JP2008164517A - メチル化ヘテロジニアス・ヌクレア・リボヌクレオプロテインの免疫学的分析方法及びその利用 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明者は、抗hnRNP抗体と抗メチル化アミノ酸残基に結合する抗体とを用い、癌患者の血液中のメチル化hnRNP群を分析したところ、メチル化hnRNP群が大腸癌患者の血液中においても増加していることを見出した。更に、大腸癌以外の癌である肺癌及び乳癌の患者の血液中においても、健常人と比較してメチル化hnRNP群が増加していることがわかった。このことより、メチル化アミノ酸残基に結合する抗体を用いるメチル化hnRNPの免疫学的分析方法により、大腸癌、肺癌及び乳癌などの癌を検出することが可能であり、進行癌や末期癌の患者だけでなく、症状が見られないステージIの早期癌の患者の血液中でも高い比率で癌を検出することが可能である。
【選択図】なし
Description
本発明者らは、更に、大腸癌組織においてメチル化されているタンパク質について鋭意研究を進めたところ、抗hnRNP抗体を用いてその複合体を免疫沈降し、抗メチルリジン(Methyllysine:以下、MeKと称することがある)抗体、又は抗メチルアルギニン(methylarginine:以下、MeRと称することがある)抗体でウェスタンブロッティングを行うことにより、複数のhnRNPが細胞内で分子複合体として存在しており、MeR化されたタンパク質及びMeK化された複数のタンパク質がhnRNPであることを見出した。
また、本発明者は、抗hnRNP抗体と抗MeK抗体、又は抗hnRNP抗体と抗MeR抗体とを用い、癌患者の血液中のメチル化hnRNP類を分析したところ、メチル化hnRNP類が大腸癌患者の血液中においても増加していることを見出した。更に、驚くべきことに、大腸癌以外の癌である肺癌及び乳癌の患者の血液中においても、健常人と比較してメチル化hnRNP類が増加していることがわかった。また、メチル化hnRNPは、進行癌や末期癌の患者だけでなく、症状が見られないステージIの早期癌の患者の血液中でも高い比率で検出されることがわかった。
本発明は、こうした知見に基づくものである。
本発明による免疫測定方法の好ましい態様においては、前記メチル化アミノ酸残基が、メチル化アルギニン又はメチルリジンである。
本発明による免疫測定方法の別の好ましい態様においては、前記メチル化ヘテロジニアス・ヌクレア・リボヌクレオプロテインが、ヘテロジニアス・ヌクレア・リボヌクレオプロテイン2つ以上を含む複合体を形成している。
本発明による免疫測定方法の別の好ましい態様においては、更に、ヘテロジニアス・ヌクレア・リボヌクレオプロテインに結合する抗体を用い、特には、前記ヘテロジニアス・ヌクレア・リボヌクレオプロテインに結合する抗体が、Cold−inducible RNA−binding protein、hnRNP C−like 1、hnRNP H、hnRNP H‘、hnRNP H3、hnRNP C1/C2、hnRNP D0、hnRNP F、hnRNP G、hnRNP K、hnRNP L、hnRNP M、hnRNP Q、hnRNP R、hnRNP U、hnRNP E1、hnRNP E2、hnRNP I、RNA−binding protein Raly、hnRNP A0、hnRNP A1、hnRNP A2/B1、hnRNP A3、hnRNP A/B、及びhnRNP JKTBPからなる群から選択されるヘテロジニアス・ヌクレア・リボヌクレオプロテインに結合する少なくとも1つの抗体である。
本発明による免疫測定方法の好ましい態様においては、前記被検試料が、血液由来の試料である。
本発明によるメチルリジンを含むヘテロジニアス・ヌクレア・リボヌクレオプロテインの好ましい態様においては、前記ヘテロジニアス・ヌクレア・リボヌクレオプロテインが、hnRNP A1、hnRNP C1/C2、hnRNP F、hnRNP H、又はhnRNP Kである。
本発明による癌を検出する方法の好ましい態様においては、前記癌が、膀胱癌、乳癌、結腸癌、腎臓癌、肝臓癌、肺癌、小細胞肺癌、食道癌、胆嚢癌、卵巣癌、膵臓癌、胃癌、子宮頸部癌、甲状腺癌、前立腺癌、扁平上皮癌、皮膚癌、骨癌、リンパ腫、白血病、又は脳腫瘍である。
また本発明は、ヘテロジニアス・ヌクレア・リボヌクレオプロテインに結合する抗体と、メチルリジンに結合する抗体を含む、癌の診断キット、又はヘテロジニアス・ヌクレア・リボヌクレオプロテインに結合する抗体と、アシンメトリックジメチルアルギニンに結合する抗体を含む、癌の診断キットにも関する。
なお、本明細書における「分析」には、分析対象化合物の存在の有無を判定する「検出」と、分析対象化合物の存在量を決定する「定量」との両方が含まれる。
また本明細書において、「hnRNP」は、特に断らない限り、不特定の1種のhnRNPを意味し、「hnRNP類」は不特定の複数のhnRNPを意味する。そして、特定のhnRNPについては、例えば、「hnRNP K」と示す。また、「hnRNPファミリー」は、hnRNPに分類される全てのhnRNPを含むことを意味し、「hnRNP複合体」は、複数のhnRNPが結合した複合体を意味する。
(A−1)メチル化アミノ酸残基に結合する抗体を被検試料と接触させる工程、及び
(A−2)メチル化hnRNPと前記抗体との免疫複合体を検出する工程
を含む。メチル化アミノ酸残基に結合する抗体は、免疫複合体を検出するために標識抗体であることが好ましい。
(B−1)hnRNPに結合する抗体を被検試料と接触させる工程、
(B−2)メチル化hnRNP、又はメチル化hnRNPと前記hnRNPに結合する抗体との免疫複合体に、メチル化アミノ酸残基に結合する抗体を接触させる工程、及び
(B−3)メチル化hnRNPとメチル化アミノ酸残基に結合する抗体とからなる免疫複合体、又はメチル化hnRNPと前記hnRNPに結合する抗体とメチル化アミノ酸残基に結合する抗体とからなる免疫複合体を検出する工程
を含むことができる。
前期工程(B−1)及び工程(B−2)は、工程(B−1)を行い、次に工程(B−2)行うこともできるが、同時に行うことも可能である。例えば、ELISA法では、工程(B−1)及び工程(B−2)を同時に行うことにより、メチル化hnRNP、hnRNPに結合する抗体、及びメチル化アミノ酸残基に結合する抗体からなる免疫複合体が形成される。
多くの癌において、血液中にメチル化アミノ酸残基を含むhnRNP類が増加する理由は、完全に解明されているわけではないが、以下のように推論することができる。しかしながら、本発明は以下の説明によって限定されるものではない。癌組織中の癌細胞においては、PRMT1などのタンパク質アルギニンメチル化酵素、及びhnRNP類のリジン残基をメチル化するメチルトランスフェラーゼの発現が亢進しているものと考えられる。癌細胞においては、これらのメチル化酵素により、hnRNP類のアルギニン及び/又はリジンがメチル化され、更に、血液中にメチル化されたhnRNPが単独で、又はhnRNP複合体として、分泌されているものと考えられる。
(A)大腸癌患者12人の癌部の組織及び非癌部の組織を分析に用いた。凍結されたサンプルの一部を切除後、重量を測定し、組織重量1g当り4mLのサンプル処理バッファー(9.8M Urea,0.5%CHAPS,10mM DTT)を加えた。バッファー中で、鋏を用いて細かく切り刻んだ後、チップ式の超音波破砕機で組織懸濁液を調製した。組織懸濁液を10000rpmで5分遠心後、上清をサンプルとして使用した。得られた上清を、2xSDS−PAGE buffer(130mM Tris−HCl,pH6.8,4%SDS,14%glycerol,80mM DTT,0.01%BPB)で1:1に希釈し、37℃で30分インキュベートした。
(B)サンプルのタンパク質の分解をチェックするために、12%のSDSポリアクリルアミドゲルを用いて、10μgのタンパク量を電気泳動後、PVDF膜に転写し、抗βアクチン抗体(Abcam社)ab6276を反応させた。二次抗体としてはHRP標識抗マウスIgG抗体を反応させ、ECL Plus(GE HealthCare社)を用い、シグナルを検出した。図1に示される様に、いずれの検体もほぼ等しい量のβアクチンを発現していることが確認でき、保存されていた癌組織のタンパク質は劣化していないことがわかった。
(C)前記工程(A)で調整したサンプルを用いて、タンパク質メチル化レベルの測定を行った。抗βアクチン抗体(Abcam社)AC−15の代わりに、HRP標識した抗メチルリジン抗体MEK3D7(Proteomics 5,4653,2005;特許国際出願番号PCT/JP2004/017959)、又は抗ADMA抗体ADMA2−2H5(特願2005−378963)を用いたこと、及び二次抗体であるHRP標識抗マウスIgG抗体使用しなかったこと以外は、前記工程(B)の操作を繰り返した。HRP標識は、Pierce社のEZ−Link Plus Activated Peroxidaseを用いて行った。結果を図2(メチルリジン)及び図3(ADMA)に示した。抗メチルリジン抗体を用いてメチル化タンパク質を検出した場合、約45k、40k、25k、22k、15k程度の分子量を有するタンパク質を含む複数のタンパク質が、非癌部(N)よりも癌部(T)において濃く染まっており、これらのメチル化タンパク質の増加が認められた。一方、抗ADMA抗体を用いてメチル化タンパク質を検出した場合、70k、40K、22k程度の分子量を有するタンパク質が、特に顕著に検出されたが、基本的には全分子量領域のタンパク質が、非癌部よりも癌部において強く染色され、メチル化が亢進していた。
実施例1の工程(A)で得られたサンプルのタンパク質アルギニンメチル化酵素PRMT1の発現レベルを、ウェスタンブロッティングで検出した。抗βアクチン抗体(Abcam社)ab6276の代わりに、抗PRMT1抗体(Abcam ab7027)を用いた以外は、前記実施例1の工程(B)の操作を繰り返した。結果を図4に示す。前記実施例1で示された抗ADMA抗体を使用したウェスタンブロッティングにおける、全体的なタンパク質の染色の濃淡とほぼ一致して、PRMT1の発現量が変動していることが分かった。このことは、図3において見られた全体的なタンパク質アルギニンメチル化の亢進が、PRMT1分子の発現亢進により担われている可能性を示唆している。
タンパク質アルギニンメチル化酵素は、これまで8種類が同定されクローニングされている。これら全てのPRMTについて、正常細胞及び癌細胞における発現レベルの比較をRT−PCR法を用いて実施した。
ヒト培養癌細胞株として、大腸癌細胞株HT−29(ATCCより入手)、RKO(ATCCより入手)、肺腺癌細胞ABC−1(JCRBより入手)、LC−MS(JCRBより入手)、肺扁平上皮癌細胞H520(ATCCより入手)、EBC−1(東北大学加齢研より入手)、乳癌細胞MCF−7(東北大学加齢研より入手)、T47D(大日本製薬より入手)、肝癌細胞株HepG2(大日本製薬より入手)、Huh−7(JCRBより入手)、神経芽細胞種細胞IMR32(大日本製薬より入手)、及び横紋筋肉種細胞A673(大日本製薬より入手)の12株を用いた。HepG2及びHuh−7は、DMEM培地を用い、それ以外の細胞株は、10%FBSを添加したRPMI−1640培地を用いて培養した。正常ヒト肝細胞は、Tissue Transformation Technologies(NJ,USA)で製造され、BD Biosciences(MA,USA)から供給されているものを、株式会社ケー・エー・シー(栗東市、滋賀県)より購入して用いた。本研究で用いた正常ヒト肝細胞は、PCR分析についてはSerial No.HH−134及びHH−157の細胞を用い、Western blot解析においては、これらに加えHH−116、HH184、及びHH−189の細胞を使用した。肝細胞からのtotal RNAの抽出は、QIAGEN社のRNeasy mini kitを用いて行った。
各PRMTアイソザイムのmRNAを検出するためのプライマーは、web上で公開されているPrimer3 server(http://frodo.wi.mit.edu/cgi−bin/primer3/primer3_www.cgi)を用いて設計した。各アイソザイムのcDNA配列は、Swiss protに登録されている配列情報を用いた。Product sizeを300−400に設定、Mispriming Libraryをhumanに設定した上で、他はdefaultのままで検索を行った。Swiss prot上で複数情報間の不一致が報告されている時は、その領域を含まないcDNA配列を検索に用いた。上記方法により設計したプライマー配列及び予想されるPCR product sizeは表1に示す通りである。
まず、total RNA 200ngを全量10μLのDEPC処理水に溶解し、random 6−mer溶液(50μM)を2μL加え、65℃で10分インキュベートした後、氷冷した。そこに、x5 1st strand buffer 1μL、0.1M DTT 1μL、20mMdNTP Mix 0.5μL、SuperScript III RTase(Invitrogen)1μL、及びDEPC処理水1.5μLを加え、43℃で30分反応させた後、95℃で5分処理し酵素を失活させた(RT product)。
PCR反応は、RT product1μLに、x10LA PCR buffer 5μL、20mMdNTP Mix 5μL、25mM MgCl25μL、Forward及びReverse primer(50μM)を各0.4μL、TaKaRa Ex Taq 0.25μL、D.W.33μLを加え、94℃−5min加熱した。その後、94℃−30sec、60℃−30sec、72℃−2minのサイクルを30cycles繰り返し、72℃−7minの温度サイクル条件でPCRを実施した。反応産物は、臭化エチジウム入りの2%アガロースゲルで泳動し、紫外光照射により可視化した。
結果を図5に示した。以下、PRMTアイソザイムごとに結果の概略をまとめる。
(PRMT1)ヒト正常肝細胞HH−157で特に発現が低く、次いでHH−134で低いが、それ以外の癌細胞株では高発現である。
(PRMT2)ヒト正常肝細胞HH−157では、今回の分析条件ではバンドは認められない。HH−134ではごくわずかに検出される。癌細胞株では基本的には発現しているが、一部の細胞(RKO、ABC−1、HepG2、HT−29、LC−MS)でやや低い発現となっている。癌の種類としては、大腸癌及び肺腺癌で低めである。
(PRMT3)これも基本的にPRMT−1と同じパターンを示した。但し、大腸癌及び肺腺癌でやや低値である。
(PRMT4)PRMT3と同じ傾向であるが、HH−134においてもほとんどバンドは検出されない。
(PRMT5)これもPRMT1と似たパターンであるが、RKO及びLC−MSで低値である。
(PRMT6)乳癌細胞の二つ、神経芽細胞種IMR32、及び骨格筋肉腫A673以外は非常に低値である。
(PRMT7)PRMT5とほぼ同じパターンで発現している。すなわち、正常組織及び細胞で非常に低く、それ以外はHT−29及びABC−1で低値である。
(PRMT8)予想されるproduct sizeの位置に、全くバンドは見出されなかった。このプライマー以外にも2通りのプライマーを設計して検討したが(data not shown)、やはり全く発現は検出されなかった。
大腸癌組織でメチル化されているタンパク質の探索のために、大腸癌細胞RKOのタンパク質の解析を行った。
(A)50mMTris−HCl、pH8、120mMNaCl、0.5%Nonidet P−40に、RocheのComplete mini EDTA freeを加えた緩衝液を用いて、大腸癌細胞RKOのlysateを調製した。得られた細胞lysateを、タンパク質濃度1.1mg/mLに調整し、各種抗hnRNP抗体を用いて免疫沈降した。免疫沈降に用いた抗体は、抗hnRNP A0(SantaCruz社、sc−16509、ヤギポリクローナル抗体)、抗hnRNP A1(Abcam社、ab5832、マウスモノクローナル抗体)、抗hnRNP A2/B1(Abcam社、ab6102、マウスモノクローナル抗体)、抗hnRNP C1+C2(Abcam社、ab10294、マウスモノクローナル抗体)、抗hnRNP F/H(Abcam社、ab10689、マウスモノクローナル抗体)、抗hnRNP G(SantaCruz社、sc−14581、ヤギポリクローナル抗体)、抗hnRNP K(SantaCruz社、sc−28380、マウスモノクローナル抗体)、抗hnRNP M(SantaCruz社、sc−20002、マウスモノクローナル抗体)、及び抗hnRNP Q(Abcam社、ab10687、マウスモノクローナル抗体)である。更に、ADMA化が知られているhnRNP以外の二種のタンパク質に対する抗体、抗PABP(SantaCruz社、sc−32318、マウスモノクローナル抗体)、及び抗Sam68(SantaCruz社、sc−1238、マウスモノクローナル抗体)を用いた。cell lysate500μLに、抗体1μgを添加し、4℃で一晩ローテートした後に、Protein A sepharose FFを20μL添加し、更に4℃で4時間ローテートした。50mM Tris−HCl、pH8、120mM NaCl、0.5%Nonidet P−40で洗浄後、2x SDS PAGE用サンプルバッファーを加え、5分間ボイルしてサンプルを調製した。
(B)サンプルとして免疫沈降によって得られたサンプルを用いたこと、及び抗βアクチン抗体(Abcam社)ab6276の代わりに、前記各種抗hnRNP抗体を用いたこと以外は、前記実施例1の工程(B)の操作を繰り返した。但し、一次抗体としてヤギで作製されたものを用いた場合は、HRP標識された抗ヤギIgG抗体を二次抗体として用いた。結果を図6−8に示した。抗hnRNP A1、抗hnRNP C1/C2、抗hnRNP F/H、抗hnRNP K、抗hnRNP M、抗hnRNP Q、抗PABP、及び抗Sam68を用いた場合に、特に、多くのタンパク質が免疫沈降された。
実施例4の工程(A)で得られたサンプルを、抗メチルリジン抗体及び抗ADMA抗体で検出した。抗hnRNP抗体の代わりに、抗メチルリジン抗体又は抗ADMA抗体を用いたこと以外は、実施例4の工程(B)を繰り返した。結果を図9に示した。抗ADMA抗体による検出において、hnRNP A1による免疫沈降物中からはほぼhnRNP A1の分子量に相当する位置にバンドが検出された。また、PABP、Sam68に対する抗体での免疫沈降物においても、基本的には、それぞれPABP、及びSam68の分子量に相当する位置にメインのバンドが見られた。それに対して、hnRNP C1/C2、hnRNP F/H、hnRNP K、hnRNP Mに対する抗体で免疫沈降したサンプルにおいては、それぞれ用いた抗体に対応する分子の位置だけでなく、広い分子量領域に亘って種々のバンドが検出されることが分かった。この結果は、これらの抗体が種々のhnRNPを含む分子複合体を免疫沈降する能力があることを示している。
一方、抗MeK抗体による検出において、基本的は抗ADMA抗体で検出した際と類似の染色パターンを示したが、抗ADMA抗体では染まらなかったバンドも染色されることが分かった。ここで染色されているタンパク質の多くはhnRNP群のタンパク質である可能性が高いので、この結果は、hnRNPの中にはアルギニンメチル化だけでなく、リジンメチル化も生じている可能性を強く示唆する。
これまで、hnRNP複合体の検出は、細胞を放射ラベルした後に免疫沈降物をオートラジオグラフィーで検出する手法が主に取られており、今回の様な感度で非RIの条件で複合体を一括して検出できたのは、初めてのことである。
実施例5の検討で、いくつかの抗hnRNP抗体による免疫沈降物には、免疫沈降に用いた抗体が反応する以外のhnRNPタンパク質も含まれていることが示唆された。そのことを確かめるために、実施例4の工程(A)で得られた抗hnRNP A1、抗hnRNPC1/C2、抗hnRNPF/H、及び抗hnRNPK抗体で免疫沈降したサンプルを、これら4種の抗体を用いて検出した。抗hnRNP抗体の代わりに、抗hnRNP A1、抗hnRNPC1/C2、抗hnRNPF/H、及び抗hnRNPK抗体を用いたこと以外は、実施例4の工程(B)を繰り返した。結果を図10に示した。抗hnRNP A1抗体で免疫沈降したサンプルはhnRNP A1抗体でのみ検出されたことから、この抗体はhnRNP複合体を免疫沈降する能力は低いものと思われる。この結果は、実施例5での染色パターンと一致する。一方、抗hnRNP C1/C2、抗hnRNP F/H、及び抗hnRNP K抗体で免疫沈降したサンプルを検出すると、それぞれの抗体のみではなく、抗hnRNP A1、抗hnRNP C1/C2、抗hnRNP F/H、及び抗hnRNP Kの全ての抗体で検出された。従って、少なくともこれら4種の抗体で検出されるhnRNPは複合体を形成しており、その複合体は抗hnRNP C1/C2、抗hnRNP F/H、及び抗hnRNP K抗体により免疫沈降されることが分かった。
メチル化hnRNP及び/又はメチル化hnRNP複合体を検出するために、サンドイッチELISA系を構築した。市販の抗hnRNP抗体(抗hnRNP A1、抗hnRNP A2/B1、抗hnRNP M、抗hnRNP Q、及び抗hnRNP K)を1μg/mLの濃度でPBSで希釈し、ELISA用のBlack plateの各wellに室温、3時間で固相化した。1% BSAでブロッキングした後に、メチル化hnRNPが含まれているHepG2細胞lysateを0.5% BSA、0.1% Triton X−100入りのPBSで種々の希釈倍率で添加し、室温で1時間インキュベートした。洗浄液(0.1% Triton X−100入りPBS)で洗浄後、標識抗体希釈液(0.5% BSA、0.1% Triton X−100入りのPBS)で1μg/mLに調製したADMA2−2H5−HRP又はMEK3D7−HRPを添加して、室温で1時間インキュベートした。その後、SuperSignal ELISA Pico Chemiluminescent Substrate(Pierce)を用いてシグナルを検出した。その結果、抗hnRNP Q抗体及び抗hnRNP K抗体を用いて固相化した条件で高い反応性が見られ、特に抗hnRNP K抗体を用いた時が最も強い反応性を示した。
大腸癌患者、肺癌患者、乳癌患者の血清中のメチル化hnRNPを、ELISA法によって分析した。抗hnRNP K抗体(SantaCruz sc−28380)を、PBSで1 μg/mLの濃度に希釈し、室温、3時間で、ELISA用black plateに固相化した。PBSで洗浄後、1%BSA、2%Sucrose in PBSを用いて、室温で2.5時間ブロッキングした。0.1% Triton X−100入りPBSで洗浄後、3%BSA、0.1%Tx100、Mouse IgG(100μg/mL)/PBSで3倍に希釈した検体を添加した。室温で1時間反応後、洗浄液で洗浄し、標識抗体希釈液で、1μg/mLの濃度に希釈したHRP標識抗メチルリジン抗体(MEK3D7−HRP)又はHRP標識抗ADMA抗体−HRP(ADMA2−2H5−HRP)を添加し、室温で1時間反応させた。(以下、それぞれ、MEK−hnRNP法及びADMA−hnRNP法と称することがある)洗浄液で洗浄後、SuperSignal ELISA Pico Chemiluminescent Substrateを用いて検出した。メチル化hnRNPを含む標準物質としては、HepG2細胞lsyateを3% BSA、0.1%Tx100、Mouse IgG(100μg/mL)/PBSで希釈したものを用いた。HepG2細胞lysateを3倍希釈した時の測定値で全ての測定値を除し、更に100倍した暫定的な相対値を用いて結果を評価した。
健常人血清18名、大腸癌患者血清23名、肺癌血清15名、乳癌血清50名分について、測定値をグラフにプロットした結果を図11に示した。健常人における値の平均値+2SDを仮のカットオフ値として設定して、陽性率を判定すると、ADMA−hnRNP法で検出した場合に、健常人、大腸癌、肺癌、及び乳癌のそれぞれにおいて、6、48、80、50%、MEK−hnRNP法で検出した場合に、それぞれ、6、57、80、78%の陽性率の値を示し、高感度で癌患者血清を検出できることが分かった。特にMEK−hnRNP法はダイナミックレンジが広かった。
以上の結果は、血清中のメチル化hnRNPを測定することにより高感度で腫瘍患者を識別できることを示すものである。
Claims (16)
- メチル化アミノ酸残基に結合する抗体を用いることを特徴とする、被検試料中のメチル化ヘテロジニアス・ヌクレア・リボヌクレオプロテインの免疫学的分析方法。
- 前記メチル化アミノ酸残基が、メチル化アルギニン又はメチルリジンである請求項1に記載の免疫学的分析方法。
- 前記メチル化ヘテロジニアス・ヌクレア・リボヌクレオプロテインが、ヘテロジニアス・ヌクレア・リボヌクレオプロテイン2つ以上を含む複合体を形成している、請求項1又は2に記載の免疫学的分析方法。
- ヘテロジニアス・ヌクレア・リボヌクレオプロテインに結合する抗体を、更に用いる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の免疫学的分析方法。
- 前記ヘテロジニアス・ヌクレア・リボヌクレオプロテインに結合する抗体が、Cold−inducible RNA−binding protein、hnRNP C−like 1、hnRNP H、hnRNP H‘、hnRNP H3、hnRNP C1/C2、hnRNP D0、hnRNP F、hnRNP G、hnRNP K、hnRNP L、hnRNP M、hnRNP Q、hnRNP R、hnRNP U、hnRNP E1、hnRNP E2、hnRNP I、RNA−binding protein Raly、hnRNP A0、hnRNP A1、hnRNP A2/B1、hnRNP A3、hnRNP A/B、及びhnRNP JKTBPからなる群から選択されるヘテロジニアス・ヌクレア・リボヌクレオプロテインに結合する少なくとも1つの抗体である、請求項4に記載の免疫学的分析方法。
- 前記ヘテロジニアス・ヌクレア・リボヌクレオプロテインに結合する抗体が、hnRNP Kに結合する抗体である、請求項4に記載の免疫学的分析方法。
- 前記被検試料が、血液由来の試料である、請求項1〜6のいずれか一項に記載免疫学的分析方法。
- メチルリジンを含むヘテロジニアス・ヌクレア・リボヌクレオプロテイン。
- 前記ヘテロジニアス・ヌクレア・リボヌクレオプロテインが、hnRNP A1、hnRNP C1/C2、hnRNP F、hnRNP H、又はhnRNP Kである、請求項8に記載のヘテロジニアス・ヌクレア・リボヌクレオプロテイン。
- 被検試料中のメチル化ヘテロジニアス・ヌクレア・リボヌクレオプロテインを免疫学的に分析することを特徴とする、癌を検出する方法。
- 請求項1〜7のいずれか一項に記載の免疫学的分析方法により、被検試料中のメチル化ヘテロジニアス・ヌクレア・リボヌクレオプロテインを免疫学的に分析することを特徴とする、癌を検出する方法。
- 前記癌が、膀胱癌、乳癌、結腸癌、腎臓癌、肝臓癌、肺癌、小細胞肺癌、食道癌、胆嚢癌、卵巣癌、膵臓癌、胃癌、子宮頸部癌、甲状腺癌、前立腺癌、扁平上皮癌、皮膚癌、骨癌、リンパ腫、白血病、又は脳腫瘍である、請求項10又は11に記載の癌を検出する方法。
- ヘテロジニアス・ヌクレア・リボヌクレオプロテインに結合する抗体と、メチルリジンに結合する抗体を含む、癌の診断試薬。
- ヘテロジニアス・ヌクレア・リボヌクレオプロテインに結合する抗体と、アシンメトリックジメチルアルギニンに結合する抗体を含む、癌の診断試薬。
- ヘテロジニアス・ヌクレア・リボヌクレオプロテインに結合する抗体と、メチルリジンに結合する抗体を含む、癌の診断キット。
- ヘテロジニアス・ヌクレア・リボヌクレオプロテインに結合する抗体と、アシンメトリックジメチルアルギニンに結合する抗体を含む、癌の診断キット。
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