JP2008196032A - 蒸着材料蒸発装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】蒸着材料蒸発装置による複数の蒸着材料からなる化合物の層の成膜において、均一な成分比を有する蒸着膜を形成する。
【解決手段】蒸着材料を加熱して蒸発させる蒸着材料蒸発装置において、異なる蒸着材料14、15をそれぞれ収容する複数の蒸着容器11a、11bと、これらの蒸着容器11a、11bに収容された蒸着材料14、15を加熱する加熱手段16と、この複数の蒸着容器11a、11b内で蒸発した蒸着材料14、15が共に通過して出て行く共通開口13とを備える。
【選択図】図1

Description

本発明は、真空状態の蒸着槽内において成膜材料を加熱蒸発させて基板等の被蒸着材に蒸着させるための蒸着材料を加熱蒸発させる蒸着材料蒸発装置に関するものである。
真空蒸着によって基板等に成膜材料を蒸着する装置は種々の分野で使用されているが、近年、医療用放射線撮影にX線等の放射線に感応する光導電体を用いた放射線画像検出器が用いられるようになり、この検出器の製造にも真空蒸着装置が使われるようになった。
この放射線画像検出器は、被験者の受ける放射線被爆量の減少と診断性能の向上のために、セレン等の放射線に感応する光導電体を感光体として用い、照射された放射線量に応じた量の電荷を蓄積し、その電荷を電気的に読み出すものである。この種の放射線画像検出器は以前から特許出願され広く知られているが、例えば、特許文献1では、放射線を透過する第1の電極層、放射線の照射を受けることにより電荷を発生する記録用光導電層、潜像電荷に対しては絶縁体として作用し、かつ潜像電荷と逆極性の輸送電荷に対しては導電体として作用する電荷輸送層、読取光の照射を受けることにより電荷を発生する読取用光導電層、および読取光を透過する線状に延びる透明線状電極と読取光を遮光する線状に延びる遮光線状電極とが平行に交互に配列された第2の電極層をこの順に積層してなる放射線画像検出器が提案されている。
このような放射線画像検出器において、たとえば非特許文献1に示されているように、放射線画像検出器の光導電層Seに0.35%のAsをドープ゜させることが、アモルファス状態の安定化に有効であることが知られている。また、特許文献2においては、読取用光導電層と第2の電極層との間に、SeにAsを0.5〜40atom%ドープした薄層を設けることにより、読取用光導電層の界面結晶化を抑制する効果があることが知られている。
この種の放射線検出器では、診断に使用される医用画像の診断性能を向上させるため、均一性は極めて重要な特性であり、上述のような2以上の種類の蒸着材料からなる化合物の蒸着膜を形成する場合、この蒸着膜面の各部分でそれらの複数の蒸着材料の成分比が均一であることが望ましい。
このような2以上の蒸着材料を用いて成分比均一で成膜するためには、たとえばSeにAsをドープ゜させる場合、一つの蒸発容器に収容されたSeとAsの混合物を蒸発させる方法が考えられるが、この場合成分元素毎に蒸気圧が異なるために分留が生じ、蒸着の進行とともに蒸着膜の成分比にズレが生じてしまう。これに対して、特許文献3では、異なる蒸着材料をそれぞれ収容する複数の蒸着容器を一定の距離を置いて配置し、各蒸着容器内の蒸着材料を基板に蒸着させ、複数の蒸着材料からなる化合物の蒸着膜を成膜する方法が提案されている。
特開2000−284056号公報 特開2002−329848号公報 特開昭61−273829号公報 Journal of Non-Crystalline Solids 266‐269 (2000) 1163‐1167
しかしながら、異なる蒸着材料をそれぞれ収容する複数の蒸着容器を一定の距離を置いて配置し、各蒸着容器内の蒸着材料を基板に蒸着させ、複数の蒸着材料からなる化合物の蒸着膜を成膜する上記従来技術では、それぞれの蒸着容器から蒸着基板上の各点までの距離が均等ではないので、蒸着膜面の各部分で形成された蒸着膜における複数の蒸着材料の成分比が均一ではないという問題がある。
本発明は、上記事情に鑑み、複数の蒸着材料からなる化合物の均一な成分比を有する蒸着膜を形成することができる蒸着材料蒸発装置を提供することを目的とするものである。
本発明の蒸着材料蒸発装置は、異なる蒸着材料をそれぞれ収容する複数の蒸着容器と、これらの蒸着容器に収容された蒸着材料を加熱する加熱手段と、この複数の蒸着容器内で蒸発した蒸着材料が共に通過して出て行く共通開口とを備えたことを特徴とするものである。
本発明の蒸着材料蒸発装置は、異なる蒸着材料をそれぞれ収容する複数の蒸着容器と、これらの蒸着容器に収容された蒸着材料を加熱する加熱手段とを備え、この複数の蒸着容器がそれらの開口を隣接させて配置されていることを特徴とするものである。
なお、隣接とは、完全に接触している場合に限らず、両者間に僅かの間隙が存在していても実質的に接触しているとみなせるものも含む意味である。
間隙が例えば、10mm以下の場合はここでいう隣接に含まれる。
上記装置においては、加熱手段が、蒸着容器毎に独立して加熱制御可能なものであることが望ましい。
本発明の蒸着材料蒸発装置によれば、異なる蒸着材料をそれぞれ収容する複数の蒸着容器と、これらの蒸着容器に収容された蒸着材料を加熱する加熱手段と、この複数の蒸着容器内で蒸発した蒸着材料が共に通過して出て行く共通開口とを備えているため、複数の蒸着容器内でそれぞれ蒸発した異なる蒸着材料は共通開口を共に通過して出て行くようになり、複数の蒸着材料が共に通過して出て行く共通開口から蒸着基板上の各点までの距離は収容されていた蒸着容器に関係なく各蒸着材料において同一であるため、複数の蒸着材料からなる化合物の均一な成分比を有する蒸着膜を形成することができる。
本発明の蒸着材料蒸発装置によれば、異なる蒸着材料をそれぞれ収容する複数の蒸着容器と、これらの蒸着容器に収容された蒸着材料を加熱する加熱手段とを備え、この複数の蒸着容器がそれらの開口を隣接させて配置しているため、各蒸着容器の開口から蒸着基板上の各点までの距離が略同等になり、複数の蒸着材料からなる化合物の蒸着膜の成分比の均一性を向上させることができる。
なお、上記蒸着材料蒸発装置において、加熱手段が、異なる蒸着材料をそれぞれ収容する蒸着容器毎に独立して加熱制御可能なものである場合、加熱蒸発させる各蒸着材料の蒸発量をそれぞれ個別に制御することが可能となるため、複数の蒸着材料からなる化合物の蒸着膜の成分比を容易に制御することができる。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1は、蒸着材料を加熱蒸発させ基板に蒸着させることにより基板に膜を形成する真空蒸着装置1の概略構成を示す模式図である。
真空蒸着装置1は、処理室2と、処理室2の内部の上面に設けられて基板3を保持する基板ホルダ4と、蒸着材料を加熱して蒸発させる本発明の第1の実施形態の蒸着材料蒸発装置10とを備えている。
本実施形態の蒸着材料蒸発装置10は、異なる2つの蒸着材料14、15を収容する蒸着容器11a、11bと、蒸着容器11a、11bを加熱する加熱手段16とを備えている。加熱手段16は、蒸着容器11a、11bを加熱することにより蒸着材料14、15を加熱溶融させ蒸発させる手段であり、蒸着容器11a、11bのそれぞれの外周に配置されたヒーター17a、17bと、各ヒーター17a、17bにリード線を介して接続される電源を内包し、各ヒーター17a、17bの温度を制御する温度制御部18とを備えている。なお、図中では蒸着材料14、15が溶融された状態を示している。また、蒸着容器およびヒーター等の支持部材の図示は省略している。
加熱手段16のヒーター17a、17bはいずれもシースヒーターにより構成され、各蒸着容器11a、11bの外周を取り巻くように配置されている。そして、温度制御部18では、各ヒーター17a、17bの温度を制御することにより、蒸着容器11a、11bをそれぞれ独立して加熱制御することが可能である。また、ヒーターからの輻射熱が基板3に到達しないように、輻射熱の遮蔽板をヒーターの周囲に設けるのが好ましい。
図2は蒸着容器11a、11bの詳細を示す図であり、図2(A)は斜視図、図2(B)は上面図、図2(C)は同図(B)のIIC−IIC断面図である。蒸着容器11a、11bは、蒸着容器11a、11b内で蒸発した蒸着材料14、15が共に通過して出て行く共通開口13を備えている。
蒸着容器11a、11bは、異なる2つの蒸着材料14、15をそれぞれ収容する2つの容器、つまり、ドーナッツ状の蒸着容器11aが、その内周壁を円筒形の蒸着容器11bの外周壁に該外周壁の容器深さ方向に上部から所定の範囲にかけて接触させて設けられている。蒸着容器11bは円形の開口12bを有し、蒸着容器11aはドーナッツ状の開口12aを有する。蒸着容器11aの蒸着容器11bの外周壁は内周壁より高く設けられており、これにより、外周壁の上部の縁部分で形成される円形の開口が、蒸着容器11a、11b内で蒸発した蒸着材料14a、14bが共に通過して出て行く開口、すなわち共通開口13となる。
上記の構成により、蒸着の際には、蒸着材料14、15を収容した蒸着容器11a、11bを処理室2内に設置し、処理室2内を真空にした状態で、ヒーター17a、17bにより各蒸着容器11a、11bが加熱され、これに伴い蒸着容器11a、11b内部の蒸着材料14、15が加熱溶融され、蒸発する。蒸発した蒸着材料14、15は、基板3に達し、膜が形成される。なお、実際には蒸着容器11a、11bと基板3の間に不図示のシャッターが設けられており、蒸着材料の加熱時初期はこのシャッターは閉じられており、加熱が進み、定常状態になったときにシャッターを開放して蒸着を行う。
蒸着容器11a、11b内で蒸発した蒸着材料14、15が共に通過して出て行く共通開口13を備えたこの実施形態では、共通開口13から蒸着基板上の各点までの距離は各蒸着材料14、15において同一であるため、蒸着材料14、15からなる化合物の均一な成分比を有する蒸着膜を形成することができる。
また、異なる蒸着材料をそれぞれ収容する蒸着容器毎に独立して加熱制御可能である上記加熱手段16により、加熱蒸発させる各蒸着材料14、15の蒸発量をそれぞれ個別に制御することが可能であり、蒸着材料14、15からなる化合物の蒸着膜の成分比を容易に制御することができる。
さて、上記実施の形態では、図2に示すような共通開口13を2つの蒸着容器11a、11bの開口12a、12bとは別に設けたものについて説明したが、共通開口は、複数の蒸着容器内で蒸発した蒸着材料が共に通過して出て行く開口であればよく、図3に示す変形例のような共通開口であってもよい。図3に示す蒸着容器は図2の蒸着容器と同様に円筒形の蒸着容器21bの外周壁の容器深さ方向に上部から所定の範囲にかけて該外周壁に内周壁に接するように設けられたドーナッツ状の蒸着容器21aにおいて、外周壁が上部に行くほどその壁の水平方向の直径が徐々に小さくなるように設けられており、最上部では蒸着容器21bの開口22bと略同等の大きさの開口23が開口21bの直上に形成されており、この開口23が、蒸着容器21a、21b内で蒸発した蒸着材料24、25がそれぞれの開口22a、22bを通った後共に通過して出て行く開口、すなわち共通開口23となっている。
上記実施の形態では、共通開口を有する複数の異なる蒸着材料を収容する複数の蒸着容器をそれぞれ別個に作成し、それらを組み合わせてなるものについて説明したが、図4に示す変形例のように、複数の異なる蒸着材料を収容する複数の蒸着容器はそれらを一体的に作成したものであってもよい。
なお、共通開口を有する第1の実施形態においては、共通開口の数、形状、大きさは特に限定されるものではなく、また、蒸着容器の外形状も円筒形に限るものではない。
図5は本発明の第2の実施形態の蒸着材料蒸発装置を備えた蒸着装置31の概略構成を示す模式図である。蒸着装置31は、処理室2と、処理室2の内部の上面に設けられて基板3を保持する基板ホルダ4と、蒸着材料を加熱して蒸発させる本発明の第2の実施形態の蒸着材料蒸発装置40とを備えている。
本実施形態の蒸着材料蒸発装置40は、異なる2つの蒸着材料44、45をそれぞれ収容する蒸着容器41a、41bと、蒸着容器41a、41bを加熱する加熱手段46とを備えている。加熱手段46は、蒸着容器41a、41bを加熱することにより蒸着材料44、45を加熱溶融させ蒸発させる手段であり、蒸着容器41a、41bの外周に配置されたヒーター47と、そのヒーター47にリード線を介して接続される電源を内包し、ヒーター47の温度を制御する温度制御部48とを備えている。なお、図中では蒸着材料44、45が溶融された状態を示している。また、蒸着容器およびヒーター等の支持部材の図示は省略している。
加熱手段46のヒーター47はシースヒーターにより構成され、蒸着容器41a、41bの外周に配置されており、蒸着容器41a容器の側面と底面および蒸着容器41bの底面に近接している。そして、温度制御部48では、ヒーター47の温度を制御することにより、蒸着容器41a、41bに収容された蒸着材料44、45を加熱制御することが可能である。また、ヒーターからの輻射熱が基板3に到達しないように、輻射熱の遮蔽板をヒーターの周囲に設けるのが好ましい。
図6は、蒸着容器41a、41bの詳細を示すものであり、図6(A)は斜視図、図6(B)は上面図、図6(C)は同図(B)のVIC−VIC断面図である。蒸着容器41a、41bは、蒸着材料44、45をそれぞれ収容する容器であって、矩形の蒸着容器41aの真中に矩形の蒸着容器41bを位置させて一体的に形成されており、各蒸着容器41a、41b内で蒸発した蒸着材料44、45がそれぞれ通過して出て行く開口42a、42bが隣接させて配置されている。
矩形の蒸着容器41aの真中に矩形の蒸着容器41bが配置されていることから、蒸着容器41aは蒸着容器41bを挟む2つの部分に区分されており、これらの2つの部分には同一の蒸着材料44が収容される。また、蒸着容器41aの2つの部分の開口42a、42aは蒸着容器41bの開口42bを挟んで、それらの開口42a、42b、42aは互いに隣接して位置している。
上記の構成により、蒸着の際には、蒸着材料44、45を収容した蒸着容器41a、41bを処理室2内に設置し、処理室2内を真空にした状態で、ヒーター47により蒸着容器41a、41bが加熱され、これに伴い蒸着容器41a、41b内部の蒸着材料44、45が加熱溶融され、蒸発する。蒸発した蒸着材料44、45は、基板3に達し、膜が形成される。なお、実際には蒸着容器41a、41bと基板3の間に不図示のシャッターが設けられており、加熱時初期はこのシャッターは閉じられており、加熱が進み、定常状態になったときにシャッターを開放して蒸着を行う。
異なる蒸着材料を収容する蒸着容器同士が互いに隣接した開口を有するこの実施形態では、隣接する蒸着容器41aと蒸着容器41bの開口42a、42bから蒸着基板上の各点までの距離が略同等になり、蒸着材料44、45からなる化合物の成分比の均一性が高い蒸着膜を形成することができる。
また、温度制御部48によりヒーター47の温度を制御することにより、蒸着容器41a、41bに収容された蒸着材料44、45を加熱制御することが可能であり、同一温調で蒸着材料44、45を加熱蒸発させて蒸着を行う場合、たとえば蒸着容器41a、41bの平面視における大きさを調節する等の方法により、各蒸着材料44、45を収容する蒸着容器41a、41bにおける材料蒸発面の面積を調節し、加熱蒸発させる各蒸着材料44、45の蒸発量を制御し、蒸着材料44、45からなる化合物の蒸着膜の成分比を制御することができる。
さて、上記実施の形態では、図6に示すような各蒸着容器41a、41b内で蒸発した蒸着材料44、45がそれぞれ通過して出て行く、略同等の高さに存在する開口42a、42b、42aを互いに隣接して設けたものについて説明したが、これらの開口は平面視において互いに隣接するものであればよく、図7に示す変形例のように、平面視において隣接する各開口が異なる高さに存在するものであってもよい。
なお、異なる材料を収容する蒸着容器の開口はそれらが完全に接触している場合に限らず、実質的に接触しているとみなせる範囲内で各開口間に僅かの間隙が存在するものであってもよい。
次に、図8および図9を参考に、蒸着装置の処理室の内部に配置された複数の本発明の蒸着材料蒸発装置を同時に用いて蒸着を行う実施形態について説明する。一般的に大面積基板に蒸着を行う場合は、蒸発源から放射状に偏って現れる膜厚分布の影響が大きくなり、小面積基板に蒸着する場合より膜の均一性が損なわれやすいので、図8および図9の蒸着装置内における基板と蒸着材料蒸発装置の配置を示す上面図に示すように複数個の本発明の蒸着材料蒸発装置を配置し、同時に複数の蒸着材料蒸発装置を用いて蒸着を行うことにより大面積の基板に対して、複数の蒸着材料からなる化合物の均一な真空蒸着膜を成膜することができる。
図8に示す実施形態は、回転軸119を中心とした同一円周上に12個の本発明の蒸着材料蒸発装置110が互いに一定の間隔をおいて配設された回転テーブル109を、その回転テーブル109上に設けられた12個の蒸着材料蒸発装置110のうち4個の蒸着材料蒸発装置が、基板103の四隅近傍の4か所の蒸発源の配置位置Paに配置されるように、基板103に対向するように配置したものである。
また、図9に示す実施形態は、回転軸219を中心とした同一円周上に5個の蒸着材料蒸発装置210がお互いに一定の間隔をおいて配設された回転テーブル209を、その回転テーブル209上に設けられた5個の蒸着材料蒸発装置210のうち1個の蒸着材料蒸発装置210が蒸発源の配置位置Pbの4か所のうちどれかに配置されるように、基板203に対向する同一面内の4か所に配置したものである。
図8および図9に示す各実施形態において、蒸発源の配置位置Pa、Pbは、数値計算等の方法により求めた各基板に対して最も均一な蒸着膜が得られる蒸発源の配置位置であり、基板の大きさ、形、蒸着材料蒸発装置から基板までの距離等の条件によって蒸着材料蒸発装置の最適な配置位置の数と位置は異なるが、本実施形態に示す正方形に近い矩形の基板103、203に対して数値計算により求められた蒸発源の配置位置Pa、Pbは、図8および図9に示すように基板に対向する同一面内の、基板の四隅近傍の4か所である。
また、蒸着の際には、上記各回転テーブル109、209を図外の回転駆動手段により回転軸119、219を中心に回転させ、各回転テーブル109、 上に配置された蒸着材料蒸発装置110、210のうち蒸発源として用いられる蒸着材料蒸発装置を配置位置Pa、Pbへ順次移動させることが可能であり、蒸着槽の真空状態を保持したまま、所望の蒸着処理に応じて、各回転テーブル109、209上に配置された複数の蒸着材料蒸発装置110、210内の成膜材料全てについて連続成膜処理をすることが可能である。
次に、本発明の蒸着材料蒸発装置を備えた蒸着装置を放射線画像検出器に用いる実施の形態について説明する。放射線画像検出器は、X線撮影装置等に使用されるものであり、放射線の照射を受けることにより導電性を呈する光導電層を含む静電記録部を備えてなり、画像情報を担持する放射線の照射を受けて画像情報を記録し、記録した画像情報を表す画像信号を出力するものである。放射線画像検出器としては、光の照射により電荷を発生する半導体材料を利用して読み取る、いわゆる光読取方式の放射線画像検出器と、放射線の照射により発生した電荷を蓄積し、その蓄積した電荷を薄膜トランジスタ(TFT:thin film transistor)などの電気的スイッチを1画素ずつオン・オフすることにより読み取る方式(以下、TFT方式という)の放射線画像検出器等がある。
まず、光読取方式の放射線画像検出器について詳細に説明する。図10Aは光読取方式の放射線画像検出器300の概略構成を示す斜視図であり、図10Bは放射線画像検出器300のXZ断面図、図10Cは放射線画像検出器300のXY断面図である。放射線画像検出器300は、被写体を透過したX線などの放射線画像を担持する記録光に対して透過性を有する第1の電極層301、第1の電極層301を透過した記録光の照射を受けることにより電荷対を発生し導電性を呈する記録用光導電層304、読取光の照射を受けることにより電荷対を発生して導電性を呈する読取用光導電層306、第1の透明線状電極309aと第2の透明線状電極309bと遮光膜309cと絶縁層309dとからなる第2の電極層309、および読取光に対して透過性を有する基板310をこの順に配してなるものである。
また、高電圧印加時の透明線状電極309aと309bからの正孔注入を抑制する正孔注入阻止層308と、第1の電極層301からの電子注入を抑制する電子注入阻止層302とを有している。
さらに、電子注入阻止層302と記録用光導電層304との間に記録用光導電層の結晶化を抑制する結晶化防止層303と、正孔注入阻止層308と読取用光導電層306との間に読取用光導電層306の結晶化を抑制する結晶化防止層307とを有している。
そして、記録用光導電層304と読取用光導電層306との界面に、記録用光導電層304内で発生した放射線画像を担持する潜像極性電荷を蓄積する2次元状に分布した蓄電部305が形成される。
この放射線画像検出器300の大きさ(面積)は、例えば20cm×20cm以上、特に胸部X線撮影用の場合には有効サイズ43cm×43cm程度とする。
正孔注入阻止層308としては、代表的なものはCeO、ZnS等がある。これらは、単層のみならず多層に積層するのが正孔阻止能力の強化するためには(暗電流を低減するためには)さらに好ましい。また、正孔注入阻止層308の厚さとしては、20nm以上100nm以下であることが望ましい。
電子注入阻止層302は、SbSや有機物系の化合物等がある。電子注入阻止層302も単層のみならず多層に積層してもよい。
結晶化防止層303,307としては、結晶化温度の高いSe−As、Se−Ge、Se−Sb系化合物など2元系あるいはSe−Ge−Sb、Se−Ge−As、Se−Sb−Asなどの3元系を用いるのが最適である。
基板310としては、読取光に対して透明な基板などを用いることができる。
記録用光導電層304の物質としては、a-Se(アモルファスセレン)を主成分とする光導電性物質が適当である。
読取用光導電層306の物質としては、例えば第1の電極層301に帯電される負電荷の移動度と、その逆極性となる正電荷の移動度の差が大きいClを10〜200ppmドープしたa−Seや、Se−Ge,Se−Sb,Se−AsなどのSeを主成分とする光導電性物質が好適である。
記録用光導電層304の厚さは、記録用の電磁波を十分に吸収できるようにするには、50μm以上1000μm以下であるのが好ましい。また、読取用光導電層306の厚さは記録用光導電層304の厚さの1/2以下であることが望ましく、また薄ければ薄いほど読取時の応答性が向上するので、例えば1/10以下、さらには1/100以下などにするのが好ましい。
なお、上記各層の材料は、第1の電極層301に負電荷を、第2の電極層309の透明線状電極309a,309bに正電荷を帯電させて、記録用光導電層304と読取用光導電層306との界面に形成される蓄電部305に潜像極性電荷としての負電荷を蓄積せしめるとともに、読取用光導電層306を、潜像極性電荷としての負電荷の移動度よりも、その逆極性となる輸送極性電荷としての正電荷の移動度の方が大きい、いわゆる正孔輸送層として機能させるものとして好適なものの一例であるが、これらは、それぞれが逆極性の電荷であっても良く、このように極性を逆転させる際には、正孔の輸送層として機能する読取用光導電層を電子輸送層として機能する読取用光導電層に変更するなどの若干の変更を行なうだけでよい。また、読取用光導電層306をa−Seを主成分とする層とし、蓄電部305としてAsSe、GeSe、GeSe、SbSe層を設けるようにしてもよい。
第1の電極層301および第1の透明線状電極309aとしては、それぞれ記録光あるいは読取光に対して透過性を有するものであればよく、例えば可視光に対して透過性を持たせる場合には、光透過性金属薄膜として周知のSnO、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide )あるいはエッチングのし易いアモルファス状光透過性酸化金属であるIDIXO(Indium X-metal Oxide ;出光興産(株))などの酸化金属を50〜200nm厚程度、好ましくは100nm以上にして用いることができる。また、記録光としてX線を使用し、第1の電極層301側から該X線を照射して放射線画像を記録する場合には、第1の電極層301としては可視光に対する透過性が不要であるから、該第1の電極層301は、例えば100nm厚のAlやAuなどの純金属を用いて形成するようにしてもよい。
第2の電極層309の第1の透明線状電極309aは、画素ピッチでストライプ状に配列されたものであり、画素ピッチとしては、医療用X線撮影において高い鮮鋭度を維持しつつ高S/Nを可能ならしめるために、50〜250μm程度にする。またこの画素ピッチの範囲内で、第1の透明線状電極309aの幅を10〜200μm程度とする。ここで、第2の電極層309の電極をストイプ電極とする目的は、ストラクチャノイズの補正を簡便にしたり、容量を低減することにより画像のS/Nを向上させたり、並列読取り(主に主走査方向)を行なって読出時間の短縮を図るなどである。
また、第2の電極層309内には、記録用光導電層304と読取用光導電層306との界面に形成される蓄電部305に蓄積された潜像極性電荷の量に応じたレベルの電気信号を出力させるための導電部材である第2の透明線状電極309bが設けられている。この第2の透明線状電極309bは、ストライプ状に配列されたものであって、第2の透明線状電極309bと第1の透明線状電極309aとが交互に平行に配置されるように配列されている。
各第2の透明線状電極309bとしては、上述の光透過性金属薄膜を用いることが好ましい。この場合は、1回のリソグラフィー工程で、第1の透明線状電極309aと第2の透明線状電極309bのパターニングを同時に形成できる。この場合は、基板310上の各第2の透明線状電極309bに対応する部分に、読取光の第2の透明線状電極309bへの照射強度が読取光の第1の透明線状電極309aへの照射強度よりも小さくなるように光透過性の劣る部材からなる遮光膜309cを設け、読取光に対する透過率Pcを10%以下にする、すなわち遮光性を持たせることができ、第2の透明線状電極309bに対応する読取用光導電層306内では、信号取出しのための電荷対を発生させないようにすることができる。
そして、上記第1の透明線状電極309aおよび第2の透明線状電極309bは、その上に100nm以下の薄膜の正孔注入阻止層308が形成される。また、各第1の透明線状電極309aと各第2の透明線状電極309bとは電気的に絶縁されるように所定の距離が保たれている。
なお、放射線画像検出器300においては、第2の透明線状電極309bの幅Wcを第1の透明線状電極309aの幅Wbよりも広くすると共に、第1の透明線状電極309aの読取光に対する透過率Prb、第2の透明線状電極309bの読取光に対する透過率Prcが、条件式(Wb×Prb)/(Wc×Prc)≧5を満足するように設定することが望ましい。この場合、第2の透明線状電極309bの幅Wcを第1の透明線状電極309aの幅Wbよりも広くしたことに合わせて、静電潜像の記録時には、第1の透明線状電極309aと第2の透明線状電極309bとを接続し、第2の透明線状電極309bを電界分布の形成に積極的に利用するようにする。
このように第1の透明線状電極309aと第2の透明線状電極309bとを接続して記録を行うと、潜像極性電荷は、第1の透明線状電極309aに対応する位置だけでなく、第2の透明え線状電極309bに対応する位置にも蓄積され、読取時に第1の透明線状電極309aを通して読取用光導電層306に読取光が照射されると、第1の透明線状電極309aを挟む2本の第2の透明線状電極309bの上空部分の潜像極性電荷が2本の第2の透明線状電極309bを介して順次読み出される。したがって、この場合、第1の透明線状電極309aに対応する位置が画素中心となり、この第1の透明線状電極309aを挟む両側の第2の透明線状電極309bの各半分までが、第1の透明線状電極309a、第2の透明線状電極309bの並び方向の1画素となる。また、第1の透明線状電極309aおよび第2の透明線状電極309bよりも良導電性の導電部材をバスラインとして、各第1の透明線状電極309a毎および第2の透明線状電極309b毎に、その長さ方向に延設することが望ましい。
遮光膜309cの部材としては、必ずしも絶縁性を有しているものでなくてもよく、遮光膜309cの比抵抗が2×10−6Ω・cm以上(さらに好ましくは1×1015Ω・cm以下)のものを使用することができる。例えば金属材料であればAl、Mo、Crなどを用いることができ、無機材料であればMoS、WSi、TiNなどを用いることができる。なお、遮光膜309cの比抵抗が1Ω・cm以上のものを使用するとより好ましい。
また、遮光膜309cの部材として金属材料など導電性の部材を使用したときには、遮光膜309cと第2の透明線状電極309bとの直接接触を避けるため両者の間に絶縁物を配する。本実施形態の放射線画像検出器300は、この絶縁物として、読取光側電極層306と基板310との間にSiO2などからなる絶縁層309dを設けている。この絶縁層309dの厚さは、0.01〜10μm程度がよい。
遮光膜309cを形成するときには、読取光の第1の透明線状電極309aへの照射強度をUb、第2の透明線状電極309bへの照射強度をUcとしたとき、Ub/Uc≧5を満足するような厚さにすることが望ましい。なお右辺は、好ましくは8、さらには12とすると一層好ましい。
また、第1の透明線状電極309aと第2の透明線状電極309bとの間隙をWbcとしたとき、遮光膜309cの幅WdがWc≦Wd≦(Wc+2×Wbc)を満足するようにするようにすることが望ましい。この条件式は、遮光膜309cが少なくとも第2の透明線状電極309bを完全にカバーし、且つ読取光の透過部分として少なくとも第1の透明線状電極309aの幅Wb分だけ確保し、第1の透明線状電極309aに対応する部分には遮光膜309cが掛からないようにすることを示している。ただし、第2の透明線状電極309bの幅Wc分だけでは遮光が不十分であり、また読取光の透過部分が第1の透明線状電極309aの幅Wb分だけでは第1の透明線状電極309aに到達する読取光が不十分になる虞があるので、(Wc+Wbc/2)≦Wd≦(Wc+Wbc)を満足するようにする方が好ましい。
以上で説明した放射線画像検出器300を構成する複数の層のうち、例えば、結晶化防止層303、記録用光導電層304、読取用光導電層306、結晶化防止層307等の層を本発明の蒸着材料蒸発装置を用いて形成することができる。
具体的には、蒸着装置の処理室内に、それらの各形成すべき層毎に、その層を形成するための複数種類の蒸着材料を収容する蒸着材料蒸発装置を用意し、基板310上に第2の電極層309と正孔注入阻止層308とが予め形成されている上に、結晶化防止層307と、読取用光導電層306と、記録用光導電層304と、結晶化防止層303とをこの順に各層に対応して用意された各蒸着材料蒸発装置を用いて順次形成する。
これにより、それぞれ複数の蒸着材料からなる化合物の均一な成分比を有する、結晶化防止層303、記録用光導電層304、読取用光導電層306、結晶化防止層307を有する放射線画像検出器300を製造することができる。
なお、記録用光導電層304と読取用光導電層306との界面に形成される蓄電部305として、AsSe、GeSe、GeSe、SbSeからなる層を形成する場合には、この蓄電部305も本発明の蒸着材料蒸発装置を用いて形成することができる。
次に、図11A、図11Bおよび図11Cを参照してTFT方式の放射線画像検出器について詳細に説明する。図11Aに示す放射線画像検出器400は、例えば、Seからなり、電磁波導電性を示す光導電層404を備え、この上に単一のバイアス電極401が、下に複数の電荷収集電極407aが形成されている。各電荷収集電極407aは、それぞれ電荷蓄積容量407c及びスイッチ素子407bに接続されている。また、光導電層404とバイアス電極401との間には正孔注入阻止層402が設けられている。また、光導電層404と電荷収集電極407aとの間には電子注入阻止層406が設けられている。また、正孔注入阻止層402と光導電層404との間と、電子注入阻止層406と光導電層404との間とには、それぞれ結晶化防止層403、405が設けられている。なお、電荷収集電極407aとスイッチ素子407bと電荷蓄積容量407cとから電荷検出層407が形成され、ガラス基板408と電荷検出層407とから後述するアクティブマトリックス基板450が構成されている。
図11Bは放射線画像検出器400の1画素単位の構造を示す断面図であり、図11Cはその平面図である。図11B、図11Cに示す1画素のサイズは、0.1mm×0.1mm〜0.3mm×0.3mm程度であり、放射線画像検出器全体としてはこの画素がマトリクス状に500×500〜3000×3000画素程度配列されている。
図11Bに示すように、アクティブマトリックス基板450は、ガラス基板408、ゲート電極411、電荷蓄積容量電極(以下、Cs電極と称する)418、ゲート絶縁膜413、ドレイン電極412、チャネル層415、コンタクト電極416、ソース電極410、絶縁保護膜417、層間絶縁膜420、および電荷収集電極407aを有している。また、ゲート電極411やゲート絶縁膜413、ソース電極410、ドレイン電極412、チャネル層415、コンタクト電極416等により薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)からなるスイッチ素子407bが構成されており、Cs電極418やゲート絶縁膜413、ドレイン電極412等により電荷蓄積容量407cが構成されている。
ガラス基板408は支持基板であり、ガラス基板408としては、例えば、無アルカリガラス基板(例えば、コーニング社製#1737等)を用いることができる。ゲート電極411及びソース電極410は、図11Cに示すように、格子状に配列された電極配線であり、その交点には薄膜トランジスタ(以下TFTと称する)からなるスイッチ素子407bが形成されている。スイッチ素子407bのソース・ドレインは、各々ソース電極410とドレイン電極412とに接続されている。ソース電極410は、信号線としての直線部分と、スイッチ素子407bを構成するための延長部分とを備えており、ドレイン電極412は、スイッチ素子407bと電荷蓄積容量407cとをつなぐように設けられている。
ゲート絶縁膜413はSiNXやSiOX等からなっている。ゲート絶縁膜413は、ゲート電極411及びCs電極418を覆うように設けられており、ゲート電極411上に位置する部位がスイッチ素子407bにおけるゲート絶縁膜として作用し、Cs電極418上に位置する部位は電荷蓄積容量407cにおける誘電体層として作用する。つまり、電荷蓄積容量407cは、ゲート電極411と同一層に形成されたCs電極418とドレイン電極412との重畳領域によって形成されている。なお、ゲート絶縁膜413としては、SiNXやSiOXに限らず、ゲート電極411及びCs電極418を陽極酸化した陽極酸化膜を併用することもできる。
また、チャネル層(i層)415はスイッチ素子407bのチャネル部であり、ソース電極410とドレイン電極412とを結ぶ電流の通路である。コンタクト電極(n+層)416はソース電極410とドレイン電極412とのコンタクトを図る。
絶縁保護膜417は、ソース電極410及びドレイン電極412上、つまり、ガラス基板408上に、ほぼ全面(ほぼ全領域)にわたって形成されている。これにより、ドレイン電極412とソース電極410とを保護すると共に、電気的な絶縁分離を図っている。また、絶縁保護膜417は、その所定位置、つまり、ドレイン電極412においてCs電極418と対向している部分上に位置する部位に、コンタクトホール421を有している。
電荷収集電極407aは、非晶質透明導電酸化膜からなっている。電荷収集電極407aは、コンタクトホール421を埋めるようにして形成されており、ソース電極410上及びドレイン電極412上に積層されている。電荷収集電極407aと光導電層404とは電気的に導通しており、光導電層404で発生した電荷を電荷収集電極407aで収集できるようになっている。
層間絶縁膜420は、感光性を有するアクリル樹脂からなり、スイッチ素子407bの電気的な絶縁分離を図っている。層間絶縁膜420には、コンタクトホール421が貫通しており、電荷収集電極407aはドレイン電極412に接続されている。コンタクトホール421は、図11Bに示すように逆テーパ形状で形成されている。
バイアス電極401とCs電極418との間には、図示しない高圧電源が接続されている。この高圧電源により、バイアス電極401とCs電極418との間に電圧が印加される。これにより、電荷蓄積容量407cを介してバイアス電極401と電荷収集電極407aとの間に電界を発生させることができる。このとき、光導電層404と電荷蓄積容量407cとは、電気的に直列に接続された構造になっているので、バイアス電極401にバイアス電圧を印加しておくと、光導電層404内で電荷(電子−正孔対)が発生する。光導電層404で発生した電子は+電極側に、正孔は−電極側に移動し、その結果、電荷蓄積容量407cに電荷が蓄積される。
放射線画像検出器全体としては、電荷収集電極407aは1次元または2次元に複数配列されると共に、電荷収集電極407aに個別に接続された電荷蓄積容量407cと、電荷蓄積容量407cに個別に接続されたスイッチ素子407bとを複数備えている。これにより、1次元または2次元の電磁波情報を一旦電荷蓄積容量407cに蓄積し、スイッチ素子407bを順次走査していくことで、1次元または2次元の電荷情報を簡単に読み出すことができる。
次に、上記構造の放射線画像検出器400の動作原理について説明する。バイアス電極401とCs電極418との間に電圧を印加した状態で、光導電層404にX線が照射されると、光導電層404内に電荷(電子−正孔対)が発生する。そして、光導電層404と電荷蓄積容量407cとは電気的に直列に接続された構造となっているので、光導電層404内に発生した電子は+電極側に、正孔は−電極側に移動し、その結果、電荷蓄積容量407cに電荷が蓄積される。
電荷蓄積容量407cに蓄積された電荷は、ゲート電極411への入力信号によってスイッチ素子407bをオン状態にすることによりソース電極410を介して外部に取り出すことが可能となる。そして、ゲート電極411とソース電極410とからなる電極配線、スイッチ素子407b及び電荷蓄積容量407cは、すべてマトリクス状に設けられているため、ゲート電極411に入力する信号を順次走査し、ソース電極410からの信号をソース電極410毎に検知することにより、二次元的にX線の画像情報を得ることが可能となる。
続いて、電荷収集電極407aについて詳細に説明する。本発明で用いる電荷収集電極407aは、非晶質透明導電酸化膜によって構成されている。非晶質透明導電酸化膜材料としては、インジウムと錫との酸化物(ITO:Indium-Tin-Oxide)や、インジウムと亜鉛との酸化物(IZO:Indium-Zinc-Oxide)、インジウムとゲルマニウムとの酸化物(IGO:Indium-Germanium-Oxide)等を基本組成とするものを使用することができる。
また、電荷収集電極としては、各種の金属膜や導電酸化膜が使用されているが、下記の理由により、ITO(Indium-Tin-Oxide)等の透明導電酸化膜が用いられることが多い。放射線画像検出器において入射X線量が多い場合、不要な電荷が半導体膜中(あるいは半導体膜と隣接する層との界面付近)に捕獲されることがある。このような残留電荷は、長時間メモリーされたり、時間をかけつつ移動したりするので、以降の画像検出時にX線検出特性が劣化したり、残像(虚像)が現れたりして問題になる。そこで、特開平9−9153号公報(対応米国特許第5563421号)には、光導電層に残留電荷が発生した場合に、光導電層の外側から光を照射することで、残留電荷を励起させて取り除く方法が開示されている。この場合、光導電層の下側(電荷収集電極側)から効率よく光を照射するためには、電荷収集電極が照射光に対して透明である必要がある。また、電荷収集電極の面積充填率(フィルファクター)を大きくする目的、またはスイッチ素子をシールドする目的で、スイッチ素子を覆うように電荷収集電極を形成することが望まれるが、電荷収集電極が不透明であると、電荷収集電極の形成後にスイッチ素子を観察することができない。例えば、電荷収集電極を形成後、スイッチ素子の特性検査を行う場合、スイッチ素子が不透明な電荷収集電極で覆われていると、スイッチ素子の特性不良が見つかった際、その原因を解明するために光学顕微鏡等で観察することができない。従って、電荷収集電極の形成後もスイッチ素子を容易に観察することができるように、電荷収集電極は透明であることが望ましい。
以下に、放射線画像検出器400の製造工程の一例について説明する。まず、ガラス基板408上に、TaやAl等の金属膜をスパッタ蒸着により厚さ約300nmに成膜した後、所望の形状にパターニングすることにより、ゲート電極411及びCs電極418を形成する。そして、このゲート電極411及びCs電極418を覆うようにして、ガラス基板408の略全面にSiNXや、SiOX等からなるゲート絶縁膜413をCVD(Chemical Vapor Deposition)法により厚さ約350nmに成膜する。なお、ゲート絶縁膜413としては、SiNXやSiOXに限らず、ゲート電極411及びCs電極418を陽極酸化した陽極酸化膜を併用することもできる。また、ゲート絶縁膜413を介して、ゲート電極411の上方にチャネル層415が配されるように、CVD法により、アモルファスシリコン(以下、a-Siと称する)を、厚さ約100nmに成膜した後、所望の形状にパターニングすることにより、チャネル層415を形成する。チャネル層415の上層にコンタクト電極416が配されるように、CVD法によりa−Siを厚さ約40nmに成膜した後、所望の形状にパターニングすることにより、コンタクト電極416を形成する。
さらに、コンタクト電極416上に、TaやAl等の金属膜をスパッタ蒸着により厚さ約300nmに成膜した後、所望の形状にパターニングすることにより、ソース電極410及びドレイン電極412を形成する。このようにしてスイッチ素子407b及び電荷蓄積容量407c等を形成したガラス基板408の略全面を覆うようにSiNXをCVD法で厚さ約300nmに成膜することにより、絶縁保護膜417を形成する。その後、コンタクトホール421となるドレイン電極412上の所定の部分に形成されたSiNX膜を除去しておく。上記絶縁保護膜417上の略全面を覆うように、感光性を有するアクリル樹脂等を厚さ約3μmに成膜し、層間絶縁膜420を形成する。そして、フォトリソグラフィ技術によるパターニングを行い、絶縁保護膜417におけるコンタクトホール421となる部分と位置合わせをしてコンタクトホール421を形成する。
層間絶縁膜420上に、ITO(Indium-Tin-Oxide)等の非晶質透明導電酸化膜をスパッタ蒸着法にて厚さ約200nmに成膜し、所望の形状にパターニングして電荷収集電極407aを形成する。この時、絶縁保護膜417及び層間絶縁膜420に設けたコンタクトホール421を介して、電荷収集電極407aとドレイン電極412とを電気的に導通させる(短絡させる)。なお、本実施の形態では上述したように、アクティブマトリックス基板450として電荷収集電極407aがスイッチ素子407bの上方にオーバーラップする、いわゆる屋根型構造(マッシュルーム電極構造)を採用しているが、非屋根型構造を採用してもかまわない。また、スイッチ素子407bとしてa−Siを用いたTFTを用いたが、これに限らず、p−Si(ポリシリコン)を用いてもよい。
上記のように形成されたアクティブマトリックス基板450の画素配列領域をすべて覆うように、電子注入阻止層406(10〜100nm程度、より好ましくは20〜100nm程度)を形成し、結晶化防止層405(10〜100nm程度)を形成後、a-Se(アモルファスセレン)にAs、GeSbをドープした材料からなり電磁波導電性を有する光導電層404を真空蒸着法により膜厚が約0.5mm〜1.5mmになるように成膜する。引き続き、結晶化防止層403(10〜100nm程度)を形成し、正孔注入阻止層402(30〜100nm程度)を形成後、最後に、光導電層404の略全面にAu、Alなどからなるバイアス電極401を真空蒸着法により約200nmの厚さで形成する。
結晶化防止層403、405としてはGeSe、GeSe、SbSe、a-AsSeや、Se−As、Se−Ge、Se−Sb系化合物等を用いることが可能である。正孔注入阻止層402としては、酸化物系や硫化物系化合物(ZnS)などが可能であるが、低温で形成できるZnSが好ましい。但し、AsSeの場合は、正孔注入阻止層として機能するので、正孔注入阻止層を形成しなくても良い。電子注入阻止層406としては、SbSなどを用いることができる。
光導電層404としては、暗抵抗が高く、X線照射に対して良好な電磁波導電性を示し、真空蒸着法により低温で大面積成膜が可能な非晶質(アモルファス)材料が好まれ、アモルファスSe(a-Se)膜が用いられているがアモルファスSeにAs、Sb、Geをドープした材料が熱安定性が良く好適な材料である。
以上で説明した放射線画像検出器400を構成する複数の層のうち、例えば、結晶化防止層403、光導電層404、結晶化防止層405等の層を本発明の蒸着材料蒸発装置を用いて形成することができる。
具体的には、蒸着装置の処理室内に、それらの各形成すべき層毎に、その層を形成するための複数種類の蒸着材料を収容する蒸着材料蒸発装置を用意し、アクティブマトリックス基板450上に電子注入阻止層406が予め形成されている上に、結晶化防止層405と、光導電層404と、結晶化防止層403とをこの順に各層に対応して用意された各蒸着材料蒸発装置を用いて順次形成する。
これにより、それぞれ複数の蒸着材料からなる化合物の均一な成分比を有する、結晶化防止層403、光導電層404、結晶化防止層405を有する放射線画像検出器400を製造することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいた変形が可能である。例えば、各実施形態の加熱手段として、シースヒーターにより形成されたヒーターを例に挙げたが、タンタルやステンレスにより形成させた板状やコイル状ヒーター、あるいはランプヒーター等の別の加熱手段を用いることができる。
また、蒸着材料蒸発装置の開口と基板の間に網目の大きさが例えば25μm〜100μm程度のメッシュをさらに備え、蒸着の際、蒸着材料が温度調節されたメッシュの網目を通過して基板3に達し、蒸着されるようにすることにより、突沸を抑えることができ、基板等への成膜において突沸により生じる膜欠陥を抑制するようにしてもよい。
第1の実施形態の蒸着材料蒸発装置を備えた蒸着装置の概略構成を示す模式図 第1の実施形態の蒸着材料蒸発装置の(A)斜視図、(B)上面図、(C)断面図 第1の実施形態の蒸着材料蒸発装置の第1の変形例を示す断面図 第1の実施形態の蒸着材料蒸発装置の第2の変形例を示す断面図 第2の実施形態の蒸着材料蒸発装置を備えた蒸着装置の概略構成を示す模式図 第2の実施形態の蒸着材料蒸発装置の(A)斜視図、(B)上面図、(C)断面図 第2の実施形態の蒸着材料蒸発装置の変形例を示す断面図 基板に対する蒸着材料蒸発装置の第1の配置例を示す上面図 基板に対する蒸着材料蒸発装置の第2の配置例を示す上面図 光読取方式の放射線画像検出器の概略構成を示す斜視図 図10Aの放射線画像検出器のXZ断面図 図10Aの放射線画像検出器のXY断面図 TFT方式の放射線画像検出器の概略構成図 図11Aの放射線画像検出器の1画素単位の構造を示す断面図 図11Aの放射線画像検出器の1画素単位の構造を示す平面図
符号の説明
1、31 蒸着装置
2 処理室
3 基板
4 基板ホルダ
10、40 蒸着材料蒸発装置
11、21、31、41 蒸着容器
14、15、24、25、34、35、44,45 蒸着材料
12a、12b、22a、22b、42a、42b 開口
13、23 共通開口
16、46 加熱手段
17、47 ヒーター
18、48 温度制御部

Claims (3)

  1. 異なる蒸着材料をそれぞれ収容する複数の蒸着容器と、
    該蒸着容器に収容された前記蒸着材料を加熱する加熱手段と、
    前記複数の蒸着容器内で蒸発した蒸着材料が共に通過して出て行く共通開口と
    を備えたことを特徴とする蒸着材料蒸発装置。
  2. 異なる蒸着材料をそれぞれ収容する複数の蒸着容器と、
    該蒸着容器に収容された前記蒸着材料を加熱する加熱手段と
    を備え、前記複数の蒸着容器がそれらの開口を隣接させて配置されていることを特徴とする蒸着材料蒸発装置。
  3. 前記加熱手段が、前記蒸着容器毎に独立して加熱制御可能なものであることを特徴とする請求項1または2記載の蒸着材料蒸発装置。
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