JP2008171593A - 有機電解質電池およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】負極電極層の表面の露出金属部分に起因するリチウムデンドライトの析出を防止でき、また、露出金属部分の侵食を防止でき、高電圧、高エネルギー密度を有し、かつ量産性、信頼性に優れた有機電解質電池を提供する。
【解決手段】負極電極層の表面に露出した金属部分を有する負極を構成要素とする、電極層にリチウムイオンを担持させるタイプの有機電解質電池を製造する際に、露出金属部分を液状またはペースト状の絶縁性組成物で被覆した後、絶縁性組成物が硬化する前に負極電極層にセパレータを重ね合わせることにより絶縁性組成物をセパレータ内に浸透させ、その後絶縁性組成物を硬化させる。
【選択図】図3
【解決手段】負極電極層の表面に露出した金属部分を有する負極を構成要素とする、電極層にリチウムイオンを担持させるタイプの有機電解質電池を製造する際に、露出金属部分を液状またはペースト状の絶縁性組成物で被覆した後、絶縁性組成物が硬化する前に負極電極層にセパレータを重ね合わせることにより絶縁性組成物をセパレータ内に浸透させ、その後絶縁性組成物を硬化させる。
【選択図】図3
Description
本発明は、有機溶媒に支持電解質を溶解した電解液(有機電解液)を用いる電池(有機電解質電池)の製造方法に関する。
近年の電子機器の小型化、薄型化、高機能化に伴い、それら電子機器の主電源やバックアップ電源として用いられる電池に対する小型化、薄型化、軽量化、高容量化、高電圧化等への要求も高まっている。これらの電池としては各種の1次または2次電池が用いられているが、中でも繰り返し充放電が可能であり、交換の必要のない2次電池は特にこの用途に適している。
これら2次電池の例としては、主に主電源用途としてリチウムイオン電池やニッケル水素電池等、バックアップ用途としてはマンガン−リチウム合金系やマンガン−シリコン系のリチウム電池等があげられる。これらは3V級タイプであり高容量を有する反面、サイクル特性や過放電特性等の信頼特性に問題点を残している。これに対し、電気二重層キャパシタに代表される有機系キャパシタはサイクル寿命や高温負荷特性等に優れているが、容量が比較的小さく主として2V系であるため、高電圧化、高容量化が望まれている。
一方、高容量、高出力、高信頼性といったこれらの要求に同時に対応し得る蓄電装置として、近年、リチウムイオン電池と電気二重層キャパシタの蓄電原理とを組み合わせた蓄電デバイスが注目されている。その一つとして、リチウムイオンを吸蔵(担持またはドーピングともいう)、脱離し得る炭素材料に、予め化学的方法または電気化学的方法でリチウムイオンを吸蔵させて、負極電位を下げることによりエネルギー密度を大幅に向上できる有機電解質キャパシタが提案されている(特許文献1参照)。
この種の有機電解質キャパシタでは、高性能が期待されるものの、負極電極層に予めリチウムイオンを吸蔵させる場合に、極めて長時間を要することや負極電極層全体にリチウムイオンを均一に吸蔵させることに問題を有し、特に電極を捲回した円筒型電池や複数枚の電極を積層した角型電池のような大型の高容量セルでは、実用化は困難とされていた。
このような問題の解決方法として、正極集電体および負極集電体がそれぞれ表裏面に貫通する孔を備え、負極活物質がリチウムイオンを可逆的に吸蔵可能であり、負極または正極と対向して配置されたリチウム金属との電気化学的接触により負極電極層にリチウムイオンが吸蔵される有機電解質電池が提案されている(特許文献2参照)。すなわち、特許文献2には、上記有機電解質電池の例として正極および負極をセパレータを介して捲回してなる捲回体(電極捲回ユニット)の最外周の負極集電体にリチウム金属を貼り付けまたは前記捲回体の中心部に円柱状のリチウム金属を配置し、このリチウム金属と負極電極層とを電気的に接続させてリチウムイオンを負極電極層に吸蔵させる円筒型の捲回型リチウムイオン電池が開示されている。
特開平8−107048号公報(特許請求の範囲)
国際公開第WO98/033227号広報(特許請求の範囲)
上記のような、電極層にリチウムイオンを担持させるタイプの有機電解質電池では、充放電サイクルに伴い、リチウムデンドライトと呼ばれる結晶が析出し、ショートや容量劣化の原因となるといった問題があった。この現象は電極の周縁部等、電界の集中する部分で発生しやすいことから、これを防止するため、負極の周囲を正極より大きくしたり、電極周縁部を絶縁体で被覆する等の措置がとられるのが一般的である。
電極の周縁部以外においても、電池の構成上、負極電極層の表面に金属が露出している場合には上記と同様、その部分で電界が集中し、リチウムデンドライトが析出する可能性が考えられる。例えば負極電極層が形成されている電極集電体の裏面から負極用タブ端子をステッチングして、負極用タブ端子を負極と接合するセル設計の場合、接合位置の負極電極層表面に、負極集電体およびタブ端子の圧扁部(圧力を掛けて扁平にした部分)からなる金属部が露出することが避けられない(なお、このステッチングは、一般に「電極集電体にステッチングする」と称される場合もあるが、これはステッチングが行われる対象面に着目した表現であり、本発明に係る「電極にステッチングする」と同一の意味を有する)。
ステッチングは、例えば図1に示すように、電極層6と電極集電体5とからなる電極と、タブ端子圧扁部2,タブ端子丸棒部3,タブ端子CP線部4からなるタブ端子1のタブ端子圧扁部2とを重ね合わせ、タブ端子圧扁部2側から電極を貫通するようにステッチ針を貫通させ、これにより生じる電極およびタブ端子圧扁部2の返りをプレスにより押し潰して形成された花びら8により物理的に両者を接合する方法である。この花びら部分8が金属部として負極電極層の表面に露出する。なお、図1において矢印7はステッチ針の貫通方向を示す。
このような場合、ステッチングにおける花びら部分に代表される負極電極層の表面の露出金属部分においてリチウムの析出が起こる。そこで、負極電極層の表面に露出した金属部分を絶縁物で被覆することが必要となる。その簡便な被覆方法として、金属露出面に絶縁性のシールテープを貼る方法が考えられるが、この方法には以下のような問題点がある。
すなわち、図2におけるように、負極電極層の表面に露出した金属部分16を絶縁性のシールテープ14で被覆した場合、当負極被覆部分に対してセパレータを隔てて対向した正極上の部分(図2に符号17で示してある)は充放電するための対極を失うこととなる。
このような場合には、上記負極被覆部分の周辺15に電界が集中し、リチウムデンドライトが析出する恐れがある。これを防ぐためには、正極電極層のうち、上記負極被覆部分に対してセパレータを隔てて対向した部分17に対しても、図6に示すように同様の絶縁性のシールテープ14’で被覆するか、または同負極被覆部分に接するセパレータ上の部分を絶縁性のシールテープで被覆するといった措置を講じる必要があるが、いずれの場合も製造工程が煩雑となり、生産性の低下を招くといった問題点がある。
本発明の一態様によれば、
有機電解液、
正極電極層と正極集電体とを含んでなる正極、
負極電極層と負極集電体とを含んでなり、当該負極電極層の表面に露出した金属部分を有する負極および、
当該正極と負極との間に介在して当該正極と負極とを隔てるためのセパレータ
を含んでなる有機電解質電池であって、
当該有機電解液がリチウム塩と非プロトン性有機溶媒とを含んでなり、
当該負極電極層がリチウムイオンを可逆的に吸蔵可能な物質を含んでなり、
当該正極、セパレータおよび負極からなる層の断面に直交する方向から当該有機電解質電池を見た場合に、
当該セパレータのうち、当該露出金属部分に重なる部分に、絶縁性組成物が含浸されており、
当該絶縁性組成物が当該露出金属部分を完全に被覆するように当該露出金属部分と接触し、
当該絶縁性組成物の少なくとも一部が当該正極電極層に接し、あるいは、当該正極電極層に浸透している、
有機電解質電池、が提供される。
有機電解液、
正極電極層と正極集電体とを含んでなる正極、
負極電極層と負極集電体とを含んでなり、当該負極電極層の表面に露出した金属部分を有する負極および、
当該正極と負極との間に介在して当該正極と負極とを隔てるためのセパレータ
を含んでなる有機電解質電池であって、
当該有機電解液がリチウム塩と非プロトン性有機溶媒とを含んでなり、
当該負極電極層がリチウムイオンを可逆的に吸蔵可能な物質を含んでなり、
当該正極、セパレータおよび負極からなる層の断面に直交する方向から当該有機電解質電池を見た場合に、
当該セパレータのうち、当該露出金属部分に重なる部分に、絶縁性組成物が含浸されており、
当該絶縁性組成物が当該露出金属部分を完全に被覆するように当該露出金属部分と接触し、
当該絶縁性組成物の少なくとも一部が当該正極電極層に接し、あるいは、当該正極電極層に浸透している、
有機電解質電池、が提供される。
本発明態様により、負極電極層の表面の露出金属部分に起因するリチウムデンドライトの析出を防止できる有機電解質電池が得られる。また、露出金属部分の侵食を防止し得る有機電解質電池が得られる。
前記断面に直交する方向から当該有機電解質電池を見た場合に、当該正極電極層の表面のうち、当該露出金属部分に重なる部分が、絶縁性組成物により完全に被覆されていることが好ましい。
本発明の他の一態様によれば、
有機電解液、
正極電極層と正極集電体とを含んでなる正極、
負極電極層と負極集電体とを含んでなり、当該負極電極層の表面に露出した金属部分を有する負極および、
当該正極と負極との間に介在して当該正極と負極とを隔てるためのセパレータを
含んでなる有機電解質電池の製造方法において、
当該有機電解液がリチウム塩と非プロトン性有機溶媒とを含んでなり、
当該負極電極層がリチウムイオンを可逆的に吸蔵可能な物質を含んでなり、
当該露出金属部分を液状またはペースト状の絶縁性組成物で被覆した後、当該絶縁性組成物が硬化する前に当該負極電極層に当該セパレータを重ね合わせることにより当該絶縁性組成物をセパレータ内に浸透させ、その後当該絶縁性組成物を硬化させる、
ことを含む、有機電解質電池の製造方法、が提供される。
有機電解液、
正極電極層と正極集電体とを含んでなる正極、
負極電極層と負極集電体とを含んでなり、当該負極電極層の表面に露出した金属部分を有する負極および、
当該正極と負極との間に介在して当該正極と負極とを隔てるためのセパレータを
含んでなる有機電解質電池の製造方法において、
当該有機電解液がリチウム塩と非プロトン性有機溶媒とを含んでなり、
当該負極電極層がリチウムイオンを可逆的に吸蔵可能な物質を含んでなり、
当該露出金属部分を液状またはペースト状の絶縁性組成物で被覆した後、当該絶縁性組成物が硬化する前に当該負極電極層に当該セパレータを重ね合わせることにより当該絶縁性組成物をセパレータ内に浸透させ、その後当該絶縁性組成物を硬化させる、
ことを含む、有機電解質電池の製造方法、が提供される。
本発明態様により、負極電極層の表面の露出金属部分に起因するリチウムデンドライトの析出を防止でき、また、露出金属部分の侵食を防止し得る有機電解質電池を、量産性よく実現し得る。
前記負極電極層に前記セパレータを重ね合わせ、更にその上に前記正極電極層を重ね合わせることにより前記絶縁性組成物を前記正極電極層内に浸透させ、その後前記絶縁性組成物を硬化させることを含むことが好ましい。
また、上記二つの発明態様に共通して、前記正極および負極がセパレータを介して捲回されること(またはされたものであること)、負極用タブ端子がステッチングにより前記負極に接合されること(またはされたものであること)、および、前記正極集電体および負極集電体が、それぞれ表裏面を貫通する孔を有すること、が好ましい。
本発明により、負極電極層の表面の露出金属部分に起因するリチウムデンドライトの析出を防止できる。また、露出金属部分の侵食を防止し得る。高電圧、高エネルギー密度を有し、かつ量産性、信頼性に優れた有機電解質電池を実現し得る。
以下に、本発明の実施の形態を図、表、実施例等を使用して説明する。なお、これらの図、表、実施例等および説明は本発明を例示するものであり、本発明の範囲を制限するものではない。本発明の趣旨に合致する限り他の実施の形態も本発明の範疇に属し得ることは言うまでもない。なお、図中、同一の符号は同一の要素を表す。
(有機電解質電池)
本発明に係る有機電解質電池は、
有機電解液、
正極電極層と正極集電体とを含んでなる正極、
負極電極層と負極集電体とを含んでなり、当該負極電極層の表面に露出した金属部分を有する負極および、
当該正極と負極との間に介在して当該正極と負極とを隔てるためのセパレータ
を含んでなる有機電解質電池である。
本発明に係る有機電解質電池は、
有機電解液、
正極電極層と正極集電体とを含んでなる正極、
負極電極層と負極集電体とを含んでなり、当該負極電極層の表面に露出した金属部分を有する負極および、
当該正極と負極との間に介在して当該正極と負極とを隔てるためのセパレータ
を含んでなる有機電解質電池である。
この有機電解質電池は、更に、
当該有機電解液がリチウム塩と非プロトン性有機溶媒とを含んでなり、
当該負極電極層がリチウムイオンを可逆的に吸蔵可能な物質を含んでなり、
当該正極、セパレータおよび負極からなる層の断面に直交する方向から当該有機電解質電池を見た場合に、
当該セパレータのうち、当該露出金属部分に重なる部分に、絶縁性組成物が含浸されており、
当該絶縁性組成物が当該露出金属部分を完全に被覆するように当該露出金属部分と接触し、
当該絶縁性組成物の少なくとも一部が当該正極電極層に接し、あるいは、当該正極電極層に浸透している。
当該有機電解液がリチウム塩と非プロトン性有機溶媒とを含んでなり、
当該負極電極層がリチウムイオンを可逆的に吸蔵可能な物質を含んでなり、
当該正極、セパレータおよび負極からなる層の断面に直交する方向から当該有機電解質電池を見た場合に、
当該セパレータのうち、当該露出金属部分に重なる部分に、絶縁性組成物が含浸されており、
当該絶縁性組成物が当該露出金属部分を完全に被覆するように当該露出金属部分と接触し、
当該絶縁性組成物の少なくとも一部が当該正極電極層に接し、あるいは、当該正極電極層に浸透している。
この様子を図7に模式的に示す。図7では、有機電解質電池が、正極電極層10と正極集電体9とよりなる正極18、負極電極層12と負極集電体11とよりなる負極19および、正極18と負極19との間に介在して正極18と負極19とを隔てるためのセパレータ13を備えており、その全体が有機電解液で満たされている。
負極19には露出金属部分16が存在し、セパレータ13中に含浸させられた絶縁性組成物71は、正極18、セパレータ13および負極19からなる層の断面に直交する方向からこの有機電解質電池を見た場合(図7で言えば、紙面の上部から下部の方に向かう視線で眺めた場合)に、絶縁性組成物71が露出金属部分16を完全に覆うように露出金属部分と接触しており、また、正極電極層とも接触している。
このようになっていると、有機電解液がリチウム塩と非プロトン性有機溶媒とを含んでなり、負極電極層がリチウムイオンを可逆的に吸蔵可能な物質を含んでなる有機電解質電池で、上記のように絶縁テープで少なくとも二カ所被覆する場合と異なり、セパレータへの絶縁性組成物の含浸のみでリチウムの析出を効果的に抑えることが可能になる。また、金属部分が直接有機電解液中に露出しなくなるので、その侵食を防止し得るようになる。
本発明に係るリチウムイオン供給源(例えば、リチウム箔等のリチウム)は、通常他の導電体上に設けられている。この導電体をリチウム極集電体と呼称し、リチウムを導電体に設けた状態のものをリチウム極と呼称する場合がある。例えばリチウム金属を導電性多孔体上に形成することができる。このような導電体としては、ステンレスメッシュ等のリチウムイオン供給源と反応しない金属多孔体を用いることが好ましい。この導電体を負極集電体または正極集電体に電気的に接続し、有機電解液を注入することにより、リチウム金属が溶出し、溶出したリチウムイオンが、時間の経過と共に負極電極層または正極電極層に移動し、負極電極層または正極電極層に吸蔵される。
このような状態において、上記のように、負極電極層の表面に露出した金属部分を、それに対応するセパレータ部分と共に、被覆し絶縁化することにより、リチウムの析出を効果的に抑えることが可能になる。また、金属部分が直接有機電解液中に露出しなくなるので、その侵食を防止し得るようになる。
この結果、充放電サイクルに伴う、負極電極層の表面の露出金属部分に起因するリチウムデンドライトが発生し難く、信頼性の高い有機電解質電池が得られる。
本発明に係る露出金属部分は負極電極層の表面にある限り、どのような構成ものでも対象にし得るが、本発明は、負極用タブ端子がステッチングにより負極に接合されている場合に特に有用である。ただし、抵抗溶接、超音波溶接、コールドウェルド等のその他の端子接合方法が採用された場合でも、露出金属部分が負極電極層の表面にあれば、本発明を適用することが可能である。
本発明に係る露出金属部分の材質については、銅、ニッケル、銅ニッケル合金、ステンレス等、電極層にリチウムイオンを担持させるタイプの有機電解質電池の負極集電体または負極端子に用いられるものであれば特に制限はない。
絶縁性組成物は、一部負極や正極中に浸透した状態であってもよい。また、露出金属部分を完全に被覆していれば十分であり、露出金属部分以外の負極表面を被覆していてもよい。ただし、露出金属部分以外の負極表面を絶縁性組成物で被覆しても特段の利点はない。実用上は、1〜3mmほどはみ出る程度までを容易に実現できよう。
絶縁性組成物の正極電極層との接触については、絶縁性組成物の少なくとも一部が正極電極層に接し、あるいは、正極電極層に浸透していれば十分である場合もあるが、上記と同様に、正極、セパレータおよび負極からなる層の断面に直交する方向から有機電解質電池を見た場合に、正極電極層の表面のうち、露出金属部分に重なる部分が、絶縁性組成物により完全に被覆されていることが好ましい場合が多い。そうでないと対極を失った正極部分が残り、電界集中の原因となり得るからである。なお、本発明において、「接触」や「被覆」とは、対象物の対象面(例えば正極のセパレータと接する面)に単に接触している場合だけでなく、対象物(例えば正極)の内部にまで浸透している場合も含む概念である。
本発明に係る有機電解質電池は例えば図3に示す断面構造のように、正極および負極がセパレータを介して捲回されたものであることが好ましい。図3では、正極電極層と正極集電体とを含んでなる正極18と、負極電極層と負極集電体とを含んでなる負極19とが、セパレータ13を挟んで捲回されており、負極19の最外部には、通常箔状のリチウム20が接合している(正確には、リチウム20は負極集電体に接合されている)。このリチウムは捲回体の中心部に設けてもよい。両者を併用してもよい。この捲回体が有機電解液中に浸漬されることにより有機電解質電池が形成される。リチウム20はある期間が経過すると負極内に吸蔵されて消失する。
上記正極電極層を構成するものは、主として正極活物質である。正極活物質としては、リチウムイオンおよび/またはアニオンを可逆的に吸蔵できるものであれば特には限定されず、例えば活性炭、導電性高分子、芳香族系縮合ポリマーの熱処理物であってポリアセン系骨格構造を有するポリアセン系有機半導体(PAS)等を挙げることができる。また、LixCoO2、LixNiO2、LixMnO2、LixFeO2等のLixMyOz(Mは金属、二種類以上の金属でもよい)の一般式で表され得るリチウム含有金属酸化物、またはコバルト、マンガン、ニッケル等の遷移金属酸化物を用いることができる。
上記負極電極層を構成するものは、主として負極活物質である。負極活物質としては、リチウムイオンを可逆的に吸蔵できるものであれば特には限定されず、例えば黒鉛、難黒鉛化炭素、易黒鉛化炭素、活性炭、芳香族系縮合ポリマーの熱処理物であってポリアセン系骨格構造を有するポリアセン系有機半導体(PAS)等を挙げることができる。
本発明における正極電極層および負極電極層は、金属集電体上に成形されるが、その方法は特定されず既知の方法が使用できる。具体的には、電極活物質粉末、バインダおよび必要に応じて導電性粉末を水系または有機系溶媒中に分散させてスラリーとし、このスラリーを集電体に塗布後乾燥するかまたはこのスラリーを予めシート状に成形し、これを集電体に貼り付けることによって成形できる。ここで使用されるバインダとしては、例えばSBR等のゴム系バインダやポリ四フッ化エチレン、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素系樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂を用いることができる。
また、正極電極層や負極電極層は必要に応じてアセチレンブラック、グラファイト、金属粉末等の導電性材料を含んでいてもよい。これらの導電性材料は、上記のように電極活物質等と混合して用いる他に、予め金属集電体上にコーティングして導電層を形成させた後、その上から電極層を形成するようにしてもよい。このような場合には、正極が正極電極層と正極集電体と導電層とからなり、負極が負極電極層と負極集電体と導電層からなることになる。導電層は正極と負極のどちらか一方のみにあってもよい。
本発明における集電体としては、一般に有機電解質電池等の用途で提案されている種々の材質を用いることができ、正極集電体にはアルミニウム、ステンレス等、負極集電体には銅、ニッケル、ステンレス等をそれぞれ好適に用いることができる。形状は箔状、ネット状等、各種形状を選択できるが、特に負極電極層または正極電極層に予めリチウムイオンを吸蔵させる場合には、表裏面を貫通する孔を備えた材料、例えばエキスパンドメタル、パンチングメタル、金属網、発泡体、またはエッチングにより貫通孔を付与した多孔質箔、抄紙状のもの等が好ましく用いられる。このように表裏面を貫通する孔を備えた材料を集電体として用いると、図3に示したリチウムが溶解して生成したリチウムイオンが捲回の内部にある負極電極層や正極電極層まで容易に到達できる利点が得られる。これら表裏面を貫通する孔を備えた集電体に予め導電性材料をコーティングし、導電層を形成した後に電極層を形成する場合においても、導電層が微細な導電性粉末より形成されているため、リチウムイオンはこれら導電層を容易に通過することが可能である。
本発明の正極、負極に接続されるタブ端子の材料としては、正極用端子としてアルミニウム、ステンレス等、負極用端子として銅、ニッケル、銅ニッケル合金、ステンレス等をそれぞれ好適に用いることができ、電池の形状や仕様に合わせてステッチング、抵抗溶接、超音波溶接、コールドウェルド等の方法で接続される。
本発明に係る有機電解液には、有機溶媒に支持電解質を溶解してなる。この支持電解質は、有機電解質電池に使用できる公知の支持電解質から適宜選択することができるが、リチウムイオンを移送可能で高電圧でも電気分解を起こさず、リチウムイオンが安定に存在できるものであれば好適に使用できる。このような支持電解質としては、例えばLiClO4、LiAsF6、LiBF4、LiPF6、Li(C2F5SO2)2N等のリチウム塩を好適に用いることができる。
上記有機溶媒は、有機電解質電池に使用できる公知の溶媒から適宜選択することができるが、非プロトン性有機溶媒電解質溶液を形成できる非プロトン性有機溶媒が好ましく使用できる。この非プロトン性有機溶媒としては、例えばエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、γ−ブチルラクトン、アセトニトリル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、塩化メチレン、スルホラン等が挙げられる。更にこれら非プロトン性有機溶媒の二種以上を混合した混合液を用いることもできる。
上記有機電解液に対し、さらに第三成分として、電池の諸特性に効果のある公知の各種有機および/または無機添加剤を適宜選択して用いてもよい。
本発明に係るセパレータとしては、有機電解液および電極活物質、本発明で用いられる絶縁性組成物等に対して耐久性のある連通気孔を有する電気伝導性のない多孔体等のうち、上記絶縁性組成物が浸透、通過、含浸できるものが用いられる。このセパレータの材質としては、セルロース(紙)、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられ、既知のものが使用できる。
本発明に係る絶縁性組成物の絶縁性の程度については特に制限はなく、実際に使用できるかどうかで判断すればよい。例えば一般的に絶縁性を有すると称されるものの中から適宜選択すればよい。
本発明に係る絶縁性組成物は、単一の物質からなっていても複数の物質からなっていてもよい。従って、絶縁性を有する物質や絶縁性を有する物質を含む混合物が本発明に係る絶縁性組成物に該当し得る。
このような絶縁性組成物の組成には特に制限はなく、公知のものから適宜選択されるが、実用上、有機電解液および電極活物質等に対して耐久性があることが必要である。このような絶縁性組成物としては、エポキシ系、アクリル系、シリコン系、フェノール樹脂系、エステル樹脂系、合成ゴム系樹脂等が挙げられる。本発明に係る絶縁性組成物は「組成物」以外の呼称を有する場合もある。例えば「接着剤」と呼ばれるものも本発明に係る組成物の範疇に属し得る。硬化性樹脂を使用する場合、本絶縁性組成物は硬化済みの組成物に該当する。
(有機電解質電池の製造方法)
本発明に係る有機電解質電池の製造方法によれば、
有機電解液、
正極電極層と正極集電体とを含んでなる正極、
負極電極層と負極集電体とを含んでなり、当該負極電極層の表面に露出した金属部分を有する負極および、
当該正極と負極との間に介在して当該正極と負極とを隔てるためのセパレータを含んでなり、
更に、
当該有機電解液がリチウム塩と非プロトン性有機溶媒とを含んでなり、
当該負極電極層がリチウムイオンを可逆的に吸蔵可能な物質を含んでなる、
有機電解質電池において、
当該露出金属部分を液状またはペースト状の絶縁性組成物で被覆した後、当該絶縁性組成物が硬化する前に当該負極電極層に当該セパレータを重ね合わせることにより当該絶縁性組成物をセパレータ内に浸透させ、その後当該絶縁性組成物を硬化させることが含まれる。
本発明に係る有機電解質電池の製造方法によれば、
有機電解液、
正極電極層と正極集電体とを含んでなる正極、
負極電極層と負極集電体とを含んでなり、当該負極電極層の表面に露出した金属部分を有する負極および、
当該正極と負極との間に介在して当該正極と負極とを隔てるためのセパレータを含んでなり、
更に、
当該有機電解液がリチウム塩と非プロトン性有機溶媒とを含んでなり、
当該負極電極層がリチウムイオンを可逆的に吸蔵可能な物質を含んでなる、
有機電解質電池において、
当該露出金属部分を液状またはペースト状の絶縁性組成物で被覆した後、当該絶縁性組成物が硬化する前に当該負極電極層に当該セパレータを重ね合わせることにより当該絶縁性組成物をセパレータ内に浸透させ、その後当該絶縁性組成物を硬化させることが含まれる。
このようにすると、絶縁性組成物を硬化させることにより露出金属部分を被覆して絶縁すると同時に負極電極層とセパレータとが露出金属部分で固着される。
また、絶縁性組成物の少なくとも一部がセパレータ表面(負極電極層と相対する面とは反対側の面)にまで達するため、正極電極層表面のうち、上記露出金属部分に対してセパレータを隔てて対向した部分も実質的に(すなわち、リチウムデンドライトの生成を抑制できる程度に)被覆状態におくことができる。
このようにして、本発明態様により、負極電極層の表面の露出金属部分に起因するリチウムデンドライトの析出を防止できる。また、露出金属部分の侵食を防止し得る。
この結果、有機電解液がリチウム塩と非プロトン性有機溶媒とを含んでなり、負極電極層がリチウムイオンを可逆的に吸蔵可能な物質を含んでなる場合に、充放電サイクルに伴う、負極電極層の表面の露出金属部分に起因するリチウムデンドライトが発生し難く、信頼性の高い有機電解質電池を簡易な方法で実現でき、高電圧、高エネルギー密度を有し、かつ量産性、信頼性に優れた有機電解質電池を得ることができる。
なお、本発明態様の方法により、上記物の発明態様である有機電解質電池を好ましく製造することができるが、上記発明態様である有機電解質電池自体は特定の製造方法により制限を受けるものではなく、本発明態様の方法以外の方法により製造されるものも含まれ得る。例えば、製造上の都合から、最初に、露出金属を絶縁性組成物で被覆するのではなく、露出金属部分に対してセパレータを隔てて対向した正極表面部分を絶縁性組成物で被覆するやり方でも、上記物の発明態様である有機電解質電池を得ることが可能であるが、そのような有機電解質電池も本発明の範疇に属する。
本方法の発明態様は、具体的には、例えば、負極電極層の表面に露出した金属部分(例えば負極にステッチング接合されたタブ端子の花びら部分)に上記液状またはペースト状の絶縁性組成物を滴下または塗布して被覆した後、この絶縁性組成物が硬化する前に負極電極層にセパレータを重ね合わせることによりこの絶縁性組成物をセパレータ内に浸透させ、その後この絶縁性組成物を硬化させることにより金属部分を被覆、絶縁すると同時に負極電極層とセパレータとを固着することで実現できる。
この際、負極電極層にセパレータを重ね合わせ、更にその上に正極電極層を重ね合わせておけば、絶縁性組成物を正極まで浸透させることができるので、正極電極層表面のうち、上記露出金属部分に対してセパレータを隔てて対向した部分をより十分な被覆状態に置くことができ、好都合である。
この工程を図4、図5を用いて説明する。液状またはペースト状の絶縁性組成物41は、負極電極層12の表面に露出した金属面16を被覆するように滴下または塗布される。続いてこの絶縁性組成物41が硬化する前にセパレータ13を重ね合わせることにより、絶縁性組成物はセパレータ内13に浸透する。この時、絶縁性組成物が硬化する前に更に正極電極層10を重ね合わせ、この絶縁性組成物を正極電極層にまで浸透させてもよい。ただし、図5には、絶縁性組成物が正極電極層まで浸透した様子は描かれていない。なお、図5では、絶縁性組成物が、正極、セパレータおよび負極からなる層の断面に直交する方向から有機電解質電池を見た場合に、正極電極層の表面のうち、露出金属部分に重なる部分が、絶縁性組成物により完全に被覆されている場合を描いているが、露出金属部分に重なる部分が部分的に被覆されている場合も本発明の範疇に属することはこれまで述べた通りである。
重ね合わせには圧着を採用してもよい。絶縁性組成物の硬化方法については、絶縁性組成物の種類や工程上の都合により、自然硬化、加熱硬化、紫外線硬化等任意の方法を選択できる。また、二液性の絶縁性組成物を順次滴下し、反応硬化させてもよい。この絶縁性組成物の浸透、硬化した領域には有機電解液が侵入できないため、あるいは侵入しがたいため、図1で示したような電界の集中やリチウムデンドライトの生成を防ぐことが可能となる。
なお、本方法の発明態様における、構成要素の特徴や属性は上記有機電解質電池の発明態様における構成要素の特徴や属性と同様に考えることができる。すなわち、正極および負極がセパレータを介して捲回されること、負極用タブ端子がステッチングにより前記負極に接合されること、および正極集電体および負極集電体がそれぞれ表裏面を貫通する孔を有すること、は、本発明態様の好ましい形態である。
ただし、上記物の発明態様においては、絶縁性組成物が硬化後等のように、使用温度下では流動性を失ったものであるのに対し、本発明態様については、絶縁性組成物が液状またはペースト状であることという要件が加わる。典型的には未硬化の組成物である。これは上記含浸や浸透を可能とするための要件である。従って、実際に使用した場合に、セパレータへの含浸工程における温度において所望の含浸状態や含浸速度が得られれば、本発明態様に係る「液状またはペースト状」の要件を満たしていると考えることができる。
以下具体的な実施例を比較例と共に説明する。なお、評価に使用した特性は次の方法によって得た。
(セル容量)
セルを充放電試験装置(東洋システム株式会社製)に接続し、5Aの定電流でセル電圧が3.6Vになるまで充電し、その後3.6Vの定電圧を印加する定電流−定電圧充電を1分間行った。次いで、5Aの定電流でセル電圧が1.9Vになるまで放電した時の容量(mAh)をセル容量とした。測定は25℃下で行った。
セルを充放電試験装置(東洋システム株式会社製)に接続し、5Aの定電流でセル電圧が3.6Vになるまで充電し、その後3.6Vの定電圧を印加する定電流−定電圧充電を1分間行った。次いで、5Aの定電流でセル電圧が1.9Vになるまで放電した時の容量(mAh)をセル容量とした。測定は25℃下で行った。
(内部抵抗)
セルを1.9Vまで放電した状態で、ミリオームハイテスタ(日置電機株式会社製)に接続し、1KHzの交流内部抵抗を測定した。測定は25℃下で行った。
セルを1.9Vまで放電した状態で、ミリオームハイテスタ(日置電機株式会社製)に接続し、1KHzの交流内部抵抗を測定した。測定は25℃下で行った。
[実施例1]
(正極の作製)
市販の比表面積が1950m2/gの活性炭粉末100重量部と、ポリフッ化ビニリデン粉末10重量部をN−メチルピロリドン100重量部に溶解した溶液とを十分に混合することにより正極電極層用スラリーを得た。
(正極の作製)
市販の比表面積が1950m2/gの活性炭粉末100重量部と、ポリフッ化ビニリデン粉末10重量部をN−メチルピロリドン100重量部に溶解した溶液とを十分に混合することにより正極電極層用スラリーを得た。
次に、厚さ35μm(気孔率50%)のアルミニウム製エキスパンドメタル(日本金属工業株式会社製)の片面に非水系のカーボン系導電塗料(日本アチソン株式会社製:EB−815)をスプレー方式にてコーティングし、乾燥することにより導電層が形成された正極用集電体を得た。全体の厚み(集電体厚みと導電層厚みの合計)は45μmであり、集電体の貫通孔はほぼ導電塗料により閉塞された。なお、この導電塗料よりなる導電層はリチウムイオンを容易に通過させるので、集電体の貫通孔が導電塗料により閉塞されたことはリチウムイオンの拡散の妨げにはならない。
上記正極電極層用スラリーをロールコーターにて正極集電体の導電塗料が形成された面に塗布、成形し、プレス後正極全体の厚さが175μmの正極を得た。
(負極の作製)
厚さ0.5mmのフェノール樹脂成形板をシリコンユニット電気炉中に入れ、窒素気流中で40℃/時間の速度で昇温して、660℃まで熱処理を行い、板状のポリアセン系の有機物(PAS)を得た。かくして得られたPASをナイロンボールミルで粉砕しPAS粉末を得た。このPAS粉末の燃焼法によるH/C(水素と炭素のモル比)は0.21であった。
厚さ0.5mmのフェノール樹脂成形板をシリコンユニット電気炉中に入れ、窒素気流中で40℃/時間の速度で昇温して、660℃まで熱処理を行い、板状のポリアセン系の有機物(PAS)を得た。かくして得られたPASをナイロンボールミルで粉砕しPAS粉末を得た。このPAS粉末の燃焼法によるH/C(水素と炭素のモル比)は0.21であった。
次に、上記PAS粉末100重量部と、ポリフッ化ビニリデン粉末10重量部をN−メチルピロリドン80重量部に溶解した溶液とを十分に混合することにより負極電極層用スラリーを得た。このスラリーを厚さ32μm(気孔率50%)の銅製エキスパンドメタル(日本金属工業株式会社製)の片面にダイコーターにて成形し、プレス後負極全体の厚さ(片面の負極電極層厚さと負極集電体厚さの合計)が82μmの負極を得た。この銅製エキスパンドメタルが表裏面に貫通する孔を有する集電体に該当する。
(電極捲回素子の作製)
厚さ175μmの正極を幅3.0×長さ56.0cm2にカットし、アルミニウム製のタブ端子を電極層が形成されていない側の正極集電体面上に配置し、ステッチングによりタブ端子を正極に接合した。
厚さ175μmの正極を幅3.0×長さ56.0cm2にカットし、アルミニウム製のタブ端子を電極層が形成されていない側の正極集電体面上に配置し、ステッチングによりタブ端子を正極に接合した。
また、厚さ82μmの負極を幅3.2×長さ58.0cm2にカットし、銅ニッケル合金(ニッケル含有量43重量%)製のタブ端子(リード線部は錫メッキCP線)を電極層が形成されていない側の負極集電体面上に配置し、ステッチングによりタブ端子を負極に接合した。
上記負極に接合されたタブ端子は負極電極層表面にステッチングによる花びらを形成していた。この花びらを被覆するように一液性エポキシ系絶縁性組成物を滴下し、絶縁性組成物が硬化する前に、厚さ35μmのセルロース繊維性セパレータを介して、正極、負極の各タブ端子が同じ捲回の断面側に来るように正極と負極とを設置し、負極電極層が対向する正極電極層を包括するよう、また最外周がセパレータとなるよう捲回しテープ止めして電極捲回素子を3本作製した。これらの電極捲回素子を180℃で12時間、真空乾燥することにより、素子を乾燥すると同時に絶縁性組成物を完全硬化させた。
(電池の作製)
リチウム極として、リチウム金属箔(136μm、3.0×4.0cm2、400mAh/g相等)をリチウム極集電体としての厚さ32μm(気孔率50%)の銅製エキスパンドメタルに圧着したものを用い、このリチウム極を電極捲回素子の巻き止めテープに重ならないように、かつリチウム極のリチウム金属面が内側になるよう最外周に配置させ、リチウム極集電体の端子溶接部と負極集電体の端子溶接部を抵抗溶接し、三極捲回素子を得た。
リチウム極として、リチウム金属箔(136μm、3.0×4.0cm2、400mAh/g相等)をリチウム極集電体としての厚さ32μm(気孔率50%)の銅製エキスパンドメタルに圧着したものを用い、このリチウム極を電極捲回素子の巻き止めテープに重ならないように、かつリチウム極のリチウム金属面が内側になるよう最外周に配置させ、リチウム極集電体の端子溶接部と負極集電体の端子溶接部を抵抗溶接し、三極捲回素子を得た。
上記三極捲回素子を外径18mm(直径)、高さ40mmのアルミニウム製外装缶の内部へ挿入し、有機電解液として、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネートおよびプロピレンカーボネートを重量比で3:4:1とした混合溶媒中に、1モル/Lの濃度にLiPF6を溶解した溶液を真空含浸させた後、ブチルゴム製のキャップを被せて外装缶をかしめることにより円筒型のリチウムイオンキャパシタセルを3セル組み立てた。
(電池の特性評価)
セル組立て後20日間放置後に1セルを分解し、リチウム金属が完全に無くなっていることを確認した。残りの2セルにつき、5Aの定電流でセル電圧が3.6Vになるまで充電し、その後3.6Vの定電圧を印加する定電流−定電圧充電を1分間行った。次いで、5Aの定電流でセル電圧が1.9Vになるまで放電した。この3.6V−1.9Vのサイクルを10万回繰り返した。サイクル前後のセル容量、内部抵抗を評価した結果を表1に示す。データは2セルの平均である。
セル組立て後20日間放置後に1セルを分解し、リチウム金属が完全に無くなっていることを確認した。残りの2セルにつき、5Aの定電流でセル電圧が3.6Vになるまで充電し、その後3.6Vの定電圧を印加する定電流−定電圧充電を1分間行った。次いで、5Aの定電流でセル電圧が1.9Vになるまで放電した。この3.6V−1.9Vのサイクルを10万回繰り返した。サイクル前後のセル容量、内部抵抗を評価した結果を表1に示す。データは2セルの平均である。
その後セルを分解し、負極用タブ端子のステッチ部分を観察した。その結果、ステッチ部周辺へのリチウムの析出はなく、長時間使用してもショートや容量劣化が生じないものであることが判明した。
また、ステッチの花びら部分はセパレータと接着されており、ステッチ部分の侵食もなく、タブ端子と負極間の接続も強固に保たれていた。
[比較例1]
負極電極層表面にステッチングにより形成されたタブ端子の花びらを絶縁性組成物で被覆する代わりにPPS(ポリフェニレンスルフィド)製の絶縁性シールテープを貼って被覆した以外は、実施例1と同様にして3セルの電池組立てを行った。セル組立て後20日間放置後に1セルを分解し、リチウム金属が完全に無くなっていることを確認した。残りの2セルにつき同様の充放電サイクルを行った。サイクル前後のセル容量、内部抵抗を評価した結果を表1に示す。ただしデータは2セルの平均である。その後セルを分解し、負極用タブ端子のステッチ部分を観察した。その結果、タブ端子と負極間の接続は強固に保たれていたものの、負極電極層表面の絶縁性シールテープ周縁部に僅かながらリチウムデンドライトの痕跡が認められた。すなわち、この電池は、長時間使用すれば、ショートや容量劣化が生じる可能性があることが判明した。
負極電極層表面にステッチングにより形成されたタブ端子の花びらを絶縁性組成物で被覆する代わりにPPS(ポリフェニレンスルフィド)製の絶縁性シールテープを貼って被覆した以外は、実施例1と同様にして3セルの電池組立てを行った。セル組立て後20日間放置後に1セルを分解し、リチウム金属が完全に無くなっていることを確認した。残りの2セルにつき同様の充放電サイクルを行った。サイクル前後のセル容量、内部抵抗を評価した結果を表1に示す。ただしデータは2セルの平均である。その後セルを分解し、負極用タブ端子のステッチ部分を観察した。その結果、タブ端子と負極間の接続は強固に保たれていたものの、負極電極層表面の絶縁性シールテープ周縁部に僅かながらリチウムデンドライトの痕跡が認められた。すなわち、この電池は、長時間使用すれば、ショートや容量劣化が生じる可能性があることが判明した。
[比較例2]
負極電極層表面にステッチングにより形成されたタブ端子の花びらを絶縁物で被覆しなかったこと以外は、実施例1と同様にして3セルの電池組立てを行った。セル組立て後20日間放置後に1セルを分解し、リチウム金属が完全に無くなっていることを確認した。残りの2セルにつき同様の充放電サイクルを行った。サイクル前後のセル容量、内部抵抗を評価した結果を表1に示す。ただしデータは2セルの平均である。その後セルを分解し、負極用タブ端子のステッチ部分を観察した。その結果、表1に示す通り、セル容量が大幅に低下するとともに内部抵抗が大幅に上昇していた。また、セルの分解の結果、負極電極層表面の花びら部分に多量のリチウムデンドライトが析出していた。また負極はステッチ部分が侵食され、タブ端子と負極間の接続も弱くなっていた。これらの状況より、デンドライトの析出および侵食によってステッチ部分の接続強度が弱められて接続部分の接触抵抗が増大し、その結果、セルの内部抵抗の上昇と、それに伴う容量の低下が起こったものと考えられる。また、このまま更にサイクルを継続すれば、デンドライトが成長してショートに至る可能性があることが判明した。
負極電極層表面にステッチングにより形成されたタブ端子の花びらを絶縁物で被覆しなかったこと以外は、実施例1と同様にして3セルの電池組立てを行った。セル組立て後20日間放置後に1セルを分解し、リチウム金属が完全に無くなっていることを確認した。残りの2セルにつき同様の充放電サイクルを行った。サイクル前後のセル容量、内部抵抗を評価した結果を表1に示す。ただしデータは2セルの平均である。その後セルを分解し、負極用タブ端子のステッチ部分を観察した。その結果、表1に示す通り、セル容量が大幅に低下するとともに内部抵抗が大幅に上昇していた。また、セルの分解の結果、負極電極層表面の花びら部分に多量のリチウムデンドライトが析出していた。また負極はステッチ部分が侵食され、タブ端子と負極間の接続も弱くなっていた。これらの状況より、デンドライトの析出および侵食によってステッチ部分の接続強度が弱められて接続部分の接触抵抗が増大し、その結果、セルの内部抵抗の上昇と、それに伴う容量の低下が起こったものと考えられる。また、このまま更にサイクルを継続すれば、デンドライトが成長してショートに至る可能性があることが判明した。
上記試験結果が示すように、負極電極層の表面に露出した金属部分を絶縁性組成物で被覆し、同絶縁性組成物の硬化前に負極電極層にセパレータを重ね合わせた後、絶縁性組成物を硬化させることにより、信頼性、量産性に優れた有機電解質電池が得られる。
1 タブ端子
2 タブ端子圧扁部
3 タブ端子丸棒部
4 タブ端子CP線部
5 電極集電体
6 電極層
7 ステッチングの方向
8 返り部分(花びら)
9 正極集電体
10 正極電極層
11 負極集電体
12 負極電極層
13 セパレータ
14 絶縁性シールテープ
14’ 絶縁性シールテープ
15 電界の集中する位置
16 露出金属部分
17 正極電極層表面のうち露出金属部分に対してセパレータを隔てて対向した部分
18 正極
19 負極
20 リチウム
41 絶縁性組成物
71 絶縁性組成物
2 タブ端子圧扁部
3 タブ端子丸棒部
4 タブ端子CP線部
5 電極集電体
6 電極層
7 ステッチングの方向
8 返り部分(花びら)
9 正極集電体
10 正極電極層
11 負極集電体
12 負極電極層
13 セパレータ
14 絶縁性シールテープ
14’ 絶縁性シールテープ
15 電界の集中する位置
16 露出金属部分
17 正極電極層表面のうち露出金属部分に対してセパレータを隔てて対向した部分
18 正極
19 負極
20 リチウム
41 絶縁性組成物
71 絶縁性組成物
Claims (10)
- 有機電解液、
正極電極層と正極集電体とを含んでなる正極、
負極電極層と負極集電体とを含んでなり、当該負極電極層の表面に露出した金属部分を有する負極および、
当該正極と負極との間に介在して当該正極と負極とを隔てるためのセパレータ
を含んでなる有機電解質電池であって、
当該有機電解液がリチウム塩と非プロトン性有機溶媒とを含んでなり、
当該負極電極層がリチウムイオンを可逆的に吸蔵可能な物質を含んでなり、
当該正極、セパレータおよび負極からなる層の断面に直交する方向から当該有機電解質電池を見た場合に、
当該セパレータのうち、当該露出金属部分に重なる部分に、絶縁性組成物が含浸されており、
当該絶縁性組成物が当該露出金属部分を完全に被覆するように当該露出金属部分と接触し、
当該絶縁性組成物の少なくとも一部が当該正極電極層に接し、あるいは、当該正極電極層に浸透している、
有機電解質電池。 - 前記断面に直交する方向から当該有機電解質電池を見た場合に、当該正極電極層の表面のうち、当該露出金属部分に重なる部分が、絶縁性組成物により完全に被覆されている、請求項1に記載の有機電解質電池。
- 前記正極および負極がセパレータを介して捲回されたものである、請求項1または2に記載の有機電解質電池。
- 負極用タブ端子がステッチングにより前記負極に接合されている、請求項1〜3のいずれかに記載の有機電解質電池。
- 前記正極集電体および負極集電体が、それぞれ表裏面を貫通する孔を有する、請求項1〜4のいずれかに記載の有機電解質電池。
- 有機電解液、
正極電極層と正極集電体とを含んでなる正極、
負極電極層と負極集電体とを含んでなり、当該負極電極層の表面に露出した金属部分を有する負極および、
当該正極と負極との間に介在して当該正極と負極とを隔てるためのセパレータを
含んでなる有機電解質電池の製造方法において、
当該有機電解液がリチウム塩と非プロトン性有機溶媒とを含んでなり、
当該負極電極層がリチウムイオンを可逆的に吸蔵可能な物質を含んでなり、
当該露出金属部分を液状またはペースト状の絶縁性組成物で被覆した後、当該絶縁性組成物が硬化する前に当該負極電極層に当該セパレータを重ね合わせることにより当該絶縁性組成物をセパレータ内に浸透させ、その後当該絶縁性組成物を硬化させる、
ことを含む、有機電解質電池の製造方法。 - 前記負極電極層に前記セパレータを重ね合わせ、更にその上に前記正極電極層を重ね合わせることにより前記絶縁性組成物を前記正極電極層内に浸透させ、その後前記絶縁性組成物を硬化させることを含む、請求項6に記載の有機電解質電池の製造方法。
- 前記正極および負極がセパレータを介して捲回される、請求項6または7に記載の有機電解質電池の製造方法。
- 負極用タブ端子がステッチングにより前記負極に接合される、請求項6〜8のいずれかに記載の有機電解質電池の製造方法。
- 前記正極集電体および負極集電体が、それぞれ表裏面を貫通する孔を有する、請求項6〜9のいずれかに記載の有機電解質電池の製造方法。
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2007
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