JP2008169080A - コーティング基板の製造方法、前記方法により製造されるコーティング基板、および、その用途 - Google Patents

コーティング基板の製造方法、前記方法により製造されるコーティング基板、および、その用途 Download PDF

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Abstract

【課題】ダイヤモンド基板上にコーティング膜を均一に形成可能であり、かつコーティング膜とダイヤモンド基板を強固に結合可能なコーティング基板の製造方法を提供。
【解決手段】ダイヤモンド基板に難水溶性溶媒にシラン化合物を含有させた処理液、易水溶性溶媒にシラン化合物を含有させた処理液を順次塗布する。これによリ難水溶性処理液のシラン化合物とダイヤモンド基板表面とが化学結合して、ダイヤモンド基板表面に第1のコーティング層が形成され、さらに、前記易水溶性処理液のシラン化合物と前記第1のコーティング層表面とが化学結合して、第1のコーティング層表面に第2のコーティング層が形成される。これにより2層のコーティング膜が、前記ダイヤモンド基板表面に均一に形成され、表面との結合が強固となる。得られるコーティング基板は核酸やタンパク質等の生体物質を固定化したバイオチップと等として有用である。
【選択図】図1

Description

本発明は、コーティング基板の製造方法、前記方法により製造されるコーティング基板、および、その用途に関する。
近年、DNAやRNA等の核酸、タンパク質や抗体等のタンパク質等、様々な生体物質を固定化したバイオチップの開発が盛んに行われている。前記バイオチップは、基板表面に前記生体物質が固定化された構造であるが、通常、基板と生体物質との結合性を向上させるために、前記生体物質を固定化するためのコーティング層が形成されたコーティング基板が使用され、前記コーティング層の表面に所望の生体物質が結合されている。
前記基板表面へのコーティング層の形成方法としては、様々な方法が報告されているが、シランカップリング剤を基板上に塗工する方法が広く採用されている。シランカップリング剤は、一般に、一端に無機物質と結合可能な基、他端に有機物質と結合可能な基を有している。このため、シランカップリング剤の一端を基板(無機物質)上に結合させてコーティング層を形成し、且つ、シランカップリング剤の他端に生体物質(有機物質)を結合させることによって、コーティング層を介して基板と生体物質との結合性を高めることができる。
他方、コーティング層を形成する基板としては、従来、シランカップリング剤との親和性(結合性)が非常に優れることから、シリコン基板が広く用いられていた(特許文献1、特許文献2等)。しかしながら、近年は、基板の化学的安定性、強度等の観点から、シリコン基板に代えてダイヤモンド基板を用いたコーティング基板が注目されている(特許文献3〜5および非特許文献1等)。
特開2005−146282号公報 国際公開第01/048806号パンフレット 国際公開第99/40173号パンフレット 特開2005−195465号公報 特開2004−97173号公報 "Immobilization of horseradish peroxidase via an amino silane on oxidized ultrananocrystalline diamond", Jorge Hernando,Tahmineh Pourrostami,Jose A.Garrido,Oliver A.Williams,Dieter M.Gruen,Alexander Kromka,Doris Steinmuller,Martin Stutzmann,Diamond & Related Materials(2006),http://www.sciencedirect.com
しかしながら、本発明者らが鋭意研究を行った結果、ダイヤモンド基板上にシランカップリング剤を塗工してコーティング層を形成する技術として、すでに報告されている前述の方法では、例えば、基板表面において均一にコーティング層が形成されない、すなわちコーティング層の欠損部分が生じるという問題や、前記コーティング層とダイヤモンド基板との密着性が十分でない等の問題が生じることがわかった。
そこで、本発明は、ダイヤモンド基板表面にコーティング層を均一に形成することが可能であり、且つ、前記コーティング層と前記ダイヤモンド基板とを強固に結合することが可能であるコーティング基板の製造方法の提供を目的とする。
本発明の製造方法は、シラン化合物を含有するシランカップリング剤処理液をダイヤモンド基板に塗布することにより、前記シラン化合物を化学結合によってダイヤモンド基板に固定化したコーティング基板の製造方法であって、下記(A)〜(C)工程を含むことを特徴とする。
(A) ダイヤモンド基板を準備する工程
(B) シランカップリング剤処理液として、難水溶性溶媒中にシラン化合物を含有した難水溶性処理液と、易水溶性溶媒中にシラン化合物を含有した易水溶性処理液とを準備する工程
(C) 前記(B)工程で調製した二種類のシランカップリング剤を、ダイヤモンド基板の少なくとも一方の表面に塗布することにより、前記表面にコーティング膜を形成する工程であって、下記(c1)および(c2)工程を含む工程。
(c1) ダイヤモンド基板表面に前記難水溶性処理液を塗布する工程
(c2) ダイヤモンド基板表面に前記易水溶性処理液を塗布する工程
本発明のコーティング基板は、シラン化合物を化学結合により前記ダイヤモンド基板上に固定化したコーティング基板であって、本発明の製造方法により製造される。
本発明のバイオチップは、コーティング基板の表面に生体物質を固定化したバイオチップであり、前記コーティング基板が、本発明のコーティング基板であることを特徴とする。
本発明の製造方法によれば、メカニズムは不明であるが、ダイヤモンド基板の表面に、シランカップリング剤処理液として、難水溶性溶媒中にシラン化合物を含有した難水溶性処理液と、易水溶性溶媒中にシラン化合物を含有した易水溶性処理液とを、塗布することによって、ダイヤモンド基板の表面にコーティング膜を均一にコーティングし、且つ、前記コーティング膜とダイヤモンド基板表面との結合を強固にすることができる。したがって、本発明の製造方法によれば、コーティング膜の均一性および耐磨耗性の両方に優れるコーティング基板を得ることができる。また、本発明のコーティング基板は、前記コーティング膜の表面に生体物質を結合することによってバイオチップとして使用できる。特に、本発明のコーティング基板は、耐磨耗性に優れることから、例えば、バイオチップの製造工程における種々の処理による影響を受け難く、また、均一性に優れることから、生体物質を所望の領域に結合させることが可能である。なお、本発明において、「均一性」とは、厚み方向における均一性の意味ではなく、面方向における均一性であって、「均一性に優れる」とは、例えば、ダイヤモンド基板表面におけるコーティング膜の欠損(コーティングの抜け)が、従来のコーティング基板と比較して減少している、または、発生していないことを意味する。
本発明の製造方法は、前述のように、シラン化合物を含有するシランカップリング剤処理液をダイヤモンド基板に塗布することにより、前記シラン化合物を化学結合によってダイヤモンド基板に固定化したコーティング基板の製造方法であって、下記(A)〜(C)工程を含むことを特徴とする。なお、本発明において、(c1)および(c2)工程の順序は、制限されず、「数字」は、工程順序を示すものではない。
(A) ダイヤモンド基板を準備する工程
(B) シランカップリング剤処理液として、難水溶性溶媒中にシラン化合物を含有した難水溶性処理液と、易水溶性溶媒中にシラン化合物を含有した易水溶性処理液とを準備する工程
(C) 前記(B)工程で調製した二種類のシランカップリング剤を、ダイヤモンド基板の少なくとも一方の表面に塗布することにより、前記表面にコーティング膜を形成する工程であって、下記(c1)および(c2)工程を含む工程。
(c1) ダイヤモンド基板表面に前記難水溶性処理液を塗布する工程
(c2) ダイヤモンド基板表面に前記易水溶性処理液を塗布する工程
本発明では、前記(c1)工程および前記(c2)工程において、それぞれコーティング層が形成される。以下、便宜上、前記(c1)工程において前記難水溶性処理液の塗布により形成されるコーティング層を「第1のコーティング層」、前記(c2)工程において前記易水溶性処理液の塗布により形成されるコーティング層を、以下、「第2のコーティング層」という。本発明におけるコーティング膜は、少なくとも前記第1のコーティング層および第2のコーティング層を含み、少なくとも一方のコーティング層は、シラン化合物とダイヤモンド基板表面との化学結合によって、ダイヤモンド基板に固定化されている。
前記(c1)工程および前記(c2)工程の実施順序は、特に制限されないが、例えば、前記難水溶性処理液を使用する(c1)工程の後に、前記易水溶性処理液を使用する(c2)工程を行うことが好ましい。この場合、まず、ダイヤモンド基板表面への前記難水溶性処理液の塗布によって、前記難水溶性処理液中のシラン化合物が化学結合によりダイヤモンド基板表面に固定化され、前記表面に第1のコーティング層が形成される。そして、さらに、ダイヤモンド基板の同じ表面、すなわち、ダイヤモンド基板上に形成された第1のコーティング層の表面に、前記易水溶性処理液を塗布することによって、前記易水溶性処理液中のシラン化合物が化学結合により前記第1のコーティング層の表面に固定化され、前記表面に第2のコーティング層が形成される。このようにして、前記ダイヤモンド基板の表面には、コーティング膜として、第1のコーティング層と第2のコーティング層とが積層された積層体が形成される。このように、難水溶性処理液を用いた第1のコーティング層と易水溶性処理液を用いた第2のコーティング層の形成によって、メカニズムは不明であるが、コーティング膜が前記ダイヤモンド基板に均一にコーティングされ、且つ、前記コーティング膜とダイヤモンド基板表面との結合が強固であるコーティング基板が得られる。
本発明においては、前記難水溶性処理液および易水溶性処理液を塗布した領域の全てが、例えば、第1のコーティング層と第2のコーティング層とを含む積層体でコートされている必要はない。例えば、ダイヤモンド基板表面において、第1のコーティング層が形成されなかった部分(いわゆる、欠損部分)に、前記第2のコーティング層が形成されてもよい。つまり、本発明においては、コーティング膜がダイヤモンド基板表面に均一に形成されていればよく、前記コーティング膜は、面方向において、部分的にいずれか一方のコーティング層のみから形成されてもよいし、部分的に両方のコーティング層の積層体から形成されていてもよい。
なお、シラン化合物を含有するシランカップリング剤処理液は、一般的に、一回の塗布によって、一層の単分子層を形成する場合もあれば、一回の塗布によって多層となる場合もある。本発明におけるコーティング膜は、例えば、(c1)工程と(c2)工程の回数に応じて、単分子層が積層された積層体から構成される。一回の塗布によって形成される層の数(単層または二層以上の多層)を制御するためには、例えば、使用溶媒、シラン化合物の種類および濃度、反応時間等を調整すればよい。また、前述のように、部分的にいずれか一層のコーティング層が形成されている場合には、前記コーティング膜は、例えば、部分的に単分子層から形成され、残りの部分が単分子層が積層された積層体から形成されていてもよい。
また、本発明においては、易水溶性処理を使用する(c2)工程の後に、難水溶性処理液を使用する(c1)工程を行ってもよい。この場合、まず、ダイヤモンド基板表面への前記易水溶性処理液の塗布によって、前記易水溶性処理液中のシラン化合物が化学結合によりダイヤモンド基板表面に固定化され、前記表面に第2のコーティング層が形成される。そして、さらに、ダイヤモンド基板の同じ表面、すなわち、ダイヤモンド基板上に形成された第2のコーティング層の表面に、前記難水溶性処理液を塗布することによって、前記難水溶性処理液中のシラン化合物が化合物結合により前記第2のコーティング層の表面に固定化され、前記表面に第1のコーティング層が形成される。このようにして、前記ダイヤモンド基板の表面には、コーティング膜として、第2のコーティング層と第1のコーティング層とが積層された積層体が形成される。
本発明において、「難水溶性」とは、水に対する溶解度が低いことを意味し、前記溶解度は、好ましくは、1気圧(1013hPa)および20℃(293K)雰囲気下において1質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、特に好ましくは0.05質量%以下である。また、「易水溶性」とは、水に対する溶解度が高いことを意味し、前記溶解度は、好ましくは、1気圧(1013hPa)および20℃(293K)雰囲気下において1質量%以上、より好ましくは20質量%以上、理想的には∞(無限大)である。
本発明において、前記難水溶性溶媒は、分子中に孤立電子対を含まないことが好ましい。
前記難水溶性溶媒としては、例えば、脂肪族飽和炭化水素、脂肪族不飽和炭化水素、芳香族炭化水素が好ましく、具体的には、例えば、トルエン、キシレン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、トリメチルベンゼン、ナフタレン、テトラリン、ブチルベンゼン、シメン、p−シメン、シクロヘキシルベンゼン、o-ジエチルベンゼン、m-ジエチルベンゼン、p-ジエチルベンゼン、ペンチルベンゼン、ジペンチルベンゼン、ドデシルベンゼン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、クロロホルムおよびn−オクタノール等があげられる。より具体的には、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、ベンゼン、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、トリメチルベンゼン、ナフタレン、テトラリン、ブチルベンゼン、シメン、p−シメン、シクロヘキシルベンゼン、o-ジエチルベンゼン、m-ジエチルベンゼン、p-ジエチルベンゼン、ペンチルベンゼン、ジペンチルベンゼン、ドデシルベンゼン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、クロロホルムおよびn−オクタノール等が好ましい。なお、前記難水溶性溶媒は、いずれか一種類でもよいし、二種類以上を併用してもよい。
なお、本発明において、名称や化学式で表す物質に異性体が存在する場合は、いずれの異性体であっても良い。例えば、単に「キシレン」という場合は、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレンのいずれでも良く、単に「プロピルアルコール」という場合は、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコールのいずれでも良い。
他方、前記易水溶性溶媒としては、例えば、ケトン、エーテル、アルコール、ニトリルが好ましく、具体的には、例えば、アセトン、エチルメチルケトン、ジエチルケトン、ブチルメチルケトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルセロソルブ、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、アセトニトリル、プロピオニトリル等があげられる。より具体的には、アセトン、エチルメチルケトン、ジエチルケトン、イソブチルメチルケトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルセロソルブ、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、アセトニトリル、プロピオニトリルが好ましい。なお、前記易水溶性溶媒は、いずれか一種類でもよいし、二種類以上を併用してもよい。
前記(B)工程において準備する前記難水溶性処理液の難水溶性溶媒と前記易水溶性処理液の易水溶性溶媒の組み合わせは、特に制限されないが、例えば、トルエンとアセトン、トルエンとアセトニトリル、トルエンとテトラヒドロフラン、トルエンと易水溶性ケトン(アセトン以外)、ヘプタンとアセトニトリル、ヘプタンとテトラヒドロフラン、ヘプタンと易水溶性ケトン(アセトン以外)、オクタノールとアセトニトリル、オクタノールとテトラヒドロフラン、オクタノールと易水溶性ケトン(アセトン以外)等の組み合わせがあげられる。なお、上記「ヘプタン」とは、n−ヘプタンが特に好ましく、「オクタノール」とは、n−オクタノールが特に好ましい。
本発明において、前記難水溶性処理液および易水溶性処理液に含まれるシラン化合物は、特に制限されず、例えば、従来公知のシラン化合物が使用できる。なお、本発明は、コーティング膜を形成するためのシランカップリング剤処理液として、「難水溶性溶媒中にシラン化合物を含有した難水溶性処理液」と「易水溶性溶媒中にシラン化合物を含有した易水溶性処理液」とを使用し、それぞれを用いてコーティング層を形成することが特徴であって、シラン化合物をはじめとする他の材料や条件等は何ら制限されない。
前記シラン化合物の具体例としては、例えば、下記一般式(I)で表される化合物があげられる。
Y−(CHSiX (I)
前記式(I)において、nは、1以上の整数である。前記式(I)中、Xは、加水分解性の置換基であり、例えば、アルコキシ基、ハロゲン、イソシアネート基等があげられる。また、各Xは同一でも異なっていても良い。なお、シランカップリング反応においては、シリル基(−SiX)によって、基板表面との化学結合が生じる。
前記式(I)中、Yは、特に制限されない。通常、前記式(I)で表されるシラン化合物を用いてシランカップリング反応を行った場合、一方の末端であるシリル基側が基板表面に化学結合するため、他方の末端であるYは、フリーとなる。したがって、ダイヤモンド基板表面にコーティング膜が形成されたコーティング基板を、後述するようなバイオチップに使用する際には、このコーティング膜表面、すなわち、フリーとなった末端Yに、所望の物質を結合すればよい。したがって、前記式(I)におけるYとしては、例えば、有機物質と反応可能な置換基が好ましく、より好ましくは、タンパク質や核酸等の生体物質と反応可能な置換基であることが好ましい。このような置換基としては、例えば、ビニル基、エポキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルデヒド基(ホルミル基)、イソシアネート基(−N=C=O)、イソチオシアネート基(−N=C=S)、リン酸基、チオール基(メルカプト基)、マレイミド基、N−ヒドロキシスクシンイミド基、ビニルスルホン基(それぞれ、下記化学式で表される)等があげられ、特に好ましくは、アミノ基である。
前記シラン化合物の具体例として、例えば、アルコキシシラン、ハロゲン化シラン、イソシアネートシラン等があげられるが、例えば、前記ダイヤモンド基板との結合性等の観点から、アルコキシシランやハロゲン化シランが好ましい。なお、シラン化合物は、いずれか一種類でもよいし、二種類以上を併用してもよい。
前記難水溶性溶媒に含まれるシラン化合物と、前記易水溶性溶媒に含まれるシラン化合物とは、特に制限されず、例えば、同じシラン化合物であってもよいし、異なるシラン化合物であってもよい。
本発明において、前記難水溶性処理液は、前記難水溶性溶媒および前記シラン化合物以外の物質を適宜含んでいてもよく、前記易水溶性処理液も、前記易水溶性溶媒および前記シラン化合物以外の物質を適宜含んでもよい。また、これらの処理液は、例えば、本発明の効果を損なわない限り、前記難水溶性溶媒や前記易水溶性溶媒以外の溶媒を適宜含んでいても差し支えない。
本発明において、前記ダイヤモンド基板は、特に制限されず、従来公知のダイヤモンド基板が使用できる。前記ダイヤモンド基板の原料としては、例えば、天然ダイヤモンド、合成ダイヤモンド、高圧合成ダイヤモンド等があげられ、いずれか単独でもよいし、二種類以上の混合物であってもよい。また、原料ダイヤモンドの構造は、単結晶体および多結晶体のいずれであってもよい。なお、本発明のダイヤモンド基板は、ダイヤモンドのみで構成されてもよいし、例えば、プラスチックとの混合物から構成されていてもよい。例えば、CVD(化学蒸着法、chemical vapor deposition)で合成したダイヤモンド薄膜、B(ホウ素)やP(リン)等の不純物をドープしたダイヤモンド等も使用できる。また、ダイヤモンド基板の形状も、特に制限されず、例えば、最終的に得られるコーティング基板の用途等に応じて適宜決定できる。
前記ダイヤモンド基板は、例えば、シラン化合物との化学結合性を向上するために、表面が終端化処理されていることが好ましい。前記表面の終端化としては、例えば、水素終端化でもよいが、特に前記シラン化合物との結合性に優れることから、酸素終端化であることが好ましい。このように表面が酸素終端化されたダイヤモンドであれば、例えば、前記一般式(I)で表されるシラン化合物中の加水分解性置換基X等と反応し、化学結合を形成し易くなる。前記終端化処理の方法は、特に限定されず、公知の終端化処理方法等を採用できる。前記酸素終端化処理としては、例えば、水酸化処理があげられる。水酸化処理の具体的な方法は特に限定されないが、例えば、ダイヤモンドを硫酸と硝酸の混酸により高温(例えば240℃程度)で煮沸処理して酸素化し、その後、水またはアルカリ性水溶液中で煮沸して水酸化処理としても良い。また、硫酸と硝酸の混酸による前記高温処理に代えて、プラズマ処理等によりダイヤモンド基板の表面を活性化した後、水またはアルカリ性水溶液中で煮沸して水酸化処理としても良い。
前記ダイヤモンド基板と前記シラン化合物との化学結合は、例えば、下記スキーム1またはスキーム2にしたがって形成され得ると考えられる。ただし、下記スキーム1および2は、単なる例示であり、本発明を何ら限定しない。なお、下記スキームの出展は、B.Arkles、CHEMITECH,7,766,1977(スキーム1)およびGelest社Silanen Coupling Agents カタログ(スキーム2)である。
本発明の製造方法について、難水溶性処理液を使用する(c1)工程の後に、易水溶性処理液を使用する(c2)工程を行う例をあげて説明する。なお、本発明はこれには制限されない。
まず、ダイヤモンド基板を準備し、その表面を酸素終端化する。酸素終端化方法としては、例えば、前記ダイヤモンド基板を硫酸と硝酸の混酸により高温(例えば240℃程度)で煮沸処理して酸素化し、その後、水またはアルカリ性水溶液中で煮沸する方法、前記ダイヤモンド表面を酸素プラズマで酸化して、次いで水蒸気処理する方法、前記ダイヤモンドを塩素ガス中で紫外線照射して表面を塩素化し、その後アルカリ水溶液中で加水分解して水酸化する方法、前記ダイヤモンド表面を酸素プラズマで酸化し、次いで塩素化した後アルカリ溶液中で加水分解して水酸化する方法等が採用できる。これらの方法において、詳細条件は特に制限されず、例えば、ダイヤモンド基板に対する公知の酸素終端化方法に基づいて適宜設定できる。
一方、シランカップリング剤処理液として、前記難水溶性処理液と前記易水溶性処理液とを準備する。これらの処理液は、難水溶性溶媒および易水溶性溶媒のそれぞれに、前記シラン化合物を混合することによって調製できる。前記難水溶性処理液および前記易水溶性処理液におけるシラン化合物の割合は、特に制限されず、適宜調整可能である。また、難水溶性処理液における難水溶性溶媒の割合、ならびに、易水溶性処理液における難水溶性溶媒の割合は、特に制限されず、適宜調整可能である。
そして、前記ダイヤモンド基板の表面に前記難水溶性処理液を塗布し、前記表面と前記難水溶性処理液に含まれるシラン化合物とを反応させる。この反応により、前記シラン化合物が化学結合によって前記ダイヤモンド基板の表面に固定化され、第1のコーティング層が形成される。
前記シラン化合物と前記ダイヤモンド基板表面との反応の条件は、特に制限されず、例えば、前記難水溶性処理液の塗工後、そのまま室温で放置し、自然に反応させても良いし、必要に応じ加熱しても良い。前記加熱時の温度、加熱時間およびその他の反応条件は特に制限されず、例えば、公知のシランカップリング反応に基づいて適宜設定することができる。例えば、副反応を抑制する等の観点から、アルゴン、窒素等の不活性ガス中で前記反応を行っても良い。なお、ダイヤモンド基板は化学的に安定であることから、種々の反応条件を適用することができる。
続いて、前記ダイヤモンド基板の表面、すなわち、第1のコーティング層の表面に前記易水溶性処理液を塗布し、前記表面と前記易水溶性処理液に含まれるシラン化合物とを反応させる。この反応により、前記シラン化合物が化学結合によって前記ダイヤモンド基板上の第1のコーティング層の表面に固定化され、第2のコーティング層が形成される。これは、一般的な単分子層の積層であり、例えば、第1のコーティング層表面におけるシラン化合物の末端置換基Yと、易水溶性処理液に含まれるシラン化合物のシリル基とが化学結合することによって、第1のコーティング層に第2のコーティング層が固定化されると解される。
このようにして、ダイヤモンド基板表面に、第1のコーティング層と第2のコーティング層とが積層された積層コーティング層が形成され、本発明のコーティング基板が得られる。なお、前記(c1)工程および(c2)工程の回数は、特に制限されず、少なくとも一回ずつ行われていればよく、例えば、所望の厚みが得られるまで、(c1)工程および(c2)工程を繰り返し行ってもよい。また、(c1)工程と(c2)工程とを繰り返す場合、その順序は特に制限されず、例えば、両工程を交互に行ってもよいし、一方の工程を繰り返し行った後に、他方の工程を繰り返し行ってもよい。
また、本発明は、さらに、前述のように形成されたコーティング膜の表面に、生体物質を結合させる工程(D工程)を含んでもよい。これによって、後述するような生体物質が固定化されたバイオチップを作製することができる。
次に、本発明のコーティング基板は、前述のように、シラン化合物を化学結合により前記ダイヤモンド基板上に固定化したコーティング基板であって、本発明の製造方法により製造されることができる。なお、本発明のコーティング基板は、本発明の製造方法により製造することが好ましいが、その構成が同じである限り、任意の異なる方法により製造しても良い。
本発明のコーティング基板において、前記コーティング層は、例えば、シラン化合物から形成される単層体(いわゆる単分子膜)が積層された多層体であり、その積層数は、例えば、2層以上である。このような多層体のコーティング膜は、前述のように、(c1)工程による第1のコーティング層の形成や(c2)工程による第2のコーティング層の形成を繰り返すことによって形成できる。また、本発明のコーティング基板においては、前述のように、第1のコーティング層および第2のコーティング層のいずれか一方が欠損している領域に、他方のコーティング層が形成されている、全体として単層体のコーティング膜であってもよい。
前記コーティング膜の厚みは、特に制限されず、例えば、使用するシラン化合物の分子の長さ等に依存する。
本発明のコーティング基板は、前述のように、前記コーティング膜が前記ダイヤモンド基板表面に強固に結合されているため、剥離し難い。具体的には、コーティング基板を、例えば、下記工程(1)〜(3)を含む剥離試験に供した際に、前記コーティング膜が前記ダイヤモンド基板から剥離されないことが好ましい。なお、下記工程(1)〜(3)ならびに各工程における条件は、コーティング膜の耐摩耗性を評価するための1つの方法ならびに条件であって、本発明は、この評価の工程および条件によって何ら限定を受けない。
(1) 曲率半径1.0×10−8mの四角錐型チップを有する、ばね定数1.7N/mのSiNカンチレバーを準備する工程
(2) 前記SiNカンチレバーの四角錐型チップにより、前記コーティング基板の前記コーティング膜表面に対して垂直に、5.0×10−7N(500nN)の力を加える工程
(3) 前記5.0×10−7Nの力を加えた状態で、前記SiNカンチレバーの四角錐型チップを前記コーティング膜表面に対して平行方向に移動させ、前記コーティング膜表面を引っ掻く工程
また、前記工程(2)および(3)において、前記コーティング膜表面に対し垂直に加える力を、1.0×10−6N(1μN)としても前記コーティング膜が剥離しないことがさらに好ましい。
本発明のコーティング基板は、前述のように、前記コーティング膜が前記ダイヤモンド基板上に均一に形成されており、かつ、前記コーティング膜と前記ダイヤモンド基板が強固に結合している。このため、本発明のコーティング基板の用途は特に制限されず、あらゆる用途に好ましく使用可能である。具体例としては、例えば、DNAやRNA等の核酸;酵素や抗体等のタンパク質、ポリペプチド、アミノ酸等の様々な生体物質をはじめとする有機物質を、コーティング膜表面に固定化する際に、好ましく使用できる。
つぎに、本発明のバイオチップは、前述のように、コーティング基板の表面に生体物質を固定化したバイオチップであり、前記コーティング基板が、本発明のコーティング基板であることを特徴とする。
前記生体物質としては、特に制限されず、前述のように、DNAやRNA等の核酸;酵素や抗体等のタンパク質、ポリペプチド、アミノ酸等の様々な生体物質があげられる。なお、前記生体物質とは、生体から直接単離した物質には限られず、それと同様の物質であれば、例えば、PCR(ポリメラーゼチェーンリアクション)や、有機化学的手法等により合成した合成物であってもよい。
次に、本発明の実施例について説明するが、本発明は以下の実施例には限定されない。
まず、ダイヤモンド基板を硝酸:硫酸(1:3)の混酸中で240℃において1時間煮沸処理して酸素化を行った。さらに、前記ダイヤモンド基板を蒸留水を用いて洗浄後、蒸留水中で15分以上煮沸処理して水酸化を行った。
一方、シランカップリング剤処理液として、難水溶性処理液と易水溶性処理液とを準備した。前記難水溶性処理液は、トルエン1mLにシラン化合物を混合して2%(v/v)濃度となるように調製し、前記易水溶性処理液は、アセトン1mLにシラン化合物を混合して2%(v/v)濃度となるように調製した。なお、シラン化合物としては、下記式で表される3−アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES、商品名KBE−903、信越シリコーン社製)を使用した。
NCHCHCHSi(OC
まず、一回目の塗工として、前記ダイヤモンド基板を前記難水溶性処理液中に浸積し、室温で10時間静置して、APTESと前記ダイヤモンド基板表面とを反応させ、第1のコーティング層を形成した。続いて、前記ダイヤモンド基板を前記易水溶性処理液に浸積し、室温で14時間静置して、APTESと前記第1のコーティング層表面とを反応させ、第2のコーティング層を形成した。この第2のコーティング層をアセトンで洗浄し、さらに、アセトン中、超音波洗浄機で5分間処理してクリーニングした。そして、第1のコーティング層を介して前記第2のコーティング層を形成したダイヤモンド基板を、120℃で30分間静置して乾燥させた。このようにして、ダイヤモンド基板上に、第1のコーティング層および第2のコーティング層からなるコーティング膜が形成された、コーティング基板を作製した。
(比較例1〜8)
一回目の塗工用のシランカップリング剤処理液として、前記難水溶性処理液に代えて、下記溶媒にAPTESを混合した処理液をそれぞれ単独で使用し、且つ、二回目の塗工を行わなかった以外は、実施例1と同様にしてコーティング基板を製造した。
(比較例1) トルエン 1mL
(比較例2) エタノール水溶液(エタノールと水の混液(エタノール95体積%および水5体積%)に酢酸を加えてpHを4.7に調整したもの)1mL
(比較例3) アセトン 1mL
(比較例4) アセトニトリル 1mL
(比較例5) テトラヒドロフラン 1mL
(比較例6) クロロホルム 1mL
(比較例7) n−オクタノール 1mL
(比較例8) n−ヘプタン 1mL
(コーティングの均一性)
製造した実施例1および比較例1〜8の各コーティング基板について、それぞれコーティング膜表面を原子間力顕微鏡(商品名SPI3700、セイコーインスツルメント社製)で観察し、前記コーティング膜の均一性を確認した。
(引っ掻きによる耐摩耗性試験)
製造した実施例1および比較例1〜8の各コーティング基板について、以下に示す引っ掻き(スクラッチ)試験により前記コーティング膜の機械的強度(耐摩耗性)を試験した。
まず、原子間力顕微鏡(商品名SPI3700、セイコーインスツルメント社製)に、曲率半径1.0×10−8m(10nm)以下の四角錐型チップを有する窒化シリコンカンチレバーを取り付けた。このカンチレバーのばね定数は、1.7N/mであった。次に、水平な台にコーティング基板を配置し、前記窒化シリコンカンチレバーの四角錐型チップにより、前記コーティング基板のコーティング膜表面に対して垂直に所定の力を加えた。前記所定の力を加えたまま、前記窒化シリコンカンチレバーの四角錐型チップを前記コーティング膜表面に対して平行方向に移動させ、前記コーティング膜表面を引っ掻き、前記コーティング膜が剥離するか否かを観察した。
なお、前記所定の力は、図3に示すように、各コーティング基板の左上部に対して1.0×10−9N(1nN)、中上部に対して1.0×10−8N(10nN)、右上部に対して5.0×10−8N(50nN)、左中部に対して1.0×10−7N(100nN)、中央部に対して1.5×10−7N(150nN)、右中部に対して2.0×10−7N(200nN)、左下部に対して2.5×10−7N(250nN)、中下部に対して3.0×10−7N(300nN)、右下部に対して5.0×10−7N(500nN)とした。なお、上記力で四角錐型チップを移動させる領域は、それぞれ、縦1μm×横1μmとし、速さは1Htzとした。
図1に、実施例1および比較例1のコーティング基板表面(コーティング膜側の表面)の顕微鏡写真の結果を示す。図1(A)および(B)は、実施例1のコーティング基板の結果、図1(C)および(D)は、比較例1のコーティング基板の結果であり、それぞれ左側の顕微鏡写真、すなわち図1(A)および(C)は、それぞれスクラッチ前のコーティング基板の結果であり、右側の顕微鏡写真、すなわち図1(B)および(D)は、それぞれスクラッチ後のコーティング基板の結果である。図示の通り、実施例1のコーティング基板(同図(A))は、コーティング膜が均一に形成されていた。また、実施例1のコーティング基板は、スクラッチ後においても、剥離等が見られず、良好な状態を維持した(同図(B))。また、比較例1では、同図(C)に示すスクラッチ前のコーティング基板と比較して、同図(D)のスクラッチ後のコーティング基板は、スクラッチによるコーティング膜の剥離は観察されなかった。しかしながら、同図(C)および(D)に示すように、比較例1のコーティング基板は、コーティング膜が均一に形成されず、スクラッチの有無にかかわらず、コーティング膜において、厚みが薄い部分(抜け)が存在した。なお、比較例1におけるコーティング膜の厚みが薄い部分(抜け)は、具体的には、図1(C)および図1(D)のそれぞれにおいて中央部および右上部に多く確認される黒色の穴状の部分である。
図2に、比較例2〜4のコーティング基板の引っ掻き試験(スクラッチ)後の顕微鏡写真の結果を示す。図2(A)は比較例2、図2(B)は比較例3、図2(C)は比較例4のコーティング基板の結果を示す。図示の通り、各比較例のコーティング基板は、スクラッチ後にコーティング膜が剥離したことから、前記コーティング膜の機械的強度が実施例1と比較して弱いことが確認された。具体的には、比較例2および3は1nN以上の力でコーティング膜の剥離が生じ、比較例4は150nN以上の力でコーティング膜の剥離が生じた。
以上のように、本発明によれば、コーティング膜をダイヤモンド基板上に均一に形成することが可能であり、かつ、前記コーティング膜が前記ダイヤモンド基板に強固に結合したコーティング基板を製造できる。このような方法により得られるコーティング基板は、例えば、核酸やタンパク質等の生体物質を固定化する方法を提供することができる。本発明のコーティング基板は、コーティング膜の均一性や耐摩耗性に優れることから、例えば、核酸やタンパク質等の生体物質を固定化するバイオチップに適しているといえる。
図1は、本発明の一実施例において製造したコーティング基板の表面、ならびに、引っ掻き試験後のコーティング基板表面の顕微鏡写真である。 図2は、比較例において製造したコーティング基板の引っ掻き試験(スクラッチ)後の顕微鏡写真である。 図3は、本発明の実施例における引っ掻き試験の条件を示す概略図である。

Claims (17)

  1. シラン化合物を含有するシランカップリング剤処理液をダイヤモンド基板に塗布することにより、前記シラン化合物を化学結合によってダイヤモンド基板に固定化したコーティング基板の製造方法であって、
    下記(A)〜(C)工程を含むことを特徴とする製造方法。
    (A) ダイヤモンド基板を準備する工程
    (B) シランカップリング剤処理液として、難水溶性溶媒中にシラン化合物を含有した難水溶性処理液と、易水溶性溶媒中にシラン化合物を含有した易水溶性処理液とを準備する工程
    (C) 前記(B)工程で調製した二種類のシランカップリング剤を、ダイヤモンド基板の少なくとも一方の表面に塗布することにより、前記表面にコーティング膜を形成する工程であって、下記(c1)および(c2)工程を含む工程。
    (c1) ダイヤモンド基板表面に前記難水溶性処理液を塗布する工程
    (c2) ダイヤモンド基板表面に前記易水溶性処理液を塗布する工程
  2. 前記(c1)工程の後に前記(c2)工程を行う、請求項1記載の製造方法。
  3. 前記(c1)工程において、ダイヤモンド基板表面に前記難水溶性処理液を塗布して、前記難水溶性処理水中のシラン化合物を化学結合によって前記ダイヤモンド基板表面に固定化することにより、前記表面に第1のコーティング層を形成し、
    前記(c2)工程において、前記(c1)工程で形成した前記第1コーティング層の表面に前記易水溶性処理液を塗布して、前記易水溶性処理液中のシラン化合物を化学結合によって前記第1のコーティング層表面に固定化することにより、前記表面に第2のコーティング層を形成して、
    前記ダイヤモンド基板の表面に、前記第1のコーティング層および第2のコーティング層を含むコーティング膜を形成する、請求項1または2記載の製造方法。
  4. 前記難水溶性溶媒が、分子中に孤立電子対を含まない溶媒である、請求項1から3のいずれか一項に記載の製造方法。
  5. 前記難水溶性溶媒が、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、ベンゼン、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、トリメチルベンゼン、ナフタレン、テトラリン、ブチルベンゼン、シメン、p−シメン、シクロヘキシルベンゼン、o-ジエチルベンゼン、m-ジエチルベンゼン、p-ジエチルベンゼン、ペンチルベンゼン、ジペンチルベンゼン、ドデシルベンゼン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、クロロホルムおよびn−オクタノールからなる群から選択される少なくとも一つの溶媒である、請求項1から4のいずれか一項に記載の製造方法。
  6. 前記易水溶性溶媒が、アセトン、エチルメチルケトン、ジエチルケトン、イソブチルメチルケトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルセロソルブ、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、アセトニトリル、およびプロピオニトリルからなる群から選択される少なくとも一つの溶媒である、請求項1から5のいずれか一項に記載の製造方法。
  7. 前記ダイヤモンド基板が、表面が酸素終端化されたダイヤモンド基板である、請求項1から6のいずれか一項に記載の製造方法。
  8. 前記(A)工程において、ダイヤモンド基板に水酸化処理を施す、請求項1から7のいずれか一項に記載の製造方法。
  9. 前記水酸化処理が、前記ダイヤモンド基板を水または水溶液中で煮沸する処理である、請求項8記載の製造方法。
  10. 前記シラン化合物が、アルコキシシランである、請求項1から9のいずれか一項に記載の製造方法。
  11. 前記シラン化合物が、一方の末端に、ビニル基、エポキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルデヒド基(ホルミル基)、イソシアネート基(−N=C=O)、イソチオシアネート基(−N=C=S)、リン酸基、チオール基(メルカプト基)、マレイミド基、N−ヒドロキシスクシンイミド基、またはビニルスルホン基を有する化合物である、請求項1から10のいずれか一項に記載の製造方法。
  12. さらに、下記(D)工程を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の製造方法。
    (D) 前記(C)工程において形成されたコーティング膜の表面に、生体物質を結合させる工程
  13. シラン化合物を化学結合により前記ダイヤモンド基板上に固定化したコーティング基板であって、請求項1から12のいずれか一項に記載の製造方法により製造されるコーティング基板。
  14. 前記コーティング基板におけるコーティング膜が、シラン化合物から形成される単層体、または、前記単層体が積層された多層体である、請求項13記載のコーティング基板。
  15. 前記コーティング基板が、下記工程(1)〜(3)を含む引っ掻き試験によって、前記コーティング膜がダイヤモンド基板から剥離されないコーティング基板である、請求項13または14記載のコーティング基板。
    (1) 曲率半径1.0×10−8mの四角錐型チップを有する、ばね定数1.7N/mのSiN(窒化シリコン)カンチレバーを準備する工程
    (2) 前記SiNカンチレバーの四角錐型チップにより、前記コーティング基板の前記コーティング膜表面に対して垂直に、5.0×10−7N(500nN)の力を加える工程
    (3) 前記5.0×10−7Nの力を加えた状態で、前記SiNカンチレバーの四角錐型チップを前記コーティング膜表面に対して平行方向に移動させ、前記コーティング膜表面を引っ掻く工程
  16. コーティング基板の表面に生体物質を固定化したバイオチップであり、前記コーティング基板が、請求項13から15のいずれか一項に記載のコーティング基板であることを特徴とするバイオチップ。
  17. 前記生体物質が、核酸、タンパク質、ポリペプチドおよびアミノ酸からなる群から選択された少なくとも一つである、請求項16記載のバイオチップ。
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