JP2008196952A - コロナ放電型イオナイザの検査方法及び検査装置 - Google Patents

コロナ放電型イオナイザの検査方法及び検査装置 Download PDF

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Abstract

【課題】コロナ放電型イオナイザのエミッタから発生するイオンによる真電流のみを検出し、更には、この真電流のうち実際に被除電物の除電に寄与する除電電流を検出可能として、エミッタの汚れや劣化程度、除電性能等を確認可能とする。
【解決手段】高電圧が印加されるエミッタの近傍に接地電極が配置されたコロナ放電型イオナイザにおいて、接地電極に流れる全電流と、エミッタに印加される高電圧による第1の誘導電流とを同時に測定し、第1の誘導電流から、前記全電流の成分であってエミッタが形成する電界によって接地電極に流れる第2の誘導電流を推定し、前記全電流と第2の誘導電流との差分から、エミッタが生成するイオンによって生じる真電流を測定する。
【選択図】図1

Description

本発明は、コロナ放電型イオナイザのエミッタの汚れや劣化程度を検出し、更には、実際に被除電物の除電に寄与する除電電流を検出可能としたコロナ放電型イオナイザの検査方法及び検査装置に関するものである。
周知のように、コロナ放電型イオナイザは、エミッタに高電圧を印加して周囲の空気をイオン化し、正または負のイオン(荷電粒子)を発生させるものであり、これらのイオンを帯電した被除電物に供給して除電を行うものである。
例えば、交流型イオナイザでは、1本のエミッタに交流高電圧を印加することにより、正負のイオンを交互に発生させて被除電物に供給している。
しかしながら、前記エミッタから発生したイオンの一部は、エミッタ近傍に配置された接地電極に吸収されて電流として流れ、残りのイオンが被除電物側に供給されて除電に寄与することになる。
このとき、エミッタの先端に微粒子が付着していたり、エミッタが劣化して先端の曲率半径が大きくなっていると、エミッタが生成するイオンの量が減少するので、実際に除電に寄与するイオンの量も減少してしまう。
従来では、このような状態になっても、イオナイザの電源スイッチがONになっていれば当然にイオンが生成されていると思い込んで使用している場合が多く、上述したエミッタの汚れや劣化によってイオン生成量が完全にゼロになっていてもこれに気が付かないこともあった。
このような問題の解決策としては、エミッタが生成するイオンによって流れる電流を測定して表示することが考えられる。具体的には、特許文献1に記載されているように、エミッタ近傍の接地電極に電流測定用抵抗や電流計を接続し、エミッタによるイオン生成量に応じた電流を測定する方法が公知となっている。
特開2004−127858号公報(段落[0017]、図3等)
しかし、上記特許文献1記載の方法により測定した電流は、高電圧が印加されるエミッタが形成する電界によって接地電極に流れる誘導電流(変位電流)が支配的となるため、エミッタから発生するイオンによる電流(以下、真電流ともいう)はほとんど測定不可能になってしまうという問題があった。
そこで、本発明の解決課題は、接地電極を流れる全電流から誘導電流を除去して真電流のみを検出するようにし、この真電流から、エミッタの汚れや劣化程度、更には、実際に被除電物の除電に寄与する除電電流を検出可能としたコロナ放電型イオナイザの検査方法及び検査装置を提供することにある。
上記課題を解決するため、請求項1に係るコロナ放電型イオナイザの検査方法は、高電圧が印加されるエミッタの近傍に接地電極が配置されたコロナ放電型イオナイザにおいて、
前記接地電極に流れる全電流と、エミッタに印加される前記高電圧による第1の誘導電流とを同時に測定し、
第1の誘導電流から、前記全電流の成分であってエミッタが形成する電界によって前記接地電極に流れる第2の誘導電流を推定し、
前記全電流と第2の誘導電流との差分から、エミッタが生成するイオンによって生じる真電流を測定するものである。
請求項2に係る検査方法は、請求項1において、前記真電流から、エミッタの汚れや劣化程度を検出するものである。
また、請求項3に係る検査方法は、請求項1において、前記真電流から、被除電物に到達するイオンによって流れる除電電流を測定するものである。
請求項4に係るコロナ放電型イオナイザの検査装置は、高電圧が印加されるエミッタの近傍に接地電極が配置されたコロナ放電型イオナイザにおいて、
前記接地電極に流れる全電流を測定する手段と、
エミッタに印加される前記高電圧による第1の誘導電流を前記全電流と同時に測定する手段と、
第1の誘導電流から、前記全電流の成分であってエミッタが形成する電界によって前記接地電極に流れる第2の誘導電流を推定する手段と、
前記全電流と第2の誘導電流との差分から、エミッタが生成するイオンによって生じる真電流を測定する演算手段と、を備えたものである。
請求項5に係る検査装置は、請求項4において、前記真電流から、エミッタの汚れや劣化程度を検出するものである。
また、請求項6に係る検査装置は、請求項4において、前記真電流から、被除電物に到達するイオンによって流れる除電電流を測定するものである。
請求項7に係る検査装置は、請求項4〜6の何れか1項において、
第1の誘導電流を測定する手段は、エミッタに高電圧を印加する高電圧発生手段とエミッタとを接続するケーブルの近傍に配置されて第1の誘導電流を検出する補助電極を備えているものである。
また、請求項8に係る検査装置は、請求項4〜6の何れか1項において、
第1の誘導電流を測定する手段は、エミッタの近傍に配置されて第1の誘導電流を検出する補助電極を備えているものである。
請求項9に係る検査装置は、請求項7または8において、
前記補助電極に接続された第1の抵抗と、
前記接地電極に接続された第2の抵抗と、
前記演算手段として、第1の誘導電流により第1の抵抗に生じる電圧降下と前記全電流により第2の抵抗に生じる電圧降下との差分を増幅する差動増幅回路と、を備え、
前記第1の抵抗または第2の抵抗の少なくとも一方を可変として、第1の誘導電流により第1の抵抗に生じる電圧降下と、第2の誘導電流により第2の抵抗に生じる電圧降下とを等しくするものである。
本発明のコロナ放電型イオナイザの検査方法及び検査装置によれば、エミッタが形成する電界によって接地電極に流れる誘導電流を除去し、エミッタが生成するイオンによる真電流のみを確実に測定することができる。このため、測定した真電流に基づいて、エミッタの汚れや劣化程度、被除電物の除電に寄与する除電電流等を検出可能であり、イオナイザの保守点検や除電性能の評価を容易に行うことができる。
以下、図に沿って本発明の実施形態を説明する。
まず、図1は本発明の第1実施形態を示す構成図である。図1において、10は交流の高電圧を発生する高電圧発生回路であり、その出力側にはケーブル21を介して針状のエミッタ20が接続されている。また、エミッタ20の近傍にはリング状の接地電極30が同心状に配置されていると共に、この接地電極30は、接続点A及び抵抗R(請求項における第2の抵抗に相当する)を介して接地されている。
一方、高電圧発生回路10とエミッタ20との間のケーブル21を包囲するように円筒状の補助電極40が設けられており、この補助電極40は、接続点B及び可変抵抗R(請求項における第1の抵抗に相当する)を介して接地されている。
前記接続点A,Bは、それぞれ抵抗R,Rを介してオペアンプ50の非反転入力端子、反転入力端子に接続されており、前記非反転入力端子は抵抗Rを介して接地されている。なお、Rは帰還抵抗である。
ここで、オペアンプ50及び抵抗R〜Rは周知の差動増幅回路を構成しており、各抵抗値は、簡単化のためにR=R,R=Rに設定されている。
次に、本実施形態の動作原理を説明する。
まず、高電圧発生回路10によりエミッタ20に高電圧を印加すると、エミッタ20の周囲の空気がイオン化される。このとき、接地電極30に流れる全電流Iは、生成イオンによる真電流Iとエミッタ20が形成する電界による誘導電流(変位電流)Iとの和になるから、真電流Iに関して数式1が導かれる。なお、上記誘導電流Iは請求項における第2の誘導電流に相当する。
[数式1]
=I−I
一方、補助電極40を介して取り出される電流Iは真電流Iに影響されず、高電圧発生回路10からエミッタ20に印加された高電圧による誘導電流のみである。但し、接地電極30と補助電極40との形状が異なるため、接地電極30に流れる誘導電流Iと補助電極40に流れる誘導電流Iとの大きさは異なる。この誘導電流Iは請求項における第1の誘導電流に相当する。
誘導電流Iと誘導電流Iとの大きさの相違を補正するための係数αを、
α=I/I
とすると、数式1は数式2となる。
[数式2]
=I−I=I−αI
ここで、接地電極30に流れる全電流Iと補助電極40に流れる誘導電流I(第1の誘導電流)とを同時に測定し、誘導電流Iに基づいて接地電極30に流れる誘導電流I(第2の誘導電流)を推定して全電流Iと誘導電流Iとの差分(I−I)を求めれば、前記数式1によって真電流Iを測定することができる。
真電流Iはエミッタ20による生成イオンの濃度に比例するので、真電流Iを測定できれば、エミッタ20の汚れや劣化程度を推測できると共に、エミッタ20の下方にある被除電物(図示せず)に吸収されて除電に寄与する除電電流の大きさを推測することが可能となる。
この実施形態では、数式2による差分演算を、オペアンプ50からなる差動増幅回路によって等価的に行っている。
すなわち、図1の回路において、誘導電流Iによる抵抗Rにおける電圧降下(=I×R)と、誘導電流Iによる可変抵抗Rにおける電圧降下(=I×R)とが等しい場合、オペアンプ50の出力電圧VOUTは、真電流Iによる抵抗Rにおける電圧降下(=I×R)に比例した大きさになるから、この出力電圧VOUTを検出すれば真電流Iを測定することができる。
また、上述した抵抗Rにおける電圧降下(=I×R)と可変抵抗Rにおける電圧降下(=I×R)とを等しくするためには、オシロスコープ等により接続点A,Bの電圧を観察してこれらの電圧が等しくなるように可変抵抗Rを調整すればよい。この可変抵抗Rの調整動作により、等価的に、誘導電流Iから誘導電流Iを推定することができる。
この場合、接続点Aに流れる電流は全電流I(=I+I)であるが、誘導電流Iと真電流Iとは位相がずれているのに対して誘導電流I,Iは同位相であるため、抵抗Rにおける電圧降下(=I×R)と可変抵抗Rにおける電圧降下(=I×R)とをオシロスコープ等により観察しながら両者が等しくなるように可変抵抗Rを調整することは可能である。
なお、この実施形態では抵抗Rを固定抵抗、抵抗Rを可変抵抗としているが、抵抗Rを可変抵抗、抵抗Rを固定抵抗として抵抗Rを調節しても良い。
上記のように、この実施形態によれば、図1に示すような簡単な回路構成で真電流Iを測定することができ、オペアンプ50の出力電圧VOUTを利用してエミッタ20の汚れや劣化状態、除電電流の大きさ等を表示または出力させることが可能になる。
なお、図2は図1における接地電極30の具体的構成を拡大して示すためのもので、31は接地電極本体、32は絶縁体、33は抵抗Rに接続されるリード線である。この図2では、便宜的に図1における差動増幅器の図示を省略してある。
図3は、上述した第1実施形態の効果を説明するための波形図であり、新品のエミッタ(先端の曲率半径が10μm)に高電圧を印加した際のオペアンプ50の出力電圧VOUTと、全電流Iによる抵抗Rにおける電圧降下(これをVとする)と、誘導電流Iによる可変抵抗Rにおける電圧降下(これをVとする)とを示している。
これに対し、図4は、エミッタが劣化した状態を模擬するために、先端の曲率半径が500μmのエミッタを用いて、図3と同様にVOUT,V,Vを測定した場合の波形図である。
図3,図4の比較から明らかなように、エミッタが新品の場合には有意な値を持つ出力電圧VOUTを得ることができ、この出力電圧VOUTから真電流Iの大きさを明確に検出可能であるが、エミッタが劣化してくると、出力電圧VOUTつまり真電流Iはほとんど確認できなくなる。
このことから、第1実施形態によれば、エミッタの汚れや劣化状態、真電流や実際に除電に寄与する除電電流を容易に把握できることが判る。
次に、図5は本発明の第2実施形態を示す構成図である。
前述した第1実施形態では、誘導電流Iを検出するために、ケーブル21を包囲する円筒状の補助電極40を用いているが、図5の第2実施形態に示すように、ケーブル21に近接させて平板状の補助電極41を配置しても良い。
また、図6は本発明の第3実施形態を示す構成図であり、前記補助電極40,41に代えて、図6に示すようにコイル状に形成した補助電極42をケーブル21に巻き付けて使用しても良い。
更に、図7は、本発明の第4施形態を示す構成図である。
この実施形態は、被覆した電線により補助電極43を構成し、この補助電極43の先端部をエミッタ20の近傍に配置した例であり、このような構成の補助電極43を用いても誘導電流Iを検出することができる。
なお、図7中の補助電極43先端部の拡大図において、44は可変抵抗Rに接続されるリード線、45はリード線44の先端部まで覆うように被覆された絶縁体を示す。このようにエミッタ20に近接するリード線44の先端部を絶縁体45にて完全に被覆することにより、エミッタ20から生成されたイオンによる真電流までも補助電極43によって検出してしまうのを防止することができる。
なお、上記各実施形態では交流式のコロナ放電型イオナイザについて説明したが、本発明による測定原理は、直流式のコロナ放電型イオナイザにも適用可能である。
本発明の第1実施形態を示す構成図である。 図1の主要部の説明図である。 第1実施形態の効果を説明するための波形図である。 第1実施形態の効果を説明するための波形図である。 本発明の第2実施形態を示す構成図である。 本発明の第3実施形態を示す構成図である。 本発明の第4実施形態を示す構成図である。
符号の説明
10:高電圧発生回路
20:エミッタ
21:ケーブル
30:接地電極
31:接地電極本体
32:絶縁体
33:リード線
40〜43:補助電極
44:リード線
45:絶縁体
50:オペアンプ
:可変抵抗(第1の抵抗)
:抵抗(第2の抵抗)
〜R:抵抗

Claims (9)

  1. 高電圧が印加されるエミッタの近傍に接地電極が配置されたコロナ放電型イオナイザにおいて、
    前記接地電極に流れる全電流と、エミッタに印加される前記高電圧による第1の誘導電流とを同時に測定し、
    第1の誘導電流から、前記全電流の成分であってエミッタが形成する電界によって前記接地電極に流れる第2の誘導電流を推定し、
    前記全電流と第2の誘導電流との差分から、エミッタが生成するイオンによって生じる真電流を測定することを特徴とするコロナ放電型イオナイザの検査方法。
  2. 請求項1に記載したコロナ放電型イオナイザの検査方法において、
    前記真電流から、エミッタの汚れや劣化程度を検出することを特徴とするコロナ放電型イオナイザの検査方法。
  3. 請求項1に記載したコロナ放電型イオナイザの検査方法において、
    前記真電流から、被除電物に到達するイオンによって流れる除電電流を測定することを特徴とするコロナ放電型イオナイザの検査方法。
  4. 高電圧が印加されるエミッタの近傍に接地電極が配置されたコロナ放電型イオナイザにおいて、
    前記接地電極に流れる全電流を測定する手段と、
    エミッタに印加される前記高電圧による第1の誘導電流を前記全電流と同時に測定する手段と、
    第1の誘導電流から、前記全電流の成分であってエミッタが形成する電界によって前記接地電極に流れる第2の誘導電流を推定する手段と、
    前記全電流と第2の誘導電流との差分から、エミッタが生成するイオンによって生じる真電流を測定する演算手段と、
    を備えたことを特徴とするコロナ放電型イオナイザの検査装置。
  5. 請求項4に記載したコロナ放電型イオナイザの検査装置において、
    前記演算手段の出力から、エミッタの汚れや劣化程度を検出することを特徴とするコロナ放電型イオナイザの検査装置。
  6. 請求項4に記載したコロナ放電型イオナイザの検査装置において、
    前記演算手段の出力から、被除電物に到達するイオンによって流れる除電電流を測定することを特徴とするコロナ放電型イオナイザの検査装置。
  7. 請求項4〜6の何れか1項に記載したコロナ放電型イオナイザの検査装置において、
    第1の誘導電流を測定する手段は、
    エミッタに高電圧を印加する高電圧発生手段とエミッタとを接続するケーブルの近傍に配置されて第1の誘導電流を検出する補助電極を備えていることを特徴とするコロナ放電型イオナイザの検査装置。
  8. 請求項4〜6の何れか1項に記載したコロナ放電型イオナイザの検査装置において、
    第1の誘導電流を測定する手段は、
    エミッタの近傍に配置されて第1の誘導電流を検出する補助電極を備えていることを特徴とするコロナ放電型イオナイザの検査装置。
  9. 請求項7または8に記載したコロナ放電型イオナイザの検査装置において、
    前記補助電極に接続された第1の抵抗と、
    前記接地電極に接続された第2の抵抗と、
    前記演算手段として、第1の誘導電流により第1の抵抗に生じる電圧降下と前記全電流により第2の抵抗に生じる電圧降下との差分を増幅する差動増幅回路と、
    を備え、
    前記第1の抵抗または第2の抵抗の少なくとも一方を可変として、第1の誘導電流により第1の抵抗に生じる電圧降下と、第2の誘導電流により第2の抵抗に生じる電圧降下とを等しくすることを特徴とするコロナ放電型イオナイザの検査装置。
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