以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
<第1実施形態>
第1実施形態について説明する。図1は、第1実施形態に係る流体噴射装置の一例を示す斜視図、図2は、平面図である。本実施形態においては、流体噴射装置が、インク等の液体(液状体)を噴射する液体噴射装置(液状体噴射装置)である場合を例にして説明する。本実施形態においては、流体噴射装置が、記録ヘッドの噴射口から記録媒体にインクを噴射して、その記録媒体に対する記録を実行するインクジェット式記録装置である場合を例にして説明する。本実施形態においては、インクジェット式記録装置の一例として、記録媒体である記録紙にインクの滴を吐出(噴射)して、その記録紙に対する記録を実行するインクジェットプリンタについて説明する。
図1及び図2において、インクジェットプリンタ1は、インクで記録紙に対する記録を実行する記録ユニット2と、記録紙を搬送する記録紙搬送機構3とを備えている。
記録ユニット2は、インクを噴射する記録ヘッド4と、記録ヘッド4を支持しながら移動可能なキャリッジ5と、記録ヘッド4及びキャリッジ5と対向する位置に配置され、インクが噴射される記録紙を支持するプラテン6とを含む。
また、インクジェットプリンタ1は、キャリッジ5を移動するモータ等を含むキャリッジ駆動装置7と、キャリッジ5の移動を案内するキャリッジガイド部材とを備えている。キャリッジ5は、キャリッジガイド部材に案内されながら、キャリッジ駆動装置7によって、主走査方向に移動する。記録紙は、記録紙搬送機構3により、記録ユニット2に対して、主走査方向と交差する副走査方向に移動する。
また、インクジェットプリンタ1は、記録ヘッド4の噴射状態、及び記録ヘッド4から噴射されるインクを検出可能な検出システム8を備えている。本実施形態の検出システム8は、記録ヘッド4から噴射されたインクの粘度に関する情報を検出可能である。
インクジェットプリンタ1は、記録紙を収容する給紙カセット9を備えている。給紙カセット9は、インクジェットプリンタ1の本体の背面側に、着脱可能に設けられている。給紙カセット9は、積層された複数の記録紙を収容可能である。
記録紙搬送機構3は、給紙カセット9の記録紙を搬出するための給紙ローラと、給紙ローラを駆動するモータ等を含む給紙ローラ駆動装置10と、記録紙の移動を案内する記録紙ガイド部材11と、給紙ローラに対して搬送方向の下流側に配置されている搬送ローラと、搬送ローラを駆動する搬送ローラ駆動装置と、記録ユニット2に対して搬送方向の下流側に配置されている排出ローラとを有している。
給紙ローラは、給紙カセット9に積層されている複数の記録紙のうち、最も上側に配置されている記録紙をピックアップし、給紙カセット9より搬出可能である。給紙カセット9の記録紙は、記録紙ガイド部材11に案内されながら、給紙ローラ駆動装置10によって駆動する給紙ローラによって、搬送ローラに送られる。搬送ローラに送られた記録紙は、搬送ローラ駆動装置によって駆動する搬送ローラにより、搬送方向の下流側に配置された記録ユニット2に搬送される。
記録ユニット2のプラテン6は、記録ヘッド4及びキャリッジ5と対向する位置に配置され、記録紙の下面を支持する。記録ヘッド4及びキャリッジ5は、プラテン6の上方に配置されている。記録紙搬送機構3は、記録ユニット2による記録動作と連動して、記録紙を副走査方向に搬送する。記録ユニット2で記録された記録紙は、排出ローラを含む記録搬送機構3によって、インクジェットプリンタ1の正面側から排出される。
また、インクジェットプリンタ1は、インクカートリッジのインクをキャリッジ5の記録ヘッド4に供給するインク供給チューブ12を備えている。インクカートリッジのインクは、インク供給針を介してインク供給路に供給され、そのインク供給路より、インク供給チューブ12を介して、キャリッジ5の記録ヘッド4に供給される。
また、インクジェットプリンタ1は、記録ヘッド4をメンテナンス可能なメンテナンス装置13を備えている。メンテナンス装置13は、キャッピング装置14及びワイピング装置15を含む。メンテナンス装置13は、キャリッジ5及び記録ヘッド4のホームポジションに配置されている。ホームポジションは、キャリッジ5の移動領域内であって、記録ユニット2による記録動作が実行される記録領域の外側の端部領域に設定されている。電源オフ時、あるいは長時間に亘って記録動作が実行されない場合、キャリッジ5及び記録ヘッド4は、ホームポジションに配置される。
本実施形態においては、記録ヘッド4の噴射状態、及び記録ヘッド4から噴射されるインクを検出可能な検出システム8の少なくとも一部は、メンテナンス装置13(キャッピング装置14)に配置されている。
図3は、記録ヘッド4の一部を示す断面図である。記録ヘッド4は、インクを噴射する噴射口16が形成された噴射面17を備えている。本実施形態においては、噴射口16は、インクの滴を吐出可能である。噴射口16は、噴射面17において、所定方向に所定間隔で複数形成されている。
記録ヘッド4は、ヘッド本体18と、振動板19、流路基板20、及びノズル基板21を含む流路形成ユニット22とを備えている。噴射面17は、ノズル基板21の下面によって形成されている。噴射口16は、ノズル基板21に形成されている。流路形成ユニット22は、振動板19、流路基板20、及びノズル基板21を積層し、接着剤等で接合して一体にしたものである。
記録ヘッド4は、ヘッド本体18の内部に形成された収容空間23と、収容空間23に配置された駆動ユニット24とを備えている。駆動ユニット24は、複数の圧電素子25と、圧電素子25の上端を支持する固定部材26と、駆動信号を圧電素子25に供給する柔軟なケーブル27とを備えている。圧電素子25は、複数の噴射口16のそれぞれに対応するように設けられている。
また、記録ヘッド4は、ヘッド本体18の内部に形成され、インクカートリッジからインク供給チューブ12を介して供給されたインクが流れる内部流路28と、振動板19、流路基板20、及びノズル基板21を含む流路形成ユニット22によって形成され、内部流路28と接続された共通インク室29と、流路形成ユニット22によって形成され、共通インク室29と接続されたインク供給口30と、流路形成ユニット22によって形成され、インク供給口30と接続された圧力室31とを備えている。圧力室31は、複数の噴射口16に対応するように複数設けられている。複数の噴射口16のそれぞれは、複数の圧力室31のそれぞれに接続されている。
ヘッド本体18は、合成樹脂で形成されている。振動板19は、例えばステンレス鋼等の金属製の支持板上に弾性フィルムをラミネート加工したものである。振動板19の圧力室31に対応する部分には、圧電素子25の下端と接合される島部32が形成されている。振動板19の少なくとも一部は、圧電素子25の駆動に応じて弾性変形する。振動板19と内部流路28の下端近傍との間にはコンプライアンス部33が形成されている。
流路基板20は、内部流路28の下端と噴射口16とを接続する共通インク室29、インク供給口30、及び圧力室31それぞれの空間を形成するための凹部を有する。本実施形態においては、流路基板20は、シリコンを異方性エッチングすることで形成されている。
ノズル基板21は、所定方向に所定間隔(ピッチ)で形成された複数の噴射口16を有する。本実施形態のノズル基板21は、例えばステンレス鋼等の金属で形成された板状の部材である。
インクカートリッジからインク供給チューブ12を介して供給されたインクは、内部流路28の上端に流入する。内部流路28の下端は、共通インク室29に接続されており、インクカートリッジからインク供給チューブ12を介して内部流路28の上端に流入したインクは、内部流路28を流れた後、共通インク室29に供給される。共通インク室29に供給されたインクは、インク供給口30を介して、複数の圧力室31のそれぞれに分配されるように供給される。
ケーブル27を介して圧電素子25に駆動信号が入力されると、圧電素子25が伸縮する。これにより、振動板19が圧力室31に接近する方向及び離れる方向に変形(移動)する。これにより、圧力室31の容積が変化し、インクを収容した圧力室31の圧力が変動する。この圧力の変動によって、噴射口16から、インクが噴射(吐出)される。
このように、本実施形態の圧電素子(駆動素子)25は、噴射口16よりインクを噴射するために、入力される駆動信号に基づいて、噴射口16に接続された圧力室(空間)31の圧力を変動させる。
図4は、メンテナンス装置13を示す斜視図、図5は、メンテナンス装置13の内部の一部を下方から見た斜視図である。メンテナンス装置13は、キャッピング装置14、及びワイピング装置15を含む。
図4及び図5において、キャッピング装置14は、記録ヘッド4の噴射面17と対向可能なキャップ部材34を備えている。キャップ部材34は、噴射面17を覆うことができる。また、キャップ部材34は、噴射面17との間に空間を形成可能である。
また、キャッピング装置14は、ベース部材36と、ホームポジションに配置されている記録ヘッド4の噴射面17に対してキャップ部材34を接近する方向及び離れる方向に移動する駆動機構37とを備えている。駆動機構37は、例えば特開2006−272779号公報等に開示されているような、ベース部材36に搭載され、キャップ部材34を噴射面17に対して接近する方向及び離れる方向に案内しつつ移動するスライダ部材38、及びベース部材36とスライダ部材38との間に配置されるばね部材等を含む。
また、キャッピング装置14は、キャップ部材34と噴射面17との間に形成された空間の流体を吸引可能な吸引装置35を備えている。図5に示すように、キャッピング装置14は、キャップ部材34の底に接続された吸引チューブ39を備えており、吸引装置35は、吸引チューブ39に接続されている。本実施形態の吸引装置35は、例えば特開2004−314622号公報等に開示されているような、チューブポンプを含む。
図6は、吸引装置35の一例を示す図である。図6において、吸引装置35は、ローラ部材40と、チューブ部材41とを備えている。チューブ部材41は、可撓性を有し、円環状に湾曲している。チューブ部材41の両端は、同方向に引き出されるように配置されている。チューブ部材41の一端は、吸引チューブ39を介してキャップ部材34と接続され、チューブ部材41の他端は、不図示の廃インクタンクと接続されている。ローラ部材40は、チューブ部材41の円環状部41Aの内周を転がるように移動可能である。
吸引装置35は、ローラ部材40を回転可能に支持するとともに、回転軸40X周りに回転可能な回転板40Tと、回転板40Tを回転させる駆動装置とを備えている。なお、本実施形態においては、回転板40Tを回転させる駆動装置は、記録紙搬送機構3の例えば給紙ローラ駆動装置10を含み、給紙ローラ駆動装置10の動力は、吸引装置35に設けられたギアユニット10Gを介して、回転板40Tに伝達される。回転板40Tが回転することによって、ローラ部材40が公転し、チューブ部材41の円環状部40Aの内周に沿って転がる。
ローラ部材40がチューブ部材41を押し潰しながら、図6中、例えば矢印Y1方向に移動(回転)することによって、チューブ部材41内の流体(空気、インク等)が、チューブ部材41の他端側(廃インクタンク側)へ絞り出される。すなわち、ローラ部材40の回転によって、チューブ部材41内の一端側(キャップ部材側)の流体が他端側へ移動する。これにより、吸引装置35は、吸引チューブ39を介して、噴射面17とキャップ部材34との間に形成された空間を負圧にすることができる。
噴射面17とキャップ部材34との間に形成された空間を負圧にすることによって、噴射面17の噴射口16からインクを吸引したり、空間のインクを吸引チューブ39、及び吸引装置39のチューブ部材41を介して、空間の外部(廃インクタンク)に排出したりすることができる。
また、ローラ部材40をチューブ部材41から離れるように移動して、ローラ部材40でチューブ部材41を押し潰さないようにすることができる。
なお、チューブポンプの構成としては、図6に示したような、円環状に湾曲させたチューブ部材の両端を同方向に引き出して同一平面内で束ねる形式に代えて、円環状に湾曲させたチューブ部材の両端を互いに逆方向に引き出して交差させる構成を採用することもできる。また、吸引装置35としては、例えば特開2006−257928号公報に開示されているようなチューブポンプを用いることもできる。
また、図5に示すように、キャッピング装置14は、キャップ部材34の底に接続された大気開放チューブ42と、大気開放チューブ42に設けられた大気開放弁43とを備えている。大気開放弁43を開放することによって、大気開放チューブ42を介して、噴射面17とキャップ部材34との間に形成されている空間に空気を流入させることができる。したがって、吸引装置35によって、噴射面17とキャップ部材34との間に形成されている空間が負圧状態のとき、大気開放弁43を開放することによって、空間は大気開放され、その空間の負圧状態は解除される。
図4において、ワイピング装置15は、記録ヘッド4の噴射面17と対向可能なワイピング部材44を備えている。本実施形態においては、ワイピング部材44は、ベース部材36の一部に配置されている。ワイピング部材44は、キャップ部材34に対して、記録ユニット2側(記録領域側)に配置されている。ワイピング装置15は、ワイピング部材44を用いて、残留したインク等、噴射面17に付着している異物を拭き取ったり、払ったりすることができる。
インクジェットプリンタ1は、メンテナンス装置13を用いて、記録ヘッド4に対するメンテナンス処理を実行可能である。メンテナンス装置13は、記録ヘッド4の噴射特性を維持するために、記録ヘッド4と協働して、噴射口16よりインクを排出させる動作を含むメンテナンス処理を実行する。
メンテナンス処理は、噴射口16からインクをキャップ部材34に噴射するフラッシング動作、及びキャッピング装置14のキャップ部材34及び吸引装置35を用いた吸引動作の少なくとも一方を含む。また、メンテナンス処理は、ワイピング装置15を用いたワイピング処理を含む。
フラッシング動作は、記録領域において噴射口16からのインクを記録紙に供給する前に、ホームポジションにおいて、噴射口16よりインクをキャップ部材34に予め噴射(吐出)する動作を含む。これにより、噴射口16付近の粘度が増大したインクが排出され、噴射口16の噴射特性が維持又は回復される。
吸引動作は、ホームポジションにおいて、噴射面17とキャップ部材34とを対向させ、噴射面17とキャップ部材34との間に形成された空間を吸引装置35を用いて負圧にすることによって、噴射面17の噴射口16からインクを吸引する動作を含む。これにより、フラッシング動作では排出しきれなかった粘度が増大したインク、噴射口16内に侵入したゴミ、記録ヘッド4内の気泡等が、噴射口16よりインクとともに排出され、噴射口16の噴射特性が維持又は回復される。
ワイピング動作は、ホームポジションにおいて、噴射面17とワイピング部材44とを対向させ、噴射面17をワイピング部材44で払う動作を含む。これにより、噴射口16を含む噴射面17に付着している異物(残留したインクを含む)が除去され、噴射口16の噴射特性が維持又は回復される。
図7は、検出システム8を説明するための模式図である。検出システム8は、記録ヘッド4の噴射口16のインクの噴射状態、及び記録ヘッド4の噴射口16から噴射されるインクを検出可能である。また、検出システム8は、記録ヘッド4の噴射口16から噴射されたインクの粘度に関する情報を検出可能である。
図7において、インク供給チューブ12は、インクカートリッジ48と記録ヘッド4に接続されたサブタンク51とを接続しており、インクカートリッジ48からインク供給チューブ12に供給されたインクは、サブタンク51に供給される。本実施形態においては、インクカートリッジ48は、ケース部材49と、ケース部材49に収容され、可塑性材料で形成されたインクパック50とを含む。サブタンク51は、インク室52を有し、インク室52に供給されたインクは、記録ヘッド4に供給される。
図7において、検出システム8は、記録ヘッド4の噴射面17と所定のギャップを介して対向するように配置され、噴射口16から噴射されたインクが供給される検出部45を有し、噴射口16から噴射面45に向けて噴射されたインクに応じた検出信号を出力する検出装置46と、検出装置46から出力された検出信号に基づいて、噴射口16のインクの噴射状態に関する情報、及びインクの粘度に関する情報を取得する処理装置47とを備えている。
検出装置46は、検出部45と記録ヘッド4の噴射面17との間に電圧を印加する電圧印加器53と、検出部45の電圧を検出する電圧検出器54とを備えている。
本実施形態においては、検出装置46の検出部45は、ホームポジションに配置されているメンテナンス装置13(キャッピング装置14)のキャップ部材34の内側に配置されている。すなわち、本実施形態においては、メンテナンス装置13(キャッピング装置14)は、検出装置46の検出部45を含む。
キャップ部材34は、上部に開口を有するトレイ状の部材であり、エラストマー等の弾性部材で形成されている。キャップ部材34の内側には、インク吸収体55と電極部材56とが配置されている。電極部材56は、例えばステンレス鋼等の金属のメッシュ部材(格子状部材)で形成されている。検出部45は、電極部材56の上面によって形成されている。検出部45は、キャップ部材34の上端面57よりも低い位置に配置されている。上端面57は、キャップ部材34のうち噴射面17に最も近い面であって、検出部45は、噴射面17に対して上端面57よりも僅かに離れた位置に配置されている。
インク吸収体55は、インクを保持可能(吸収可能)なスポンジ状部材、あるいは多孔部材等で形成されている。本実施形態においては、インク吸収体55は、フェルトなどの不織布で形成されている。非記録中には、インク吸収体55に吸収されたインクが、噴射面17とキャップ部材34とが当接することによって形成された空間内を保湿し、噴射口16内のインクの乾燥を抑制する。なお、インクによってはインクが吸湿作用をする場合もあり、その場合、インク吸収体は無くてもよい。すなわち、インク吸収体は、必要に応じて配置される。
検出部45に供給されたインクは、電極部材56の隙間を通過して、インク吸収体55に保持(吸収)される。なお、インクが通過できれば、電極部材56はメッシュ部材でなくてもよい。また、インク吸収体55が無い場合には、電極部材56は、キャップ部材34の底面から延びるように設けられたリブに保持される。上述のように、キャップ部材34の底には、吸引チューブ39が接続されており、インク吸収体55のインクは、吸引チューブ39を介して、吸引装置35に吸引される。
電圧印加器53は、記録ヘッド4のノズル基板21の噴射面(下面)17と電極部材56の検出部(上面)45との間に電圧を印加可能な電子回路を含む。本実施形態においては、電圧印加器53は、電極部材56が正極、ノズル基板21が負極となるように、直流電源と抵抗素子とを介して、電極部材56とノズル基板21とを電気的に接続する。
上述のように、ノズル基板21はステンレス鋼等の金属で形成されており、電極部材56はステンレス鋼等の金属で形成されており、ノズル基板21及び電極部材56のそれぞれは導電性を有する。電圧印加器53は、噴射面17と検出部45との間に電圧を印加可能である。
電圧検出器54は、電極部材56の電圧信号を積分して出力する積分回路、この積分回路から出力された信号を反転増幅して出力する反転増幅回路、及びこの反転増幅回路から出力された信号をA/D変換して出力するA/D変換回路等を含む。
本実施形態においては、検出装置46は、噴射面17と検出部45との間に電界を与えて、噴射口16から検出部45にインクが移動するときの静電誘導に基づく電圧値の時間的変化を検出信号として処理装置47に出力する。処理装置47は、検出装置46の出力を演算処理可能であり、検出装置46から出力された検出信号に基づいて、噴射口16の噴射状態に関する情報、及びインクの粘度に関する情報を取得可能である。
図8は、検出装置46の検出動作の原理を説明するための模式図である。電圧印加器53によってノズル基板21の噴射面17と電極部材56の検出部45との間に電圧を印加した状態で、圧電素子25を駆動することによって、噴射口16からインクの滴が噴射(吐出)される。本実施形態においては、ノズル基板21は負極となっているため、図8(A)に示すように、ノズル基板21の一部の負電荷がインクの滴に移動し、噴射されたインクの滴は負に帯電する。噴射口16から噴射されたインクの滴が電極部材56の検出部45に近づくにつれて、静電誘導によって、検出部45では、正電荷が増加する。これにより、ノズル基板21の噴射面17と電極部材56の検出部45との間の電圧は、静電誘導によって生じる誘導電圧により、インクの滴を噴射しない状態における当初の電圧値よりも高くなる。その後、図8(B)に示すように、インクの滴が検出部45に接触すると、インクの滴の負電荷により、検出部45の正電荷が中和される。この結果、ノズル基板21の噴射面17と電極部材56の検出部45との間の電圧は、当初の電圧値を下回る。その後、ノズル基板21の噴射面17と電極部材56の検出部45との間の電圧は、当初の電圧値に戻る。
ここで、以下の説明においては、噴射面17と検出部45との間に電界を与えた状態で、噴射口16からインクを噴射していないときに検出される噴射面17と検出部45との間の電圧値(当初の電圧値)を適宜、基準値V0、と称する。
図9は、噴射面17と検出部45との間に電圧を印加してその噴射面17と検出部45との間に電界を与えた状態で、噴射口16よりインクの滴を噴射(吐出)したときの、検出装置46の電圧検出器54から出力される電圧値の時間的変化(検出信号)VTの一例を示す図である。図9において、横軸は時間、縦軸は電圧値である。
図9に示すように、検出信号VTは、第1のタイミングT1、第1のタイミングT1から第1時間D1経過後の第2のタイミングT2、及び第2のタイミングT2から第2時間D2経過後の第3のタイミングT3のそれぞれについての電圧値を含む。
第1のタイミングT1から第2のタイミングT2までにおいて電圧値は基準値V0であり、第2のタイミングT2において電圧値は変化を開始し、第3のタイミングT3において電圧値は極値(極大値)VPとなる。
図9に示す検出信号VTにおいて、第1のタイミングT1は、駆動素子25に駆動信号が入力された時である。第2のタイミングT2は、噴射口16よりインクの滴の噴射(吐出)が開始された時である。第3のタイミングT3は、噴射口16からのインクの滴が検出部45に到達(接触)した時である。
噴射口16よりインクの滴を噴射(吐出)するために、第1のタイミングT1で圧電素子25に駆動信号を入力すると、噴射口16に接続された圧力室31の圧力の変化が開始される。第1のタイミングT1で圧電素子25に駆動信号を入力した後、圧力室31の圧力が所定の値に達し、第1時間D1経過後の第2のタイミングT2に、噴射口16からのインクの滴の噴射(吐出)が開始される。換言すれば、噴射口16からのインクの滴が噴射面17から検出部45に移動する場合において、第2のタイミングT2は、インクの滴の移動が開始される瞬間である。
図8を参照して説明したように、噴射口16から噴射されるインクの滴は、負に帯電され、噴射口16よりインクの滴の噴射が開始された瞬間、すなわち、噴射口16からインクの滴が出た瞬間、電圧値は変化を開始する。
噴射口16よりインクの滴の噴射が開始された後、噴射口16から噴射されたインクの滴が電極部材56の検出部45に近づくにつれて、図8を参照して説明したように、静電誘導によって、検出部45では、正電荷が増加する。静電誘導によって生じる誘導電圧により、電圧値は、除々に増加する。そして、噴射口16からのインクの滴が検出部45に到達(接触)する第3のタイミングT3において、電圧値は極大値VPとなる。
その後、図8を参照して説明したように、インクの滴が検出部45に接触すると、インクの滴の負電荷により、検出部45の正電荷が中和される。この結果、第3のタイミングT3以降、電圧値は、除々に減少し、第3のタイミングT3から所定時間経過後の第4のタイミングにおいて、基準値V0を下回って極小値VUとなった後、基準値V0に戻る。
検出装置46の検出信号VTは、処理装置47に出力される。処理装置47は、検出装置46から出力された検出信号VTに基づいて、第1時間D1、第2時間D2、基準値V0、及び極大値VPを求める。処理装置47は、第1時間D1、第2時間D2、及び基準値V0と極値VPとの差(基準値V0に対する極大値VP)の少なくとも1つを求め、その求めた結果に基づいて、インクの粘度に関する情報を取得する。
第1時間D1、第2時間D2、及び基準値V0に対する極大値VPのそれぞれは、噴射口16から噴射されるインクの粘度に応じて変化する。
例えば、噴射口16から噴射されるインクの粘度が、初期状態のインクの粘度よりも高い場合、圧電素子25に駆動信号を入力した第1のタイミングT1の後、圧力室31の圧力が所定の値になり、噴射口16からインクの滴が噴射される瞬間の第2のタイミングT2までの第1時間D1は、長くなる。
すなわち、圧電素子25(駆動ユニット24)による所定の駆動力に基づいてインクを噴射する場合、インクの粘度が高いと、インクを噴射し難くなり、インクの粘度が低いと、インクを噴射し易くなる。圧電素子25(駆動ユニット24)による所定の駆動力に基づいてインクを噴射する場合、インクの粘度が初期状態に比べて増大していると、そのインクを噴射し難くなるので、圧電素子25に駆動信号を入力してから噴射口16よりインクが噴射されるまでの第1時間D1は、長くなる。
また、噴射口16から噴射されるインクの粘度が、初期状態のインクの粘度よりも高い場合、噴射口16よりインクの滴の噴射が開始された第2のタイミングT2の後、噴射口16からのインクが検出部45に到達する瞬間の第3のタイミングT3までの第2時間D2は、長くなる。
すなわち、圧電素子25(駆動ユニット24)による所定の駆動力に基づいてインクを噴射する場合、インクの粘度が高いと、噴射面17と検出部45との間におけるインクの移動速度(インクの滴の飛翔速度)は遅くなり、インクの粘度が低いと、インクの移動速度(インクの滴の飛翔速度)は速くなる。圧電素子25(駆動ユニット24)による所定の駆動力に基づいてインクを噴射する場合、インクの粘度が初期状態に比べて増大していると、そのインクの移動速度(インクの滴の飛翔速度)は遅くなるので、噴射口16よりインクが噴射されてから検出部45に到達するまでの第2時間D2は、長くなる。
また、噴射口16から噴射されるインクの粘度が、初期状態のインクの粘度よりも高い場合、基準値V0に対する極大値VPは、小さくなる。
すなわち、基準値V0に対する極大値VPは、噴射口16から噴射されるインクの量(1つのインクの滴の大きさ、体積)に応じて変化する。インクの滴の大きさが大きい場合、極大値VPは大きくなり、インクの滴の大きさが小さい場合、極大値VPは小さくなる。圧電素子25(駆動ユニット24)による一定の駆動力に基づいてインクを噴射する場合、インクの粘度が初期状態に比べて増大していると、そのインクを噴射し難くなるので、1つのインクの滴の大きさ(体積)が小さくなり、その結果、基準値V0に対する極大値VPは、小さくなる。
このように、本実施形態においては、噴射面17と検出部45との間に電圧を印加してその噴射面17と検出部45との間に電界を与えた状態で、噴射口16よりインクの滴を噴射することによって、検出装置46は、噴射口16から検出部45にインクが移動するときの静電誘導に基づく電圧値の時間的変化(検出信号)VTを出力することができる。
そして、処理装置47は、検出装置46から出力される検出信号VTに基づいて、具体的には、第1時間D1、第2時間D2、及び基準値V0と極大値VPとの差の少なくとも1つに基づいて、噴射口16から噴射されるインクの粘度に関する情報を取得することができる。
また、第1時間D1、第2時間D2、及び基準値V0と極大値VPとの差のみならず、例えば基準値V0と極小値VUとの差に基づいて、噴射口16から噴射されるインクの粘度に関する情報を取得することができる。上述のように、インクの粘度に応じて、噴射口16から噴射されるインクの量(1つのインクの滴の大きさ、体積)が変化する。基準値V0に対する極小値VUは、そのインクの量に応じて変化するので、基準値V0と極小値VUとの差に基づいて、噴射口16から噴射されるインクの粘度に関する情報を取得することができる。
また、噴射口16よりインクが噴射された場合には、検出装置46から出力される検出信号VTが変化するので、その検出装置46から出力される検出信号VTに基づいて、検出システム8は、記録ヘッド4の噴射口16からインクが噴射されているかどうか(噴射不良が生じているかどうか)等、噴射口16のインクの噴射状態を判断することができる。
また、噴射口16より噴射されたインクが検出部45に接触(到達)した場合には、検出装置46から出力される検出信号VTが変化するので、その検出装置46から出力される検出信号VTに基づいて、検出システム8は、記録ヘッド4の噴射口16から噴射されるインクを検出することができる。また、検出システム8は、検出信号VT(極値VP)に基づいて、噴射口16から噴射されたインクの量(インクの滴の大きさ、体積)を検出することができる。
ここで、検出装置46から出力される検出信号VTの第1時間D1、及び極値VPは、圧電素子25を含む駆動ユニット24の駆動状態(駆動力、駆動信号、駆動波形を含む)に応じても変化する。したがって、検出システム8は、駆動ユニット24の駆動状態を一定にした状態で、インクの粘度に関する情報を取得する動作を実行する。
また、検出装置46から出力される検出信号VTの第2時間D2は、噴射面17と検出部45との距離に応じても変化する。したがって、検出システム8は、噴射面17と検出部45との距離(ギャップ)を一定にした状態で、インクの粘度に関する情報を取得する動作を実行する。
すなわち、検出システム8は、インクの粘度に関する情報を取得する動作を実行する際、噴射口16よりインクを噴射するときの噴射条件を、常に同じ条件にして実行する。
図10は、インクジェットプリンタ1の電気的な構成を示すブロック図である。本実施形態におけるインクジェットプリンタ1は、インクジェットプリンタ1全体の動作を制御する制御装置58を備えている。制御装置58には、インクジェットプリンタ1の動作に関する各種情報を入力する入力装置59と、インクジェットプリンタ1の動作に関する各種情報を記憶した記憶装置60と、時間の計測を実行可能な計測装置61とが接続されている。また、制御装置58には、上述した記録紙搬送機構3、キャリッジ駆動装置7、キャッピング装置14及びワイピング装置15を含むメンテナンス装置13、及び検出システム8(検出装置46、処理装置47)等が接続されている。また、インクジェットプリンタ1は、圧電素子25を含む駆動ユニット24に入力する駆動信号を発生する駆動信号発生器62を備えている。駆動信号発生器62は、制御装置58に接続されている。
駆動信号発生器62には、記録ヘッド4の圧電素子25に入力する吐出パルスの電圧値の変化量を示すデータ、及び吐出パルスの電圧を変化させるタイミングを規定するタイミング信号が入力される。駆動信号発生器62は、入力されたデータ及びタイミング信号に基づいて、例えば、図11に示す吐出パルスDPを含む駆動信号を発生する。
図11において、吐出パルスDPは、基準電位VMから最高電位VHまで所定の勾配で電位を上昇させる第1充電要素PE1と、最高電位VHを一定時間維持する第1ホールド要素PE2と、最高電位VHから最低電位VLまで所定の勾配で電位を降下させる放電要素PE3と、最低電位VLを短い時間維持する第2ホールド要素PE4と、最低電位VLから基準電位VMまで電位を復帰させる第2充電要素PE5とを含む。噴射口16から噴射されるインクの滴の量が設計値と一致するように、吐出パルスDPのうち、最高電位VHと最低電位VLとの電位差である駆動電圧VDが設定される。なお、図11に示す吐出パルスDPは一例であり、種々の波形のものを用いることができる。
駆動信号発生器62より吐出パルスDPが圧電素子25に入力されると、噴射口16よりインクの滴が吐出される。第1充電要素PE1が供給されると、圧電素子25が収縮して圧力室31が膨張する。この圧力室31の膨張状態が短時間維持された後、放電要素PE3が供給されて圧電素子25が急激に伸長する。これに伴って、圧力室31の容積が基準容積(圧電素子25に基準電位VEを印加したときの圧力室31の容積)以下に収縮し、噴射口16に露出したメニスカスが外側に向けて急激に加圧される。これにより、所定量のインクの滴が噴射口16から吐出される。その後、第2ホールド要素PE4、及び第2充電要素PE5が圧電素子25に順次供給され、インクの滴の吐出に伴うメニスカスの振動を短時間で収束させるように、圧力室31が基準容積に復帰する。
次に、キャッピング装置14の動作の一例について説明する。図12は、キャッピング装置14が吸引動作を実行している状態を示す図である。図12において、キャッピング装置14は、記録ヘッド4の噴射面17とキャップ部材34との間に空間を形成し、その空間を吸引装置35を用いて負圧にすることによって、噴射面17の噴射口16からインクを吸引し、排出する。本実施形態においては、キャッピング装置14は、キャップ部材34の上端面57と噴射面17とを接触させた状態で吸引動作を実行しているが、上端面57と噴射面17との間に微小な隙間が形成されていてもよい。
吸引装置35の吸引動作に伴って噴射口16から排出されたインクは、電極部材56の検出部(上面)45に供給され、その電極部材56の隙間を通過して、インク吸収体55に保持(吸収)される。キャップ部材34の底には、吸引チューブ39と接続される吸引口39Mが形成されており、インク吸収体55のインクは、吸引口39M及び吸引チューブ39を介して、吸引装置35に吸引される。
なお、噴射口16が複数存在する場合には、キャッピング装置14による吸引動作を実行することによって、複数の噴射口16のそれぞれからインクが排出される。
吸引装置35による吸引動作が終了した後、噴射面17と上端面57とを離す前に、大気開放弁43が開放され、噴射面17とキャップ部材34との間に形成されている空間が大気開放される。キャップ部材34の底には、大気開放チューブ42に接続された大気開放口42Mが形成されており、大気開放弁43が開放されることによって、噴射面17とキャップ部材34との間の空間に空気が流入し、空間が大気開放される。そして、空間が大気開放された後、キャッピング装置14は、噴射面17に対して上端面57を離す。噴射面17と上端面57とを離す前に、噴射面17とキャップ部材34との間の空間を大気開放することによって、噴射口16のインクの界面(メニスカス)の状態を維持できる。
噴射面17と所定のギャップを介して対向するようにキャップ部材34に配置されている検出部45を配置し、検出装置46の電圧印加器53を用いて検出部45と噴射面17との間に電圧を印加した状態で、キャッピング装置14による吸引動作を実行することによって、検出装置46の電圧検出器54は、吸引装置35の吸引動作に伴って噴射口16から排出されるインクに応じた検出信号を出力する。
検出装置46は、噴射面17と検出部45との間に電界を与えて、噴射口16から検出部45にインクが移動するときの静電誘導に基づく電圧値の時間的変化を検出信号として処理装置47に出力する。
図13は、噴射面17と検出部45との間に電圧を印加してその噴射面17と検出部45との間に電界を与えた状態で、吸引装置35を用いて噴射口16よりインクを吸引して、噴射口16よりインクを排出させたときの、検出装置46の電圧検出器54から出力される電圧値の時間的変化(検出信号)VCの一例を示す図である。図13において、横軸は時間、縦軸は電圧値である。
図13に示すように、検出信号VCは、第4のタイミングT4、及び第4のタイミングT4から第3時間D3経過後の第5のタイミングT5のそれぞれについての電圧値を含む。
第4のタイミングT4になるまで電圧値は基準値V0であり、第4のタイミングT4において電圧値は変化を開始し、第5のタイミングT5において電圧値は極値(極大値)VPCとなる。
図13に示す検出信号VCにおいて、第4のタイミングT4は、吸引装置35の吸引動作に伴って噴射口16からインクの排出が開始された時である。第5のタイミングT5は、噴射口16からのインクが検出部45に到達(接触)した時である。
噴射口16からインクを排出するために、吸引装置35の駆動が開始されると、所定時間経過後に、噴射面17とキャップ部材34との間の空間が所定の負圧状態に達し、噴射口16からのインクの排出が開始される。すなわち、吸引装置35の駆動が開始されてから所定時間経過後の第4のタイミングT4に、噴射口16からのインクの排出が開始される。換言すれば、噴射口16からのインクが噴射面17から検出部45に移動する場合において、第4のタイミングT4は、インクの移動が開始される瞬間である。
図8を参照して説明したように、噴射口16から排出されるインクは、負に帯電され、噴射口16からインクの排出が開始された瞬間、すなわち、噴射口16からインクが出た瞬間、電圧値は変化を開始する。
噴射口16からのインクの排出が開始された後、噴射口16から排出されたインクが電極部材56の検出部45に近づくにつれて、図8を参照して説明したように、静電誘導によって、検出部45では、正電荷が増加する。静電誘導によって生じる誘導電圧により、電圧値は、除々に増加する。そして、噴射口16からのインクが検出部45に到達(接触)する第5のタイミングT5において、電圧値は極大値VPCとなる。
その後、図8を参照して説明したように、インクの滴が検出部45に接触すると、インクの滴の負電荷により、検出部45の正電荷が中和される。この結果、第5のタイミングT5以降、電圧値は、除々に減少し、基準値V0を下回る。吸引動作によって噴射口16からのインクが連続的に検出部45に供給される場合には、第5のタイミングT5以降の検出信号は、図13に示したようなものとなる。
このように、本実施形態においては、検出装置46(電圧検出器54)は、吸引装置35の吸引動作に伴って噴射口16からインクの排出が開始されるときに所定信号を出力する。上述のように、噴射口16からインクの排出が開始されるときの所定信号は、第4のタイミングT4における電圧値の変化を含む。
図14は、吸引装置35の動作特性の一例を示す図である。横軸は、吸引装置35の駆動が開始されてからの経過時間、縦軸は、噴射口16から排出されるインクの流速を示す。本実施形態においては、吸引装置35はチューブポンプを含み、吸引装置35の駆動が開始されてからの経過時間が増すにつれて、その駆動量が除々に増し、やがて定常状態に到達する。また、吸引装置35の駆動が開始されてからの経過時間が増すにつれて、噴射面17とキャップ部材34との間の空間の圧力が除々に低下し、やがて定常状態に達する。圧力の低下に伴って、噴射口16から排出されるインクの流速は上昇し、やがて定常状態に達する。
噴射口16からインクを排出するために、基準時間C0において、吸引装置35の駆動が開始されると、基準時間C0から所定時間経過後の第4のタイミングT4において、噴射面17とキャップ部材34との間の空間が所定の圧力(負圧状態)に達し、噴射口16からインクの排出が開始される。吸引装置35は、吸引開始状態となる。その後、吸引装置35の駆動が開始されてからの経過時間が増すにつれて、噴射面17とキャップ部材34との間の空間の圧力が除々に低下し、噴射口16から排出されるインクの流速は除々に上昇する。吸引装置35は、単位時間当たりの吸引量が漸次増大される過渡状態となる。やがて、噴射面17とキャップ部材34との間の空間の圧力(負圧状態)は、定常状態となり、噴射口16から排出されるインクの流速も定常状態となる。吸引装置35は、単位時間当たりの吸引量が所定値に維持される定常状態に達する。
本実施形態においては、制御装置58は、噴射口16より排出するインクの排出量が互いに異なる複数のモードで、キャッピング装置14による吸引動作を実行する。制御装置58は、噴射口16のインクの噴射状態に関する情報、処理装置47で取得したインクの粘度に関する情報などに基づいて、複数のモードから特定のモードを選択し、その選択したモードで吸引動作を実行するように、吸引装置35を含むキャッピング装置14を制御する。
本実施形態においては、制御装置58は、過渡状態の所定のタイミングCL1において吸引装置35の駆動を停止する第1モード、及び定常状態に達する所定のタイミングCL2まで吸引装置35の駆動を継続する第2モードの少なくとも一方を実行可能である。第1モードが選択された場合、吸引装置35は、例えば1.5gのインクを吸引する。第2モードが選択された場合、吸引装置35は、例えば2.5gのインクを吸引する。
本実施形態においては、制御装置58は、吸引装置35の吸引動作に伴って噴射口16からインクの排出が開始される第4のタイミングT4に対応する所定信号(電圧値の変化)が検出装置46から出力されたときの吸引装置35の状態を基準として、噴射口16から所定量のインクが排出されるように、吸引装置35の駆動時間TDを設定する。なお、ポンプの回転数等、吸引装置35の駆動量が設定されてもよい。
例えば、第1モードが選択された場合、検出装置46から所定信号が出力されたときの吸引装置35の状態を基準として、噴射口16から所定量(ここでは1.5g)のインクが排出されるように、吸引装置35の駆動時間TDが設定される。
こうすることにより、例えばインクジェットプリンタ1の機体間において、吸引装置35の吸引能力にばらつきがあったり、吸引装置35からキャップ部材34までの流路の容積にばらつきがあったりした場合でも、インクの無駄な消費を抑制し、所定量のインクを吸引して、噴射口16の良好な噴射状態を維持できる。また、本実施形態においては、吸引装置35は、チューブポンプを含み、例えばローラ部材40とチューブ部材41との接触状態が、吸引動作毎に変わってしまったり、ローラ部材40の回転状態が、吸引動作毎に変わってしまったりする可能性がある。その場合、同一の機体であっても、吸引動作毎に、吸引能力が変わってしまうこととなる。本実施形態によれば、このような場合でも、インクの無駄な消費を抑制し、所定量のインクを吸引できる。
例えば、図15に示す模式図のように、吸引装置35が第1動作特性DL1と第2動作特性DL2とを示す場合について考える。第1動作特性DL1において基準時間C0からタイミングT4に到達するまでの時間は、第2動作特性DL2において基準時間C0からタイミングT4’に到達するまでの時間よりも短い。このような吸引装置35を用いて、第1モードで吸引動作を実行する場合、第1動作特性DL1及び第2動作特性CL2のそれぞれにおいて、タイミングT4、T4’での状態を基準として、各駆動時間TDを設定することで、第1動作特性D1での吸引量(図15中、エリアA1に相当)と、第2動作特性D2での吸引量(図15中、エリアA2に相当)とをほぼ同じにすることができる。このように、実際に噴射口16からインクが排出され始めるタイミングT4を検出装置46で検出し、そのタイミングT4を基準として、吸引装置35の駆動時間TDを設定することによって、吸引装置35の動作特性によらずに、所定量のインクを吸引できる。
次に、上述の構成を有するインクジェットプリンタ1の動作の一例について、主に検出システム8及びメンテナンス装置13の動作を中心にして、図16のフローチャート図を参照しながら説明する。
所定のタイミングで、制御装置58は、キャッピング装置14を用いた吸引動作の開始を指令する(ステップSA1)。図12等を参照して説明したように、制御装置58は、ホームポジションにおいて、噴射面17とキャップ部材34とを対向させて、噴射面17とキャップ部材34との間に空間を形成する(ステップSA2)。そして、制御装置58は、吸引装置35の駆動を開始する(ステップSA3)。吸引装置35の吸引動作に伴って、噴射口16からインクが排出される。検出システム8は、噴射口16からインクの排出が開始されるときの状態に応じた検出信号を出力する。制御装置58は、検出システム8から出力される検出信号に基づいて、噴射口16からインクの排出が開始されたタイミングT4を検出する(ステップSA4)。制御装置58は、予め指定されているモード(メンテナンス情報)に基づいて、所定量(例えば1.5g)のインクを排出させるために、タイミングT4から所定時間TDだけ、吸引装置35を駆動させた後、その吸引装置35の駆動を停止する(ステップSA5)。その後、制御装置58は、噴射面17とキャップ部材34との間の空間を大気開放する(ステップSA6)。そして、制御装置58は、ワイピング装置15を用いたワイピング動作を実行する(ステップSA7)。以上により、吸引動作及びワイピング動作を含むメンテナンス動作が終了する(ステップSA8)。
その後、制御装置58は、記録領域において、記録ユニット2を用いて記録紙に対する記録動作を開始する。
以上説明したように、本実施形態によれば、噴射口16からインクの排出が開始されるときのタイミングT4を検出装置46で検出するので、そのタイミングT4を基準として、吸引装置35の駆動時間TD(又は駆動量)を設定することによって、吸引装置35の動作特性によらずに、所望量のインクを吸引できる。したがって、インクの無駄な消費を抑制し、良好な噴射状態を維持できる。また、本実施形態によれば、廃インクタンクへのインクの排出量を低減できる。また、本実施形態によれば、吸引装置35の駆動時間(駆動量)を抑えることができ、吸引装置35の長寿命化を図ることができる。
特に、本実施形態の構成によれば、過渡状態において吸引装置35の駆動を停止する第1モードを実行する場合に効果的である。過渡状態においては、吸引装置35の動作特性に応じて、吸引動作毎に吸引量が大きく変わってしまう可能性があるが、本実施形態の構成によれば、吸引量をほぼ等しくすることができる。
なお、本実施形態においては、電極部材56が正極、ノズル基板21が負極となるように設定されているが、電極部材56が負極、ノズル基板21が正極となるように設定されている場合には、検出される検出信号は、図9、図13等に示した検出信号に対して反転する。この場合においても、処理装置47は、その検出信号に基づいて、各種情報を取得することができる。
<第2実施形態>
次に、第2実施形態について説明する。以下の説明において、上述の第1実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
図17は、第2実施形態に係る検出システム8Bを示す図である。上述の第1実施形態においては、噴射口16からインクの排出が開始されるタイミングを電気的に検出しているが、本実施形態の特徴的な部分は、噴射口16からインクの排出が開始されるタイミングを光学的に検出する点にある。
図17において、検出システム8Bは、キャップ部材34の内側の所定位置に配置され、レーザ光を射出する発光装置63と、発光装置63と対向する位置に配置され、発光装置63からのレーザ光を受光可能な受光装置64とを備えている。発光装置63から射出されるレーザ光の光路上に、噴射口16から排出されるインクが通過するように、発光装置63、及び噴射口16の位置関係を調整した状態で、発光装置63からレーザ光を射出するとともに、噴射口16からインクを排出させるための吸引動作を実行することによって、噴射口16からインクの排出が開始されるタイミングを検出することができる。レーザ光の光路上に噴射口16からのインクが配置された状態と配置されていない状態とでは、受光装置64の受光状態が変化するので、検出システム8Bは、受光装置64の受光結果に基づいて、噴射口16からインクの排出が開始されるタイミングを検出することができる。
なお、上述の第1、第2実施形態においては、インクジェット式記録装置がインクジェットプリンタ1である場合を例にして説明したが、インクジェットプリンタに限られず、複写機及びファクシミリ等の記録装置であってもよい。
なお、上述の各実施形態においては、流体噴射装置が、インク等の液体(液状体)を噴射する液体噴射装置(液状体噴射装置)である場合を例にして説明したが、本発明の流体噴射装置は、インク以外の他の流体を噴射したり吐出したりする流体噴射装置に適用することができる。流体噴射装置が噴射可能な流体は、液体、機能材料の粒子が分散又は溶解されている液状体、ジェル状の流状体、流体として流して噴射できる固体、及び粉体(トナー等)を含む。
なお、上述の各実施形態において、流体噴射装置から噴射される液体(液状体)としては、インクのみならず、特定の用途に対応する液体を適用可能である。流体噴射装置に、その特定の用途に対応する液体を噴射可能な噴射ヘッドを設け、その噴射ヘッドから特定の用途に対応する液体を噴射して、その液体を所定の物体に付着させることによって、所定のデバイスを製造可能である。例えば、本発明の液体噴射装置(液状体噴射装置)は、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、及び面発光ディスプレイ(FED)の製造等に用いられる電極材、色材等の材料を所定の分散媒(溶媒)に分散(溶解)した液体(液状体)を噴射する液体噴射装置に適用可能である。
また、液体噴射装置としては、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置であってもよい。
さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置、ジェルを噴射する流状体噴射装置、トナーなどの粉体を例とする固体を噴射するトナージェット式記録装置であってもよい。そして、これらのうちいずれか一種の流体噴射装置に本発明を適用することができる。
1…インクジェットプリンタ(流体噴射装置)、4…記録ヘッド(噴射ヘッド)、8…検出システム、13…メンテナンス装置、14…キャッピング装置、15…ワイピング装置、16…噴射口、17…噴射面、25…圧電素子(駆動素子)、31…圧力室(空間)、34…キャップ部材、35…吸引装置、45…検出部、46…検出装置、47…処理装置、58…制御装置、60…記憶装置