JP2008159376A - 光電変換素子 - Google Patents
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Abstract
【課題】変換効率および信頼性特性を向上することができる光電変換素子を提供する。
【解決手段】光電極10および対向電極20と共に電解質含有体30を備えた色素増感型の光電変換素子において、光電極10の金属酸化物半導体層12に色素14が担持されている。この色素14は、中心元素と、シクロペンタジエン環を有する配位子と、キレート構造を有する配位子とを有する錯体色素を含んでいる。これにより、光電極10では、色素14の結晶化が抑制される。
【選択図】図1
【解決手段】光電極10および対向電極20と共に電解質含有体30を備えた色素増感型の光電変換素子において、光電極10の金属酸化物半導体層12に色素14が担持されている。この色素14は、中心元素と、シクロペンタジエン環を有する配位子と、キレート構造を有する配位子とを有する錯体色素を含んでいる。これにより、光電極10では、色素14の結晶化が抑制される。
【選択図】図1
Description
本発明は、色素を用いた光電変換素子に関する。
従来、太陽光などの光エネルギーを電気エネルギーに変換する太陽電池などの光電変換素子として、酸化物半導体を有する電極に色素を担持させ増感させる色素増感型光電変換素子が知られている。この色素増感型光電変換素子は、理論的に高い効率が期待でき、一般に普及しているシリコン半導体を用いた光電変換素子より、コスト的に非常に有利であると考えられている。このため、次世代の光電変換素子として注目されており、実用化に向けて開発が進められている。
この色素増感型光電変換素子に用いられる色素に関しては、変換効率などの向上を目的として、金属錯体色素や有機色素などを用いる技術が知られている(例えば、特許文献1〜3参照)。金属錯体色素としては、具体的には、ビス(ジチオベンジル−4,4’−ジカルボキシリックアシッド)コバルトなどが挙げられる。
特開平01−220380号公報
特開平05−504023号公報
特表2002−512729号公報
しかしながら、従来の色素を用いた光電変換素子では、十分な変換効率が得られているわけではなく、更なる向上が望まれている。また、太陽電池として用いる場合、高温多湿な環境下での使用も考慮する必要があり、そういった環境下での信頼性特性の向上も望まれている。
本発明はかかる問題点を鑑みてなされたもので、その目的は、変換効率および信頼性特性を向上させることができる光電変換素子を提供することにある。
本発明の光電変換素子は、色素と共に、この色素を担持する担持体を有する光電極を備えるものであって、色素は、化1で表される錯体色素を含むものである。
本発明の光電変換素子では、色素が化1に示した錯体色素を含むことから、担持体表面における色素の結晶化が抑制される。
また、本発明の光電変換素子では、色素が化1に示した錯体色素の2量体を含んでいてもよい。さらに、色素を担持する担持体が酸化チタンおよび酸化亜鉛のうちの少なくとも1種を含んでいてもよい。
本発明の光電変換素子によれば、色素が化1に示した錯体色素を含むことから、変換効率および信頼性特性を向上させることができる。
以下、本発明の実施のための最良の形態(以下、単に実施の形態という。)について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る光電変換素子の断面構成を模式的に表すものであり、図2は、図1に示した光電変換素子の主要部を抜粋および拡大して表すものである。図1および図2に示した光電変換素子は、いわゆる色素増感型太陽電池の主要部である。この光電変換素子は、光電極10と対向電極20とが電解質含有体30を介して対向配置されたものであり、光電極10と対向電極20との少なくとも一方は、光透過性を有する電極である。
光電極10は、例えば、導電性基板11に金属酸化物半導体層12が設けられ、この金属酸化物半導体層12を担持体として色素14が担持されている構造を有している。この光電極10は、外部回路に対して、負極として機能するものである。導電性基板11は、例えば、絶縁性の基板11Aの表面に導電層11Bを設けたものである。
基板11Aの材料としては、例えば、ガラス、プラスチック、透明ポリマーフィルムなどの絶縁性材料が挙げられる。透明ポリマーフィルムとしては、例えば、テトラアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、シンジオクタチックポリステレン(SPS)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート(PAr)、ポリスルフォン(PSF)、ポリエステルスルフォン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、環状ポリオレフィンまたはブロム化フェノキシなどが挙げられる。
導電層11Bとしては、例えば、酸化インジウム、酸化スズ、インジウム−スズ複合酸化物(ITO)あるいは酸化スズにフッ素をドープしたもの(FTO)などの導電性金属酸化物薄膜や、金(Au)、銀(Ag)あるいは白金(Pt)などの金属薄膜や、導電性高分子などで形成されたものなどが挙げられる。
なお、導電性基板11は、例えば、導電性を有する材料によって単層構造となるように構成されていてもよく、その場合、導電性基板11の材料としては、例えば、酸化インジウム、酸化スズ、インジウム−スズ複合酸化物あるいは酸化スズにフッ素をドープしたものなどの導電性金属酸化物や、金、銀あるいは白金などの金属や、導電性高分子などが挙げられる。
金属酸化物半導体層12は、例えば、緻密層12Aと多孔質層12Bとから形成されている。導電性基板11との界面においては、緻密層12Aが形成され、この緻密層12Aは、緻密で空隙が少ないことが好ましく、膜状であることがより好ましい。電解質含有体30と接する表面においては、多孔質層12Bが形成され、この多孔質層12Bは、空隙が多く、表面積が大きくなる構造が好ましく、特に、多孔質の微粒子が付着している構造がより好ましい。金属酸化物半導体の材料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化ニオブ、酸化インジウム、酸化ジルコニウム、酸化タンタル、酸化バナジウム、酸化イットリウム、酸化アルミニウムまたは酸化マグネシウムなどが挙げられる。中でも、金属酸化物半導体の材料としては、酸化チタンおよび酸化亜鉛のうちの少なくとも一方を含んでいることが好ましく、酸化チタンを含んでいることがより好ましい。化1に示した錯体色素が色素14に含まれるので、高い変換効率および信頼性特性が得られるからである。また、これら金属酸化物半導体は、いずれか1種を単独で用いてもよいが、2種以上を複合(混合、混晶、固溶体など)させて用いてもよく、例えば、酸化亜鉛と酸化スズ、酸化チタンと酸化ニオブなどの組み合わせで使用することもできる。
金属酸化物半導体層12に担持される色素14は、化1に示した錯体色素を含んでいる。この錯体色素は、シクロペンタジエン環を有する配位子の大きな立体サイズにより結晶性が低く、溶解性が高いことから合成も容易であり、優れた光増感性および安定性を有するものである。この錯体色素を含んでいるのは、担持体表面での結晶化が抑制され、優れた変換効率および信頼性特性が得られるからである。
化1に示した中心元素(M)は、コバルト(Co)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、白金、亜鉛(Zn)、ロジウム(Rh)およびルテニウム(Ru)からなる群のうちのいずれか1種であるのが好ましく、中でも、コバルトであるのが好ましい。合成が容易であると共に同程度の効果が得られるからである。
化1に示した錯体色素としては、例えば、表1〜表8で表される配位子および中心元素を有する錯体色素などが挙げられる。
また、化1に示した錯体色素は、その錯体色素の2量体でもよい。1量体より2量体の方が会合体を形成しにくく、単分子で担持体に担持されやすい傾向があるからである。化1に示した錯体色素の2量体としては、例えば、表9で表される配位子および中心元素を有する錯体色素などが挙げられる。
なお、化1に示した構造を有する錯体色素であれば、表1〜表9に示した化合物に限定されないことは、言うまでもない。
また、色素14は、上記した色素の他に、他の色素を含んでいてもよい。他の色素は、金属酸化物半導体層12と化学的に結合することができる電子吸引性の置換基を有する色素が好ましい。他の色素としては、例えば、エオシンY、ジブロモフルオレセイン、フルオレセイン、ローダミンB、ピロガロール、ジクロロフルオレセイン、エリスロシンB(エリスロシンは登録商標)、フルオレシン、マーキュロクロム、シアニン系色素、メロシアニンジスアゾ系色素、トリスアゾ系色素、アントラキノン系色素、多環キノン系色素、インジゴ系色素、ジフェニルメタン系色素、トリメチルメタン系色素、キノリン系色素、ベンゾフェノン系色素、ナフトキノン系色素、ペリレン系色素、フルオレノン系色素、スクワリリウム系色素、アズレニウム系色素、ペリノン系色素、キナクリドン系色素、無金属フタロシアニン系色素または無金属ポルフィリン系色素などの有機色素などが挙げられる。
また、他の色素としては、例えば、有機金属錯体化合物も挙げられ、一例としては、芳香族複素環内にある窒素アニオンと金属カチオンとで形成されるイオン性の配位結合と、窒素原子またはカルコゲン原子と金属カチオンとの間に形成される非イオン性配位結合の両方を有する有機金属錯体化合物や、酸素アニオンもしくは硫黄アニオンと金属カチオンとで形成されるイオン性の配位結合と、窒素原子またはカルコゲン原子と金属カチオンとの間に形成される非イオン性配位結合の両方を有する有機金属錯体化合物などが挙げられる。具体的には、銅フタロシアニン、チタニルフタロシアニンなどの金属フタロシアニン系色素、金属ナフタロシアニン系色素、金属ポルフィリン系色素、ならびにビピリジルルテニウム錯体、ターピリジルルテニウム錯体、フェナントロリンルテニウム錯体、ビシンコニン酸ルテニウム錯体、アゾルテニウム錯体あるいはキノリノールルテニウム錯体などのルテニウム錯体などが挙げられる。
対向電極20は、例えば、導電性基板21に導電層22を設けたものである。この対向電極20は、外部回路に対して、正極として機能するものである。導電性基板21の材料としては、例えば、光電極10の導電性基板11と同様の材料が挙げられる。導電層22に用いる導電材としては、例えば、白金、金、銀、銅、ロジウム、ルテニウム、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)あるいはインジウム(In)などの金属、炭素(C)、または導電性高分子などが挙げられる。これらの導電材は、単独で用いてもよく、複数混合して用いてもよい。また必要に応じて、結着材として、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、セルロース、メラミン樹脂、フロロエラストマーまたはポリイミド樹脂などを用いてもよい。なお、対向電極20は、例えば、導電層22の単層構造でもよい。
電解質含有体30としては、例えば、レドックス電解質を含むものなどが挙げられる。レドックス電解質としては、例えば、I− /I3−系、Br− /Br3−系またはキノン/ハイドロキノン系などが挙げられる。このようなレドックス電解質としては、例えば、ハロゲン化セシウム、ハロゲン化四級アルキルアンモニウム類、ハロゲン化イミダゾリウム類、ハロゲン化チアゾリウム類、ハロゲン化オキサゾリウム類、ハロゲン化キノリニウム類、ハロゲン化ピリジニウム類から選択される1種以上とハロゲン単体との組み合わせなどを用いることができる。具体的には、ヨウ化セシウムや、四級アルキルアンモニウムヨージド類としてテトラエチルアンモニウムヨージド、テトラプロピルアンモニウムヨージド、テトラブチルアンモニウムヨージド、テトラペンチルアンモニウムヨージド、テトラヘキシルアンモニウムヨージド、テトラへプチルアンモニウムヨージドあるいはトリメチルフェニルアンモニウムヨージドや、イミダゾリウムヨージド類として3−メチルイミダゾリウムヨージドあるいは1−プロピル−2,3−ジメチルイミダゾリウムヨージドや、チアゾリウムヨージド類として3−エチル−2−メチル−2−チアゾリウムヨージド、3−エチル−5−(2−ヒドロキシエチル)−4−メチルチアゾリウムヨージドあるいは3−エチル−2−メチルベンゾチアゾリウムヨージドや、オキサゾリウムヨージド類として3−エチル−2−メチル−ベンゾオキサゾリウムヨージドや、キノリニウムヨージド類として1−エチル−2−メチルキノリニウムヨージドや、ピリジニウムヨージド類から選択される1種以上とヨウ素との組み合わせ、または四級アルキルアンモニウムブロミドと臭素との組み合わせなどを用いることができる。電解質含有体30は、液体電解質でもよく、これを高分子物質中に含有させた固体高分子電解質でもよい。液体電解質の溶媒としては、電気化学的に不活性なものが用いられ、例えば、アセトニトリル、プロピレンカーボネートまたはエチレンカーボネートなどが挙げられる。
また、電解質含有体30としては、例えば、レドックス電解質に代えて、固体電解質などの固体電荷移動層を設けてもよい。固体電荷移動層は、例えば、固体中のキャリアー移動が電気伝導にかかわる材料を有している。この材料としては、電子輸送材料や正孔(ホール)輸送材料などが好ましい。
正孔輸送材料としては、芳香族アミン類や、トリフェニレン誘導体類などが好ましく、例えば、オリゴチオフェン化合物、ポリピロール、ポリアセチレンあるいはその誘導体、ポリ(p−フェニレン)あるいはその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)あるいはその誘導体、ポリチエニレンビニレンあるいはその誘導体、ポリチオフェンあるいはその誘導体、ポリアニリンあるいはその誘導体、ポリトルイジンあるいはその誘導体などの有機導電性高分子などが挙げられる。
また、正孔輸送材料としては、例えば、p型無機化合物半導体を用いてもよい。このp型無機化合物半導体は、バンドギャップが2eV以上であることが好ましく、さらに、2.5eV以上であることがより好ましい。また、p型無機化合物半導体のイオン化ポテンシャルは、色素の正孔を還元できる条件から、光電極10のイオン化ポテンシャルより小さいことが必要である。使用する色素によってp型無機化合物半導体のイオン化ポテンシャルの好ましい範囲は異なってくるが、一般に4.5eV以上5.5eV以下の範囲内であることが好ましく、さらに、4.7eV以上5.3eV以下の範囲内であることがより好ましい。
p型無機化合物半導体としては、例えば、一価の銅を含む化合物半導体などが挙げられる。一価の銅を含む化合物半導体の一例としては、CuI、CuSCN、CuInSe2 、Cu(In,Ga)Se2 、CuGaSe2 、Cu2 O、CuS、CuGaS2 、CuInS2 、CuAlSe2 などがある。このほかのp型無機化合物半導体としては、例えば、GaP、NiO、CoO、FeO、Bi2 O3 、MoO2 またはCr2 O3 などが挙げられる。
このような固体電荷移動層の形成方法としては、例えば、光電極10の上に直接、固体電荷移動層を形成する方法があり、そののち対向電極20を形成付与してもよい。
有機導電性高分子を含む正孔輸送材料は、例えば、真空蒸着法、キャスト法、塗布法、スピンコート法、浸漬法、電解重合法または光電解重合法などの手法により電極内部に導入することができる。無機固体化合物の場合も、例えば、キャスト法、塗布法、スピンコート法、浸漬法または電解メッキ法などの手法により電極内部に導入することができる。
このように形成される固体電荷移動層(特に、正孔輸送材料を有するもの)の一部は、金属酸化物半導体層12の多孔質構造の隙間に部分的に浸透し、直接接触する形態となることが好ましい。
この光電変換素子は、例えば、以下のように製造することができる。
まず、例えば、導電性基板11の導電層11Bが形成されている面に金属酸化物半導体層12を形成し、金属酸化物半導体層12に色素14を担持させることにより、光電極10を作製する。この金属酸化物半導体層12を形成する際には、金属酸化物半導体の粉末を金属酸化物半導体のゾル液に分散させることにより、金属酸化物スラリーとし、その金属酸化物スラリーを導電性基板11に塗布して乾燥させたのち、焼成する。また、金属酸化物半導体層12は、例えば、電解析出などにより形成されてもよい。この金属酸化物半導体層12が形成された導電性基板11を、有機溶媒に上記した色素14を溶解した色素溶液に浸漬し、色素14を担持させる。
次に、例えば、導電性基板21の片面に導電層22を形成することにより、対向電極20を作製する。導電層22は、例えば、導電材をスパッタリングすることで形成する。
続いて、光電極10の色素14を担持した面と、対向電極20の導電層22を形成した面とが所定の間隔を保つと共に、対向するように配置する。その光電極10と対向電極20との間に、電解質含有体30を注入し、全体を封止する。これにより図1および図2に表した光電変換素子が完成する。
この光電変換素子では、光電極10に担持された色素14に光(太陽光または、太陽光と同等の可視光)があたると、光を吸収して励起した色素14が電子を金属酸化物半導体層12へ注入することで、対向電極20との間に電位差が生じ、両極間に電流が流れ、光電変換する。
この光電変換素子によれば、結晶性が低く、かつ光増感特性および安定性が高い化1に示した錯体色素を色素14に含んでいるので、その錯体色素を含まない場合と比較して、変換効率および信頼性特性を向上させることができる。
本発明の具体的な実施例について詳細に説明する。
(実施例1−1)
上記実施の形態で説明した光電変換素子の具体例として、金属酸化物半導体の材料として酸化チタンを用いた光電極10を備えた色素増感型太陽電池を以下の手順で作製した。
上記実施の形態で説明した光電変換素子の具体例として、金属酸化物半導体の材料として酸化チタンを用いた光電極10を備えた色素増感型太陽電池を以下の手順で作製した。
まず、光電極10を作製した。チタンイソプロポキシド125mlを、0.1M硝酸水溶液750mlに攪拌しながら添加し、80℃で8時間激しく攪拌した。得られた液体をテフロン(登録商標)製の圧力容器内で230℃、16時間オ−トクレ−ブにて処理した。そののち沈殿物を含むゾル液を攪拌により再懸濁させた。次に、吸引濾過により、再懸濁しなかった沈殿物を除き、エバポレ−タ−で酸化チタン濃度が11質量%になるまでゾル液を濃縮した。基板への塗れ性を高めるため、Triton X-100(Tritonは登録商標)を1滴添加した。次に、酸化チタンの粉末P−25をこの酸化チタンゾル液に、酸化チタンの含有率が全体として33質量%となるように加え、自転公転を利用した遠心撹拌を1時間行い分散させ、酸化チタンゾル液を調整し、金属酸化物スラリーとした。
次に、縦2.0cm×横1.5cm×厚さ1.1mmの導電性ガラス基板(F−SnO2 )よりなる導電性基板11に、縦0.5cm×横0.5cmの四角形を囲むように厚さ70μmのマスキングテープを貼り、この部分に金属酸化物スラリー3mlを一様の厚さとなるように塗布して乾燥させたのち、マスキングテープを剥がし取った。次に、この基板を電気炉により500℃で焼成し、厚さ約10μmの金属酸化物半導体層12を形成した。この金属酸化物半導体層12として酸化チタン半導体層が形成された導電性基板11を、表1に示した錯体色素NO.1の無水エタノール溶液(3×10−4mol/l)に浸漬し、色素14を担持させた。
次に、縦2.0cm×横1.5cm×厚さ1.1mm導電性ガラス基板(F−SnO2)よりなる導電性基板21の片面に、スパッタリングにより白金よりなる100nmの厚さの導電層22を形成することにより、対向電極20を作製した。予め、導電性基板21には、電解質含有体30注入用の穴(φ1mm)を2つ開けておいた。電解質含有体30は、アセトニトリルに対して、ジメチルヘキシルイミダゾリウムヨージド(0.6mol/l)、ヨウ化リチウム(0.1mol/l)、ヨウ素(0.05mol/l)、水(1mol/l)の濃度になるように調製した。
次に、光電極10の色素14を担持した面と、対向電極20の導電性層22を形成した面とが所定の間隔を保つために厚さ50μmのスペーサを介して貼り合わせた。このときスペーサは金属酸化物半導体層12の周りを囲むように配置した。次に、対向電極20に開けておいた穴から調整した電解質含有体13を注入したのち、全体を封止し色素増感型太陽電池を得た。
(実施例1−2〜1−6)
色素として錯体色素NO.1に代えて表1に示した錯体色素NO.2(実施例1−2)、錯体色素NO.5(実施例1−3)、錯体色素NO.6(実施例1−4)、表3に示した錯体色素NO.15(実施例1−5)および表9に示した錯体色素NO.50(実施例1−6)をそれぞれ用いたことを除き、実施例1−1と同様の手順を経た。
色素として錯体色素NO.1に代えて表1に示した錯体色素NO.2(実施例1−2)、錯体色素NO.5(実施例1−3)、錯体色素NO.6(実施例1−4)、表3に示した錯体色素NO.15(実施例1−5)および表9に示した錯体色素NO.50(実施例1−6)をそれぞれ用いたことを除き、実施例1−1と同様の手順を経た。
(比較例1)
色素として錯体色素NO.1に代えてビス(ジチオベンジル−4,4’−ジカルボキシリックアシッド)コバルトを用いたことを除き、実施例1−1と同様の手順を経た。なお、ビス(ジチオベンジル−4,4’−ジカルボキシリックアシッド)コバルトの構造式は、化2に示したとおりである。
色素として錯体色素NO.1に代えてビス(ジチオベンジル−4,4’−ジカルボキシリックアシッド)コバルトを用いたことを除き、実施例1−1と同様の手順を経た。なお、ビス(ジチオベンジル−4,4’−ジカルボキシリックアシッド)コバルトの構造式は、化2に示したとおりである。
これらの実施例1−1〜1−6および比較例1の色素増感型太陽電池について変換効率および信頼性特性を調べたところ、表10に示した結果が得られた。
変換効率は、光源にAM1.5(1000W/m2 )のソーラーシュミレータを用いて、以下の算出方法により求めた。まず、色素増感型太陽電池の電圧をソースメータにて掃引し、応答電流を測定した。これにより、電圧と電流との積である最大出力を1cm2 あたりの光強度で除した値に100を乗じてパーセント表示した値を変換効率(η:%)とした。すなわち、変換効率は、(最大出力/1cm2 あたりの光強度)×100で表される。
信頼性特性を調べる際には、高温高湿度雰囲気下で以下の手順により維持率を求めた。具体的には、色素増感型太陽電池を80℃,80%RHで100時間保存し、最大出力の経時的変化を測定することにより、保存前の最大出力に対する100時間保存後の最大出力の維持率(%)を求めた。すなわち、維持率は、(100時間保存後の最大出力/保存前の最大出力)×100で表される。
上記した変換効率および信頼性特性を調べる際の手順および条件は、以降の一連の実施例および比較例に関しても同様である。
表10に示したように、変換効率は、実施例1−1〜1−6において、比較例1より著しく高く、3%以上となった。また、維持率は、実施例1−1〜1−6において、比較例1のほぼ2倍となった。このことから、金属酸化物半導体の材料として酸化チタンを用いた色素増感型太陽電池では、色素14に化1に示した錯体色素を含むことで、優れた変換効率および信頼性特性が得られることが確認された。また、化1に示した錯体色素の2量体を含んでいても、同程度の効果が得られることが確認された。
(実施例2−1)
光電極10として金属酸化物半導体層12の材料に酸化亜鉛を用いたことを除き、実施例1−1と同様の手順を経た。その際、光電極10は、以下の手順で作製した。縦2.0cm×横1.5cm×厚さ1.1mmの導電性ガラス基板(F−SnO2 )よりなる導電性基板11上に、電解析出により、酸化亜鉛よりなる金属酸化物層12を形成した。
光電極10として金属酸化物半導体層12の材料に酸化亜鉛を用いたことを除き、実施例1−1と同様の手順を経た。その際、光電極10は、以下の手順で作製した。縦2.0cm×横1.5cm×厚さ1.1mmの導電性ガラス基板(F−SnO2 )よりなる導電性基板11上に、電解析出により、酸化亜鉛よりなる金属酸化物層12を形成した。
電解析出には、水に対してエオシンY(30μmol/l)、塩化亜鉛(5mmol/l)、塩化カリウム(0.09mol/l)の濃度になるように調整した電解浴液40mlと、亜鉛板よりなる対極と、銀/塩化銀電極よりなる参照電極とを用いた。まず、この電解浴を酸素により15分間バブリングしたのち、温度を70℃とし、60分、電位−1.0Vの定電位電解をバブリングしながら導電性基板11表面に製膜した。この基板を、乾燥させることなく水酸化カリウム水溶液(pH11)に浸漬し、そののち水洗することによりエオシンYを脱着した。続いて、150℃、30分間乾燥させることにより金属酸化物半導体層12を形成した。次に、表1に示した錯体色素NO.1の無水エタノール溶液(5mmol/l)に浸漬し、色素14を担持させることにより、光電極10を作製した。
(実施例2−2〜2−6)
色素として錯体色素NO.1に代えて表1に示した錯体色素NO.2(実施例2−2)、錯体色素NO.5(実施例2−3)、錯体色素NO.6(実施例2−4)、表3に示した錯体色素NO.15(実施例2−5)および表9に示した錯体色素NO.50(実施例2−6)をそれぞれ用いたことを除き、実施例2−1と同様の手順を経た。
色素として錯体色素NO.1に代えて表1に示した錯体色素NO.2(実施例2−2)、錯体色素NO.5(実施例2−3)、錯体色素NO.6(実施例2−4)、表3に示した錯体色素NO.15(実施例2−5)および表9に示した錯体色素NO.50(実施例2−6)をそれぞれ用いたことを除き、実施例2−1と同様の手順を経た。
(比較例2)
色素として錯体色素NO.1に代えて化2に示した錯体色素を用いたことを除き、実施例2−1と同様の手順を経た。
色素として錯体色素NO.1に代えて化2に示した錯体色素を用いたことを除き、実施例2−1と同様の手順を経た。
これらの実施例2−1〜2−6および比較例2の色素増感型太陽電池について変換効率および安定性特性を調べたところ、表11に示した結果が得られた。
表11に示したように、変換効率は、実施例2−1〜2−6において、比較例2より著しく高く、3%程度となった。また、維持率は、実施例2−1〜2−6において、比較例2のほぼ2倍となった。このことから、金属酸化物半導体の材料として酸化亜鉛を用いた色素増感型太陽電池では、色素14に化1に示した錯体色素を含むことで、優れた変換効率および信頼性特性が得られることが確認された。また、化1に示した錯体色素の2量体を含んでいても、同程度の効果が得られることが確認された。
上記した表10および表11の結果から明らかなように、金属酸化物半導体層12の材料として用いる金属酸化物半導体の種類に関係なく、色素14が化1に示した錯体色素を含むことにより、その錯体色素を含まない場合と比較して、優れた変換効率および信頼性特性が得られることが確認された。特に、金属酸化物半導体として酸化チタンを含む場合に、より高い効果が得られることが確認された。
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記した実施の形態および実施例において説明した態様に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、本発明の光電変換素子の使用用途は、必ずしも既に説明した用途に限らず、他の用途であってもよい。他の用途としては、例えば、光センサなどが挙げられる。
10…光電極、11,21…導電性基板、11A…基板、11B…導電層、12…金属酸化物半導体層、12A…緻密層、12B…多孔質層、14…色素、20…対向電極、22…導電層、30…電解質含有体。
Claims (3)
- 前記色素は、化1に示した錯体色素の2量体を含むことを特徴とする請求項1記載の光電変換素子。
- 前記担持体は、酸化チタンおよび酸化亜鉛のうちの少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光電変換素子。
Priority Applications (1)
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WO2010050574A1 (ja) * | 2008-10-29 | 2010-05-06 | 富士フイルム株式会社 | 光電気化学電池 |
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- 2006-12-22 JP JP2006346081A patent/JP2008159376A/ja not_active Withdrawn
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