動スイッチのオンオフ状態、水素ポンプの回転数、アノードへの燃料供給の総量、アノードの水素濃度分布、燃料ガス供給流路の水素濃度分布(アノード水素濃度分布)、燃料電池スタックの異常電位の時間経過をそれぞれ示すタイムチャートである。 本発明に関する参考例の第1例の燃料電池システムの基本構成を示す図である。 従来構成の燃料電池システムの1例において、起動時における燃料電池スタック内部の様子を模式的に示す図である。
符号の説明
10 電解質膜、12 アノード、14 カソード、16 燃料電池システム、18 燃料電池スタック、20 内部冷却水流路、22 酸化ガス供給流路、24 酸化ガス系排出流路、26 エアコンプレッサ、28 加湿器、30 本経路、32 バイパス経路、34 加湿器バイパス弁、36 圧力制御弁、38 燃料ガス供給流路、40 燃料ガス系排出流路、42 燃料ガス供給弁、44 気液分離器、46 燃料ガス循環流路、48 水素ポンプ、50 二次電池、52 排気排水流路、54 パージ弁、56 冷却水経路、58 冷却水ポンプ、60 ラジエータ、62 イオン交換樹脂、64 バイパス経路、66 三方弁、68 制御部(ECU)、70 水素エジェクタ。

Claims (5)

  1. 酸化ガスと燃料ガスとの電気化学反応により発電する燃料電池と、
    燃料電池に燃料ガスを供給する燃料ガス供給流路と、
    燃料ガス供給流路の上流側に設けられた燃料ガス供給弁と、
    燃料電池から排出される燃料ガスを燃料ガス供給流路に戻す燃料ガス循環流路と、
    燃料ガス循環流路に設けられた燃料ガス循環ポンプと、
    燃料ガス循環ポンプに電力を供給する蓄電部と、
    蓄電部の充電量を検出する充電量監視手段と、
    燃料ガスが流れる流路の燃料ガス濃度を推定する燃料ガス濃度推定手段と、
    燃料ガス供給弁ポンプ制御手段と、を備え、
    燃料ガス供給弁ポンプ制御手段は、起動時に、蓄電部の充電量と燃料ガス濃度の推定値とから燃料ガス循環ポンプの目標回転数を設定し、燃料ガス循環ポンプの目標回転数による回転開始から所定時間経過後に燃料ガス供給弁を開弁するように、燃料ガス循環ポンプと燃料ガス供給弁とを制御することを特徴とする燃料電池システム。
  2. 酸化ガスと燃料ガスとの電気化学反応により発電する燃料電池と、
    燃料電池に燃料ガスを供給する燃料ガス供給流路と、
    燃料ガス供給流路の上流側に設けられた燃料ガス供給弁と、
    燃料電池から排出される燃料ガスを燃料ガス供給流路に戻す燃料ガス循環流路と、
    燃料ガス循環流路に設けられた燃料ガス循環ポンプと、
    燃料ガス循環ポンプに電力を供給する蓄電部と、
    蓄電部の充電量を検出する充電量監視手段と、
    燃料ガスが流れる流路の燃料ガス濃度を推定する燃料ガス濃度推定手段と、
    燃料ガス供給弁ポンプ制御手段と、を備え、
    燃料ガス供給弁ポンプ制御手段は、起動時に、蓄電部の充電量と燃料ガス濃度の推定値とから燃料ガス循環ポンプの目標回転数を設定し、燃料ガス循環ポンプを目標回転数により回転するとともに、燃料ガス供給弁を中間開度にした状態で燃料ガス供給流路に燃料ガスを供給するように、燃料ガス循環ポンプと燃料ガス供給弁とを制御することを特徴とする燃料電池システム。
  3. 請求項1または請求項2に記載の燃料電池システムにおいて、
    燃料ガス供給弁ポンプ制御手段は、燃料ガス供給流路に燃料ガスを供給することにより、燃料ガス供給流路内の燃料ガス濃度が上昇するのにしたがって、燃料ガス循環ポンプの回転数を徐々に高くすることを特徴とする燃料電池システム。
  4. 請求項1から請求項3のいずれか1に記載の燃料電池システムにおいて、
    燃料ガス供給弁ポンプ制御手段は、蓄電部の充電量により蓄電部の放出可能なエネルギを求め、このエネルギに対応する上限回転数以下に燃料ガス循環ポンプの回転数を制御することを特徴とする燃料電池システム。
  5. 請求項1から請求項4のいずれか1に記載の燃料電池システムにおいて、
    燃料ガス濃度推定手段は、発電運転停止から発電運転開始の指令信号を受けるまでの放置時間の測定値または推定値と、燃料ガス供給流路または燃料ガス循環流路の圧力の検出値との少なくともいずれか1を用いて、燃料ガス濃度を推定することを特徴とする燃料電池システム。
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