JP2008182068A - ポリイミド配線板の製造方法 - Google Patents

ポリイミド配線板の製造方法 Download PDF

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里奈 村山
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智雄 今瀧
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Abstract

【課題】配線部とポリイミド基板との密着性が良好なポリイミド配線板を製造可能なポリイミド配線板の製造方法を提供すること。
【解決手段】ポリイミド基板表面にイミド環が開環された改質層を形成した後、配線部を形成するポリイミド配線板の製造方法において、錯化剤溶液を用いて、改質層に付着する金属イオンを除去することを特徴とするポリイミド配線板の製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明はポリイミド配線板の製造方法に関する。
近年、携帯電話などの携帯情報機器に代表される電子機器は、小形化および軽量化が要求されている。この要求に伴って、電子機器に搭載されるプリント配線板として、可撓性を有するフレキシブルプリント配線板(FPC(Flexible Printed Circuit))や、ガラスエポキシ基板などの硬質基板とFPCとを組み合わせたリジット−フレキシブル配線板などの使用量が増加している。FPCの基板材料としては、耐熱性、電気絶縁性、機械的強度に優れるポリイミド樹脂が広く用いられている。
ポリイミド樹脂を用いたFPCへの配線形成方法としては、従来、基板材料の表面全体に接着剤を介して貼り付けた金属膜を、エッチングにより除去してパターニングするサブトラクティブ法が用いられている。しかしながら、プリント配線板の高密度化に伴い、より微細な配線パターンが要求されているため、オーバーエッチングの発生や、接着剤の密着性が弱いという問題があるサブトラクティブ法に替わる配線形成方法が検討されている。
一方、無電解めっき法を用いて選択的に金属膜を形成して配線を形成するアディティブ法は、接着剤を不要とする配線形成方法である。しかしながら、従来のアディティブ法においては、金属膜とポリイミド基板との密着性が悪いという問題があった。
この問題を解決するために、直接めっき法と呼ばれる手法を用いてポリイミド基板表面に金属薄膜を形成し、その金属薄膜を給電層として電解銅めっきを行なって作製した銅張2層基板を用いて、フレキシブルプリント配線板を作製する方法が提案されている(例えば、特許文献1)。
直接めっき法では、まず、KOHやNaOHなどのアルカリ性溶液にポリイミド基板を浸漬し、ポリイミド基板表面を加水分解して、改質層を形成する。この改質層は、イミド環が開環したことによって、カルボキシル基を有する。次に、ポリイミド基板を金属イオン含有溶液に浸漬して、カルボキシル基に金属イオンを吸着させて金属塩を形成し、この金属塩を、還元性の水溶液(浴)を用いて還元し、金属薄膜(直接めっき膜)を得る。そのような直接めっき法で形成された金属薄膜に電解銅めっきを行い、銅張積層板を作製する。この銅張積層板を回路エッチングして、配線部を得る。さらに、銅張積層板を塩酸水溶液に浸漬し、配線間に露出したポリイミド基板表面の金属イオンを除去し、さらに250℃以上に加熱することによって改質層のポリアミック酸構造をポリイミドの構造に戻すというものである。
しかしながら、上記の方法には、以下に示すような問題点があった。
例えば、約20μmの厚さの電解銅めっき膜を形成後、サンプルをエアブローしただけの状態で、銅薄膜のピール試験を実施したところ、約1.0kN/mの強度が得られた。一方、同じように作製したサンプルを、そのまま、室温中で2日後乾燥させた後、ピール試験を実施したところ、強度が0.3kN/mと低下し、同サンプルの銅薄膜をエッチングしたところ、ポリイミド改質層に無数の亀裂が入っていることが判った。これは、膨潤した状態のポリイミド改質層表面に電解銅めっき膜を形成すると、乾燥に伴ってポリイミド改質層が収縮するときに、銅薄膜とポリイミド改質層の間で亀裂が発生し、その結果、銅薄膜とポリイミド改質層の密着性が弱くなったためであると考えられる。このようなポリイミド改質層の亀裂は、改質層の厚さが厚いときや、改質層に残存する金属イオンの量が多いときに、特に顕著であった。
特開2004―6584号公報
本発明は、配線部とポリイミド基板との密着性が良好なポリイミド配線板を製造可能なポリイミド配線板の製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、ポリイミド基板表面にイミド環が開環された改質層を形成した後、配線部を形成するポリイミド配線板の製造方法において、錯化剤溶液を用いて、改質層に付着する金属イオンを除去することを特徴とするポリイミド配線板の製造方法に関する。
本発明は具体的には、
アルカリ溶液を用いてポリイミド基板表面にイミド環が開環された改質層を形成する改質工程;
前記改質層を金属イオン含有溶液で処理する金属イオン吸着工程;
前記金属イオンを還元浴により還元し金属薄膜を形成する還元工程;
錯化剤溶液を用いて、前記改質層に残留する金属イオンを除去する金属イオン除去工程;および
前記改質層を加熱により閉環処理する再イミド化工程;
を含むことを特徴とするポリイミド配線板の製造方法に関する。
本発明のポリイミド配線板の製造方法によれば、錯化剤溶液を用いて、改質層に付着する金属イオンを除去するので、短時間に金属イオンを有効に除去でき、さらに金属イオンの再付着(再吸着)を防ぐことができる。
本発明のポリイミド配線板の製造方法においては、ポリイミド基板表面にイミド環が開環された改質層を形成した後、配線部を形成するに際し、錯化剤溶液を用いて、改質層に付着する金属イオンを除去することを特徴とする。
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明のポリイミド配線板の製造方法は、
アルカリ溶液を用いてポリイミド基板表面にイミド環が開環された改質層を形成する改質工程;
前記改質層を金属イオン含有溶液で処理する金属イオン吸着工程;
前記金属イオンを還元浴により還元し金属薄膜を形成する還元工程;
錯化剤溶液を用いて、前記改質層に残留する金属イオンを除去する金属イオン除去工程;および
前記改質層を加熱により閉環処理する再イミド化工程;
を含むことを特徴とするものである。
具体的には、上記のように改質工程〜再イミド化工程を行って金属薄膜を形成した後、例えば、以下の工程を行って配線パターン形状を有する配線パターン層を形成し、配線部を得る。なお、以下の説明では、配線パターン層はいわゆるセミアディティブ法によって形成されるが、これに制限されるものではなく、例えば、いわゆるサブトラクティブ法によって形成されてもよい。
めっき用レジストを形成し、前記金属薄膜の配線パターン領域を選択的に露出させるレジスト形成工程;
前記金属薄膜を給電層として用いて電解めっきを行い、前記金属薄膜の露出部に配線パターン層を形成する配線パターン層形成工程;
前記レジストを除去して、金属薄膜を露出させるレジスト除去工程;および
前記配線パターン層をマスクとして用い、前記レジスト除去工程で露出した領域の金属薄膜をエッチング除去するエッチング工程。
本発明を図1〜図8を参照して説明する。
図1〜3は、本発明に係るポリイミド配線板の製造方法の製造工程を示すフロー図の一例であり、図4〜8は、本発明に係るポリイミド配線板の製造工程を説明するためのポリイミド基板の概略断面図の一例である。
・改質工程(図1〜3の工程(1))
ポリイミド基板をアルカリ溶液で処理して、基板表面にイミド環が開環されたポリイミド改質層を形成する。詳しくは図4(a)に示すようなポリイミド基板1をアルカリ溶液に浸漬することで、図4(b)に示すように両面に改質層2を形成されたポリイミド基板を得、その後、水洗する。この工程により、ポリイミド基板表面におけるポリイミド分子のイミド環が加水分解によって開環し、カルボキシル基が生成すると同時に、カルボキシル基の水素イオンがアルカリ溶液中の金属イオンと置換され、改質層が形成される。例えば、化学式(1)で表されるポリイミドがKOH水溶液で処理される場合、加水分解による開環によって生成したカルボキシル基にカリウムイオンが吸着し、化学式(2)で表される構造を有するようになる。
Figure 2008182068
アルカリ溶液はポリイミドのイミド環を開環できる限り特に制限されるものではなく、例えば、K、Na等のアルカリ金属の水酸化物を含有する水溶液、アミノアルコールなどのアミンを含む溶液等が使用可能である。アルカリ溶液に含有され、本工程でカルボキシル基に配位する陽イオンを以下、陽イオンAと呼ぶものとする。
改質処理条件は、例えば、アルカリ溶液濃度が1〜5mol/l、溶液温度が30〜60℃、浸漬時間は3〜30分間が好適である。
ポリイミド基板としては、特に制限されず、可撓性を有するフィルム状のものから剛性を有するボード状のものまで、いかなるポリイミドも使用可能であるが、フレキシブル配線板を製造する観点からは、厚み10〜200μmの可撓性を有するフィルム状のものが好ましく使用される。
ポリイミド基板は市販のものを使用することができ、例えば、アピカル(R)(カネカ製)、カプトン(R)(東レデュポン製)として入手可能である。
・金属イオン吸着工程(図1〜3の工程(2))
ポリイミド基板を金属イオン含有溶液で処理して、該溶液に含有される金属イオンを改質層に吸着させる。詳しくは、図4(b)に示すような改質層2を有するポリイミド基板を、金属イオン含有溶液に浸漬することによって、改質層全面を処理して、改質層中の陽イオンAを、当該金属イオン含有溶液中の金属イオンと置換させ、水洗する。
金属イオン含有溶液中に含まれる金属イオンは後述の工程で還元されて改質層表面に金属薄膜(金属微粒子層)として析出するものであり、従来から直接めっき法で使用される金属イオンであれば特に制限されない。金属イオン含有溶液として、例えば、Cu、Ni、Co、Ag、Pd、Feなどの金属塩の水溶液が挙げられる。具体的には、例えば、CuSO水溶液、NiSO水溶液、CoSO水溶液、AgNO水溶液、FeSO水溶液、PdSO水溶液などが使用可能である。本工程で使用される金属イオン含有溶液は、シート抵抗の低減、電解めっき膜との密着性という観点から、Cuイオンを含有する水溶液を使用することが好ましい。金属イオン含有溶液に含有され、本工程で陽イオンAと置換する金属イオンを以下、金属イオンBと呼ぶものとする。金属イオン含有溶液中の金属イオンBが、強アルカリ性水溶液中で不溶性、難溶性の塩を形成する場合、本工程の前に、水洗や、弱アルカリ性溶液に浸漬する工程を行い、ポリイミド基板の表面を中性から弱アルカリ性にすることが望ましい。
金属イオン吸着処理条件は特に制限されず、通常は、例えば溶液濃度は0.001〜5mol/l、溶液温度は5〜40℃、浸漬時間は1〜20分間である。
・還元工程(図1〜3の工程(3))
ポリイミド基板を還元浴に浸漬することで、図4(c)に示すように、ポリイミド基板表面の改質層2中に吸着された金属イオンBを還元し、主に改質層2の内部および表面に、金属微粒子を析出させて金属薄膜(直接めっき膜)3を形成する。図4(c)中の波線は、図4(b)における改質層2の表面を概略的に示すものである。図5〜図8においても同様である。
本工程で使用する還元浴の具体例として、例えば、水素化ホウ素イオン、次亜リン酸イオン、ジメチルアミンボラン錯体などのアルキルアミンなどの還元性物質と、必要に応じて添加されるpH調整剤を含んだ水溶液が挙げられる。還元性物質を提供可能な還元剤として、例えば、水素化ホウ素ナトリウム、次亜リン酸ナトリウム、ジメチルアミンボラン等が使用できる。特に、還元浴のpHが大きくなると還元剤の酸化反応の可逆電位が卑となることから、還元浴の還元力を調整する目的からも、pH調整剤を加えることが望ましい。またpHが高いと、金属の水酸化物や酸化物が生じることから、pH調整剤を加えることが望ましい。pH調整剤として、例えば、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、リン酸などが挙げられる。
例えば、ジメチルアミンボラン水溶液を用いる場合、還元浴の濃度は0.01〜0.5mol/l、温度は30〜60℃、浸漬時間は2〜20分、pHは7.0〜9.0が好適である。
また例えば、次亜リン酸溶液を用いる場合、還元浴の濃度は0.05〜0.5mol/l、温度は30〜80℃、浸漬時間は3〜30分、pHは6.0〜8.5が好適である。
また例えば、水素化ホウ素ナトリウム水溶液を用いる場合、還元浴の濃度は0.001〜0.01mol/l、温度は5〜40℃、浸漬時間は5〜20分、pHは9.0〜11.0が好適である。
本発明においては、還元工程を行うことによって、通常は改質層2の内部に100〜500nmの深さまで金属薄膜(直接めっき膜)3を形成可能である。
なお、金属イオン吸着工程と還元工程は、複数回繰り返しても良い。
・金属イオン除去工程(図1〜3の工程(4))
ポリイミド基板を錯化剤溶液で処理して、還元工程後の改質層2内部に残留する金属イオン成分を除去し、所望により水洗する。本工程において改質層表面部には金属薄膜が存在するが、当該薄膜は金属微粒子から構成され、当該微粒子間に間隙を有し、当該薄膜を錯化剤溶液が浸透するため、金属薄膜が存在していても、改質層に残留する金属イオンは当該薄膜を通って有効に除去され得る。本工程の前に、金属薄膜3の上に、後述する補足金属膜5および/または配線パターン層7を形成すると、その後、本工程を行っても、補足金属膜5および/または配線パターン層7の下に位置する改質層2の内部に残留する金属イオンは除去できなくなる。
錯化剤は配位子を含む物質である。配位子とは錯体において、中心原子のまわりに配位する原子あるいは原子団である。配位子は金属原子と結合して錯体を形成する物質であり、これによって改質層に残留する金属イオンを溶液中に誘導し、改質層から除去する。金属薄膜3のイオン化抑制の観点から、錯化剤は酸化力を有さないものが好ましい。例えば、錯化剤が酸化性を有すると、金属薄膜3を構成する金属微粒子がイオン化して溶液中に溶け出し、金属薄膜3が薄くなってしまう。
そのような錯化剤の好ましい具体例として、例えば、クエン酸、蓚酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸などの多価の有機カルボン酸およびそれらのアルカリ金属塩;グリシン、システインなどの有機アミノ酸およびそれらのアルカリ金属塩;エチレンジアミン、エチレンジアミン四酢酸およびそのアルカリ金属塩などの有機アミン;シアン化水素、シアン化水素カリウムなどのシアン化物;ならびにアンモニアが挙げられる。錯化剤溶液はこれらの錯化剤からなる群から選択される1種類以上の錯化剤を含む溶液であり、錯体を安定化させるためには、pHを調整するために2種類以上の錯化剤を含む溶液であることが好ましい。
還元工程直後において、金属薄膜3を構成する金属微粒子の表面は活性であって、浸水させておくだけでも容易にイオン化し、また改質層2はアルカリ耐性が低いため、錯化剤は、弱アルカリ性から酸性の条件下で金属イオンと安定な錯体を早く形成するものを選ぶ必要がある。
例えば、除去されるべき金属イオンが銅イオンまたはニッケルイオンを含むとき、すなわち金属薄膜に銅またはニッケルを含むとき、上記観点から、錯化剤溶液は、多価有機カルボン酸およびそのアルカリ金属塩、グリシン等の有機アミノ酸およびそのアルカリ金属塩、ならびにエチレンジアミン、エチレンジアミン四酢酸およびそのアルカリ金属塩などの有機アミンからなる群から選択される少なくとも1種類の錯化剤を含む溶液であることが好ましい。このとき、錯化剤溶液は、クエン酸、グリシン、エチレンジアミン四酢酸およびこれらのアルカリ金属塩、およびエチレンジアミンからなる群から選択される少なくとも1種類の錯化剤を含む溶液であることがより好ましい。
詳しくは、例えば、クエン酸またはそのアルカリ金属塩を用いてCu2+またはNi2+を除去する場合、下式;
[Cu(C)2―
[Ni(C)]
に示すような金属錯体が形成されて、改質層から当該金属イオンが除去される。
また例えば、グリシンまたはそのアルカリ金属塩を用いてCu2+またはNi2+を除去する場合、下式;
[Cu(HN-CH-COO)
[Ni(HN-CH-COO)
に示すような金属錯体が形成されて、改質層から当該金属イオンが除去される。
また例えば、エチレンジアミンを用いてCu2+またはNi2+を除去する場合、下式;
[Cu(HN-CHCH-NH)2+
[Ni(HN-CHCH-NH)2+
に示すような金属錯体が形成されて、改質層から当該金属イオンが除去される。
錯化剤溶液の溶媒は通常は水が使用され、錯化剤水溶液はpHを後述の範囲に調整されて使用されるのが好ましい。そのため、錯化剤溶液には必要に応じてpH調整剤が含有される。pH調整剤は錯化剤溶液のpHを調整できる限り特に制限されないが、上記した多価有機カルボン酸のアルカリ金属塩は錯化剤として作用するだけでなく、pH調整剤としても作用するので、好ましく使用される。本工程において使用可能な他のpH調整剤として、例えば、硫酸、ホウ酸、リン酸、ギ酸等が挙げられる。
金属イオン除去のための処理方法および処理条件は改質層からの残留金属イオンの除去が達成される限り特に制限されない。詳しくは処理方法は通常、ポリイミド基板を錯化剤溶液に浸漬する方法が採用されるが、錯化剤溶液と基板表面との接触を確保できる限り特に制限されず、例えば、錯化剤溶液をポリイミド基板にコートする方法を採用してもよい。
処理条件は通常は、例えば錯化剤濃度が0.01〜5.0mol/l、溶液温度が10〜50℃、溶液pHが1.5〜10、処理時間が3〜30分間である。溶液のpHは、多価有機カルボン酸を含む錯化剤溶液の場合は、pH1.5〜6の酸性条件とし、さらに解離度が高いpHを選択することが好ましい。また、エチレンジアミンのような有機アミンを含む錯化剤溶液の場合は、pH8〜10の弱アルカリ性において、さらに解離度が高いpHを選択することが好ましい。グリシンやシステインなどの有機アミノ酸を含む錯化剤溶液の場合は、pH1.5〜10において、さらに解離度が高いpHを選択することが好ましい。2種類以上の錯化剤を使用する場合、錯化剤濃度は、それらの合計濃度が上記範囲内であればよい。
・洗浄工程(図2の工程(5))
錯化剤溶液が、錯化剤やpH調整剤等に基づいて、アルカリ金属イオン、例えば、ナトリウムイオンを含む場合は、改質層2は、カルボキシル基に当該金属イオンが配位したカルボキシル塩の構造を有する。しかし、カルボキシル基に吸着したアルカリ金属イオンは、吸着力が低いため、弱酸性溶液に浸漬すると容易に除去される。したがって、錯化剤溶液にアルカリ金属イオンが含まれた場合は、図2に示したフローチャートのように、弱酸性溶液によりアルカリ金属イオンを除去する洗浄工程を行う。
弱酸性溶液に含有される洗浄剤としては、例えば、クエン酸、酒石酸等が挙げられる。
例えば、クエン酸溶液の場合、濃度0.01〜1mol/l、温度20〜30℃、pH1.5〜4.0の溶液に、3〜20分間浸漬することが好適である。
金属薄膜3は空気中の酸素によって容易に酸化するため、本工程後においては、後述のめっき工程までの間に酸素にできる限り触れないように、還元性の溶液や気体中、あるいは脱イオン水中などで、ポリイミド基板を保持することが好ましい。
・増膜工程(図3の工程(5))
改質層2の表面上に析出した金属薄膜3の厚さが薄い場合は、図3に示したフローチャートのように、錯化剤溶液で処理した後で、金属薄膜3の増膜工程を行う。すると、図7(a)に示したように、金属薄膜3の上に、補足金属膜5が形成される。錯化剤溶液で処理した後で上記洗浄工程を行う場合は、当該洗浄工程後に増膜工程を行う。
増膜工程は、具体的には無電解めっき工程もしくは電解めっき工程、あるいは無電解めっき工程と電解めっき工程を組み合わせて行う。ホルマリンなどを還元剤として用いるめっき液は、改質層2を剥離させることがあるため、無電解めっき工程には、次亜リン酸イオンやジメチルアミンボランなどの弱アルカリ〜弱酸性で用いることができる還元剤を含んだものを用いることが望ましい。
電解めっき浴中に含まれる金属イオンは、本工程で補足金属膜5として析出するものであり、補足金属膜5が導電性を有する限り特に制限されない。補足金属膜5の金属は、任意のものが使用可能であるが、めっき残留応力低減の観点から、補足金属膜5の金属と金属薄膜3の金属との結晶格子間隔は、近いことが望ましい。したがって、補足金属膜5は、金属薄膜3同じ金属か、金属の結晶格子間隔が近い金属であることが好ましい。
増膜工程を実施することにより、後で行う配線パターン形成工程において比較的高い電流密度で電解めっきを行うことができる。配線パターン層形成工程において形成する配線パターン層は、補足金属膜5に比べ、はるかに厚くする必要があるため、配線パターン形成工程において高い電流密度で電解めっきを行うことによって、工程の短時間化を図ることが可能である。
めっき条件、特に電解めっき条件は特に限定されるものではなく、任意の条件を選択使用すればよい。
補足金属膜5は、通常0.5〜1μm程度の厚みで形成する。それ以上の厚みとすると、乾燥収縮によって改質層2に亀裂が生じることがあるためである。
本発明において増膜工程は必ずしも実施する必要はない。図1や図2のように、増膜工程を実施しない場合は、改質層2に吸着していた金属イオンを除去し、所望により洗浄工程を実施した後で、再イミド化工程を実施すればよい。
・再イミド化工程(図1の工程(5)、図2および図3の工程(6))
加熱によってポリイミド改質層を閉環処理する。詳しくは、前工程で得られたポリイミド基板を加熱することで、改質層2は再イミド化される。
加熱条件は、改質層の再イミド化を達成できる限り特に制限されず、例えば、温度は250℃〜350℃、最高温度の保持時間は30分〜1時間が好適である。
金属薄膜および/または補足金属膜の酸化を防止するため、酸素を含まない雰囲気中での加熱が好ましく、例えば窒素パージによって酸素濃度を400ppm以下にしたオーブンや、水素雰囲気中、あるいは真空状態での加熱が好ましい。
スルーホール付き両面フレキシブル配線板を形成する場合は、この次に、打ち抜き又はレーザ加工によるスルーホール形成工程、デスミア工程、スルーホール内めっき工程を行う。
金属薄膜を形成し、再イミド化を行った後は、配線パターン層を形成し、配線部を得る。以下、特記しない限り、増膜工程で金属薄膜上に形成された補足金属膜の上に配線パターン層を形成する場合について図7〜図8を用いて説明するが、増膜工程を実施しなかった場合は、配線パターン層は金属薄膜上に直接的に形成される。図5〜図6は、増膜工程を実施することなく、金属薄膜上に配線パターン層を形成した場合の説明図である。
・レジスト形成工程(図1の工程(6)、図2および図3の工程(7))
前記ポリイミド基板の補足金属膜5上に、図7(b)に示すように、めっき用レジスト6を形成し、前記補足金属膜5の配線パターン領域を選択的に露出させる。
めっき用レジストのパターンは所定の配線形状とする。
めっき用レジスト6は、例えばフォトリソグラフィ法により、感光性の液状またはフィルム状レジストに露光・現像を行って所定のパターン形状で形成すればよい。
フィルム状レジストは例えば、旭化成製SUNFORT(R) ASG−253として入手可能である。
フィルム状レジストとして旭化成製SUNFORT(R) ASG−253を用いる場合には、市販のフィルムラミネータを用いて、110℃で加熱しながら、0.4MPa程度の圧力でポリイミド基板上に貼り付けを行う。現像に際しては、炭酸ナトリウム水溶液を用いて、非露光部分の除去を行うことができる。
増膜工程を実施しなかた場合は、本工程では、図5(a)に示すように、前記金属薄膜3の配線パターン領域を選択的に露出させる。
・配線パターン形成工程(図1の工程(7)、図2および図3の工程(8))
前記金属薄膜3および補足金属膜5を給電層として用いて電解めっきを行い、図7(c)に示すように、前記補足金属膜5の露出部に配線パターン層7を形成する。めっき用レジスト6が存在するため、配線領域としての露出部のみに配線パターン層7が選択的に析出する。電解めっき工程はポリイミド基板両面の補足金属膜5の露出部に対して、同時に実施できる。
詳しくは、まず、補足金属膜5の露出部表面の酸化膜を除去するため、ポリイミド基板をエッチング液に1〜10分間浸漬する。エッチング液は、1〜10vol%の塩酸および硫酸が挙げられる。クエン酸などの弱酸でも良い。補足金属膜5の酸化膜が除去できればエッチング以外の方法でも良い。たとえば、還元性のガスや還元浴によって補足金属膜5の表面の酸化膜を還元しても良い。還元浴を用いる場合は、0.001〜0.01mol/lの水素化ホウ素ナトリウム水溶液等が挙げられる。
その次に、電解めっき液中にポリイミド基板を浸漬し、補足金属膜5の露出部に取り付けた電極を介して、補足金属膜5に通電を開始する。電解めっき浴中に含まれる金属イオンは本工程で、補足金属膜5の露出部に配線パターン層7として析出するものであり、配線パターン層7が導電性を有する限り特に制限されない。めっき金属は、任意のものが使用可能であるが、めっき残留応力低減の観点から、補足金属膜5の金属と、配線パターン層7を構成する金属とは同じであることが望ましい。
電解めっき条件は特に限定されるものではなく、任意の条件を選択使用すればよい。
必要な厚さの配線パターン層7を析出させた後は、ポリイミド基板を電解めっき浴から取り出し、水洗を行う。
配線パターン層7は、通常10〜25μm程度の厚みで形成する。
増膜工程を実施しなかった場合、本工程では、前記金属薄膜3を給電層として用いて電解めっきを行い、図5(b)に示すように、前記金属薄膜3の露出部に配線パターン層7を形成する。
・レジスト除去工程(図1の工程(8)、図2および図3の工程(9))
ポリイミド基板から前記レジスト6を除去して、図8(a)に示すように、補足金属膜5を露出させる。レジストの除去は、例えば、剥離液に浸漬するか、あるいは剥離液をスプレー塗布して、レジストを剥離または溶解すればよい。例えば、めっき用レジスト6としてフィルム状レジストを用いた場合は、45〜60℃、1〜4.5wt%の水酸化ナトリウム水溶液を、35〜150秒間スプレーし、その後、25℃の水を30秒〜10分間スプレーすることによって、めっき用レジスト6を剥離できる。
増膜工程を実施しなかた場合、本工程では、図6(a)に示すように、金属薄膜3を露出させる。
・エッチング工程(図1の工程(9)、図2および図3の工程(10))
前記配線パターン層7をマスクとして用い、図8(b)に示すように、前記レジスト除去工程で露出した領域の補足金属膜5および金属薄膜3をエッチング除去する。詳しくは、ポリイミド基板をエッチング液に浸し、配線領域にのみ、配線パターン層7、補足金属膜5および金属薄膜3を残存させる。この結果、ポリイミド基板の両面に任意の微細ピッチ配線パターン形状を有する配線部を形成できる。
エッチング液は補足金属膜5および金属薄膜3の金属に依存して決定される。エッチング液としては、補足金属膜5および金属薄膜3は除去するが、配線パターン層7は除去しない選択性を有するものを用いることが好ましい。しかし、補足金属膜5および金属薄膜3をエッチング除去できる液であれば、配線パターン層7との選択性がなくても構わない。配線パターン層7と、補足金属膜5および金属薄膜3との間には1桁程度の厚さの差があるために、エッチング時間の調整により、配線パターン層7を完全に除去することなく、露出領域の補足金属膜5および金属薄膜3を完全除去できるからである。
例えば、補属金属膜5がCu、および金属薄膜3がNi又はCoである場合、エッチング液はFeCl水溶液、HNO水溶液、またはHNOを含む混酸が使用できる。
また例えば、補足金属膜5および金属薄膜3がCuである場合は、FeCl、CuCl、(NHなどの水溶液などが使用できる。
増膜工程を実施しなかた場合、本工程では、前記配線パターン層7をマスクとして用い、図6(b)に示すように、前記レジスト除去工程で露出した領域の金属薄膜3をエッチング除去する。
配線部を形成した後は、通常は、カバーレイ形成工程、端子部表面処理工程および基板分割工程を実施する。
・カバーレイ形成工程
カバーレイは、上記までの工程で形成された配線部を機械的に保護するとともに、外部との絶縁を図る目的のものである。配線部と外部との接続にはんだ付けを行う場合には、はんだが濡れてはいけない領域を規定するためにカバーレイを形成するため、ソルダーレジストとも呼ばれる。
カバーレイ形成工程で用いる材料や方法については、特に限定されることなく、市販の材料や方法を用いることができる。フィルム状のものや液状のものがあり、それらを適宜使用すればよい。
例えば、日立化成製レイテックFR−5638を用いることができる。このフィルムをポリイミド基板全面に貼り付け、フォトリソグラフィにより不要箇所を除去する。この際、カバーレイを除去した箇所が、端子部となる。この操作を両面に対して実施する。他には、開口部を打ち抜き加工した接着剤層付きポリイミドカバーレイフィルムを、ポリイミド基板に位置あわせして貼り付け、熱プレスすることによって形成できる。
・端子部表面処理工程
配線部の外部端子となる領域に、端子の表面処理を行う。例えば、はんだ付け用の端子を形成する場合、Ni膜とAu膜の形成を引き続いて行う。詳しくは、市販の無電解Niめっき浴に浸漬して5μm程度の厚さのNi膜を形成した後、市販の無電解Auめっき浴に浸漬して0.5μm程度の厚さを有するAu膜を形成する。
・基板分割工程
本工程は、工程を実施するワークサイズに対して製品となる基板サイズが異なる場合に必要となる。例えば、工程を実施するワークの周辺部にはハンドリングのために余分な領域が設けられている。この部分の除去を行う。具体的には、ここまでの工程を実施したポリイミド基板を金型に設置して、打ち抜き加工を行う。これによって、両面ポリイミド配線板を形成できる。
本発明のポリイミド配線板の製造方法を実施例でより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
本実施例では、以下に説明する工程により、ポリイミド配線板を製造した。
被めっき物として、200mm×200mm×厚さ50μmのポリイミド(東レ・デュポン株式会社製カプトンH)からなるポリイミド基板1を用いた。
(改質工程)
ポリイミド基板1(図4(a))を、5mol/l、50℃のKOH水溶液に5分間浸漬し、5分間水洗した。ポリイミド基板1の表面では、イミド環の加水分解が行われ、形成された改質層2には、カルボキシル基にカリウムイオンが配位したポリアミック酸カリウム塩が形成された(図4(b))。
(金属イオン吸着工程)
次に、30℃、0.05mol/lのCuSO水溶液にポリイミド基板を10分間浸漬し、改質層2のカリウムイオンを銅イオンに交換し、ポリアミック酸銅塩を形成した。この後、5分間の水洗を行い、乾燥させた。
(還元工程)
次に、ポリイミド基板を0.5mol/lのジメチルアミンボラン水溶液(50℃、pH8.5)に5分間浸漬し、改質層2の露出表面に、銅からなる金属薄膜3を形成し、さらに2分間の水洗を行った(図4(c))。本工程において形成された金属薄膜3の平均膜厚は、ポリイミド基板表面上で30nm、改質層2の内部は400nmであった。
(金属イオン除去工程)
次に、ポリイミド基板を25℃、pH2.0および濃度0.2mol/lのクエン酸水溶液に15分間浸漬後、2分間水洗した。
(再イミド化工程)
その後、オーブンにポリイミド基板を入れ、窒素置換により酸素濃度を200ppm以下にした後で、昇温を開始し、120℃1時間で保持し、さらに350℃に昇温し、1時間保持した。加熱が終了した後、金属薄膜を硝酸でエッチングし、ポリイミド基板の表面から深さが2〜4μmの部位をFT−IR法で分析したところ、1647cm−1付近に表れる開環アミド(C=O)吸収スペクトル、1538cm−1付近に表れる開環アミド(N−H)吸収スペクトルが消失していた。よって、熱処理により完全にイミド環を完全に閉環出来ていることがわかった。
(レジスト形成工程)
次に、ポリイミド基板の両面に、厚さ25μmのネガ型感光性フィルムレジストを貼り付けた。露光後、1重量%、30℃の炭酸ナトリウム水溶液を用いて現像し、図5(a)に示すようなめっき用レジスト6を形成した。めっき用レジスト6による金属薄膜3の露出領域の幅は20μmであった。
(配線パターン形成工程)
次に、ポリイミド基板を、10vol%硫酸に60秒浸漬して金属薄膜3表面の酸化膜を除去後、電解銅めっき液に浸漬し、金属薄膜3を給電層として、電解銅めっきを行い、その後、5分間水洗した。硫酸銅0.25mol/l、硫酸2.5mol/l、塩酸0.0015mol/lに添加剤を加えた電解銅めっき液を用いて、めっき温度28℃、電流密度3A/dm、40分間の電解めっきを行い、約20μmの厚さの配線パターン層7を形成した(図5(b))。
(レジスト除去工程)
次に、ポリイミド基板の表面に、2重量%、50℃の水酸化ナトリウム水溶液をスプレー塗布し、めっき用レジスト6を剥離し、その後、5分間の水洗を行った。この工程は2回繰り返し、ポリイミド基板の両面のめっき用レジストを剥離した(図6(a))。
(エッチング工程)
次に、ポリイミド基板をエッチング液に1分間浸漬し、めっき用レジスト6によって覆われていた領域の金属薄膜3を除去した(図6(b))。エッチング液として、150g/l、40℃の塩化第二銅(CuCl)水溶液を用いた。この後、2分間の水洗を行った。
[実施例2]
本実施例では、以下に説明する工程により、ポリイミド配線板を製造した。
改質工程、金属イオン吸着工程および還元工程は、実施例1と同様の工程を行なった。
(金属イオン除去工程)
次に、ポリイミド基板を、25℃、pH3のクエン酸とクエン酸ナトリウムの緩衝溶液(クエン酸0.1mol/l、クエン酸ナトリウム0.1mol/l)に15分間浸漬後、2分間水洗した。
(洗浄工程)
次に、ポリイミド基板を、25℃の0.01mol/lのクエン酸水溶液に5分間浸漬し、2分間水洗した。
(再イミド化工程)
その後、オーブンにポリイミド基板を入れ、窒素置換により酸素濃度を200ppm以下にした後で、昇温を開始し、120℃1時間で保持し、さらに250℃に昇温し、1時間保持した。加熱が終了した後、金属薄膜を硝酸でエッチングし、ポリイミド基板の表面から2〜4μmの部位をFT−IR法で分析したところ1647cm−1付近に表れる開環アミド(C=O)吸収スペクトル、1538cm−1付近に表れる開環アミド(N−H)吸収スペクトルが消失していた。よって、熱処理により完全にイミド環を完全に閉環出来ていることがわかった。
(レジスト形成工程)
次に、ポリイミド基板の両面に、厚さ25μmのネガ型感光性フィルムレジストを貼り付けた。露光後、1重量%、30℃の炭酸ナトリウム水溶液を用いて現像し、図5(a)に示すようなめっき用レジスト6を形成した。めっき用レジスト6による金属薄膜3の露出領域の幅は20μmであった。
(配線パターン形成工程)
次に、ポリイミド基板を、10vol%硫酸に60秒浸漬して金属薄膜3表面の酸化膜を除去後、電解銅めっき液に浸漬し、金属薄膜3を給電層として、電解銅めっきを行い、その後、5分間水洗した。硫酸銅0.25mol/l、硫酸2.5mol/l、塩酸0.0015mol/lに添加剤を加えた電解銅めっき液を用いて、めっき温度28℃、電流密度3A/dm、40分間の電解めっきを行い、約20μmの厚さの配線パターン層7を形成した(図5(b))。
(レジスト除去工程)
次に、ポリイミド基板の表面に、2重量%、50℃の水酸化ナトリウム水溶液をスプレー塗布し、めっき用レジスト6を剥離し、その後、5分間の水洗を行った。この工程は2回繰り返し、ポリイミド基板の両面のめっき用レジストを剥離した(図6(a))。
(エッチング工程)
次に、ポリイミド基板をエッチング液に1分間浸漬し、めっき用レジスト6によって覆われていた領域の金属薄膜3を除去した(図6(b))。エッチング液として、35g/L、60℃の塩化鉄(III)[第二](FeCl)水溶液を用いた。この後、2分間の水洗を行った。
[実施例3]
本実施例では、以下に説明する工程により、ポリイミド配線板を製造した。
被めっき物として、200mm×200mm×厚さ50μmのポリイミド(東レ・デュポン株式会社製カプトンH)からなるポリイミド基板1を用いた。
(改質工程)
ポリイミド基板1(図4(a))を、5mol/l、50℃のKOH水溶液に5分間浸漬し、5分間水洗した。ポリイミド基板1の表面では、イミド環の加水分解が行われ、形成された改質層2には、カルボキシル基にカリウムイオンが配位したポリアミック酸カリウム塩が形成された(図4(b))。
(金属イオン吸着工程)
次に、30℃、0.05mol/lのNiSO水溶液にポリイミド基板を10分間浸漬し、改質層2のカリウムイオンをニッケルイオンに交換し、ポリアミック酸ニッケル塩を形成した。この後、5分間の水洗を行い、乾燥させた。
(還元工程)
次に、ポリイミド基板を0.5mol/lのジメチルアミンボラン水溶液(50℃、pH8.0)に5分間浸漬し、改質層2の露出表面に、ニッケルからなる金属薄膜3を形成し、さらに2分間の水洗を行った(図4(c))。本工程において形成された金属薄膜3の平均膜厚は、ポリイミド基板表面上で30nm、改質層2の内部は400nmであった。
(金属イオン除去工程)
次に、ポリイミド基板を、硫酸を加えてpHを8.5に調整した25℃、濃度0.2mol/lのエチレンジアミン水溶液に15分間浸漬後、2分間水洗した。
(増膜工程)
次に、図7(a)に示すように、次亜リン酸を還元剤とした無電解銅めっき(pH8.5、75℃)を5分実施し、2分間の水洗を実施した。その後、硫酸銅めっき液(pH0.8、25℃)に浸漬し、電解銅めっきを2A/dmで5分間実施し、補足金属膜5を形成した。
(再イミド化工程)
その後、オーブンにポリイミド基板を入れ、窒素置換により酸素濃度を200ppm以下にした後で、昇温を開始し、120℃1時間で保持し、さらに250℃に昇温し、1時間保持した。加熱が終了した後、金属薄膜を硝酸でエッチングし、ポリイミド基板の表面から2〜4μmの部位をFT−IR法で分析したところ、1647cm−1付近に表れる開環アミド(C=O)吸収スペクトル、1538cm−1付近に表れる開環アミド(N−H)吸収スペクトルが消失していた。よって、熱処理により完全にイミド環を完全に閉環出来ていることがわかった。
(レジスト形成工程)
次に、ポリイミド基板の両面に、厚さ25μmのネガ型感光性フィルムレジストを貼り付けた。露光後、1重量%、30℃の炭酸ナトリウム水溶液を用いて現像し、図7(b)に示すようなめっき用レジスト6を形成した。めっき用レジスト6による補足金属膜5の露出領域の幅は20μmであった。
(配線パターン形成工程)
次に、ポリイミド基板を、10vol%硫酸に60秒浸漬して補足金属膜5表面の酸化膜を除去後、電解銅めっき液に浸漬し、補足金属膜5を給電層として、電解銅めっきを行い、その後、5分間水洗した。硫酸銅0.25mol/l、硫酸2.5mol/l、塩酸0.0015mol/lに添加剤を加えた電解銅めっき液を用いて、めっき温度28℃、電流密度3A/dm、40分間の電解めっきを行い、約20μmの厚さの配線パターン層7を形成した(図7(c))。
(レジスト除去工程)
次に、ポリイミド基板の表面に、2重量%、50℃の水酸化ナトリウム水溶液をスプレー塗布し、めっき用レジスト6を剥離し、その後、5分間の水洗を行った(図8(a))。
(エッチング工程)
次に、ポリイミド基板をエッチング液に1分間浸漬し、めっき用レジスト6によって覆われていた領域の補足金属膜5および金属薄膜3を除去した(図8(b))。エッチング液として、35g/L、60℃の塩化鉄(III)[第二](FeCl)水溶液を用いた。この後、2分間の水洗を行った。
[比較例1]
金属イオン除去工程を行わなかったこと以外、実施例1と同様の方法により配線部を有するポリイミド基板を得た。
[比較例2]
金属イオン除去工程を行わなかったこと以外、実施例2と同様の方法により配線部を有するポリイミド基板を得た。
[比較例3]
金属イオン除去工程を行わなかったこと以外、実施例3と同様の方法により配線部を有するポリイミド基板を得た。
[評価]
・密着性
実施例1〜3および比較例1〜3で作製した配線部を有するポリイミド基板について、JIS C−6471に記載された方法で配線部の引き剥がし強さの試験を実施し、常態の引き剥がし強さを調べた。
実施例1〜3では、引き剥がし強度は1.0N/mm以上であった。
比較例1〜3では、引き剥がし強度が0.6N/mm以下で、改質層2が残存し、当該改質層とポリイミド基板との界面で剥離した。
(カバーレイ形成工程)
開口部を打ち抜き加工した接着剤層付きポリイミドカバーレイフィルムを、ポリイミド基板に位置あわせして貼り付け、熱プレスすることによってカバーレイを形成した。
(端子部表面処理工程)
ポリイミド基板を無電解Niめっき浴に浸漬して、カバーレイの開口部から露出する配線パターン7の外部端子領域に、5μm程度の厚さのNi膜を形成した後、無電解Auめっき浴に浸漬して0.5μm程度の厚さのAu膜を形成した。
(基板分割工程)
ポリイミド基板を金型に設置して、打ち抜き加工を行った。
[予備実験1]
金属薄膜の溶出による金属イオン生成の影響を除いて、各種水溶液による金属イオン除去工程の条件検討を行なうため、以下の実験を行なった。実施例1における改質工程、金属イオン吸着工程を行なった後、金属イオン除去工程として表1に示す水溶液への浸漬を行って、5分間の水洗後、乾燥工程、再イミド化工程を実施した。なお、クエン酸とクエン酸ナトリウムの緩衝溶液を用いたとき、浸漬工程では、表1に示す浸漬を行った後、クエン酸水溶液(0.2mol/l、25℃)による5分間の浸漬を行い、水洗後、乾燥させた。
改質条件;KOH水溶液(5mol/l、50℃)、浸漬時間5分間、
金属イオン吸着条件;CuSO水溶液(0.05mol/l、30℃)、浸漬時間10分間、
再イミド化条件;350℃、1時間保持。
次に、得られたポリイミド基板の再イミド化について評価した。
深さが2〜4μmの部位のポリイミド基板をFT−IR法で分析した。1647cm−1付近に表れる開環アミド(C=O)吸収スペクトル、および1538cm−1付近に表れる開環アミド(N−H)吸収スペクトルに基づいて評価した。
○;それらの吸収スペクトルが観察されなかった;
×;それらの吸収スペクトルが観察された。
△;それらの吸収スペクトルが観察された。しかし、リファレンス(純水)と比較すると吸収スペクトルの絶対量は明らかに減少していた。
Figure 2008182068
[予備実験2]
金属イオン除去工程の代わりに、表2に示す水溶液への浸漬を行って、水洗後、乾燥させる浸漬工程を行ったこと以外、実施例1における改質工程〜再イミド化工程と同様の工程を実施し、金属薄膜を有するポリイミド基板を得た。なお、クエン酸とクエン酸ナトリウムの緩衝溶液を用いたとき、浸漬工程では、表2に示す浸漬を行った後、実施例2と同様に洗浄工程としてクエン酸水溶液(0.2mol/l、25℃)による5分間の浸漬を行い、水洗後、乾燥させた。
改質条件;KOH水溶液(5mol/l、50℃)、浸漬時間5分間、
金属イオン吸着条件;CuSO水溶液(0.05mol/l、30℃)、浸漬時間10分間、
還元条件;ジメチルアミンボラン水溶液(0.5mol/l,50℃)、浸漬時間5分間、
再イミド化条件;窒素置換によりオーブン内の酸素濃度を200ppm以下にした後で、昇温を開始し、120℃1時間で保持し、さらに350℃に昇温し、1時間保持した。
得られたポリイミド基板の再イミド化、および金属薄膜について評価した。
・金属薄膜
ポリイミド基板の表面を金属顕微鏡を用いて観察し、金属薄膜の存在について評価した。
○;金属薄膜が存在した;
×;金属薄膜が消失していた。
・再イミド化
金属薄膜を硝酸でエッチングし、深さが2〜4μmの部位のポリイミドをFT−IR法で分析した。1647cm−1付近に表れる開環アミド(C=O)吸収スペクトル、および1538cm−1付近に表れる開環アミド(N−H)吸収スペクトルに基づいて評価した。
○;それらの吸収スペクトルが観察されなかった;
×;それらの吸収スペクトルが観察された。
Figure 2008182068
本発明は、フレキシブル配線板などの回路基板の製造に広く利用可能であり、小形化および軽量化が要求されている携帯電話などの携帯情報機器に代表される電子機器に内蔵する回路基板の製造方法として有用である。
本発明のポリイミド配線板の製造方法の製造工程を示すフロー図である。 本発明のポリイミド配線板の製造方法の製造工程を示すフロー図である。 本発明のポリイミド配線板の製造方法の製造工程を示すフロー図である。 (a)から(c)はともに本発明の一製造工程を説明する概略断面図である。 (a)から(b)はともに本発明の一製造工程を説明する概略断面図である。 (a)から(b)はともに本発明の一製造工程を説明する概略断面図である。 (a)から(c)はともに本発明の一製造工程を説明する概略断面図である。 (a)から(b)はともに本発明の一製造工程を説明する概略断面図である。
符号の説明
1:101:ポリイミド基板、2:102改質層、3:103:金属薄膜、5:105:補足金属膜、6:めっき用レジスト、106:レジスト、7:配線パターン層、107:配線部。

Claims (5)

  1. ポリイミド基板表面にイミド環が開環された改質層を形成した後、配線部を形成するポリイミド配線板の製造方法において、錯化剤溶液を用いて、改質層に付着する金属イオンを除去することを特徴とするポリイミド配線板の製造方法。
  2. アルカリ溶液を用いてポリイミド基板表面にイミド環が開環された改質層を形成する改質工程;
    前記改質層を金属イオン含有溶液で処理する金属イオン吸着工程;
    前記金属イオンを還元浴により還元し金属薄膜を形成する還元工程;
    錯化剤溶液を用いて、前記改質層に残留する金属イオンを除去する金属イオン除去工程;および
    前記改質層を加熱により閉環処理する再イミド化工程;
    を含むことを特徴とする請求項1に記載のポリイミド配線板の製造方法。
  3. 錯化剤溶液が2種類以上の錯化剤を含む溶液である請求項1または2に記載のポリイミド配線板の製造方法。
  4. 金属イオン除去工程で除去されるべき金属イオンが銅イオンまたはニッケルイオンを含むとき、
    錯化剤溶液が、多価有機カルボン酸およびそのアルカリ金属塩、グリシンおよびそのアルカリ金属塩、エチレンジアミン、ならびにエチレンジアミン四酢酸およびそのアルカリ金属塩からなる群から選択される少なくとも1つの錯化剤を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリイミド配線板の製造方法。
  5. 錯化剤溶液がアルカリ金属イオンを含むとき、金属イオン除去工程の後、
    弱酸性溶液によりアルカリ金属イオンを除去する洗浄工程;
    を行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリイミド配線板の製造方法。
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