JP2008169719A - 2ストローク断熱複合エンジン - Google Patents

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Abstract

【課題】 従来利用されず棄てられていた排気ガス(排気損失)と冷却損失を動力源として回収することにより熱効率の向上を図った2ストローク断熱複合エンジンを提供する。
【解決手段】 断熱した筒内に、蓄圧器に蓄えられた圧縮空気と燃料を噴射し爆発・膨張する行程と、排気ガスを排出後の高温の筒内に、水または蒸気を噴射し筒内を冷却するとともに、過熱蒸気を発生させ排気する行程から成る2ストローク断熱エンジンに、該排気ガスと過熱蒸気を動力源とする排気タービンを付加し、該排気タービンによって発生した動力をクランクシャフトに伝達することにより、動力が複合され熱効率が向上する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、排気損失と冷却損失からなるエネルギ損失を有効利用することにより、熱効率の向上を図った断熱複合エンジンに関する。
従来の容積型エンジンの熱効率は、ディーゼルエンジンが概ね40%、ガソリンエンジンが概ね30%程度であり、冷却損失と排気損失がそれぞれ概ね30%前後、摩擦損失などが概ね5%程度ある。
従来の容積型エンジンは筒外を水または空気で冷やすことにより、エンジン本体の温度上昇を抑制し一定の連続運転を可能にしている。
一方、筒外を冷却せずに筒内に水を噴射することによって筒内の熱を吸収し、筒内を冷却するとともに気化させ、蒸気の膨張力で出力の増大を図る試みがなされた。(例えば、特許文献1)
容積型エンジンから排出された排気ガスで排気タービンを回し、容積型エンジンからの動力と排気タービンからの動力を複合することにより熱効率の向上を図るため、航空用ディーゼルエンジンと排気タービンを組み合わせた複合エンジンが開発されている。(例えば、非特許文献1)
2ストロークエンジンは4ストロークエンジンに比べ構造が簡単であるため、環境基準があまり厳しくない小型軽量のガソリンエンジンや低速回転の大型舶用ディーゼルエンジンに多用されている。
一般の自動車用のエンジンは、最高出力で稼動することはほとんどなく比較的低負荷で稼動していることが多い。
特開昭60−184923号 内燃機関ハンドブック 朝倉書店 P647 昭和44年発行
冷却損失30%と排気損失30%をともに17%の熱効率で回収するとすれば、エネルギ損失から得られる熱効率は30%x2x17%=10%となり、ガソリンエンジン・ディーゼルエンジンともに概ね10%程度熱効率が向上する。
排気損失である排気ガスは、ターボを回し過給することにより出力の向上に有効利用されているが、ターボからの動力を直接取り出し利用しているわけではないので、燃費と出力の両方の向上、いわゆる、熱効率の向上には繋がらない。
また、冷却損失については排気損失と同量程度のエネルギを占めているにもかかわらず、ほとんど利用してこなかった。さらに、従来の容積型エンジンのうち小型を除くほとんどは、筒外を水または空気で冷却するための強制冷却用装置を有し、かつ強制冷却用の動力を必要としていた。このように、従来のエンジンでは、冷却損失は暖房用以外有効利用されてこなかった。
筒内冷却を行っている例として特開昭60−184923号の水噴射式断熱セラミックディーゼルエンジンは、圧縮行程の次の膨張行程において、水の噴射による気化熱の吸収によって、断熱エンジンの欠点である新気の吸入効率の低下を補完し、単位燃料当たりの出力を増大させるとされているが、この場合、気化熱を動力源として利用しているわけではないので、利用可能なエネルギが無駄に排出されている。
過去に開発された複合エンジンの排気タービンの動力源は、2ストロークディーゼルエンジンからの排気ガスだけであったが燃費は良かったとされているので、冷却損失を動力源として加えればさらに熱効率が向上する。しかし、当時の複合エンジンは構造が複雑なため、実用には至らなかったとされている。
2ストロークエンジンは1回転に1回爆発・膨張するので、4ストロークエンジンに比べ、同一行程容積とすると本来であれば2倍近くの出力を発揮できるが、ストロークが短く高速回転する自動車用のエンジンの場合は、掃・排気を短時間に実行しなければならず、排気ガスと新気の交換が不完全になりやすく、本来の出力が得られず排気ガスも汚れているなどの問題があり、厳しい環境基準が適用される自動車用にはほとんど使われなくなった。
従来のガソリンエンジンは、低負荷になるほど吸入空気量を絞らなければならないためポンピング損失が大きくなるという問題があった。
そこで、本発明の目的は、排気損失や冷却損失を動力源として有効利用するとともに、ポンピング損失を低減することにより熱効率の向上を図った2ストローク断熱複合エンジンを提供することである。
排気損失である排気ガスを有効利用することは実績も多いので省略する。冷却損失については筒外冷却をするので冷却損失となるのであって、筒内冷却し吸収した熱で過熱蒸気を発生させれば、筒外冷却のための装置も動力も不要であるうえ、過熱蒸気を用いて排気タービンを回すことができるため動力を得ることができる。従来のエンジンでは冷却損失、排気損失として棄てていたエネルギ損失を排気エネルギ回収装置で回収し発生した動力を直接利用する。
断熱シリンダの筒内を冷却するには、シリンダヘッドまたはシリンダにノズルを取り付け、排気行程で水(温水を含む、以下同様に水とだけ表記してあっても温水を含むものとする。)または蒸気を噴射し、高温になった筒内とピストン上部とシリンダ内壁とシリンダヘッドを冷却する。筒内温度が常に設定温度近くを保つよう適量の水または蒸気が噴射される。このため、筒外温度と排気ガス温度を計測し噴射量を制御する。
また、始動時などでエンジンが冷えている時には、水の噴射を遮断するが、エンジンは断熱されているのですぐに暖まり、いわゆる暖気運転は不要である。
筒内に噴射する水は水タンク(図示なし)に溜めておく。該水タンクは排気タービン出口側の排気管に接続され、排気タービンから排出された排気ガスや蒸気を冷却するとともに、消音を行う。回収された蒸気は水タンク内で再び水に戻るので、循環使用できるようになっている。また、高温になったタンク内の温水を効率よく冷却するため、ラジエータを用いたり、水タンクの外周にフィンを取り付けたりする。
排気タービンのように速度型エンジンは、熱効率やレスポンスが悪いため、例えば中低負荷で多用しかつ負荷変動の大きい自動車の動力とする場合、動力を効率よく取り出し運転条件に対応した最適な動力伝達機構にするには構造が複雑になる。そこで、容積型エンジンと速度型エンジンを組み合わせた複合エンジンにおいては、補助機関である排気タービンの動力は、主機関である容積型エンジンの出力軸へ伝達されるようにし、逆に容積型エンジンの動力は、排気タービンの出力軸に伝達されないように、ワンウェイクラッチを採用した動力伝達機構とすれば、構造が簡単で排気タービンからの動力を効率よく取り出せる。
また、排気タービンの出力軸に発電機を取り付け、発電することもできる。
ストロークが短く高速回転する2ストロークエンジンであっても、4ストロークエンジン並みに排気ガスがきれいで、出力を本来の2倍近くにまで向上させるには、排気ガスの排出が充分に行われ所要空気量が供給され良好な燃焼を行わせる必要がある。
このため、蓄圧器に蓄えられた圧縮空気を圧縮空気噴射ノズルから筒内に噴射することによって、吸入行程と圧縮行程の2行程に相当するサイクルが置き換えられ、爆発・膨張行程と排気行程の2行程だけでも充分に排ガスの排出と所要空気量の供給を行うことができる。前記圧縮空気は排気タービンに直結した遠心圧縮機によって得られ、容積型圧縮機によってさらに圧縮される。高圧の圧縮空気は一旦蓄圧器に蓄えられ、ECU(電子制御装置)と電磁バルブの制御によって所要空気量が噴射され、その直後に適量の燃料が噴射され燃焼(爆発)が始まる。
上述したように本発明の2ストローク断熱複合エンジンは、排気行程で燃焼ガスがある程度排出され、筒内の圧力が下がってから、水または蒸気を直接筒内に噴射することにより、筒内を冷却するとともに、筒内の熱を吸収して過熱蒸気が発生する。該過熱蒸気は排気タービンを回す強力な動力源となる。従来のエンジンでは冷却を筒外で行っていたので、冷却損失を有効利用できなかったが、筒内冷却型の2ストローク断熱複合エンジンでは、排気損失である排気ガスだけではなく、冷却損失である筒内廃熱を有効利用することができる。
このため、出力が向上し燃費を改善することができ、CO2だけではなくNOXやPMなどの有害物質も削減できる。また、過熱蒸気は洗浄能力が大きいため、筒内や排気系統を洗浄する効果もある。
本発明の2ストローク断熱エンジンは、従来の2ストロークエンジンにおける短時間の掃気と異なり、排気行程において排気ガスと過熱蒸気を排出し、排気弁が閉じると同時に圧縮空気を噴射するため、排気ガスと新気の交換がほぼ完全に行われる。このため、燃焼が良好に行われ排気ガスもきれいである。また、1回転に1回爆発・膨張するので従来の4ストロークエンジンに比べ、同一行程容積であれば約2倍の出力が得られる。
以下、本発明の最良の実施形態を図1〜図4に基づいて説明する。
図1および図2に示す2ストローク断熱複合エンジンにおいて、図1は正面断面図であり、図2は2気筒断熱エンジンと排気タービン8と該排気タービンに直結した遠心圧縮機9と該遠心圧縮機から吐出された圧縮空気をさらに高圧にする容積型圧縮機10の平面断面図である。
図1において、ピストン1とシリンダ2と排気弁3を有する容積型断熱エンジンには、圧縮空気を蓄えて置く蓄圧器4と、該圧縮空気を噴射するノズル5と、筒内の空気量が適量になった後に燃料を噴射するノズル6と、爆発・膨張し高温・高圧の排気ガスをある程度排出した後、高温になった筒内を冷却し過熱蒸気を得るための水または蒸気を噴射するノズル7を取り付けてある。また、排気ガスと過熱蒸気を動力源とする排気タービン8からの動力は減速機11を介してクランクシャフトに直結したフライホイール13に伝達されるが、該フライホイールからの動力は排気タービン側に伝達されないように、減速機11には振動や衝撃力を吸収するダンパー付のワンウェイクラッチ(図示なし)が組み込まれている。
図1では圧縮空気噴射ノズルの取付個数は、1個となっているが2個以上でも良い。また、取付方向は筒内の中心方向でも壁面に沿う方向でも良いが、燃焼が常に良好に行われる方向に向けるのが良い。
図2において、排気タービン8に直結した遠心圧縮機9と、該遠心圧縮機から吐出された圧縮空気をさらに高圧の圧縮空気にするため容積型圧縮機10が装備されている。容積型圧縮機の種類は、ピストン式でもルーツ式でもベーン式でも良い。また、容積型圧縮機の替わりに遠心圧縮機を多段にしても良い。なお、図2では排気タービン8は、2気筒当たり1基となっているが1気筒当たり1基でも多気筒当たり1基でも良い。
図1のようにストロークが短く高速回転の場合には、通常の2ストロークエンジンのシリンダに設けてある掃気孔はないが、舶用エンジンなどのようにストロークが長く低速回転であって、掃・排気が比較的長時間で良好に行われる場合には、通常の2ストロークエンジンのように掃気孔を設け、水または蒸気噴射ノズル7を掃気孔に取り付け、掃気孔開と同時に掃気と水または蒸気を噴射するようにし、図1と図2に示す蓄圧器4と圧縮空気噴射ノズル5を装備せず、圧縮機は遠心圧縮機9または容積型圧縮機10のいずれか一方を装備した2ストローク断熱複合エンジンとしても良い。
容積型圧縮機10のシャフトは、容積型断熱エンジンのクランクシャフトとクラッチ(図示なし)を介して連結され、蓄圧器内の空気圧が設定値を超えた場合には、自動的にクラッチを切り、容積型圧縮機10が作動しないようになっている。また、遠心圧縮機9の吸入側マニホールドに絞り弁(図示なし)を設け、弁を自動的に絞ることにより吸入空気量を制御しても良い。
減速機11は、排気タービン8の高速回転を容積型断熱エンジンの回転数に合うように減速するために装備される。
排気ガスの温度をできるだけ冷やさないように効率よく回収するため、排気タービン8をできるだけ排気弁3に近づけて取り付けられる構造にする。また、排気タービンの種類はラジアルタービンでも軸流タービンでも良く、段数も単段でも多段でも良い
燃焼による熱エネルギのうち動力に変換されなかった廃熱を、できるだけ筒外に放出させないで有効利用するため、シリンダ2とシリンダヘッドなどを断熱材12で覆う。
水または蒸気噴射ノズル7の取付位置は、シリンダヘッドでもシリンダ2でも良い。筒外温度および排気ガス温度を計測して筒内温度を予測し、常に設定した筒内温度になるように、適時に適量の水または蒸気が噴射されるようになっている。また、エンジンが冷えている時には水または蒸気を噴射しない。
運転状況に応じて常に良好な燃焼状態が得られるように、排気弁開閉のタイミングと、圧縮空気と燃料の噴射タイミングと噴射量をECUで制御する。特に、圧縮空気と燃料の噴射量は常に理想的な混合比または空気過剰率になるように制御されるため、加速時においてもターボチャージャのようなタイムラグは発生しない。
温水または蒸気は排気タービン出口側の排気管の外周に小径パイプを巻き付け、このパイプに水を通したり、排気管を二重管にし外側の管に水を通したりすることにより、容易に発生させることができる。いわゆる、排気ガスの廃熱を利用した熱交換器(図示なし)である。温度管理は、小径パイプまたは二重管の出口近傍に温度計を取り付け、送水量を制御して行う。また、排気タービン出口側の排気管を冷やすので、排気タービン効率が向上する。
燃料噴射ノズル6はディーゼルエンジンの場合は、通常の燃料噴射ノズルでよいが、ガソリンエンジンの場合は、筒内直噴方式の燃料噴射ノズルに限られる。
図3は圧縮空気噴射、燃料噴射、爆発・膨張、燃焼ガスの排出、水または蒸気噴射、過熱蒸気の排出を示した作動状態図である。01は圧縮空気噴射、02は燃料噴射と爆発、03は膨張、04は燃焼ガスの排出、05は燃焼ガスの排出と水または蒸気噴射と筒内冷却と過熱蒸気発生開始、06は過熱蒸気の排出を示している。
図4は、爆発・膨張と排気の各行程と、各行程における圧縮空気と燃料と水または蒸気の噴射タイミングと、排気弁開閉のタイミングを示した図である。排気弁3が開き、燃焼圧力が未だ高く勢いのある排気ガスを排気タービン8に勢いよく吹きかける。筒内圧力が下がってきたところへ水または蒸気を噴射するので、噴射圧力が小さくて済むうえ、排気タービン8を回すのに必要な排気ガスのエネルギをあまり奪うことなく筒内を冷却し、過熱蒸気を発生させることができる。
始動時などで筒内温度が低く着火しにくい時は、可変バルブタイミング機構により排気弁3を早めに閉じるとともに、圧縮空気を早めに噴射することにより、ピストン1の上昇とともに筒内の圧縮空気がさらに圧縮され、温度が上昇するので着火性が良くなる。また、圧縮空気噴射ノズル5を加熱できるようにするか、またはシリンダヘッドにヒーターを取り付けることにより、筒内温度を上げることができ、着火し易くなる。
図4の行程番号は、図3の作動状態の番号と一致する。
本発明の実施形態を示す筒内冷却方式2ストローク断熱複合エンジンの正面断面図 筒内冷却方式2ストローク断熱複合エンジン平面断面図 筒内冷却方式2ストローク断熱エンジンの各行程の作動状態図 2行程における圧縮空気と燃料と水または蒸気の噴射タイミング図
符号の説明
1 ピストン
2 シリンダ
3 排気弁
4 蓄圧器
5 圧縮空気噴射ノズル
6 燃料噴射ノズル
7 水または蒸気噴射ノズル
8 排気タービン
9 遠心圧縮機
10 容積型圧縮機
11 減速機
12 断熱材
13 フライホイール
14 軸受

Claims (2)

  1. 爆発・膨張行程と排気行程の2行程を実行する容積型断熱エンジンと、該容積型断熱エンジンから排出する排気ガスと過熱蒸気を動力源とする排気タービンと減速機とワンウェイクラッチを介してクランクシャフトに動力を伝達する排気エネルギ回収装置とを有する2ストローク断熱複合エンジンにおいて、排気ガスと過熱蒸気を排出する排気弁と、空気を圧縮するための圧縮機と、該圧縮空気を蓄えて置く蓄圧器と、筒内に該蓄圧器の圧縮空気を噴射するノズルと、筒内に燃料を噴射するノズルと、排気行程において排気弁開と同時に排気ガスを排出した後、高温の筒内を冷却するとともに筒内の熱を吸収して過熱蒸気を発生させるための水(温水を含む)または蒸気を噴射するノズルと、筒内温度が設定温度を保つよう筒外温度と排気ガス温度を計測し水または蒸気の噴射量を制御することと、排気ガスと過熱蒸気を動力源とする排気タービンと、排気タービンの高速回転を容積型断熱エンジンの回転数に合うように減速するための減速機と、排気タービンからの動力をクランクシャフトへ一方向に伝達するためのワンウェイクラッチと、排気タービンから排出された排気ガスと蒸気の消音と冷却を兼ねた水タンクから構成される2ストローク断熱複合エンジン。
  2. 掃気・圧縮行程と爆発・膨張・掃・排気行程の2行程を実行する容積型断熱エンジンと、前記排気エネルギ回収装置とを有する2ストローク断熱複合エンジンにおいて、掃気孔を有するシリンダと、前記排気弁と、前記燃料噴射ノズルと、前記水または蒸気噴射ノズルと、前記水または蒸気の噴射量を制御することと、前記排気タービンと、前記圧縮機と、前記減速機と、前記ワンウェイクラッチと、前記水タンクから構成される請求項1に記載の2ストローク断熱複合エンジン。
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