JP2008168148A - 脳波の評価方法及びその評価装置 - Google Patents

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政俊 中村
Hiroshi Shibazaki
浩 柴崎
Takenao Sugi
剛直 杉
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  • Measurement And Recording Of Electrical Phenomena And Electrical Characteristics Of The Living Body (AREA)

Abstract

【課題】脳波記録の評価を容易に行い得る、新規な脳波の評価方法及びその評価装置を提供する。
【解決手段】脳波の評価装置30であって、生体情報取得部20と、表示部24と、生体情報取得部20から得られる脳波に混入するアーチファクトの有無の判定と被検者の生理状態情報とを脳波から計算する信号処理部4と、から構成される。信号処理部4はコンピュータ23を具備し、コンピュータ23が生体情報取得部20を制御し、計算を脳波測定の1区分毎に実時間で行い、計算結果と脳波とを同時に表示部24へ表示する。アーチファクトの有無及び被検者の生理状態情報が脳波と共に得られるので、正常な脳波を短時間に、低コストで取得できる。
【選択図】図1

Description

本発明は、脳波の評価方法及び評価装置に関する。
生体情報である脳波測定は、人間の脳の活動により発生する電位変化を頭皮上に設ける電極からの電位変化として検出することにより行われる。通常、記録された脳波中には脳の活動以外の筋肉の活動、眼球運動や電極不良などの他の現象に起因する雑音が混入する。
したがって、脳波測定の際には、脳波以外の雑音成分による電位変化(以下、アーチファクトと呼ぶ)が脳波と同時に記録されるので、アーチファクトの混入を防ぐため細心の注意が払われている。
脳波は専門の脳波検査技師によってデータ取得され、その結果が脳波に詳しい医師により診断されている。この際、上記アーチファクトの混入を防ぐことは脳波測定に重要であるが、種々の波形が混入するためにその判読は困難であった。これらのアーチファクトを自動的に検出できれば、脳波測定の精度が向上し、脳波測定が簡便に行えるようになるので、各種の方法が検討されている。
アーチファクトの自動的検出方法に関しては、例えば、眼のまばたきである瞬目、眼球の側方運動である側方眼球運動、筋肉の運動による筋電図、耳たぶ(耳朶)に設ける基準電極に起因する雑音などによるアーチファクトを、脳波測定の前処理として検出する方法が研究されている(非特許文献1参照)。
この方法においては、各種のアーチファクトは、それぞれのアーチファクトの電気的波形の特徴を規定する条件でアーチファクトを抽出しているが、脳波測定と同時に行い得る実時間測定の方法は示されていない。
また、脳波測定において、瞬目アーチファクトが混入してもその影響を高精度に除去できると共に、脳波測定を実時間で実行できる方法が知られている(特許文献1参照)。この方法においては、脳波に混入する瞬目を別に眼電図として同時に測定する。次に、眼電図のデータを演算処理することにより脳波に混入する瞬目アーチファクトの推定波形を得て、脳波データより削除することで、瞬目アーチファクトのない脳波データを得るようにしている。しかしながら、脳波測定による微弱な電圧(μV)以上の雑音が発生する他の電極アーチファクトの除去法などは開示されていない。
一方、脳波測定を行う際に、被験者は体運動状態ではなく安静状態にあり、かつ、覚醒状態にないと、体運動アーチファクトなどが混入して、正常な脳波測定が行えない。例えば、健常者の覚醒時における生理状態のうちのリラックス度は、脳波のα波帯域(8〜14Hz)の測定により判定できることが開示されている(特許文献2及び3参照)。
特許文献2においては、脳波信号から8Hz〜11Hzに属する周波数帯域の脳波パワー値を電極毎に算出し、算出された脳波パワー値の総和を用いて生理状態を評価している。また、特許文献3においては、脳波信号から8Hz〜11Hz及び11Hz〜14Hzに属する周波数帯域の脳波パワー値を電極毎に算出し、算出された脳波パワー値の総和の比を用いて生理状態を評価している。
上記の計算値は、数値の表示または高度の違いなどにより直接被検者に報知されるようになっている。しかしながら、特許文献2及び3はあくまでも、健常者の覚醒時におけるリラックス度を被検者が直接見れるように開眼状態で測定されている。
したがって、医療用脳波測定に必要な被検者の閉眼安静覚醒状態、即ち生理状態情報の評価はできず、また、脳波測定に混入するアーチファクトを検知する方法は開示されていない。
特開平11−318843号 特開平6−86762号(第1頁、図1〜図3) 特開平6−261873号(第1頁、図1〜図3) 杉 剛直、中村 政俊、池田 昭夫、柿木 隆介、柴崎 浩、「脳波自動判別のためのアーチファクト自動検出法」、医用電子と生体工学、1995年、Vol.33−3、pp.203−213
従来の脳波測定では、脳波測定中に実時間でアーチファクトと被験者の生理状態情報を検出し、アーチファクトの発生と被検者の生理状態情報を知ることにより、脳波測定者が被検者の脳波測定状態を容易に把握して、被検者の生理状態を修正して短時間で脳波測定を行い得る評価方法や評価装置は知られていない。
本発明は上記課題に鑑み、脳波記録の評価を容易に行い得る、新規な脳波の評価方法及びその評価装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明の脳波の評価方法は、脳波データの時系列信号をフーリエ変換し、このフーリエ変換した結果から複数のパラメータを求め、求めたパラメータを正規化して複数の正規化パラメータとし、これらの正規化パラメータを積算してα波活動の相対値を求める。
具体的には、脳波データの時系列信号をフーリエ変換し、このフーリエ変換した結果から、α波の振幅、持続及び周波数をパラメータとして、α波振幅の平均値と持続の平均値とα波帯域のピーク周波数を求め、パラメータを正規化して正規化パラメータをそれぞれ求め、この求めた正規化パラメータを積算してα波活動の相対値を求める。
上記目的を達成するために、本発明の脳波の評価装置は、生体情報を取得する生体情報取得部と、生体情報取得部から得られる脳波に基づいて被検者の生理状態情報を計算する信号処理部と、信号処理部で計算した結果を表示する表示部と、を有し、信号処理部が、生体情報取得部から得た脳波データの時系列信号をフーリエ変換し、このフーリエ変換した結果から複数のパラメータを求め、この複数のパラメータをそれぞれ正規化して複数の正規化パラメータとし、これらの正規化パラメータを積算してα波活動の相対値を求める。
具体的には、生体情報を取得する生体情報取得部と、生体情報取得部から得られる脳波に基づいて被検者の生理状態情報を計算する信号処理部と、信号処理部で計算した結果を表示する表示部と、を有し、信号処理部が、生体情報取得部から取得した脳波データの時系列信号をフーリエ変換し、このフーリエ変換した結果から、α波の振幅、持続及び周波数をパラメータとして、α波振幅の平均値と持続の平均値とα波帯域のピーク周波数を求め、パラメータを正規化して正規化パラメータをそれぞれ求め、この求めた正規化パラメータを積算してα波活動の相対値を求める。
本発明によれば、脳波に混入するアーチファクトの有無の判定と被検者の生理状態情報とが脳波から計算され、脳波とアーチファクトの有無及び被検者の生理状態情報とが脳波測定者に報知されるので、経験が浅く十分な技術を持たない脳波測定者であっても、熟練した脳波測定者と同等の正常な脳波測定を、短時間で取得できる。
したがって、本発明を現状の脳波測定に適用すれば、脳波の評価を、短時間で且つ、低コストで実施することができる。
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を詳細に説明する。
始めに、本発明の第1の実施の形態である生体情報の評価方法を説明する。
図1は、本発明の生体情報の評価方法において用いる測定系の概略構成を示す図である。図1に示すように、測定系1は、被検者2の生体情報取得部3と、信号処理部4と、表示部5とから構成されている。
生体情報取得部3においては、脳波、筋肉の動きを検知する筋電図(Electromyogram,以下EMGとも呼ぶ)、眼球の動きを検知する眼電図などのデータが取得される。生体情報を脳波とした場合に、増幅された信号は脳波そのものである。さらに、信号処理部4により脳波に混入するアーチファクトの有無の判定と被検者の生理状態情報とを脳波から計算する。そして、脳波とアーチファクトの有無の判定及び被検者の生理状態情報とが測定者に報知される。
ここで、報知とは、表示部5であるCRTディスプレイや液晶ディスプレイで行われると共に、記憶装置に記憶されたり、プリンタにより紙に印刷されることを示している。
また、アーチファクトは、脳波以外の被検者の運動による、所謂体運動アーチファクトと、被検者の頭皮に設けた電極による電極アーチファクトなどである。体運動は、瞬目、側方眼球運動、筋電図などを含むものである。また、生理状態情報とは、被検者が閉眼安静覚醒状態であるかどうかを判定するために用いる、脳波のα波活動の相対値であり、後述する。
脳波測定は、被検者2の頭皮上に電極を接続して行う。
図2は、脳波測定のための頭皮上の電極配置を示す図である。図は、国際式10−20法の電極配置であり、例えば、眼球に最も近い前頭電極がFp1、Fp2であり、左耳朶及び右耳朶に接続される電極がA1及びA2である。これらの2つの電極間の電位が1つのチャネル分の脳波信号となる。通常、基準電極としては、左右の耳朶電極A1,A2が使用されている。
図3は、本発明の生体情報の評価方法において、図1の測定系を用いて脳波測定を行う基本的な手順を示すフロー図である。
先ず、ステップST1において、各電極からの脳波を、同時に所定時間単位(この時間を、以下、1区分と呼ぶ)で、生体情報取得部3に取り込む。そして、生体情報取得部3において、この1区分毎のアナログ情報である生体情報が増幅され、デジタル信号に変換されるA/D変換などの処理がされて、信号処理部4へデータが転送される。
次に、ステップST2において、取り込まれた脳波データの1区分の時系列信号が信号処理部4により、フーリエ変換される。このようにして、脳波の時系列信号が周波数成分として計算されて、所謂ピリオドグラムを得る。
脳波の場合には、周波数帯域をδ波(0.5〜4Hz)、θ波(4〜8Hz)、α波(8〜13Hz)、β波(13〜25Hz)の四つに分けて、各帯域の成分量を相当するピリオドグラムの和として求めればよい。各検出式の記述は、ピリオドグラム成分量(パワーの次元)をSとしたときに、A=6√(S)で計算される振幅の値を用いて表現される。例えば、6√Sδ(Fp1)は頭皮の部位Fp1におけるδ波帯域の波の振幅を表わす。
次に、ステップST3において、上記ピリオドグラムに混入しているアーチファクトの検出と、被検者の生理状態情報である脳波のα波活動の相対値が計算される。この計算は、信号処理部4により、後述するアルゴリズムを用いて、実時間処理される。
次に、ステップST4において、実時間処理されて検出されたアーチファクトと被検者の生理状態とが、脳波と共に表示部5に表示される。そして、脳波測定データをパーソナルコンピュータや外部記憶装置に記憶させる。
次に、ステップST5において、脳波測定者は脳波測定を終了するか否かを判定する。そして、ステップST5において、脳波測定を続けると判定したときには、再びステップST1に戻り、脳波の再測定を行う。
これに対して、ステップST5において、脳波測定者が脳波測定を終了すると判定したときには、ステップST6において、脳波測定が終了する。そして、取得した正常な脳波測定データをプリンタなどに出力して、医師は脳波診断を行うことができる。
この際、脳波測定者が電極アーチファクトや被検者の入眠などにより正常に測定されていないと判定したときには、次の作業を行う。
アーチファクトが電極アーチファクトである場合には、再度被検者の頭皮に接続されている電極の装着不良などを直す。また、被検者が覚醒していない場合には、脳波測定者は被検者に注意を喚起する。そして、再び、ステップST1に戻り、再測定を行うことにより、正常な脳波測定を短時間に行うことができる。
このようにして、本発明の脳波の評価方法において、脳波測定データの1区分毎に、実時間処理されて、検出されたアーチファクトと被検者の脳波のα波活動の相対値とが、脳波と共に脳波測定者に報知される。これにより、アーチファクトの検出と共に、被検者の生理状態を適性に保つことで、雑音の少ない脳波測定データを短時間で高精度に測定することができる。
次に、ステップST3におけるアーチファクトの検出のアルゴリズムについて、瞬目,側方眼球運動,筋電図,電極の各アーチファクトの有無の判定についてさらに詳しく説明する。
最初に、瞬目アーチファクトの判定について説明する。ここでは、瞬目によるアーチファクトと眼球の垂直方向運動に伴うアーチファクトもあわせて、広く瞬目アーチファクトとして取り扱う。
眼球アーチファクトは、眼球に最も近い前頭電極Fp1、Fp2に鋭い立ち上がりのδ波帯域に含まれる陽性電位(下方向)が頭皮上ほぼ左右対称に出現し、それが頭皮上後方へ急峻に振幅を減じながら波及することにより生じる。この瞬目アーチファクトの特徴は、(I)Fp1、Fp2でのδ波帯域成分量の存在、(II)Fp1、Fp2で最大振幅を有する頭皮上対称性波形、(III)頭皮上後方への急峻な減衰波及である。
これら瞬目アーチファクトの特徴である上記(I)〜 (III)が反映されるように、各項目に対する検出式を決定することができる。先ず、(I)の条件については、下記(1)式及び(2)式で求める。


(1)式及び(2)式はFp1、Fp2にδ波成分量が存在し、その振幅がともに、25μV以上であることを表わす。
(II)の条件については、下記(3)式及び(4)式で求める。


ここで、Fp1−Fp2は計算機内でFp1の時系列よりFp2の時系列を差し引くことによって求められる時系列を意味し、Fp1+Fp2は両時系列の和で求められる時系列を意味する。
(3)式は、Fp1とFp2の加算時系列のδ波帯域のピリオドグラム成分量の総和Sδ(Fp1+Fp2)からA=6√(S)で計算される波の振幅が50μV以上であることを表わす。
(4)式は、Fp1とFp2の加算時系列より求められる波の振幅と減算時系列より求められる波の振幅との比をとったとき、その割合が55%以下であることを表わす。この比が小さいほどFp1における波形とFp2における波形が一致していることになる。
(III)の条件については、下記(5)式〜(8)式で求める。




(5)式及び(7)式は頭皮上左半球においてF3及びC3とFp1における振幅の比がそれぞれ85%、78%以下であることを表わし、(6)式及び(8)式は頭皮上右半球における同様のことを表わし後方への波の減衰を意味する。
瞬目アーチファクトに関する検出においては、上記(1)式〜(8)式の全てを満たした場合に、瞬目アーチファクトの混入がありと判定する。
次に、眼球の運動に対して、側方眼球運動アーチファクトの検出について、説明する。
側方眼球運動アーチファクトでは、眼球の運動方向の前側頭部の電極に陽性電位が、反対側の電極に陰性電位が出現する。この側方眼球運動アーチファクトの特徴は、(IV)F7、F8でのδ波帯域成分量の存在、(V)F7、F8での波形の逆位相、(VI)頭皮上後方への波及なしである。
これらの側方眼球運動アーチファクトの特徴である上記(IV)〜(VI)が反映されるように、各項目に対する検出式を決定する。まず、(IV)の条件については、下記(9)式及び(10)式で求める。


(9)式及び(10)式はF7,F8にδ波成分量が存在し、その振幅がともに、25μV以上であることを表わす。
(V)の条件については、下記(11)式及び(12)式で求める。


(11)式は、F7とF8の減算時系列より求められる波の振幅が55μV以上であることを表わす。
(12)式は、F7とF8の加算時系列より求められる波の振幅と減算時系列より求められる波の振幅の比が91%以上で、F7、F8の波形の逆位相を表わす。
(VI)の条件については、下記(13)式及び(14)式で求める。


(13)式は、頭皮左半球においてT3とF7における波の振幅比が94%以下であることを表わし、(14)式は頭皮右半球における同様のことを表わす。
側方眼球運動アーチファクトに関する検出は、上記(9)式〜(14)式の全てを満たした場合に、側方眼球運動アーチファクトの混入がありと判定できる。
次に、筋電図アーチファクトの検出について説明する。
筋電図アーチファクトでは、脳波に比べて周波数が高く、一部の成分は脳波のβ波帯域に影響を及ぼす。
筋電図アーチファクトの特徴は、(VII) 高周波成分の存在である。
(VII) の条件に対する検出式としては、下記(15)式及び(16)式で求める。


ここで、SEMG は筋電図の振幅、Xは電極名を示す。筋電図の周波数帯域は35〜50Hzとした。
(15)式は筋電図の振幅が10μV以上であることを表わし、(16)式は筋電図の振幅が脳波のβ波の振幅以上であることを表わす。
筋電図アーチファクトに関する検出としては、上記(15)式及び(16)式を満たした場合に、筋電図アーチファクトの混入がありと判定する。
次に、電極アーチファクトの検出について説明する。ここでは、基準電極として耳朶電極を用いる。
例えば、脳波の耳朶電極のアーチファクトにおいては、頭皮上右半球8部位の全ての時系列中にδ波帯域に属する類似波形でほぼ同一振幅の波が出現し、一方反対側の頭皮上左半球にはその波に類似したものは全く見られないことである。このような耳朶電極アーチファクトの特徴は、(VIII)頭皮上右半球8部位の全てにδ波帯域成分の存在、(IX)頭皮上右半球8部位の全ての波形及び振幅の類似性、(X)頭皮上反対側半球には類似波形の波が全くない、の3点である。
これらの耳朶電極アーチファクトの特徴である上記(VIII)〜(X)が反映するように、各項目の検出式を決定する。まず、(VIII)の条件については、下記(17)式で求める。

ここで、Xは左の電極としてFp1,F3,C3,P3,O1,F7,T3,T5を、右の電極としてFp2,F4,C4,P4,O2,F8,T4,T6を示している。(17)式は、頭皮上一側8部位全ての波の振幅が、25μV以上であることを表わす。
(IX)の条件については、下記(18)式で求める。

ここで(x、y)は、以下に示した頭皮上一側8部位内の隣接する2部位間の電極であり、
(x、y)=左:(Fp1,F3),(F3,C3),(C3,P3),(P3,O1),(Fp1,F7),(F7,T3),(T3,T5),(T5,O1),(F7,F3),(T3,C3),(T5,P3)
右:(Fp2,F4),(F4,C4),(C4,P4),(P4,O2),(Fp2,F8),(F8,T4),(T4,T6),(T6,O2),(F8,F4),(T4,C4),(T6,P4)である。
(18)式は、頭皮上一側8部位内の隣り合う2部位間で、加算時系列より求められる波の振幅と減算時系列より求められる波の振幅の比が30%以下で、波形の類似性を表わす。
(X)の条件については、下記(19)式で求める。

ここで(x、y)は、以下に示した頭皮上の左右対称部位の電極であり、
(x、y)=(Fp1,Fp2),(F3,F4),(C3,C4),(P3,P4),(O1,O2),(F7,F8),(T3,T4),(T5,T6)である。
(19)式は、頭皮上の左右対称部位において、加算時系列より求められる波の振幅と減算時系列より求められる波の振幅の比が50%以上で、類似の波形ではないことを表わす。
電極アーチファクトに関する検出は、上記(17)式〜(19)式の全てを満たした場合に、電極アーチファクトの混入がありと判定する。
このようにして、各種のアーチファクトの有無の判定を行うことができる。なお、上記の判定式の各値は、被検者の状態に応じて適宜変更してもよい。
次に、ステップST3における被検者の生理状態情報である脳波のα波活動の相対値を抽出するアルゴリズムについて詳しく説明する。
脳波中のα波活動を評価する上で指針となるのは、α波の振幅,持続,周波数の3つのパラメータであるが、脳波のα波の特性は個人によってバラツキが大きく、上記のα波パラメータを直接用いると、α波活動の評価を客観的に行うことは難しい。
本発明の特徴は、被検者の安静閉眼覚醒状態をα波活動の相対値により得ることである。従来、このような評価方法は知られておらず、本発明者らが見出したアルゴリズムである。
最初に、脳波のα波のパラメータの取得方法について説明する。
これらのパラメータの計算は脳波測定の1区分毎に行う。1区分は、例えば5秒とすることができる。
最初に第i区分におけるα波振幅の平均値Aα(μV)と、持続の平均値Dα(%)と、α波帯域のピーク周波数Fα(Hz)を求める。振幅の平均値Aα(μV)は、下記(20)式で求める。

ここで、Aα(i)はピリオドグラム成分量の総和Sを用いて、6√Sの形式で表される振幅値を意味し、第i区分における電極O1,O2,P3,P4の4部位のα波振幅の平均値を表している。Sα(j,i)は第i区分の部位jにおけるα波帯域(8〜13Hz)のピリオドグラム成分量の総和を示している。
次に、持続の平均値Dα(%)は、下記(21)式で求める。

ここで、ST(j,i)は第i区分の部位jにおける脳波測定の全周波数領域(0.5〜25Hz)のピリオドグラム成分量の総和を示している。
次に、α波帯域のピーク周波数Fα(Hz)は、下記(22)式で求める。

ここで、Fα(i)は、α波帯域のピーク周波数fα(j,i)の4部位での平均値を表す。
次に、上記各パラメータを正規化することで、個人間のバラツキのない状態にする。正規化において、第i区分におけるα波振幅の正規化値ΦαA,持続の正規化値ΦαD,α波帯域のピーク周波数の正規化値ΦαFは、それぞれ、下記(23)式〜(25)式で与えられる。



ここで、minAα(i)は、第1〜第i区分までのα波の振幅Aα(i)の最小値、maxAα(i)は最大値を表す。ΦαA(i)は正規化後の振幅値となり、全て0〜1の範囲となる。ΦαD(i),Φαf(i)に関しても同様である。
さらに、これら3つの正規化パラメータを積算して、第i区分の評価値Bα(i)を、下記(26)式で得る。

最後に、これを百分率表示するため、第1〜第i区分までのBα(i)の最大値をBα(std)とし、これとの比を取ることでα波活動の相対値を、(27)式により計算する。

この相対値は、α波が良好に出ているときには100%に近い良好な値を示し、覚醒状態の低下や開眼動作などが起きると低い値を示す。
このようにして、本発明の脳波の評価方法において、α波活動の相対値を脳波測定の1区分毎の経時変化を表示することで、測定者は被検者のα波活動の変化を容易に知ることができる。そして、脳波測定者は、この相対値が低い場合には被検者に注意を喚起することで、被検者を速やかに安静閉眼覚醒状態に保つことができる。これにより、脳波のα波の各区分毎に、被検者の生理状態情報であるα波活動の相対値を短時間に抽出することができる。
次に、本発明の脳波の評価方法において、実時間で計算処理をする手順について説明する。
図4は、図1の測定系を用いて脳波の評価を行う際に、実時間で計算処理する計算アルゴリズムを示すフロー図である。先ず、ステップST20において、生体情報取得部3に入力される各電極からの脳波が増幅され、1区分毎にA/D変換されることで、データが取得される。この1区分は例えば5秒であり、A/D変換の間隔は10ms(ミリ秒)とすることができる。ここでは、脳波以外の筋電図アーチファクトを検出する場合には、筋電図も同様にデータ取得されればよい。
次に、ステップST21において、1区分の脳波データ取込みが終了したか否かを判定する。そして、ステップST21において、1区分の脳波データ取込みが正常に行われていないと判定したときには、再び、ステップST20に戻り、再度脳波データ取込み測定を行う。
これに対して、ステップST21において、1区分の脳波データ取込みが正常に終了したと判定したときには、ステップST22に進む。ここでは、1区分の脳波測定データをパーソナルコンピュータに転送する処理と、脳波データ取込みをさらに続けるかどうかの判断をするステップST30に進む処理と、がなされる。
最初に、ステップST30以降の処理について説明する。ここでは、次の1区分の脳波データ取込みを引き続き行うか否かを判定する。そして、ステップST30において、次の1区分の脳波データ取込みを引き続き行うと判断した場合には、再び、ステップST20に戻り、新しい脳波データ取込み測定を行う。
これに対して、ステップST30において脳波データ取込みを終了する場合には、ステップST31に進み、脳波データ取込みが終了する。
次に、ステップST22において、1区分の脳波測定データをパーソナルコンピュータに転送する処理以降について説明する。
信号処理部4は、1区分の脳波測定データがA/D変換器から転送送出されると、ステップST23において、データを受信する。
次にステップST24において、このデータ受信が正常であるか否かを判定する。そして、ステップST24において、得られた1区分の脳波測定データが妥当でないと判定したときには、ステップST23に戻り再度データ受信を行う。
これに対して、ステップST24において、得られた1区分の脳波測定データが妥当であると判定したときには、ステップST25において、ピリオドグラム計算を行う。次に、ステップST26において、ピリオドグラムから、アーチファクトの検出及び脳波のα波活動の相対値を計算するのに必要なパラメータ計算を行う。
次に、ステップST27において、上記のパラメータから、アーチファクトの有無の検出と、α波活動の相対値とを計算する。
アーチファクトが、例えば瞬目アーチファクトの場合には、上述した(1)式〜(8)式の計算によりその有無を計算する。また、α波活動の相対値は、(27)式を用いて計算すればよい。
続いて、ステップST28において、脳波と、アーチファクトの有無と、α波活動の相対値と、を表示部5に表示させる。
最後に、ステップST23に戻り、次の区分の脳波データ処理を行う。
このようにして、本発明の脳波の処理方法において、取得する脳波と共に、アーチファクトの有無及び脳波のα波活動の相対値とが、実時間で計算される。この計算アルゴリズムは、時分割処理、または、並列分散処理によって信号処理部4内のコンピュータで実時間で実行され得る。
次に、上記で説明した脳波の評価測定の計算アルゴリズムにおいて、電極不良を検出する方法について説明する。
電極アーチファクト以外の電極不良については、以下のようにして検出することができる。ここで、電極不良とは、被検者に接続される電極と検出系までの配線とコネクタとを含むものである。
例えば、ステップST21において、1区分の脳波データ取込みを判定するときに、信号が得られない場合には、被検者に接続した電極から測定系までの配線に異常が生じている。この場合には、被検者の頭皮や耳朶に電極が接続されていない、配線の断線、配線接続のためのコネクタ類の不良のいずれかまたはこれらの組合わせによる不良などが原因と推定できる。
また、ステップST21において、取り込んだ信号の電圧値が通常の脳波信号に比較して異常に高い場合には、被検者に接続した耳朶電極を共通配線(アース)が不良であると判定できる。
このようにして、上記不良が生じた場合には、表示部5にその内容を表示させる。これにより、本発明の脳波の処理方法において、アーチファクト以外の電極不良の検出を行うことができる。
次に、本発明の脳波評価装置に係る第2の実施の形態を示す。
図5は、本発明に係る第2の実施の形態による脳波の評価装置の構成を模式的に示すブロック図である。図5に示すように、脳波の評価装置30は、基本的には、被検者2の生体情報を取得する生体情報取得部3と、信号処理部4とから構成されている。
生体情報取得部3は、生体情報を増幅する増幅器20と、A/D変換器22とから構成されている。信号処理部4は、パーソナルコンピュータなどの電子計算機23と表示部24とから構成されている。
増幅器20は、脳波の場合で説明すると、被検者の頭皮に接続される電極から出力される信号を個別に増幅する複数の増幅器から構成されている。生体情報が脳波だけの場合は、増幅された信号は脳波そのものであり、直ちに信号処理部4の表示部24により表示される。生体情報として脳波以外の筋電図を測定する場合には、そのための増幅器が増幅器20に含まれている。
A/D変換器22は、増幅器20からの多チャネルの信号を個別に、所定の時間毎にA/D変換して、1区分毎に生体情報が取得される毎に、パーソナルコンピュータ23にデータ転送を行う。
この際、信号処理部4は、上記増幅器20とA/D変換器22の制御ができ、脳波データ取得時間やその回数などを制御する。さらに、信号処理部4はメモリを備え、このメモリには、脳波に混入するアーチファクトの有無の判定及び被検者の生理状態情報抽出のための計算プログラムと、この計算に必要なアルゴリズムにおけるパラメータなどが予め記憶されている。測定者は、これらのパラメータの指定と修正ができることが望ましい。
次に、信号処理部4は、本発明の脳波の評価方法による、脳波に混入するアーチファクトの有無の判定と被検者の生理状態情報抽出としての脳波のα波活動の相対値とを計算するプログラムを実行し、これらの計算結果が脳波と共に表示部24により表示される。さらに、脳波と計算結果は、信号処理部4のメモリに保存されると共に、プリンタから出力される。
次に、本発明の脳波評価装置に係る第3の実施の形態を示す。
図6は、本発明に係る第3の実施の形態による脳波の評価装置の構成を模式的に示すブロック図である。図6に示すように、脳波の評価装置40は、外部にある脳波測定装置35と接続されている。外部にある脳波測定装置35は、脳波信号の増幅器を備えているので、生体情報取得部3をA/D変換器22にて構成することを除いては、図5の脳波の評価装置と同じである。
このような構成により、既存の脳波測定装置35に本発明の脳波の評価装置40を付加することで、本発明に係る第2の実施の形態による脳波の評価装置30と同様に脳波の評価を行うことができる。
なお、脳波以外の筋電図アーチファクトなどを検出する場合には、生体情報取得部3に筋電図増幅器をさらに備えて、その増幅出力をA/D変換器22に加えればよい。
次に、本発明の実施例を説明する。
図7は、本発明の脳波記録の評価装置を用いて、脳波の評価を行った実施例において、表示装置に表示される画面を示す図である。
図において、上部が脳波波形であり、5秒間を1区分とする4区分20秒の脳波時系列を示していて、区分ごとに評価された脳波に混入するアーチファクトの有無の判定と被検者の生理状態情報であるα波活動の相対値が下の表に示されている。図に示すように、脳波においては、縦軸はFp1−A1〜T6−A2の16チャネルの波形であり、横軸は時間(秒)である。
ここで、例えば、Fp1−A1は、前頭電極Fp1及び左耳朶A1電極間の脳波を示している(図2参照)。
表は、瞬目、側方眼球運動、筋電図(EMG)、電極のそれぞれによるアーチファクトの有無を、YES(有),NO(無)で示している。さらに生理状態を抽出した脳波のα波の相対値(%)が表示されている。
区分1〜区分3においては、瞬目アーチファクトはあるものの、他のアーチファクトが混入していないことが分かる。さらに、区分4においては、アーチファクトがないことが分かる。
また、α波の相対値(%)は、区分1〜区分4において、それぞれ、97.4%,78.5%,61.0%,60.4%であることが分かる。
図から明らかなように、脳波と、アーチファクトの有無及び脳波のα波の相対値が一目で評価できた。
ここで、区分1の場合には、α波の相対値が97%と高いことと、瞬目アーチファクトと、が生じているので、被検者が安静覚醒状態ではあるが、瞬きをしている状態であった。この場合には、測定者は被検者に瞬きを止めるように注意を促して、正常な脳波測定ができた。
また、区分4の場合には、アーチファクトがないが、α波の相対値が60%と低く入眠状態であった。この場合には、測定者は、被検者を覚醒させることで、正常な脳波測定ができた。
本発明は上記実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれることはいうまでもない。例えば、脳波測定におけるアーチファクトの判定方法は、被検者に応じて適宜適当なモデル式を使用できることはいうまでもない。
本発明の脳波記録の評価方法に用いる測定系の概略構成を示す図である。 脳波測定のための頭皮上の電極配置を示す図である。 本発明の生体情報の評価方法において、図1の測定系を用いて脳波測定を行う手順を示すフロー図である。 図1の測定系を用いて脳波の評価を行う際に、実時間で計算処理する計算アルゴリズムを示すフロー図である。 本発明に係る第2の実施の形態による脳波の評価装置の構成を模式的に示すブロック図である。 本発明に係る第3の実施の形態による脳波の評価装置の構成を模式的に示すブロック図である。 本発明の脳波の評価装置を用いて脳波の評価を行った結果を、表示モニタに表示した画面を示す図である。
符号の説明
1 測定系
2 被検者
3 生体情報取得部
4 信号処理部
5,24 表示部
20 増幅器
22 A/D変換器
23 パーソナルコンピュータ
30,40 脳波の評価装置
35 外部の脳波測定装置

Claims (4)

  1. 脳波の評価方法であって、
    脳波データの時系列信号をフーリエ変換し、
    このフーリエ変換した結果から複数のパラメータを求め、
    求めたパラメータを正規化して複数の正規化パラメータとし、これらの正規化パラメータを積算してα波活動の相対値を求める、脳波の評価方法。
  2. 脳波の評価方法であって、
    脳波データの時系列信号をフーリエ変換し、
    このフーリエ変換した結果から、α波の振幅、持続及び周波数をパラメータとして、α波振幅の平均値と持続の平均値とα波帯域のピーク周波数を求め、
    上記パラメータを正規化して正規化パラメータをそれぞれ求め、
    この求めた正規化パラメータを積算してα波活動の相対値を求める、脳波の評価方法。
  3. 生体情報を取得する生体情報取得部と、上記生体情報取得部から得られる脳波に基づいて被検者の生理状態情報を計算する信号処理部と、上記信号処理部で計算した結果を表示する表示部と、を有し、
    上記信号処理部が、上記生体情報取得部から得た脳波データの時系列信号をフーリエ変換し、このフーリエ変換した結果から複数のパラメータを求め、この複数のパラメータをそれぞれ正規化して複数の正規化パラメータとし、これらの正規化パラメータを積算してα波活動の相対値を求める、脳波の評価装置。
  4. 生体情報を取得する生体情報取得部と、上記生体情報取得部から得られる脳波に基づいて被検者の生理状態情報を計算する信号処理部と、上記信号処理部で計算した結果を表示する表示部と、を有し、
    上記信号処理部が、上記生体情報取得部から取得した脳波データの時系列信号をフーリエ変換し、このフーリエ変換した結果から、α波の振幅、持続及び周波数をパラメータとして、α波振幅の平均値と持続の平均値とα波帯域のピーク周波数を求め、上記パラメータを正規化して正規化パラメータをそれぞれ求め、この求めた正規化パラメータを積算してα波活動の相対値を求める、脳波の評価装置。
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