JP2008183093A - ブラシ用毛材、その製造方法およびブラシ - Google Patents

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Abstract

【課題】清掃性に優れ、かつ耐久性も兼備したブラシ用毛材およびこの毛材を使用したブラシの提供。
【解決手段】合成樹脂モノフィラメントからなるブリッスルの少なくとも一端にテーパー部を形成したブラシ用毛材であって、前記テーパー部の繊維軸方向に垂直な断面形状が異形断面で長手方向に螺旋状に捻られており、テーパー部以外の本体部の断面形状が非異形断面であるブラシ用毛材。
【選択図】図1

Description

本発明は、優れた清掃性能を発揮するとともに、耐久性にも優れたブラシ用毛材とその製造方法およびこれを用いたブラシに関するものである。
近年、合成樹脂製のブラシ用毛材、特に歯ブラシ用毛材においては、歯周ポケットや歯間への毛材の到達度の向上およびこれによる清掃性の向上を目的として、先端がテーパー化されたもの(例えば、特許文献1参照)が多用されている。
また、毛材側面での清掃性能を兼備させるために、この毛材の断面を異形断面とすることにより周方向に凹凸を設けた毛材(例えば、特許文献2参照)や、さらに捻りも加えることにより長手方向の凹凸をも併せて設けた毛材(例えば、特許文献3参照)も提案されており、これらのブラシ用毛材においても夫々相応の効果が得られている。
しかしながら、これら従来の異形断面毛材は、これに曲げ変形を与えた際に、断面内の特定箇所に応力が集中しやすいため、ブラシを長期間使用した場合に毛材が変形して毛開きを生じやすく、ブラシの性能を長期間維持できないという問題があった。
特開昭6−141923号公報 特開2001−169829号公報 特開2003−189943号公報
本発明は、上記の従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果達成されたものである。
したがって、本発明の目的は、清掃性と耐久性を兼ね備え、特に清掃性に優れたブラシ毛材とその製造方法およびこれを用いたブラシを提供することにある。
上記の目的を達成するため本発明によれば、合成樹脂モノフィラメントからなるブリッスルの少なくとも一端にテーパー部を形成したブラシ用毛材であって、前記テーパー部の繊維軸方向に垂直な断面形状が異形断面、テーパー部以外の本体部の断面形状が非異形断面であり、少なくともテーパー部が長手方向に螺旋状に捻られていることを特徴とするブラシ用毛材が提供される。
また、上記の構成からなる本発明のブラシ用毛材の製造方法は、芯部が薬液溶解速度の遅い合成樹脂を用いた異形断面、鞘部が前記芯部の合成樹脂よりも薬液溶解速度が速い合成樹脂を用いた非異形断面である芯鞘構造複合モノフィラメントに対し、捻り加工を加えた上でカットブリッスルとし、このカットブリッスル束の少なくとも一端に、薬液処理によってテーパー部を形成することを特徴とする。
さらに、本発明のブラシは、上記のブラシ用毛材を毛材の少なくとも一部に使用したことを特徴とする。
本発明によれば、清掃性と耐久性を兼ね備え、特に清掃性に優れたブラシおよびブラシ用毛材を得ることができる。
以下、本発明のブラシ用毛材について、図面に従って具体的に説明する。
図1は、本発明のブラシ用毛材の一例を示す側面図、図2(a)は図1のA−A断面図、図2(b)は同じくB−B断面図、図3(c)〜(e)は本発明で使用し得る他の芯鞘構造複合モノフィラメントの例を示す断面図である。
図1に示したように、本発明のブラシ用毛材1は、合成樹脂モノフィラメントのブリッスル1からなり、このブリッスル本体2(以下、本体部2と呼ぶ)の少なくとも一端にテーパー部3が形成されている。
そして、図2に示したように、テーパー部3の繊維軸方向に垂直な断面形状が異形断面、本体部2の断面形状が非異形断面(図面では円形断面)に構成されており、さらに、テーパー部3は、繊維軸方向に螺旋状に捻られている。
かかる構成とするためには、上記ブリッスル1を構成する合成樹脂モノフィラメントを、芯部4と鞘部5とからなる芯鞘複合構造となし、芯部4の繊維軸方向に垂直な断面形状を異形断面、鞘部5の断面形状を非異形断面(図面では円形断面)とした上で、テーパー部3を螺旋状とすることが重要である。
したがって、テーパー部3はほぼ芯部4から構成されているため、その断面形状は上記芯部4と同様な異形断面でかつ螺旋状であり、本体部2の断面形状は非異形断面となっている。
すなわち、テーパー部3が異形断面でかつ螺旋状に捻られているため、例えばこれを歯ブラシに用いた場合には、歯間ポケットや歯間への到達性に優れるとともに、歯面に対して繊維軸方向に摺動させた際に極めて高い清掃性能が得られる。さらには、テーパー部分以外の本体部2が非円形断面であるため、使用時に曲げ変形が加わった際に応力集中が発生しにくく、繰り返し使用しても永久変形を生じにくいので、毛開きが小さくその性能を長期間維持することができるのである。
本発明のブラシ用毛材においては、芯部と鞘部の素材選定が重要であり、芯部には後述の化学的薬液処理に用いる薬液に対して溶解速度の遅い合成樹脂、鞘部には前記芯部の合成樹脂よりも薬液溶解速度が速い合成樹脂を用いる。
具体的な組み合わせとしては、化学的薬液処理に用いられる薬液が水酸化ナトリウム溶液などのアルカリ性薬液である場合は、芯部/鞘部の組合せとして、ポリブチレンテレフタレート(以下PBTと称す)/ポリエチレンテレフタレート(以下PETと称す)、PBT/ポリエステルエラストマー、PBT/ポリプロピレンテレフタレート(以下PTTと称す)、PBT/ポリエチレンナフタレート、PET/ポリエステルエラストマーなど、また、化学的薬液処理に用いられる薬液が塩酸などの酸性薬液である場合は、ポリアミド6・10/ポリアミドエラストマー、ポリアミド6/ポリアミドエラストマーなどが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、適宜選定することができる。
なお、上記の合成樹脂には、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、その目的に応じて、各種無機粒子、各種金属粒子および架橋高分子粒子などの粒子類のほか、公知の抗酸化剤、耐光剤、耐侯剤、イオン交換剤、着色防止剤、耐電防止剤、各種着色剤、ワックス類、シリコーンオイル、各種界面活性剤および各種強化繊維類などを適宜任意に添加せしめることもできる。
本発明のブラシ用毛材の製造方法は以下の通りである。
すなわち、上述の芯鞘構造複合モノフィラメントは、公知の複合溶融紡糸法で製造可能であり、選定された2種の原料を複合押出機から溶融吐出させ、冷却の後延伸することで得られる。次に、得られたモノフィラメントに対し、繊維軸方向に捻りを加え、続いて熱セットする。このモノフィラメントを集束して所定長さに切断することによりカットブリッスルの束とし、この少なくとも一端に公知の化学的薬液処理を加えることでテーパー部形成させることができる。
この化学的薬液処理において、薬液に浸漬されたカットブリッスルの端部は、まず溶解速度の速い鞘部が溶解して異形断面の芯部4だけが残り、続いて溶解速度の遅い鞘部5が除々に溶解するため異形断面を維持しながらテーパー状となる。しかも、予め捻り加工を加えているため、このテーパー状の部分が螺旋状となるのである。
図1および図2は上記の方法で得られるブラシ用毛材の一例であり、この場合は芯部4からなるテーパー部3の断面形状が八葉形、鞘部5の当初の形状を維持した本体部2の断面形状が円形となっている。
図3(c)〜(e)は、本発明で使用し得る他の芯鞘構造複合モノフィラメントの例を示すものであり、(c)は芯部4の断面形状が四角形、(d)は同じく三角形、(e)は同じく鈴形を示しているが、清掃性を向上し得る異形断面形状であれば任意であり、これらに制限されるものではない。
こうして得られたブラシ用毛材は、ブラシとして主体的に機能するテーパー部が異形断面かつ螺旋状であるため、歯ブラシにおいては歯間ポケットや歯間への到達性が優れるだけでなく、歯面に対して繊維軸方向に摺動させた場合の清掃性能に優れ、さらには、非テーパー部が非円形断面であるため曲げ変形による応力集中が発生しにくく、その結果、毛材の毛開きが小さく長期間その性能を維持することができる。
以下、本発明のブラシ用毛材について、実施例を挙げて詳細に説明するが、本発明のブラシ用毛材はその要旨を超えない限り以下の実施例に何ら限定されるものではない。
なお、下記の各ブラシ用毛材は次の方法により評価を行った。34穴の歯ブラシハンドルに対し、毛丈が11mmになるように毛材を植毛して歯ブラシを作成し、次の方法により評価を行った。
[毛開き性評価]
34穴の歯ブラシハンドルに対し、毛丈が11mmになるように毛材を植毛して歯ブラシを作成し、この歯ブラシを使用してステンレス製の波板表面を摺動運動させ、ブラシ部の毛開きを毛開き率K(%)で評価した。なお、歯ブラシの摺動面裏側からかける垂直荷重は500g、摺動運動は歯ブラシの長手方向に20000回行い、摺動運動中は37℃の温水を滴下させた。また、毛開き率Kは、摺動運動前のブラシ部摺動面の横幅をAmm、摺動運動後のブラシ部摺動面の横幅をBmmとし、式K=100×(B−A)/Aから求めた。
[清掃性評価]
歯ブラシを使用して仮想汚れを塗布したステンレス製凹凸板表面を摺動運動させ、清掃性を仮想汚れの除去率S(%)で評価した。なお、歯ブラシの摺動面裏側からかける垂直荷重は150g、摺動運動は、振幅10mm、速度180rpmで5000回行った。また、汚れ除去率Sは、凸部表面と凹部表面それぞれについて求め、摺動運動前の仮装汚れの面積をEmm、摺動運動後の仮装汚れの面積をFmmとし、式S=100×(E−F)/Eから求めた。
〔実施例1〕
芯部用原料としてPBT樹脂(東レ(株)製、トレコン1200S)、鞘部用原料としてPET樹脂(東レ(株)製、東レポリエステル樹脂 T301T)を使用し、複合溶融紡糸法により、鞘部外径が0.20mm、芯部の断面形状が八葉形の複合構造モノフィラメントを作成し、続いて200回/mの捻りを加えて熱セットし、これを束ねて30mmの長さに切断した後、水酸化ナトリウム溶液による化学的薬液処理を加え、片端がテーパー状で、テーパー部の断面が八葉形で繊維軸方向に螺旋状に捻られ、非テーパー部は円形断面のブラシ用毛材を得た。
〔実施例2〕
鞘部用原料としてポリエステル系エラストマー樹脂(東レ・デュポン(株)製、ハイトレル7247)を使用した以外は、実施例1と同様にしてブラシ用毛材を得た。
〔実施例3〕
芯部の断面形状を四角形とした以外は、実施例1と同様にしてブラシ用毛材を得た。
〔比較例1〕
実施例1と同じモノフィラメントに捻り加工を加えず化学的薬液処理を加えることで、テーパー部は八葉形断面で捻られておらず、非テーパー部は円形断面のブラシ用毛材を得た。
〔比較例2〕
PBT樹脂(東レ(株)製、トレコン1200S)のみを用いて、外径0.20mmの円形断面のモノフィラメントを作成し、捻り加工は加えずに実施例1と同じ化学的溶解処理を加え、テーパー部、非テーパー部ともに円形断面のブラシ用毛材を得た。
〔比較例3〕
モノフィラメント全体の断面形状を、実施例1の芯部と同一の八葉形とした以外は比較例1と同じとすることで、テーパー部、非テーパー部ともに八葉形断面のブラシ用毛材を得た。
上記の実施例および比較例で得られたブラシ用毛材の評価結果を表1に示した。
Figure 2008183093
表1の結果から明らかなように、テーパー部が捻りのない八葉形断面である比較例1は、耐久性は全体が円形断面である比較例2と同等、清掃性は全体が八葉形断面である比較例3と同等であり、比較例2および3で劣っている清掃性および耐久性をそれぞれ補った特性を示している。
これに対し、実施例1は捻りのない比較例1に比べ、耐久性を維持しつつその清掃性が高く、特に凸部の清掃性が極めて高いことがわかる。これは、鞘部がポリエステル系エラストマー樹脂である実施例2、テーパー部のみが四角形断面である実施例3の場合でも同様である。
本発明のブラシ用毛材は、優れた清掃性と耐久性とを兼ね備えたものであり、種々のブラシ用途に適用できるが、特に歯ブラシ用途に適用した場合に有用な効果を発揮する。
本発明のブラシ用毛材の一例を示す側面図。 (a)は図1のA−A断面図、(b)は同じくB−B断面図。 (c)〜(e)は本発明で使用し得る他の芯鞘構造複合モノフィラメントの例を示す断面図。
符号の説明
1 ブリッスル
2 本体部
3 テーパー部
4 芯部
5 鞘部

Claims (3)

  1. 合成樹脂モノフィラメントからなるブリッスルの少なくとも一端にテーパー部を形成したブラシ用毛材であって、前記テーパー部の繊維軸方向に垂直な断面形状が異形断面、テーパー部以外の本体部の断面形状が非異形断面であり、少なくともテーパー部が長手方向に螺旋状に捻られていることを特徴とするブラシ用毛材。
  2. 芯部が薬液溶解速度の遅い合成樹脂を用いた異形断面、鞘部が前記芯部の合成樹脂よりも薬液溶解速度が速い合成樹脂を用いた非異形断面である芯鞘構造複合モノフィラメントに対し、捻り加工を加えた上でカットブリッスルとし、このカットブリッスル束の少なくとも一端に、薬液処理によってテーパー部を形成することを特徴とする請求項1に記載のブラシ用毛材の製造方法。
  3. 請求項1に記載のブラシ用毛材を毛材の少なくとも一部に使用したことを特徴とするブラシ。
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