JP2008170354A - 車輪のブレーキ温度推定装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 自動車又はその他の車両の車輪のブレーキ装置の温度又は温度変化を推定するのに適した新規な温度推定装置を提供すること。
【解決手段】 本発明の車両の車輪のブレーキ温度推定装置では、車輪のブレーキ装置の車輪とともに回転する回転体14に対して隙間dを空けて車両の回転しない部位18に設置され回転体との隙間の距離の変化に対応して変化する信号を発生する信号発生手段30と、隙間の距離の変化に基づいて回転体の温度を推定する推定手段50とを含む。隙間を検出する手段は、車輪速センサ等に用いられる電磁ピックアップなどであってよく、隙間の距離の変化が出力電圧の変化から算出される。
【選択図】図1

Description

本発明は、回転機械に於ける回転する部材(回転部材)の温度を推定する装置に係り、より詳細には、自動車又はその他の車両の車輪のブレーキ装置の温度又は温度変化を推定するのに適した温度推定装置に係る。
車両の車輪又はその他の回転体の摩擦ブレーキ装置に於いて、当業者にとって良く知られているように、摩擦部材が回転体に与える摩擦作用の大きさ又は摩擦力は温度によって変動する。例えば、自動車等の車輪に一般的に用いられているディスク式又はドラム式ブレーキ装置の場合、車輪と共に回転する回転体(ブレーキディスク又はブレーキドラム(以下、「ブレーキディスク等」とする。)に押し付けられて摩擦により回転を制動する摩擦部材(摩擦パッド又はブレーキシュー)の摩擦係数μの大きさは、ブレーキディスク等と摩擦部材の温度に依存するので、ブレーキディスク等に対する摩擦部材の押圧力が同じでも、それらの間に発生する摩擦制動力は大きく変動してしまうことがある。そこで、例えば、車両の制動力制御に於いて、車輪又はその他の回転体のブレーキ力を精度よく制御しようとする場合には、ブレーキディスク等の回転体の温度を参照して摩擦ブレーキ装置の制御量(摩擦部材の押圧力)が調節される。
上記の如き車両の摩擦ブレーキ装置のブレーキディスク等の回転体の回転中の温度は、例えば、自動車の場合、通常走行中に於いて、200℃程度にまで達し、レース車両のサーキット走行中に於いては、500℃程度にまで達することがある。そのような比較的高い(物体の)温度を測定しようする場合、一般的には、温度計測器として、熱電対センサ、放射温度計又は変形量を測定する変位計などが用いられるが、車輪と共に高速にて回転し且路面近くの苛酷な動作環境に置かれるブレーキディスク等の場合、前記の如き温度計測器では、耐久性が十分ではない。又、熱電対センサのように少なくとも一部を測定対象の物体に接触させる形式の計測器の場合、ブレーキディスク等は回転しているから、計測器の取り付け構造が複雑になる。従って、現在のところ、前記の如き温度計測器は、コスト、メンテナンス性、配置スペースなどの構造上の観点から、研究開発段階等の特殊な車両を除いて、あまり使用されない。一般的な、市場に於いて流通している車両に於いて摩擦ブレーキ装置のブレーキディスク等の温度を参照して制動力制御又は制動装置の作動制御を行う場合には、車両の走行履歴(車速、加減速、ブレーキの作動期間と強さの履歴)から算出される車両の運動エネルギーから熱エネルギーに変換された熱量と、外気温を用いて見積もられるブレーキディスク等からの放熱量とに基づいて推定される温度が用いられる。そのような車両の走行履歴から温度を推定する手法は、例えば、特許文献1又は2に於いて開示されている。
特開2001−32868 特開2006−69420
上記の如き車両の走行履歴と外気温等から摩擦ブレーキ装置のブレーキディスク等の回転体の温度を推定する手法では、実際に温度測定の対象であるブレーキディスク等からの情報を使用していないので、温度の推定値は、大雑把な値しか得られない。実験的には、或る程度の精度にて温度の推定に成功している場合もあるが、それでも、発熱量や放熱量の演算の誤差が積み重なると精度が徐々に悪化することとなる。かくして、現在のところ、一部の研究開発段階等の特殊な車両を除いては、摩擦ブレーキ装置のブレーキディスク等の回転体の温度を精度よく推定若しくは検出することは困難となっている。
既に述べた如く、ブレーキディスク等の回転体の温度は、摩擦部材とブレーキディスク等の回転体との摩擦力に影響し、従って、車輪上で発生する制動力にも影響する。従って、もしブレーキディスク等の回転体の温度をより簡便に且精度よく推定又は検出できるようになれば、車両に於いて、より精度よく制動力制御又は制動装置の作動制御を実行することができるようになる。
かくして、本発明の一つの課題は、自動車又はその他の車両の車輪のブレーキ装置の温度又は温度変化を推定するのに適した新規な温度推定装置を提供することである。
また、本発明のもう一つの課題は、上記の如き温度推定装置であって、従前の温度の推定方法又は検出方法とは全く別の発想によりブレーキディスク等の回転体の温度を推定する装置を提供することである。
本発明によれば、端的に述べれば、車輪のブレーキ装置の車輪と共に回転する回転体の熱膨張を利用した新規なブレーキ温度推定装置が提供される。
本発明の車両の車輪のブレーキ温度推定装置は、車輪のブレーキ装置の車輪とともに回転する回転体に対して隙間を空けて車両の回転しない部位に設置され回転体との隙間の距離の変化に対応して変化する信号を発生する信号発生手段と、隙間の距離の変化に対応して変化する信号に基づいて回転体の温度を推定する温度推定手段とを含むことを特徴とする。車輪のブレーキ装置の形式は、この分野に於いて知られている任意の形式の摩擦ブレーキ装置、例えば、所謂ディスク式ブレーキ、ドラム式ブレーキであってよく、従って、車輪とともに回転する回転体は、ブレーキディスク又はブレーキドラムであってよい。しかしながら、以下の説明から理解されるように、本発明の装置に於ける原理により温度の推定ができる回転体は、熱膨張する回転体であれば、任意のものであってよく、ブレーキ装置は、摩擦ブレーキ装置に限定されないことは理解されるべきである。
上記の本発明の装置の構成に於いては、まず、車両の回転しない部位に設置された信号発生手段からの信号により、その信号発生手段と回転体との隙間の距離の変化が検出される。そして、既に触れたように、回転体はその温度に依存して熱膨張するので、その熱膨張に伴う隙間の距離の変化に基づいて温度が推定されることとなる。上記の記載から理解されるように、信号発生手段は、回転体から隔置され、その隙間の距離の変化に対応した信号を発生するようになっているので、高速に回転する回転体に直接接触することはない。従って、信号発生手段の取り付けが容易であり、回転体上に熱電対センサを取り付ける場合のように回転する物体から電気信号等を引き出すような複雑な構成も必要なく、信号発生手段の耐久性を熱電対センサやその他の温度測定器を用いる場合に比して気にする必要がなくなる。
上記の本発明の装置に於いて、信号発生手段は、回転体と直接接触することなく、回転体との隙間の距離の変化に対応して変化する信号を発生するものであれば、如何なるものであってもよい。勿論、信号発生手段は、回転体の回転の有無に関わらず、隙間の距離に対応して変化する信号を発生する手段であってもよいが、ブレーキ温度が必要になるのは、通常、回転している回転体を制動する最中であるから回転体の回転中に回転体との隙間の距離の変化に信号を発生する手段であってもよい。
そのような信号発生手段としては、典型的には、電磁式に隙間の距離又はその変化に対応して信号を発生する手段、例えば、回転体の回転中に、回転体の表面に形成された突起又は窪み、或いは、凹凸によって該回転体の表面との隙間の距離が変化することによる磁気抵抗の変化に対応して変動する振動電圧信号を出力する電磁ピックアップが採用されてよい(この場合、回転体の表面の突起又は窪み或いは凹凸による隙間の距離の変化による磁気抵抗の変化に回転体の熱膨張による隙間の距離の変化による磁気抵抗の変化が重畳されて振動電圧信号に反映されることとなる。)。当業者にとって理解される如く、かかる電磁ピックアップの形式の信号発生手段であれば、埃やちりの多い車輪周辺の環境であっても、例えば、放射温度計のように検出部が埃やちりに覆われて赤外線を検出できなくなるといったことを気にする必要がなくなる。また、一般に、電磁ピックアップは、熱電対センサ等の温度センサに比して耐久性が良く、温度検出のためのコスト、メンテナンス性が改善される。なお、上記の如き電磁ピックアップは、典型的には、コイルとコイルの周囲に磁界を発生する磁石とを含み、コイルが回転体の回転に伴う磁界の変化により振動する電圧を出力する形式のものであってよい。
信号発生手段として採用される上記の如き電磁ピックアップに於いては、典型的には、信号発生手段の出力する振動電圧の振幅の大きさが回転体と信号発生手段との隙間の距離の関数となるので、実施の形態に於いては、電圧の振幅の大きさに基づいて回転体と電磁ピックアップとの間の距離の変化が推定され、しかる後に、回転体の温度が推定されてよい(推定の際に外気温が用いられてもよい(後述の実施形態の欄を参照)。)。また、信号発生手段の出力する電圧の振幅の大きさが更に回転体の回転速度の関数である場合には、電圧の振幅の大きさと回転速度に基づいて回転体の温度変化が推定されてよい。換言すれば、かかる実施形態に於いては、回転体の回転中に、該回転に伴う回転体との隙間の距離の変化に対応した電磁ピックアップが検知する磁気抵抗の変化から回転体の熱膨張による磁気抵抗の変化、即ち、回転体の温度についての情報を抽出して、該回転体の温度を推定するものであるということができる。
ところで、車両の車輪に於いては、全てではないが、通常、車輪速センサなどの回転体の回転数を検出するための回転数検出手段が設けられている。そのような回転数検出手段は、一般に、車輪とともに回転する回転体(この場合は、歯車)に対して隙間を空けて車両の回転しない部位に設置され、回転体上の凹凸又は突起又は窪みを利用して、回転体の回転ともに回転数検出手段と回転体表面との隙間の距離が変化することによる磁界の変化に対応して変動する振動電圧を出力する機構を採用しており、その振動電圧の振幅の大きさは、回転数検出手段と回転体の全体的な距離にも依存する。従って、本発明によるブレーキ温度の推定装置に於いては、車輪速センサなどの如き回転体の回転数を検出する回転数検出手段が、隙間の距離の変化を検出するための手段又は隙間の距離の変化に対応した信号を発生する手段として用いられてよい。本発明によるブレーキ温度推定装置の信号発生手段は、車輪速センサとは別に設けられてもよいが、車輪速センサを通常設けられている設置部位から温度が推定されるべき回転体との隙間が検出できる部位へ移動して、車輪速センサを本発明の信号発生手段と兼用にしてもよい。即ち、換言すれば、本発明によれば、回転数検出手段又は車輪速センサの出力から回転数検出手段又は車輪速センサと回転体との隙間の距離の変化を推定し、その隙間の距離の変化に基づいて回転体の温度を推定することを特徴とするブレーキ温度推定装置が提供されることとなる。その場合、車両に於ける車輪周辺の構造を若干修正するだけで、部品点数を増やすことなく、ブレーキ温度推定が実行できることとなり有利である。
なお、本発明の温度推定の手法、即ち、回転体に対して隙間を空けて回転しない部位に設置され回転体の回転中に回転体との隙間の距離の変化に対応して変化する出力信号を発生する信号発生手段を設け、回転体の熱膨張による回転体と信号発生手段との隙間の距離の変化に対応する信号発生手段の出力信号の変化に基づいて回転体の温度を推定するという手法は、車両の車輪のブレーキ装置以外の任意の回転機械の回転体の温度を取得する場合に適用されてよい。かくして、本発明のもう一つの態様に於いては、任意の回転機械の回転体のための温度推定装置が提供される。
上記の説明から理解される如く、本発明の特徴によれば、温度が推定されるべき回転体の熱膨張を利用して、その回転体と信号発生手段との間の隙間の変化が検出され、その隙間の変化に基づいて温度が推定されるようになっているので、高級な又は繊細なセンサを要することなく、車輪と共に高速にて回転し路面近くの苛酷な動作環境に置かれるブレーキディスク等の回転体の温度を取得することができる。従前の走行履歴と外気温等とから温度を推定するといった婉曲的な手法の場合では、測定対象の状態を一切観測せずに温度の推定を行うため、実際の推定には種々の条件を仮定する必要があり、また、仮定された条件が適切であるか否かに依存して演算処理に誤差が蓄積する可能性があり、従って、推定値は、或る程度大雑把にならざるをえなかった(温度の推定値の有効数字が少ない)。しかしながら、本発明の場合には、回転体に於けるリアルタイムの状態の変化(熱膨張)から直接に温度を推定するようになっているので、車両の走行履歴と外気温等に基づく推定方法に比して、仮定される条件は少なく、又、演算中の誤差が蓄積するといった不具合は気にする必要がなくなる。従って、ブレーキディスク等の温度が(精密なセンサなほどではないにしても)精度よく推定されることが期待される。
理解されるべきことは、本発明に於ける隙間の変化の信号発生手段は、車輪速センサ等の回転数検知手段に採用されている信号発生手段の構成を用いて達成できるということである。車輪速センサ等の信号発生手段は、一般の量産車に於いて採用されており、耐久性、信頼性及びコストの面で優れている。従って、本発明の装置に於いて、信号発生手段として、そのような回転数検知手段を用いれば、耐久性、信頼性及びコストに於いて優れたブレーキ温度推定装置を構成することが可能となる。
本発明のその他の目的及び利点は、以下に於いて、部分的に明らかになり、指摘される。
以下に添付の図を参照しつつ、本発明を幾つかの好ましい実施形態について詳細に説明する。図中、同一の符号は、同一の部位を示す。
装置の構成
図1は、車両のタイヤホイール10と車軸12との連結部分の構成を模式的な断面図にて示したものであり、ディスクブレーキ型の摩擦ブレーキ装置のブレーキディスク14の温度を推定するための本発明によるブレーキ温度推定装置の好ましい実施形態が組み込まれている。同図を参照して、ブレーキディスク14は、この分野に於いてよく知られているように、中央部分が開口したねずみ鋳鉄等の鋳鉄製の略円盤状の部材であり、タイヤホイール10と車軸12に固定的に連結されたハブ16の間に介装される。そして、タイヤホイール10、ブレーキディスク14及び車軸のハブ16は、ボルト及びナット(図示せず)により強固に締結され、これにより互いに一体的に車輪軸線A周りに回転する。また、ハブ16は、車体に固定されたナックル18により軸受20を介して回転可能に連結され、ホイール10から車軸12までの回転体が車体に対して回転可能に支持される。車輪(ホイール)の回転を制動する際には、ブレーキディスク14の半径方向外方にてブレーキパッド22がブレーキディスクの表面に押し付けられることより摩擦ブレーキ力が及ぼされ、これにより、車輪の回転運動エネルギーが熱エネルギーに変換されて、車輪の回転速度が低下する。
上記の車軸12からホイール10までの連結部の構成に於いて、ブレーキディスク14の回転が摩擦により制動されて熱エネルギーが発生すると、その熱エネルギーによる温度の上昇に対応して、ブレーキディスク14の熱膨張が生ずる。そこで、本発明によるブレーキ温度推定装置は、ブレーキディスク14と直接接触することなく配置されてブレーキディスク14との隙間の距離の変化に応じて信号を発生できる信号発生手段を用いて、ブレーキディスク14がその温度に対応して熱膨張することによりブレーキディスク14と信号発生手段との隙間の距離が変化することを利用して、ブレーキディスクの温度の変化が推定される。
上記の如きブレーキディスクの熱膨張による隙間の距離の変化を検出するための信号発生手段として、図示の実施形態に於いては、ナックル18上の、ブレーキディスク14の中央の開口の内径面14aに対向する位置に、内径面14aから隙間dを空けて電磁ピックアップ30が配置され、電磁ピックアップ30に対向するブレーキディスクの内径面14aには、突起部14bが設けられる。電磁ピックアップ30は、所謂、車輪速センサとして用いられる電磁コイル方式のピックアップであってよく、図2Aに於いて、より詳細に描かれているように、磁石32と、コイル34と、磁石32からの磁束(点線矢印)がコイル34を貫通して更にブレーキディスク14の内径面14aへ浸透するべくコイル34を貫通する略円柱状のポールピース36とを含み、コイルで発生した振動電圧が導線30bを介してコンピューター50にて受信される。コンピューター50は、通常、車両に搭載される電子制御装置が用いられてよく、コイルの出力電圧の振幅及び周波数を検出し、後に説明する演算処理が実行できるものであれば、任意のものであってよい。
上記の電磁ピックアップの構成によれば、通常の車輪速センサの場合と同様に、ブレーキディスクの回転時に、突起部14bが電磁ピックアップ30の先端部30aの前を通過すると、先端部30aとブレーキディスクの内径面14aとの間の距離が突起部14bの在る部分と無い部分との間で変化し、これに対応して磁気抵抗が変動するので、コイルを貫通する磁束量が時間変化し、図2Bに例示されている如く、コイルに於いて振動電圧(誘導起電力)が発生される。ここで、振動電圧の振幅は、先端部30aの前を突起部14bが通過する速度、即ち、ブレーキディスクの回転数と、そのときの磁気抵抗の変化に依存するが、更に、先端部30aからのブレーキディスクの内径面14aの全体的な距離(即ち、先端部30aとこれに対向した突起部14bとの距離d)によっても変化する。従って、ブレーキディスクの熱膨張により内径面14aが全体的に先端部30aから離れ、隙間の距離が大きくなると、振動電圧の振幅の変化から熱膨張の程度が推定され、これにより、ブレーキディスクの温度が推定できることとなる。なお、突起部14bに限らず、ブレーキディスクの内径面14aの形状は、ディスクの回転と共に、ブレーキディスクの内径面14aと電磁ピックアップの先端部30aとの間の磁気抵抗が変化する形状であれば、任意の形状であってよく、例えば、突起部の代わりに窪み部が形成されてもよい。また、内径面14a全周に亙って凹凸が形成されていてもよい。
ところで、上記の説明から理解される如く、本実施形態の装置に於いて信号発生手段として採用される電磁ピックアップは、車輪速センサと同様の原理にて、電圧信号を出力し、その周波数から車輪速を算出することができる。従って、本発明のブレーキ温度推定装置の電磁ピックアップは、車輪速センサとしても用いられてよく、その場合、車両に於いて、通常使用されている車輪速センサは設けられなくてもよい。なお、以下に説明される如く、本実施形態に於けるブレーキディスクの温度の推定演算に於いては、外気温が参照されるので、コンピューター50には、外気温センサ52からの温度検出値が入力される。また、電磁ピックアップからの電圧信号、温度センサからの信号は、以下に示す演算処理に利用できるよう、任意の手法にてコンピューター50内のA/D変換器によりディジタル化されてよい。
温度の推定
図3は、図1に例示の本発明の実施形態に於いて、ブレーキディスクの熱膨張の様子とそのときのピックアップ30の出力電圧の変化を模式的に表している。同図を参照して、ブレーキディスクの温度が外気温とほぼ一致しており、ブレーキディスクが実質的に熱膨張していないとき(常温時)、例えば、車両の発進前又は長時間摩擦制動を行っていないときには、図3Aの如く、電磁ピックアップの先端部30aとブレーキディスクの内径面14a(図では突起部14bの先端が基準として示されているがこれに限定されない。)との隙間は、電磁ピックアップ30を設置時の所定値dの状態となっている。かかる状態から、車両の走行中にブレーキディスクが制動されることにより、ブレーキディスクの温度が上昇し、これに伴って、ブレーキディスクが熱膨張すると、図3Bに於いて示されている如く、ブレーキディスクの内径面14a全体と先端部30aとの隙間の距離が増大する。このときのブレーキディスクの温度上昇量Δtと隙間の変化Δdとの関係は、温度上昇量Δtが大きいほど、隙間の変化Δdが大きくなるので、概ね、
Δt=ka・Δd …(1)
により与えられるとしてよい。ここで、kaは、比例定数である。従って、現在のブレーキディスクの温度Tbは、外気温Tairを用いて、
Tb=Tair+Δt
=Tair+ka・Δd …(2)
と推定することができる。
熱膨張による隙間の変化Δdは、電磁ピックアップの電圧信号の振幅Vの変化に基づいて算出することができる。まず、通常の車輪速センサの場合と同様に、電磁ピックアップの電圧信号の振幅は、ブレーキディスクの回転速度Rwに比例する。従って、
V=ks・Rw …(3)
により算出することができる。ここで、ksは、比例定数である。
常温時、即ち、ブレーキディスクが熱膨張していないとき(図3Aの状態)、或る回転数Rwのときの電磁ピックアップの電圧出力のピーク電圧をV(以下、「基準電圧」とする。)とするときに(図3C)、車輪速が同じでブレーキディスクの熱膨張により、隙間がΔdだけ拡がったとすると(図3B)、電磁ピックアップの電圧出力のピーク電圧振幅は低減するので(図3D)、そのときの低減幅ΔV=V−Vは、近似的に、Δdに反比例すると仮定することができる。かくして、出力電圧Vの全体の大きさが式(3)の如く回転数Rw(即ち、基準電圧V)に比例することを考慮して、或る回転数Rwのときの電磁ピックアップの電圧信号の振幅の変化ΔVは、近似的に、
ΔV=kc・V/Δd(kcは比例定数)
とすることができ、隙間の変化Δdは、近似的に、
Δd=kc・V/ΔV
=kc/(1−V/V
=kc/(1−V/ks・Rw) …(4)
により与えられる。従って、上記の推定方法によれば、車輪の回転数Rwと電磁ピックアップの電圧Vの変化に基づいて隙間の変化が推定され、これにより、更に温度が推定できることとなる。
実際に車輪に構成されたブレーキ温度推定装置に於いて、温度を推定する場合には、ブレーキディスク、突起部、電磁ピックアップの形状及び位置関係により、必ずしも、式(1)、(3)及び(4)のように、数学的に単純な関係にならない(ka、ks、kcが定数にならない)ことが多いので、実施に於いては、回転数Rwと基準電圧Vとの関係(ksの値)、電圧変化の比V/ΔVと隙間の変化Δdとの関係(kcの値)、隙間の変化Δdと温度変化Δtとの関係(kaの値)を表すそれぞれ実験的に(より詳細に理論的に)求められたマップが準備され、パラメータの換算に於いて使用されてよい。また、基準電圧Vが回転数Rwにより与えられるので、回転数Rwとピックアップ30の出力電圧値Vとの二つを変数とする温度変化Δtのマップを予め準備し、回転数Rwと電圧値Vと、更に外気温Tairに基づいてブレーキディスクの温度が推定されてもよい。
装置の作動
本発明の装置に於けるブレーキ温度の推定は、以下の(a)−(d)の処理過程により実行されてよい。
(a)車両発進時、温度センサからの信号から外気温Tairを取得する。なお、車両の走行中であっても、一定時間以上、制動操作が実行されていない場合には、外気温Tairのデータが更新されてもよい。
(b)車両の発進後、電磁ピックアップからの電圧信号Vの周波数より、ブレーキディスクの回転数Rwを取得し、回転数Rwと電磁ピックアップの基準電圧値Vとのマップ(図4A)から、現在の回転数Rwに対応する基準電圧値Vを算出する。
(c)次いで、現在の出力電圧のピーク値Vと基準電圧値Vから、電圧変化比V/ΔVを算出し、算出された電圧変化比V/ΔVを用いて、電圧変化比V/ΔVと隙間の変化Δdとのマップ(図4B)から、隙間の変化Δdを算出する。
(d)算出された隙間の変化Δdを用いて、隙間の変化Δdと温度変化Δtとのマップ(図4C)から、温度変化Δtを算出し、かくして、式(2)により、現在のブレーキディスク温度が推定される。
上記の本発明のブレーキ温度推定装置に於いて、特記されるべきことは、ブレーキディスクの回転に伴って信号発生手段(図示の実施形態では、電磁ピックアップ30)から出力される電圧を用いているので、得られた温度推定値は、ブレーキディスクの概ね平均値であると考えてよいことである。例えば、熱電対センサなどの温度計により接触式に温度を測定する場合には、仮に、耐久性の問題が解決したとしても、ブレーキディスク全体の平均の温度を算出するためには、測定個所を増やす必要があるが、本発明によれば、一つの信号発生手段により、容易にブレーキディスクの平均値が取得することができる。また、本実施形態に於ける信号発生手段は、既に車輪速センサとして回転速度を検出するために使用されてきた電磁ピックアップであってよいので、路面直上の車輪近傍の苛酷な環境に対しても良好な耐久性を得ることができる。更に、本発明のブレーキ温度推定装置に於いては、電磁ピックアップによりブレーキディスクの状態をリアルタイムに観測して得た検出値に基づいて温度推定しているので、ブレーキディスクの状態を観測しないで温度を推定する方法に比して演算処理による仮定に於ける誤差の蓄積が少なく、良好な精度にての温度の推定が期待される。
以上に於いては本発明を特定の実施例について詳細に説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施例が可能であることは当業者にとって明らかであろう。
例えば、本発明のブレーキ温度推定装置は、ドラムブレーキ式の摩擦ブレーキ装置のブレーキドラムの温度の推定を行うために適用されてよい。ブレーキドラムの温度を推定する場合にも、信号発生手段は、ブレーキドラムが熱膨張した際にブレーキドラムとの隙間が変動する任意の位置に配置され、上記と同様の原理により、隙間の距離の変化を対応して変化する信号を発生し、しかる後、信号発生手段の信号に基づいて得られる隙間の距離の変化から温度変化を推定するようになっていてよい。また、本発明のブレーキ温度推定装置に於ける信号発生手段は、電磁ピックアップに限らず、任意の原理にてブレーキディスク又はブレーキドラムまでの距離を測定できる手段、例えば、レーザーとフォトダイオードを用いて光学的に或る対象物までの距離を非接触式に検出する手段などであってもよい。
図1は、本発明の好ましい実施形態であるブレーキ温度推定装置が組み込まれた車両のタイヤホイールと車軸との連結部分の模式的な断面図である。図に於いて、車軸の回転軸線より上側のみが示されている。 図2Aは、図1の車軸の回転軸線の方向に観た図であり、電磁ピックアップの内部構造と電圧信号の発生について説明する図である。 図3は、ブレーキディスクの熱膨張によるブレーキディスクと電磁ピックアップとの位置関係の変化を説明する図1と同様の図である。図に於いては、車軸の回転軸線より上側のみが示されている。図3Aは、ブレーキディスクの温度が常温である場合を、図3Bは、ブレーキディスクの温度が上昇し、ブレーキディスクが熱膨張した状態を模式的に表している。図3Cは、図3Aの状態での電磁ピックアップの電圧出力の時間変化を示し、図3Dは、図3Bの状態での電磁ピックアップの電圧出力の時間変化を示している。なお、図3C及びDに於いては、+側の振幅のみが示されている。 図4A〜4Cは、本発明による温度推定の際に使用されるマップをグラフの形式で表したものである。
符号の説明
10…タイヤホイール
12…車軸
14…ブレーキディスク
16…ハブ
18…ナックル
20…軸受
30…電磁ピックアップ
50…コンピュータ

Claims (8)

  1. 車両の車輪のブレーキ温度推定装置であって、前記車輪のブレーキ装置の前記車輪とともに回転する回転体に対して隙間を空けて前記車両の回転しない部位に設置され前記回転体との前記隙間の距離の変化に対応して変化する信号を発生する信号発生手段と、前記隙間の距離の変化に対応して変化する信号に基づいて前記回転体の温度を推定する温度推定手段とを含むことを特徴とする装置。
  2. 請求項1の装置であって、前記回転体の表面が突起又は窪みを有し、前記信号発生手段が前記回転体の回転と共に前記信号発生手段と前記突起又は窪みを有する前記回転体との隙間の距離が変化することによる磁気抵抗の変化に対応して振動する電圧を出力する電磁ピックアップであることを特徴とする装置。
  3. 請求項2の装置であって、前記信号発生手段の出力する振動電圧の振幅の大きさが前記回転体と前記信号発生手段との隙間の距離の関数であり、前記電圧の振幅の大きさに基づいて前記回転体の温度変化を推定することを特徴とする装置。
  4. 請求項3の装置であって、前記信号発生手段の出力する振動電圧の振幅の大きさが更に前記回転体の回転速度の関数であり、前記電圧の振幅の大きさと前記回転速度に基づいて前記回転体の温度変化を推定することを特徴とする装置。
  5. 請求項2の装置であって、前記電磁ピックアップがコイルと前記コイルの周囲に磁界を発生する磁石とを含み、前記コイルが前記回転体の回転に伴う前記磁界の変化により振動する電圧を出力する形式の電磁ピックアップであることを特徴とする装置。
  6. 請求項1乃至5の装置であって、前記回転体がブレーキディスク又はブレーキドラムであることを特徴とする装置。
  7. 請求項1乃至6の装置であって、前記信号発生手段が前記回転体の回転数を検出するための回転数検出手段であり、該回転数検出手段と前記回転体との隙間の距離の変化に基づいて前記回転体の温度を推定することを特徴とする装置。
  8. 請求項1乃至7の装置であって、前記信号発生手段が車輪速センサであり、該車輪速センサと前記回転体との隙間の距離の変化に基づいて前記回転体の温度を推定することを特徴とする装置。
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