以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
図1は、本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法により得られた半導体装置を略図的に示す正面断面図である。
図1に示す半導体装置1は、第2の半導体装置構成部材としての基板3の上面3aに、第1の半導体装置構成部材としての半導体チップ2が積層された構造を有する。基板3と、半導体チップ2とは、接着剤層6を介して接合されている。
上記基板3としては、特に限定されないが、ガラス基板、ガラスエポキシ基板、BT基板、シリコン基板、サファイヤ基板等が挙げられる。半導体装置1では、第2の半導体装置構成部材として基板3を用いているが、基板3に代えて半導体チップを用いてもよい。
半導体チップ2及び基板3は、矩形状の平面形状を有する。半導体チップ2及び基板3はほぼ同じ大きさとされている。半導体チップ2及び基板3は上述の形状及び大きさを有するが、第1、第2の半導体装置構成部材の形状及び大きさは、特に限定されるものではない。例えば、第1、第2の半導体装置構成部材は、正方形の平面形状を有していてもよく、第1、第2の半導体装置構成部材は異なる大きさであってもよい。
基板3の上面3aには、電気接続端子5が設けられている。他方、半導体チップ2の下面2aには、バンプ4が設けられている。バンプ4は、電気接続端子5に電気的に接続されている。
次に、図2(a)〜(e)を用いて、本発明の一実施形態に係る半導体装置1の製造方法を以下説明する。
図2(a)に示すように、先ず第1の半導体装置構成部材としての半導体ウェーハ11の上面11aに、バンプ4を形成し、バンプ4が上面11aに設けられた半導体ウェーハ11を用意する。半導体ウェーハ11は、後述のように、図2(a)に矢印Xを付して示す位置で切断され、個々の半導体チップに分割される。
上記バンプ4としては、特に限定されないが、例えば銅、ニッケル、金等を用いて電解メッキ又は無電解メッキにより形成されたバンプが挙げられる。また、バンプ4は、スタッドバンプ、ハンダバンプ等であってもよい。
本実施形態では、第1の半導体装置構成部材として半導体ウェーハ11を用いているが、半導体ウェーハ11に代えて、予めダイシングにより個々の半導体チップに分割された半導体チップを用いてもよい。すなわち、第1の半導体装置構成部材として、片面にバンプが設けられた半導体チップを用いてもよい。
次に、図2(b)に示すように、半導体ウェーハ11のバンプ4が設けられている側の上面11aに、バンプ4よりも柔らかい接着剤層6を形成する。
第1の半導体装置構成部材の上面に接着剤層を形成する方法としては、ラミネート法、スピンコート法等が挙げられる。
本実施形態では、接着剤層6は、スピンコート法により形成されている。接着剤層6の厚みは、バンプ4の高さよりも厚くされており、バンプ4は接着剤層6中に埋め込まれている。すなわち、接着剤層6の表面6aから、バンプ4は露出していない。
なお、接着剤層をラミネート法により形成した場合には、バンプが接着剤層の表面から露出しておらず、接着剤層は、第1の半導体装置構成部材の上面及びバンプの表面形状に追従した形状であって、バンプ形成部分において接着剤層が隆起した形状であってもよい。この場合には、接着剤層の厚みは、バンプの高さよりも必ずしも厚くされている必要はない。
上記接着剤層6は柔らかすぎると、厚みむらが生じ易くなり、硬すぎると、接着剤層6の表面6aからバンプ4を効果的に露出させることができない場合がある。よって、接着剤層6の周波数10Hz、設定歪み0.5%、昇温速度3℃/分の条件で剪断法により測定した動的粘弾性に基づく23℃における貯蔵弾性率は、1〜100MPaの範囲にあることが好ましい。もっとも、接着剤層6は、バンプ4よりも柔らかく構成されている必要がある。
上記接着剤層6の厚みとしては、10〜100μm程度である。接着剤層6の厚みは、バンプ4の高さ等を考慮して適宜設定され得る。
上記接着剤層6を構成する材料としては、エポキシ、アクリル、ポリイミド等の熱可塑型接着剤、熱硬化型接着剤が挙げられる。
上記熱可塑型接着剤の材料としては、ポリイミド等、熱により可塑化する材料であれば特に限定されない。
上記熱硬化型接着剤の材料としては、特に限定されないが、熱硬化性樹脂と熱硬化剤とを含有する熱硬化性組成物が好ましい。接着剤層を用いて製造される半導体装置の信頼性が高められるので、エポキシ樹脂と熱硬化剤とを含有する熱硬化性組成物がより好ましい。
上記エポキシ樹脂としては特に限定されないが、多環式炭化水素骨格を主鎖に有するエポキシ樹脂が好ましい。多環式炭化水素骨格を主鎖に有するエポキシ樹脂を用いると、硬化後の接着剤層では、剛直で分子の運動が阻害されるので、機械的強度や耐熱性に優れるとともに、耐湿性も高められる。
上記多環式炭化水素骨格を主鎖に有するエポキシ樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ジシクロペンタジエンジオキシド、ジシクロペンタジエン骨格を有するフェノールノボラックエポキシ樹脂等のジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂(以下、「ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂」と記す)、1−グリシジルナフタレン、2−グリシジルナフタレン、1,2−ジグリジジルナフタレン、1,5−ジグリシジルナフタレン、1,6−ジグリシジルナフタレン、1,7−ジグリシジルナフタレン、2,7−ジグリシジルナフタレン、トリグリシジルナフタレン、1,2,5,6−テトラグリシジルナフタレン等のナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂(以下、「ナフタレン型エポキシ樹脂」と記す)、テトラヒドロキシフェニルエタン型エポキシ樹脂、テトラキス(グリシジルオキシフェニル)エタン、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボネート等が挙げられる。なかでも、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂やナフタレン型エポキシ樹脂が好適に用いられる。
これらの多環式炭化水素骨格を主鎖に有するエポキシ樹脂は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。また、上記ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂及びナフタレン型エポキシ樹脂は、それぞれ単独で用いられても良いし、両者が併用されても良い。
上記多環式炭化水素骨格を主鎖に有するエポキシ樹脂は、特に限定されるものではないが、重量平均分子量の好ましい下限は500であり、好ましい上限は1000である。多環式炭化水素骨格を主鎖に有するエポキシ樹脂の重量平均分子量が500未満であると、硬化後の接着剤層の機械的強度、耐熱性、耐湿性等に劣ることがあり、重量平均分子量が1000を超えると、硬化後の接着剤層が剛直になりすぎて、脆くなることがある。
上記熱硬化剤としては特に限定はされないが、例えば、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸等の加熱硬化型酸無水物系硬化剤、フェノール系硬化剤、アミン系硬化剤、ジシアンジアミド等の潜在性硬化剤、カチオン系触媒型硬化剤等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂用硬化剤は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
上記熱硬化剤のなかでも、常温で液状の加熱硬化型硬化剤や、多官能であり、当量的に添加量が少量で良いジシアンジアミド等の潜在性硬化剤が好適に用いられる。このような硬化剤を用いることにより、硬化前には常温で柔軟であってハンドリング性が良好な接着剤層を構成することができる。
上記常温で液状の加熱硬化型硬化剤の代表的なものとしては、例えば、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルナジック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸等の酸無水物系硬化剤が挙げられる。なかでも、疎水化されていることから、メチルナジック酸無水物やトリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸が好適に用いられる。これらの酸無水物系硬化剤は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
上記熱硬化性組成物においては、硬化速度や硬化物の物性等を調整するために、上記熱硬化剤とともに、硬化促進剤を併用しても良い。
上記硬化促進剤としては、特に限定されないが、例えば、イミダゾール系硬化促進剤、3級アミン系硬化促進剤等が挙げられる。なかでも、硬化速度や硬化後の接着剤層の物性等の調整をするための反応系の制御をしやすいことから、イミダゾール系硬化促進剤が好適に用いられる。これらの硬化促進剤は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
上記イミダゾール系硬化促進剤としては、特に限定されないが、例えば、イミダゾールの1位をシアノエチル基で保護した1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾールや、イソシアヌル酸で塩基性を保護した商品名「2MAOK−PW」(四国化成工業社製)等が挙げられる。これらのイミダゾール系硬化促進剤は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
酸無水物系硬化剤と例えばイミダゾール系硬化促進剤等の硬化促進剤とを併用する場合は、酸無水物系硬化剤の添加量をエポキシ基に対して理論的に必要な当量以下とすることが好ましい。酸無水物系硬化剤の添加量が必要以上に過剰であると、硬化後の接着剤層から水分により塩素イオンが溶出しやすくなるおそれがある。例えば、硬化後の接着剤層から熱水で溶出成分を抽出した際に、抽出水のpHが4〜5程度まで低くなり、エポキシ樹脂から引き抜かれた塩素イオンが多量に溶出してしまうことがある。
また、アミン系硬化剤と例えばイミダゾール系硬化促進剤等の硬化促進剤とを併用する場合には、アミン系硬化剤の添加量をエポキシ基に対して理論的に必要な当量以下とすることが好ましい。アミン物系硬化剤の添加量が必要以上に過剰であると、硬化後の接着剤層から水分により塩素イオンが溶出しやすくなるおそれがある。例えば、硬化後の接着剤層から熱水で溶出成分を抽出した際に、抽出水のpHが高く塩基性となり、エポキシ樹脂から引き抜かれた塩素イオンが多量に溶出してしまうことがある。
また、上記熱硬化性組成物は、更に、エポキシ樹脂と反応する官能基を有する固形ポリマーを含有することが好ましい。エポキシ樹脂と反応する官能基を有する固形ポリマーを含有することにより、硬化後の接着剤層の熱信頼性が高められる。上記エポキシ基と反応する官能基を有する固形ポリマーとしては特に限定されないが、例えば、アミノ基、ウレタン基、イミド基、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基等を有する樹脂が挙げられる。なかでも、エポキシ基を有する高分子ポリマーが好ましい。エポキシ基を有する高分子ポリマーを用いると、硬化後の接着剤層の可撓性を高めることができる。
また、多環式炭化水素骨格を主鎖に有するエポキシ樹脂とエポキシ基を有する高分子ポリマーとを用いると、この硬化後の接着剤層では、上記多環式炭化水素骨格を主鎖に有するエポキシ樹脂に由来して機械的強度、耐熱性、及び耐湿性が高められるとともに、上記エポキシ基を有する高分子ポリマーに由来して可撓性も高められる。
上記エポキシ基を有する高分子ポリマーとしては、末端及び/又は側鎖(ペンダント位)にエポキシ基を有する高分子ポリマーであれば良く、特に限定されないが、例えば、エポキシ基含有アクリルゴム、エポキシ基含有ブタジエンゴム、ビスフェノール型高分子量エポキシ樹脂、エポキシ基含有フェノキシ樹脂、エポキシ基含有アクリル樹脂、エポキシ基含有ウレタン樹脂、エポキシ基含有ポリエステル樹脂等が挙げられる。なかでも、硬化後の接着剤層の機械的強度や耐熱性を高め得ることから、エポキシ基含有アクリル樹脂が好適に用いられる。これらのエポキシ基を有する高分子ポリマーは、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
上記熱硬化性接着剤、もしくは熱可塑接着剤を例えば基材フィルム上に、ホットメルト塗工、溶剤塗工等好適な塗工方法により塗工することで、接着剤層を構成することができる。
上記熱硬化型接着剤は、50℃、5分の熱処理条件による、熱硬化性樹脂の反応率が10%以下、かつ、その後の24時間後の反応率が20%以下であることが好ましい。反応率が高すぎると、貼り合わせ時にボイドが発生したり、接着強度が低下する等の不具合が発生する場合がある。
次に、図2(c)に示すように、接着剤層6の半導体ウェーハ11が接合されている面とは反対側の表面6aに、接着剤層6よりも硬く、かつバンプ4よりも柔らかいシート状の押圧部材12を積層する。
接着剤層6の表面6aにシート状の押圧部材12を積層する方法としては、ラミネート、プレス等が挙げられる。
シート状の押圧部材12を積層した後、図2(c)に矢印を付して示すように、シート状の押圧部材12の接着剤層6が接合されている側とは反対側の表面12aを押圧する。シート状の押圧部材12の表面12aを押圧することにより、接着剤層6の表面6aが押圧される。
接着剤層6はバンプ4よりも柔らかく、さらにシート状の押圧部材12は接着剤層6よりも硬く、かつバンプ4よりも柔らかいので、接着剤層6の表面6aが押圧されると、接着剤層6にバンプ4が押し込まれる。その結果、図2(d)に示すように、接着剤層6の表面6aからバンプ4の先端が露出する。
接着剤層6の表面6aを押圧する際には、接着剤層6の表面6aに対して略直行する方向に力を付与することが好ましい。略直行する方向に力を付与すると、押圧された接着剤層6の厚みばらつきを小さくすることができる。
シート状の押圧部材12は柔らかすぎると、接着剤層6の表面6aからバンプ4を効果的に露出させることができない場合があり、硬すぎると、バンプ4が損傷することがある。よって、シート状の押圧部材12の周波数10Hz、設定歪み0.5%、昇温速度3℃/分の条件で剪断法により測定した動的粘弾性に基づく23℃における貯蔵弾性率は、10MPa〜5GPaの範囲にあることが好ましい。もっとも、シート状の押圧部材12は、接着剤層6よりも硬く、かつバンプ4よりも柔らかく構成されている必要がある。
上記シート状の押圧部材12の厚みとしては、特に限定されないが、10μm〜10mm程度である。
上記シート状の押圧部材12を構成する材料としては、フッ素樹脂、ポリイミド、オレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)等が挙げられる。シート状の押圧部材12として、離型処理されたPETシート等を用いてもよい。
接着剤層6の表面6aからバンプ4を露出させた後、シート状の押圧部材12を接着剤層6から剥離する。シート状の押圧部材12を剥離することで、図2(e)に示すように、接着剤層6の表面6aからバンプ4が露出した半導体ウェーハ11を得ることができる。
シート状の押圧部材12を接着剤層6から容易に剥離し得るように、接着剤層6とシート状の押圧部材12との剥離力Aは、第1の半導体チップ構成部材と接着剤層6との剥離力Bよりも小さくされていることが好ましい。剥離力を調整するために、シート状の押圧部材は接着剤層6が接合される側の表面もしくは両側の表面に、熱、UV照射等により剥離力を低減可能な粘着層を有していてもよい。
バンプ4が露出した半導体ウェーハ11を得た後、半導体ウェーハ11をダイシングし、すなわち矢印Xを付して示す位置で切断し、個々の半導体チップに分割する。これにより、図3に示す、接着剤層6の表面6aからバンプ4が露出した第1の半導体装置構成部材としての半導体チップ2を得ることができる。
さらに、図3に示すように、電気接続端子5が上面3aに設けられた第2の半導体装置構成部材としての基板3を別途用意する。この基板3の電気接続端子5に、接着剤層6の表面6aから露出したバンプ4を対向させ、接続する。本実施形態では、フリップチップボンダーを用いて、フリップチップ実装により、バンプ4と電気接続端子5とを接続している。
さらに、バンプ4と電気接続端子5とを接続しつつ、接着剤層6を介して、第1、第2の半導体装置構成部材としての半導体チップ2と基板3とを接合することにより、半導体装置1を得ることができる。
次に、図4(a)〜(d)を用いて、本発明の他の実施形態に係る半導体装置の製造方法を以下説明する。
図4(a)に示すように、シート状の押圧部材20を用意する。シート状の押圧部材20は、基材22と、基材22の一方面に積層された粘着剤層21とを有する。粘着剤層21の硬さは、接着剤層6よりも硬く、かつバンプ4よりも柔らかくされている。
次に、図2(b)に示すバンプ4と接着剤層6とが上面11aに設けられた半導体ウェーハ11を用意する。そして、図4(b)に示すように、接着剤層6の表面6aに、シート状の押圧部材20を、粘着剤層21側から積層する。
シート状の押圧部材20を積層した後、図4(b)に矢印を付して示すように、基材22の粘着剤層21が接合されている側とは反対側の表面22aを押圧する。これにより、粘着剤層21の表面21aが押圧され、接着剤層6の表面6aが押圧される。
接着剤層6はバンプ4よりも柔らかく、さらに粘着剤層21は接着剤層6よりも硬く、かつバンプ4よりも柔らかいので、接着剤層6の表面6aが押圧されると、接着剤層6にバンプ4が押し込まれる。その結果、図4(d)に示すように、接着剤層6の表面6aからバンプ4の先端が露出する。
このように、基材22と、基材22の一方面に積層されており、接着剤層6よりも硬く、かつバンプ4よりも柔らかい粘着剤層21とを有するシート状の押圧部材20も好ましく用いることができる。この場合、基材22の表面22aを押圧すればよいので、粘着剤層21の表面21aを直接押圧しなくてもよいので、容易に押圧することができる。また、基材22として、粘着剤層21よりも硬い、例えばガラスなどを用いることによって、接着剤層6の表面6aに対して均等な力を容易に付与することができる。さらに、シート状の押圧部材20を用いることによって、接着剤層6の表面6aに対して略直交する方向に力を容易に付与することができ、押圧された接着剤層6の厚みばらつきを小さくすることができる。
ところで、シート状の押圧部材20では、粘着剤層21が刺激を与えるとガスを発生する気体発生剤を含有している。従って、図4(d)に示すように、粘着剤層21に刺激を与えると、気体発生剤からガスが発生し、粘着剤層21中に複数の独立気泡23が含有される。粘着剤層21中に複数の独立気泡23が含有されると、粘着剤層21の接着力は低下する。
すなわち、刺激を与える前の粘着剤層21の接着力が比較的高くされていても、気体発生剤からガスを発生させ、粘着剤層21中に独立気泡23を含有させることによって、粘着剤層21の接着力を低くすることができる。よって、粘着剤層21中に無数の独立気泡23を含有させた後には、接着剤層6と粘着剤層21との剥離力Aを、半導体ウェーハ11と接着剤層6との剥離力Bよりも小さくすることができる。従って、接着剤層6の表面6aからシート状の押圧部材20を容易に剥離することができる。
次に、接着剤層6の表面6aからシート状の押圧部材20を剥離する。シート状の押圧部材20を剥離することで、図2(e)に示す接着剤層6の表面6aからバンプ4が露出した半導体ウェーハ11を得ることができる。これを用いて、上記半導体装置1の製造方法と同様にして半導体装置を構成することができる。
上記粘着剤層21の周波数10Hz、設定歪み0.5%、昇温速度3℃/分の条件で剪断法により測定した動的粘弾性に基づく23℃における貯蔵弾性率は、10MPa〜5GPaの範囲にあることが好ましい。貯蔵弾性率が10MPa未満であると、粘着剤層21が厚い場合に、バンプ4の露出が十分でない場合があり、5GPaを超えると、バンプ4が損傷することがある。
上記粘着剤層21を構成する材料としては、例えば、アクリルポリマーが挙げられる。アクリルポリマーを構成するモノマーとしては特に限定されず、例えば、2−エチルヘキシルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート等が挙げられる。
上記粘着剤層21を構成する材料としては、特に、イソボロニルアクリレート(IBA)セグメントと、炭素数が1〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来するセグメントとを主成分とし、かつ、分子内にラジカル重合性の不飽和結合を有するアクリル共重合体、並びに、ラジカル重合性の多官能オリゴマー及び/又はラジカル重合性の多官能モノマーを含有する粘着剤からなるものが好適である。
上記粘着剤層21において、架橋剤の濃度を調整したり、気体発生剤等の低分子量物質の配合量を調整したりすることにより、上記粘着剤層21の貯蔵弾性率を上記範囲に調整することができる。また、粘着剤層21に光の照射や加熱等の刺激を与えることにより、全体が均一にかつ速やかに重合架橋して一体化するため、架橋硬化による貯蔵弾性率が著しく上昇し、粘着力が大きく低下するので、接着剤層6に貼り付けた粘着剤層21の剥離が容易となる。
上記炭素数が1〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来するセグメントとしては特に限定されないが、耐薬品性が高められるので、2−エチルヘキシルアクリレートセグメント及び/又はブチルアクリレートセグメントが好適である。
上記アクリル系共重合体は、例えば、イソボロニルアクリレートセグメントと、炭素数が1〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来するセグメントとを主成分とし、かつ、分子内に官能基を有するアクリル系ポリマー(以下、官能基含有アクリル系ポリマーともいう)を予め合成し、分子内に上記官能基と反応する官能基とラジカル重合性の不飽和結合とを有する化合物(以下、官能基含有不飽和化合物ともいう)と反応させることにより得ることができる。
上記官能基含有アクリル系ポリマーは、イソボロニルアクリレートと、炭素数が1〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキル酸エステルとを主モノマーとし、これと官能基含有モノマーと、更に必要に応じてこれらと共重合可能な他の改質用モノマーとを常法により共重合させることにより得られる。上記官能基含有アクリル系ポリマーの重量平均分子量は通常20万〜200万程度である。
上記官能基含有モノマーとしては特に限定されず、例えば、アクリル酸、メタクリル酸等のカルボキシル基含有モノマー;アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル等のヒドロキシル基含有モノマー;アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル等のエポキシ基含有モノマー;アクリル酸イソシアネートエチル、メタクリル酸イソシアネートエチル等のイソシアネート基含有モノマー;アクリル酸アミノエチル、メタクリル酸アミノエチル等のアミノ基含有モノマー等が挙げられる。
上記共重合可能な他の改質用モノマーとしては特に限定されず、例えば、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン等の一般の(メタ)アクリル系ポリマーに用いられている各種モノマーが挙げられる。
上記官能基含有アクリル系ポリマーに反応させる官能基含有不飽和化合物としては、例えば、上記官能基含有アクリル系ポリマーの官能基に応じて上述した官能基含有モノマーと同様のものを使用できる。例えば、上記官能基含有アクリル系ポリマーの官能基がカルボキシル基の場合は、エポキシ基含有モノマーやイソシアネート基含有モノマーが用いられ、上記官能基含有アクリル系ポリマーの官能基がヒドロキシル基の場合は、イソシアネート基含有モノマーが用いられ、上記官能基含有アクリル系ポリマーの官能基がエポキシ基の場合は、カルボキシル基含有モノマーやアクリルアミド等のアミド基含有モノマーが用いられ、上記官能基含有アクリル系ポリマーの官能基がアミノ基の場合は、エポキシ基含有モノマーが用いられる。
上記アクリル系共重合体における各セグメントの含有量としては特に限定されないが、イソボロニルアクリレートセグメントと、炭素数が1〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸のアルキルエステルに由来するセグメントとの合計に占めるイソボロニルアクリレートセグメントの比の好ましい下限が10重量%である。10重量%未満であると、充分なブリードアウト低減効果が得られないことがある。より好ましい下限は20重量%である。イソボロニルアクリレートの比の上限については特に限定されないが、得られるアクリル系共重合体のガラス転移温度が常温(23℃)以下となるようにすることが好ましい。アクリル系共重合体のガラス転移温度が常温(23℃)を超えると、粘着剤層21は常温下において粘着性に劣ることがある。
例えば、2−エチルヘキシルアクリレートセグメントとの組み合わせにおいては、イソボロニルアクリレートの比の上限は70重量%であり、ブチルアクリレートセグメントとの組み合わせにおいては、イソボロニルアクリレートの比の上限は70重量%である。
上記ラジカル重合性の多官能オリゴマー又はラジカル重合性の多官能モノマーの1分子あたりの官能基数は5以上であることが好ましい。5未満であると、粘着剤層21の硬化(架橋)が不充分となり接着力の低下が充分でないことがある。
また、上記ラジカル重合性の多官能オリゴマー又はラジカル重合性の多官能モノマーとしては、分子量が1万以下であるものが好ましく、より好ましくは加熱又は光の照射による粘着剤層の三次元網状化が効率よくなされるように、その分子量が5000以下であり、かつ分子内のラジカル重合性の不飽和結合の数が2〜20個のものである。
このようなラジカル重合性の多官能オリゴマー又はラジカル重合性の多官能モノマーとしては特に限定されず、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。その他、1,4−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、市販のオリゴマー状のエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらのラジカル重合性の多官能オリゴマー又はラジカル重合性の多官能モノマーは、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記粘着剤層21は、必要に応じて、光重合開始剤又は熱重合開始剤を含有することが好ましい。光重合開始剤を含有する場合には光硬化性を付与することができ、熱重合開始剤を含有する場合には熱硬化性を付与することができる。
上記光重合開始剤としては、例えば、250〜800nmの波長の光を照射することにより活性化されるものが挙げられる。このような光重合開始剤としては、例えば、メトキシアセトフェノン等のアセトフェノン誘導体化合物;ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル系化合物;ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジエチルケタール等のケタール誘導体化合物;フォスフィンオキシド誘導体化合物;ビス(η5−シクロペンタジエニル)チタノセン誘導体化合物、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、クロロチオキサントン、トデシルチオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシメチルフェニルプロパン等の光ラジカル重合開始剤が挙げられる。これらの光重合開始剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記熱重合開始剤としては、熱により分解し、重合硬化を開始する活性ラジカルを発生するものであれば特に限定されず、例えば、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド等が挙げられる。なかでも、熱分解温度が高いことから、クメンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド等が好適である。
これらの熱重合開始剤のうち市販されているものとしては特に限定されないが、例えば、パーブチルD、パーブチルH、パーブチルP、パーメンタH(以上いずれも日本油脂社製)等が好適である。これらの熱重合開始剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記粘着剤層21を構成する材料としては、その他にポリエステル、ゴム等のエラストマー、シリコーン樹脂、ナイロン、ポリイミド等が挙げられる。
シート状の押圧部材20では、粘着剤層21が気体発生剤を含有している。シート状の押圧部材20と接着剤層6との剥離が容易になるため、シート状の押圧部材20は気体発生剤を含有していることが好ましい。
上記粘着剤層21は気体発生剤を含有しているで、硬い硬化物中で気体発生剤から気体を発生させると、発生した気体の大半は外部に放出され、接着面の少なくとも一部を剥離して接着性を低下させることができる。また、上記アクリル系共重合体がイソボロニルアクリレートセグメントを有することにより、粘着剤層21からの気体発生剤のブリードアウトを効果的に制御し、粘着剤の保存安定性を向上することができる。
上記気体発生剤としては、刺激を与えるとガスを発生するものが用いられ、具体的には、揮発性物質、UV照射によりガスを発生する化合物、加熱により発泡する粒子等を用いることができる。
上記刺激としては、例えば、光、熱、超音波、衝撃等による刺激が挙げられる。なかでも光又は熱による刺激が好ましい。上記光としては、例えば、紫外線や可視光線等が挙げられる。上記刺激として光による刺激を用いる場合には、気体発生剤を含有する粘着剤層21及び基材22は、光が透過又は通過できるものであることが好ましい。
上記揮発性物質を用いると、例えば加熱などにより揮発性物質をガス化させ、粘着剤層21中に無数の独立気泡を含有させることができる。これにより、押圧部材の接着力を低下させることができる。
上記揮発性物質としては、低沸点の揮発性物質と塩化ビニリデン、アクリル等のポリマーとからなるマイクロカプセルを用いることができ、例えば、マツモトマイクロスフェアーFシリーズ(松本油脂社製)などが挙げられる。
また、UV照射によりガスを発生する化合物を用いると、粘着剤層21にUVを照射するとガスが発生し、粘着剤層21と接着剤層6との間、もしくは、基材22と粘着剤層21との間にガスを含む層が形成される。これにより、シート状の押圧部材20を接着剤層6から剥離することが容易となる。
上記気体発生剤としては特に限定されないが、例えば、アゾ化合物及び/又はアジド化合物も好ましく用いることができる。
上記アゾ化合物としては特に限定されず、例えば、2,2’−アゾビス−(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾイリン−2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾイリン−2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾイリン−2−イル)プロパン]ジサルフェイトジハイドロレート、2,2’−アゾビス[2−(3,4,5,6−テトラハイドロピリミジン−2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾイリン−2−イル]プロパン}ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾイリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミダイン)ハイドロクロライド、2,2’−アゾビス(2−アミノプロパン)ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシアシル)−2−メチル−プロピオンアミダイン]、2,2’−アゾビス{2−[N−(2−カルボキシエチル)アミダイン]プロパン}、2,2’−アゾビス(2−メチルプロオンアミドオキシム)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート、4,4’−アゾビス(4−シアンカルボニックアシッド)、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタノイックアシッド)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)等が挙げられる。
必要に応じて高温処理が行われことがあることから、これらのなかでも熱分解温度の高い2,2’−アゾビス−(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)が好適である。
これらのアゾ化合物は、光、熱等による刺激により窒素ガスを発生する。
上記アジド化合物としては特に限定されず、例えば、3−アジドメチル−3−メチルオキセタン、テレフタルアジド、p−tert−ブチルベンズアジド;3−アジドメチル−3−メチルオキセタンを開環重合することにより得られるグリシジルアジドポリマーなどのアジド基を有するポリマー等が挙げられる。
これらのアジド化合物は、光、熱、超音波及び衝撃等の刺激を与えることによりにより窒素ガスを発生する。
これらの気体発生剤のうち、上記アジド化合物は衝撃を与えることによっても容易に分解して窒素ガスを放出することから、取り扱いが困難であるという問題がある。更に、上記アジド化合物は、いったん分解が始まると連鎖反応を起こして爆発的に窒素ガスを放出しその制御ができないことから、爆発的に発生した窒素ガスによって接着剤層6が損傷することがあるという問題もある。このような問題から上記アジド化合物の使用量は限定されるが、限定された使用量では充分な効果が得られないことがある。
一方、上記アゾ化合物は、アジド化合物とは異なり衝撃によっては気体を発生しないことから取り扱いが極めて容易である。また、連鎖反応を起こして爆発的に気体を発生することもないため接着剤層6を損傷することもなく、光の照射を中断すれば気体の発生も中断できることから、用途に合わせた接着性の制御が可能であるという利点もある。したがって、上記気体発生剤としては、アゾ化合物を用いることがより好ましい。
上記気体発生剤は、上記粘着剤層21中に溶解していることが好ましい。上記気体発生剤が粘着剤層21中に溶解していることにより、刺激を与えたときに気体発生剤から発生した気体が効率よく粘着剤層21の外に放出される。また、上記気体発生剤が粘着剤層21中に粒子として存在すると、気体を発生させる刺激として光を照射したときに粒子の界面で光が散乱して気体発生効率が低くなってしまったり、粘着剤層21の表面平滑性が悪くなったりすることがある。なお、上記気体発生剤が粘着剤層21中に溶解していることは、電子顕微鏡により粘着剤層21を観察したときに気体発生剤の粒子が見あたらないことにより確認することができる。
上記気体発生剤を粘着剤層21中に溶解させるためには、上記粘着剤層21を構成する他の材料に溶解する気体発生剤を選択すればよい。なお、粘着剤層21中に溶解しない気体発生剤を用いる場合には、例えば、分散機を用いたり、分散剤を併用したりすることにより粘着剤層21中に気体発生剤をできるかぎり微分散させることが好ましい。粘着剤層21中に気体発生剤を微分散させるためには、気体発生剤は、微小な粒子であることが好ましく、更に、この微小な粒子は、例えば、分散機や混練装置等を用いて必要に応じてより細かい微粒子とし、用いることが好ましい。即ち、電子顕微鏡により上記粘着剤層21を観察したときに気体発生剤を確認することができない状態となるように、粘着剤層21中に粒子を分散させることがより好ましい。
上記気体発生剤の含有量としては、気体発生剤の種類により適宜選択すればよいが、例えば、気体発生剤としてアゾ化合物を用いる場合には、粘着剤層21を構成する全材料の合計100重量部に対して好ましい下限は5重量部、好ましい上限は50重量部である。5重量部未満であると、充分に剥離力を低下させることができないことがあり、50重量部を超えると、気体発生剤の溶解性が悪化し、ブリード等の不具合が発生することがある。より好ましい下限は15重量部、より好ましい上限は30重量部である。
上記粘着剤層21が、上記気体発生剤としてアジド化合物又はアゾ化合物等の光による刺激により気体を発生する気体発生剤を含有している場合には、更に光増感剤を含有することが好ましい。
上記光増感剤は、上記気体発生剤への光による刺激を増幅する効果を有することから、より少ない光の照射により気体を放出させることができる。また、より広い波長領域の光により気体を放出させることができるので、例えば基材22等がポリイミド等のアジド化合物又はアゾ化合物から気体を発生させる波長の光を透過しないものであっても、基材22越しに光を照射して気体を発生させることができ基材22の選択の幅が広がる。上記光増感剤としては特に限定されないが、例えば、チオキサントン増感剤等が好適である。なお、チオキサントン増感剤は、光重合開始剤としても用いることができる。
上記粘着剤層21には、以上の成分のほか、粘着剤としての凝集力の調節を図る目的で、所望によりイソシアネート化合物、メラミン化合物、エポキシ化合物等の一般の粘着剤に配合される各種の多官能性化合物を適宜配合してもよい。また、可塑剤、樹脂、界面活性剤、ワックス、微粒子充填剤等の公知の添加剤を加えることもできる。
上記基材22を構成する材料としては特に限定されず、例えば、ポリアクリル、ポリオレフィン、ポリカーボネート、塩化ビニル、ABS、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン、ポリウレタン、ポリイミド等の透明な樹脂からなるシート、網目状の構造を有するシート、孔が開けられたシート等が挙げられる。
バンプ4を接着剤層6の表面6aから容易に露出させることができるので、上記基材22は粘着剤層21よりも硬い材料を用いて構成されていることが好ましく、基材22を構成する材料として、ガラスも好ましく用いることができる。
シート状の押圧部材20では、上記基材22の厚さとしては特に限定されないが、好ましい上限は100μmである。100μmを超えると、シート状の押圧部材20を剥離する際に大きな力を要する。
次に、図5、6に、上述したシート状の押圧部材20の変形例を部分切欠正面断面図で示す。
図4に示すシート状の押圧部材20は、基材22と、基材22の一方面に積層されており、接着剤層6よりも硬く、かつバンプ4よりも柔らかい粘着剤層21とを有するが、図5に示すシート状の押圧部材41は、基材44と、基材44の両面にそれぞれ積層された粘着剤層42,43とを有する。シート状の押圧部材41では、粘着剤層42,43が接着剤層6よりも硬く、かつバンプ4よりも柔らかくされている。シート状の押圧部材の41では、接着剤層6に積層される側の粘着剤層42のみが接着剤層6よりも硬く、かつバンプ4よりも柔らかく構成されていてもよい。
このように、基材44と、基材44の両面に積層されており、接着剤層6よりも硬く、かつバンプよりも柔らかい粘着剤層42,43とを有するシート状の押圧部材41も好ましく用いることができる。
他方、図6に示すシート状の押圧部材51は、基材44と、基材44の両面にそれぞれ積層された粘着剤層42,43と、接着剤層6に積層される側の粘着剤層42とは反対側の粘着剤層43の表面43aに積層された基材52とを有する。すなわち、粘着剤層43の基材44が接合されている側とは反対側の表面43aに基材52が積層されている。
このように、接着剤層6に積層される粘着剤層42とは反対側の粘着剤層43の表面43aには、基材52が積層されていることが好ましい。
上記粘着剤層42,43は、粘着剤層21と同様の材料を用いて構成することができる。粘着剤層42と粘着剤層43とは同じ材料を用いて構成されていてもよく、異なる材料を用いて構成されていてもよい。
シート状の押圧部材41,51を接着剤層6から容易に剥離し得るように、粘着剤層42,43は気体発生剤を含有していることが好ましい。また、接着剤層6に積層される側の粘着剤層42のみが気体発生剤を含有していてもよく、また粘着剤層42と粘着剤層43とで異なる気体発生剤を含有していてもよい。
上記基材44、52は、基材21と同様の材料を用いて構成することができる。バンプ4を接着剤層6の表面6aから容易に露出させることができるので、基材52は、粘着剤層42,43よりも硬い材料を用いて構成されていることが好ましく、ガラスを用いて構成されていることがより好ましい。
また、バンプ4の露出性が高められるので、基材44の厚みの好ましい下限は50μmである。
シート状の押圧部材41、51の接着剤層6に積層される側の粘着剤層42は、周波数10Hz、設定歪み0.5%、昇温速度3℃/分の条件で剪断法により測定した動的粘弾性に基づく23℃における貯蔵弾性率が、10MPa〜5GPaの範囲にあることが好ましい。貯蔵弾性率が10MPa未満であると、粘着剤層42が厚い場合に、バンプ4の露出が十分でない場合があり、5GPaを超えると、バンプ4が損傷することがある。
シート状の押圧部材41、51を製造する方法としては特に限定されず、例えば、基材44の表面に、粘着剤層42,43を構成する材料をドクターナイフやスピンコーター等を用いて塗工する等の従来公知の方法を用いることができる。
図7を用いて、本発明の別の実施形態に係る半導体装置の製造方法を以下説明する。
図7では、押圧部材として、ロール31を用いている。ロール31の硬さは、接着剤層6よりも硬く、かつバンプ4よりも柔らかくされている。なお、ロール31の表面31aが、接着剤層6よりも硬く、かつバンプ4よりも柔らかくされていればよく、ロール31全体がこの硬さとされている必要はない。
図2(b)に示すバンプ4と接着剤層6とが上面11aに設けられた半導体ウェーハ11を用意した後、図7に示すように、ロール31を用いて、接着剤層6の表面6aを押圧する。これにより、接着剤層6の表面6aからバンプ4を露出させる。しかる後、上記半導体装置1の製造方法と同様にして半導体装置を構成することができる。
本発明を更に詳しく説明するため以下に実施例を挙げるが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
(実施例1)
(1)接着剤層の作製
G−2050M(日本油脂社製、エポキシ含有アクリルポリマー、重量平均分子量:Mw20万)15重量部と、EXA−7200HH(大日本インキ社製、ジシクロペンタジエン型エポキシ)80重量部と、HP−4032D(大日本インキ社製、ナフタレン型エポキシ)5重量部と、YH−309(ジャパンエポキシレジン社製、酸無水物系硬化剤)35重量部と、2MAOK−PW(四国化成社製、イミダゾール)8重量部と、S320(チッソ社製、アミノシラン)2重量部とを配合し、該配合物を溶剤としてのメチルエチルケトン(MEK)に固形分60%となるように添加し、攪拌して塗液を得た。
これを離型フィルムに塗布し、110℃、3分間オーブン中で加熱乾燥し、離型フィルム上にフィルム状の接着剤層L1(厚み30μm)を形成した。
DVA−200(アイティー計測制御社製)を用いて、周波数10Hz、設定歪み0.5%、昇温速度3℃/分の条件で剪断法にて動的粘弾性に基づく23℃における接着剤層L1の貯蔵弾性率を測定した結果、70MPaであった。
(2)粘着剤の作製
イソボロニルアクリレート40重量部と、2−エチルヘキシルアクリレート60重量部と、アクリル酸1重量部と、2−ヒドロキシエチルアクリレート5重量部と、光重合開始剤としてのイルガキュア651の50%酢酸エチル溶液0.2重量部と、ラウリルメルカプタン0.01重量部とを酢酸エチルに溶解させ、紫外線を照射して重合を行い、重量平均分子量30万のアクリル共重合体を含む酢酸エチル溶液を得た。
得られたアクリル共重合体を含む酢酸エチル溶液の樹脂固形分100重量部に対して、2−イソシアナトエチルメタクリレート35重量部を加えて反応させ、更に、反応後の酢酸エチル溶液の樹脂固形分100重量部に対して、ウレタンアクリレート(10官能、新中村化学工業社製、NKオリゴU324A)30重量部、ポリイソシアネート0.25重量部、光重合開始剤(イルガキュア651)0.1重量部を混合し、粘着剤A1の酢酸エチル溶液を調製した。
粘着剤A1の酢酸エチル溶液の樹脂固形分100重量部に対して、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)10重量部、2,4−ジエチルチオキサントン3.6重量部、イルガキュア4重量部及びポリイソシアネート0.5重量部を混合して、気体発生剤を含有する粘着剤B1の酢酸エチル溶液を調製した。
(3)シート状の押圧部材の作製
粘着剤A1の酢酸エチル溶液を、厚さ50μmの透明なPETフィルム1の片面に乾燥後の膜の厚さが約20μmとなるようにドクターナイフで塗工し、110℃で5分間加熱して塗工溶液を乾燥させ、粘着剤A1層を形成した。次いで、粘着剤A1層の表面に両面コロナ処理が施されたPETフィルム2を貼り付けた。その後、40℃で3日間静置し、養生を行った。
粘着剤B1の酢酸エチル溶液を、表面に離型処理が施されたPETフィルム3の上に、乾燥皮膜の厚さが約20μmとなるようにドクターナイフで塗工し、110℃で5分間加熱して溶剤を揮発させ、塗工溶液を乾燥させ、粘着剤B1層を形成した。次いで、粘着剤B1層の表面に離型処理が施されたPETフィルム4を貼り付けた。その後、40℃で3日間静置し、養生を行った。
次いで、PETフィルム2の粘着剤A1層が設けられている側とは反対側の表面に、PETフィルム4を剥離して露出された粘着剤B1層を貼り合わせた。これにより、PETフィルム1/粘着剤A1層/PETフィルム2/粘着剤B1層/PETフィルム3の構成からなるシート状の押圧部材を得た。シート状の押圧部材の粘着剤A1層及び粘着剤B1層はいずれも透明であった。粘着剤B1層の周波数10Hz、設定歪み0.5%、昇温速度3℃/分の条件で剪断法により測定した動的粘弾性に基づく23℃における貯蔵弾性率は、0.06MPaであり、粘着剤B1層は、接着剤層L1よりも硬かった。
(4)半導体ウェーハの作製
8inchベアウェハ上に、SiO膜(500nm)、Ti膜(70nm)、Al膜(1μm)をこの順で積層した。i線レジストを用いたフォトリソ、およびウェットエッチングにより、チップ周辺部に100μm角のAlパッドを155μmピッチで形成した。チップサイズは10mmとし、チップ外周から0.5mmの位置にパッド1を配置した。
その上に、SiN膜(500nm)を積層し、Alパッド上のSiN膜を、80μm角で開口したウェハを作製した。Alパッドは、1対ずつ電気的に導通させた。
このAlパッド上に無電解メッキにより、Niを20μm厚、さらに金を5μm厚でメッキし、25μm高さバンプを形成した。なお、バンプは、接着剤層L1及び粘着剤B1層よりも硬かった。
(5)チップの作製
半導体ウェーハのバンプが設けられている側の表面に、DAM−812M(タカトリ社製)を用いて、50℃にて、ラミネート速度30mm/秒にて、離型フィルムを剥離しつつ、フィルム状の接着剤層L1を貼り合わせ、半導体ウェーハの表面に接着剤層L1を形成した。
光学顕微鏡にて観察した結果、バンプ表面は、接着剤層L1で覆われていた。
その後、シート状の押圧部材のPETフィルム3を剥離し、粘着剤B1層と接着剤層L1とが接するように、WSM−100(タカトリ社製)を用いて、シート状の押圧部材を接着剤層L1に貼り合わせた。さらに、PETフィルム1を剥離し、粘着剤A1層に1mm厚のガラス基板を貼り合わせた。しかる後、DFG8560(ディスコ社製)を用い、裏面研削を行い、半導体ウェーハを80μm厚に研削した。
しかる後、接着剤層L1の表面に対して略直交する方向に、ガラス基板の表面を押圧することにより、接着剤層L1の表面を押圧し、接着剤層L1にバンプを押し込んだ。
次に、WSM−200(タカトリ社製)を用い、UV照射を強度:40mW/cm2、120秒 行うことにより、粘着剤B1層中において気体発生剤から気体を発生させ、接着剤層L1と粘着剤B1層との剥離力を低下させた。その後、接着剤層L1からシート状の押圧部材を剥離した。
その後、DFD651(ディスコ社製)にてダイシングを行い、チップを個片化した。
光学顕微鏡にて、ウェーハ全面を観察した結果、全てのバンプの先端が、接着剤層L1の表面から、1〜2μm露出していた。
(6)半導体装置の作製
ダイボンダー(NECマシナリー社製、BESTEM−D02)を用いて、個片化したチップをピックアップし、フリップチップボンダー:DB−100(澁谷工業社製)を用いて、チップのバンプに対応する電極を持つ基板上に、チップを接着剤層L1側からダイボンディングした。
ボンディング条件は、温度:250℃、荷重:35g/バンプ、0.5秒、50kHz、振幅3μmとした。しかる後、170℃で30分間接着剤層L1を硬化させ、半導体装置を得た。
(比較例1)
(1)チップの作製
実施例1で得られた半導体ウェーハを予め80μm厚に研削した。次に、半導体ウェーハのバンプが設けられている側の表面に、DAM−812M(タカトリ社製)を用いて、50℃にて、ラミネート速度30mm/secにて実施例1で得られた接着剤層L1を貼り合わせ、半導体ウェーハの表面に接着剤層L1を形成した。
しかる後、接着剤層L1を押圧せずに、DFD651(ディスコ社製)にてダイシングを行い、チップを個片化した。
光学顕微鏡にて、ウェーハ全面を観察した結果、全てのバンプの先端が、接着剤層L1の表面から、露出していなかった。
(2)半導体装置の作製
実施例1と同様にして半導体装置を得た。
(半導体装置の評価)
得られた実施例及び比較例の半導体装置において、チップと基板間に接続されたバンプ数が10個となるように、基板の電極から引き出した測定パッドを選択し、導通しているか確認を行った。
その結果、実施例1の半導体装置では、25個中不良が発生した個数は0個であった。他方、比較例1の半導体装置では、25個中不良が発生した個数は5個であった。