JP2008196657A - 動力伝達装置の回転数推定装置 - Google Patents

動力伝達装置の回転数推定装置 Download PDF

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直樹 森口
Kazuya Okumura
和也 奥村
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監介 吉末
Yoichiro Yu
陽一郎 勇
Yoshinori Maeda
義紀 前田
Akihiro Hosokawa
明洋 細川
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Abstract

【課題】トラクションドライブ方式において、入力側の回転情報に基づいて出力側が停止しているか否かを判定する際の精度を向上させること。
【解決手段】減速装置RGは、トラクション遊星ローラであり、サンローラ10Sとピニオンローラ10Pとリングローラ10Rとを回転要素とし、回転要素間に介在させた伝達油のせん断力によって、動力を伝達する。減速装置RGは、サンローラ10Sに電動機MGが接続され、リングローラ10Rが静止系Sに固定されて、キャリア10Cに接続された車輪Wへ電動機MGの動力が伝達される。この減速装置RGでは、回転要素の滑り速度に基づいて推定された入力回転数と、実際の入力回転数とに基づいて、車輪Wが停止しているか否かが判定される。
【選択図】 図4−1

Description

本発明は、回転要素間に介在させたトラクション油(伝達油)によって動力を伝達する動力伝達装置に関する。
例えば摩擦ローラのような回転要素を互いに接触させるとともに、回転要素間に介在させた伝達油のせん断応力によって、接触させた回転要素間で動力を伝達する動力伝達方式がある。このような動力伝達方式を、トラクションドライブ方式という。トラクションドライブ方式を用いた駆動装置としては、例えば、特許文献1には、電動機と摩擦ローラ式減速装置とを一体的に組み合わせ、ホイール内に配置する電動式車輪駆動装置が開示されている。
特開2003−28254号公報
ところで、回転数センサの数を低減するため、減速装置に対する入力回転数に基づいて出力回転数を求めるものがある。トラクションドライブ方式は、伝達油のせん断応力によって動力を伝達するため、動力を伝達する回転要素同士の間に滑りが発生する場合がある。このため、出力側が停止していても入力側は回転していることがあり、入力側の回転情報から出力側が停止しているか否かを正確に判定することは困難であった。特許文献1に開示されている技術では、この点について言及されておらず、改善の余地がある。
この発明は、上記に鑑みてなされたものであって、トラクションドライブ方式において、入力側の回転情報に基づいて出力側が停止しているか否かを判定する際の精度を向上させることを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る動力伝達装置の回転数推定装置は、回転要素間に介在させた流体によって、動力発生手段が発生する動力を伝達する動力伝達装置の出力回転数を判定するものであり、前記動力伝達装置が備える回転要素間の滑り速度に基づいて前記動力伝達装置の入力回転数を求める滑りパラメータ演算部と、前記動力伝達装置へ入力される実際の回転数と、前記滑りパラメータ演算部が求めた前記入力回転数とに基づいて、前記動力伝達装置の出力回転数が0であるか否かを判定する停止判定部と、を含むことを特徴とする。
この動力伝達装置の回転数推定装置は、回転要素間に介在させた流体によって、動力発生手段が発生する動力を伝達する、いわゆるトラクションドライブ方式による動力伝達装置において、回転要素間における滑り速度から推定した入力回転数と、実際の入力回転数とに基づいて、車輪が停止しているか否かを判定する。このように、回転要素間における滑りを考慮して出力側、すなわち車輪の回転が停止しているか否かを判定するので、入力側の回転情報に基づいて出力側が停止しているか否かを判定する際の精度を向上させることができる。
本発明の好ましい態様としては、前記滑りパラメータ演算部は、前記動力発生手段の発生するトルクに基づいて、前記動力伝達装置が備える回転要素間に介在する流体のせん断応力を求め、このせん断応力に基づいて前記滑り速度を求めることが望ましい。
本発明の好ましい態様としては、前記滑りパラメータ演算部は、前記動力伝達装置が備える回転要素間の滑り率を求め、前記動力伝達装置に対する入力回転数と、前記滑りパラメータ演算部が求めた滑り率とに基づいて、前記動力伝達装置の出力回転数を推定する回転数推定部を備えることが望ましい。
本発明の好ましい態様としては、前記動力伝達装置及び前記動力発生手段を搭載する車両の停止時に前記動力発生手段が前記動力伝達装置へトルクを付与している発進待機状態であるか否かを前記停止判定部が判定し、前記発進待機状態である場合には、前記動力伝達装置が備える回転要素間に介在する流体の過度の昇温を抑制する動力伝達装置保護部を備えることが望ましい。
本発明の好ましい態様としては、前記停止判定部は、前記動力伝達装置の出力回転数が0であり、かつ前記動力発生手段がトルクを発生している場合に、前記発進待機状態であると判定することが望ましい。
本発明の好ましい態様としては、前記動力伝達装置保護部は、前記動力伝達装置が備える回転要素間に介在する流体の温度が予め定めた所定の温度を超えた場合には、前記動力発生手段の発生するトルクをそれまでよりも低減することが望ましい。
本発明の好ましい態様としては、前記動力伝達装置保護部は、前記動力伝達装置が備える回転要素間に介在する流体の温度が上昇するにしたがって、前記動力発生手段の発生するトルクを低減することが望ましい。
本発明の好ましい態様としては、前記動力伝達装置保護部は、前記停止判定部が前記発進待機状態であると判定した場合には、前記動力伝達装置へ供給する流体の流量を、それまでよりも増加させることが望ましい。
本発明の好ましい態様としては、前記動力伝達装置へ供給する流体の流量は、前記動力伝達装置が備える回転要素間に介在する流体の温度に基づいて増加させることが望ましい。
本発明の好ましい態様としては、前記動力伝達装置保護部は、前記動力伝達装置が備える回転要素間に介在する流体の温度を、前記動力発生手段の回転数と、前記動力発生手段のトルクとから推定することが望ましい。
この発明に係る動力伝達装置の回転数推定装置は、トラクションドライブ方式において、入力側の回転情報に基づいて出力側が停止しているか否かを判定する際の精度を向上させることができる。
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この発明を実施するための最良の形態(以下実施形態という)によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。
以下においては、動力発生手段に電動機を用いる、いわゆる電気自動車に本発明を適用した場合について説明するが、本発明の適用対象はこれに限られるものではない。また、動力発生手段は電動機に限られるものではなく、内燃機関でもよく、内燃機関と電動機とを組み合わせた、いわゆるハイブリッドの動力発生手段を用いてもよい。
(実施形態1)
本実施形態は、回転要素間に介在させた流体(例えばトラクション油)によって動力を伝達する動力伝達装置において、動力伝達装置が備える回転要素の滑り速度に基づいて求められる入力回転数と、動力伝達装置に対する実際の入力回転数とに基づいて、動力伝達装置の出力回転数が0であるか否かを判定する点に特徴がある。以下の説明においては、動力伝達装置として、入力される動力発生手段の回転数を減速して車輪に出力する減速装置を対象とする。なお、動力伝達装置は、入力回転数を増速して出力するものであってもよい。また、回転数は、単位時間あたりの回転数である(以下の実施形態でも同様)。
図1は、実施形態1に係る走行装置を備える車両の構成を示す概略図である。図1に示す車両1は、電動機のみを動力発生手段とする走行装置100を備える。走行装置100は、動力発生手段として、左前電動機3fl、右前電動機3fr、左後電動機3rl、右後電動機3rrを備えている。そして、左前電動機3flは左側前輪2flを、右前電動機3frは右側前輪2frを、左後電動機3rlは左側後輪2rlを、右後電動機3rrは右側後輪2rrを駆動する。このように、この走行装置100は、すべての車輪が駆動輪となる全輪駆動形式となっている。車両1は、図1の矢印X方向に進行する。
本実施形態において、左前電動機3fl、右前電動機3fr、左後電動機3rl、右後電動機3rrは、左側前輪2fl、右側前輪2fr、左側後輪2rl、右側後輪2rrのホイール内に配置される、いわゆるインホイール形式の構成となっている。以下の説明において、4台の電動機を区別しない場合には、単に電動機MGといい、4輪を区別しない場合には、単に車輪Wという。
本実施形態において、左前電動機3fl、右前電動機3fr、左後電動機3rl、右後電動機3rrは、ECU(Engine Control Unit)50によってそれぞれ独立に制御される。これによって、左側前輪2fl、右側前輪2fr、左側後輪2rl、右側後輪2rrそれぞれの駆動力が独立して制御される。また、左側前輪2flの駆動力と、右側前輪2frの駆動力と、左側後輪2rlの駆動力と、右側後輪2rrの駆動力との配分比は、必要に応じてECU50によって変更することができる。これによって、旋回時において内外輪や前後輪の回転数差を設けたり、トラクションコントロールを実行したりすることができる。また、左側前輪2fl、右側前輪2fr、左側後輪2rl、右側後輪2rrには、それぞれ制動装置BRが取り付けられており、これらを制動する。
図1に示すように、本実施形態において、電動機MGと車輪Wとは、減速装置RGを介して接続される。減速装置RGは、各電動機及び各車輪に対して設けられる。すなわち、左前電動機3flと左側前輪2flとの間には左前減速装置10flが設けられ、右前電動機3frと右側前輪2frとの間には右前減速装置10frが設けられ、左後電動機3rlと左側後輪2rlとの間には左後減速装置10rlが設けられ、右後電動機3rrと右側後輪2rrとの間には右後減速装置10rrが設けられる。一般に、電動機は小型化するとトルクが低下するが、減速装置RGを設けることによって電動機MGのトルクを増加させることができる。その結果、走行装置100が搭載する電動機MGを小型化することができる。ここで、4台の減速装置を区別しない場合には、単に減速装置RGという。
左前電動機3fl、右前電動機3fr、左後電動機3rl、右後電動機3rrには、それぞれ左前電動機用レゾルバ40fl、右前電動機用レゾルバ40fr、左後電動機用レゾルバ40rl、右後電動機用レゾルバ40rrによって回転角度や回転速度が検出される。左前電動機用レゾルバ40fl、右前電動機用レゾルバ40fr、左後電動機用レゾルバ40rl、右後電動機用レゾルバ40rrの出力は、動力発生手段制御装置である電動機用ECU8に取り込まれて、左前電動機3fl、右前電動機3fr、左後電動機3rl、右後電動機3rrの制御に用いられる。ここで、4輪を区別しない場合には、単にレゾルバQという。
左前電動機3fl、右前電動機3fr、左後電動機3rl、右後電動機3rrは、電動機制御回路6に接続されている。電動機制御回路6には、図1に示す車両1が搭載する、例えばニッケル−水素電池や鉛蓄電池等の車載電源7が接続されており、必要に応じて、車載電源7から左前電動機3fl、右前電動機3fr、左後電動機3rl、右後電動機3rrを駆動するための電力が供給される。電動機制御回路6は、W、V、Uの三相電流を発生させるための3つのインバータ回路より構成されている。インバータ回路は、ECU50からの指令に基づいて電動機用ECU8が制御する。これによって、左前電動機3fl、右前電動機3fr、左後電動機3rl、右後電動機3rrが駆動制御される。
本実施形態においては、アクセル開度センサ42によって検出されるアクセル5の開度によって、左前電動機3fl、右前電動機3fr、左後電動機3rl、右後電動機3rrの出力が制御され、その結果、走行装置100の総駆動力FD_allが制御される。なお、本実施形態においては、一組のインバータ回路によって1台の電動機が制御される。走行装置100は4台の電動機、すなわち、左前電動機3fl、右前電動機3fr、左後電動機3rl、右後電動機3rrを備えるため、これらを制御するために、電動機制御回路6には4組のインバータ回路が備えられる。
左前電動機3fl、右前電動機3fr、左後電動機3rl、右後電動機3rrが走行装置100の動力発生手段として用いられる場合、車載電源7の電力が電動機制御回路6を介して供給される。また、例えば車両1の減速時には、左前電動機3fl、右前電動機3fr、左後電動機3rl、右後電動機3rrが発電機として機能して回生発電を行い、これによって回収したエネルギーを車載電源7に蓄える。これは、ブレーキ信号やアクセルオフ等の信号に基づいて、ECU50が電動機制御回路6を制御することにより実現される。
ECU50は、本実施形態に係る走行装置100の駆動力を制御したり、制動時には、電動機MGにより電力を回生したりする。車両1が備える通信回線9には、レゾルバQ、アクセル開度センサ42、ヨーセンサ43、車速センサ44、操舵角センサ45等が接続されている。そして、ECU50は、通信回線9を介して、走行装置100の制御に必要な情報をこれらのセンサ類から取得する。また、後述するように、ECU50には動力伝達装置の回転数推定装置30が備えられており、本実施形態に係る回転数推定方法を実行する。なお、本実施形態において、動力伝達装置の回転数推定装置30は、ECU50の一機能として実現される。
図2は、実施形態1に係る車両の駆動系支持構造の構成例を示す説明図である。図2に示す駆動系支持構造は、車両1の前輪、すなわち左側前輪2fl及び右側前輪2frの支持構造である。本実施形態に係る車両1を走行させる駆動系は、電動機MGと、減速装置RGと、車輪Wとで構成される。本実施形態に係る車両1は、いわゆるインホイール形式を採用するので、電動機MG、減速装置RG及び車輪Wは、懸架装置1Sのばね下構造物、すなわち、懸架装置1Sのばね20Sよりも鉛直方向下方に存在する構造物となる。
電動機MG、減速装置RGは、懸架装置1Sを構成する取付リンク24に取り付けられる。減速装置RGの回転軸(減速装置回転軸)RGsには車輪Wが取り付けられるので、車輪Wは、減速装置RGを介して取付リンク24に取り付けられる。本実施形態においては、減速装置RGのリングローラ10Rが取付リンク24に固定される。そして、減速装置RGには電動機MGの回転軸(電動機回転軸)MGsが接続され、減速装置RGの回転軸(減速装置回転軸)RGsには車輪Wが取り付けられる。これによって、電動機MGの回転数を減速装置RGで減速して、車輪Wを駆動する。
図2に示すように、本実施形態において、懸架装置1Sには、いわゆるストラット形式が用いられている。減衰力発生手段であるダンパー20の一方の端部にはアッパーマウント20Uが設けられ、これを介してダンパー20が車両本体1Bに取り付けられる。ダンパー20の他方の端部には、ブラケット20Bが設けられている。
ダンパー20のブラケット20Bは、取付リンク24に設けられる取付リンクブラケット24bに取り付けられる。また、取付リンク24のピポット部24pは、トランスバースリンク22のピボット受け28と組み合わされ、ピン結合される。これによって、取付リンク24とトランスバースリンク22とが連結される。なお、取付リンク24のピポット部24pは、取付リンク24に取り付けられる電動機MGの電動機回転軸MGsに対して、取付リンクブラケット24bとほぼ対称となる位置に設けられる。
このような構成により、懸架装置1Sを構成するダンパー20とトランスバースリンク(ロワーアーム)22とは、取付リンク24によって連結される。そして、電動機MG、減速装置RG及び車輪Wは、取付リンク24を介して懸架装置1Sに取り付けられ、車両1の車両本体1Bに支持される。
トランスバースリンク22は、車両取付部27で車両本体1Bに取り付けられている。そして、取付リンク24が上下方向(図2中のY方向、以下同様)に動作することにより、車両取付部27の揺動軸Zsfを中心として揺動運動する。ここで、上下方向とは、重力の作用方向と平行な方向である。
取付リンク24に取り付けられる減速装置RGの減速装置回転軸RGsには、ブレーキローター21及びホイール13が取り付けられる。ホイール13には空気入りタイヤ23が取り付けられて、車輪Wとなる。路面GLから車輪Wへの入力によって、ホイール13は上下方向に動作する。ホイール13は減速装置回転軸RGsに取り付けられており、また、電動機MGと減速装置RGとは取付リンク24に取り付けられているので、ホイール13が上下方向に動作すると、電動機MG及び減速装置RGは、取付リンク24とともに上下方向に動作する。ばね下構造物である車輪W、電動機MG等が上下方向に動作することによる車両本体1Bへの入力は、懸架装置1Sのばね20S及びダンパー20で吸収される。
図3−1は、実施形態1に係る減速装置の構造を示す模式図である。図3−2は、実施形態1に係る減速装置が備える回転要素間の拡大図である。図4−1、図4−2は、実施形態1に係る減速装置のスケルトン図である。図1に示す、本実施形態に係る車両1が備える走行装置100は、電動機MGが発生する動力を、減速装置RGを介して車輪Wへ伝達する。減速装置RGは、回転要素であるローラ同士の間に介在する流体のせん断応力によって、ローラ間で動力を伝達する、いわゆるトラクションドライブ方式を採用する。ローラ同士の間に介在する流体は、いわゆるトラクション油(以下伝達油という)であり、伝達油のせん断応力は、速度勾配に応じて発生する。
図3−1に示すように、減速装置RGは、複数種類の回転要素で構成されるトラクション遊星ローラであり、基本的な構成は、遊星歯車装置と同様である。減速装置RGは、サンローラ10Sと、ピニオンローラ10Pと、キャリア10Cと、リングローラ10Rとを回転要素として備える。すなわち、減速装置RGは4種類の回転要素を備えて構成される。リングローラ10Rの内周部には、キャリア10Cによって回転可能に支持された複数(本実施形態では3個)のピニオンローラ10Pが等間隔に配置される。また、サンローラ10Sの外周部には、複数のピニオンローラ10Pが等間隔で配置される。キャリア10Cは、複数のピニオンローラ10Pの回転軸10PSを支持して、サンローラ10Sに対するピニオンローラ10Pの公転を取り出す部材である。
減速装置RGは、サンローラ10Sとピニオンローラ10Pとの間、ピニオンローラ10Pとリングローラ10Rとの間で動力を伝達する。図3−2に示すように、減速装置RGは、サンローラ10Sとピニオンローラ10Pとの間に伝達油TFを介在させ、伝達油TFの摩擦力によってサンローラ10Sとピニオンローラ10Pとの間で動力を伝達する。ピニオンローラ10Pとリングローラ10Rとの間も同様である。伝達油TFは、回転要素同士の接触部に生じる高い圧力のもとでガラス状に固化する性質を持っており、サンローラ10Sとピニオンローラ10Pとの間や、ピニオンローラ10Pとリングローラ10Rとの間で、動力を伝達する。
このように、トラクション遊星ローラで構成される減速装置RGは、回転要素間で動力を伝達するため、回転要素間の接触部に高い圧力を発生させる。このために、サンローラ10Sとピニオンローラ10Pとは、リングローラ10Rの内周部へ、しまり嵌めのような状態で配置される。また、減速装置RGが備える回転要素間に、サブミクロンオーダーの伝達油TFの油膜を形成して、回転要素間で動力を伝達する。このため、サンローラ10Sの表面、ピニオンローラ10Pの表面、リングローラ10Rの内周部の表面は、極めて高い精度で、かつ極めて滑らかに仕上げてある。
図4−1、図4−2に示すように、本実施形態においては、減速装置RGのサンローラ10Sに電動機MGの出力軸3Sを接続する。そして、図4−1に示すように、減速装置RGのリングローラ10Rを静止系Sに固定して、キャリア10Cに接続した車輪Wを駆動するか、図4−2に示すように、減速装置RGのキャリア10Cを静止系Sに固定して、リングローラ10Rに接続した車輪Wを駆動する。いずれの場合でも、サンローラ10Sから入力される電動機MGの回転数が減速されて、キャリア10Cあるいはリングローラ10Rへ出力される。
本実施形態において、図4−1に示す構成を実現する場合、上述した図2に示す懸架装置1Sにおいて、減速装置RGのリングローラ10Rを、静止系である取付リンク24に固定する。これによって、電動機回転軸MGsの回転数を減速して車輪Wを駆動する。また、図4−2に示す構成を実現する場合には、減速装置RGのキャリア10Cを、静止系である取付リンク24に固定し、減速装置RGのリングローラ10Rに車輪Wを取り付ける。
本実施形態の減速装置RGに用いるトラクション遊星ローラは、歯車式の遊星ギヤと比較して、減速比を大きくとることができる。このため、より高い回転数で電動機を用いることができる。本実施形態においては、トラクション遊星ローラを用いる減速装置RGにより、大きな減速比が確保できるので、小型の電動機を高い回転数で用いることができる。その結果、車両1の走行装置100が備える電動機MGを小型化することができる。これによって、本実施形態に係る走行装置100のようにインホイール形式を用いる場合には、ばね下質量を軽減して、車両1の走行性能を向上させたり、乗り心地を向上させたりすることができる。
上述したように、本実施形態の減速装置RGに用いるトラクション遊星ローラは、大きい減速比を確保できるという利点があるが、回転要素間に介在する伝達油TFのせん断応力によって動力を伝達するため、回転要素間に滑りが発生する。この滑りに起因して、トラクション遊星ローラを用いた本実施形態に係る減速装置RGは、車輪Wが停止している状態、すなわち、減速装置RGのキャリア10C及びリングローラが固定されている状態では、電動機MGの回転数から車輪Wの回転数を推定する際の精度が低下する。
車輪Wの回転数を推定する精度が低下すると、例えば、制動時に車輪Wのロックを回避するための制動装置BRのアンチロック制御が正しく実行できないおそれがある。車輪Wが停止している状態であること、すなわち、車輪Wの回転数が0であることを正確に求めるため、電動機MGの回転情報を検出するレゾルバQの他に、車輪Wの回転数を検出する回転数センサを設ける手法も考えられる。しかし、車輪Wの回転数を検出するセンサを設けるとコスト増加を招くとともに、回転数センサの取付スペースを確保しなければならないという問題が発生する。特に、本実施形態に係る車両1が備える走行装置100のように、いわゆるインホイールモータ形式を採用する場合、車輪Wのホイール内に回転数センサを取り付ける必要があるため、取付スペースの確保がより難しくなるおそれがある。
そこで、本実施形態では、次に説明する回転数推定方法により、減速装置RGが備える回転要素の滑り速度に基づいて車輪Wの回転数が0であるときにおける減速装置RGへの入力回転数を求め、これと減速装置に対する実際の入力回転数(すなわち電動機MGの回転数)とを比較することによって、減速装置の出力回転数(すなわち車輪Wの回転数)が0であるか否かを判定する。これによって、レゾルバQの他に、減速装置の出力回転数(すなわち車輪Wの回転数)を検出する回転数センサを設けることなく、減速装置の出力回転数が0であるか否か、すなわち車輪Wが停止しているか否かを精度よく判定することができる。次に、本実施形態に係る回転数推定方法を説明する。
図5は、実施形態1に係る回転数推定方法を説明するための模式図である。図6は、回転要素同士の接触部におけるせん断応力と接線方向滑り速度との関係を記述した滑り速度マップの概念図である。図7は、減速装置の回転要素同士が接触する部分における伝達油の油膜形状を示す概念図である。図5に示す減速装置RGにおいて、減速装置RGを構成するサンローラ10Sの半径をRSとする。また、サンローラ10Sとピニオンローラ10Pとの接触部をPS、ピニオンローラ10Pとリングローラ10Rとの接触部をPRとする。
本実施形態では、減速装置RGが備える回転要素間における滑り速度Vslipに基づいて、車輪Wの回転数が0であるか否かを判定する。ここで、滑り速度Vslipは、減速装置RGが備える回転要素同士における接線方向速度の差である。図5に示す減速装置RGでは、車輪Wが停止しているため、リングローラ10R及びキャリア10Cがともに回転しない状態(すなわち固定された状態)である。
この状態においては、サンローラ10Sとピニオンローラ10Pとの間における滑り速度Vslip_SPは式(1)で求められ、また、ピニオンローラ10Pとリングローラ10Rとの間における滑り速度Vslip_PRは式(2)で求められる。ここで、Vsはサンローラ10Sの接線方向速度であり、Vpはピニオンローラ10Pの接線方向速度である。また、車輪Wが停止しており、リングローラ10R及びキャリア10Cはともに固定なので、リングローラ10Rの接線方向速度Vr=0である。
Vslip_SP=Vs−Vp・・(1)
Vslip_PR=Vp−0・・(2)
接線力の釣り合いから、接触部PS(サンローラ10Sとピニオンローラ10Pとが接触する部分)と接触部PR(ピニオンローラ10Pとリングローラ10Rとが接触する部分)との接線力Fは等しいので、Vslip_SP=Vslip_PR=Vslipとなる。したがって、VpとVsとの関係は、式(4)のようになる。
Vs=2×Vp・・(4)
また、式(2)から、Vslip_PR=Vslip=Vp=Vslip_SPなので、滑り速度Vslip=Vpとなる。これにより、サンローラ10Sの接線方向速度Vsは、滑り速度Vslipを用いて式(5)のようになる。
Vs=2×Vslip・・・(5)
式(5)で求められるサンローラ10Sの接線方向速度Vsが、車輪Wが停止しているためにリングローラ10R及びキャリア10Cがともに固定状態である場合におけるサンローラ10Sの接線方向速度となる。式(5)の右辺をサンローラ10Sの回転角速度(停止時回転角速度)ωs_0で表すと、ωs_0=Vs/RS=2×Vslip/RSとなる。ここで、回転角速度ω(rad/sec.)と回転数N(rev./sec.)との関係は、N=ω/(2×π)なので、回転角速度ω(rad/sec.)は回転数N(rev./sec.)に相当する。なお、回転数は単位時間当たりの回転数である。
図4−1や図4−2に示すように、サンローラ10Sには電動機MGが直結してある。すなわち、減速装置RGに対する入力回転角速度ωin(入力回転数Ninに相当)は、電動機MGの回転角速度ωmになる。車輪Wが停止しており、減速装置RGのリングローラ10R及びキャリア10Cがともに固定状態である場合には、レゾルバQによって検出される電動機MGの回転角速度ωmはωs_0(=2×Vslip/RS)となる。
したがって、レゾルバQによって検出される電動機MGの回転角速度(電動機MGの回転数Nmに相当)ωmが停止時回転角速度ωs_0であれば、減速装置RGの出力回転角速度ωout、すなわち車輪Wの回転角速度(車輪Wの回転数Nwに相当)ωwは0であると判定することができる。ここで、レゾルバQの検出精度やCPU50pの演算誤差、あるいは通信遅れ等の誤差要因を考慮した上で許容される範囲内で、電動機MGの回転角速度ωmと停止時回転角速度ωs_0とが一致する場合には、車輪Wの回転角速度ωwが0であると判定する。電動機MGの回転角速度ωmと停止時回転角速度ωs_0とが完全一致する場合にも、車輪Wの回転角速度ωwが0であると判定する。
式(6)は、停止時回転角速度ωs_0を回転数に書き直したものであり、これを、減速装置RGの出力回転数Nout(すなわち車輪Wの回転数Nwに相当)が0であるか否かを判定するための停止判定パラメータN_0という。そして、減速装置RGに対する入力回転数Nin(すなわち電動機MGの回転数Nm)がN_0である場合に、減速装置RGの出力回転数Nout、すなわち車輪Wの回転数Nwは0であると判定することができる。
N_0=2×Vslip/RS/(2×π)・・(6)
ここで、レゾルバQの検出精度やCPU50pの演算誤差、あるいは通信遅れ等の誤差要因を考慮した上で許容される範囲内で、入力回転数Nin(すなわち電動機MGの回転数Nm)と停止判定パラメータN_0とが一致する場合には、出力回転数Nout(すなわち車輪Wの回転数Nw)が0であると判定する。入力回転数Ninと停止判定パラメータN_0とが完全一致する場合にも、出力回転数Noutが0であると判定する。
なお、レゾルバQの検出精度やCPU50pの演算誤差、あるいは通信遅れ等の誤差要因を考慮した上で許容される範囲内で、入力回転数Ninと停止判定パラメータN_0とが一致する場合には、出力回転数Noutが0と判定される。
車輪Wの回転数Nwが0であるか否かを判定するためには、滑り速度Vslipを求める必要がある。図6の滑り速度マップ60に示すように、動力を伝達する回転要素間に介在する伝達油TFのせん断応力τ(MPa)は、滑り速度Vslipが増加するにしたがって増加する。そして、せん断応力τが決定されると滑り速度Vslipは一義的に決定される。したがって、せん断応力τを得ることができれば、滑り速度Vslipを求めることができる。
減速装置RGの回転要素同士の接触部(図5ではサンローラ10Sとピニオンローラ10Pとの接触部PS)で伝達可能な接線力(一接触部あたりの接線力)Fは、式(7)で求めることができる。式(7)中のFNは、図5に示すように、回転要素間における垂直方向の押付力であり、減速装置RGが備えるサンローラ10S及びリングローラ10Rの回転軸Zrと、ピニオンローラ10Pの回転軸Zpとを通る直線上での押付力である。接線力Fは、接触部PS、あるいは接触部PRにおけるサンローラ10S、ピニオンローラ10P、リングローラ10Rの接線方向における力である。押付力FNは、減速装置RGの仕様から求めることができる。ここで、TMは、電動機MGの発生するトルク(電動機トルク)、npは、減速装置RGが備えるピニオンローラ10Pの個数である。
F=TM/(RS×np)・・(7)
また、接触部PSで伝達可能な接線力は、動力を伝達する回転要素間に介在する伝達油TFのせん断応力τ及び動力を伝達する回転要素同士の接触部の面積(接触面積)Sを用いて、式(8)で求めることができる。したがって、式(7)、式(8)から、せん断応力τは、式(9)のようになる。ここで、接触面積SAは、図7に示す、回転要素間に介在する伝達油TFの接触長さLと、回転要素の回転軸方向長さdとの積L×dで求めることができる。
F=τ×S・・(8)
τ=TM/{(RS×np)×SA}・・(9)
図6に示す滑り速度マップ60は、例えば、2円筒試験機によって求めることができる。なお、理論式に基づいて、滑り速度マップ60を作成してもよい。ここで、せん断応力τと滑り速度Vslipとの関係は、回転要素間に介在する伝達油TFの平均圧力pmや回転要素間に介在する伝達油TFの温度(油膜温度)θによって変化する。したがって、異なる条件の下でせん断応力τと滑り速度Vslipとの関係を求めて滑り速度マップ60を作成し、減速装置RGの動作条件に応じて適切な滑り速度Vslipを設定することが好ましい。
例えば、油膜温度θが上昇するにしたがって、同じせん断応力τでも滑り速度Vslipは大きくなるので、油膜温度θを考慮しないと、車輪Wの回転数が0であるか否かを判定する際の精度が低下する。このため、図6に示す滑り速度マップ60のように、複数の異なる油膜温度θに対して、それぞれせん断応力τと滑り速度Vslipとの関係を記述し、油膜温度θに応じて適切なせん断応力τと滑り速度Vslipとの関係(滑り速度カーブ)を用いて滑り速度Vslipを求める。例えば、図6に示す滑り速度マップ60においては、油膜温度がθaのときの滑り速度カーブはa、油膜温度がθbのときの滑り速度カーブはb、油膜温度がθcのときの滑り速度カーブはcであり、θa<θb<θcである。
なお、図6の滑り速度マップ60に記述されている滑り速度カーブa、b、cは離散的なので、油膜温度θが滑り速度カーブ間にある場合には、例えば線形補間によって滑り速度Vslipを求める。また、図6に示す滑り速度マップ60では、減速装置RGの動作条件は油膜温度θを異ならせているが、他の動作条件(例えば、上述した回転要素間に介在する伝達油TFの平均圧力pm)を考慮してもよい。このようにすれば、運転条件や環境によって減速装置RGの動作条件が変化した場合でも、車輪Wの回転数が0であるか否かを判定する際の精度低下を抑制できる。
せん断応力τは、電動機トルクTMを式(9)に与えることによって求めることができる。このようにして求めたせん断応力τを、滑り速度マップ60に与えれば、そのときの滑り速度Vslipを求めることができる。車輪Wの回転数が0であるか否かを判定する際には、電動機トルクTMから求めたせん断応力τを滑り速度マップ60に与えて滑り速度Vslipを取得する。そして、Vslipとを式(6)に与えて、停止判定パラメータN_0を求める。この停止判定パラメータN_0と、レゾルバQが取得した情報から求めた電動機MGの回転数Nmとが一致した場合には、車輪Wの回転数Nwは0であると判定する。
図8は、実施形態1に係る動力伝達装置の回転数推定装置の構成例を示す説明図である。図8に示すように、動力伝達装置の回転数推定装置(以下回転数推定装置という)30は、ECU50に組み込まれて構成されている。ECU50は、CPU(Central Processing Unit:中央演算装置)50pと、記憶部50mと、入力及び出力ポート55、56とから構成される。
なお、ECU50とは別個に、本実施形態に係る回転数推定装置30を用意し、これをECU50に接続してもよい。そして、本実施形態に係る回転数推定方法を実現するにあたっては、ECU50が備える走行装置100等に対する制御機能を、前記回転数推定装置30が利用できるように構成してもよい。
回転数推定装置30は、制御情報取得部31と、滑りパラメータ演算部32と、停止判定部33とを含んで構成される。これらが、本実施形態に係る回転数推定方法を実行する部分となる。本実施形態において、回転数推定装置30は、ECU50を構成するCPU50pの一部として構成される。CPU50pには、電動機出力制御部50peが備えられており、車両1の走行時における電動機MGの出力や電力の回生を制御する他、回転数推定装置30が推定した結果に基づいて電動機MGを制御する。また、CPU50pには、総合制御部50pcが備えられており、電動機MGの制御に必要な情報を演算する。
CPU50pと記憶部50mとは、バス541〜543を介して、入力ポート55及び出力ポート56を介して接続される。これにより、回転数推定装置30を構成する制御情報取得部31と滑りパラメータ演算部32と停止判定部33とは、相互に制御データをやり取りしたり、一方に命令を出したりできるように構成される。また、回転数推定装置30は、ECU50が有する走行装置100の運転制御データを取得し、これを利用することもできる。さらに、回転数推定装置30は、本実施形態に係る回転数推定方法をECU50が予め備えている運転制御ルーチンに割り込ませたりすることができる。
入力ポート55は、通信回線9と接続される。通信回線9には、アクセル開度センサ42、ヨーセンサ43、車速センサ44、操舵角センサ45、電動機駆動電流検出回路46その他の、走行装置100の運転制御に必要な情報を取得するセンサ類が接続されている。CPU50pは、通信回線9を介して、これらのセンサ類から出力される信号を取得する。これにより、CPU50pは、走行装置100の運転制御や、本実施形態に係る回転数推定方法の実行に必要な情報を取得することができる。また、出力ポート56は、通信回線9と接続されている。そして、CPU50pが演算した電動機MG(左前電動機3fl、右前電動機3fr、左後電動機3rl、右後電動機3rr)に対する駆動制御指令は、通信回線9を介して電動機用ECU8に発信される。これによって、電動機用ECU8を介して、電動機MGを制御することができる。
記憶部50mには、本実施形態に係る回転数推定方法の処理手順を含むコンピュータプログラムや滑り速度マップ60、あるいは本実施形態に係る回転数推定方法に用いるデータ等が格納されている。ここで、記憶部50mは、RAM(Random Access Memory)のような揮発性のメモリ、フラッシュメモリ等の不揮発性のメモリ、あるいはこれらの組み合わせにより構成することができる。
上記コンピュータプログラムは、CPU50pへ既に記録されているコンピュータプログラムと組み合わせによって、本実施形態に係る回転数推定方法の処理手順を実現できるものであってもよい。また、この回転数推定装置30は、前記コンピュータプログラムの代わりに専用のハードウェアを用いて、制御情報取得部31、滑りパラメータ演算部32及び停止判定部33の機能を実現するものであってもよい。
通信回線9に接続される電動機用ECU8は、入力ポート8iと、CPU8pと、プリドライバ8dとを備えている。入力ポート8iは通信回線9に接続されており、CPU8pは、通信回線9及び入力ポート8iを介して、ECU50から発信される電動機MGの駆動制御指令を取得する。CPU8pは、取得した駆動制御指令に基づいて電動機MGに供給する電流の値、すなわち電流指令値を演算する。そして、CPU8pは、演算した電流指令値をプリドライバ8dに出力し、プリドライバ8d及びプリドライバ8dに接続される電動機制御回路6を介して、電動機MGを駆動制御する。
また、CPU8pは、入力ポート8iに接続されるレゾルバQ(左前電動機用レゾルバ40fl、右前電動機用レゾルバ40fr、左後電動機用レゾルバ40rl、右後電動機用レゾルバ40rr)が検出する電動機回転速度や、入力ポート8iに接続される電動機駆動電流検出回路46が検出する電動機MGの駆動電流値を取得する。そして、CPU8pは、取得した電動機回転速度や駆動電流値に基づいて、ECU50から発信される電動機MGの駆動制御指令の通りに電動機MGが駆動されるように、電動機MGをフィードバック制御する。
電動機用ECU8が備えるプリドライバ8dは、CPU8pで演算された電流指令値を、パルス幅変調されたデューティ指令値W、V、U、Wb、Vb、Ubに変換するためのものである。ここで、デューティ指令値W、V、Uは正相の三相信号を表し、デューティ指令値Wb、Vb、Ubは逆相の三相信号を表す。プリドライバ8dから出力されるデューティ指令値W、V、U、Wb、Vb、Ubは電動機制御回路6が備えるインバータ回路に送られて、左前電動機3fl、右前電動機3fr、左後電動機3rl、右後電動機3rrが駆動制御される。次に、本実施形態に係る回転数推定方法を説明する。
図9は、実施形態1に係る回転数推定方法の手順を示すフローチャートである。本実施形態に係る回転数推定方法を実行するにあたり、ステップS101において、図8に示す回転数推定装置30の制御情報取得部31は、電動機MGのレゾルバQが検出する電動機MGの回転情報を取得し、また、電動機駆動電流検出回路46から電動機MGの駆動電流値を取得する。そして、ステップS102において、制御情報取得部31は、取得した電動機MGの回転情報から電動機MGの回転数(電動機回転数)Nmを求めるとともに、電動機MGの駆動電流値から電動機MGが発生している電動機トルクTMを求める。
ステップS103において回転数推定装置30の滑りパラメータ演算部32は、ステップS102で得られた電動機トルクTMを式(9)に与え、せん断応力τを求める。このとき、油膜温度θ等の減速装置RGの動作条件を考慮する。滑りパラメータ演算部32は、得られたせん断応力τを図6に示す滑り速度マップ60に与えて対応する滑り速度Vslipを求め、この滑り速度Vslipを式(6)に与えて、現時点における停止判定パラメータN_0を求める。なお、滑り速度Vslipを求める際には油膜温度θを考慮する。
ステップS105において、回転数推定装置30の停止判定部33は、ステップS104において得られた現時点における停止判定パラメータN_0と、ステップS102で求めた電動機回転数Nm(すなわち入力回転数Nin)とを比較する。ステップS105でYesと判定された場合、すなわち、停止判定部33が、Nm=N_0であると判定した場合、停止判定部33は、出力回転数Nout=0、すなわち車輪Wは停止していると判定する。ステップS105でNoと判定された場合、すなわち、停止判定部33が、Nm≠N_0であると判定した場合、停止判定部33は、車輪Wは回転していると判定する。
以上、本実施形態では、トラクションドライブ方式による動力伝達装置において、回転要素間における滑り速度から推定した入力回転数と、実際の入力回転数とに基づいて、車輪が停止しているか否かを判定する。このように、回転要素間における滑りを考慮して出力側、すなわち車輪の回転が停止しているか否かを判定するので、実際の入力回転数を用いて、出力側が停止しているか否かの判定精度を向上させることができる。
(実施形態2)
実施形態2は、実施形態1の構成に加え、さらに、動力伝達装置である減速装置に対する入力回転数と、前記減速装置が備える回転要素間の滑り率とに基づいて、前記減速装置の出力回転数を推定する点に特徴がある。他の構成は、実施形態1と同様である。
上述したように、本実施形態の減速装置RGに用いるトラクション遊星ローラは、大きい減速比を確保できるという利点があるが、回転要素間に介在する伝達油TFのせん断応力によって動力を伝達するため、回転要素間に滑りが発生する。この滑りは、伝達油TFの温度や伝達トルクによって変化するため、減速装置RGの減速比ηは不定となる。したがって、電動機MGの回転数(すなわち入力回転数Nin)から車輪Wの回転数(すなわち出力回転数Nout)を求める場合、電動機MGの回転数を減速装置RGの減速比ηで除するのみでは、車輪Wの正確な回転数を求めることはできない。車輪Wの正確な回転数を求めることができないと、いわゆるトラクションコントロールや車両1の左右輪間で駆動力を異ならせる駆動力配分制御等といった、車輪Wの駆動力制御の精度が低下し、駆動力制御の十分な効果が得られないおそれがある。
車輪Wの回転数を正確に求めるため、電動機MGの回転情報を検出するレゾルバQの他に、車輪Wの回転数を検出する回転数センサを設ける手法も考えられる。しかし、車輪Wの回転数を検出するセンサを設けるとコスト増加を招くとともに、回転数センサの取付スペースを確保しなければならないという問題が発生する。特に、本実施形態に係る車両1が備える走行装置100のように、いわゆるインホイールモータ形式を採用する場合、車輪Wのホイール内に回転数センサを取り付ける必要があるため、取付スペースの確保がより難しくなるおそれがある。
そこで、本実施形態では、次に説明する回転数推定方法により、電動機MGの回転速度や回転方向等の回転情報を取得するレゾルバQにより検出した電動機MGの回転数から、車輪Wの回転数を推定する。すなわち、減速装置RGが備える回転要素間の滑り率に基づいて、電動機MGの回転数から車輪Wの回転数を推定する。これによって、レゾルバQの他に車輪Wの回転数を検出する回転数センサを設けることなく、車輪Wの回転数を精度よく求めることができる。次に、本実施形態に係る回転数推定方法を説明する。
図10−1は、実施形態2に係る回転数推定方法を説明するための模式図である。図10−2は、実施形態2に係る減速装置が備える回転要素の拡大図である。図11は、回転要素間のトラクション係数と滑り率との関係を記述したマップの概念図である。図10−1に示す減速装置RGにおいて、減速装置RGを構成するリングローラ10Rの半径をRR、ピニオンローラ10Pの半径をRP、サンローラ10Sの半径をRSとする。また、サンローラ10Sとピニオンローラ10Pとの接触部をPS、ピニオンローラ10Pとリングローラ10Rとの接触部をPRとする。
上述した図4−1に示す構成の場合、すなわち、リングローラ10Rを静止系Sに固定した場合、キャリア10Cの回転数(出力回転数)Noutと、サンローラ10Sの回転数(入力回転数)Ninとの関係は、式(10)で表すことができる。また、図4−2に示す構成の場合、すなわち、キャリア10Cを静止系Sに固定した場合、リングローラ10Rの回転数(出力回転数)Noutと、サンローラ10Sの回転数(入力回転数)Ninとの関係は、式(11)で表すことができる。式(10)、式(11)中のSLPは、動力を伝達する回転要素間の滑り率である。また、出力回転数Noutは車輪Wの回転数であり、入力回転数Ninは電動機MGの回転数である。
Nout=Nin×(1−SLP)×RS/(RR+RS)・・(10)
Nout=Nin×(1−SLP)2×RS/RR・・(11)
入力回転数Ninは、電動機MGの回転数であり、レゾルバQによって検出することができる。したがって、式(10)、式(11)において、滑り率SLPが求まれば、出力回転数Noutを求めることができる。このために、本実施形態に係る回転数推定方法では、図11に示す滑り率マップ61から滑り率SLPを求める。滑り率マップ61は、減速装置RGの回転要素間のトラクション係数μTと滑り率SLPとの関係が記述してある。
ここで、図10−2を用いて、滑り率SLPについて説明する。本実施形態において、滑り率SLPは、回転要素同士の接触部において、入力側の回転要素の接線方向速度をVi、被入力側の回転要素の接線方向速度をVoとすると、SLP=Vo/(Vi−Vo)となる。例えば、入力側がサンローラ10Sであり被入力側がピニオンローラ10Pである場合に、両者の接触部におけるサンローラ10Sの接線方向速度をVs、ピニオンローラ10Pの接線方向速度をVpとすると、SLP=Vp/(Vs−Vp)となる。
減速装置RGの回転要素間は、サンローラ10Sとピニオンローラ10Pとの間、ピニオンローラ10Pとリングローラ10Rとの間があるが、各回転要素間において、接線方向の力は等しいという条件が成立する。このため、いずれの回転要素間においても、滑り率SLPは等しくなり、図11に示す滑り率マップ61の関係が成立する。ここで、図11に示す滑り率マップ61は、例えば、2円筒試験機等を用いた実験により、トラクション係数μTと滑り率SLPとの関係を予め求めておくことにより作成する。また、トラクション係数μTと滑り率SLPとの理論式を用いて滑り率マップ61を作成してもよい。滑り率マップ61は、ECU50の記憶部50mに格納される。
図10−1に示す減速装置RGが備える回転要素間のトラクション係数μTと滑り率SLPとの関係は、図11に示す滑り率マップ61のように、減速装置RGの回転要素間に介在する伝達油TFの温度(油膜温度)θに応じて変化する。すなわち、油膜温度θが高くなるにしたがって、同じトラクション係数μTであっても、滑り率SLPは大きくなる。このため、油膜温度θを考慮しないと、出力回転数Noutの推定精度が低下する。
図11に示す滑り率マップ61は、異なる油膜温度θに対して、それぞれトラクション係数μTと滑り率SLPとの関係(以下トラクションカーブという)を用意し、油膜温度θに応じて適切なトラクションカーブを用いて滑り率SLPが求められる。これによって、油膜温度θを考慮して滑り率SLPを決定することができるので、出力回転数Noutの推定精度の低下を抑制できる。
図11に示す滑り率マップ61において、油膜温度がθaのときのトラクションカーブはa、油膜温度がθbのときのトラクションカーブはb、油膜温度がθcのときのトラクションカーブはcであり、θa<θb<θcである。図11に示す滑り率マップ61から分かるように、油膜温度θが高くなるにしたがって、同じトラクション係数μTにおける滑り率SLPの値は大きくなる。
図11に示す滑り率マップ61に記述されているトラクションカーブは離散的なので、油膜温度θがトラクションカーブ間にある場合には、例えば線形補間によって滑り率SLPを求める。本実施形態によれば、運転条件や環境によって油膜温度θが変化した場合でも、出力回転数Noutの推定精度の低下を抑制できる。
上記滑り率マップ61に、現在の運転条件におけるトラクション係数μTを与えれば、そのときの滑り率SLPを求めることができ、これに基づいて、式(10)あるいは式(11)から、出力回転数Noutを求めることができる。次に、トラクション係数μTを求める手法を説明する。
図10−1に示す減速装置において、回転要素同士の接触部PS、あるいは接触部PRで伝達可能な接線力(一接触部あたりの接線力)Fは、式(12)で求めることができる。また、接線力Fは、上述した式(7)で求めることができる。ここで、式(12)中のFNは、図10−2に示すように、回転要素間における鉛直方向の押付力であり、減速装置RGが備えるサンローラ10S及びリングローラ10Rの回転軸Zrと、ピニオンローラ10Pの回転軸Zpとを通る直線上での押付力である。押付力FNは、減速装置RGの仕様から求めることができる。
F=μT×FN・・(12)
上述した式(7)の接線力と(12)の接線力とは等しいため、式(7)の右辺=式(12)の右辺としてトラクション係数μTについて整理すると、式(13)のようになる。式(13)に電動機トルクTMを与えれば、そのときのトラクション係数μTを求めることができる。式(13)に電動機トルクTMを与えることによって得られたトラクション係数μTを、滑り率マップ61に与えれば、そのときの滑り率SLPを求めることができる。これによって得られた滑り率SLP及びレゾルバQによって得られる電動機MGの回転数、すなわち、入力回転数Ninを式(10)あるいは式(11)に与えれば、出力回転数Nout、すなわち車輪Wの回転数を求めることができる。
μT=TM/(FN×RS×np)・・(13)
次に、図11に示す滑り率マップ61を用いて滑り率SLPを求める際に用いる油膜温度θの推定手法を説明する。まず、減速装置RGに供給される伝達油の温度や、油膜温度と相関の高い部分の温度を実測することにより油膜温度を推定する手法を説明する。
図12は、実測によって油膜温度を推定する方法を説明するための模式図である。油膜温度θを推定するにあたっては、伝達油TFの温度を測定し、この温度を油膜温度θと推定することができる。すなわち、伝達油TFの温度を測定し、この温度を減速装置RGの回転要素間に介在する伝達油TFの温度と推定して、図11の滑り率マップ61に記述した滑り率SLPを変更する。
ここで、回転要素間に介在する伝達油TFの体積は微小であり、油膜温度θは局所的な熱の授受に影響される。このため、例えばオイルパン内における伝達油TFの温度と、回転要素間に介在する伝達油TFの温度、すなわち油膜温度θとは異なる場合が多い。油膜温度θを直接測定することは極めて難しいため、減速装置RGの回転要素間に介在する伝達油TFの近傍の温度を測定し、この温度を減速装置RGの回転要素間に介在する伝達油TFの温度と推定して、図11の滑り率マップ61に記述した滑り率SLPを変更することが好ましい。
例えば、本実施形態では、図12に示すように、最も発熱量の大きい電動機MGに直結するサンローラ10Sの温度を、例えば熱電対やサーミスタ等を用いた伝達油温度センサ47で計測する。そして、本実施形態に係る回転数推定装置30aは、サンローラ10Sの温度を油膜温度θであると推定して、図11に示す滑り率マップ61に記述された滑り率SLPを変更する。このように、減速装置RGの回転要素間に介在する伝達油TFにできるだけ近い部分の温度を油膜温度θとして推定することによって、油膜温度θに基づいて滑り率SLPを決定する際の精度をより向上させることができる。
また、電動機MGを保護するための制御に用いる、電動機MGの温度(ステータMG_Sの温度)を油膜温度θであると推定して、本実施形態に係る回転数推定装置30aが、図11に示す滑り率マップ61に記述された滑り率SLPを変更するようにしてもよい。電動機MGの温度は、例えば、電動機MGのステータMG_Sに設けられる電動機温度センサ48によって測定することができる。このようにすれば、伝達油温度センサ47を新たに設ける必要がないので、コスト低減を図ることができるとともに、伝達油温度センサ47を取り付けるスペースを確保する必要がなくなる。次に、減速装置RGが備える回転要素同士が接触する部分に発生する滑りによる損失(滑り損失)に基づいて油膜温度θを推定する手法を説明する。
図13は、滑り損失と、減速装置に対する入力との関係を示す説明図である。図14は、減速装置に対する入力が変動した場合における滑り損失の時間変化を示す概念図である。例えば、図1に示す車両1において、トラクションコントロールや駆動力配分制御を実行している場合は、電動機MGの出力や回転数の変動が大きくなる。
その結果、入力回転数Ninの変動も大きくなる。このような過渡状態においては、減速装置RGの回転要素同士が接触する部分の外部に対する熱の授受(電動機MGからの熱伝導や外部への放熱等)よりも、回転要素同士が接触する部分の滑りによる損失の発熱分が、油膜温度θに対して支配的となる。そして、減速装置RGの回転要素や電動機MGの昇温速度よりも高い速度で油膜温度θが上昇する。その結果、減速装置RGへの入力が大きく変化するような過渡状態(例えば、電動機MGの出力や回転数の変化が大きくなるような状態)においては、油膜温度θの推定精度が低下するため、油膜温度θに基づいて滑り率SLPを決定する際の精度が低下する。
このような場合、減速装置RGが備える回転要素同士が接触する接触部の滑り損失Plに基づいて、油膜温度θそのものを推定する。これによって、過渡状態における油膜温度θの推定精度を向上させることができるので、油膜温度θに基づいて滑り率SLPを決定する際の精度低下を抑制できる。
図13に示す滑り損失マップ62に示すように、減速装置RGへの入力、すなわち電動機MGの出力(電動機出力)Pmが増加すると、減速装置RGの回転要素間における動力の伝達効率は低下し、減速装置RGの回転要素同士が接触する部分の滑りによる損失(滑り損失)Plは増加する。この滑り損失Plが、油膜温度θを上昇させる。なお、図13の滑り損失Plは、減速装置RGが備える回転要素同士のすべての接触部における滑り損失である。
図13示す滑り損失マップ62に記述される滑り損失Plと電動機出力Pmとの関係は、例えば、2円筒試験機等を用いた実験により求めることができる。図13示す滑り損失マップ62においては、ある条件における滑り損失Plと電動機出力Pmとの関係を示しているが、電動機MGの回転数や平均油膜圧力等の運転条件を異ならせて、それぞれの運転条件に対応した滑り損失Plと電動機出力Pmとの関係を記述するようにしてもよい。なお、滑り損失マップ62は、ECU50の記憶部50mに格納される。
図13から、時刻t=t1における電動機出力をPm1、時刻t=t1から所定時間Δtが経過した後における電動機出力をPm2とすると、電動機出力の変化分(電動機出力変化分)ΔPmは、Pm2−Pm1で求めることができる。また、時刻t=t1における滑り損失Pl1は、時刻t=t1における電動機出力Pm1を図13に示す滑り損失マップ62へ与えることにより求めることができる。時刻t=t1からΔt経過した後における滑り損失Pl2は、時刻t=t1+Δtにおける電動機出力Pm2を、図13に示す滑り損失マップ62へ与えることにより求めることができる。
図14は、電動機出力Pmが変化した場合における滑り損失Plの時間変化を示している。時刻t=t1からt=t1+Δtまでに増加した滑り損失の増加分(滑り損失増加分)ΔPlは、図14の領域Aになる。これによって、トラクションコントロール等により、電動機出力変化分ΔPmが発生した場合における滑り損失増加分ΔPlを求めることができる。そして、電動機出力変化分ΔPmが発生したときに、減速装置RGの回転要素間に介在する伝達油TFに与えられるエネルギーは、滑り損失増加分ΔPlとなる。
電動機出力Pmの増加によって発生する滑り損失増加分ΔPlが、減速装置RGの回転要素間に介在する伝達油TFに与えられ、油膜温度θを増加させる。サンプリング周期、すなわち回転数推定装置の演算周期に相当する時間をΔtとし、1サンプリング周期Δtにおける電動機出力変化分ΔPmによって発生する滑り損失増加分ΔPlにより上昇する油膜温度上昇分Δθは、式(14)のようになる。
Δθ=(1/Coil)×(ΔPl×Δt)/(Voil×ρoil)・・(14)
ここで、Lは図7に示す、回転要素間に介在する伝達油TFの接触長さ、dは回転要素の回転軸方向長さ、hは回転要素間に介在する伝達油TFの平均厚さ、Voilは回転要素間に介在する伝達油TFの体積(m3)、ρoilは伝達油TFの密度(kg/m3)、Coilは伝達油TFの比熱(J/(kg・K))である。接触長さLは、例えば、ヘルツの接触応力の式を利用して求めることができる。また、平均油膜厚さhは、例えば、レイノルズの式を利用して求めてもよいし、定数として式(7)に与えてもよい。
滑り損失に基づいて油膜温度θを推定する場合、電動機出力Pmの変化によって発生する滑り損失増加分ΔPlを式(14)に与えて油膜温度上昇分Δθを求め、この油膜温度上昇分Δθを、t=t1における油膜温度θn−1に加算することによって、現時点(すなわちt=t1+Δt)における油膜温度θnを推定する。そして、このθnを、図11に示す滑り率マップ61による滑り率SLPの推定に用いる油膜温度θとする。これによって、電動機出力Pmが急激に変化した場合でも、これに起因して発生する滑り損失増加分ΔPlを考慮できるので、油膜温度θの推定精度が向上する。その結果、出力回転数Noutの推定精度がより向上する。
図15は、実施形態2に係る回転数推定装置の構成例を示す説明図である。本実施形態に係る回転数推定装置30aは、図8に示す回転数推定装置30に、回転数推定部34を追加した点が異なる。他の構成は、図8に示す回転数推定装置30と同様である。次に、実施形態2に係る回転数推定方法の手順を説明する。
図16は、実施形態2に係る回転数推定方法の手順を示すフローチャートである。本実施形態に係る回転数推定方法のステップS201、ステップS202は、実施形態1に係る回転数推定方法のステップS101、ステップS102と同様なので、説明を省略する。
ステップS203において回転数推定装置30aの滑りパラメータ演算部32は、ステップS202で得られた電動機トルクTMを式(13)に与え、トラクション係数μTを求める。また、滑りパラメータ演算部32は、ステップS202で得られた電動機トルクTMを式(9)に与え、せん断応力τを求める。このとき、油膜温度θ等の減速装置RGの動作条件を考慮する。
次に、ステップS204において、滑りパラメータ演算部32は、ステップS203で求めたトラクション係数μTを、図11に示す滑り率マップ61に与えて、対応する滑り率SLPを求める。このとき、上述した油膜温度θを求める手法を用いて油膜温度θを推定し、滑り率SLPを求める際に考慮する。また、滑りパラメータ演算部32は、ステップS203で求めたせん断応力τを図6に示す滑り速度マップ60に与えて対応する滑り速度Vslipを求め、この滑り速度Vslipを式(6)に与えて、停止判定パラメータN_0を求める。なお、滑り速度Vslipを求める際には油膜温度θを考慮する。
ステップS205において、回転数推定装置30aの停止判定部33は、ステップS204において得られた現時点における停止判定パラメータN_0と、ステップS202で求めた電動機回転数Nmとを比較する。ステップS205でYesと判定された場合、すなわち、停止判定部33が、Nm=N_0であると判定した場合、停止判定部33は、車輪Wは停止していると判定する。
ステップS205でNoと判定された場合、すなわち、停止判定部33が、Nm≠N_0であると判定した場合、停止判定部33は、車輪Wは回転していると判定する。そして、回転数推定装置30aの回転数推定部34は、ステップS204で求めた滑り率SLPを式(10)あるいは式(11)に与えて、出力回転数Noutを求める。これによって、電動機回転数Nmから、車輪Wの回転数を求めることができる。
以上、本実施形態では、トラクションドライブ方式による動力伝達装置において、回転要素間における滑り率に基づいて、入力回転数から出力回転数を推定する。このように、回転要素間における滑りを考慮して出力回転数を推定するので、入力回転数に基づいて出力回転数を推定する際の精度を向上させることができる。その結果、トラクションコントロールや駆動力配分制御の精度が向上する。
(実施形態3)
実施形態3は、車両の停止時において、動力発生手段である電動機により車両を進行させる方向のトルクを予め減速装置に与える発進待機状態にあるときに、減速装置が備える回転要素間に過度の滑りが発生することによって弾性流体潤滑(EHL:Elastohydrodynamic Lubrication)状態を維持できなくなることを回避するための保護機能を備える点に特徴がある。
図1に示す車両1が発進する際に後退したり、発進が遅れたりすることを回避するために、車両1が停止している場合には、車両1を進行させる方向のトルクを電動機MGによって予め減速装置RGに与えることがある。この状態を、発進待機状態という。図1に示す車両1は、電動機MGの出力を、いわゆるトラクションドライブを用いた減速装置RGを介して車輪Wへ伝達する。このため、車両1が停止した状態で電動機MGから減速装置RGにトルクを与えると、上述した式(1)、式(2)から分かるように、サンローラ10Sには接線方向速度Vsが、ピニオンローラ10Pには接線方向速度Vp発生する。すなわち、サンローラ10Sとピニオンローラ10Pとの間、及びピニオンローラ10Pとリングローラ10Rとの間には滑りが発生する。これによって、サンローラ10Sとピニオンローラ10Pとの間、及びピニオンローラ10Pとリングローラ10Rとの間に介在する伝達油の温度、すなわち油膜温度θが上昇する。
油膜温度θの上昇にともなって、サンローラ10Sとピニオンローラ10Pとの間等の滑りは増加し、ある限界を超えると、サンローラ10Sとピニオンローラ10Pとの間等に介在する伝達油TFは、油膜温度θの上昇により、弾性流体潤滑状態を維持できなくなる。これを回避するため、本実施形態では、実施形態1に係る回転数推定方法によって車輪Wが停止していると判定し、かつ電動機トルクTMが0でないと判定された場合には、油膜温度θの過度の上昇を抑制する制御を実行する。
図17は、実施形態3に係る回転数推定装置の構成を示す説明図である。本実施形態に係る回転数推定装置30bは、図8に示す回転数推定装置30に、動力伝達装置保護部35を追加した点が異なる。他の構成は、図8に示す回転数推定装置30と同様である。次に、実施形態3に係る車両停止時制御を説明する。
図18は、実施形態3に係る車両停止時制御の手順を示すフローチャートである。本実施形態に係る車両停止時制御を実行するにあたり、ステップS301において、回転数推定装置30bの制御情報取得部31、滑りパラメータ演算部32及び停止判定部33は、実施形態1で説明した回転数推定方法を実行し、図1に示す車両1の車輪Wが停止しているか否かを判定する。
ステップS301でNoと判定された場合、すなわち、停止判定部33が、車輪Wは回転していると判定した場合はSTARTに戻る。ステップS301でYesと判定された場合、すなわち、停止判定部33が、車輪Wは停止している(出力回転数Nout=0)と判定した場合、ステップS302へ進む。ステップS302において、停止判定部33は、電動機駆動電流検出回路46から電動機MGの駆動電流を取得し、電動機トルクTMが発生しているか否かを判定する。
ステップS302においてNoと判定された場合、すなわち、停止判定部33が、電動機トルクTM=0であると判定した場合は、サンローラ10Sとピニオンローラ10Pとの間等に滑りは発生していないため、STARTに戻る。ステップS302においてYesと判定された場合、すなわち、停止判定部33が、電動機トルクTM≠0であると判定した場合は、ステップS303に進む。このように、車輪Wが停止し、かつ電動機トルクTMが発生していることによって発進待機状態を判定するので、確実に発進待機状態を判定できる。
ステップS303において、回転数推定装置30bの動力伝達装置保護部35は、減速装置RGの油膜温度θを推定する。油膜温度θの推定は、実施形態2で説明した手法を用いる。ステップS304において、動力伝達装置保護部35は、油膜温度θに応じて、動力伝達装置である減速装置RGの保護を実行する。次に、本実施形態に係る減速装置RGの保護手法を説明する。
図19−1、図19−2は、減速装置の保護を実行する際に用いる制御マップの一例を示す概念図である。ここで説明する減速装置RGの保護手法は、油膜温度θに応じて、電動機トルクTMを減少させることにより、油膜温度θの過度な昇温を抑制するものである。図19−1に示す制御マップ63による制御は、油膜温度θが予め定めた制御実行温度θ_cを超えた場合に、電動機トルクTMをTM0からTM0'に低減する。すなわち、動力伝達装置保護部35が、θ>θ_cであると判定した場合には、動力伝達装置保護部35が電動機トルクTMをTM0'に変更する。これによって、減速装置RGの回転要素間に発生する滑りを低減して油膜温度θの昇温を抑制する。ここで、TM0は、車両1が停止しているときにおける待機トルクである。また、制御実行温度θ_cは、例えば、油膜温度θの上昇により、伝達油TFが弾性流体潤滑状態を維持できなくなる温度を基準として設定する。なお、制御マップ63は、図8に示すECU50の記憶部50mに格納される。
図19−2に示す制御マップ64による制御は、油膜温度θの上昇に応じて、電動機トルクTMを低減する。すなわち、動力伝達装置保護部35は、推定した油膜温度θが上昇するにしたがって、電動機トルクTMが小さくなるように制御する。これによって、減速装置RGの回転要素間に発生する滑りを低減して油膜温度θの昇温を抑制する。このように、推定した油膜温度θが上昇するにしたがって、電動機トルクTMが小さくなるように制御することにより、電動機トルクTMの変化を滑らかにできるので、運転者に与える違和感を抑制できる。なお、制御マップ64は、図8に示すECU50の記憶部50mに格納される。
油膜温度θは、実施形態2で説明した手法、すなわち、減速装置RGに供給される伝達油の温度や、油膜温度と相関の高い部分の温度を実測することにより油膜温度θを推定する手法や、減速装置RGの回転要素間の滑り損失から油膜温度θを推定する手法によって推定することができる。また、減速装置RGの滑り速度Vslipとせん断応力τとに基づいた油膜温度θのマップを作成し、これによって油膜温度θを推定してもよい。
図20は、油膜温度を推定するために用いる油膜温度マップの一例を示す概念図である。滑り速度Vslipは、減速装置RGに対する入力回転数Nin、すなわち電動機回転数Nmと相関があり、また、せん断応力τは、減速装置RGに対する入力トルク、すなわち電動機トルクTMと相関がある。油膜温度θを推定するためのマップは、図20に示す油膜温度マップ65のように、電動機回転数Nmと電動機トルクTMとの組み合わせに対応した油膜温度θがそれぞれ記述されている。このようにすれば、減速装置RGの回転要素間の滑り損失から油膜温度θを推定する手法と比較して、演算負荷を軽減できる。なお、油膜温度マップ65は、図8に示すECU50の記憶部50mに格納される。
油膜温度マップ65を用いる場合、動力伝達装置保護部35は、レゾルバQが検出する電動機MGの回転情報から電動機回転数Nmを求め、また、電動機駆動電流検出回路46が検出する電動機MGの駆動電流から電動機トルクTMを求める。そして、電動機回転数Nmと電動機トルクTMとを、図20に示す油膜温度マップ65に与えて、対応する油膜温度θを取得する。そして、動力伝達装置保護部35は、油膜温度マップ65から求めた油膜温度θに基づいて、図19−1、図19−2を用いて説明した減速装置の保護を実行する。
図21は、減速装置への伝達油の供給系を示す説明図である。減速装置RGへ伝達油を供給するため、伝達油供給手段としてポンプ70が設けられる。ポンプ70は、減速装置RGに供給され、オイルパン71へ回収された伝達油TFを、減速装置RGへ供給する。ポンプ70から吐出された伝達油TFは、伝達油供給量制御手段である流量調整弁72で流量を調整された後、減速装置RGの回転要素へ供給される。これによって、回転要素間の伝達油TFが不足しないようにするとともに、減速装置RGが備える回転要素を冷却する。流量調整弁72は、ECU50に備えられる回転数推定装置30bによって制御される。
上述した減速装置RGの保護手法では、油膜温度θに応じて、電動機トルクTMを減少させることにより、油膜温度θの過度な昇温を抑制した。ここで説明する減速装置RGの保護手法は、油膜温度θに基づいて、減速装置RGへ供給する伝達油TFの流量を変更するものである。例えば、油膜温度θが予め定めた制御実行温度θ_cを超えた場合には、動力伝達装置保護部35が、例えば、流量調整弁72の開度を大きくしたり、ポンプ70の吐出量を増加したりすることにより、減速装置RGへ供給する伝達油TFの流量をそれまでよりも増加させる。また、油膜温度θが上昇するにしたがって、減速装置RGへ供給する伝達油TFの流量を増加させる。これによって、減速装置RGの油膜温度θの上昇を抑制することができる。
この手法によれば、電動機トルクTMを低減する必要はないので、電動機トルクTMを低減することに起因する車両1の発進時における遅れや、車両1の坂道停止時における後退といった運転者に与える違和感を低減できる。また、車両1の停止時には、必要に応じて伝達油TFの流量を増加させるので、伝達油TFを供給するためのエネルギーを抑制できる。なお、減速装置RGへ供給する伝達油TFの流量を増加させても、油膜温度θの上昇が許容範囲を超える場合には、電動機トルクTMを低減するが、この場合でも、電動機トルクTMを低減するまでの時間をより長くすることができる。その結果、車両1の発進時における遅れや坂道停止時における後退といった違和感が発生するおそれをより低減できる。
なお、上記手法は、油膜温度θに基づいて減速装置RGへ供給する伝達油TFの流量を変更したが、車輪Wの停止、かつ電動機トルクTM≠0が成立した場合には、減速装置RGへ供給する伝達油TFの流量をそれまでより増加させてもよい。このようにすれば、油膜温度θによらず、伝達油TFの流量を増加させるので、より効果的に減速装置RGの油膜温度θの上昇を抑制できる。この場合、図18におけるステップS302でYesと判定された後に、動力伝達装置保護部35が減速装置RGへ供給する伝達油TFの流量をそれまでより増加させる。
本実施形態では、発進待機状態において、油膜温度θが過度に上昇することを回避するため、減速装置に対する入力トルクを抑制したり、発進待機状態においては、減速装置へ供給する伝達油の流量をそれまでよりも増加させたりする。これによって、発進待機状態において、油膜温度の過度な昇温を抑制することができるので、確実に弾性流体潤滑状態を維持して、電動機の発生する動力を車輪へ確実に伝達することができる。
また、本実施形態において、発進待機状態は、回転要素間における滑り速度から推定した入力回転数と、実際の入力回転数とに基づいて判定する。このように、回転要素間における滑りを考慮して車輪の回転が停止しているか否かを判定するので、発進待機状態を確実に判定できる。
以上のように、本発明に係る減速装置は、トラクションドライブ方式による動力伝達装置に有用であり、特に動力伝達装置の出力側が停止しているか否かを判定することに適している。
実施形態1に係る走行装置を備える車両の構成を示す概略図である。 実施形態1に係る車両の駆動系支持構造の構成例を示す説明図である。 実施形態1に係る減速装置の構造を示す模式図である。 実施形態1に係る減速装置が備える回転要素間の拡大図である。 実施形態1に係る減速装置のスケルトン図である。 実施形態1に係る減速装置のスケルトン図である。 実施形態1に係る回転数推定方法を説明するための模式図である。 回転要素同士の接触部におけるせん断応力と接線方向滑り速度との関係を記述した滑り速度マップの概念図である。 減速装置の回転要素同士が接触する部分における伝達油の油膜形状を示す概念図である。 実施形態1に係る動力伝達装置の回転数推定装置の構成例を示す説明図である。 実施形態1に係る回転数推定方法の手順を示すフローチャートである。 実施形態2に係る回転数推定方法を説明するための模式図である。 実施形態2に係る減速装置が備える回転要素の拡大図である 回転要素間のトラクション係数と滑り率との関係を記述したマップの概念図である。 実測によって油膜温度を推定する方法を説明するための模式図である。 滑り損失と、減速装置に対する入力との関係を示す説明図である。 減速装置に対する入力が変動した場合における滑り損失の時間変化を示す概念図である。 実施形態2に係る回転数推定装置の構成例を示す説明図である。 実施形態2に係る回転数推定方法の手順を示すフローチャートである。 実施形態3に係る回転数推定装置の構成を示す説明図である。 実施形態3に係る車両停止時制御の手順を示すフローチャートである。 減速装置の保護を実行する際に用いる制御マップの一例を示す概念図である。 減速装置の保護を実行する際に用いる制御マップの一例を示す概念図である。 油膜温度を推定するために用いる油膜温度マップの一例を示す概念図である。 減速装置への伝達油の供給系を示す説明図である。
符号の説明
1 車両
8 電動機用ECU
10C キャリア
10P ピニオンローラ
10S サンローラ
10R リングローラ
30、30a、30b 動力伝達装置の回転数推定装置(回転数推定装置)
31 制御情報取得部
32 滑りパラメータ演算部
33 停止判定部
34 回転数推定部
35 動力伝達装置保護部
46 電動機駆動電流検出回路
47 伝達油温度センサ
48 電動機温度センサ
50 ECU
50m 記憶部
50p CPU
60 滑り速度マップ
61 滑り率マップ
62 滑り損失マップ
63、64 制御マップ
65 油膜温度マップ
70 ポンプ
72 流量調整弁
100 走行装置
BR 制動装置
MG 電動機
Q レゾルバ
RG 減速装置

Claims (10)

  1. 回転要素間に介在させた流体によって、動力発生手段が発生する動力を伝達する動力伝達装置の出力回転数を判定するものであり、
    前記動力伝達装置が備える回転要素間の滑り速度に基づいて前記動力伝達装置の入力回転数を求める滑りパラメータ演算部と、
    前記動力伝達装置へ入力される実際の回転数と、前記滑りパラメータ演算部が求めた前記入力回転数とに基づいて、前記動力伝達装置の出力回転数が0であるか否かを判定する停止判定部と、
    を含むことを特徴とする動力伝達装置の回転数推定装置。
  2. 前記滑りパラメータ演算部は、
    前記動力発生手段の発生するトルクに基づいて、前記動力伝達装置が備える回転要素間に介在する流体のせん断応力を求め、このせん断応力に基づいて前記滑り速度を求めることを特徴とする請求項1に記載の動力伝達装置の回転数推定装置。
  3. 前記滑りパラメータ演算部は、前記動力伝達装置が備える回転要素間の滑り率を求め、
    前記動力伝達装置に対する入力回転数と、前記滑りパラメータ演算部が求めた滑り率とに基づいて、前記動力伝達装置の出力回転数を推定する回転数推定部を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の動力伝達装置の回転数推定装置。
  4. 前記動力伝達装置及び前記動力発生手段を搭載する車両の停止時に前記動力発生手段が前記動力伝達装置へトルクを付与している発進待機状態であるか否かを前記停止判定部が判定し、
    前記発進待機状態である場合には、前記動力伝達装置が備える回転要素間に介在する流体の過度の昇温を抑制する動力伝達装置保護部を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の動力伝達装置の回転数推定装置。
  5. 前記停止判定部は、前記動力伝達装置の出力回転数が0であり、かつ前記動力発生手段がトルクを発生している場合に、前記発進待機状態であると判定することを特徴とする請求項4に記載の動力伝達装置の回転数推定装置。
  6. 前記動力伝達装置保護部は、
    前記動力伝達装置が備える回転要素間に介在する流体の温度が予め定めた所定の温度を超えた場合には、前記動力発生手段の発生するトルクをそれまでよりも低減することを特徴とする請求項4又は5に記載の動力伝達装置の回転数推定装置。
  7. 前記動力伝達装置保護部は、
    前記動力伝達装置が備える回転要素間に介在する流体の温度が上昇するにしたがって、前記動力発生手段の発生するトルクを低減することを特徴とする請求項4又は5に記載の動力伝達装置の回転数推定装置。
  8. 前記動力伝達装置保護部は、
    前記停止判定部が前記発進待機状態であると判定した場合には、前記動力伝達装置へ供給する流体の流量を、それまでよりも増加させることを特徴とする請求項4又は5に記載の動力伝達装置の回転数推定装置。
  9. 前記動力伝達装置へ供給する流体の流量は、前記動力伝達装置が備える回転要素間に介在する流体の温度に基づいて増加させることを特徴とする請求項8に記載の動力伝達装置の回転数推定装置。
  10. 前記動力伝達装置保護部は、
    前記動力伝達装置が備える回転要素間に介在する流体の温度を、前記動力発生手段の回転数と、前記動力発生手段のトルクとから推定することを特徴とする請求項4〜9のいずれか1項に記載の動力伝達装置の回転数推定装置。
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