JP2008190006A - ワイヤー状の銀粒子およびその合成方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】銀化合物の添加量に対して溶媒の使用量を減らしても、細径であって、アスペクト比の大きなワイヤー状銀粒子を効率的に且つ、選択的に合成する方法を提供すること。
【解決手段】アルコール系化合物と塩化白金とを含む溶液(A)に、少なくともアルコール系化合物、硝酸銀、ポリビニルピロリドンとを含む溶液(B)を滴下させることにより、硝酸銀を還元してワイヤー状の銀粒子を合成する方法において、反応中に副生する窒素酸化物を反応系外に除去しながら合成することによって、溶媒の使用量を減らしても選択的にワイヤー状の銀粒子を得られることを見出した。
【選択図】図1

Description

本発明は、ワイヤー状の銀粒子の合成方法に関する。
ワイヤー状の金属粒子は、エレクトロニクス分野において配線材料、導電性ペースト、電極材料、センサー、液晶表示素子、ナノ磁石、電磁波シールド、光学材料として、その他に環境触媒、燃料電池用高機能触媒、医薬品などとして近年最も注目を浴びている材料のひとつである。そのなかでも銀のワイヤー状粒子は銀の電気伝導度が高いことから様々な分野において応用が期待されている。
ワイヤー状の銀粒子の合成方法として、非特許文献1、2には、太さが数十nmで、アスペクト比が100程度のワイヤー状粒子の合成法が開示されている。しかしながら、上記方法はいずれも、銀化合物/溶媒の重量比が1/250〜1/1000程度であって、生産装置上からも、生成した銀粒子の取り出しの上からも非常に生産性が低いという問題があった。
また特許文献1には、1,3−ブタンジオールと分散剤との混合溶液に水溶性銀化合物の水溶液を添加し、該銀化合物を還元して非凝集、単分散の銀粒子の合成方法が開示されている。該特許文献には、溶媒の使用量を減らした処方が開示されているが、得られる銀粒子の径が比較的太く、長さも5μm程度であり、径が細く、アスペクト比が大きなワイヤー状の銀粒子を得ることが困難であった。
Nano Letters 2002,2,165 Advanced Functional Material 2004,14,183 特開2005−54223号公報
本発明は、上記従来技術の有する問題を鑑み、銀化合物の添加量に対して溶媒の使用量を減らしても、利用価値がある細径であって、アスペクト比の大きなワイヤー状銀粒子を効率的に且つ、選択的に合成する方法を提供することを目的としている。
本発明者は、ワイヤー状の銀粒子を合成する方法に関して鋭意研究を重ねた結果、硝酸銀を化学的に還元させる銀粒子の合成方法において、反応時に副生する窒素酸化物を除去しながら合成することによって、溶媒の使用量を減らしても選択的にワイヤー状の銀粒子を得られることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明によれば、以下の構成からなるワイヤー状の銀粒子の製造方法が提供される。
(1)アルコール系化合物と塩化白金とを含む溶液(A)に、少なくともアルコール系化合物、硝酸銀、ポリビニルピロリドンとを含む溶液(B)を滴下させることにより、硝酸銀を還元してワイヤー状の銀粒子を合成する方法において、反応中に副生する窒素酸化物を反応系外に除去しながら合成することを特徴とするワイヤー状銀粒子の製造方法。
(2)硝酸銀と全アルコール系化合物の重量比が1/20〜1/150であることを特徴とする(1)に記載のワイヤー状銀粒子の製造方法。
また本発明によれば、上記(1)または(2)記載された方法で合成されることによって、長軸の長さLが5〜150μm、短軸の長さφが20〜150nmのワイヤー状の銀粒子が提供される。
本発明によれば、溶媒の使用量を減らしても、球状又は擬球状の銀粒子が混在せず、長軸の長さLが5〜150μmであって、短軸の長さφが20〜150nmのワイヤー状の銀粒子を選択的に合成することが出来る。また、合成に使用する溶媒量を減じる事により、生産性にも優れる事を特徴とする。
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
本明細書中で使用される「ワイヤー状」とは、長軸の長さLが5〜150μmであって、短軸の長さφが20〜150nmの形状を意味するものである。なお、「ワイヤー状」の銀粒子は、長軸の長さL及び短軸の長さφが前記範囲内であれば、長軸の長さLや短軸の長さφが同等のもののみから構成されていても、長軸の長さLや短軸の長さφが異なるものが混在していても差し支えない。
本発明は、アルコール系化合物によって硝酸銀を還元してワイヤー状の銀粒子を合成する方法において、反応中に副生する窒素酸化物を反応系外に除去しながら合成することを特徴とするワイヤー状の金属粒子の合成方法である。
硝酸銀を化学的に還元させてワイヤー状の銀粒子を合成すると、反応時の副生成物として窒素酸化物が生じる。窒素酸化物は使用する溶媒量が多い場合はそれほど影響はないが、使用する溶媒量が少なくなるとその存在が無視できなくなる。すなわち、溶媒中の窒素酸化物の濃度が高くなることにより、還元された銀がワイヤー状に成長することを阻害したり、銀が窒素酸化物によって酸化されて元の硝酸銀に戻る逆反応が起こったりする。そこで、本発明においては、副生成物として生じる窒素酸化物を反応系外に除去することにより、使用する溶媒量を少なくしても、安定して収率良くワイヤー状の銀粒子を合成することを可能にしたのである。
窒素酸化物を反応系外に除去する方法は種々考えられ、本発明では特に限定されないが、特に減圧下において合成する方法が好適に利用できる。例えば、従来、無用な酸化を防止するため、窒素ガス(N)および不活性ガス(Ar)等で反応系を置換したり、反応中にこれらのガスでパージしたりする事は一般的に行われてきたが、この様な方法では硝酸銀の還元により発生する窒素酸化物を十分に除去する事は困難である。本発明においては、僅かな窒素ガス(N)でパージしながら反応系内を減圧にすることで、窒素酸化物を除去し、気化したアルコール系化合物については、還流により凝縮させて反応系内に戻し、反応系内のアルコール系化合物量を一定に保った状態で合成される。
減圧の程度は、反応系の温度及び使用する溶媒により一義的に決められるものではなく、減圧度は高いほうが好ましいが、その反応温度下においてアルコール系化合物が沸騰しない程度に減圧度を調整する必要がある。アルコール系化合物が沸騰してしまうと反応系が安定せず、銀粒子が球状又は擬球状になり、目的のワイヤー状の銀粒子を得ることができなくなる。また、反応系を沸騰させた状態で反応させると、気化したアルコール系化合物の凝縮が完全には起こらずに、アルコール系化合物量が減ってしまうおそれもある。減圧の程度は、例えば、反応温度160℃でアルコール系化合物としてエチレングリコールを使用した場合、−20〜−40KPaの減圧が好ましい。
反応系外から窒素酸化物が除去されたか否かは、窒素酸化物が一酸化窒素(NO)の場合は無色透明であるが、二酸化窒素(NO)となった場合、黒褐色に変色するため、酸素存在下での反応系の変色を見ることによって窒素酸化物の存在が確認できる。また、系外から取り出された気体を水酸化カリウム(KOH)にて中和し(KNO)とし、滴定することにより反応系外に取り出されている窒素酸化物を定量する事も可能である。
本発明に使用されるアルコール系化合物は、溶媒の役割と硝酸銀を還元する役割を果たすものである。アルコール系化合物として具体的には、種々のジオール、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオールや、それらのモノアルキルエーテル、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、その他の脂肪族アルコールとその異性体などが挙げられる。アルコール系化合物は反応させる温度等により適宜選択される。アルコール系化合物は、単独で使用しても、二種以上混合して使用しても良い。
本発明において、硝酸銀と全アルコール系化合物の重量比(硝酸銀/全アルコール系化合物)が1/20〜1/150であることが好ましい。重量比が1/20を超えると硝酸銀のアルコール系化合物への溶解性が悪化し均一に分散され難くなり、ロッド状粒子を得る事ができなくなる。また、重量比が1/150未満であると、ワイヤー状の銀粒子が得られるが、多量の溶媒を必要とすることから、経済性が悪く、また、粒子の合成効率に劣るものとなり、好ましいものではない。
本発明の塩化白金は合成段階で銀粒子が成長する際の核生成剤としての役割を果たす。塩化白金を用いることにより銀粒子の核が生成され、これを起点として速やかにワイヤー状に成長が進行する。塩化白金はアルコール系化合物100重量部に対して、0.001〜0.0045重量部含有されることが好ましい。アルコール系化合物に対して塩化白金の添加量が0.001重量部より少ないと核生成が不十分になり、得られる銀粒子に球状又は擬球状微粒子が混在するおそれがある。また0.0045重量部より多いとワイヤー状の銀粒子の二次凝集が起こりやすい。
また、塩化白金は無水物がよく、好ましくは塩化白金(PtCl)である。水和物を含有すると硝酸銀の溶解性が増して、還元の妨げとなり、得られる銀粒子の形状が不均一になるおそれがある。
ポリビニルピロリドンは、硝酸銀が還元されたときに銀粒子に吸着し、選択的に銀粒子をワイヤー状に成長させる働きを有するものである。
ポリビニルピロリドンの添加量は硝酸銀100重量部に対して50〜200重量部であることが好ましく、50重量部より少ないと球状又は擬球状微粒子が混在して、選択的にワイヤー状の銀粒子を得ることが困難となる。また、200重量部より多いとワイヤー状への成長の妨げとなり微粒子化されやすく、また得られるワイヤー状の銀粒子が凝集しやすいという問題がある。
本発明のワイヤー状の銀粒子の合成方法においては、反応系を予め加熱しておくことが好ましく、銀粒子を合成する際も温度を一定に保っておくことが好ましい。加熱温度はアルコール系化合物の沸点以下であり、好ましくはアルコール系化合物が高い還元作用を示す60〜180℃程度であり、使用するアルコール系化合物により適宜決定される。
(実施例1)
1Lの丸底フラスコにエチレングリコール250mL加え、155℃まで昇温した中に塩化白金16mgをエチレングリコール45mLに溶解した液を加えて溶液(A)とし、硝酸銀7.5gとポリビニルピロリドン10gをエチレングリコール375mLに溶解させて溶液(B)とした。僅かな窒素ガス(N)でパージさせながら、反応系を−30KPaの減圧にした状態で、溶液(A)に溶液(B)を30分かけて滴下した。さらに滴下終了後も減圧を維持した状態で、160℃で1時間加熱して反応を終了させた。硝酸銀/全アルコール系化合物は1/90.0である。
反応系外から窒素酸化物が除去されたか否かは、減圧により、反応系外から取り出された気体を水酸化カリウム(KOH)にて中和し、生成されたKNOを定性分析することにより確かに窒素酸化物が反応系外に取り出されていることを確認した。
得られた混合溶液は、遠心分離をする事により、銀粒子を単離した。単離した銀粒子を、SEM(走査型電子顕微鏡)観察する事により、任意の50本の銀粒子の長軸の長さLおよび短軸の長さφをスケールで測長し、その平均値およびその分散を算出した。
その結果、長軸の平均長さL=15.3μm、短軸の平均長さφ=110nmのワイヤー状であり、σL=0.8、σφ=0.95であった。さらに、球状の粒子はほとんど生成されていなかった(図1参照)。
(実施例2)
1Lの丸底フラスコにエチレングリコール125mL及びジエチレングリコールモノメチルエーテル125mLを加え、155℃まで昇温した中に塩化白金16mgをエチレングリコール45mLに溶解した液を加えて溶液(A)とし、硝酸銀7.5gとポリビニルピロリドン15gをエチレングリコール225mL及びジエチレングリコールモノメチルエーテル150mLに溶解させて溶液(B)とした。反応系を−30KPaの減圧化にした状態で、溶液(A)に溶液(B)を30分かけて滴下した。さらに滴下終了後も減圧を維持した状態で、160℃で1時間加熱して反応を終了させた。硝酸銀/全アルコール系化合物は1/89.3である。
得られた混合溶液は、遠心分離をする事により、銀粒子を単離した。
得られた銀粒子を実施例1と同様にSEM観察した結果、長軸の平均長さL=15.9μm、短軸の平均長さφ=100nmのワイヤー状であり、σL=0.93、σφ=0.92であった。さらに、球状の粒子はほとんど生成されていなかった。
(比較例1)
常圧で反応させた以外は実施例1と同様の方法で合成した。
得られた銀粒子を実施例1と同様にSEM観察した結果、長軸の平均長さL=3.9μmで短軸の平均長さφ=280nm、σL=0.52、σφ=0.34であって、長軸の長さLが短く、短軸の長さφが太く、また、長さが不揃いなワイヤー状粒子であった。さらに、僅かであるが球状の粒子の存在も確認された。
反応系内に窒素酸化物が残留していたことは、丸底フラスコ内が褐色に変色したことでも確認できたが、反応系外から取り出された気体を水酸化カリウム(KOH)にて中和し、生成されたKNOを定性分析したところ、実施例1と比較してごく僅かなKNOしか反応系外に取り出されておらず、ほとんどの窒素酸化物が反応系内に残留していたことが確認された。
(比較例2)
反応系を−65KPaの減圧化にし、エチレングリコールが沸騰した状態で反応させた以外は実施例1と同様の方法で合成した。
得られた銀粒子を実施例1と同様にSEM観察した結果、銀粒子は球状であって、ワイヤー状に成長したのものはほとんど確認できなかった。
また、アルコール系化合物量も減少していた。
(比較例3)
溶液(B)に塩化白金を添加しなかった以外は、実施例1と同様の条件で合成した。
得られた銀粒子を実施例1と同様にSEM観察した結果、銀粒子は球状であって、ワイヤー状に成長したのものはほとんど確認できなかった。
(比較例4)
溶液(B)にポリビニルピロリドンを添加しなかった以外は、実施例1と同様の条件で合成した。
得られた銀粒子を実施例1と同様にSEM観察した結果、球状の粒子のみが作成され、ワイヤー状に成長したものは確認できなかった。
(実験例1)
3Lの丸底フラスコにエチレングリコール500mL加え、155℃まで昇温した中に塩化白金16mgをエチレングリコール45mLに溶解した液を加えて溶液(A)とし、硝酸銀7.5gとポリビニルピロリドン10gをエチレングリコール750mLに溶解させて溶液(B)とした。常圧下で溶液(A)に溶液(B)を90分かけてゆっくりと滴下した。さらに滴下終了後も160℃で3時間加熱して反応を終了させた。硝酸銀/全アルコール系化合物は1/172.6である。
得られた銀粒子を実施例1と同様にSEM観察した結果、長軸の平均長さL=10.3μm、短軸の平均長さφ=140nmのワイヤー状であり、σL=0.7、σφ=0.85であった。さらに、球状の粒子はほとんど生成されていなかった。
ただし、使用する硝酸銀に対してアルコール系化合物を多量に使うため、対投入材料量に対する収率が悪い事と、合成に時間が掛かることが欠点としてあげられる。
実施例1、2から明らかなように、アルコール系化合物と塩化白金とを含む溶液(A)に、少なくともアルコール系化合物と硝酸銀とポリビニルピロリドンとを含む溶液(B)を滴下させる合成方法において、減圧下において反応させることによって、反応時に副生する窒素酸化物を反応系外に除去しながら銀粒子を合成することができ、長さが5μm〜150μmであって径が20〜150nmであるワイヤー状の銀粒子を選択的に合成する事が可能となる。
さらに、減圧下において、反応時に副生する窒素酸化物を除去しながら合成を行ったので、硝酸銀の添加量に対して溶媒の使用量が少なくても効率的に合成する事ができるものである。
比較例1は、減圧せずに使用する溶媒量を減らして合成を行ったため、比較例2は溶媒が沸騰する程度まで減圧したため、比較例3は塩化白金を添加しなかったため、比較例4はポリビニルピロリドンを添加しなかったため、目的とする長さが5μm〜150μmであって径が20〜150nmであるワイヤー状の銀粒子を選択的に合成することができなかった。
さらに、実験例1では、所望するワイヤー状の銀粒子が得られるものの、多量の溶媒を使用しているため、投入材料に対して収率が悪く、また、反応に非常に時間がかかり、経済的に優れているものとは言えない。
実施例1で得た銀粒子の電子顕微鏡写真

Claims (3)

  1. アルコール系化合物と塩化白金とを含む溶液(A)に、少なくともアルコール系化合物、硝酸銀、ポリビニルピロリドンとを含む溶液(B)を滴下させることにより、硝酸銀を還元してワイヤー状の銀粒子を合成する方法において、反応中に副生する窒素酸化物を反応系外に除去しながら合成することを特徴とするワイヤー状の銀粒子の合成方法。
  2. 硝酸銀と全アルコール系化合物の重量比が1/20〜1/150であることを特徴とする請求項1に記載のワイヤー状の銀粒子の合成方法。
  3. 請求項1又は2に記載された方法で合成される、長軸の長さLが5〜150μm、短軸の長さφが20〜150nmのワイヤー状の銀粒子。
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