JP2008162918A - ホタテガイ外套膜のコラーゲン回収方法およびそのコラーゲンの用途 - Google Patents
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Abstract
【課題】未利用水産資源であるホタテガイ外套膜から、生体材料等に有用なコラーゲンを低コストかつ高効率で回収する方法を提供する。
【解決手段】未加熱のホタテガイ外套膜をアスペルギルス属に属する菌由来の酸性プロテアーゼで処理することにより外套膜中のコラーゲンを可溶化して抽出する工程を含むことを特徴とするホタテガイ外套膜コラーゲンの回収方法。アスペルギルス属に属する菌としてはアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)が好ましく、処理温度が20℃以下が好ましい。また、抽出工程の前には未加熱のホタテガイ外套膜を酸処理またはアルカリ処理することができる。
【選択図】なし
【解決手段】未加熱のホタテガイ外套膜をアスペルギルス属に属する菌由来の酸性プロテアーゼで処理することにより外套膜中のコラーゲンを可溶化して抽出する工程を含むことを特徴とするホタテガイ外套膜コラーゲンの回収方法。アスペルギルス属に属する菌としてはアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)が好ましく、処理温度が20℃以下が好ましい。また、抽出工程の前には未加熱のホタテガイ外套膜を酸処理またはアルカリ処理することができる。
【選択図】なし
Description
本発明はホタテガイ外套膜に存在するコラーゲン材料を効率よく回収する方法、およびその外套膜コラーゲンを利用した各種医療用生体材料、化粧品材料および食品材料に関する。
ホタテガイは殻を除いた軟体部のうち、主に貝柱が食品として利用されているが、その他の外套膜や生殖巣などは、その一部が食品として利用されているにすぎず、大部分は廃棄されている。特に、ホタテガイ全質量の7〜9%を占める外套膜は良質なタンパク源であり、従来から遊離アミノ酸や核酸等の旨味成分やコラーゲンなどの有用物質が含まれていることが知られており、その有効利用が期待されている。ホタテガイ外套膜は、通常、水分85〜88%、粗脂肪約0.5%、灰分0.5〜1%、粗タンパク質10〜12%を含有している。また、この外套膜にはコラーゲンが1.3〜2.0%含まれている。
ホタテガイなどの二枚貝類の外套膜コラーゲンの特性については、これまでに幾つかの知見が報告されている。例えば、生化学的な研究では、不溶性の外套膜コラーゲンはペプシンによる限定消化法により可溶化処理を行っているが、この処理による外套膜コラーゲンの可溶化率は、魚皮などの他の海産生物由来の原料に比べて極めて低く、10〜30%程度であり、特にホタテガイについては約26%と報告されている。また、プロリンやヒドロキシプロリンなどの構成アミノ酸が、牛・豚由来コラーゲンに比べて、かなり少ないことなどが知られている。(非特許文献1;水田ら, Food Chem., 87, 83-88、非特許文献2;申ら, 日本食品科学工学会誌, 52(9), 398-405)
海産生物由来コラーゲンの製造において、不溶性のコラーゲンを可溶化するために、原料としてのサケ皮やサメ皮を酢酸や塩酸などの酸溶液に浸漬溶解する方法(特許文献1:特開2005-53847号公報、特許文献2:特開2003-92997号公報)や、原料としての鯛のウロコをペプシンにて可溶化する方法(特許文献3;特開2003-327599号公報)などが知られている。
しかしながら、ホタテガイ外套膜コラーゲンは酢酸や塩酸などの酸溶液に浸漬してもほとんど可溶化せず、ペプシンを用いた方法でも上記のように約26%しか回収できない。可溶化率向上を目的にぺプシンの濃度を高くしても、コラーゲンのテロペプチドが切断されるだけでなく、コラーゲンそのものの分解量が増大し始めるため、コラーゲン回収率が逆に低下してしまう。
このように、ホタテガイ外套膜コラーゲンを効率よく回収する手法は未だ確立されていない。
このように、ホタテガイ外套膜コラーゲンを効率よく回収する手法は未だ確立されていない。
水田ら, Food Chem., 87, 83-88
申ら, 日本食品科学工学会誌, 52(9), 398-405
特開2005−53847号公報
特開2003−92997号公報
特開2003−327599号公報
本発明の目的は、生鮮および生鮮凍結ホタテガイ外套膜からコラーゲンを回収するにあたり、収率が高く、安価に生産できる方法を提供すること、およびその方法により得られた外套膜コラーゲンの用途を提供することにある。
ホタテガイ外套膜コラーゲンは20℃程度で熱変性を起こすため、可溶化処理についても低温での処理が必要となるが、ペプシン等の酵素においては20℃以下における酵素の相対活性は極めて低くなるため、酵素による高効率の可溶化は期待できない。実際、ペプシンの可溶化率は前記の通り26%である。
しかし、驚くべきことに、酵素としてアスペルギルス属に属する菌由来の酸性プロテアーゼを使用することにより、その中でも特にアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)由来の酸性プロテアーゼを使用することにより、ホタテガイ外套膜中のコラーゲンが極めて効率よく可溶化することを見出し、ホタテガイ外套膜コラーゲンを安定的に低コストに製造できることを確認し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、下記に示すホタテガイ外套膜コラーゲンの回収方法およびその方法により得られたコラーゲンの用途に関する。
しかし、驚くべきことに、酵素としてアスペルギルス属に属する菌由来の酸性プロテアーゼを使用することにより、その中でも特にアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)由来の酸性プロテアーゼを使用することにより、ホタテガイ外套膜中のコラーゲンが極めて効率よく可溶化することを見出し、ホタテガイ外套膜コラーゲンを安定的に低コストに製造できることを確認し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、下記に示すホタテガイ外套膜コラーゲンの回収方法およびその方法により得られたコラーゲンの用途に関する。
[1]未加熱のホタテガイ外套膜をアスペルギルス属に属する菌由来の酸性プロテアーゼで処理することにより外套膜中のコラーゲンを可溶化して抽出する工程を含むことを特徴とするホタテガイ外套膜コラーゲンの回収方法。
[2]アスペルギルス属に属する菌が、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)である前記1に記載のホタテガイ外套膜コラーゲンの回収方法。
[3]前記抽出工程の前に、未加熱のホタテガイ外套膜を酸処理またはアルカリ処理する工程を含む前記1に記載のホタテガイ外套膜コラーゲンの回収方法。
[4]処理温度が20℃以下である前記1に記載のホタテガイ外套膜コラーゲンの回収方法。
[5]前記1〜4のいずれかに記載の方法により回収したコラーゲン。
[6]前記5に記載のコラーゲンを含む医療用生体材料、化粧品または食品。
[2]アスペルギルス属に属する菌が、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)である前記1に記載のホタテガイ外套膜コラーゲンの回収方法。
[3]前記抽出工程の前に、未加熱のホタテガイ外套膜を酸処理またはアルカリ処理する工程を含む前記1に記載のホタテガイ外套膜コラーゲンの回収方法。
[4]処理温度が20℃以下である前記1に記載のホタテガイ外套膜コラーゲンの回収方法。
[5]前記1〜4のいずれかに記載の方法により回収したコラーゲン。
[6]前記5に記載のコラーゲンを含む医療用生体材料、化粧品または食品。
本発明によれば、未利用水産資源であるホタテガイ外套膜からコラーゲンを低コストかつ高効率で回収することができる。また、得られた可溶性コラーゲンは、各種医療用生体材料、化粧品材料および食品材料等として有用である。
原料とするホタテガイ外套膜は、非加熱のものである。ここで、非加熱とは加熱処理をしていないことを言い、具体的にはホタテガイ外套膜内に存在するコラーゲンが熱変性を起こすような熱履歴を有さない状態を言う。具体的には、生きているホタテガイから採取したばかりの生鮮品、冷蔵保存したもの、あるいは冷凍保存したものを解凍したもの等が挙げられる。冷凍保存したホタテガイ外套膜を使用する場合は、少なくともコラーゲンの抽出工程時において解凍されていればよい。好ましくは、冷蔵保存したもの、あるいは冷凍保存したものを解凍したものである。
ホタテガイ外套膜内に存在するコラーゲンは20℃強の温度で熱変性を起こしてゼラチン化する。したがって、コラーゲンを抽出し製造するための以降のすべての処理は、いずれも熱変性が生じない条件で実施することが好ましい。具体的には20℃以下の温度が好ましく、さらに好ましくは15℃以下の温度、特に好ましくは10℃以下の温度である。
採取したホタテガイ外套膜にはかなりの夾雑物、例えば砂や黒膜が混入しているため、水洗等により予めそれらを取り除いておくことが好ましい。ホタテガイ外套膜の洗浄は、その状態を見て時間、回数を適宜調節すればよい。
洗浄したホタテガイ外套膜は、酸性プロテアーゼにより処理されるが、その前に酸処理またはアルカリ処理を行うことが好ましい。酸処理およびアルカリ処理は、ホタテガイ外套膜に含まれる油脂成分や不要なタンパク質成分の除去を目的とするもので、酸性プロテアーゼによる処理の前に行うことで、コラーゲンの精製効率を高めることができる。アルカリ処理は酸処理に比べて油脂成分や不要なタンパク質成分を除去する作用が高いので、アルカリ処理を行なった場合には純度のより高いコラーゲンを容易に得ることができる。一方、酸処理ではアルカリ処理ほどの高除去作用はないものの、アルカリ処理のようにその後の水洗処理などを充分に行なう必要がないなどの操作性に優れ、また、酸処理は細胞を膨潤させてコラーゲンの抽出効率を向上させる作用もある。酸処理またはアルカリ処理は、得られるコラーゲンの用途などを考慮し、適宜使い分け、あるいは併用することができる。
ホタテガイ外套膜の酸処理工程またはアルカリ処理工程としては、例えば、外套膜を酸性水溶液またはアルカリ水溶液に浸漬することによって行われる。
酸性水溶液としては、有機酸、鉱酸のいずれの水溶液でもよく、例えば酢酸、塩酸等が例示され、好ましくは酢酸水溶液である。酸性水溶液のpHは好ましくはl.0〜5.0、さらに好ましくは2.0〜4.0に調整する。酢酸水溶液を用いる場合は、例えば0.1〜1mol/l、好ましくは0.5mol/l程度の濃度とする。酸性水溶液の量は、洗浄したホタテガイ外套膜が浸漬し得る量であれば特に制限はないが、例えば外套膜質量の3倍質量以上が好ましく、さらに好ましくは5〜10倍質量である。
アルカリ水溶液としては、特に制限はないが、石灰、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ剤の水溶液が挙げられる。アルカリ水溶液のpHは、外套膜を浸漬した状態で10〜13に維持することが好ましい。アルカリ水溶液の濃度は、用いるアルカリ剤の種類によって異なり、上記のpHを維持できる濃度であればよい。例えば、アルカリ剤として水酸化ナトリウムを用いる場合の濃度は、好ましくは0.001〜0.5N、さらに好ましくは0.01〜0.1Nである。使用するアルカリ水溶液の量は、洗浄したホタテガイ外套膜が浸漬し得る量であれば特に制限はないが、例えば外套膜質量の3倍質量以上が好ましく、さらに好ましくは5〜10倍質量である。
浸漬時間は特に制限はないが、処理温度が5℃の場合1〜2日が適当である。
これらの処理による油脂成分や不要なタンパク質成分の除去を効率的に行うために、浸漬している酸性水溶液またはアルカリ水溶液を適宜交換したり、これら水溶液を撹拌することができる。
上記処理したホタテガイ外套膜は傾斜法、ろ過、遠心分離などにより、固液分離した後、アルカリ処理の場合は水洗いし、次の工程である酸性プロテアーゼによる処理に付される。
酸性水溶液としては、有機酸、鉱酸のいずれの水溶液でもよく、例えば酢酸、塩酸等が例示され、好ましくは酢酸水溶液である。酸性水溶液のpHは好ましくはl.0〜5.0、さらに好ましくは2.0〜4.0に調整する。酢酸水溶液を用いる場合は、例えば0.1〜1mol/l、好ましくは0.5mol/l程度の濃度とする。酸性水溶液の量は、洗浄したホタテガイ外套膜が浸漬し得る量であれば特に制限はないが、例えば外套膜質量の3倍質量以上が好ましく、さらに好ましくは5〜10倍質量である。
アルカリ水溶液としては、特に制限はないが、石灰、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ剤の水溶液が挙げられる。アルカリ水溶液のpHは、外套膜を浸漬した状態で10〜13に維持することが好ましい。アルカリ水溶液の濃度は、用いるアルカリ剤の種類によって異なり、上記のpHを維持できる濃度であればよい。例えば、アルカリ剤として水酸化ナトリウムを用いる場合の濃度は、好ましくは0.001〜0.5N、さらに好ましくは0.01〜0.1Nである。使用するアルカリ水溶液の量は、洗浄したホタテガイ外套膜が浸漬し得る量であれば特に制限はないが、例えば外套膜質量の3倍質量以上が好ましく、さらに好ましくは5〜10倍質量である。
浸漬時間は特に制限はないが、処理温度が5℃の場合1〜2日が適当である。
これらの処理による油脂成分や不要なタンパク質成分の除去を効率的に行うために、浸漬している酸性水溶液またはアルカリ水溶液を適宜交換したり、これら水溶液を撹拌することができる。
上記処理したホタテガイ外套膜は傾斜法、ろ過、遠心分離などにより、固液分離した後、アルカリ処理の場合は水洗いし、次の工程である酸性プロテアーゼによる処理に付される。
酸性プロテアーゼによる処理は、ホタテガイ外套膜に存在するコラーゲンを可溶化させるものであり、それにより外套膜中のコラーゲンを可溶化コラーゲンとして抽出する。
酸性プロテアーゼとは酸性域に活性の至適pHを有するたんぱく質分解酵素のことであり、本発明ではホタテガイ外套膜に存在するコラーゲンを可溶化させる目的でアスペルギルス属に属する菌由来の酸性プロテアーゼ、好ましくはアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)由来の酸性プロテアーゼを用いる。アスペルギルス・ニガー由来の酸性プロテアーゼとしては、例えば、工業用として市販されているオリエンターゼ20A(エイチビィアイ(株))、モルシンF(キッコーマン(株))、スミチームAP(新日本化学工業(株))、プロテアーゼYP−SS(ヤクルト(株))、デナプシン2P(ナガセ生化学工業(株))などが挙げられ、特に好ましくはオリエンターゼ20A(エイチビィアイ(株))が挙げられる。
酸性プロテアーゼとは酸性域に活性の至適pHを有するたんぱく質分解酵素のことであり、本発明ではホタテガイ外套膜に存在するコラーゲンを可溶化させる目的でアスペルギルス属に属する菌由来の酸性プロテアーゼ、好ましくはアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)由来の酸性プロテアーゼを用いる。アスペルギルス・ニガー由来の酸性プロテアーゼとしては、例えば、工業用として市販されているオリエンターゼ20A(エイチビィアイ(株))、モルシンF(キッコーマン(株))、スミチームAP(新日本化学工業(株))、プロテアーゼYP−SS(ヤクルト(株))、デナプシン2P(ナガセ生化学工業(株))などが挙げられ、特に好ましくはオリエンターゼ20A(エイチビィアイ(株))が挙げられる。
酸性プロテアーゼによる処理は、ホタテガイ外套膜を酸性プロテアーゼと反応させることにより行なう。具体的には、例えば、ホタテガイ外套膜を酸性水溶液中に浸漬し、そこに酸性プロテアーゼを添加して振とうすることにより、コラーゲンを可溶化させて酸性水溶液中に抽出する。酸性水溶液は、有機酸、鉱酸のいずれの水溶液でもよく、例えば酢酸、塩酸等が例示される。酸性水溶液のpHは好ましくはl.0〜5.0、さらに好ましくは2.0〜4.0に調整する。酸性水溶液の量は特に限定されないが、抽出効率を考慮すればホタテガイ外套膜が充分に浸漬する程度の量、具体的にはホタテガイ外套膜の質量の2倍以上、好ましくは8倍以上の質量である。質量比が2倍未満では、ホタテガイ外套膜が酸溶液に充分に浸らず、その後の撹拌抽出が効率よく進行しない。
酸性プロテアーゼの使用量は、ホタテガイ外套膜の乾燥質量100gに対し、好ましくは0.1〜50g、さらに好ましくは1.2〜10gである。
処理時間は、酸性プロテアーゼをホタテガイ外套膜に接触させた後、6〜72時間が好ましく、さらに好ましくは12〜24時間である。処理温度は前記の通り、ホタテガイ外套膜のコラーゲンが変性しない温度域が好ましく、具体的には20℃以下の温度が好ましく、さらに好ましくは15℃以下の温度である。
処理時間は、酸性プロテアーゼをホタテガイ外套膜に接触させた後、6〜72時間が好ましく、さらに好ましくは12〜24時間である。処理温度は前記の通り、ホタテガイ外套膜のコラーゲンが変性しない温度域が好ましく、具体的には20℃以下の温度が好ましく、さらに好ましくは15℃以下の温度である。
酸性プロテアーゼによる可溶化処理後、酸性水溶液に溶解した可溶化コラーゲンと残渣とを分離する。分離は、通常の物理的分離手段により行うことができるが、好ましくは遠心分離法により行なう。
残渣を分離した後、コラーゲン溶液中のコラーゲンを線維化・析出させ、コラーゲン線維として回収する。コラーゲンの線維化は、豚皮や牛皮コラーゲンなどで行われている方法と同様の方法で行なうことができる。具体的には、残渣を分離したコラーゲン溶液に塩化ナトリウムを加えて塩濃度を上昇させることにより線維化するか、あるいは水酸化ナトリウム等のアルカリを加えてpHを中性付近に調整することにより線維化してもよい。線維化したコラーゲンは、例えば遠心分離法により回収し、ついで再び適量の酸性水溶液に溶解させ、リン酸緩衝液(pH7.5)あるいはイオン交換水のような中性液で透析してコラーゲンを回収する。透析後、凍結乾燥することで高純度の可溶性外套膜コラーゲンを得ることができる。
残渣を分離した後、コラーゲン溶液中のコラーゲンを線維化・析出させ、コラーゲン線維として回収する。コラーゲンの線維化は、豚皮や牛皮コラーゲンなどで行われている方法と同様の方法で行なうことができる。具体的には、残渣を分離したコラーゲン溶液に塩化ナトリウムを加えて塩濃度を上昇させることにより線維化するか、あるいは水酸化ナトリウム等のアルカリを加えてpHを中性付近に調整することにより線維化してもよい。線維化したコラーゲンは、例えば遠心分離法により回収し、ついで再び適量の酸性水溶液に溶解させ、リン酸緩衝液(pH7.5)あるいはイオン交換水のような中性液で透析してコラーゲンを回収する。透析後、凍結乾燥することで高純度の可溶性外套膜コラーゲンを得ることができる。
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、以下の例は、本発明を説明するためのものであり、本発明を限定するものではない。
実施例1:
冷凍の生鮮外套膜(l0g)を自然解凍し、約5℃の水で水洗し、夾雑物を除いた後、その10倍質量の0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液に入れ、10℃以下の温度条件下で24時間振とうし、上澄み液を遠心分離により除去した。水酸化ナトリウムによりアルカリ処理した外套膜は、洗浄液が中性になるまで繰り返し水洗し、洗浄外套膜を得た。
この洗浄した外套膜に、その10倍質量の0.5mol/Lの酢酸水溶液を加え、酸性プロテアーゼとしてオリエンターゼ(商標登録)20A(エイチビィアイ(株))を外套膜の乾燥質量に対して1/20の質量を添加後、5℃の温度条件下で24時間撹拌抽出した。この溶液を10,000rpmで10分間遠心分離して可溶性外套膜コラーゲンを含む上澄み液と残渣とに分離した。
上澄み液は塩酸加水分解(110℃24時間)後、高速液体クロマトグラフィー(日立製作所製)を用いたニンヒドリン法によるアミノ酸分析からヒドロキシプロリン量を測定した。上澄み液の可溶性外套膜コラーゲン量は、公知の方法に従い、このヒドロキシプロリン量に係数10.23を乗じて算出した(水田ら, Food Chem., 79, 319-325)。また、洗浄外套膜のヒドロキシプロリン量から外套膜コラーゲン量を同様に求め、外套膜コラーゲン量に対する可溶性外套膜コラーゲン量の割合を可溶化率として示した。
その結果、酸性プロテアーゼ処理により可溶化した外套膜コラーゲンの可溶化率は71%であった。
また、この上澄み液に最終濃度が2mol/Lとなるように塩化ナトリウムを加えて線維化した。生成したコラーゲン線維の沈殿を、5℃の温度下で10,000rpmで、20分間遠心分離して回収した。得られた沈殿を0.5mol/L酢酸溶液に再溶解し、この溶液を透析膜に入れ0.02mol/Lリン酸緩衝液(pH7.5)で24時間、蒸留水で24時間の透析後、内容物を凍結乾燥し、可溶性外套膜コラーゲン113mgを得た。
得られたコラーゲンの純度は99.5%であった。ここで、コラーゲンの純度は、粗タンパク質量に対するコラーゲン量の割合を示した。なお、粗タンパク質量はアミノ酸分析から求めた構成アミノ酸の全窒素量に係数5.55(窒素−タンパク質換算係数、5訂日本食品標準成分表)を、コラーゲン量はヒドロキシプロリン量に係数10.23をそれぞれ乗じて算出した。
この可溶性外套膜コラーゲン線維化物をソジウムドデシルサルフェイト−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(以後SDS−PAGEという)およびアミノ酸分析にかけた。SDS−PAGEでは、α1鎖、α2鎖、β鎖などコラーゲン特有のバンドパターンを示した。アミノ酸分析では、その結果を表1に示すように、他の海産生物由来とは異なる特異的なアミノ酸組成を示すことが確認された。
冷凍の生鮮外套膜(l0g)を自然解凍し、約5℃の水で水洗し、夾雑物を除いた後、その10倍質量の0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液に入れ、10℃以下の温度条件下で24時間振とうし、上澄み液を遠心分離により除去した。水酸化ナトリウムによりアルカリ処理した外套膜は、洗浄液が中性になるまで繰り返し水洗し、洗浄外套膜を得た。
この洗浄した外套膜に、その10倍質量の0.5mol/Lの酢酸水溶液を加え、酸性プロテアーゼとしてオリエンターゼ(商標登録)20A(エイチビィアイ(株))を外套膜の乾燥質量に対して1/20の質量を添加後、5℃の温度条件下で24時間撹拌抽出した。この溶液を10,000rpmで10分間遠心分離して可溶性外套膜コラーゲンを含む上澄み液と残渣とに分離した。
上澄み液は塩酸加水分解(110℃24時間)後、高速液体クロマトグラフィー(日立製作所製)を用いたニンヒドリン法によるアミノ酸分析からヒドロキシプロリン量を測定した。上澄み液の可溶性外套膜コラーゲン量は、公知の方法に従い、このヒドロキシプロリン量に係数10.23を乗じて算出した(水田ら, Food Chem., 79, 319-325)。また、洗浄外套膜のヒドロキシプロリン量から外套膜コラーゲン量を同様に求め、外套膜コラーゲン量に対する可溶性外套膜コラーゲン量の割合を可溶化率として示した。
その結果、酸性プロテアーゼ処理により可溶化した外套膜コラーゲンの可溶化率は71%であった。
また、この上澄み液に最終濃度が2mol/Lとなるように塩化ナトリウムを加えて線維化した。生成したコラーゲン線維の沈殿を、5℃の温度下で10,000rpmで、20分間遠心分離して回収した。得られた沈殿を0.5mol/L酢酸溶液に再溶解し、この溶液を透析膜に入れ0.02mol/Lリン酸緩衝液(pH7.5)で24時間、蒸留水で24時間の透析後、内容物を凍結乾燥し、可溶性外套膜コラーゲン113mgを得た。
得られたコラーゲンの純度は99.5%であった。ここで、コラーゲンの純度は、粗タンパク質量に対するコラーゲン量の割合を示した。なお、粗タンパク質量はアミノ酸分析から求めた構成アミノ酸の全窒素量に係数5.55(窒素−タンパク質換算係数、5訂日本食品標準成分表)を、コラーゲン量はヒドロキシプロリン量に係数10.23をそれぞれ乗じて算出した。
この可溶性外套膜コラーゲン線維化物をソジウムドデシルサルフェイト−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(以後SDS−PAGEという)およびアミノ酸分析にかけた。SDS−PAGEでは、α1鎖、α2鎖、β鎖などコラーゲン特有のバンドパターンを示した。アミノ酸分析では、その結果を表1に示すように、他の海産生物由来とは異なる特異的なアミノ酸組成を示すことが確認された。
また、可溶性外套膜コラーゲン線維化物について、示差走査熱量計(DSC)により変性温度を測定した。得られたDSC曲線から、吸熱ピークのピークトップ温度を読み取った可溶性外套膜コラーゲンの変性温度は23.5℃であった。なお、示差走査熱量計による分析は、エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製のEXSTAR熱分析システムDSC6100超高感度型示差走査熱量計を用い、昇温速度:2℃/min、雰囲気:窒素50ml/minで行った。
比較例1:
酸性プロテアーゼとしてペプシンを使用した以外は、実施例1と同様に行った。可溶性外套膜コラーゲンの可溶化率は22%であり、凍結乾燥により得られた可溶性外套膜コラーゲン線維化物の収量は40mgであった。
酸性プロテアーゼとしてペプシンを使用した以外は、実施例1と同様に行った。可溶性外套膜コラーゲンの可溶化率は22%であり、凍結乾燥により得られた可溶性外套膜コラーゲン線維化物の収量は40mgであった。
比較例2:
酸性プロテアーゼとしてリゾプス・ニベウス(Rhizopus niveus)由来のニューラーゼF(天野エンザイム社製)を使用した以外は、実施例1と同様に行った。可溶性外套膜コラーゲンの可溶化率は8.0%であった。
酸性プロテアーゼとしてリゾプス・ニベウス(Rhizopus niveus)由来のニューラーゼF(天野エンザイム社製)を使用した以外は、実施例1と同様に行った。可溶性外套膜コラーゲンの可溶化率は8.0%であった。
比較例3:
酸性プロテアーゼとしてペニシリウム・デュポンティ(Pencillium duponti)由来のPD(キッコーマン社製)を使用した以外は、実施例1と同様に行った。可溶性外套膜コラーゲンの可溶化率は4.7%であった。
酸性プロテアーゼとしてペニシリウム・デュポンティ(Pencillium duponti)由来のPD(キッコーマン社製)を使用した以外は、実施例1と同様に行った。可溶性外套膜コラーゲンの可溶化率は4.7%であった。
比較例4:
酸性プロテアーゼとしてパパインを使用した以外は、実施例1と同様に行った。可溶性外套膜コラーゲンの可溶化率は1.3%であった。
酸性プロテアーゼとしてパパインを使用した以外は、実施例1と同様に行った。可溶性外套膜コラーゲンの可溶化率は1.3%であった。
実施例2:
水酸化ナトリウムによるアルカリ処理の代わりに酢酸水溶液による酸処理を行なった以外は、実施例1と同様に行なった。酸処理は、外套膜に、その10倍質量の0.5mol/Lの酢酸水溶液を加え、10℃以下の温度条件下で24時間振とうしながら洗浄し、上澄み液を分離除去することにより行なった。その結果、可溶性外套膜コラーゲンの可溶化率は77%、凍結乾燥により得られた可溶性外套膜コラーゲン線維化物の収量は144mg、コラーゲンの純度は85%であった。
水酸化ナトリウムによるアルカリ処理の代わりに酢酸水溶液による酸処理を行なった以外は、実施例1と同様に行なった。酸処理は、外套膜に、その10倍質量の0.5mol/Lの酢酸水溶液を加え、10℃以下の温度条件下で24時間振とうしながら洗浄し、上澄み液を分離除去することにより行なった。その結果、可溶性外套膜コラーゲンの可溶化率は77%、凍結乾燥により得られた可溶性外套膜コラーゲン線維化物の収量は144mg、コラーゲンの純度は85%であった。
実施例3:
実施例1と同様に、水酸化ナトリウムで洗浄した外套膜を用いて、酸性プロテアーゼの添加量と反応時間による外套膜コラーゲンの可溶化条件を検討した。
酸性プロテアーゼとしてオリエンターゼ20Aを用い、洗浄した外套膜の乾燥質量に対して、1/20量、1/40量、1/60量をそれぞれ添加し、10℃以下の温度条件下で24時間、48時間、72時間の撹拌抽出した。これらの溶液を10,000rpmで10分間遠心分離して可溶性外套膜コラーゲン溶液と残渣とに分離した。
可溶性外套膜コラーゲン量は実施例1と同様に、それぞれの可溶性外套膜コラーゲン溶液のヒドロキシプロリン量からコラーゲン量を算出して求めた。図1に、オリエンターゼ20Aの添加量と反応時間による外套膜コラーゲンの可溶率を示した。
図1から、オリエンターゼ20Aによる外套膜コラーゲンの可溶化率は、16.8%から91.8%であった。可溶化率は酵素濃度と酵素処理時間に影響され、例えば可溶化率70%以上とするには、酵素濃度1/20量では24時間、酵素濃度1/40量と1/60量では72時間が必要であった。酵素濃度1/20量で24時間処理、酵素濃度1/40量で72時間処理、および酵素濃度1/60量で72時間処理をした場合の外套膜コラーゲンの回収量は、外套膜(10g)当たり、それぞれ136mg、137mg、および128mgであった。
実施例1と同様に、水酸化ナトリウムで洗浄した外套膜を用いて、酸性プロテアーゼの添加量と反応時間による外套膜コラーゲンの可溶化条件を検討した。
酸性プロテアーゼとしてオリエンターゼ20Aを用い、洗浄した外套膜の乾燥質量に対して、1/20量、1/40量、1/60量をそれぞれ添加し、10℃以下の温度条件下で24時間、48時間、72時間の撹拌抽出した。これらの溶液を10,000rpmで10分間遠心分離して可溶性外套膜コラーゲン溶液と残渣とに分離した。
可溶性外套膜コラーゲン量は実施例1と同様に、それぞれの可溶性外套膜コラーゲン溶液のヒドロキシプロリン量からコラーゲン量を算出して求めた。図1に、オリエンターゼ20Aの添加量と反応時間による外套膜コラーゲンの可溶率を示した。
図1から、オリエンターゼ20Aによる外套膜コラーゲンの可溶化率は、16.8%から91.8%であった。可溶化率は酵素濃度と酵素処理時間に影響され、例えば可溶化率70%以上とするには、酵素濃度1/20量では24時間、酵素濃度1/40量と1/60量では72時間が必要であった。酵素濃度1/20量で24時間処理、酵素濃度1/40量で72時間処理、および酵素濃度1/60量で72時間処理をした場合の外套膜コラーゲンの回収量は、外套膜(10g)当たり、それぞれ136mg、137mg、および128mgであった。
得られたコラーゲンは、各種医療用生体材料(例えば、足場材料、縫合糸、止血剤、人工血管、接合剤、人工皮膚等)、化粧品材料および食品材料等に利用することができる。
Claims (6)
- 未加熱のホタテガイ外套膜をアスペルギルス属に属する菌由来の酸性プロテアーゼで処理することにより外套膜中のコラーゲンを可溶化して抽出する工程を含むことを特徴とするホタテガイ外套膜コラーゲンの回収方法。
- アスペルギルス属に属する菌が、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)である請求項1に記載のホタテガイ外套膜コラーゲンの回収方法。
- 前記抽出工程の前に、未加熱のホタテガイ外套膜を酸処理またはアルカリ処理する工程を含む請求項1に記載のホタテガイ外套膜コラーゲンの回収方法。
- 処理温度が20℃以下である請求項1に記載のホタテガイ外套膜コラーゲンの回収方法。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の方法により回収したコラーゲン。
- 請求項5に記載のコラーゲンを含む医療用生体材料、化粧品または食品。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2006352200A JP2008162918A (ja) | 2006-12-27 | 2006-12-27 | ホタテガイ外套膜のコラーゲン回収方法およびそのコラーゲンの用途 |
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Publications (1)
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ID=39692876
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JP (1) | JP2008162918A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2009035525A (ja) * | 2007-08-03 | 2009-02-19 | National Institute Of Advanced Industrial & Technology | メラニン生成阻害剤 |
WO2015022930A1 (ja) * | 2013-08-13 | 2015-02-19 | 国立大学法人北海道大学 | ホタテ貝外套膜のタンパク質分解物を有効成分とする脂質吸収促進剤及びこれを含む飲食品 |
-
2006
- 2006-12-27 JP JP2006352200A patent/JP2008162918A/ja active Pending
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WO2015022930A1 (ja) * | 2013-08-13 | 2015-02-19 | 国立大学法人北海道大学 | ホタテ貝外套膜のタンパク質分解物を有効成分とする脂質吸収促進剤及びこれを含む飲食品 |
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