JP2008191500A - 有機非線形光学材料、非線形光学ポリマー膜の形成方法、および光変調素子 - Google Patents

有機非線形光学材料、非線形光学ポリマー膜の形成方法、および光変調素子 Download PDF

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Abstract

【課題】優れた非線形性を示すとともに高い耐熱性を有する非線形光学材料を提供する。
【解決手段】7,8,8−トリシアノキノジメタン化合物である。
【選択図】なし

Description

本発明は、有機非線形光学材料、非線形光学ポリマー膜の形成方法、および光変調素子に関する。
従来、非線形光学材料としては、主に無機化合物結晶が用いられてきたが、非線形光学効果は充分ではなかった。近年、有機化合物からなる非線形光学材料が提案されている(例えば、非特許文献1、および非特許文献2参照。)。これらは、無機化合物結晶に比べてはるかに大きな非線形光学定数を有し、光損傷に対する耐久性にも優れる。
こうした有機非線形光学材料の分子構造上の特徴は、ベンゼン環などのπ電子系の両端に電子供与性の官能基及び電子受容性の官能基を結合させた点にある。
しかしながら、前述した分子構造を有する有機非線形光学材料は、基底状態での電気双極子の存在により結晶化に際して中心対称の構造を取りやすく、分子1個が示す大きな非線形性が結晶全体として相殺され易いという問題があった。
素子化にあたっては、半田リフロー耐性などの耐熱性が必要とされるものの、従来の有機非線形光学材料では融点が低く、耐熱性の向上が求められていた。
一方で、簡便に非線形光学材料を形成する方法として、ポリマー中に有機非線形光学材料を分散し、ポリマー中の非線形光学分子を一方向に配向させるポーリング処理と呼ばれる分極配向処理を施して作製する、ポールドポリマー法が近年研究されている。この方法は、一般にはガラス転移温度(Tg)付近の温度領域で電場をかけてポーリング処理し、電場をかけたまま常温に戻すことによって非線形光学活性のポリマーが得られる。
しかしながら、例えばPMMA(ポリメチルメタクリレート)などのTgが低いポリマーを使用した場合、初期特性では非線形光学特性の優れたポリマーが得られるが、ポリマー中の分子が徐々に反転対象構造に戻って非線形光学特性が劣化する、配向緩和という現象が問題となる。ポリイミドなどのTgが高い耐熱性ポリマーをベースポリマーとして使用すれば、配向緩和を回避することができるものの、耐熱性ポリマーは熱硬化などのベーク温度が高い。その際の有機非線形光学材料の熱劣化・分解による特性劣化が問題となり、より高耐熱性を有する有機非線形光学材料が強く望まれている。
"Nonlinear Optical Properties of Organic and Polymeric Materials"(American Chemical Society 1983) D.J.Williamsら "Nonlinear Optical Properties of Organic Molecules and Crystals"(Academic Press,inc.1987) D.S.Chemlaら
本発明は、優れた非線形性を示すとともに高い耐熱性を有する非線形光学材料、非線形光学ポリマー膜の形成方法、および光変調素子を提供することを目的とする。
本発明の一態様にかかる非線形光学材料は、下記一般式(1)で表わされる化合物であることを特徴とする。
Figure 2008191500
(上記一般式(1)中、R1,R2,R3およびR4は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、置換もしくは非置換の芳香族炭化水素基、複素環基、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基または水素原子を示す。R1基とR2基との組み合わせ、およびR3基とR4基との組み合わせの少なくとも一方の組み合わせにおいては、2つの基が結合して置換もしくは非置換の炭化水素環または複素環を形成していてもよい。
Dは、電子供与性基、または電子供与性基で置換された芳香族炭化水素基または芳香族複素環基を示す。
Ψは、下記に示す群から選択される2価の有機基である。
Figure 2008191500
上記式中、Xは、S原子、O原子、または>N−R15を示す。
5,R6,R7,R8,R9,R10,およびR15は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、置換もしくは非置換の芳香族炭化水素基、複素環基、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基または水素原子を示す。R5基とR6基との組み合わせ、R7基とR8基との組み合わせ、およびR9基とR10基との組み合わせの少なくとも1つの組み合わせにおいては、2つの基が結合して置換もしくは非置換の炭化水素環または複素環を形成していてもよい。
Φは、下記に示す群から選択される2価の基および連結基からなる群から選択され、jは1〜3の整数である。
Figure 2008191500
上記式中、R11,R12,R13,およびR14は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、置換もしくは非置換の芳香族炭化水素基、複素環基、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基または水素原子を示す。kは1〜10の整数であり、mおよびnは0〜5の整数である。)
本発明の一態様にかかる非線形光学ポリマー膜の形成方法は、前述の非線形光学材料とマトリックス材料とを溶媒に溶解して、非線形光学材料溶液を調製する工程と、
前記非線形光学材料溶液を基板上に塗布して、塗膜を形成する工程と、
前記塗膜を第1の温度で加熱して、前記溶媒を除去してポリマー膜を形成する工程と、
前記ポリマー膜を前記第1の温度より高い第2の温度で加熱して、ポーリング処理を行なう工程とを具備することを特徴とする。
本発明の一態様にかかる光変調素子は、非線形光学ポリマー膜からなる非線形光学領域と、
前記非線形光学領域を挟持する一対の電極と、
前記一対の電極に電圧を印加する電源と、
前記非線形光学領域に光を入射する光入射部と
前記非線形光学領域から出射された光を受ける受光部とを具備し、
前記非線形光学ポリマー膜は、ベースポリマーと前述の非線形光学材料とを含むことを特徴とする。
本発明によれば、優れた非線形性を示すとともに高い耐熱性を有する非線形光学材料、非線形光学ポリマー膜の形成方法、および光変調素子が提供される。
以下、本発明の実施形態を説明する。
本発明者らは、鋭意検討した結果、特定の構造のトリシアノキノジメタン化合物が、優れた非線形性を示し、耐熱性にも優れることを見出した。すなわち、前記一般式(1)で表わされる7,8,8−トリシアノキノジメタン誘導体である。
前記一般式(1)において、R1〜R4は、置換もしくは非置換の芳香族炭化水素基、複素環基、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、または水素原子である。
1〜R4として導入される芳香族炭化水素基としては、例えば、ベンゼン環基、ナフタリン環基、アントラセン環基、フェナントレン環基、テトラリン環基、アズレン環基、ビフェニレン環基、アセナフチレン環基、アセナフテン環基、フルオレン環基、トリフェニレン環基、ピレン環基、クリセン環基、ピセン環基、ペリレン環基、ベンゾピレン環基、ルビセン環基、コロネン環基、オバレン環基、インデン環基、ペンタレン環基、ヘプタレン環基、インダセン環基、フェナレン環基、フルオランテン環基、アセフェナントリレン環基、アセアントリレン環基、ナフタセン環基、プレイアデン環基、ペンタフェン環基、ペンタセン環基、テトラフェニレン環基、ヘキサフェン環基、ヘキサセン環基、トリナフチレン環基、ヘプタフェン環基、ヘプタセン環基、およびピラントレン環基などの非置換芳香族炭化水素基が挙げられる。
こうした非置換芳香族炭化水素基の少なくとも1つの水素原子を、下記に示す特性基で置換してなる置換芳香族炭化水素基を用いることもできる。
特性基としては、例えば、ジ置換アミノ基(例えばジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジブチルアミノ基、エチルメチルアミノ基、ブチルメチルアミノ基、ジアミルアミノ基、ジベンジルアミノ基、ジフェネチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、ジキシリルアミノ基、メチルフェニルアミノ基、ベンジルメチルアミノ基、ヒドロキシエチルメチルアミノ基、ヒドロキシエチルエチルアミノ基、ビスヒドロキシエチルアミノ基など)、モノ置換アミノ基(例えばメチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、tert.−ブチルアミノ基、アニリノ基、アニシジノ基、フェネチジノ基、トルイジノ基、キシリジノ基、ピリジルアミノ基、チアゾリルアミノ基、ベンジルアミノ基、ベンジリデンアミノ基、およびヒドロキシエチルアミノ基など);複素環状アミノ基(例えばピロリジノ基、ピペリジノ基、ピペラジノ基、モルホリノ基、1−ピロリル基、1−ピラゾリル基、1−イミダゾリル基、および1−トリアゾリル基など);アシルアミノ基(例えばホルミルアミノ基、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、シンナモイルアミノ基、ピリジンカルボニルアミノ基、およびトリフルオロアセチルアミノ基など);スルホニルアミノ基(例えばメシルアミノ基、エチルスルホニルアミノ基、フェニルスルホニルアミノ基、ピリジルスルホニルアミノ基、トシルアミノ基、タウリルアミノ基、トリフルオロメチルスルホニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、メチルスルファモイルアミノ基、スルファニルアミノ基、およびアセチルスルファニルアミノ基など);アンモニオ基(例えばトリメチルアンモニオ基、エチルジメチルアンモニオ基、ジメチルフェニルアンモニオ基、ピリジニオ基、およびキノリニオ基など);アミノ基、オキシアミノ基(例えばメトキシアミノ基、エトキシアミノ基、フェノキシアミノ基、およびピリジルオキシアミノ基など);ヒドロキシアミノ基、ウレイド基、セミカルバジド基、カルバジド基、ジ置換ヒドラジノ基(例えばジメチルヒドラジノ基、ジフェニルヒドラジノ基、およびメチルフェニルヒドラジノ基など);モノ置換ヒドラジノ基(例えばメチルヒドラジノ基、フェニルヒドラジノ基、ピリジルヒドラジノ基、およびベンジリデンヒドラジノ基など);ヒドラジノ基、アゾ基(例えばフェニルアゾ基、ピリジルアゾ基、およびチアゾリルアゾ基など);アゾキシ基、アミジノ基、シアノ基、シアナト基、チオシアナト基、ニトロ基、ニトロソ基、オキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ヒドロキシエトキシ基、フェノキシ基、ナフトキシ基、ピリジルオキシ基、チアゾリルオキシ基、およびアセトキシ基など);ヒドロキシ基、チオ基(例えばメチルチオ基、エチルチオ基、フェニルチオ基、ピリジルチオ基、チアゾリルチオ基など)、メルカプト基、ハロゲン基(フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基)、カルボキシル基およびその塩、オキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、およびピリジルオキシカルボニル基など);アミノカルボニル基(例えばカルバモイル基、メチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基、ピリジルカルバモイル基、カルバゾイル基、アロファノイル基、オキサモイル基、およびスクシンアモイル基など);チオカルボキシル基およびその塩、ジチオカルボキシル基およびその塩、チオカルボニル基(例えばメトキシチオカルボニル基、メチルチオカルボニル基、およびメチルチオチオカルボニル基など);アシル基(例えばホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、アクリロイル基、ベンゾイル基、シンナモイル基、ピリジンカルボニル基、チアゾールカルボニル基、およびトリフルオロアセチル基など)、チオアシル基(例えばチオホルミル基、チオアセチル基、チオベンゾイル基、ピリジンチオカルボニル基など)、スルフィン酸基およびその塩、スルホン酸基およびその塩;スルフィニル基(例えばメチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、およびフェニルスルフィニル基など);スルホニル基(例えばメシル基、エチルスルホニル基、フェニルスルホニル基、ピリジルスルホニル基、トシル基、タウリル基、トリフルオロメチルスルホニル基、スルファモイル基、メチルスルファモイル基、スルファニリル基、およびアセチルスルファニリル基など);オキシスルホニル基(例えばメトキシスルホニル基、エトキシスルホニル基、フェノキシスルホニル基、アセトアミノフェノキシスルホニル基、およびピリジルオキシスルホニル基など);チオスルホニル基(例えばメチルチオスルホニル基、エチルチオスルホニル基、フェニルチオスルホニル基、アセトアミノフェニルチオスルホニル基、およびピリジルチオスルホニル基など);アミノスルホニル基(例えばスルファモイル基、メチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基、エチルスルファモイル基、ジエチルスルファモイル基、フェニルスルファモイル基、アセトアミノフェニルスルファモイル基、およびピリジルスルファモイル基など);ハロゲン化アルキル基(例えばクロロメチル基、ブロモメチル基、フルオロメチル基、ジクロロメチル基、ジブロモメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、およびヘプタフルオロプロピル基など);ポリシアノアルキル基(トリシアノビニル基など)、炭化水素基(例えばアルキル基、アリール基、アルケニル基、およびアルキニル基など);複素環基、有機ケイ素基(例えばシリル基、ジシラニル基、およびトリメチルシリル基トリフェニルシリル基など)などを挙げることができる。
1〜R4として導入される複素環基としては、次の非置換複素環基が挙げられる。例えば、ピロール環基、ピロリン環基、ピロリジン環基、インドール環基、イソインドール環基、インドリン環基、イソインドリン環基、インドリジン環基、カルバゾール環基、カルボリン環基、フラン環基、オキソラン環基、クマロン環基、クマラン環基、イソベンゾフラン環基、フタラン環基、ジベンゾフラン環基、チオフェン環基、チオラン環基、ベンゾチオフェン環基、ジベンゾチオフェン環基、ピラゾール環基、ピラゾリン環基、インダゾール環基、イミダゾール環基、イミダゾリン環基、イミダゾリジン環基、ベンゾイミダゾール環基、ベンゾイミダゾリン環基、ナフトイミダゾール環基、オキサゾール環基、オキサゾリン環基、オキサゾリジン環基、ベンゾオキサゾール環基、ベゾオキサゾリン環基、ナフトオキサゾール環基、イソオキサゾール環基、ベンゾイソオキサゾール環基、チアゾール環基、チアゾリン環基、チアゾリジン環基、ベンゾチアゾール環基、ベンゾチアゾリン環基、ナフトチアゾール環基、イソチアゾール環基、ベンゾイソチアゾール環基、トリアゾール環基、ベンゾトリアゾール環基、オキサジアゾール環基、チアジアゾール環基、ベンゾオキサジアゾール環基、ベンゾチアジアゾール環基、テトラゾール環基、プリン環基、ピリジン環基、ピペリジン環基、キノリン環基、イソキノリン環基、アクリジン環基、フェナントリジン環基、ベンゾキノリン環基、ナフトキノリン環基、ナフチリジン環基、フェナントロリン環基、ピリダジン環基、ピリミジン環基、ピラジン環基、ピペラジン環基、フタラジン環基、キノキサリン環基、キナゾリン環基、シンノリン環基、フェナジン環基、ペリミジン環基、トリアジン環基、テトラジン環基、プテリジン環基、オキサジン環基、ベンゾオキサジン環基、フェノキサジン環基、チアジン環基、ベンゾチアジン環基、フェノチアジン環基、オキサジアジン環基、チアジアジン環基、ジオキソラン環基、ベンゾジオキソール環基、ジオキサン環基、ベンゾジオキサン環基、ジチオラン環基、ベンゾジチオール環基、ジチアン環基、ベンゾジチアン環基、ピラン環基、クロメン環基、キサンテン環基、オキサン環基、クロマン環基、イソクロマン環基、トリオキサン環基、チアン環基、トリチアン環基、モルホリン環基、キヌクリジン環基、セレナゾール環基、ベンゾセレナゾール環基、ナフトセレナゾール環基、テルラゾール環基、およびベンゾテルラゾール環基などである。
こうした非置換複素環基を、前述の各種特性基で置換してなる置換複素環基を用いることもできる。
1〜R4として導入される脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec.−ブチル基、tert.−ブチル基、ペンチル基、tert.−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、プロペニル基、メタリル基、クロチル基、ブテニル基、ペンテニル基、ブタジエニル基、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、およびペンチニル基などの非置換脂肪族炭化水素基が挙げられる。
こうした非置換脂肪族炭化水素基を、前述の各種特性基で置換してなる置換脂肪族炭化水素基を用いることもできる。
1〜R4として導入される脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘプテニル基、シクロオクテニル基、シクロペンタジエニル基、およびシクロヘキサジエニル基などの非置換脂環式炭化水素基が挙げられる。
こうした非置換脂環式炭化水素基を、前述の各種特性基で置換してなる置換脂環式炭化水素基を用いてもよい。
この場合の炭化水素環としては、例えば、R1等に導入され得るとして列挙した非置換芳香族炭化水素環、置換芳香族炭化水素環、非置換脂環式炭化水素環、および置換脂環式炭化水素環が挙げられる。また、複素環としては、例えば、R1等に導入され得るとして列挙した非置換複素環、および置換複素環が例示される。
上述したようなR1基とR2基との組み合わせ、およびR3基とR4基との組み合わせの少なくとも一方の組み合わせにおいては、2つの基が結合して置換もしくは非置換の炭化水素環または複素環を形成していてもよい。
前記一般式(1)におけるR1〜R4としては、立体障害が少ない、水素原子または炭素数5以下の低級のアルキル基(メチル基、エチル基、およびプロピル基等)が望ましい。
前記一般式(1)式におけるDは、電子供与性基、または電子供与性基で置換された芳香族炭化水素基または芳香族複素環基である。
電子供与性基としては、以下のものが挙げられる。例えば、ジ置換アミノ基(ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジブチルアミノ基、エチルメチルアミノ基、ブチルメチルアミノ基、ジアミルアミノ基、ジベンジルアミノ基、ジフェネチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、ジキシリルアミノ基、メチルフェニルアミノ基、ベンジルメチルアミノ基など)、モノ置換アミノ基(メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、tert.−ブチルアミノ基、アニリノ基、アニシジノ基、フェネチジノ基、トルイジノ基、キシリジノ基、ピリジルアミノ基、チアゾリルアミノ基、ベンジルアミノ基、およびベンジリデンアミノ基など);環状アミノ基(ピロリジノ基、ピペリジノ基、ピペラジノ基、モルホリノ基、1−ピロリル基、1−ピラゾリル基、1−イミダゾリル基、および1−トリアゾリル基など);アシルアミノ基(ホルミルアミノ基、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、シンナモイルアミノ基、ピリジンカルボニルアミノ基、およびトリフルオロアセチルアミノ基など);スルホニルアミノ基(メシルアミノ基、エチルスルホニルアミノ基、フェニルスルホニルアミノ基、ピリジルスルホニルアミノ基、トシルアミノ基、タウリルアミノ基、トリフルオロメチルスルホニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、メチルスルファモイルアミノ基、スルファニルアミノ基、およびアセチルスルファニルアミノ基など);アミノ基、ヒドロキシアミノ基、ウレイド基、セミカルバジド基、カルバジド基、ジ置換ヒドラジノ基(ジメチルヒドラジノ基、ジフェニルヒドラジノ基、およびメチルフェニルヒドラジノ基など);モノ置換ヒドラジノ基(メチルヒドラジノ基、フェニルヒドラジノ基、ピリジルヒドラジノ基、およびベンジリデンヒドラジノ基など);ヒドラジノ基、アゾ基(フェニルアゾ基、ピリジルアゾ基、およびチアゾリルアゾ基など);アゾキシ基、アミジノ基、オキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ヒドロキシエトキシ基、フェノキシ基、ナフトキシ基、ピリジルオキシ基、チアゾリルオキシ基、およびアセトキシ基など);ヒドロキシ基、チオ基(メチルチオ基、エチルチオ基、フェニルチオ基、ピリジルチオ基、およびチアゾリルチオ基など)、メルカプト基などを挙げることができる。
こした電子供与性基は、芳香族炭化水素基または芳香族複素環基を置換することができる。芳香族炭化水素基としては、前述のR1等に導入され得るとして列挙した基が挙げられる。
芳香族複素環基としては、以下のものが挙げられる。例えば、ピロール環基、ピロリン環基、ピロリジン環基、インドール環基、イソインドール環基、インドリン環基、イソインドリン環基、インドリジン環基、カルバゾール環基、カルボリン環基、フラン環基、オキソラン環基、クマロン環基、クマラン環基、イソベンゾフラン環基、フタラン環基、ジベンゾフラン環基、チオフェン環基、チオラン環基、ベンゾチオフェン環基、ジベンゾチオフェン環基、ピラゾール環基、ピラゾリン環基、インダゾール環基、イミダゾール環基、イミダゾリン環基、イミダゾリジン環基、ベンゾイミダゾール環基、ベンゾイミダゾリン環基、ナフトイミダゾール環基、オキサゾール環基、オキサゾリン環基、オキサゾリジン環基、ベンゾオキサゾール環基、ベゾオキサゾリン環基、ナフトオキサゾール環基、イソオキサゾール環基、ベンゾイソオキサゾール環基、チアゾール環基、チアゾリン環基、チアゾリジン環基、ベンゾチアゾール環基、ベンゾチアゾリン環基、ナフトチアゾール環基、イソチアゾール環基、ベンゾイソチアゾール環基、トリアゾール環基、ベンゾトリアゾール環基、オキサジアゾール環基、チアジアゾール環基、ベンゾオキサジアゾール環基、ベンゾチアジアゾール環基、テトラゾール環基、プリン環基、ピリジン環基、ピペリジン環基、キノリン環基、イソキノリン環基、アクリジン環基、フェナントリジン環基、ベンゾキノリン環基、ナフトキノリン環基、ナフチリジン環基、フェナントロリン環基、ピリダジン環基、ピリミジン環基、ピラジン環基、ピペラジン環基、フタラジン環基、キノキサリン環基、キナゾリン環基、シンノリン環基、フェナジン環基、ペリミジン環基、トリアジン環基、テトラジン環基、プテリジン環基、オキサジン環基、ベンゾオキサジン環基、フェノキサジン環基、チアジン環基、ベンゾチアジン環基、フェノチアジン環基、オキサジアジン環基、チアジアジン環基、ジオキソラン環基、ベンゾジオキソール環基、ジオキサン環基、ベンゾジオキサン環基、ジチオラン環基、ベンゾジチオール環基、ジチアン環基、ベンゾジチアン環基、ピラン環基、クロメン環基、キサンテン環基、オキサン環基、クロマン環基、イソクロマン環基、トリオキサン環基、チアン環基、トリチアン環基、モルホリン環基、キヌクリジン環基、セレナゾール環基、ベンゾセレナゾール環基、ナフトセレナゾール環基、テルラゾール環基、およびベンゾテルラゾール環基などである。
こうした芳香族複素環基や上述の芳香族炭化水素基を電子供与性基で置換して、Dとして一般式(1)に導入することができる。
なお、これらのD基は、上述した各種特性基で置換されていてもよい。
具体的には、前記一般式(1)におけるDとしては、次のものが挙げられる。例えば、N,N−ジアルキルアミノ基、N−アルキル−N−(ヒドロキシアルキル)アミノ基、N−アルキル−N−(ヒドロキシアルキル)アミノ基、N,N−ビス(ヒドロキシアルキル)アミノ基、N,N−ジフェニルアミノ基、ピロリジノ基、ピペリジノ基、ピペラジノ基、モルホリノ基、1−ピロリル基、1−ピラゾリル基、1−イミダゾリル基、1−トリアゾリル基、4−(N,N−ジアルキルアミノ)フェニル基、4−(N−アルキル−N−(ヒドロキシアルキル))フェニルアミノ基、4−(N−アルキル−N−(ヒドロキシアルキル))フェニルアミノ基、4−(N,N−ビス(ヒドロキシアルキル))フェニルアミノ基、4−(N,N−ジフェニルアミノ)フェニル基、4−(ピロリジノ)フェニル基、4−(ピペリジノ)フェニル基、4−(ピペラジノ)フェニル基、4−(モルホリノ)フェニル基、4−(1−ピロリル)フェニル基、4−(1−ピラゾリル)フェニル基、4−(1−イミダゾリル)フェニル基、4−(1−トリアゾリル)フェニル基、5−(N,N−ジアルキルアミノ)−2−チエニル基、5−(N−アルキル−N−(ヒドロキシアルキル))−2−チエニルアミノ基、5−(N−アルキル−N−(ヒドロキシアルキル))−2−チエニルアミノ基、5−(N,N−ビス(ヒドロキシアルキル))−2−チエニルアミノ基、5−(N,N−ジフェニルアミノ)−2−チエニル基、5−(ピロリジノ)−2−チエニル基、5−(ピペリジノ)−2−チエニル基、5−(ピペラジノ)−2−チエニル基、5−(モルホリノ)−2−チエニル基、5−(1−ピロリル)−2−チエニル基、5−(1−ピラゾリル)−2−チエニル基、5−(1−イミダゾリル)−2−チエニル基、5−(1−トリアゾリル)−2−チエニル基、5−(N,N−ジアルキルアミノ)−2−フリル基、5−(N−アルキル−N−(ヒドロキシアルキル))−2−フリルアミノ基、5−(N−アルキル−N−(ヒドロキシアルキル))−2−フリルアミノ基、5−(N,N−ビス(ヒドロキシアルキル))−2−フリルアミノ基、5−(N,N−ジフェニルアミノ)−2−フリル基、5−(ピロリジノ)−2−フリル基、5−(ピペリジノ)−2−フリル基、5−(ピペラジノ)−2−フリル基、5−(モルホリノ)−2−フリル基、5−(1−ピロリル)−2−フリル基、5−(1−ピラゾリル)−2−フリル基、5−(1−イミダゾリル)−2−フリル基、5−(1−トリアゾリル)−2−フリル基、5−(N,N−ジアルキルアミノ)−2−ピロリル基、5−(N−アルキル−N−(ヒドロキシアルキル))−2−ピロリルアミノ基、5−(N−アルキル−N−(ヒドロキシアルキル))−2−ピロリルアミノ基、5−(N,N−ビス(ヒドロキシアルキル))−2−ピロリルアミノ基、5−(N,N−ジフェニルアミノ)−2−ピロリル基、5−(ピロリジノ)−2−ピロリル基、5−(ピペリジノ)−2−ピロリル基、5−(ピペラジノ)−2−ピロリル基、5−(モルホリノ)−2−ピロリル基、5−(1−ピロリル)−2−フリル基、5−(1−ピラゾリル)−2−フリル基、5−(1−イミダゾリル)−2−フリル基、5−(1−トリアゾリル)−2−フリル基、4−(ジアルキルアミノ)フェニルアゾ基、5−(ジアルキルアミノ)−2−チエニルアゾ基、N’−(4−(ジアルキルアミノ)ベンジリデン)ヒドラジノ基、およびN’−(5−(ジアルキルアミノ)−2−チエニルメチレン)ヒドラジノ基などである。
双極子モーメントμおよび二次超分子分極率βの大きさを考慮すると、Dとしてはジ置換アミノ基、環状アミノ基、ジ置換アミノ基を有する芳香族炭化水素基、環状アミノ基を有する芳香族炭化水素基、ジ置換アミノ基を有する芳香族複素環基、および環状アミノ基を有する芳香族複素環基が好ましい。
上記一般式(1)におけるΨは、下記に示す群から選択される2価の有機基である。
Figure 2008191500
上記一般式中、Xは、S原子、O原子、または>N−R15を示す。
5〜R10,およびR15は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、置換もしくは非置換の芳香族炭化水素基、複素環基、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基または水素原子を示す。R5基とR6基との組み合わせ、R7基とR8基との組み合わせ、およびR9基とR10基との組み合わせの少なくとも1つの組み合わせにおいては、2つの基が結合して置換もしくは非置換の炭化水素環または複素環を形成していてもよい。
芳香族炭化水素基、複素環基、脂肪族炭化水素基、および脂環式炭化水素基としては、R1等に導入され得るとしてすでに列挙したものを用いることができる。
上記一般式(1)におけるΦは、下記に示す群から選択される2価の基および連結基からなる群から選択され、jは1〜3の整数である。
Figure 2008191500
上記式中、R11〜R14は、それぞれ、置換もしくは非置換の芳香族炭化水素基、複素環基、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基または水素原子を示す。R11とR12とは、同一でも異なっていてもよく、R13とR14とは、同一でも異なっていてもよい。kは1〜10の整数であり、mおよびnは0〜5の整数である。
芳香族炭化水素基、複素環基、脂肪族炭化水素基、および脂環式炭化水素基としては、R1等に導入され得るとしてすでに列挙したものを用いることができる。
本発明の実施形態にかかる非線形光学材料は、有機溶媒中、チオフェン化合物、フラン化合物、またはピロ−ル化合物に、7,7,8,8−テトラシアノキノジメタンを反応させることによって、容易に合成することができる。
用い得る有機溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチル−ε−カプロラクタム、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、1,2−ビス(2−メトキシエトキシ)エタン、3−メトキシプロピオン酸メチル、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、ピロリン、ピリジン、ピコリン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチロラクトン、炭酸プロピレン、エタノール、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、およびシクロヘキサノン等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
本実施形態の7,8,8−トリシアノキノジメタン誘導体は、大きな非線形分極を有し、優れた非線形光学特性を示す。大きな非線形分極は、トリシアノキノジメタン骨格の平面性に優れた強大なπ電子共役系に起因するものと推測される。また、分子の平面性が高く、ベースポリマーとの分子間力が大きくなることから、耐熱性が極めて高い。したがって、非線形光学ポリマー膜を形成するための非線形光学材料として用いた場合には、加熱加工プロセスでほとんど揮発や劣化することなく、優れたEO特性を示す。
本発明の実施形態にかかる非線形光学ポリマー膜の形成方法には、上述の一般式(1)で表わされる非線形光学材料が用いられる。
まず、前記一般式(1)で表わされる非線形光学材料とマトリックス材料とを溶媒に溶解して、非線形光学溶液を調製する。マトリックス材料としては、硬化後にガラス転移温度の高いポリマー膜を形成し得る材料が好ましい。例えば、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリキノリン、ポリキノキサリン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリアセナフチレン、ポリインデン、ポリシクロブタジエン、ポリフェニレン、ポリアミド酸、ポリイミド、ポリイソイミド、ポリエーテルケトン、ポリフェニレンエーテル、ポリジシクロペンタジエン、ポリノルボルネン、それらの置換基導入体、それらの共重合体、およびそれらの前駆体からなる群から選択される少なくとも一種を用いることができる。
溶媒は特に限定されないが、有機極性溶媒が好ましい。例えば、以下の有機極性溶媒を用いることができる。N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメトキシアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−アセチル−2−ピロリドン、N−ベンジル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ヘキサメチルホスホルトリアミド、N−メチル−ε−カプロラクタム、N−アセチル−ε−カプロラクタム、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、ビス(2−エトキシエチル)エーテル、1,2−ビス(2−メトキシエトキシ)エタン、ビス[2−(2−メトキシエトキシ)エチル]エーテル、1−アセトキシ−2−メトキシエタン、1−アセトキシ−2−エトキシエタン、(2−アセトキシエチル)(2−メトキシエチル)エーテル、(2−アセトキシエチル)(2−エトキシエチル)エーテル、3−メトキシプロピオン酸メチル、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、ピロリン、ピリジン、ピコリン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチロラクトン、炭酸プロピレン、フェノール、クレゾール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、およびアセトニルアセトンなどである。これらの有機溶剤は単独でも、2種以上の混合物として用いてもよい。
非線形光学材料溶液中における非線形光学材料の濃度は、5重量%以上50重量%以下であることが好ましい。5重量%未満の場合には、十分な非線形光学効果を有するポリマー膜を形成することができない。一方、50重量%を越えると、非線形光学材料が析出して、ポリマー膜の透明性が低下するおそれがある。非線形光学材料の濃度は、10重量%以上30重量%以下がより好ましい。
マトリックス材料としてポリイミド前駆体であるポリアミド酸を用いる場合には、非線形光学材料溶液中に熱硬化促進剤を配合することが好ましい。熱硬化促進剤は、ポリアミド酸の加熱硬化(イミド化)を促進する化合物であり、以下の(A1)〜(A3)の有機化合物から選ばれる。
(A1)水溶液中の酸解離指数pKa(酸解離定数Kaの逆数の対数)が0〜8の範囲にある置換もしくは非置換の含窒素複素環化合物。
(A2)アミノ酸化合物またはN−アシルアミノ酸化合物。
(A3)下記一般式(4)で表わされるヒドロキシ化合物。
Figure 2008191500
(上記式中、Ar1およびAr2はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、置換もしくは非置換の芳香族炭化水素基または芳香族複素環基を示す。Zはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、カルボキシ基、アミノカルボニル基、スルホン酸基、アミノスルホニル基、アシル基、カルボキシアルキル基、スルホアルキル基、ヒドロキシ基、メルカプト基、置換もしくは非置換のアミノ基または置換もしくは非置換のアミノアルキル基を示す。Xはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、二価のオキシ基、チオ基、カルボニル基、カルボニルアミノ基、カルボニルオキシ基、置換もしくは非置換のアミノ基、アルキル基、ポリフルオロアルキル基または単結合を示す。aは0〜3の整数を示し、bは1〜5の整数、cは0〜5の整数を示す。bとcとの和は2以上である。)
各熱硬化促進剤の具体例を、以下に示す。
(A1)水溶液中の酸解離指数pKa(酸解離定数Kaの逆数の対数)が0〜8の範囲にある置換もしくは非置換の含窒素複素環化合物からなる熱硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、テトラゾール、ベンゾイミダゾール、インダゾール、ベンゾトリアゾール、プリン、イミダゾリン、ピラゾリン、ピリジン、キノリン、イソキノリン、ジピリジル、ジキノリル、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、フタラジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、ナフチリジン、アクリジン、フェナントリジン、ベンゾキノリン、フェナントロリン、フェナジン、トリアジン、テトラジン、プテリジン、オキサゾール、ベンゾオキサゾール、イソオキサゾール、ベンゾイソオキサゾール、チアゾール、ベンゾチアゾール、イソチアゾール、ベンゾイソチアゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール、トリエチレンジアミン、およびヘキサメチレンテトラミンなどの含窒素複素環化合物が挙げられる。これらの化合物における複素環基は、前述の各種特性基で置換されてもよい。
(A2)アミノ酸化合物またはN−アシルアミノ酸化合物からなる熱硬化促進剤としては、次のアミノ酸化合物が挙げられる。例えば、グリシン、サルコシン、ジメチルグリシン、ベタイン、アラニン、β−アラニン、α−アミノ酪酸、β−アミノ酪酸、γ−アミノ酪酸、γ−アミノ−β−オキソ酪酸、バリン、β−アミノイソ吉草酸、γ−アミノイソ吉草酸、ノルバリン、β−アミノ吉草酸、γ−アミノ吉草酸、δ−アミノ吉草酸、ロイシン、イソロイシン、ノルロイシン、セリン、α−メチルセリン、イソセリン、α−メチルイソセリン、シクロセリン、トレオニン、o−メチルトレオニン、アロトレオニン、o−メチルアロトレオニン、ロセオニン、トランス−3−アミノシクロヘキサンカルボン酸、シス−3−アミノシクロヘキサンカルボン酸、ε−アミンカプロン酸、ω−アミノドデカン酸、β−ヒドロキシバリン、β−ヒドロキシイソロイシン、α−ヒドロキシ−β−アミノイソ吉草酸、ε−ジアゾ−δ−オキソノルロイシン、α−アミノ−ε−ヒドロキシアミノカプロン酸、システイン、シスチン、S−メチルシステイン、S−メチルシステインスルホキシド、システイン酸、ホモシステイン、ホモシスチン、メチオニン、ペニシラミン、タウリン、α,β−ジアミノプロピオン酸、オルニチン、リシン、アルギニン、カナリン、カナバニン、δ−ヒドロキシリシン、アスパラギン酸、アスパラギン、イソアスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、イソグルタミン、α−メチルグルタミン酸、β−ヒドロキシグルタミン酸、γ−ヒドロキシグルタミン酸、α−アミノアジピン酸、シトルリン、シスタチオニン、フェニルアラニン、α−メチルフェニルアラニン、o−クロロフェニルアラニン、m−クロロフェニルアラニン、p−クロロフェニルアラニン、o−フルオロフェニルアラニン、m−フルオロフェニルアラニン、p−フルオロフェニルアラニン、β−(2−ピリジル)アラニン、チロシン、ジクロロチロシン、ジブロモチオシン、ジヨードチロシン、3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン、α−メチル−3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン、フェニルグリシン、アニリノ酢酸、2−ピリジルグリシン、トリプトファン、ヒスチジン、1−メチルヒスチジン、2−チオールヒスチジン、プロリン、およびヒドロキシプロリンなどである。
こうしたアミノ酸化合物のアミノ基を、次のようなアシル基で置換することによって、N−アシルアミノ酸化合物が得られる。アシル基としては、例えば、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ピバロイル基、ラウロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、アクリロイル基、プロピオロイル基、メタクリロイル基、クロトノイル基、イソクロトノイル基、オレオイル基、シクロペンタンカルボニル基、シクロヘキサンカルボニル基、ベンゾイル基、ナフトイル基、トルオイル基、ヒドロアトロポイル基、アトロポイル基、シンナモイル基、フロイル基、テノイル基、ピコリノイル基、ニコチノイル基、イソニコチノイル基、キノリンカルボニル基、ピリダジンカルボニル基、ピリミジンカルボニル基、ピラジンカルボニル基、イミダゾールカルボニル基、ベンゾイミダゾールカルボニル基、チアゾールカルボニル基、ベンゾチアゾールカルボニル基、オキサゾールカルボニル基、ベンゾオキサゾールカルボニル基、オキサリル基、マロニル基、スクシニル基、グルタリル基、アジポイル基、ピメロイル基、スベロイル基、アゼラオイル基、セバコイル基、マレオイル基、フマロイル基、シトラコノイル基、メサコノイル基、メソキサリル基、オキサルアセチル基、カンホロイル基、フタロイル基、イソフタロイル基、テレフタロイル基、オキサロ基、メトキサリル基、エトキサリル基、グリオキシロイル基、ピルボイル基、アセトアセチル基、メソキサロ基、オキサルアセト基、システイニル基、ホモシステイニル基、トリプトフィル基、アラニル基、β−アラニル基、アルギニル基、シスタチオニル基、シスチル基、グリシル基、ヒスチジル基、ホモセリル基、イソロイシル基、ランチオニル基、ロイシル基、リシル基、メチオニル基、ノルロイシル基、ノルバリル基、オルニチル基、プロリル基、サルコシル基、セリル基、トレオニル基、チロニル基、チロシル基、およびバリル基などが挙げられる。
(A3)前記一般式(4)で表わされるヒドロキシ化合物としては、例えば、ベンゼン、ナフタリン、アントラセン、フェナントレン、テトラリン、アズレン、ビフェニレン、アセナフチレン、アセナフテン、フルオレン、トリフェニレン、ピレン、クリセン、ピセン、ペリレン、ベンゾピレン、ルビセン、コロネン、オバレン、インデン、ペンタレン、ヘプタレン、インダセン、フェナレン、フルオランテン、アセフェナントリレン、アセアントリレン、ナフタセン、プレイアデン、ペンタフェン、ペンタセン、テトラフェニレン、ヘキサフェン、ヘキサセン、トリナフチレン、ヘプタフェン、ヘプタセン、ピラントレン、ビフェニル、テルフェニル、クァテルフェニル、キンクフェニル、セキシフェニルなどの芳香族炭化水素基を1個のヒドロキシ基と、カルボキシ基、アミノカルボニル基、スルホン酸基、アミノスルホニル基、アシル基、カルボキシアルキル基、スルホアルキル基、ヒドロキシ基、メルカプト基、置換もしくは非置換のアミノ基または置換もしくは非置換のアミノアルキル基の中から選ばれる少なくとも1個の特性基で置換した置換芳香族炭化水素化合物等が挙げられる。これらの熱硬化促進剤は、単独で用いても2種以上混合して用いてもよい。
気化点(沸点、昇華点、分解点)の低さ、硬化促進効果およびポリアミド酸溶液への溶解性などを考慮すると、熱硬化促進剤としては以下のものが好ましい。例えば、イミダゾール、1,2,4−トリアゾール、ベンゾイミダゾール、プリン、キノリン、イソキノリン、ピリダジン、フタラジン、キナゾリン、シンノリン、ナフチリジン、アクリジン、フェナントリジン、ベンゾキノリン、フェナントロリン、フェナジン、2,2’−ジピリジル、2,4’−ジピリジル、4,4’−ジピリジル、2,2’−ジキノリル、1−メチルイミダゾール、1−エチルイミダゾール、1−メチルベンズイミダゾール、1−エチルベンズイミダゾール、2−ヒドロキシピリジン、3−ヒドロキシピリジン、4−ヒドロキシピリジン、8−ヒドロキシキノリン、ピコリン酸アミド、ニコチン酸アミド、イソニコチン酸アミド、ヒドロキシニコチン酸、ピコリン酸エステル、ニコチン酸エステル、イソニコチン酸エステル、2−シアノピリジン、3−シアノピリジン、4−シアノピリジン、ピコリンアルデヒド、ニコチンアルデヒド、イソニコチンアルデヒド、3−ニトロピリジン、2−アミノピリジン、3−アミノピリジン、4−アミノピリジン、2−(ヒドロキシメチル)ピリジン、3−(ヒドロキシメチル)ピリジン、4−(ヒドロキシメチル)ピリジン、2−(ヒドロキシエチル)ピリジン、3−(ヒドロキシエチル)ピリジン、4−(ヒドロキシエチル)ピリジン、ピコリンアルドキシム、ニコチンアルドキシム、イソニコチンアルドキシム、ヒダントイン、ヒスチジン、ウラシル、バルビツール酸、ジアルル酸、シトシン、アニリノ酢酸、2−ピリジルグリシン、トリプトファン、プロリン、N−アセチルグリシン、馬尿酸、N−ピコリノイルグリシン、N−ニコチノイルグリシン、N−イソニコチノイルグリシン、N−アセチルアラニン、N−ベンゾイルアラニン、N−ピコリノイルアラニン、N−ニコチノイルアラニン、N−イソニコチノイルアラニン、α−(アセチルアミノ)酪酸、α−(ベンゾイルアミノ)酪酸、α−(ピコリノイルアミノ)酪酸、α−(ニコチノイルアミノ)酪酸、α−(イソニコチノイルアミノ)酪酸、N−アセチルバリン、N−ベンゾイルバリン、N−ピコリノイルバリン、N−ニコチノイルバリン、N−イソニコチノイルバリン、2−ヒドロキシ安息香酸、3−ヒドロキシ安息香酸、4−ヒドロキシ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、2−(ヒドロキシフェニル)酢酸、3−(ヒドロキシフェニル)酢酸、4−ヒドロキシフェニル酢酸、3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸、2−(4−ヒドロキシフェニル)イソバレル酸、2−フェノールスルホン酸、3−フェノールスルホン酸、4−フェノールスルホン酸、2−アミノフェノール、3−アミノフェノール、4−アミノフェノール、2−アミノ安息香酸、3−アミノ安息香酸、4−アミノ安息香酸、2−ヒドロキシベンズアルデヒド、3−ヒドロキシベンズアルデヒド、および4−ヒドロキシベンズアルデヒドなどである。
熱硬化促進剤は、ポリアミド酸に対して10重量%以上30重量%以下程度の濃度で、非線形光学材料溶液に配合することが望まれる。
非線形光学材料、マトリックス材料、および必要に応じて熱硬化促進剤を溶媒に溶解して、本実施形態に用いられる非線形光学材料溶液が調製される。得られた非線形光学材料溶液は、例えば、スピンコート法、ブレードコート法、バーコート法、カーテンコート法、ロールコート法、スクリーン印刷法、またはインクジェット印刷法といった手法により基板上に塗布して塗膜を形成する、塗膜の厚さは、10nm〜5mm程度とすることができる。
得られた塗膜を第1の温度で加熱して、溶媒を除去してポリマー膜を形成する。この第1の温度は、マトリックス材料の種類に応じて適宜決定することができるが、通常50〜200℃程度である。ポリイミド前駆体であるポリアミド酸がマトリックス材料として用いられる場合には、第1の温度は、120〜180℃程度とすることが好ましい。こうした温度で加熱することによって、ポーリング時に分子配向がしやすく、しかも非線形光学ポリマー膜を作製後は分子の配向緩和が生じにくいという特性を確保することができる。
溶媒が除去された後には、第1の温度より高い第2の温度でポリマー膜を加熱して、ポーリング処理を行なう。この第2の温度は、マトリックス材料の種類に応じて適宜決定することができるが、通常100〜250℃程度である。ポリアミド酸がマトリックス材料として用いられる場合には、第2の温度は、130〜200℃程度とすることが好ましい。ポーリング処理を行なうに当たっては、まず、ポリマー膜の上に蒸着などにより電極を形成し、ポリマー膜の膜厚1μmあたり10〜1000Vの電圧をかけることによって、ポーリングが行なわれる。
こうして、本発明の実施形態にかかる非線形光学材料を含有する非線形ポリマー膜が形成される。得られた非線形光学ポリマー膜は、優れた非線形光学特性を有する。しかも、長期間有機非線形光学材料の分子配向の緩和が起こりにくいため、その特性が長期間にわたって保持される。したがって、本発明の実施形態にかかる方法により形成された非線形ポリマー膜は、光変調素子の非線形光学領域に適用することができる。
光変調素子は、前述の非線形光学ポリマー膜からなる非線形光学領域と、前記非線形光学領域を挟持する一対の電極と、前記一対の電極に電圧を印加する電源と、前記非線形光学領域に光を入射する光入射部と前記非線形光学領域から出射された光を受ける受光部とを具備する。非線形光学領域は、電圧印加により屈折率、位相、または光強度の制御が行なわれる。かかる光変調素子としては、例えば、光偏向器、マトリックス光スイッチ、電気光学電界センサ、フォトリフラクティブ光記録媒体、アナログ光伝送用変調、光ヘッド、位相制御フェーズドアレイアンテナ、時間遅延フェーズドアレイアンテナ、および波長可変光フィルタなどが挙げられる。
本発明の実施形態にかかる非線形光学材料を含有する非線形ポリマー膜は、上述したように優れた非線形光学特性を有し、かつその特性が長期間にわたって保持されるので、高性能、高耐久性、低電圧駆動、および超高速動作という優れた特性を備えた光変調素子が得られる。
以下、具体例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(合成例1)
7,7,8,8−テトラシアノキノジメタンと2−(ジメチルアミノ)チオフェンとを溶媒としてのジメチルホルムアミドに溶解して、溶液を調製した。得られた溶液を、80℃で8時間加熱した後、放冷した。放冷後の溶液を、多量の水に少しずつ加えたところ、粗結晶が析出した。これを吸引濾過により濾取し、真空乾燥した。さらに、乾燥後の粗結晶を熱アセトン溶液から再結晶して生成物を得た。
元素分析、NMR、およびIR等の分析の結果から、得られた化合物は、2−(ジメチルアミノ)−5−(7,8,8−トリシアノキノジメタン−7−イル)チオフェンであることが確認された。この化合物を(化合物1)とする。
2−(ジメチルアミノ)チオフェンを適宜変更する以外は、前述の(合成例1)と同様の手法によって、(合成例2)〜(合成例15)の化合物を合成した。元素分析、NMR、およびIR等の分析の結果、各化合物は、それぞれ以下のとおりであることが確認された。
(化合物2) 2−(ジフェニルアミノ)−5−(7,8,8−トリシアノキノジメタン−7−イル)チオフェン
(化合物3) 2−(4−ピロリジノ)−5−(7,8,8−トリシアノキノジメタン−7−イル)チオフェン
(化合物4) 2−(2−(5−(ジメチルアミノ)−2−チエニル)ビニル)−5−(7,8,8−トリシアノキノジメタン−7−イル)チオフェン
(化合物5) 2−(4−(ジメチルアミノ)スチリル)−5−(7,8,8−トリシアノキノジメタン−7−イル)チオフェン
(化合物6) 2−(4−(4−(ジメチルアミノ)フェニル)ブチル)−5−(7,8,8−トリシアノキノジメタン−7−イル)チオフェン
(化合物7) 5,5−ジメチル−1−(4−(ジエチルアミノ)スチリル)−3−(5−(7,8,8−トリシアノキノジメタン−7−イル)−2−チエニルメチレン)シクロヘキセン
(化合物8) 4−(ジメチルアミノ)ベンズアルデヒド=5−(7,8,8−トリシアノキノジメタン−7−イル)−2−チエニルヒドラゾン
(化合物9) 2−(4−(ジメチルアミノ)フェニルアゾ)−5−(7,8,8−トリシアノキノジメタン−7−イル)チオフェン
(化合物10) 2−(4−(ジメチルアミノ)フェニルイミノメチル)−5−(7,8,8−トリシアノキノジメタン−7−イル)チオフェン
(化合物11) 2−(ジメチルアミノ)−1−メチル−5−(7,8,8−トリシアノキノジメタン−7−イル)ピロール
(化合物12) 7−(4−(ジメチルアミノ)フェニル)−7,8,8−トリシアノキノジメタン
(化合物13) 7−(4−(2−(4−(ジメチルアミノ)ベンジリデン)−1−メチルヒドラジノ)フェニル)−7,8,8−トリシアノキノジメタン
(化合物14) 5’−(ジメチルアミノ)−5−(7,8,8−トリシアノキノジメタン−7−イル)−2,2’−ビチオフェン
(化合物15) 5’−(ジエチルアミノスチリル)−5−(7,8,8−トリシアノキノジメタン−7−イル)−2,2’−ビチオフェン
下記表1に、(化合物1)〜(化合物15)の構造および収率をまとめる。
Figure 2008191500
各化合物の分子式および分子量を下記表2に示し、元素分析の結果(計算値および測定値)を下記表3にまとめる。
Figure 2008191500
Figure 2008191500
前述のように得られた化合物1〜15の7,8,8−トリシアノキノジメタン誘導体について、以下のように特性を評価した。比較のために、従来品である市販の4−(ヒドロキシエチルエチルアミノ)−4’−ニトロアゾベンゼン(DR1)を用意して、同様に評価した。
(1)二次超分子分極率
各非線形光学材料の分子の電子状態を、MOPAC法(MNDO−PM3法)およびMOS−F法(CNDO法)を用いて計算して、各分子の双極子モーメントμおよび二次超分子分極率β(EOPE/波長632.8nm)を求めた。このβは、分子レベルでの2次非線形性の指標となるもので、より大きなβを有する化合物が分子レベルでの2次非線形性に優れていることを表わす。
その結果を、下記表4にまとめる。
Figure 2008191500
上記表4より明らかなように、化合物1〜15のトリシアノキノジメタン誘導体は従来例のDR1に比べて2〜14倍の大きなβを有し、非線形光学特性に優れていることがわかる。
また分子レベルのEO特性は、μ・β/分子量の値がより大きいほど優れた特性を示す。表4の計算結果から、トリシアノキノジメタン誘導体は従来例のDR1に比べて2〜8倍の大きな値を示し、EO特性に優れていることがわかる。
(2)分散状態での非線形光学材料の耐熱性
東レ社製ポリアミド酸ワニスSP−510(固形分16%)20gに、各非線形光学材料0.8gと熱硬化促進剤としての4−ヒドロキシピリジン0.6gとを溶解して、それぞれの溶液を調製した。得られた溶液をスライドガラス上にスピンコート法により塗布し、100℃で2分間プリベークして、膜厚約1μmのフィルムを作製した。
得られたフィルムを、それぞれホットプレート上で180℃並びに200℃で1時間加熱し、各化合物の吸収極大波長における吸光度の減少率を測定した。その結果を、下記表5に示す。
Figure 2008191500
上記表5からわかるように、従来例(DR1)の吸光度減少率が180℃で48%、200℃で65%なのに対し、化合物1〜15の吸光度減少率はベーク温度180℃の場合で5〜15%、ベーク温度200℃の場合で8〜30%と減少率がかなり抑制されている。このことから、EOポリマーの課題であった分散する非線形光学材料の昇華・分解がかなり抑制されて、耐熱性に優れていることが確認された。
(3)EOポリマー膜の特性
東レ社製ポリアミド酸ワニスSP−510(固形分16%)20gに、各非線形光学材料0.8gと熱硬化促進剤としての4−ヒドロキシピリジン0.6gとを溶解して、それぞれの溶液を調製した。得られた溶液をITO基板上にスピンコート法により塗布し、100℃で2分間及び160℃で2分間プリベークして、膜厚約2μmのフィルムを作製した。
このフィルム上にAl電極を蒸着し、50V/μmの電場を印加しつつ、180℃で30分間加熱して、分極配向処理を行なって試料を作製した。これに反射偏光光学系を用いて、波長1300nmにおいて電気光学定数を測定した。得られた結果を、上記表5にまとめた。
上記表5からわかるように、化合物1〜15の電気光学定数はr33=30〜60pm/Vという高い値が得られ、従来例のDR1に比べて3〜6倍の優れたEO特性を示すことが確認された。また、この試料を大気中100℃で継続的に加熱したところ、2000時間経過後も初期の電気光学定数を維持し、極めて安定な非線形光学ポリマー膜が得られたことが確認された。
さらに、ポリイミド前駆体(ポリアミド酸)を次の化合物に変更する以外は、前述と同様にして非線形光学ポリマー膜を形成し、電気光学特性を評価した。
・宇部興産製U−ワニス−A(ビフェニル−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物とオキシ−4,4’−ジアニリンを原料としたポリアミド酸)
・住友ベークライト社製CRC−6061(ベンゾフェノン−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物とオキシ−4,4’−ジアニリンを原料としたポリアミド酸)
・合成ワニスKM−10(パーフルオロ−2,2−プロピリデンビフェニル−4,4’−ジフタル酸二無水物とオキシ−4,4’−ジアニリンを原料としたポリアミド酸)
・KM−20(パーフルオロ−2,2−プロピリデンビフェニル−4,4’−ジフタル酸二無水物とオキシ−3,3’−ジアニリンを原料としたポリアミド酸)
・KM−30(パーフルオロ−2,2−プロピリデンビフェニル−4,4’−ジフタル酸二無水物と1,4−フェニレンジオキシ−4,4’−ジアニリンを原料としたポリアミド酸)
化合物1〜15の非線形光学材料は、いずれのポリアミド酸と組み合わせた場合でも、前述と同様にr33=30〜60pm/Vという高い電気光学定数が得られた。各非線形光学ポリマー膜を大気中100℃で継続的に加熱したところ、2000時間経過後も初期の電気光学定数を維持し、極めて安定な非線形光学ポリマー膜が得られたことが確認された。
以下、光変調素子として、光偏向器、マトリックス光スイッチ、電気光学電界センサ、フォトリフラクティブ光記録媒体、アナログ光伝送用変調、光ヘッド、位相制御フェーズドアレイアンテナ、時間遅延フェーズドアレイアンテナ、および波長可変光フィルタを例に挙げて、上述したような非線形光学ポリマー膜をこうした光変調素子に適用した例を説明する。
(実施例1:光偏向器)
光偏向器光ビームの進行方向を変化させる光偏向器は、レーザープリンタ、デジタル複写機、ファクシミリ、バーコードリーダー、POSシステムなどに内蔵されるレーザー光走査光学系に用いられる重要な光デバイスである。
従来知られている光偏向器としては、機械式、音響光学式、および電気光学式がある。電気光学偏向器は、電気光学効果を利用して電気光学材料の屈折率を変化させるものであり、この電気光学材料を透過する光の偏向方向を変化させるプリズム型光偏向素子が知られている。電気光学偏向器は、ピコ秒オーダーの応答時間を有し、高速で走査できるものの偏向角度には限界がある。素子としてセラミックや単結晶を用いたバルク素子の場合には、寸法が大きく、また偏向角度を大きくするためには、高電圧を印加する必要があるという問題があった。
従来の電気光学偏向器においては、LiNbO3単結晶などの電気光学結晶やセラミックスが用いられることから、電極間距離が必然的に大きくなってしまう。したがって、数百から数千Vという高電圧を印加しても偏向角度を大きくすることができず、実用的な偏向角度を得ることはできていない。
図1に、電気光学偏向器の基本的構成を概略的に示し、図2には、その上面図を示す。図示するように、電気光学偏向器10は、基板11上に形成された電気光学薄膜をコア層とする光導波路層12、光導波路層12の上に形成された屈折率制御電極13、光導波路層12の基板面側に形成された全面電極14、これらの電極間に電圧を印加して電気光学材料中に電界を発生させるための駆動電源15、および光ビームの入出力手段16を具備する。
屈折率制御電極13として、例えば三角形状の電極を形成し、下部基板電極としての全面電極14との間に電圧を印加した場合には、入射光の偏向が生じる。これは、電極下方の三角柱部分の屈折率が電気光学効果に基づいて変化し、この三角柱部分がプリズムとして働くためである。
電極に挟まれた電気光学材料(電極間距離d)にVの電圧を印加したときに生じる屈折率変化量Δnは、電気光学薄膜の電気光学定数をrとし、屈折率をnとすれば下記数式(1a)で求められる。
Δn=(1/2)・n3・r・V/d (1a)
図示する光学偏向器10において、屈折率制御電極13と全面電極14との間に電圧を印加してプリズム部の屈折率をΔnだけ変化させた場合、この光学偏向器10にプリズムの底辺から入射し、斜辺から出射する入射光の偏向角度θDは、次式(1b)で求められる。
θD=Δn×tanα=Δn×(L/W) (1b)
図2に示されるように、αはプリズムの頂角(光入射面である三角プリズムの底辺と三角プリズムの斜辺のなす角)であり、Wは三角電極13の底辺の長さであり、Lは三角電極13の高さである。
したがって、この光学偏向器において、三角電極13と全面電極14との間に加える電圧を変化させることによって、出射光の偏向角度θDを連続的に制御することができる。また、図1に示した光学偏向器10を、光の進行方向にN個直列に配置することによって、出射光の最終的な偏向角度θ(N)はθ(N)≒N×Δn×tanαと大きくすることができる。
また、電気光学材料内部の分極の方向を、光路に沿って交互に逆向きに配列するように配置した周期的分極反転構造を採用することにより、さらに偏向角を大きくとることができる。
ここでは、化合物1の非線形光学材料を用いてコア層を形成することにより電気光学プリズムを作製し、その光偏向特性を調べた。SiO2層を形成したSiウェハ基板を用い、この基板上に下部電極層としてCr層(200Å)およびAu層(2000Å)を順次積層した。さらに、スピンコート法により下部クラッド層を形成した。
マトリックス材料としてのポリイミド前駆体(ポリアミド酸)ワニス(東レ社製SP−510/ポリアミド酸分16wt%/N,N−ジメチルアセトアミド溶液)20gに、非線形光学材料として合成例1の化合物0.8g、及び熱硬化促進剤として4−ヒドロキシピリジン0.6gを溶解して非線形光学材料溶液を調製した。
得られた溶液を下部クラッド層の上に塗布し、100℃で2分間及び160℃で2分間プリベークして溶媒を除去し、ポリマー薄膜を形成した。この上にさらに上部クラッド層を形成し、通常のレジスト露光・エッチングにより加工した。最後に、Au層(1000Å)を形成し、三角形状(入射部底辺100μm×光軸方向長さ1mm)の上部電極を得た。
50V/μmの電場を印加しつつ、180℃で30分間加熱して、配向分極処理ならびに熱硬化処理を行なって、光導波路層を得た。下部クラッド層、コア層、および上部クラッド層の厚さは、それぞれ3μm、2μm、および3μmであり、またコア電気光学ポリイミド層の電気光学定数は45pm/Vであった。
この光偏向器に、三角プリズムの底辺側から波長830nmのレーザー光を入射し、上部電極に20Vを印加した。その結果、ビーム光がおよそ0.5°偏向することが確認された。
また、非線形光学材料を化合物3に変更して非線形光学材料溶液を調製し、得られた非線形光学材料溶液を用いる以外は、前述と同様にして電気光学プリズムを作製した。この場合も、前述と同様の結果が得られた。
本実施形態にかかる光学偏向器は、光学プリズムとして、配向緩和寿命、非線形光学定数ともに優れた電気光学材料が使用されているため、実用的な光偏向器を提供することができる。
(実施例2:マトリックス光スイッチ)
マトリックス光スイッチは、需要に応じて光伝送路を切り替えることができ、ネットワークの回線障害回避にも用いることができる。このため、マトリックス光スイッチ光ファイバー通信ネットワークにおいて、極めて重要なキーデバイスであり、従来のマトリックス光スイッチは、次のように分類することができる。
例えば、「バルク型」と呼ばれる機械式のものが挙げられる。これにおいては、プリズム、ミラー、ファイバーなどを機械的に移動させて光路切り替えが行なわれる。また、「導波路型」と呼ばれる音響光学方式のものが挙げられる。これにおいては、音響光学効果を用い、音波による光の回折を利用する。さらに、熱光学スイッチ方式のものがあり、これにおいては、平面光回路板に形成したツリー状の導波路網で各分岐点に微小ヒーターにより導波路材料の屈折率温度係数を利用して、変化させ結合状態を切り替える、またさらに、電気光学効果を用いた導波路型光スイッチを多数組み合わせて電気的に入出力を選択するものなどが挙げられる。
導波路型光スイッチは、小型化、集積化、スイッチング速度、および量産性などには優れている。導波路型の構成としては、入力ポートと出力ポートとの間に光偏向器を設けて、入力ポートから入った光を特定の出力ポートへ偏向させる方式が知られている。この方式では、光偏向器はポートの数分だけあればよく、しかも未偏向成分は基本的に存在しないためクロストーク特性に優れる。とりわけ、大規模なマトリックススイッチにおいて有利になる。
しかしながら、従来の電気光学偏向器においては、LiNbO3単結晶などの電気光学結晶やセラミックスが用いられるため、電極間距離が必然的に大きくなってしまう。数百から数千Vという高電圧を印加しても偏向角度を大きくすることができず、実用的な偏向角度を得ることはできていない。
ウェハ状の電気光学結晶中に拡散型の光導波路を形成し、この光導波路を挟んで電極を設けることにより、大きな偏向角度の得られる光学偏向器を低電圧で駆動することが試みられている。この場合においても、電極間距離はウェハ厚相当(数百μm)になってしまうため、依然として高電圧が必要になるという問題があった。
図3に、マトリックス光スイッチの基本構成を示す概略図を示す。図示するように、マトリックス光スイッチ20においては、光信号の入力側にN個の電気光学効果に基づいて光を偏向する第1の光偏向器21、第1の光偏向器に平行光を入射するためのN個の第1の薄膜レンズ22、光信号を第1の薄膜レンズに入射するためのN個の光入射手段23、光信号の出射側にN個の電気光学効果に基づいて光を偏向する第2の光偏向器24、第2の光偏向器からの平行光を集束するためのN個の第2の薄膜レンズ25、および第2の薄膜レンズで集束された光を出射するためのN個の光出力手段26を含む。
こうした構成のマトリックス光スイッチは、次のように動作する。光ファイバーなどからの光信号を第1の薄膜レンズ22でコリメートした後、第1の光偏向器21に入射する。第1の光偏向器21には制御信号に基づいて、制御用電源(図示せず)から電極に電圧が印加される。この印加電圧に応じてビームの偏向角が決定され、出力ポートが選択される。第1の光偏向器21から送出された平行ビームを受けた第2の光偏向器24は、制御電源(図示せず)から電極に電圧が印加されて偏向角が調節され、対応する第2の薄膜レンズ25へ出射する。第2の薄膜レンズ25では、同様に印加電圧を調整することによって、光ファイバーなどの出力端へ光ビームを集束させる。このようにして、入力ポートから出力ポートへの光路の切替えが実現される。
ここでは、実施例1と同様の非線形光学材料溶液を用いて、上記2×2マトリックス光スイッチを作製し、そのスイッチ特性を調べた。SiO2層を形成したSiウェハ基板を用い、この基板上に下部電極層としてCr層(200Å)およびAu層(2000Å)を順次積層した。さらに、スピンコート法により下部クラッド層を形成した。
実施例1と同様の非線形光学材料溶液を用いてポリマー薄膜を形成し、さらに上部クラッド層を塗布形成し、通常のレジスト露光・エッチングにより加工した。この上に、レンズ部およびプリズム部に上部電極層であるAu層(1000Å)を、マスクを介して形成した。最後に、実施例1と同様の手法により配向分極処理および熱硬化処理を行なって、ポリイミド導波路層を得た。
このマトリックス光スイッチに、入力ポートの一つから波長1320nmのレーザー光を入射し、スイッチ上部電極に所定の電圧を順次印加した。その結果、出力ビーム光の取り出しポートを印加電圧に応じて、順次変えることが可能であることを確認した。
このように、光偏向器アレイを用いたN×Nマトリックス光スイッチにおいては、チャネル数Nの1乗に比例してスイッチが増加する。このため、従来の導波路マトリックススイッチのようにチャネル数Nの2乗に比例して素子数が増加するものに比べて、構成が簡素であり、小型化が可能で消費電力も低い。しかも、導波路間のクロスがないことから、クロストークが大幅に改善される。さらに、電気光学効果を使用しているため、数nsecの応答時間が可能であり、光信号の高速ルーティングに適している。
光偏向器を構成する電気光学材料として本実施形態の非線形光学材料を用いたことにより、駆動電圧の上昇や応答速度限界などが大幅に改善される。こうした問題は、従来のLiNbO3などの無機単結晶材料を用いた場合には、回避することはできなかったものである。さらに、従来の高分子電気光学材料で構成したものに比べると、配向緩和現象に基づく寿命が著しく改善され、ポリイミド材料の低熱膨張率性により周囲温度変化の影響を受けにくくなるという利点も得られる。
また、非線形光学材料を化合物5に変更して非線形光学材料溶液を調製し、得られた非線形光学材料溶液を用いる以外は、前述と同様にしてマトリックス光スイッチを作製した。この場合も、前述と同様の結果が得られた。
(実施例3:電気光学電界センサ)
回路の試験を行なう手段として、電気光学材料を被測定回路に近接または接触させて電界をカップルさせ、この被測定回路から生じる電界を検出する方法が知られている。電気光学材料は、電界に応じて複屈折率が変化することから、電気光学材料に光を照射すれば、電界変化を偏光変化として検出することができる。また、偏光板を利用した場合には、光強度変化として検出することができる。特に、光源としてレーザー光をパルス波として用いて電界変化をサンプリング検出することにより、パルス幅に相当する時間分解能で電気信号を測定することが可能である。こうしたサンプリングは、電気光学サンプリングと呼ばれている。
このような回路試験用電界センサに用いられる電気光学材料として、従来は無機電気光学結晶が使用されてきた。無機電気光学結晶は比誘電率が大きいために、容量性負荷として被測定電気回路の回路動作に影響を与える。また、これらの結晶にレーザー光を照射することによって、複屈折率が時間的に変化するという光損傷の問題があった。
有機非線形材料を分散または結合させた高分子材料は、無機結晶系の材料に比べ応答が速い。しかも、比誘電率が小さいことから、高時間分解能,低擾乱という特性が期待されている。しかしながら、大きくかつ安定な電気光学定数を有する有機材料は、未だ得られていないため、十分な感度を得ることができない。また、配向緩和現象のために特性が不安定であるという問題があった。
図4に、電気光学電界センサの基本的な構成を示す。図示するように、電気光学電界センサ30は、透明基板31と、基板に形成された電気光学薄膜32と、電気光学薄膜上に形成された反射膜33と、光の入出力手段34とを含み、電気光学薄膜32は被測定電子回路35に近接して設置されている。入出力手段34は、透明基板31の裏面から光を照射して、電気光学薄膜32を通過して反射膜33で反射した光を、透明基板31を通して取り出す。
こうした構成の電気光学電界センサは、次のように動作する。電子回路の動作状態試験を行なうために、電気光学材料を被測定回路に近接させ、被測定回路の配線に流れる電気信号が形成するフリンジ電界36とカップルさせる。こうして、電気光学材料の複屈折率変調を光学的に検出する手段が用いられている。電界変化を偏光変化、あるいは偏光板との組み合わせによって強度変化として検出することができる。
ここでは、実施例1と同様の非線形光学材料溶液を用いて電気光学薄膜層を形成し、電気光学電界センサを作製して、その検出特性を調べた。まず、ガラス基板上に、スピンコート法により、前述の非線形光学材料溶液を塗布して塗膜を形成し、通常のレジスト露光・エッチングにより加工した。この上に、マスクを介してAu層(1000Å)を形成して、反射膜を設けた。
最後に、実施例1と同様の手法により配向分極処理および熱硬化処理を行なって、非線形ポリイミド導波路層からなる電気光学薄膜を有する電気光学電界センサを作製した。本電気光学電界センサをロジックICチップの表面に近接して配置し、入力レーザー光の変動を検出した。その結果、ICの動作状態に対応する光変調信号がS/N比よく検出された。
また、非線形光学材料を化合物14に変更して非線形光学材料溶液を調製し、得られた非線形光学材料溶液を用いる以外は、前述と同様にして電気光学電界センサを作製した。この場合も、前述と同様の結果が得られた。
本実施例によれば、非線形光学材料が、電気光学定数の大きくかつ安定なものであるために高感度であり、配向緩和が生じにくいため特性が安定な電気光学電界センサが得られる。
(実施例4:フォトリフラクティブ光記録媒体)
従来の光熱相変化記録媒体または光磁気記録媒体に比較して、はるかに高密度で記録できる光記録媒体として、フォトリフラクティブ光記録媒体が知られている。フォトリフラクティブ効果とは、光照射により物質内に生じた光キャリアがドリフトあるいは拡散してトラップ剤に捕獲され、このトラップされた空間電荷によって生じる電場による電気光学効果に基づいて物質の屈折率変化が引き起こされる現象をさす。照射光として、コヒーレントな2つの光束の干渉による干渉縞を用いた場合には、照射光強度の周期に応じた空間電荷が格子状に形成され、これによって屈折率変化格子が形成される。
フォトリフラクティブ物質としては、LiNbO3やBaTiO3などの無機結晶が用いられてきた。これらの無機結晶では、感度と応答速度とがトレードオフの関係にあり、両立させることが困難であった。また、結晶材料であるがうえに、成型性、加工性に劣るという問題もあった。無機結晶の欠点を克服する材料として、有機フォトリフラクティブ材料が種々検討されてきたが、問題は全て解決されたわけではない
フォトリフラクティブ材料の機能は、電気光学特性と電荷発生作用と電荷輸送性とに分けて考えることができる。したがって、これらの機能を1物質で全て備える「単一系」と、各機能ごとに異なる物質を組み合わせて構成する「分散系」の二つに分類されている。単一系は、1種類の分子からなるために相分離を生じない点では有利である。しかしながら、3機能の構造を1分子に組み込むために合成が困難である。一方、分散系の場合は、製造は容易であるが、3機能に対応する物質を分子レベルで均一かつ安定に分散させることが難しく、熱的安定性、経時的安定性に問題があった。
電気光学ポリマーとして実施例1と同様の非線形光学材料溶液を用い、電荷発生剤および電荷輸送剤を配合して、分散系フォトリフラクティブ材料を作製した。電荷輸送材料としては、N,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(m−トリル)ベンジジンを用いた。また、電荷発生剤としては、フラーレン(C70)を用いた。こうした成分を用いて、常法により分散系フォトリフラクティブ材料を調製した。
得られた分散系フォトリフラクティブ材料を、ITO層を形成したガラス基板上にスピンコート法により塗布して塗膜を形成した。次いで、通常のレジスト露光・エッチング工程を行なった後、上部電極としてITO膜を形成した。最後に、実施例1と同様の手法により配向分極処理および熱硬化処理を行なって、非線形ポリイミド導波路層からなるフォトリフラクティブ光記録媒体を得た。
フォトリフラクティブ光記録媒体の特性として、二光波結合による結合利得係数を測定し。まず、フォトリフラクティブ光記録媒体に2つの光ビームを照射して、光強度分布の干渉縞を形成した。これに電場を印加し、前記光強度分布とは位相差を有する屈折率格子を形成することによって、回折ビームが生じる。その回折効率を測定した。光源として、2本のHe−Neレーザーを用いて測定した結果、回折効率として15%が得られた。
また、非線形光学材料を化合物3に変更して非線形光学材料溶液を調製し、得られた非線形光学材料を用いる以外は、前述と同様にしてフォトリフラクティブ光記録媒体を作製した。この場合も、前述と同様の結果が得られた。
本実施例のフォトリフラクティブ光記録媒体は、十分な屈折率変化が生じ、また、熱的安定性、経時的安定性も満たすものである。
(実施例5:アナログ光伝送用変調器)
「アナログ光伝送技術」においては、光ファイバーを用いて無線信号が光伝送され、CATVや電波不感知帯対策などに代表される領域で実用化されている。さらに、移動体通信の無線伝送変調方式などに左右されない統合無線ネットワーク構築技術として、研究が盛んになってきた。現状の変調周波数は1GHz程度と低いが、将来は高速伝送や大容量伝送などを実現するために、ミリ波などの高い変調周波数が用いられると考えられる。このような高い周波数では、半導体レーザーの直接変調では波長チャーピングが問題となる。これを回避するため、マッハツェンダー型あるいは方向性結合器型などの外部光変調器を用いて光変調が行なわれる。
しかしながら、外部変調器の非線形動作特性(光出力が電圧と直線関係にない)により、多チャンネルの信号を扱うサブキャリア伝送では、3次相互変調歪(以下、IM3という。)により発生する信号成分がチャンネル帯域内に入って、伝送リンクのダイナミックレンジを低減する。このため、変調器の非線形歪低減によるIM3成分を抑制することが、極めて重要な課題となっていた。
マッハツェンダー型外部光変調器の場合は、変調特性がコサイン2乗特性なので、IM3成分位相変調指数mによって一意的に決定される。したがって、位相変調指数を大きくするとIM3成分は大きくなる。一方で、受光器での受信信号強度は光信号の変調度の2乗に比例する。受信信号強度を大きくするためには、位相変調指数はあまり小さくすることができない。このような問題を解決するために、次のような方法が提案されてきた。
(1)入力信号にプリディストーション(前置補償)を行なう方法。
(2)2つの光変調器を並列に接続してIM3成分をキャンセルする方法。
(3)2つの光変調器を直列に接続してIM3成分をキャンセルする方法。
(1)のプリディストーションを与える方法には、動作周波数によって各種パラメータの最適化が不可欠である。さらに、高周波数領域においては、そのような電子回路を構成すること自体が困難あるいは高価格になるという問題もあった。(2)および(3)の方法では、こうした問題点は回避されるものの、マッハツェンダー型導波路素子ユニットや方向性結合器型ユニットを、直列および/または並列に複数接続する構成となる。このため、基板のサイズが大型化して、従来の電気光学結晶ウェハではサイズが制限される。その結果、十分な特性をもった素子を作製することができない。
図5に、アナログ光伝送用変調器の基本的な構成を示す。図示するアナログ光伝送用変調器40は、基板41、光の入出力接続手段45、基板41上に形成された直列に接続されたマッハツェンダー導波路素子42、各マッハツェンダー型素子にバイアスを与えるための電極43、および変調信号を与える電極44を具備する。
こうした構成のアナログ光伝送用変調器の動作は、次のように説明される。単独マッハツェンダー型素子で生じる3次相互変調歪(IM3)は、次段のマッハツェンダー素子の駆動バイアスおよび変調電圧信号の振幅ならびに位相を制御する。これによって、ちょうど打ち消し合わせることが可能となる。
ここでは、実施例1と同様の非線形光学材料溶液を用いてコア層を作製し、マッハツェンダー型フィルタ素子の透過特性を調べた。SiO2層を形成したSiウェハ基板を用い、この基板上に下部電極層としてCr層(200Å)およびAu層(2000Å)を順次積層した。スピンコート法により下部クラッド層、ポリマー薄膜からなるコア層、および上部クラッド層を塗布形成した。これらの層を、通常のレジスト露光・エッチング工程により加工した後、その上に、Au層(1000Å)をマスクを介して形成して、上部電極を設けた。
最後に、実施例1と同様の手法により配向分極処理ならびに熱硬化処理を行なって、非線形ポリイミド導波路層からなるアナログ光伝送用変調器を作製した。得られた素子の動作特性を調べたところ、バイアスに対する直線応答領域が、単独マッハツェンダー素子に比較して拡大しており、より大きなダイナミックレンジが取れることがわかった。
また、非線形光学材料を化合物3に変更した以外は前述と同様にして非線形光学材料溶液を調製し、得られた非線形光学材料溶液を用いてアナログ光伝送用変調器を作製した。この場合も、前述と同様の結果が得られた。
(実施例6:光ヘッド)
光ディスク、光磁気ディスクなどの読取り/書込み光ヘッドにおいては、光導波路上に受光素子、集光素子、反射素子などを集積化することによって、多数の光学部品の精密位置合わせ工程を簡略化し、小型薄型化、軽量化を可能とする光集積回路ヘッドの研究が盛んに行なわれている。この光集積回路ヘッドの基本的構成要素は、レーザー光源と、光検出器と、光導波路上に伝播光を導波路外に取り出し光記録媒体に集光し、かつ光記録媒体からの信号光を光導波路内に結合するための集光グレーティングカップラと、再結合された導波光を光検出器へ集光するグレーティングビームスプリッタと、書込み動作中の光源の強度を変調する光変調器からなる。
レーザーダイオードから出射されたレーザー光は、光導波路を伝播し、ビームスプリッタを通過した後集光グレーティングカップラによって回折され、光ディスク上に集光される。光ディスクからの反射光は、集光グレーティングカップラによって再び光導波路に結合され、ビームスプリッタによって2つの反射光束に分割され、フォトダイオードにより検出される。
実際の光ヘッドにおいては、ディスクや回転機構の偏心に対して光ビームが目標のトラックに追従できるようにするため、フォーカス方向とラジアル方向に可動な電気機械式のボイスコイルアクチュエーターを搭載している。この機械移動式のアクチュエーターが光ヘッド全体の寸法やコストを増大させ、しかも慣性のために光ヘッドの帯域が制限されてしまう。このため、機械駆動部を持たない、純粋に電気制御方式である導波路型電気光学偏向器の使用が検討されている。しかしながら、無機結晶のLiNbO3を用いる場合には、駆動電圧が著しく高くなり、有機非線形光学材料としてLB膜を使用した場合には、十分に良質な必要膜厚を得ることができない。従来から知られている電気光学ポリマーを使用したところで、配向緩和現象のために特性の安定した材料が得られず、実質的に実用的な導波路型電気光学偏向器を構成できないのが現状である。
図6に、光ディスク用集積回路光ヘッドの基本的な構成を示す。図示する光ディスク用集積回路光ヘッド50は、レーザー光源51、基板59上に形成されたスラブ導波路52、レーザー光をディスクに集光させるための集光グレーティングカップラ53、集光スポットのトラッキング制御を行なうための電気光学光偏向器54、前記レーザー光を前記電気光学偏向器に結合するためにコリメートし、かつ反射光を2本の反射光束に分割し光検出器に集光させるためのグレーティングビームスプリッタ55、光検出器56、およびこれらを制御するための電気制御系57を備えている。
スラブ導波路52は、下部クラッド層/コア層/上部クラッド層から構成される。レーザーダイオード51からのレーザー光は、スラブ導波路52に結合され、グレーティングビームスプリッタ55によってコリメートされたレーザー光が電気光学偏向器部分54を通過する。その後、集光グレーティングカップラ53で導波路外に射出され、光情報記録媒体ディスク58上に集光される。
光情報記録媒体ディスク58上のピット/ランドにかかる情報記録情報ならびにトラッキングエラー信号、フォーカシングエラー信号を含んだ反射光は、集光グレーティングカップラ53によって再びスラブ導波路52に戻る。グレーティングビームスプリッタ55で2分割集束された後、それぞれの光検出器56に受光され、光ディスク上の記録情報が電気信号に変換される。
光情報記録媒体ディスク58の回転ぶれによって、ディスクの半径方向にトラックの移動が生じた場合に、検出器56からのトラッキング誤差信号にもとづいて、光偏向器54に対してトラッキング変位を補償する方向にビームを偏向させるための電圧が印加される。光偏向器54に電圧が印加されることによって光ビームは偏向し、集光グレーティングカップラ53によって作られるビーム集光の位置は変移する。同様にして、反射戻り光は集光グレーティングカップラ53によりスラブ導波路52に戻り、光偏向器54を通ってグレーティングスプリッタ55により光検出器56に集光される。このようにして、レーザー光源からの光スポットは、忠実にトラックを追随し、光情報記録信号を確実に書込み/読み出しを行なう。
ここでは、ポリイミドベースのスラブ導波路の形成に実施例1と同様の非線形光学材料溶液を用いて、電気光学偏向器を形成した。電気光学偏向器の部分には、実施例1の場合と同様に、SiO2層を形成したSiウェハ基板を用い、この基板上に下部電極層としてCr層(200Å)、Au層(2000Å)を順次積層した。スピンコート法により下部クラッド層、非線形光学ポリマー膜、および上部クラッド層を順次形成し、レジスト露光・エッチングにより加工した。
この上に、電気光学プリズムの屈折率制御電極としての上部電極層であるAu層(1000Å)を、マスクを介して形成した。続いて、実施例1と同様の手法により配向分極処理ならびに熱硬化処理を行ない、ポリイミド電気光学偏向器を得た。さらに、図6に示した基本素子構造にしたがって、グレーティングビームスプリッタ、グレーティングカップラを設け、光ヘッドとした。
本実施例の光ヘッドを用いた読み取り実験において、ディスク上の集光スポットサイズは約1.3μmであり、波長変動、周囲温度変動のない、安定な読取り動作が確認できた。
本実施例においては、光ヘッドを構成する数多くの光学部品を集積化することによって小型化、軽量化、低コスト化が可能である。さらに、集積光回路中に電気光学偏向器を設けることによって、検出系の生成するトラッキングエラー信号により電気的にビームの集光位置を制御することができる。しかも、電気光学定数が大きくかつ安定な非線形ポリイミド材料を導波路に用いることによって低電圧駆動が可能となり、制御回路系への負担を低減するとともに、1チップ化などのコストの削減につながる。
また、非線形光学材料を化合物3に変更した以外は前述と同様にして非線形光学材料溶液を調製し、得られた非線形光学材料溶液を用いて光ディスク用集積回路光ヘッドを作製した。この場合も、前述と同様の結果が得られた。
(実施例7:位相制御フェーズドアレイアンテナ)
移動体通信の急激な普及により、電波周波数資源が逼迫すると共に、数多くの移動体端末に対し柔軟な機能対応を可能とすることが求められている。このため、フェーズドアレイアンテナ技術が注目を浴びている。フェーズドアレイアンテナにおいては、ビーム成形回路が必要とされ、この回路は、複数のアンテナ素子に制御された位相および振幅分布を有する信号を供給する。
アンテナ素子数が数十から数百の大規模なアンテナを実現するためには、電気ビーム成形回路では回路が複雑膨大になってしまう。また、各アンテナ素子へ送る信号の位相を正確に制御するためには、同軸ケーブルによる給電では損失や重量、ならびに近接ケーブル間の干渉が問題となる。
このような問題を解決するための方策として、光伝送回路を用いる光ビーム成形回路が挙げられる。光ファイバー、光導波路が有する広帯域性、低損失性、軽量性などの点から近年注目を浴びている。光ビ−ム成形回路の構成方法としては、光の位相制御によりマイクロ波・ミリ波の位相を制御する「光位相制御方式」と、光伝送路の光路長による遅延時間を制御する「光遅延制御方式」とがある。
光位相制御方式には、従来電気光学結晶LiNbO3基板を用いた導波路型移相器が用いられている。しかしながら、LiNbO3単結晶基板の大きさは限られており、アンテナ素子数の増大に伴なって、このウェハ上に大規模な光移相器アレイを作りつけることはほとんど不可能であった。また、光遅延制御方式における光路長の制御方法としては、予め用意された長さの異なる分岐伝送路を光スイッチによって選択し、遅延量を制御する方法が採用されている。いずれの場合も、光ビ−ム成形回路が大規模化した際に移相器や光スイッチを多数必要となるため、アンテナの小型化や価格の低減を図るのが困難という問題があった。
図7に、光移相制御型のフェーズドアレイアンテナ用ビーム形成光回路(アンテナ素子数4)の基本的な構成を示す。図示するビーム形成光回路では、コヒーレントな光源としてのレーザーダイオード、ビーム形成に必要な光信号処理回路である、分岐導波路、合波導波路、光周波数シフタ、光移相器ならびに各素子をつなぐ導波路から構成される。
レーザーダイオード71から出力された光信号は、ビーム形成回路基板72の入力端に入射され、第1の分岐導波路66で2分割された後、一方は2段目の光分配器73へ出力されるとともに、他方の光信号は光周波数シフタ74を通って第2の光分配器73へ出力される。光周波数シフタ74においては、入射された光信号は、送信装置75でベースバンド信号で変調されたマイクロ波信号の周波数分だけ周波数遷移されて、出力される。第2の光分配器73においては、光信号はそれぞれ4分岐された後、それぞれに光移相器76に入射される。
入射された光信号は、移相制御用可変電源77からの信号に応じて、それぞれ位相シフトを受けた後出力される。なお、移相制御用可変電源77は、フェーズドアレイアンテナのビーム方向を決定する情報で制御されている。一方、周波数シフタ74を通った光信号は、同じく4分割されそれぞれに光移相器76に入力されるが、こちらは合波部に到達するまでの各光路差が等しくなるように補正するための、位相補正用の光移相器である。最終段の合波導波路78においては、位相シフトされた光信号と周波数シフトを受けた光信号が合波されて、受光器67において2乗検波により元のマイクロ波信号が再生され、各増幅器79を経てアンテナ素子68へ出力され放射される。
図8は、光移相器の基本構成を示す図である。図示する光移相器80においては、基板81上に、クラッド層/コア層/クラッド層の順にそれぞれのポリマー膜が積層された導波路層82が形成されている。この導波路上の一部には、長さlの電極83が形成され、またこの電極と平行に距離dだけはなれた場所に同じ長さlの電極84が形成される。この2つの電極に直流電圧を印加する、位相制御用電源85が接続される。この電極間に電圧Vを印加すると、この導波路を進行する光信号は次式(7a)で示される位相量θだけ移相される。
θ=(2π/λ)Δn・l=(π/λ)(n3・r・ΓV/d)・l (7a)
nはコア層電気光学ポリマー膜の屈折率、rは電気光学定数であり、Γは印加電圧低減係数である。
ここでは、コア層の形成に実施例1と同様の非線形光学材料溶液を用いて、光移相器を作製し、その光位相制御特性を調べた。実施例1の場合と同様に、SiO2層を形成したSiウェハ基板を用いた。この基板上には、下部電極層としてCr層(200Å)およびAu層(2000Å)を順次積層した。スピンコート法により上部クラッド層、非線形光学ポリマー膜、および下部クラッド層を順次形成し、レジスト露光・エッチングにより加工した。この上に、Au層(1000Å)をマスクを介して形成して、上部電極を設けた。最後に、実施例1と同様の手法により配向分極処理および熱硬化処理を行なって、非線形ポリイミド導波路層からなる光移相器を得た。
この光移相器から構成されるビ−ム形成回路に、波長1320nmのレーザー光を入射し、各光移相器電極に所定の電圧を印加したところ、アンテナ素子から放射される無線信号のビーム出力方向を制御できることが確認された。
以上の例では、アンテナ素子は4素子であるが、さらに多数のアンテナ素子を使用する場合でも基本的原理は同様である。また、このようなポリイミド非線形光学材料を用いれば、大規模な光移相器アレイを作りつけることも可能である。
また、非線形光学材料を化合物14に変更し、ポリイミド前駆体(ポリアミド酸)としての東レ社製ポリアミド酸ワニスSP−510と、熱硬化促進剤としての4−ヒドロキシピリジンを配合した非線形光学材料溶液を用いる以外は、前述と同様にして位相制御フェーズドアレイアンテナを作製した。この場合も、前述と同様の結果が得られた。
(実施例8:時間遅延フェーズドアレイアンテナ)
図9に、実時間遅延制御型のフェーズドアレイアンテナ用ビーム形成光回路の基本的な構成を示す。図示するビーム形成光回路は、コヒーレントな光源としてレーザーダイオードと、ビーム形成に必要な光信号処理回路である、分岐導波路、合波導波路、光周波数シフタ、光遅延回路ならびに各素子をつなぐ導波路から構成される。
図示する時間遅延フェーズドアレイアンテナ90においては、レーザーダイオード91から出力された光信号は、ビーム形成回路基板92の入力端に入射され、第1の分岐導波路101で2分割された後、一方は第2の光分配器93へ出力されるとともに、他方の光信号は光周波数シフタ94を通って第2の光分配器93へ出力される。光周波数シフタ94においては、入射された光信号は、送信装置95でベースバンド信号で変調されたマイクロ波信号の周波数分だけ周波数遷移されて出力される。
第2の光分配器93においては、光信号はそれぞれ4分岐された後、それぞれに光遅延回路96に入射される。ここでは、入射された光信号は、遅延時間制御電源97からの信号に応じて、それぞれ時間遅延を受けた後出力される。なお、遅延時間制御電源97は、フェーズドアレイアンテナのビーム方向を決定する情報で制御されている。一方、周波数シフタ94を通った光信号は、同じく4分割されそれぞれに光遅延回路96に入力されるが、こちらは合波部98に到達するまでの各光遅延量が等しくなるように補正するための、遅延時間補正用の光遅延回路である。
最終段の合波導波路98においては、時間遅延された光信号と周波数シフトを受けた光信号が合波されて、受光器102において2乗検波により元のマイクロ波信号が再生され、各増幅器99を経てアンテナ素子100へ出力され放射される。
各光遅延回路96は、図10に概念的に示すようないくつかの長さの異なる分岐導波路と、各分岐導波路を選択するための電気光学光スイッチとから構成される。例えば、4種類の長さの異なる分岐導波路を用意し、各分岐導波路への切換えを制御すると、全部で16種類の組み合わせの時間遅延を制御することができる。
遅延回路を選択するための光スイッチとして、電気光学効果に基づくデジタル型光スイッチを用いた。コア層の形成に実施例1と同様の非線形光学材料溶液を用いて、光スイッチを作製し、その遅延時間制御特性を調べた。実施例1の場合と同様に、SiO2層を形成したSiウェハ基板を用い、この基板上に下部電極層としてCr層(200Å)、Au層(2000Å)を順次積層した。スピンコート法により下部クラッド層、非線形光学ポリマー膜、および上部クラッド層を順次形成し、レジスト露光・エッチングにより加工した。
この上に、マスクを介してAu層(1000Å)を形成して、上部電極を設けた。最後に、実施例1と同様の手法により配向分極処理および硬化熱処理を行なって、非線形ポリイミド導波路層からなるデジタル型光スイッチを得た。
アレイ上に等間隔(距離d)で並んだアンテナ素子から無線信号を放射して、所望のビームを形成するためには、各アンテナ素子に給電される無線信号の位相に一定の偏差θを与えればよい。このとき、ビームが形成される方向Dは、波数k(=2π/λ)を用いて下記数式(8a)で与えられる。
D=cos-1(θ/kd)−π/2 (8a)
これは、光ビーム形成回路に無線信号1波長分の位相遅延を与えることができれば、任意の放射角を設定できることを意味している。屈折率1.5の光導波路の場合には、長さ1cmの伝送遅延で20GHzの無線信号を1波長分、長さ10cmの伝送遅延で2GHzの無線信号を1波長分、遅延させることができ、特性を十分に満たす。また、本回路はポリイミド非線形光学材料を用いているため、コストの低減を図ることができる。
また、非線形光学材料を化合物3に変更した以外は前述と同様にして非線形光学材料溶液を調製し、得られた非線形光学材料溶液を用いて、時間遅延フェーズドアレイアンテナを作製した。この場合も、前述と同様の結果が得られた。
(実施例9:波長可変光フィルタ)
波長多重光通信ネットワークにおいて、波長単位でのクロスコネクト機能やアド・ドロップ機能の実現が必須である。このように異なる波長の信号を分離したり合波したりする光多重分岐回路においては、任意の波長を選択するための波長可変光フィルタが重要な構成要素となる。例えば、波長1.55μm帯のWDMシステムでは、伝送波長帯域1.543μm〜1.556μmの中に、周波数間隔100GHz(波長間隔0.8nm)の16チャンネル多重や、周波数間隔200GHz(波長間隔1.6nm)の8チャンネル多重のシステムが検討されている。光波長フィルタとしては、この間隔よりも十分狭い透過帯域をもつことが必要である。
波長多重光信号から特定波長の信号を分離するための波長可変光フィルタは、例えば次のように分類される。(1)ファブリペロー干渉型フィルタ、(2)グレーティング型フィルタ、(3)モード変換型フィルタ、(4)マッハツェンダー型フィルタ、および(5)AWG型フィルタなどである。
(1)のファブリペロー干渉型フィルタは、ファブリペローエタロンのキャビティギャップをピエゾ素子で機械的に変化させたり、充填した液晶に電圧を印加して屈折率を変化させることによって、透過波長を変化させる。バンド幅は任意設定可能であるが、応答速度が数msecと遅い点が問題である。
(2)のグレーティング型フィルタは、屈折率分布グレーティングを書き込んだファイバグレーティングに応力をかけたり温度を変化させることによって、反射波長を可変させる。波長可変とともにスペクトル形状が崩れ、可変幅も数nmと小さい。
(3)のモード変換型フィルタは、LiNbO3等の電気光学効果を有する基板に櫛型電極を形成し、電圧を印加することによって音響波を形成し、その音響波に応じた特定波長の偏波を90度回転させることによって偏光分離によりフィルタ機能を実現する。数μsecの応答速度が得られるものの、透過ピークの半値幅が非常に広いため消光比が低い。
(4)のマッハツェンダー型フィルタは、移相器におけるブロードな波長周期的透過特性を、カスケードに組合せることによって狭帯域化するものであり、電気光学効果を利用するため数nsecの応答速度が得られる。しかしながら、LiNbO3基板を使用することにより挿入損失が大きく、駆動電圧が高い。
(5)のアレイ導波路回折格子フィルタは、少しずつ長さの異なる多数の光導波路アレイによる波長ごとの位相変化が、出口の扇状スラブ導波路で回折角の変化に変換され、波長ごとに分離されて出射する現象を利用した素子である。波長の連続可変が不可であるほか、コストが高いといった問題がある。
今後の波長多重光ネットワークにおいては、例えば波長ルータのような高速に透過帯域を切り替えられる波長可変光フィルタが重要になると考えられている。この点から、電気光学効果に基づく波長制御機能が有望である。上述した各種の波長可変光フィルタのうち、電気光学効果を利用するものとしては、(4)マッハツェンダー型フィルタと(3)モード変換型フィルタとが該当するが、後者は消光比が低い。このため、高密度波長多重通信用途には適さない。前者のマッハツェンダー型フィルタも透過帯域を狭めるために、実際には干渉計を直列あるいは並列に連結させる構造を採用する。
一般的には、光導波路では急峻な曲がり構造を導入すると損失が極めて大きくなるため、前述のような連結構造を採用すると全体的にサイズが大型化する。また、電気光学効果を示す材料としては、従来無機単結晶LiNbO3が考えられていたが、ウェハサイズが限られている。したがって、上述したような大型集積構造の一体作り込みは困難であるという問題があった。
図11は、波長可変光フィルタの基本的構成を概略的に示す図である。図示する波長可変光フィルタ110は、光の入出力接続手段111、基板112上に形成された多段に接続されたマッハツェンダー導波路フィルタ素子113(この図の場合は3個直列接続)、各マッハツェンダー型フィルタ素子の一方のアームに屈折率変調を与えるための電極114、およびそれらを駆動する制御電源115を具備する。多段接続されたマッハツェンダー型フィルタ素子のアーム長は、入力側からアーム長の長い順にそれぞれ公比2の等比数列を形成するように構成されている。
個々のマッハツェンダーフィルタ素子は、入力分岐部、出力分岐部、ならびにそれらを結ぶ直線もしくは曲線導波路からなっており、図11の場合はそれぞれ1×2対称Y分岐、2×1対称Y分岐、そして直線導波路で構成されている。直線もしくは曲線導波路部分は異なる光路長に設定されている。すなわち、同一素子の直線導波路の等価屈折率がそれぞれ異なるように、予め導波路の形状あるいは材料を設計しておいて、ある等価屈折率差Δnを与えるか、幾何学的な長さを変えておく。
この波長可変光フィルタの光出力特性は、次式(9a)のように表わされる。
T=[sin2(ΔK・L・2N)]/[2Nsin2(ΔK・L)] (9a)
Tは透過率、Lは最も短いフィルタ素子の直線導波路の長さ、Nはフィルタ素子の段数(この図の場合は3)である。ΔK=2・π・Δn/λであり、Δnは前記直線導波路の初期等価屈折率差を表わす。この初期等価屈折率差Δnは、導波路の形状、材料などによって設計される。電極に電圧を印加していない場合には、全てのフィルタ素子のΔnは等しく、このときΔn=Δn0とする。この透過特性は、ある一定の波長間隔をもった周期的な透過特性となり、その透過波長間隔は、次式(9b)で表わされる。
Δλ=λ0 2/[2・Δn・L] (9b)
λ0は、Δn=Δn0とした際の透過帯域のピーク波長を表わす。
また、透過帯域の半値幅Δλwは、次式(9c)で表わされる。
Δλw=λ0 2/[2・Δn・L・2N] (9c)
したがって、このフィルタ素子全体のチャンネル数CH=Δλ/Δλwは2Nとなる。ここで、電極に電圧を印加すると、ΔnがΔn+δΔnに変化することによって波長間隔Δλをほぼ一定に維持したまま、透過ピークが移動する。その移動量Δλtは、次式(9d)で表わされる。
Δλt=[δΔn/Δn0]・λ0 (9d)
以上のようにして、電圧印加により透過波長を可変制御できる、波長可変光フィルタを実現できる。
ここでは、マッハツェンダー型フィルタ素子のコア層の形成に、実施例1と同様の非線形光学材料溶液を用いて波長可変光フィルタを作製し、その透過特性を調べた。実施例1の場合と同様に、SiO2層を形成したSiウェハ基板を用い、この基板上に下部電極層としてCr層(200Å)、Au層(2000Å)を順次積層した。スピンコート法により下部クラッド層、非線形光学ポリマー膜、および上部クラッド層を順次形成し、レジスト露光・エッチングにより加工した。
この上に、マスクを介してAu層(1000Å)を形成して、上部電極を設けた。最後に、実施例1と同様の手法により配向分極処理および熱硬化処理を行なって、非線形ポリイミド導波路層からなる波長可変光フィルタを得た。この波長可変フィルタに1.543μm〜1.556μm帯の波長多重信号を入力し、印加電圧を制御することによって多重化された光信号を1波長ごとに取り出すことができた。
さらに、最小直線導波路長Lの異なるフィルター素子をカスケードに接続することによって、透過波長間隔を拡大することもできる。
また、非線形光学材料を化合物5に変更した以外は前述と同様にして非線形光学材料溶液を調製し、得られた非線形光学材料溶液を用いて波長可変光フィルタを作製した。この場合も、前述と同様の結果が得られた。
以上詳述したように、実施例の有機非線形光学材料は、極めて容易に合成でき、融点が高く耐熱性に優れ、かつ優れた非線形性を有する。したがって、本発明の有機非線形光学材料は、高調波発生をはじめとする高速光シャッター、光双安定素子等の非線形現象を利用したオプトエレクトロニクスの分野に応用できる等の顕著な効果を有する。
一実施形態にかかる光変調素子の概略図。 図1に示した光変調素子の上面図。 他の実施形態にかかる光変調素子の概略図。 他の実施形態にかかる光変調素子の概略図。 他の実施形態にかかる光変調素子の概略図。 他の実施形態にかかる光変調素子の概略図。 他の実施形態にかかる光変調素子の概略図。 光移相器の基本構成を示す概略図。 他の実施形態にかかる光変調素子の概略図。 他の実施形態にかかる光変調素子の概略図。 他の実施形態にかかる光変調素子の概略図。
符号の説明
10…電気光学偏向器: 11…基板: 12…光導波路層: 13…屈折率制御電極
14…全面電極: 15…駆動電源: 16…入出力手段
20…マトリックス光スイッチ; 21…第1の光偏向器; 22…第1の薄膜レンズ
23…光入射手段; 24…第2の光偏向器; 25…第2の薄膜レンズ
26…光出力手段; 30…電気光学電界センサ; 31…透明基板
32…電気光学薄膜; 33…反射膜; 34…入出力手段; 35…被測定電子回路
36…フリンジ電界; 40…アナログ光伝送用変調器; 41…基板
42…マッハツェンダー導波路素子; 43…電極; 44…電極
45…入出力接続手段; 50…光ディスク用集積回路光ヘッド
51…レーザー光源; 52…スラブ導波路; 53…集光グレーティングカップラ
54…電気光学光偏向器; 55…グレーティングビームスプリッタ 56…光検出器
57…電気制御系; 58…光記録媒体ディスク; 59…基板
60…フェーズドアレイアンテナ用ビーム形成光回路; 66…第1の分岐導波路
67…受光器; 68…アンテナ素子; 71…レーザーダイオード
72…ビーム形成回路基板; 73…光分配器; 74…光周波数シフタ
75…送信装置; 76…光移相器; 77…移相制御用可変電源
78…合波導波路; 79…増幅器; 80…光移相器; 81…基板
82…導波路層; 83…電極; 84…電極; 85…位相制御用電源
90…時間遅延フェーズドアレイアンテナ; 91…レーザーダイオード
92…ビーム形成回路基板; 93…光分配器; 94…光周波数シフタ
95…送信装置; 96…光遅延回路; 97…遅延時間制御電源; 98…合波部
99…増幅器; 100…アンテナ素子; 101…分岐導波路; 102…受光器
110…波長可変光フィルタ; 111…入出力接続手段; 112…基板
113…マッハツェンダー導波路フィルタ素子; 114…電極
115…制御電源。

Claims (12)

  1. 下記一般式(1)で表わされる化合物であることを特徴とする非線形光学材料。
    Figure 2008191500
    (上記一般式(1)中、R1,R2,R3およびR4は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、置換もしくは非置換の芳香族炭化水素基、複素環基、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基または水素原子を示す。R1基とR2基との組み合わせ、およびR3基とR4基との組み合わせの少なくとも一方の組み合わせにおいては、2つの基が結合して置換もしくは非置換の炭化水素環または複素環を形成していてもよい。
    Dは、電子供与性基、または電子供与性基で置換された芳香族炭化水素基または芳香族複素環基を示す。
    Ψは、下記に示す群から選択される2価の有機基である。
    Figure 2008191500
    上記一般式中、Xは、S原子、O原子、または>N−R15を示す。
    5,R6,R7,R8,R9,R10,およびR15は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、置換もしくは非置換の芳香族炭化水素基、複素環基、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基または水素原子を示す。R5基とR6基との組み合わせ、R7基とR8基との組み合わせ、およびR9基とR10基との組み合わせの少なくとも1つの組み合わせにおいては、2つの基が結合して置換もしくは非置換の炭化水素環または複素環を形成していてもよい。
    Φは、下記に示す群から選択される2価の基および連結基からなる群から選択され、jは1〜3の整数である。
    Figure 2008191500
    上記式中、R11,R12,R13,およびR14は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、置換もしくは非置換の芳香族炭化水素基、複素環基、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基または水素原子を示す。kは1〜10の整数であり、mおよびnは0〜5の整数である。)
  2. 前記一般式(1)におけるDは、ジ置換アミノ基、環状アミノ基、ジ置換アミノ基を有する芳香族炭化水素基、環状アミノ基を有する芳香族炭化水素基、ジ置換アミノ基を有する芳香族複素環基、および環状アミノ基を有する芳香族複素環基からなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の非線形光学材料。
  3. 請求項1または2に記載の非線形光学材料とマトリックス材料とを溶媒に溶解して、非線形光学材料溶液を調製する工程と、
    前記非線形光学材料溶液を基板上に塗布して、塗膜を形成する工程と、
    前記塗膜を第1の温度で加熱して、前記溶媒を除去してポリマー膜を形成する工程と、
    前記ポリマー膜を前記第1の温度より高い第2の温度で加熱して、ポーリング処理を行なう工程とを具備することを特徴とする非線形光学ポリマー膜の形成方法。
  4. 前記マトリックス材料は、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリキノリン、ポリキノキサリン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリアセナフチレン、ポリインデン、ポリシクロブタジエン、ポリフェニレン、ポリアミド酸、ポリイミド、ポリイソイミド、ポリエーテルケトン、ポリフェニレンエーテル、ポリジシクロペンタジエン、ポリノルボルネン、それらの置換基導入体、それらの共重合体、およびそれらの前駆体からなる群から選択されることを特徴とする請求項3に記載の非線形光学ポリマー膜の形成方法。
  5. 前記マトリックス材料はポリアミド酸であり、前記非線形光学材料溶液は熱硬化促進剤をさらに含有することを特徴とする請求項4に記載の非線形光学ポリマー膜の形成方法。
  6. 前記熱硬化促進剤は、下記(A1)、(A2)および(A3)から選択されることを特徴とする請求項5に記載の非線形光学ポリマー膜の形成方法。
    (A1)水溶液中の酸解離指数pKaが0以上8以下の置換または非置換の含窒素複素環化合物
    (A2)アミノ酸化合物またはN−アシルアミノ酸化合物
    (A3)下記一般式(4)で表わされるヒドロキシ化合物
    Figure 2008191500
    (上記一般式(4)中、Ar1およびAr2は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、置換もしくは非置換の芳香族炭化水素基または芳香族複素環基を示す。Zはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、カルボキシ基、アミノカルボニル基、スルホン酸基、アミノスルホニル基、アシル基、カルボキシアルキル基、スルホアルキル基、ヒドロキシ基、メルカプト基、置換もしくは非置換のアミノ基または置換もしくは非置換のアミノアルキル基を示す。Xはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、二価のオキシ基、チオ基、カルボニル基、カルボニルアミノ基、カルボニルオキシ基、置換もしくは非置換のアミノ基、アルキル基、ポリフルオロアルキル基または単結合を示す。aは0〜3の整数を示し、bは1〜5の整数、cは0〜5の整数を示す。なお、bとcとの和は2以上である。)
  7. 前記第1の温度は50℃以上200℃以下であり、前記第2の温度は100℃以上250℃以下であることを特徴とする請求項3乃至6のいずれか1項に記載の非線形光学ポリマー膜の形成方法。
  8. 非線形光学ポリマー膜からなる非線形光学領域と、
    前記非線形光学領域を挟持する一対の電極と、
    前記一対の電極に電圧を印加する電源と、
    前記非線形光学領域に光を入射する光入射部と
    前記非線形光学領域から出射された光を受ける受光部とを具備し、
    前記非線形光学ポリマー膜は、ベースポリマーと請求項1および2のいずれか1項に記載の非線形光学材料とを含むことを特徴とする光変調素子。
  9. 前記非線形光学領域は、電圧印加により屈折率、位相、または光強度の制御が行なわれることを特徴とする請求項8に記載の光変調素子。
  10. 前記ベースポリマーは、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリキノリン、ポリキノキサリン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリアセナフチレン、ポリインデン、ポリシクロブタジエン、ポリフェニレン、ポリアミド酸、ポリイミド、ポリイソイミド、ポリエーテルケトン、ポリフェニレンエーテル、ポリジシクロペンタジエン、ポリノルボルネン、それらの置換基導入体、およびそれらの共重合体からなる群から選択されることを特徴とする請求項8または9に記載の光変調素子。
  11. 前記ベースポリマーは、ポリイミドであることを特徴とする請求項8ないし10のいずれか1項に記載の光変調素子。
  12. 前記非線形光学ポリマー膜における前記非線形光学材料の含有量は、5重量%以上50重量%以下であることを特徴とする請求項8ないし11のいずれか1項に記載の光変調素子。
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