JP2008176104A - 光学素子、光学ユニット及び光学装置 - Google Patents

光学素子、光学ユニット及び光学装置 Download PDF

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Abstract

【課題】長波長側の透過率のピークの半値全幅を大きくして透過光量を多くする。
【解決手段】エタロン型分光素子は、基板上に多層膜を形成した光学素子を2つ平行に対向配置し、これら光学素子の配置間隔を変更可能に構成されている。エタロン型分光素子は、短波長側のブロードな第3の透過率特性L3を有し、長波長側では相対的にシャープな第4の透過率特性L4aを有する。第4の透過率特性L4aを有する波長領域WL4において、光学素子単体での透過率にピークを持たせることで、第4の透過率特性L4aのピークP4aの半値全幅を大きくしている。
【選択図】図6

Description

本発明は、光学素子、光学ユニット、及び該光学ユニットを備えた光学装置に関する。
生体内に発生した病変の診断を行うための内視鏡装置が広く知られている。内視鏡装置の一つとして、例えば、蛍光内視鏡装置がある。この蛍光内視鏡装置は、取得した蛍光画像に含まれる情報に基づいて生体組織に発生した病変の診断を行うための装置である。蛍光内視鏡装置は、被照射体である生体組織表面に励起光を照射して、生体組織に含まれる蛍光物質を励起する。そして、生体組織から発した蛍光を撮像することで、蛍光画像を取得する。
生体組織表面に励起光を照射して生体組織表面からの自家蛍光を検出する場合、正常組織と病変組織とでは自家蛍光の強度が異なることが知られている。図12(出典:シリーズ 光が拓く生命科学、第6巻 光による医学診断、担当編集 田村 守、共立出版、2001年3月30日、p91)は、その一例を示したものである。各波長での正常組織の自家蛍光強度40Aと病変組織の自家蛍光強度40Bを示している。そこで、生体組織の自家蛍光画像から得られる蛍光強度分布を解析することで、病変組織の領域と正常組織の領域を区分けすることができる。生体組織は層構造を呈しており、粘膜下層と、この粘膜下層よりも上層に位置する粘膜層を含んでいる。このうち粘膜下層には、自家蛍光を発するコラーゲンやエラスチンが多く含まれている。
粘膜層の組織に病変による構造変化が生じると、コラーゲンやエラスチンの自家蛍光は、粘膜表層に到達するまでにその影響を強く受けて減衰する。このため、コラーゲンやエラスチンの主要な自家蛍光波長、例えば、500nm〜550nmを含む波長領域の蛍光を検出することにより、粘膜層に発生した病変組織の領域を識別するための情報を取得することができる。
一方、生体内に存在する有機化合物であるポルフィリンは、腫瘍に蓄積される傾向があることが知られている。ポルフィリンは、コラーゲンやエラスチンと同様に、青色から緑色の波長領域の励起光によって、630nm付近にピーク波長を持つ蛍光を発する。そこで、この蛍光強度を検出することにより、生体組織に腫瘍が発生していることを示す情報を取得することができる。この検出には、所定の分光透過率特性を有する光学ユニットを用いる。所定の分光透過率特性とは、例えば、630nmを含む狭い波長領域の蛍光を透過させる分光透過率特性である。このように、生体組織からの自家蛍光スペクトルには、波長領域ごとに、生体組織に関する異なる情報が含まれている。
図12に示した例では、正常組織の自家蛍光強度40Aと病変組織の自家蛍光強度40Bは、630nm付近の波長領域では差がほとんどないのに比べ、500nm〜550nmの波長領域ではその差が大きいという特徴を有しているが、このような波長領域ごとの強度の変化は、病変の進行具合や部位などによっても様々に変化するものと考えられる。したがって、自家蛍光スペクトルの異なる波長領域ごとの蛍光強度を取得して比較することは、病変の診断に役立つと考えられる。
このように、生体組織の自家蛍光スペクトルを分光分析し、それぞれのスペクトル帯域に含まれる情報を取り出せば、病変の診断を行うことが可能になる。従来、光学素子としてエタロン型分光素子を用いて、自家蛍光スペクトルの分光分析を行っていた(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1の図18に示すように、従来のエタロン型分光素子は、分光走査する波長領域に透過率が最大になるピークを有し、そのピークから左右(前後)に向かって透過率が低下する透過率特性を持っていた。
特開2006−25802号公報
近年、病変などに対する診断精度を向上させる観点から、エタロン型分光素子から得られる透過光量をさらに多くすることが望まれていた。しかしながら、従来のエタロン型分光素子は、ピークにおける半値全幅が小さいので、透過光量を多く取得することが困難であった。
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、ピークにおける半値全幅が大きな光学素子、特に分光分析に用いる分光光学素子を得ることを主な目的とする。また、このような光学素子を用いた光学ユニット、並びに該光学ユニットを用いた光学装置、特に、病変などに対する診断精度が向上した光学装置を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するために、本発明に係る光学素子は、多層膜を有する光学素子であって、前記光学素子は、第1の波長領域において第1の透過率特性を有すると共に、前記第1の波長領域より長波長側の第2の波長領域において第2の透過率特性を有する前記多層膜を備え、前記多層膜は、透過率が最大になる第1のピークを前記第2の波長領域に有するように構成されていることを特徴とする。
この発明の光学素子では、透過率測定をした場合に、第2の透過率特性に相当する第2の波長領域に透過率のピークを有している。このような光学素子同士を対向配置した場合に、第2の波長領域に生じる透過率のピークにおける半値全幅が大きくなる。
また、本発明に係る光学素子は、上記発明の光学素子であって、前記第1のピークにおける透過率は、前記第2の波長領域における最も低い透過率に比べて2%以上大きいことを特徴とする。
この光学素子では、透過率測定をした場合に、第2の透過率特性に相当する第2の波長領域におけるピークの透過率がその周囲の透過率が最も低い領域に比べて2%以上大きくなっている。このような光学素子同士を対向配置した場合に、第2の波長領域に生じる透過率のピークにおける半値全幅が大きくなる。
また、本発明に係る光学素子は、上記発明の光学素子であって、一対の前記光学素子を対向配置した状態で得られる透過率特性は、第3の波長領域における第3の透過率特性と、前記第3の波長領域より長波長側の第4の波長領域における第4の透過率特性で表され、前記第1のピークは、前記第4の波長領域に存在することを特徴とする。
この光学素子では、一対の光学素子を対向配置した状態で得られる第3の波長領域における第3の透過率特性の透過率が大きく、また、第4の波長領域に生じる透過率のピークにおける半値全幅が大きくなる。
本発明に係る光学ユニットは、対向して配置された一対の上記発明に係る光学素子と、前記光学素子の光路上の間隔を調整する調整機構と、を備えた光学ユニットであって、前記第3の波長領域において前記第3の透過率特性を有すると共に、前記第3の波長領域より長波長側の前記第4の波長領域において透過率が最大になる第2のピークを有する第4の透過率特性を備え、前記第2のピークにおける半値全幅が30nm以上で、前記第4の波長領域における最も低い透過率が1%以下であることを特徴とする。
この光学ユニットは、第4の波長領域に生じる透過率のピークにおける半値全幅が30nm以上になっており、透過光量を多くできる。その一方、第4の波長領域に生じる透過率のピークの周囲では、最も低い透過率が1%以下になるので、ノイズとなってしまう光の透過量を少なくできる。
本発明に係る光学装置は、上記発明に係る光学ユニットと、対象物に照明光を照射する光源ユニットと、前記対象物の像を形成する光学系と、前記像を撮影する撮像ユニットと、を備え、前記光学ユニットは、前記光学系と前記撮像ユニットの間に配置されていることを特徴とする。
この光学装置は、光源ユニットから照明光を対象物に照射し、自家蛍光による蛍光を撮像ユニットに取得し、病変などの診断を行う。撮像ユニットに上記光学ユニットを備えることで、第4の透過率特性による第4の波長領域での透過光量を多くすることができる。
本発明の光学素子によれば、第2の透過率特性を有する波長領域にピークを生じる。そのため、この光学素子同士を対向配置することで、本発明の光学ユニットにおける第4の透過率特性のピークにおける半値全幅を大きくすることができる。その結果、この波長領域の光の透過光量を多くすることができる。
また、本発明の光学装置によれば、生体組織の自家蛍光の透過光量を多くすることができるので、自家蛍光に基づく診断の精度を向上できる。
本発明に係る第1の実施形態について、図面を参照して説明する。
図1に蛍光内視鏡装置の全体構成を、図2に光学ユニットの詳細を示す。
本実施形態に係る光学ユニット1は、図1に示すような、蛍光内視鏡装置(光学装置)2の撮像部3内に配されている。この蛍光内視鏡装置2は、その他に、光源部(光源ユニット)5と、照明部(光源ユニット)6と、各部3,5,6を制御する制御部7と、画像処理部8とを備えている。
撮像部3と照明部6とは、蛍光内視鏡装置2の挿入部10の先端側に配されている。照明部6は、図示しないライトガイドなどの光学的な伝送手段により光源部5と接続されている。光源部5から供給される照明光は、照明部6を介して生体組織表面Sに照射される。
撮像部3と光源部5とは、制御部7に接続されている。制御部7は、2つの制御を行っている。1つは、光源部5が生成した励起光を照明部6に供給するタイミングの制御である。もう1つは、生体組織表面Sの蛍光像を撮像部3が撮影するタイミングの制御である。撮像部3から出力される画像信号は、画像処理部8によって蛍光画像に加工される。
画像処理部8は、メモリ回路8aと、演算回路8bとを備えている。メモリ回路8aは、画像信号をデータとして一時的に格納する。演算回路8bは、メモリ回路8aに格納されたデータをもとにして画像処理に必要な演算を行う。また、画像処理部8には、DVD、HDDなどの外部記録装置11が接続されている。この外部記録装置11は、各種の画像データを恒久的に保存することができるようになっている。画像データとしては、撮像部3が取得した画像信号データや、画像処理部8が処理を行った画像データなどがある。外部記録装置11に記録された画像信号データは、適宜、画像処理部8に読み出されてデータの加工が行われる。画像処理部8により加工された画像データは、蛍光画像としてTVモニター12の表示画面上に表示される。
光学ユニット1は、生体組織からの蛍光を分離して検出する機能を有する。そのため、図2に示すように、光学ユニット1は、エタロン型分光素子(一対の光学素子)16と可変機構(調整機構)17とを備えている。ここで、エタロン型分光素子16は、対物光学系(光学系)13と受光素子(撮像ユニット)15の受光面15aとの間に配置されている。可変機構17は、エタロン型分光素子16における配置間隔を変化させる機能を有している。
また、光学フィルタ18は、対物光学系13とエタロン型分光素子16との間に配置されている。この光学フィルタ18は、励起光カットフィルタである。本実施形態では、光学フィルタ18として、図3に示すように、波長395〜415nmの範囲でOD値4以上(透過率にして 1×10−4以下)、波長430〜750nmの範囲で透過率80%以上の特性を有する光学フィルタを用いている。
エタロン型分光素子16は、ファブリペローエタロン型のバンドパスフィルタである。分光には、多光束干渉作用が利用されている。このエタロン型分光素子16では、空気層の厚さを調整することで、透過波長領域を走査可能な分光素子として機能する。ここで、走査可能というのは、所定の透過範囲を、透過波長領域において移動させることができることを意味している。その結果、所望の波長範囲の光のみを、自由に透過させることができる。
図4に示すように、エタロン型分光素子16は、光軸に直交して配置される第一の光学素子31と、第二の光学素子32とから構成されている。第二の光学素子32は、第一の光学素子31から光路に沿って所定厚の空気層LGを有して、第一の光学素子31と平行に配置されている。上述の配置間隔とは、光学素子31と光学素子32との間隔、すなわち空気層LGの厚さのことである。各光学素子31,32は、自家蛍光の波長領域において透明な平行平板の基板33と、各基板33の向かい合う面に積層された多層膜34とを有する。多層膜34は、例えば、基板33側から高屈折率層34Aと、低屈折率層34Bを交互に5〜9層積層した構成を有する。高屈折率層34Aと、低屈折率層34Bは、それぞれ数nm〜数100nm程度の膜厚を有する。各層34A,34Bは、公知のスパッタリング法や蒸着法を用いて製造されている。
図5に第一の光学素子31単独、又は第二の光学素子32単独の分光透過率特性L1を示す。また、図6にエタロン型分光素子16の分光透過率特性を示す。各図において、横軸は波長(nm)、縦軸は透過率(%)である。まず、図6を参照して、エタロン型分光素子16の分光透過率特性(以下、単に透過率特性と称する場合もある)について説明する。
図6の分光透過率特性では、全体の波長領域を、第3の波長領域(WL3)と第4の波長領域(WL4)に分けている。第3の波長領域(WL3)の範囲は、約400nmから約590nmである。第3の波長領域(WL3)では、透過率特性は、実線で示した第3の透過率特性(ラインL3)となっている。一方、第4の波長領域(WL4)の範囲は、約590nmから約900nmである。第4の波長領域(WL4)では、透過率特性は、実線で示した第4の透過率特性(ラインL4a)あるいは、破線で示した第4の透過率特性(ラインL4b)となっている。
ここで、実線で示した第4の透過率特性(ラインL4a)は、配置間隔が第1の間隔である場合の透過率特性である。また、破線で示した第4の透過率特性(ラインL4b)は、配置間隔が第2の間隔である場合の透過率特性である。このように、配置間隔が第1の間隔から第2の間隔に変化した場合、第4の波長領域(WL4)における透過率特性は、実線で示した第4の透過率特性(ラインL4a)から破線で示した第4の透過率特性(ラインL4b)に変化する。
走査に際して、初期位置から2つの光学素子31,32の少なくとも一方を移動させる。具体的には、第一の光学素子31を固定し、第二の光学素子32を、第一の光学素子31から離れる方向に移動させる。配置間隔が第1の間隔になったとき、第3の波長領域(WL3)における透過率特性は、ラインL3のようになる。ラインL3で示されるように、第3の波長領域(WL3)のうち、約400nmから約570nmの範囲では透過率が50%以上となっている。一方、第4の波長領域(WL4)における透過率特性は、上述のラインL4aのようになる。ここで、ラインL4aで示す透過率特性は、630nm付近に透過率が100%に近いピーク(第2のピーク)P4aを有している。
また、透過率は、ピークP4aの左右(前後)に向かって低下し、約600nmと約670nmの波長でそれぞれゼロとなっている。したがって、ラインL4aで示す透過率特性の透過範囲は、約600nmから約670nmになる。また、透過率が殆どゼロになる範囲は、ラインL3の長波長端(約590nm)からラインL4aの短波長端(約600nm)までの間と、ラインL4aの長波長側(約670nm〜900nm)になる。このように、ピークP4aの周囲には、透過率が殆どゼロの領域(遮光領域)が存在する。
次に、第二の光学素子32を第一の光学素子31に対し相対移動させ、配置間隔が第2の間隔となるようにする。具体的には、配置間隔が第1の間隔よりも大きくなるように、第二の光学素子32を移動させる。すると、ラインL4bに示すように、ピークの位置(波長)がP4aから長波長側にシフトし、ピーク(第2のピーク)P4bになる。これに対して、波長領域WL3のラインL3はほとんど変化しない。また、ラインL4bで示す透過率特性の透過範囲は、約670nmから約740nmになる。ただし、その幅は、ラインL4aで示す透過率特性と変わらず、約70nmになっている。
このように、第一の光学素子31と第二の光学素子32との間の空気層LGの厚さを変化させることにより、波長領域WL4内でピークの位置をP4aからP4bに変化させることができる。その結果、所定の波長領域内で、分光走査を行うことができる。
また、このエタロン型分光素子16では、走査に際して空気層LGの厚さを変化させても、約400nmから約570nmの波長領域で透過率が50%以上に保たれ、約570nmから約900nmの波長領域では、空気層LGの厚さの変化とともに透過率のピーク波長位置が変化するという透過率特性を実現できる。
さて、図6に示すような透過率特性は、上述のように、第一の光学素子31と第二の光学素子32を一対にして用いることで実現できる。この第一の光学素子31と第二の光学素子32について、説明する。以下では、第一の光学素子31を例にして説明するが、第二の光学素子32についても同様のことがいえる。
図5の分光透過率特性においても、説明の都合上、全体の波長領域を2つの波長領域にわける。図5では、第1の波長領域(WL1)と第2の波長領域(WL2)に分けている。第1の波長領域(WL1)の範囲は、約400nmから約570nmである。一方、第2の波長領域(WL2)の範囲は、約570mから約900nmである。
図5において、ラインL1は第一の光学素子31の透過率特性(第二の光学素子32も同様)を示している。ラインL1で示すように、第一の光学素子31は、第1の波長領域WL1で、50%以上の高い透過率となる透過率特性を持つ。また、第一の光学素子31は、第2の波長領域WL2で、50%以下の透過率となる透過率特性を持つ。さらに、第一の光学素子31は、第2の波長領域WL2内の700nm付近で、小さいピーク(第1のピーク)P1が形成されるような透過率特性を持つ。そして、このような透過率特性を有する光学素子31,32を対向配置することで、エタロン型分光素子16において透過率のピークにおける半値全幅を大きくすることができる。ここで、図5と図6とを比べると分かるように、ピークP1は、図6における第4の波長領域(WL4)内に位置している。この第4の波長領域(WL4)は、分光走査をする範囲である。よって、第一の光学素子31では、分光素子として使用した場合の分光走査する範囲(波長領域)でピークP1が生じるように、多層膜を構成するのが良いということになる。このようにすれば、この第一の光学素子31を一対で用いた分光素子において、透過率のピークにおける半値全幅を大きくすることができる。
また、ピークP1における透過率は、第2の波長領域(WL2)における最も低い透過率に比べて2%以上大きいことが好ましい。このようにすることで、ピークP4aやピークP4bの周囲に広がる透過率が殆どゼロの領域(遮光領域)において、透過率をより低くすることができる。
このように、この第一の光学素子31を一対で用いた分光素子、例えばエタロン型分光素子16は、第4の波長領域に存在する第2のピークにおける半値全幅を、例えば30nm以上というように広くできると共に、第4の波長領域における最も低い透過率を1%以下にすることができる。
なお、このエタロン型分光素子16は、約400nmから約570nmの波長領域において空気層LGの厚さを変化させても透過率が50%以上に保たれる第3の透過率特性と、約590nmから約900nmの波長領域において空気層LGの厚さの変化とともに透過率のピーク波長位置が変化する第4の透過率特性とを有している。
次に、本実施形態に係る光学ユニット1を有する蛍光内視鏡装置2により、生体組織の自家蛍光画像を取得する場合における作用について説明する。
まず、光源部5から射出する励起光を一定時間、生体組織表面Sに照射する。光源部5には、ピーク波長405±5nmの半導体レーザーを用いている。光源部5から射出された励起光は、自家蛍光物質を励起するための波長を含んでいる。これにより、コラーゲンやエラスチンを含む生体組織から、波長領域WL3に位置する主に500nm〜550nmを含む波長領域の蛍光を発生させると同時に、ポルフィリンを含む生体組織から、波長領域WL4に位置する630nm付近にピーク波長を持つ蛍光を発生させる。
ここで、蛍光を撮像部3で受光している期間に、可変機構17を作動させる。これにより、エタロン型分光素子16の第一の光学素子31と第二の光学素子32の間隔(配置間隔)が変化する。作動のための制御は、蛍光内視鏡装置2の制御部7から送信される制御信号により行われる。具体的には、第二の光学素子32が初期位置から移動して、空気層LGの厚さが520nmとなる第一の位置に到達する。このとき、ラインL4aにて示されるように、エタロン型分光素子16の透過率特性において、630nm付近にピークP4aが出現する。また、可変機構17によって第二の光学素子32をさらに移動させて、空気層LGの厚さが720nmとなる第二の位置に到達させる。すると、ラインL4bにて示されるように、エタロン型分光素子16の透過率特性において、700nm付近にピークP4bが出現する。
第二の光学素子32が第一の位置に設定されているとき(状態A1)には、図6に示すように、撮像部3の撮像面では、波長領域WL4内のラインL4aと波長領域WL3内のラインL3における蛍光が受光される。また、第二の光学素子32が第二の位置に設定されているとき(状態A2)には、撮像部3の撮像面では、波長領域WL4内のラインL4bと波長領域WL3内のラインL3における蛍光が受光される。状態A1における蛍光は、状態A1の間に画像信号D1としてメモリ回路8aに蓄積され、状態A2における蛍光は、状態A2の間に画像信号D2としてメモリ回路8aに蓄積される。
そして、蛍光内視鏡装置2では、上記の2つの状態を1サイクルとして、励起光を生体組織表面Sに対して繰り返し照射し、1サイクル中に2種類の画像信号を取得する。
得られた画像信号(D1,D2)は、画像処理部8の演算回路8bにより処理される。図12から分かるように、生体からの自家蛍光スペクトルは、ピークP4bの700nm付近ではほとんど強度を有していないので、状態A2で取得される蛍光強度(画像信号D2)は実質的に波長領域WL3の情報のみを反映している。一方、生体からの自家蛍光のうち、ポルフィリンによるスペクトル成分は、ピークP4aの630nm付近で極大になるので、状態A1で取得される蛍光強度(画像信号D1)は、波長領域WL3の情報に加え、波長領域WL4のピークP4a近傍の情報が加算されたものになる。したがって、画像信号D1から画像信号D2を差し引く演算を行うことにより、ピークP4a近傍の蛍光成分のみを有する新たな画像信号E1を生成することができる。
この光学ユニット1によれば、第二の光学素子32が第一の位置から第二の位置に変位しても、エタロン型分光素子16における分光透過率特性が、波長領域WL3で略一致している。よって、上記演算を行うことで、波長領域WL3と波長領域WL4の両方の情報を含んだデータから、波長領域WL3の情報を除去することができる。その結果、波長領域WL4のみにおける蛍光に関するデータを取り出すことができる。これは、所望の波長領域の光(蛍光)のみに対する測定が行えることを意味している。
また、第二の光学素子32が第二の位置にあるときには、波長領域WL3の情報のみが取得できるため、波長領域WL3の情報と波長領域WL4の情報を個別に取得することができる。上述したように、生体組織からの自家蛍光スペクトルには、波長領域ごとに生体組織に関する異なる情報が含まれているので、異なる波長領域の情報を個別に取得できることは診断に役立つものと考えられる。
このように、この実施の形態によれば、透過率のピーク波長を調整可能なエタロンタイプの光学ユニットにおいて、第4の波長領域WL4におけるピークP4aの半値全幅を大きくしたので、蛍光の透過光量を多くすることができ、生体の情報を従来よりも多く取得することが可能になる。
また、ピークP4a周囲の遮光領域の透過率が低いので、この領域の光をカットすることができ、ノイズを低減することが可能となる。
このエタロン型分光素子16を内視鏡に内蔵した場合には、炎症や腫瘍などの有無に応じて蛍光の強度の差を大きくすることができる。これによって、炎症や腫瘍を発見し易くなるなど、診断の精度を向上させることができる。
この実施の形態の実施例について以下に説明する。
図7に、実施例1に係るエタロン型分光素子16の光学素子31(32)の構造を示す。また、比較例として従来の光学素子の構造を示す。光学素子31(32)は、屈折率1.46の石英製の基板33上に、第1層としてTaからなる高屈折率膜を形成した。第1層のTaの屈折率は2.24であり、光学的膜厚ndを1.48×(λ/4)にした。第2層には、SiOからなる低屈折率膜を形成した。第2層のSiOの屈折率は1.47であり、光学的膜厚ndは0.19×(λ/4)にした。以降、第3層はTaを光学的膜厚ndで0.23×(λ/4)、第4層はSiOを光学的膜厚ndで1.16×(λ/4)、第5層はTaを光学的膜厚ndで1.03×(λ/4)、第6層はSiOを光学的膜厚ndで0.95×(λ/4)、第7層はTaを光学的膜厚ndで0.99×(λ/4)、第8層はSiOを光学的膜厚ndで0.91×(λ/4)、そして最上層の第9層はTaを光学的膜厚ndで1.08×(λ/4)形成した。
なお、本実施例の設計波長λは700nmであり、上記光学的膜厚ndの単位はいずれもnmである。
このようにして製造した光学素子31(32)と、2つの光学素子31,32を対向配置したエタロン型分光素子16の透過率特性を図8に示す。横軸は、波長(nm)を示し、縦軸は透過率(%)になっている。ラインL11で示すように、一方の光学素子31(32)のみの透過率特性は、約570nm未満の波長領域と、約900nm以上の波長領域で透過率が50%以上になっている。これに対して、約570nmから約900nmの間の波長領域では、透過率が30%程度になった。この波長領域では、緩やかで小さいピークが1つ形成されることで2つの谷が現れている。谷となっている部分で最も小さい透過率は25.8%、ピークの透過率は28.4%であり、その差は2.6%であった。
さらに、ラインL11に示す透過率特性を有する光学素子31,32同士を向かい合わせに配置したエタロン型分光素子16の、状態A1(空気層LGの厚さ520nm)における透過率特性が実線で示したラインL13、状態A2(空気層LGの厚さ720nm)における透過率特性が破線で示したラインL12である。状態A1のラインL13では、約570nm未満の波長領域で高い透過率になっており、さらに630nm付近に透過率の大きいピークが形成されている。このピークにおける半値全幅(透過率がピーク値の50%になる波長幅)は33nmであった。また、ピークの前後の遮光領域の最低透過率は、1.0%以下と極めて低かった。
これに対して、従来の光学素子として、屈折率1.46の石英製の基板上に、第1層としてTaからなる高屈折率膜(屈折率:2.24)を光学的膜厚ndで1.00×(λ/4)形成し、第2層としてSiOからなる低屈折率膜(屈折率:1.47)を光学的膜厚ndで1.00×(λ/4)形成した。さらに、第3層としてTaを光学的膜厚ndで1.00×(λ/4)、第4層としてSiOを光学的膜厚ndで1.00×(λ/4)、第5層としてTaを光学的膜厚ndで1.00×(λ/4)形成した。この際の設計波長λは、700nmである。
このようにして製造した従来の光学素子と、この従来の光学素子を一対にして対向配置したエタロン型分光素子の透過率特性を図9に示す。ラインL21で示すように、一方の光学素子のみの透過率特性は、約570nmから約900nmの間の波長領域で、透過率こそ20〜30%と実施例1とほぼ同様であるが、実施例1と異なり全体として1つの谷を形成していてピークは有しない。さらに、エタロン型分光素子の、状態A1(空気層LGの厚さ510nm)における透過率特性が実線で示したラインL23、状態A2(空気層LGの厚さ700nm)における透過率特性が破線で示したラインL22である。状態A1のラインL23では、630nm付近のピークにおける半値全幅が15nmであった。また、ピークの前後の遮光領域の最低透過率は2.7%であった。
このように、実施例1のエタロン型分光素子16では、630nm付近におけるピークの半値全幅が、比較例に対して2倍以上になっており、第4の波長領域の透過光量を多くすることができた。また、ピーク前後の遮光領域の最低透過率が比較例と比べて低いので、所望の波長領域以外の光を従来よりもカットすることができ、ノイズによる測定誤差を低減できた。
図10に、実施例2に係るエタロン型分光素子16の光学素子31(32)の構造を示す。光学素子31(32)は、屈折率1.46の石英製の基板33上に、第1層としてTaからなる高屈折率膜を光学的膜厚ndで1.32×(λ/4)、第2層としてSiOからなる低屈折率膜を光学的膜厚ndで0.32×(λ/4)形成した。TaとSiOの屈折率は、それぞれ2.24と1.47である。屈折率は、以下の各層についても同じである。
以降、第3層はTaを光学的膜厚ndで0.13×(λ/4)、第4層はSiOを光学的膜厚ndで1.28×(λ/4)形成した、第5層はTaを光学的膜厚ndで1.17×(λ/4)、第6層はSiOを光学的膜厚ndで0.8×(λ/4)、第7層はTaを光学的膜厚ndで1.14×(λ/4)、第8層はSiOを光学的膜厚ndで0.74×(λ/4)、そして最上層の第9層はTaを光学的膜厚ndで1.18×(λ/4)形成した。なお、本実施例の設計波長λは700nmであり、上記光学的膜厚ndの単位はいずれもnmである。
このようにして製造した光学素子31(32)と、2つの光学素子31,32を対向配置したエタロン型分光素子16の透過率特性を図11に示す。横軸は、波長(nm)を示し、縦軸は透過率(%)になっている。ラインL31で示すように、一方の光学素子31(32)のみの透過率特性は、約570nm未満の波長領域と、約900nm以上の波長領域の透過率は非常に高く、100%に近い。これに対して、約570nmから約900nmの間の波長領域では、透過率が30%程度になった。この波長領域では、緩やかで小さいピークが1つ形成されることで2つの谷が現れている。谷となっている部分で最も小さい透過率は28.6%、ピークの透過率は38.0%であり、その差は9.4%であった。
さらに、ラインL31に示す透過率特性を有する光学素子31,32同士を向かい合わせに配置したエタロン型分光素子16の、状態A1(空気層LGの厚さ520nm)における透過率特性が実線で示したラインL33、状態A2(空気層LGの厚さ710nm)における透過率特性が破線で示したラインL32である。状態A1のラインL33では、約570nm未満の波長領域で高い透過率になっており、さらに630nm付近に透過率の大きいピークが形成されている。このピークにおける半値全幅は50nmであった。また、ピークの前後の遮光領域の最低透過率は、1.0%以下と極めて低かった。
実施例2のエタロン型分光素子16では、630nm付近におけるピークの半値全幅が、図9に示す比較例の半値全幅に対して3倍以上になっているので、第4の波長領域の透過光量を多くすることができた。また、ピーク前後の遮光領域の最低透過率が比較例と比べて低いので、所望の波長領域以外の光を従来よりもカットすることができ、ノイズによる測定誤差を低減できた。さらに、実施例2によれば、実施例1に比べても半値全幅が大きくなった。実施例1と実施例2を比較することにより、光学素子31(32)の透過率特性において、第2の波長領域WL2におけるピークP1が大きいほど、前記ピークにおける半値全幅を大きくできることがわかった。
なお、本発明は、前記の実施の形態に限定されずに広く応用することができる。
例えば、蛍光内視鏡装置の構成は、励起光としてコヒーレント光を発振する光源ユニットを使用するなど、種々の変更が可能である。
また、エタロン型分光素子は、他の分光分析器に使用することもできる。さらに、自家蛍光に限定されずに、その他の蛍光や通常の光の分光に使用しても良い。
本発明の実施の形態に係る光学ユニットを備える蛍光内視鏡装置の全体構成を示す図である。 本発明の実施の形態に係る光学ユニットを示す概略構成図である。 本発明の実施の形態に係る光学フィルタの透過率特性を示すグラフである。 光学ユニットであるエタロン型分光素子の構成を示す図である。 光学素子単体の透過率特性を示すグラフである。 エタロン型分光素子の透過率特性を説明する模式図である。 実施例1に係る光学素子の構造と、比較例としての従来の光学素子の構造を示す図である。 実施例1に係る光学素子の透過率特性と、一対の光学素子を組み合わせたときの透過率特性を示す図である。 比較例に係る従来の光学素子の透過特性と、一対の光学素子を組み合わせたときの透過率特性を示す図である。 実施例2に係る光学素子の構造を示す図である。 実施例2に係る光学素子の透過率特性と、一対の光学素子を組み合わせたときの透過率特性を示す図である。 正常組織と病変組織との自家蛍光スペクトルの一例を示すグラフである。
符号の説明
1 光学ユニット
2 蛍光内視鏡装置(光学装置)
3 撮像部
5 光源部(光源ユニット)
13 対物光学系(光学系)
15 受光素子(撮像ユニット)
16 エタロン型分光素子(一対の光学素子)
17 可変機構(調整機構)
31,32 光学素子
34 多層膜
LG 空気層
WL1 第1の波長領域
WL2 第2の波長領域
WL3 第3の波長領域
WL4 第4の波長領域

Claims (5)

  1. 多層膜を有する光学素子であって、
    前記光学素子は、第1の波長領域において第1の透過率特性を有すると共に、前記第1の波長領域より長波長側の第2の波長領域において第2の透過率特性を有する前記多層膜を備え、
    前記多層膜は、透過率が最大になる第1のピークを前記第2の波長領域に有するように構成されていることを特徴とする光学素子。
  2. 前記第1のピークにおける透過率は、前記第2の波長領域における最も低い透過率に比べて2%以上大きいことを特徴とする請求項1に記載の光学素子。
  3. 一対の前記光学素子を対向配置した状態で得られる透過率特性は、第3の波長領域における第3の透過率特性と、前記第3の波長領域より長波長側の第4の波長領域における第4の透過率特性で表され、
    前記第1のピークは、前記第4の波長領域に存在することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光学素子。
  4. 対向して配置された一対の請求項3に記載の光学素子と、
    前記光学素子の光路上の間隔を調整する調整機構と、を備えた光学ユニットであって、
    前記第3の波長領域において前記第3の透過率特性を有すると共に、前記第3の波長領域より長波長側の前記第4の波長領域において透過率が最大になる第2のピークを有する第4の透過率特性を備え、
    前記第2のピークにおける半値全幅が30nm以上で、前記第4の波長領域における最も低い透過率が1%以下であることを特徴とする光学ユニット。
  5. 請求項4に記載の光学ユニットと、対象物に照明光を照射する光源ユニットと、前記対象物の像を形成する光学系と、前記像を撮影する撮像ユニットと、を備え、
    前記光学ユニットは、前記光学系と前記撮像ユニットの間に配置されていることを特徴とする光学装置。
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JP2009095683A (ja) * 2004-12-08 2009-05-07 Olympus Corp 蛍光内視鏡装置及びそれに用いる撮像ユニット
JP2013506160A (ja) * 2009-09-28 2013-02-21 クォルコム・メムズ・テクノロジーズ・インコーポレーテッド 干渉反射体を備えた干渉表示装置

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