JP2008169895A - プーリ構造体及びこれを備える補機駆動システム - Google Patents

プーリ構造体及びこれを備える補機駆動システム Download PDF

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智和 石田
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Abstract

【課題】ベルトの張力変動を解消できると共に、共振し難いプーリ構造体を提供する。
【解決手段】ベルト103が巻き掛けられる筒状の第一回転体1と、この第一回転体1の内周側に枢設される筒状の第二回転体2と、前記の第一回転体1及び第二回転体2の間に形成されるバネ収容室3内に配され、径方向に作用する自己弾性復元力により前記の第一回転体1及び第二回転体2に対して端部4a・4bが夫々装着されるコイルバネ4と、を備える。前記の第一回転体1と第二回転体2の間の相対回転運動に対して摩擦力を付与する摩擦付与ユニット10が前記の第一回転体1及び第二回転体2の間に介設される。以上の構成によれば、前記プーリ構造体200の共振が抑制される。
【選択図】図2

Description

本発明は、プーリ構造体及びこれを備える補機駆動システムに関する。
この種の技術として特許文献1は、環状プーリ部材68と、ハブ構造体52(交流発電機のシャフト36が相対回転不能に固定される。)と、これらの間に設けられるコイルバネ88と、から成るプーリ26を開示する。この構成によれば、ベルトの張力変動が抑えられる、とされる。
特許3268007号公報(段落番号0011〜0013)
ところで、上記特許文献1に記載されるプーリ26の固有振動数をエンジンのアイドリング時における回転数によって観念される振動数以下となるように設定すると、エンジンの回転開始時(又は回転停止時、以下同様。)においてプーリ26は共振する。この結果、環状プーリ部材68とハブ構造体52の相対捩れ変位が急激に大きくなってコイルバネ88に過大な力が作用したり、コイルバネ88自体の破損を招くおそれがある。
本発明は斯かる諸点に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、ベルトの張力変動を解消できると共に、共振し難いプーリ構造体を提供することにある。本発明の他の目的は、ベルトの張力変動を解消できると共に、コイルバネに対する負荷が制限されたプーリ構造体を提供することにある。
課題を解決するための手段及び効果
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
本発明の第一の観点によれば、以下のように構成される、プーリ構造体が提供される。即ち、ベルトが巻き掛けられる筒状の第一回転体と、この第一回転体の内周側に枢設される筒状の第二回転体と、前記の第一回転体及び第二回転体の間に形成されるバネ収容室内に配され、径方向に作用する自己弾性復元力により前記の第一回転体又は第二回転体のうち少なくとも何れか一方に対して端部が夫々装着されるコイルバネと、を備える。前記の第一回転体と第二回転体の間の相対回転運動に対して摩擦力を付与する摩擦付与手段が前記の第一回転体及び第二回転体の間に介設される。以上の構成によれば、ベルトの張力変動が解消されると共に、前記プーリ構造体の共振が抑制される。
上記のプーリ構造体は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記摩擦付与手段は、環状の摩擦部材と、この摩擦部材を軸方向へ付勢する第一付勢手段と、から構成される。以上の構成によれば、前記の摩擦部材と付勢手段の位置関係が、前記第一回転体に対する前記第二回転体の挿入方向と概ね一致することとなるから、この点、組立て作業性の良好なプーリ構造体が実現される。
上記のプーリ構造体は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記第一付勢手段は、皿バネである。以上の構成によれば、前記第一付勢手段が簡素な構成で実現される。
上記のプーリ構造体は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記摩擦付与手段は、前記コイルバネの形状によって形成される円柱空間の外側に配される。以上の構成によれば、前記摩擦部材の摩擦面を大きく確保し易いので、この摩擦付与手段により付与される摩擦力の強弱の調整に関して有利である。
上記のプーリ構造体は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記摩擦付与手段は、環状の摩擦部材と、この摩擦部材を径方向へ付勢する第二付勢手段と、から構成される。以上の構成によれば、前記摩擦部材に対して作用されるすべての付勢力は軸心からみると概ね相殺されることとなるから、これらの付勢力が相殺されない構成と比較して、部品点数が少なく、或いは、簡素な構成が実現される。
上記のプーリ構造体は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記の第一回転体又は第二回転体のうち何れか一方の回転体に対する前記摩擦部材の相対回転は、規制される。以上の構成によれば、前記摩擦部材に対して擦れ合う部材が前記の第一回転体又は第二回転体のうち何れか一方の回転体のみに限定され、前記第二付勢手段により前記摩擦部材に対して作用させる付勢力の方向を拡径方向又は縮径方向の何れか一方のみで足りることとなるので、前記第二付勢手段の簡素な構成が実現される。
上記のプーリ構造体は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記第二付勢手段は、孔又はスリットが形成された環状バネから成り、この環状バネに対して前記摩擦部材が接着され、前記回転体には、前記環状バネに形成された前記の孔又はスリットに対して係合する係合部が設けられる。以上の構成によれば、前記回転体に対する前記摩擦部材の相対回転の規制が、簡素な構成で、実現される。
上記のプーリ構造体は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記摩擦部材に対する前記回転体の相対回転運動は、所定の相対角変位に至るまでの範囲内に限り許容される。以上の構成によれば、前記の第一回転体と第二回転体との間に大きな相対回転運動が生じた場合に限り前記摩擦部材による摩擦力が発揮されるので合理的といえ、更には長寿命なプーリ構造体が実現される。
上記のプーリ構造体は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記の孔又はスリットの周方向における長さは、前記係合部の周方向における長さよりも大きく設定される。以上の構成によれば、上記相対回転運動に対する上述の規制及び許容が、簡素な構成で実現される。
上記のプーリ構造体は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記摩擦付与手段は、軸方向でみたときに略正多角形状に屈曲されると共にスリットを有する環状バネを有して成る。前記環状バネは前記屈曲により形成される頂点において前記第一回転体に支持されると共に、隣り合う一対の前記頂点の間の辺に相当するバネ部に対して前記第二回転体が内周側から当接し、このバネ部が外周側へ弾性変形した状態とされる。以上の構成によれば、前記環状バネ内に蓄えられる弾性エネルギーにより前記の第一回転体又は第二回転体のうち少なくとも何れか一方に対して摩擦力が発揮される、極めて簡素な構成の摩擦付与手段が実現される。
本発明の第二の観点によれば、以下のように構成される、プーリ構造体が提供される。即ち、ベルトが巻き掛けられる筒状の第一回転体と、この第一回転体の内周側に枢設される筒状の第二回転体と、前記の第一回転体及び第二回転体の間に形成されるバネ収容室内に配され、径方向に作用する自己弾性復元力により前記の第一回転体又は第二回転体のうち少なくとも何れか一方に対して端部が夫々装着されるコイルバネと、を備える。前記の第一回転体と第二回転体との間の、所定の相対角変位以上の、相対回転を規制する相対回転規制手段が設けられる。以上の構成によれば、前記プーリ構造体の共振が発生しても、前記コイルバネに対する負荷が確実に制限される。
上記のプーリ構造体は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記の第一回転体と第二回転体の間の相対回転運動に対して摩擦力を付与する摩擦付与手段が前記の第一回転体及び第二回転体の間に介設される。以上の構成によれば、前記プーリ構造体の共振が抑制される。
エンジンのクランク軸と、このクランク軸に設けられるプーリとしての第一プーリと、オルタネータの駆動軸と、この駆動軸に設けられるプーリとしての第二プーリと、前記の第一プーリ及び第二プーリに対して巻き掛けられる共通のベルトと、を含んで構成される補機駆動システムにおいて、前記の第一プーリ又は第二プーリのうち少なくとも何れか一方に対して、上記のプーリ構造体が適用されることが好ましい。以上の構成によれば、長期に亘って安定してベルトの張力変動が解消される補機駆動システムを提供できる。
<第一実施形態>
先ず、自動車の補機駆動システムを概説する。図1は、自動車の補機駆動システムの構成概略図である。本実施形態において補機駆動システム100は、エンジンのクランク軸(Crank)と、このクランク軸に同軸状に設けられるプーリとしての第一プーリ101と、オルタネータの駆動軸(Alt)と、この駆動軸に同軸状に設けられるプーリとしての第二プーリ102と、前記の第一プーリ101及び第二プーリ102に対して巻き掛けられる共通のベルト103と、を含んで構成される。更に、補機駆動システム100は、エアコンプレッサー(A/C)104、パワーステアリング(P/S)105、ウォーターポンプ(W/P)106、などを含んで構成される。そして、第一プーリ101によりベルト103へ動力が伝達されると、このベルト103を介することにより該動力がオルタネータやエアコンプレッサーに伝達されるように構成される。以下、上記第二プーリ102に対して適用されるプーリ構造体について詳細に説明する。
図2を参照されたい。図2は、本発明の第一実施形態に係るプーリ構造体の断面図である。本実施形態においてプーリ構造体200は、図略のベルト103が巻き掛けられる筒状の第一回転体1と、この第一回転体1の内周側に枢設される筒状の第二回転体2と、第一回転体1及び第二回転体2の間に形成されるバネ収容室3内に配され、径方向に作用する自己弾性復元力により第一回転体1及び第二回転体2に対して端部4a・4bが夫々装着されるコイルバネ4と、を備えて成る。そして、第一回転体1と第二回転体2の間の相対回転運動に対して摩擦力を付与する摩擦付与ユニット(摩擦付与手段)10が第一回転体1及び第二回転体2の間に介設される。以下、更に詳しく説明する。
第一回転体1の軸方向一端側端部の外周面上には、巻き掛けられる図略のベルト103の軸方向への移動を適宜に規制する断面鋸状のプーリ体(リブプーリ、Ribbed Pulley)1aが形成される。一方、第二回転体2の内周面には、図略のオルタネータの駆動軸が螺合される。そして、第一回転体1に対して第二回転体2が同軸状に挿入された状態で、軸方向一端側において転がり軸受5が介装され、軸方向他端側においてL字状の滑り軸受6が介装されることで、第二回転体2は第一回転体1の内周側に枢設される。
第一回転体1の軸方向他端側に形成される第一バネ受け7は第一回転体1とは別体とされ、第一回転体1の内周面に対して圧入固定される。同様に、第二回転体2の軸方向一端側に形成される第二バネ受け8は第二回転体2とは別体とされ、第二回転体2に対して圧入により外嵌固定される。これら第一バネ受け7及び第二バネ受け8が第一回転体1及び第二回転体2と夫々別体に構成されるのは、プーリ構造体200の組立て作業性を考慮したものである。
バネ収容室3は、前述の通り、第一回転体1(第一バネ受け7を含む。)と第二回転体2(第二バネ受け8を含む。)の間に形成される。更に詳しくは、バネ収容室3は、径方向において第一回転体1と第二回転体2により区画され、軸方向において第一バネ受け7と第二バネ受け8により区画される。なお、前記の滑り軸受6は第一バネ受け7の内周面側に装着され、この第一バネ受け7から外周側へ延びる鍔部6aはバネ収容室3内とされ、もって、該鍔部6aは滑り軸受6の抜けを防止する機能を発揮する。一方、転がり軸受5はバネ収容室3と第二バネ受け8を挟んで軸方向反対側に配され、略示の止め輪5aと係合して軸方向において固定される。
コイルバネ4としては、図示する如く断面略矩形の線条体が螺旋状に形成されて成る角コイルバネが採用される(角コイルバネ以外のバネでも勿論よい。)。このコイルバネ4の軸方向他端側端部4aにおける内径は、無負荷状態において、第一バネ受け7の軸方向一端側に向かって延びるバネ支持部7aの外周面としてのバネ支持面7bにおける径よりも若干小さくなるように設定される。そして、コイルバネ4の該端部4aをバネ支持部7aのバネ支持面7bに対して僅少の拡径変形を伴いながら外嵌することで、コイルバネ4の端部4aは、縮径方向に作用する自己弾性復元力によりバネ支持部7aを介して第一回転体1に強力に固定される。同様に、このコイルバネ4の軸方向一端側端部4bにおける内径は、無負荷状態において、第二バネ受け8の軸方向他端側に向かって延びるバネ支持部8aの外周面としてのバネ支持面8bにおける径よりも若干小さくなるように設定される。そして、コイルバネ4の該端部4bをバネ支持部8aのバネ支持面8bに対して僅少の拡径変形を伴いながら外嵌することで、コイルバネ4の端部4bは、縮径方向に作用する自己弾性復元力によりバネ支持部8aを介して第二回転体2に強力に固定される。なお、このコイルバネ4の固定方法は一般にスプリングクラッチと称される。
次に、摩擦付与ユニット10の構成について詳細に説明する。
この摩擦付与ユニット10は、コイルバネ4の形状によって形成される円柱空間(コイルバネ4によって観念される円柱空間)の外側へ配され、詳しくはコイルバネ4と転がり軸受5を挟んで反対側に配される。摩擦付与ユニット10は、環状の摩擦部材11と、この摩擦部材11の軸方向一端側に配され、摩擦部材11を軸方向他端側へ付勢する皿バネ(第一付勢手段)12と、から構成される。
第二回転体2の外周面には摩擦付与ユニット10の軸方向他端側において外周側へ延出して成る鍔部13が設けられ、断面略矩形の摩擦部材11の軸方向他端側端面は該鍔部13に当接すると共に、該摩擦部材11の軸方向一端側端面は皿バネ12に当接する。皿バネ12は、軸方向他端側を摩擦部材11により支持され、軸方向一端側を第一回転体1の内周側に圧入される断面L字状の皿バネ受け14により支持される。即ち、軸方向一端側から他端側に向かって順に、第一回転体1に対して相対回転不能に嵌合する皿バネ受け14と、皿バネ12と、摩擦部材11と、鍔部13と、が配される。この構成で、皿バネ12は自己復元力により摩擦部材11に対して強力に面接触し、第一回転体1と共に回転する皿バネ12と、第二回転体2と共に回転する摩擦部材11と、が互いに摺動し合うことで、第一回転体1と第二回転体2の間の相対回転運動に対して摩擦力が付与されるようになっている。なお、摩擦部材11の素材としては、例えば真鍮、メッキ処理が為された真鍮、青銅、メッキ処理が為された青銅、ナイロン(合成樹脂)、ポリテトラフルオロエチレン(合成樹脂)、高分子量ポリエチレン(合成樹脂)が挙げられる。
以上説明したように上記実施形態においてプーリ構造体200は、以下のように構成される。即ち、ベルト103が巻き掛けられる筒状の第一回転体1と、この第一回転体1の内周側に枢設される筒状の第二回転体2と、前記の第一回転体1及び第二回転体2の間に形成されるバネ収容室3内に配され、径方向に作用する自己弾性復元力により前記の第一回転体1及び第二回転体2に対して端部4a・4bが夫々装着されるコイルバネ4と、を備える。前記の第一回転体1と第二回転体2の間の相対回転運動に対して摩擦力を付与する摩擦付与ユニット10が前記の第一回転体1及び第二回転体2の間に介設される。以上の構成によれば、ベルト103の張力変動が解消されると共に、前記プーリ構造体200の共振が抑制される。
上記のプーリ構造体200は、更に、以下のように構成される。即ち、前記摩擦付与ユニット10は、環状の摩擦部材11と、この摩擦部材11を軸方向へ付勢する皿バネ12と、から構成される。以上の構成によれば、前記の摩擦部材11と皿バネ12との位置関係が、第一回転体1に対する第二回転体2の挿入方向と概ね一致することとなるから、この点、組立て作業性の良好なプーリ構造体200が実現される。
上記のプーリ構造体200は、更に、以下のように構成される。即ち、前記摩擦付与ユニット10は、前記コイルバネ4の形状によって形成される円柱空間の外側に配される。以上の構成によれば、前記摩擦部材11の摩擦面(摩擦部材11と皿バネ12との接触面)を大きく確保し易いので、この摩擦付与ユニット10により付与される摩擦力の強弱の調整に関して有利である。
以上に本発明の好適な実施形態として第一実施形態を説明したが、上記第一実施形態は以下のように変更して実施できる。
◆ 即ち、上記実施形態においてコイルバネ4は、端部4aと端部4bの何れもが、径方向に作用する自己弾性復元力により前記の第一回転体1及び第二回転体2に対して夫々装着されるとしたが、これに限らず、何れか一方の端部4a(又は4b)は、他の公知の係止方法により第一回転体1(又は第二回転体2)に係止固定される構成でもよい。
◆ また、上記実施形態において第一バネ受け7は第一回転体1と別体としたが、これに限らず、第一バネ受け7は第一回転体1と一体成形してもよい。同様に、上記実施形態において第二バネ受け8は第二回転体2と別体としたが、これに限らず、第二バネ受け8は第二回転体2と一体成形してもよい。
◆ また、上記実施形態においてコイルバネ4は縮径方向に作用する自己弾性復元力により第一回転体1及び第二回転体2に固定されることとしたが、これに代えて、コイルバネ4は拡径方向に作用する自己弾性復元力により第一回転体1及び第二回転体2に固定されてもよい。勿論、コイルバネ4の端部4aは縮径方向に作用する自己弾性復元力により第一回転体1に固定され、一方でコイルバネ4の端部4bは拡径方向に作用する自己弾性復元力により第二回転体2に固定される構成でもよく、合理的な範囲内の適宜の変更は許容される。
<第二実施形態>
次に、本発明の第二実施形態を説明する。図3を参照されたい。図3は、本発明の第二実施形態に係るプーリ構造体の断面図である。以下、本実施形態に係るプーリ構造体200が上記第一実施形態と相違する点を中心に説明する。
本実施形態において第二回転体2は軸方向略中央において内周側へ若干狭窄された(括れた)形状とされる。換言すれば、第二回転体2の外周面には、摩擦付与ユニット10を収容するための摩擦付与ユニット収容溝15が形成される。この摩擦付与ユニット収容溝15内に摩擦付与ユニット10を収容するための便宜を図るため、本実施形態において第二回転体2は該摩擦付与ユニット収容溝15を境にして軸方向において分割できるようになっており、この第二回転体2の軸方向他端側の分割体16は、第二回転体2の軸方向一端側の分割体17の軸方向他端側端部に外嵌圧入される。
この摩擦付与ユニット収容溝15に収容され、第一回転体1と第二回転体2の間の相対回転運動に対して摩擦力を付与する摩擦付与ユニット10は、更に、断面L字状の押圧板18を含んで構成される。即ち、摩擦付与ユニット10は、バネ支持部7aの軸方向一端側の端面7cに当接する摩擦部材11と、この摩擦部材11に対して主として軸方向に当接する押圧板18と、摩擦付与ユニット収容溝15の軸方向一端側側面15aに支持され、押圧板18を摩擦部材11に対して付勢することで摩擦部材11を軸方向他端側へ向かって付勢する皿バネ12と、を軸方向他端側から軸方向一端側へ向かって順に配して成る。この構成で、皿バネ12の自己復元力により押圧板18は摩擦部材11へ向かって付勢されて押圧板18と摩擦部材11が強力に密着され、第一回転体1と共に回転する押圧板18と、第二回転体2と共に回転する摩擦部材11と、が互いに摺動し合うことで、第一回転体1と第二回転体2の間の相対回転運動に対して摩擦力が付与されるようになっている。
ここで、本発明の技術的な意義についてグラフを交えて説明する。図10を参照されたい。図10は従来のプーリ構造体を採用した場合の振動実験の実験結果を示し、(a)はエンジンの回転数を0〜3000[rpm]の間でスイープさせたときのロータの角速度を示し、(b)はエンジンの回転数をプーリ構造体が共振する周波数に対応させた状態(具体的にはエンジンの回転数を550[rpm]に設定した。)におけるプーリ構造体のプーリ及びロータの夫々の角速度を示す。図10(a)において横軸はエンジンの回転数[rpm]であり、縦軸は各回転数におけるロータの角速度である。図10(b)において横軸は時刻[sec]であり、縦軸は角速度[rad/sec]である。図10(a)に示されるように、従来のプーリ構造体は、一般に、エンジンのアイドリング時における回転数よりも低い回転数の際に共振するような固有振動数を有するように構成されていた(なお、振動系として質量側はオルタネータのロータが該当し、バネ側はプーリ構造体内に設けられるコイルバネが該当する。)。そのため、図10(b)に示されるように、エンジンの回転開始時や回転停止時においてエンジンの回転数が約550[rpm]を通過するたびにロータの角速度が大きく変動して、プーリとロータの相対角変位が大きくなって、コイルバネの固定端部に対して過大なトルクが作用して該端部が固定対象に対して滑ったり、コイルバネ自体が破損する虞があった。
次に、図11を参照されたい。図11は、図10と類似する図であって、上記第二実施形態に係るプーリ構造体を採用した場合の振動実験の実験結果を示す。本振動実験において第一回転体1と第二回転体2の相対回転運動に対しては常時、1.0[Nm]の摩擦力(摩擦トルク)が作用するようになっている。この場合、図11(a)に示されるように、エンジンの回転数をどのように設定しても、明確な共振現象が現れなかったことが判る。更に、図10(b)に係る実験の際に設定したエンジンの回転数と同一の回転数をエンジンの回転数に設定してみたところ、図11(b)に示されるようにプーリとロータの角速度が歩み寄って略一致したことが判る。このことから、第一回転体1と第二回転体2の間の相対回転運動に対して適度な摩擦力を付与することは、プーリ構造体の共振の抑制に対して極めて有効であると言える。
<第三実施形態>
次に、本発明の第三実施形態を説明する。図4を参照されたい。図4は、本発明の第三実施形態に係るプーリ構造体の断面図であり、図4(a)は図2に類似する図であり、図4(b)は図4(a)のX-X線断面図である。以下、本実施形態に係るプーリ構造体200が上記第一実施形態と相違する点を中心に説明する。
本実施形態において摩擦付与ユニット10Aは、第一回転体1の内周面に対して摺動する環状の摩擦部材11Aと、この摩擦部材11Aの内周側に配され、摩擦部材11Aを径方向外周側へ付勢する環状バネ(第二付勢手段)12Aと、から構成され、この摩擦付与ユニット10Aはプーリ構造体200の軸方向一端側端部に配される。摩擦部材11Aの素材としては、例えば真鍮、メッキ処理が為された真鍮、青銅、メッキ処理が為された青銅、ナイロン(合成樹脂)、ポリテトラフルオロエチレン(合成樹脂)、高分子量ポリエチレン(合成樹脂)が挙げられる。環状バネ12Aは断面略矩形であり、摩擦部材11Aに対して軸方向にズレることがないように、環状バネ12Aの外周面が当接する摩擦部材11Aの内周面には若干の段差が設けられる。環状バネ12Aの周上の一部にはスリット19が形成され、このスリット19の存在により環状バネ12Aは径方向へ拡縮可能とされ、このスリット19を挟む環状バネ12Aの両端部12a・12aは何れも内周側へ略直角に屈曲される。同様に、摩擦部材11Aの周上の一部にもスリットが形成され、この摩擦部材11Aのスリットと環状バネ12Aのスリット19とが軸心からみて一致するように摩擦部材11Aと環状バネ12Aは互いに接着される。第二回転体2の軸方向一端側端部には径方向に延びる孔20が穿設され、この孔20には、第二回転体2の外周面に対して垂直に外周側へ向かって延出し、環状バネ12Aに形成されるスリット19に対して係合する係合部材21が挿嵌される。上記の構成で、第二回転体2と摩擦部材11Aの間の相対回転は、該第二回転体2側から順に、該第二回転体2に形成される孔20と、該孔20に挿嵌される長尺の係合部材21と、この係合部材21が周方向に当接する環状バネ12Aの両端部12a・12aと、環状バネ12Aと、を介して規制され、摩擦部材11Aが第一回転体1の内周面に対して摺動することで、第一回転体1と第二回転体2の間の相対回転運動に対して摩擦力が付与されるようになっている。
以上説明したように本実施形態においてプーリ構造体200は、以下のように構成される。即ち、前記摩擦付与ユニット10は、環状の摩擦部材11Aと、この摩擦部材11Aを径方向へ付勢する環状バネ12Aと、から構成される。以上の構成によれば、前記摩擦部材11Aに対して作用されるすべての付勢力は軸心からみると概ね相殺されることとなるから、これらの付勢力が相殺されない構成と比較して、部品点数が少なく、或いは、簡素な構成が実現される。
上記のプーリ構造体200は、更に、以下のように構成される。即ち、第二回転体2に対する摩擦部材11Aの相対回転は、(完全に)規制される。以上の構成によれば、前記摩擦部材11Aに対して擦れ合う部材が第二回転体2のみに限定され、環状バネ12Aにより摩擦部材11Aに対して作用させる付勢力の方向が拡径方向のみで足りることとなるので、前記環状バネ12Aの簡素な構成が実現される。
上記のプーリ構造体200は、更に、以下のように構成される。即ち、スリット19が形成された環状バネ12Aに対して摩擦部材11Aが接着され、第二回転体2には、環状バネ12Aに形成されたスリット19に対して係合する係合部材21が設けられる。以上の構成によれば、第二回転体2に対する摩擦部材11Aの相対回転の規制が、簡素な構成で、実現される。
以上に本発明の好適な実施形態として第三実施形態を説明したが、上記第三実施形態は以下のように変更して実施できる。
◆ 即ち、上記実施形態においては、第二回転体2に対する摩擦部材11Aの相対回転が規制されるとしたが、これに代えて、第一回転体1に対する摩擦部材11Aの相対回転が規制されることとしてもよい。この場合、環状バネ12Aと摩擦部材11Aの径方向における配設順序は入れ替わり、係合部材21の設けられる部材が第二回転体2から第一回転体1へ切り替わるなど、合理的な変更が併せて為される。
◆ また、上記実施形態において環状バネ12Aには軸方向に延びる1本のスリット19が形成されるとしたが、これに代えて、環状バネ12Aの周方向における連続性を害しない孔が形成され、この孔に前記の係合部材21が係合して成る構成も考えられる。
<第四実施形態>
次に、本発明の第四実施形態を説明する。図5を参照されたい。図5は、本発明の第四実施形態に係るプーリ構造体の断面図であり、図4(b)に類似する図である。以下、本実施形態に係るプーリ構造体200が上記第三実施形態と相違する点を中心に説明する。
上記第三実施形態において摩擦部材11Aに対する第二回転体2の相対回転運動は完全に規制されることとしたが、これに代えて、本実施形態において該相対回転運動は、所定の相対角変位に至るまでの範囲内に限り許容される。即ち、環状バネ12Aに形成されるスリット19の周方向における長さαは、該スリット19に対して係合する係合部材21の周方向における長さβよりも大きく設定される。以上の構成で、第一回転体1に対して第二回転体2が相対回転すると、該相対回転が比較的小さい相対角変位内のものである場合には第二回転体2が摩擦付与ユニット10Aに対して当接することがないので、摩擦部材11Aの外周面において摩擦力は発生し得ない。一方、該相対回転が比較的大きな相対角変位で為される場合には第二回転体2が摩擦付与ユニット10Aの環状バネ12Aの両端部12a・12aに当接することもあり、当接したときには摩擦部材11Aの外周面において摩擦力が発生する。なお、摩擦部材11Aに対する第二回転体2の相対回転運動は、例えば42±10[deg.]程度に許容されるとよく、勿論、エンジンの特性に応じて適宜に増減するとよいだろう。
以上説明したように本実施形態においてプーリ構造体200は、以下のように構成される。即ち、摩擦部材11Aに対する第二回転体2の相対回転運動は、所定の相対角変位に至るまでの範囲内に限り許容される。以上の構成によれば、第一回転体1と第二回転体2との間に大きな相対回転運動が生じた場合に限り摩擦部材11Aによる摩擦力が発揮されるので合理的といえ、更には長寿命なプーリ構造体200が実現される。
上記のプーリ構造体200は、更に、以下のように構成される。即ち、スリット19の周方向における長さαは、係合部材21の周方向における長さβよりも大きく設定される。以上の構成によれば、上記相対回転運動に対する上述の規制及び許容が、簡素な構成で実現される。
<第五実施形態>
次に、本発明の第五実施形態を説明する。図6及び図7を参照されたい。図6は、本発明の第五実施形態に係るプーリ構造体の断面図であって、図2に類似する図である。図7は、摩擦付与ユニットを軸方向でみた図であり、図7(a)はプーリ構造体内に装着する前の摩擦付与ユニットを示し、図7(b)はプーリ構造体内に装着した後の摩擦付与ユニットを示す。以下、本実施形態に係るプーリ構造体200が上記第一回転体1と相違する点を中心に説明する。
図6及び図7に示されるように、本実施形態において摩擦付与ユニット10Bは、軸方向でみたときに略正多角形状(本実施形態において正八角形状)に屈曲されると共にスリット19Bを有する環状バネ12Bを有して成り、前記のスリット19Bの存在により環状バネ12Bは拡縮可能とされる。この環状バネ12Bは、若干縮径された状態で、前記屈曲により形成される頂点c・c・・・において第一回転体1に支持されると共に、隣り合う一対の前記頂点c・cの間の辺に相当するバネ部dに対して第二回転体2が内周側から当接し、このバネ部dが外周側へ弾性変形した状態とされる(図中、二点鎖線及び実線により該弾性変形を表現した。)。この弾性変形により蓄えられる弾性エネルギーにより、環状バネ12Bは頂点c・c・・・において第一回転体1に対して強力に線接触して該第一回転体1に対して略相対回転不能に支持され、一方、バネ部dにおいて第二回転体2に対して面接触する。以上の構成で、第二回転体2が第一回転体1に対して相対回転すると、第二回転体2の外周面が、第一回転体1に対して略相対回転不能に支持される環状バネ12Bのバネ部dの内周面に対して摺動し、このバネ部dの内周面と第二回転体2の外周面との間で摩擦力が発生し、もって、第一回転体1と第二回転体2の間の相対回転運動に対して摩擦力が付与されるようになっている。
以上説明したように本実施形態においてプーリ構造体200は、以下のように構成される。即ち、摩擦付与ユニット10Bは、軸方向でみたときに略正多角形状に屈曲されると共にスリット19Bを有する環状バネ12Bを有して成る。この環状バネ12Bは前記屈曲により形成される頂点c・c・・・において第一回転体1に支持されると共に、隣り合う一対の前記頂点c・cの間の辺に相当するバネ部dに対して第二回転体2が内周側から当接し、このバネ部dが外周側へ弾性変形した状態とされる。以上の構成によれば、前記環状バネ12B内に蓄えられる弾性エネルギーにより第二回転体2に対して摩擦力が発揮される、極めて簡素な構成の摩擦付与ユニット10Bが実現される。
以上に本発明の好適な実施形態としての第五実施形態を説明したが、上記第五実施形態は以下のように変更して実施できる。
◆ 即ち、例えば、上記実施形態において環状バネ12Bは、正八角形状に屈曲されることとしたが、これに限らず、正六角形状でも正十角形状でもよく、正多角形状であれば特に限定されない。ただし、正三角形状や正方形状など客観的に不合理と言える形状は除外されるべきと考えられる。
◆ また、上記実施形態において環状バネ12Bは、拡径方向に作用する自己弾性復元力によって頂点c・c・・・において第一回転体1に対して略相対回転不能に支持されるとしたが、これに加えて、該頂点c・c・・・と係合する係合溝を第一回転体1の内周面に刻設する構成も考えられる。
以上に、本発明の好適な実施形態として、第一実施形態乃至第五実施形態について詳細に説明したが、上記の摩擦付与ユニット10・10A・10Bなどによって第一回転体1と第二回転体2の間の相対回転運動に対して付与される摩擦力の効果乃至影響を紹介する。特に、本摩擦力を付与すると、第一回転体1(以下、単にプーリとも称する。)と第二回転体2(以下、単にロータとも称する。)についての角速度や相対角変位、スリップ率がどのように変化するのかを図を交えて以下に説明する。
図12〜15を参照されたい。図12〜15は、第一回転体と第二回転体の間の相対回転運動に対して付与される摩擦力の影響を評価するためのモデル計算の計算結果を示すグラフである。各図において符号(a)で図示されるグラフはプーリの角速度(図中、細線(”ALT Pulley”)で示す。)とロータの角速度(図中、太線(”ALT Rotar”)で示す。)を、横軸を時間として表したグラフであって、主として、プーリとロータの間の相対角速度を評価するためのグラフである。同様に、各図において符号(b)で図示されるグラフはプーリとロータの間の相対角変位(図中、”ねじりばね変位”に相当する。)を、横軸を時間として表したグラフであって、主として、プーリとロータの間に介装されるコイルスプリングへの負荷の程度を評価するためのグラフである。同様に、各図において符号(c)で図示されるグラフはスリップ率(図中、”ALT Slip Ratio”に相当する。)を、横軸を時間として表したグラフである。なお、スリップ率は、下記式で定義され、主として、プーリとベルトとの間で発生する耳障りなベルト鳴きを評価するためのものである。下記式から判る通り、スリップ率がゼロであると、ベルトとプーリが完全に同調していると言える。
(スリップ率)=((ベルトの走行速度)−(プーリの周速度))/(ベルトの走行速度)
(計算条件)
・計算モデルは第五実施形態に係るプーリ構造体200に基づくものとし、第一回転体1と第二回転体2の間の相対回転運動に付与される摩擦トルクは各図の上部に夫々記載したので参照されたい。
・エンジンの回転数は、計算開始時(Time=0.0[sec])において0[rpm]とし、計算終了時(Time=0.66[sec])において2000[rpm]とし、計算開始時から計算終了時にかけて回転数を等加速度的に変化させた。
先ず、図12を参照されたい。図12に示される計算結果は、転がり軸受5などに起因する不可避の摩擦トルクのみが上記相対回転運動に作用された計算モデルに基づくものである。本図(a)によればTime=0.47[sec]付近でプーリとロータとの間に大きな相対回転速度(共振に起因するものと思われるもの。)が生じており、本図(b)に示されるようにコイルバネには大きな負荷が働いている。この結果、コイルバネが本来的に果たすべき役割としてのベルトの張力変動の吸収機能は損なわれ、ベルトがプーリ上で大きなスリップを起こしていることが判る。なお、一概には言えないが、経験上、スリップ率の振れ幅(スリップ率p-p[%])が2[%]を上回ると、ベルト鳴きが発生することが知られている。つまり、上記相対回転運動に作用する摩擦トルクを、転がり軸受5などに起因する不可避の摩擦トルクのみとするようでは、到底、プーリ構造体の共振が抑えられず、エンジンの回転始動時及び回転停止時においてベルト鳴きが避けられないことが判る。
次に、図13〜15を参照されたい。図13〜15に示される計算結果は、上記の不可避の摩擦トルクに加え摩擦付与ユニット10等による摩擦トルクが上記相対回転運動に作用された計算モデルに基づくものである。図13によれば、上記相対回転運動に対して1[Nm]程度の摩擦トルクを付与しただけでは、大きな相対角速度の発生(共振に起因するものと思われるもの。)は殆ど抑えられないことが判る。図14によれば、上記相対回転運動に対して3[Nm]程度の摩擦トルクを付与すると、大きな相対角角速度の発生(共振に起因するものと思われるもの。)が効果的に抑制されたことが容易に読み取れ、更には、符号(c)で示されるグラフにより、ベルト鳴きも効果的に回避されていることも判る。しかし、図15によれば、上記相対回転運動に対して6[Nm]程度の大きな摩擦トルクを付与すると、確かに大きな相対角速度の発生は効果的に抑制されているが、一方で、ベルト鳴きの発生が抑制できていないところから、摩擦トルクが大きすぎてコイルバネの本来的な機能(ベルトの張力変動を吸収する機能)が損なわれているのが想像されよう。
なお、上記の図12〜15に示された計算結果については、実機を用いた実測により裏付けがとれていることを付記する。この実測の方法は、以下の通りとした。
<角速度の測定>
・測定対象:プーリについてはその外周面の周速とし、ロータについては端部を延長して得た外周面の周速とする。
・測定方法:上記外周面に対してレーザ光線を斜めに断続的に照射し、その反射した光の間隔を記録する。この反射した光の間隔に基づいて周速を求め、各外周面の径を考慮しつつ角速度へ換算する。
<ねじりばね変位の測定>
ねじりばね変位は、(i)上記測定により得られた角速度を積分し、(ii)プーリの角変位とロータの角変位との差に基づいて求める。
<ベルトの走行速度>
ベルトの走行速度は、ワウフラッター測定器を用いて測定する。スリップ率は、上記の定義に基づいても求める。
以上、図12〜15に基づく種々の考察は、図16の如くまとめられる。図16は、第一回転体と第二回転体の間の相対回転運動に付与される摩擦トルクと、最大捩れ角度(図中、「捻れ角度」に対応する。)と、の関係を示すグラフであって、図12〜15に示される計算結果に基づいて作成したものである。本図によれば、上記相対回転運動に対して約2〜5[Nm]程度の摩擦トルクを付与すると、共振に起因して発生するコイルバネに対する負荷が低減される(捩れ角度:小)と共にベルトの張力変動が十分に吸収される(推測で描いたベルト発音域を参照。)という観点から概ね良好な結果が得られるだろうと推測される。
<第六実施形態>
次に、本発明の第六実施形態を説明する。図8を参照されたい。図8は、図5に類似する図であって、本発明の第六実施形態に係るプーリ構造体の断面概略図である。以下、本実施形態に係るプーリ構造体200が上記第一実施形態と相違する点を中心に説明する。
上記第一実施形態においては第一回転体1と第二回転体2との間に摩擦付与ユニット10を介設することとしたが、これに代えて、本実施形態では、第一回転体1と第二回転体2との間の、所定の相対角変位以上の、相対回転を規制する相対回転規制構造24(相対回転規制手段)が2セット、設けられる。この相対回転規制構造24は、突部25と突部収容溝26を含んで以下のように構成される。即ち、第二回転体2の外周面から外周側へ向かって延びる突部25が突設され、一方で、第一回転体1の内周面には軸方向でみたときに扇状となる突部収容溝26が凹設される。そして、この突部収容溝26内において突部25が周方向に沿って所定の相対角変位の範囲内に限り自在に移動可能とされると共に、該突部25が突部収容溝26の周方向における側面26aに当接したときに第一回転体1と第二回転体2の間のそれ以上の相対回転が確実に規制されるようになっている。
以上説明したように上記実施形態においてプーリ構造体200は、以下のように構成される。即ち、ベルト103が巻き掛けられる筒状の第一回転体1と、この第一回転体1の内周側に枢設される筒状の第二回転体2と、第一回転体1及び第二回転体2の間に形成されるバネ収容室3内に配され、径方向に作用する自己弾性復元力により第一回転体1及び第二回転体2に対して端部4a・4bが夫々装着されるコイルバネ4と、を備える。第一回転体1と第二回転体2との間の、所定の相対角変位以上の、相対回転を規制する相対回転規制構造24が設けられる。以上の構成によれば、前記プーリ構造体200の共振が発生しても、コイルバネ4に対する負荷が確実に制限される。
以上に本発明の好適な実施形態として第六実施形態を説明したが、上記第六実施形態は以下のように変更して実施できる。
◆ 即ち、上記実施形態において相対回転規制構造24は2セットで設けられることとしたが、これに代えて、1セットのみで設けられてもよいし、3セット以上で設けられてもよい。
◆ また、図9に示されるように、第二回転体2から延びる突部25が軸方向と平行に延在し、該突部25が挿入され、周方向に沿って移動自在となるような突部収容長孔27が前記の突部収容溝26に代えて第一回転体1に穿設される構成に変更してもよい。この場合でも、前記プーリ構造体200の共振の発生時に、コイルバネ4に対する負荷が確実に制限される。
◆ また、図2〜7の何れかに示される摩擦付与ユニット10等を追加として含んで構成されてもよい。即ち、第一回転体1と第二回転体2の間の相対回転運動に対して摩擦力を付与する摩擦付与ユニット10等が第一回転体1及び第二回転体2の間に介設される構成としてもよい。
以上に本発明の好適な実施形態として、第一実施形態乃至第六実施形態を説明したが、上記の実施形態は以下のように変更して実施することができる。
◆ 即ち、上記各実施形態においてプーリ構造体200は、オルタネータの駆動軸に同軸状に設けられるプーリとしての第二プーリ102に適用されるとしたが、これに代えて、クランク軸に同軸状に設けられるプーリとしての第一プーリ101に対して適用されることとしてもよいし、第一プーリ101及び第二プーリ102の双方に対して適用されることとしてもよい。更に、それに代えて/加えて、エアコンプレッサー104の駆動軸に同軸状に設けられるプーリや、パワーステアリング105の油圧ポンプ用モータの駆動軸に同軸状に設けられるプーリ、ウォーターポンプ106の駆動軸に同軸状に設けられるプーリなど、その適用対象としてのプーリに特段の制限はない点を理解されよう。
◆ また、上記各実施形態においてコイルバネ4は、第一回転体1及び第二回転体2に対して自己弾性復元力により固定されるとしたが、このコイルバネ4と第一回転体1(及び/又は第二回転体2、以下同様。)との間に所定トルク以上のトルクが発生した場合に、該コイルバネ4が第一回転体1の外周面上で積極的に空転するように設計してもよい。なお、上記所定のトルクは、(エンジンの特性にも依るが、)正回転側(コイルバネ4が縮径変形する側)において8〜20[Nm]とし、逆回転側(コイルバネ4が拡径変形する側)において1.5〜15[Nm]とするとよいのではないかと推測する。
自動車の補機駆動システムの構成概略図 本発明の第一実施形態に係るプーリ構造体の断面図 本発明の第二実施形態に係るプーリ構造体の断面図 本発明の第三実施形態に係るプーリ構造体の断面図 本発明の第四実施形態に係るプーリ構造体の断面図であり、図4(b)に類似する図 本発明の第五実施形態に係るプーリ構造体の断面図であって、図2に類似する図 摩擦付与ユニットを軸方向でみた図 本発明の第六実施形態に係るプーリ構造体の断面概略図であって、図5に類似する図 本発明の第六実施形態に係るプーリ構造体の変形例を示す図 従来のプーリ構造体を採用した場合の振動実験の実験結果を示す図 図10と類似する図であって、上記第二実施形態に係るプーリ構造体を採用した場合の振動実験の実験結果を示す図 第一回転体と第二回転体の間の相対回転運動に対して付与される摩擦力の影響を評価するためのモデル計算の計算結果を示すグラフ 図12に類似する図 図12に類似する図 図12に類似する図 第一回転体と第二回転体の間の相対回転運動に付与される摩擦トルクと、最大捩れ角度と、の関係を示すグラフ
符号の説明
1 第一回転体
2 第二回転体
3 バネ収容室
4 コイルバネ
10 摩擦付与ユニット
11 摩擦部材
12 皿バネ

Claims (13)

  1. ベルトが巻き掛けられる筒状の第一回転体と、
    この第一回転体の内周側に枢設される筒状の第二回転体と、
    前記の第一回転体及び第二回転体の間に形成されるバネ収容室内に配され、径方向に作用する自己弾性復元力により前記の第一回転体又は第二回転体のうち少なくとも何れか一方に対して端部が夫々装着されるコイルバネと、
    を備えるプーリ構造体において、
    前記の第一回転体と第二回転体の間の相対回転運動に対して摩擦力を付与する摩擦付与手段が前記の第一回転体及び第二回転体の間に介設される、
    ことを特徴とするプーリ構造体
  2. 前記摩擦付与手段は、環状の摩擦部材と、この摩擦部材を軸方向へ付勢する第一付勢手段と、から構成される、
    ことを特徴とする請求項1に記載のプーリ構造体
  3. 前記第一付勢手段は、皿バネである、
    ことを特徴とする請求項2に記載のプーリ構造体
  4. 前記摩擦付与手段は、前記コイルバネの形状によって形成される円柱空間の外側に配される、
    ことを特徴とする請求項2又は3に記載のプーリ構造体
  5. 前記摩擦付与手段は、環状の摩擦部材と、この摩擦部材を径方向へ付勢する第二付勢手段と、から構成される、
    ことを特徴とする請求項1に記載のプーリ構造体
  6. 前記の第一回転体又は第二回転体のうち何れか一方の回転体に対する前記摩擦部材の相対回転は、規制される、
    ことを特徴とする請求項5に記載のプーリ構造体
  7. 前記第二付勢手段は、孔又はスリットが形成された環状バネから成り、
    この環状バネに対して前記摩擦部材が接着され、
    前記回転体には、前記環状バネに形成された前記の孔又はスリットに対して係合する係合部が設けられる、
    ことを特徴とする請求項6に記載のプーリ構造体
  8. 前記摩擦部材に対する前記回転体の相対回転運動は、所定の相対角変位に至るまでの範囲内に限り許容される、
    ことを特徴とする請求項7に記載のプーリ構造体
  9. 前記の孔又はスリットの周方向における長さは、前記係合部の周方向における長さよりも大きく設定される、
    ことを特徴とする請求項8に記載のプーリ構造体
  10. 前記摩擦付与手段は、軸方向でみたときに略正多角形状に屈曲されると共にスリットを有する環状バネを有して成り、
    前記環状バネは前記屈曲により形成される頂点において前記第一回転体に支持されると共に、隣り合う一対の前記頂点の間の辺に相当するバネ部に対して前記第二回転体が内周側から当接し、このバネ部が外周側へ弾性変形した状態とされる、
    ことを特徴とする請求項1に記載のプーリ構造体
  11. ベルトが巻き掛けられる筒状の第一回転体と、
    この第一回転体の内周側に枢設される筒状の第二回転体と、
    前記の第一回転体及び第二回転体の間に形成されるバネ収容室内に配され、径方向に作用する自己弾性復元力により前記の第一回転体又は第二回転体のうち少なくとも何れか一方に対して端部が夫々装着されるコイルバネと、
    を備えるプーリ構造体において、
    前記の第一回転体と第二回転体との間の、所定の相対角変位以上の、相対回転を規制する相対回転規制手段が設けられる、
    ことを特徴とするプーリ構造体
  12. 前記の第一回転体と第二回転体の間の相対回転運動に対して摩擦力を付与する摩擦付与手段が前記の第一回転体及び第二回転体の間に介設される、
    ことを特徴とする請求項11に記載のプーリ構造体
  13. エンジンのクランク軸と、
    このクランク軸に設けられるプーリとしての第一プーリと、
    オルタネータの駆動軸と、
    この駆動軸に設けられるプーリとしての第二プーリと、
    前記の第一プーリ及び第二プーリに対して巻き掛けられる共通のベルトと、
    を含んで構成される補機駆動システムにおいて、
    前記の第一プーリ又は第二プーリのうち少なくとも何れか一方に対して、請求項1〜12の何れか一に記載のプーリ構造体が適用される、
    ことを特徴とする補機駆動システム
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