JP2008157686A - 導電性探針及び磁性探針の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】低コストで量産が可能であり、かつ、先端の曲率半径の小さな導電性探針及び磁性探針の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る導電性探針の製造方法は、先端部1a有する探針基材1の表面に、原子層堆積法により導電性材料3を成膜する成膜工程を有することを特徴とする。また、本発明による磁性探針の製造方法は、先端部1a有する探針基材1の表面に、原子層堆積法により磁性材料7を成膜する成膜工程を有することを特徴とする。
【選択図】図1
【解決手段】本発明に係る導電性探針の製造方法は、先端部1a有する探針基材1の表面に、原子層堆積法により導電性材料3を成膜する成膜工程を有することを特徴とする。また、本発明による磁性探針の製造方法は、先端部1a有する探針基材1の表面に、原子層堆積法により磁性材料7を成膜する成膜工程を有することを特徴とする。
【選択図】図1
Description
本発明は、導電性探針及び磁性探針の製造方法に関する。
走査型プローブ顕微鏡(Scanning Probe Microscope, 以下「SPM」という)は、先鋭なプローブ(探針)を試料表面に極めて近接あるいは接触させたときに探針と試料間に働く相互作用を検出しながら、探針と試料を相対的に移動させて走査することにより、その相互作用の二次元マッピングを高い空間分解能で行う装置である。そして、この空間分解能は探針の先端の曲率半径に大きく依存することが知られており、探針の曲率半径が小さい程高い空間分解能が得られる。
SPMの中で最も普及している原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope, 以下「AFM」という)は、探針と試料間に働く原子間力を利用し、試料表面の凹凸を測定する装置である。このAFM用の探針は、異方性エッチング等の半導体製造プロセスを応用して単結晶シリコンや窒化シリコンを円錐形や角錐形に先鋭化したものが一般的に用いられ、原子間力をたわみ量に変換して検出するための板ばねであるカンチレバーと一体化された状態で市販されている。そのようなAFM用の探針先端の曲率半径は、10〜15nm程度であるが、最近は曲率半径が約2nmの探針も市販されている。このように非常に先鋭な探針を用いたAFMによる試料の測定では、原子レベルの分解能で表面の凹凸を測定することが可能である。
また、AFMによる測定においては、探針と試料間の原子間力以外の相互作用も併せて測定し、試料に関してより多くの情報を得ることも行われている。例えば、探針と試料を軽く接触させ、それらの間に一定電圧を印加したときの電流値を検出しながら走査すると、試料表面の導電率の分布を測定することができる。また、探針と試料を近接させた状態でそれらの距離を周期的に変動させ、ケルビンプローブ法による測定を行うと、試料の表面電位の分布を測定することができる。通常の試料表面の凹凸測定と併せてこれらの測定を行うことにより、試料表面の凹凸形状に対応した電気的特性の分布の評価を行うことができる。
AFMによって上述の導電率等の電気的測定を行う場合、探針は導電性を有している必要があるが、一般的に探針として使用される単結晶シリコンや窒化シリコン等は絶縁体である。そこで、電気的測定を行うAFM用の探針としては、通常のAFM用の探針の表面にスパッタリング法や蒸着法等で導電性を有する金属材料を成膜したものが用いられる。しかし、通常のAFM用の探針の表面に金属材料を成膜すると、成膜後の探針先端の曲率半径は成膜前のものより大きくなってしまい、また、複数の探針を作製するとそれらの曲率半径の大きさがばらつくという問題点がある。
即ち、スパッタリング法等で金属材料を探針に成膜する場合、先鋭した部分には金属材料が堆積し難く他の部分に比べて成膜速度が遅いため、及び堆積した金属膜には結晶欠陥が多く、探針に十分な導電性を与えるためにはある程度の厚さまで金属膜を成膜する必要があるため、探針先端の曲率半径は大きくなってしまい、また、その大きさがばらついてしまう。例えば、曲率半径が10〜15nmの探針の表面に金属膜の成膜を行うと、曲率半径が30〜70nm程度の導電性探針になってしまう。曲率半径が約2nmであるさらに先鋭な探針の表面に金属膜を成膜することも考えられるが、先端がより先鋭であるため、先端部分はより金属材料が堆積し難く、結局曲率半径の大きな導電性探針になってしまう。
そこで、このような問題点を解決するために、特許文献1に開示されている導電性探針の製造方法では、収束イオンビーム装置(FIB装置)を利用している。具体的には、探針の先端にイオンビームを照射しながら金属化合物である原料ガスを導入し、探針先端部分付近でのみ原料ガスを分解して金属層を成膜している。このように探針を製造すると、探針の曲率半径はイオンビームの収束半径と同程度となるため、先鋭な導電性探針を得ることができる。
ところで、SPMは、AFM以外にも多くの種類が存在し、その一種である磁気力顕微鏡(Magnetic Force Microscope, 以下「MFM」という)も広く用いられている。これは磁性探針を用いて試料表面の磁気的な情報を得る目的で用いられ、例えば磁気ディスク媒体の磁化状態の評価等に用いられる。この磁性探針は、例えば特許文献2に開示されているように、上述のAFM用の単結晶シリコン等の探針の表面全体に磁性金属をスパッタリング法等により成膜したものが用いられている。そのため、上述の導電性探針の場合と同様に、探針先端の曲率半径は30〜70nm程度に大きくなってしまい、また、複数の探針を作製した場合の曲率半径のばらつきが大きくなるという問題がある。
さらに、MFMの探針としてAFM用の探針の表面全体に磁性金属を成膜したものを用いた場合、探針の先端部以外の部分と試料間に働く長距離の磁気力(以下、「長距離磁気力」という)が原因で、空間分解能がさらに低下するという問題点もある。即ち、AFM用の探針は一般的に円錐形状や角錐形状であるため、その表面全体に磁性金属を成膜したものをMFM用の探針として用いると、探針の先端から離れた側面部分と試料間にも磁気力が発生してしまう。このため、探針先端の曲率半径が大きくなったのと同等の効果が発生し、空間分解能がさらに低下してしまう。
そこで、このような問題点を解決するため、非特許文献1に記載のMFM用の磁性探針は、カーボンナノチューブを備えた構成となっている。具体的には、AFM用の探針の先端にカーボンナノチューブを固定し、探針とカーボンナノチューブの表面にスパッタリング法によって磁性金属を成膜している。このようにして先端の曲率半径が約20nmの探針を製造し、MFM用の探針として用いている。従来の一般的なMFM用の探針の曲率半径は30〜70nm程度であるため、それよりも小さな曲率半径を有する探針が実現されている。また、カーボンナノチューブは円柱形状であるため、磁性金属を成膜後も探針の形状は円柱形状に近くなるため、探針の先端部以外の部分と試料間の距離が大きくなり、長距離磁気力を減少させることができる。MFM用の探針が有するこれらの特徴によって、MFMによる高分解能の測定が実現されている。
特開2003−240700号公報
特開2005−98804号公報
AIST Today, Vol.4 No.6, p.4-6 (2004)
しかしながら、収束イオンビーム装置を利用した化学蒸着法による先鋭の導電性探針の製造方法は、探針1本ごとに処理を行うため、生産性が低く、製造コストが高くなるという問題点がある。
また、AFM用の探針の先端にカーボンナノチューブを取り付けて磁性金属を成膜する磁性探針の製造方法は、同様に探針1本ごとに処理を行うため、生産性が低く、製造コストが高くなるという問題がある。さらに、磁性金属を成膜するため、磁性探針の曲率半径はカーボンナノチューブの半径よりも大きくなってしまい、AFM用の探針として実現されているような小さな曲率半径(約2nm)の探針を製造することはできない。
従って、本発明の目的は、低コストで量産が可能であり、かつ、先端の曲率半径の小さな導電性探針及び磁性探針の製造方法を提供することを目的とする。
本発明に係る導電性探針の製造方法は、先端部を有する探針基材の表面に、原子層堆積法により導電性材料を成膜する成膜工程を有することを特徴とする。
原子層堆積法は、成膜対象の形状に関わらず、その表面に1原子層ずつ、極めて均一な膜厚分布で成膜を行うことができる。従って、本発明によれば、探針基材の先端部自体の曲率半径と略同じ曲率半径を持つ導電性探針を製造することができる。また、原子層堆積法による導電性材料の成膜は、複数の探針基材に対して同時に行うことが可能であるため、低コストで導電性探針を量産することが可能である。
本発明による磁性探針の製造方法は、先端部を有する探針基材の表面に、原子層堆積法により磁性材料を成膜する成膜工程を有することを特徴とする。
原子層堆積法は、成膜対象の形状に関わらず、その表面に1原子層ずつ、極めて均一な膜厚分布で成膜を行うことができる。従って、本発明によれば、探針基材の先端部自体の曲率半径と略同じ曲率半径を持つ磁性探針を製造することができる。また、原子層堆積法による磁性材料の成膜は、複数の探針基材に対して同時に行うことが可能であるため、低コストで磁性探針を量産することが可能である。
また、成膜工程の前に、探針基材の表面に、探針基材の先端部を露出させるマスク材を形成するマスク工程を有することが好ましい。
これにより、先端部のみに磁性材料が成膜された磁性探針を製造することができる。このような探針をMFMによる測定に利用すると、探針と試料間の長距離磁気力を低減させることが可能であるため、より高分解能で試料表面の磁気特性の評価が可能である磁性探針を得ることができる。
また、成膜工程において、複数の種類の原子層を予め定められた積層順で成膜することが好ましい。これにより、規則化合金である磁性材料が成膜された磁性探針を容易に製造することができる。
本発明によれば、低コストで量産が可能であり、かつ、先端の曲率半径の小さな導電性探針及び磁性探針の製造方法が提供される。
以下に、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図面において、同一の要素は、同一の参照番号を用いて示されている。また、図面中の構成要素内及び構成要素間の寸法比は、図面の見易さのため、それぞれ任意となっている。
[第一実施形態]
(導電性探針)
[第一実施形態]
(導電性探針)
本発明に係る導電性探針及び磁性探針の製造方法の第一実施形態として、導電性探針の製造方法について説明する。図1の(a)及び(b)は、本実施形態に係る導電性探針の製造方法の工程図である。
まず、図1(a)に示すように、通常のAFMの測定に使用することのできる非導電性探針9を用意する。図2は図1の非導電性探針9を図1の上方から見た場合の模式図である。これらの図に示すように、非導電性探針9は、カンチレバー2と探針基材1で構成されている。非導電性探針9とカンチレバー2は、異方性エッチング等の半導体プロセスを応用して単結晶シリコンや窒化シリコン等を微細加工して製造されたものであり、一体化されている。
探針基材1は、AFM等のSPMの探針となる部分であり、四角錐の形状をしている。先端部1aは先鋭化されており、その曲率半径は例えば、2〜15nmである。探針基材1の底辺部から先端部1aの長さは特に制限されないが、例えば2.9〜10μmである。
カンチレバー2は、非導電性探針9をAFMの探針をして使用した場合に、非導電性探針9が測定試料から引力等の原子間力を受けた時に、その原子間力をたわみ量に変換して検出するための板ばねである。
次に、図1(b)に示すように、非導電性探針9の表面に、原子層堆積法(Atomic Layer Deposition法、以下「ALD法」という)で導電性金属層3を成膜する。導電性金属層3の材料としては、例えば、白金、タングステン、金、ロジウムや、これらのうちの少なくとも一種類を含む合金が挙げられる。
ここで、図3を用いて、ALD法による導電性金属層3の成膜について、詳細に説明する。
まず、図3(a)に示すように、成膜チャンバー(図示せず)内に探針基材1を配置し、そのチャンバー内に前駆体ガス15を導入する。この前駆体ガス15は、成膜目的の導電性金属層3を構成する金属原子14と配位子12が化合した金属錯体の気体であり、有機金属やハロゲン化金属等の気体である。前駆体ガス15として、例えば、シクロペンタジエニル(トリメチル)白金(IV)、ビス(tert-ブチルイミド)ビス(ジメチルアミド)タングステン(VI)、タングステンヘキサカルボニル、タングステン(VI)クロリド、タングステン(VI)フルオライドが挙げられる。
前駆体ガス15としては、探針基材1の表面に化学吸着されるものを選択する。また、そのような化学吸着が起こるように、探針基材1の表面に適当な処理を行った後に前駆体ガス15を導入してもよい。また、化学吸着を促進するために、前駆体ガス15が熱分解しない程度に探針基材1を加熱してもよい。
成膜チャンバー内に導入された前駆体ガス15は、探針基材1の表面の特定の活性部位(例えば、OH基)に化学吸着して吸着ガス15aとなるが、前駆体ガス15と吸着ガス15aが反応することはほとんどない。そのため、吸着ガス15aが探針基材1の表面に一分子層のみ吸着した段階で、前駆体ガス15と探針基材1との反応は自動的に終了する。さらに、探針基材1の表面がどのような形状であっても、表面全体に均一に前駆体ガス15が化学吸着する。
次に、図3(b)に示すように、探針基材1の表面に化学吸着していない前駆体ガス15を成膜チャンバー外に排出する。この排出は、窒素やアルゴン等の不活性ガスの導入や、真空ポンプによる排気により行うことができる。これにより、前駆体ガス15は、探針基材1の表面に化学吸着した一分子層を構成するもののみが吸着ガス15aとして成膜チャンバー内に残る。
続いて、図3(c)に示すように、成膜チャンバー内に配位子と反応するガスである反応ガス18を導入する。すると、反応ガス18と吸着ガス15aの配位子12が反応、即ち、反応ガス18によって吸着ガス15aが分解される。その結果、金属原子14は探針基材1の表面に残り、配位子12は反応ガス18と結合して気体である副生成気体20となる。
反応ガス18は、例えば酸素、水(水蒸気)、過酸化水素等の酸化性ガスや、アンモニア等の還元性ガスである。副生成気体20は、例えば炭化水素等の気体である。
続いて、図3(d)に示すように、副生成気体20を成膜チャンバー外に排出する。この排出は、窒素やアルゴン等の不活性ガスの導入や、真空ポンプによる排気により行うことができる。これにより、探針基材1の表面に金属原子14が、一原子層の厚さで均一に成膜される。
以上の図3(a)〜(d)の工程がALD法による成膜の1サイクルとなる。そして、所定のサイクル数を繰り返すことによって、探針基材1の表面に金属原子14を所定の厚さで成膜することができ、この所定の厚さに成膜された金属原子14全体が、導電性金属層3(図1参照)となる。導電性金属層3の厚さは、例えば、1〜30nmとすることができる。また、導電性金属層3として合金を用いる場合には、サイクルごとに異なる種類の前駆体ガス15を導入するか、複数の種類の前駆体ガス15を同時に導入すればよい。このようにして、電気的測定を同時に行うAFM用に主に用いられる導電性探針10(図1(b))が製造される。
上述の第一実施形態のように、ALD法によって探針基材1の表面に導電性金属層3を形成すると、以下の理由により、導電性金属層3の膜厚を極めて均一にすることができ、また、その膜厚を正確に制御することができる。即ち、ALD法による成膜サイクルにおいて、探針基材1と前駆体ガス15の反応は、探針基材1(又は既に探針基材1の表面上に成膜された金属原子14の層)の表面全体に吸着ガス15aの一分子層が形成された時点で自動的に終了するため、金属原子14の膜厚は極めて均一となる。そして、導電性金属層3の膜厚は、ALD法による成膜サイクルの繰返し数で決まるため、その膜厚を正確に制御することが可能である。
さらに、ALD法による成膜によれば、気体である前駆体ガス15の探針基材1への化学吸着を利用しているため、探針基材1がどのような形状であっても、その表面に均一に、即ち、探針基材1の表面形状に対応した形状の導電性金属層3を成膜することができる。そのため、探針基材1の先端部1aが非常に先鋭(例えば、曲率半径が2nm)であっても、略同じ曲率半径になるように探針基材1の先端部1aに導電性金属層3が成膜され、導電性金属層3の先端部3a、つまり導電性探針10の先端部3aも非常に先鋭にすることが可能である。
また、ALD法による成膜は、スパッタリング法や蒸着法による成膜と比較して、結晶欠陥の少ない膜を成膜することができる。そのため、導電性金属層3は、膜厚が薄くても十分な導電性を有するため、導電性金属層3が厚くなることによる導電性探針10の先端部3aの曲率半径の増大を防ぐことができる。
また、ALD法による成膜は上述の成膜原理から明らかなように、複数の探針基材1に対して同時に導電性金属層3を成膜することが可能であるため、製造コストを低くすることができ、また、同時に製造した複数の導電性探針10間の特性のばらつきも小さくすることができる。
また、ALD法による成膜は、前駆体ガス15や反応ガス18の種類等を適切に選択することにより、様々な種類の材料を成膜することが可能である。そのため、導電性金属層3として様々な金属材料を成膜することができる。さらに、導電性金属層3として合金を用いる場合は、ALD法による成膜時にサイクルごとに異なる種類の前駆体ガス15を導入する(即ち、一原子層ずつ異なる種類の原子層を所定の順序で成膜する)、又は複数の種類の前駆体ガス15を同時に導入すればよいため、容易に合金層の成膜を行うことができる。
[第二実施形態]
(磁性探針)
[第二実施形態]
(磁性探針)
本発明に係る導電性探針及び磁性探針の製造方法の第二実施形態として、磁性探針の製造方法について説明する。図4の(a)〜(e)は、本実施形態に係る磁性探針の製造方法の工程図である。
まず、第一実施形態の製造方法と同様に、図4(a)に示すように、通常のAFMの測定に使用することのできる非導電性探針9を用意する。
次に、図4(b)に示すように、非導電性探針9の表面を、マスク材5でマスクする。このマスク材としては、例えば、有機材料の液体や気体を用いることができるが、後のALD法による磁性金属の成膜工程において、前駆体ガス15が化学吸着しない材料を選択する。
続いて、図4(c)に示すように、探針基材1の先端部1aの周りのマスク材5を除去する。この除去は、探針基材1の先端部1aの先端を、マスク材5を溶解する液体に接触させたり、適当な固体材料に接触させて先端部1aの周りのマスク材5をその固体材料側へ付着させたりすることにより実現される。このようにして、探針基材1の表面には、マスク材5によってマスクされたマスク表面1bと、マスク材5によってマスクされていない非マスク表面1cを形成することができる。
また、この固体材料との接触は、非導電性探針9をAFMに取り付け、AFMの機能によって行うことが好ましい。これにより、マスク材5のごく一部のみが除去されてより小さな面積の非マスク表面1cを形成することが可能であり、後述するように長距離磁気力の発生をより低減することが可能な磁性探針を得ることができる。
続いて、探針基材1の表面にALD法により磁性金属層7を成膜する。ALD法による成膜は第一実施形態における成膜と同様に行われるが、金属原子14は磁性金属となるように、前駆体ガス15が選択される(図3参照)。また、マスク表面1bを前駆体ガス15が化学吸着しないマスク材5で覆っているため、図のように非マスク表面1cの表面のみに磁性金属層7が成膜される。磁性金属層7の材料としては、例えば、鉄、コバルト、ニッケルや、これらのうちの少なくとも一種類を含む合金、例えばコバルト鉄、鉄白金、コバルト白金クロム、コバルトタンタルが挙げられる。そして、磁性金属層7の厚さは、例えば、1〜30nmとすることができる。また、磁性金属層7として合金を用いる場合には、サイクルごとに異なる種類の前駆体ガス15を導入するか、複数の種類の前駆体ガス15を同時に導入すればよい。前駆体ガス15としては、例えば、ビス(N,N’-ジ-tert-ブチルアセトアミジナート)鉄(II)、ビス(N,N’-ジイソプロピルアセトアミジナート)コバルト(II)、ジカルボニル(シクロペンタジエニル)コバルト(I)、ビス(メチルシクロペンタジエニル)ニッケル(II)、シクロペンタジエニル(トリメチル)白金(IV)が挙げられる。
続いて、図4(e)に示すように、マスク材5を除去する。この除去は、マスク材5を溶解する液体に浸す方法等によりなされる。このようにして、探針基材1の先端部1aの表面のみに磁性金属層7が成膜された磁性探針11が得られる。この磁性探針11は、主にMFMの探針として用いられる。
上述の第二実施形態のように、ALD法によって探針基材1の表面に磁性金属層7を形成すると、第一実施形態の導電性探針と同様の特徴を有する磁性探針11が得られる。即ち、磁性金属層7の膜厚を極めて均一にすることができ、また、その膜厚を正確に制御することができる。さらに、探針基材1の先端部1aが非常に先鋭(例えば、曲率半径が2nm)であっても、略同じ曲率半径になるように探針基材1の先端部1aに磁性金属層7が成膜され、磁性金属層7の先端部7a、つまり磁性探針11の先端部7aも非常に先鋭にすることが可能である。
また、ALD法による成膜は、スパッタリング法や蒸着法による成膜と比較して、結晶欠陥の少ない膜を成膜することができる。そのため、磁性金属層7は、薄くても十分な磁気特性を有するため、磁性金属層7が厚くなることによる磁性探針11の先端部7aの曲率半径の増大を防ぐことができる。
また、ALD法による成膜は上述の成膜原理から明らかなように、複数の探針基材1に対して同時に磁性金属層7を成膜することが可能であるため、製造コストを低くすることができ、また、同時に製造した複数の磁性探針11間の特性のばらつきも小さくすることができる。
また、ALD法による成膜は、前駆体ガスや反応ガス18の種類等を適切に選択することにより、様々な種類の材料を成膜することが可能である。そのため、磁性金属層7として様々な金属材料を成膜することができる。
さらに、第二実施形態における磁性探針11は、その先端部7aのみに磁性金属層7が成膜されているため、MFMの探針として使用した場合、長距離磁気力を低減させることができる。即ち、磁性探針11の先端部7aから離れた側面部分には磁性金属層は存在しないため、この側面部分と測定試料間に磁気力は発生しない。この長距離磁気力の低減と、上述の先端部7aの先鋭化の両効果により、非常に高分解能で試料表面の磁気特性の測定を行うことができる。なお、長距離磁気力が問題とならない場合には、第一実施形態と同様にマスク材5を形成せずに探針基材1の全面に磁性金属層7を形成しても実施可能である。
その上、磁性金属層7として合金を用いる場合は、ALD法による成膜時にサイクルごとに異なる種類の前駆体ガス15を導入する(即ち、一原子層ずつ異なる種類の原子層を所定の順序で成膜する)、又は複数の種類の前駆体ガス15を同時に導入すればよいため、容易に合金層の成膜を行うことができる。この際、ALD法によってL10型規則相を有する2元系合金を構成する各原子の原子層を所定の順番、即ち一原子層ごとに交互に成膜すれば、L10型規則相の合金を先端部に有する磁性探針を容易に得ることができる。通常のスパッタリング法等で規則化合金を成膜する場合、一般に成膜直後は不規則合金であるため、規則化のための熱処理が必要になる。そのような熱処理を行うと、探針先端部の結晶の粒径が増大し、曲率半径が増加する可能性がある。しかし、ALD法によれば、規則化のための熱処理無しで規則化相の合金を直接成膜可能である。例えば、L10型規則相を有する磁性合金である鉄白金合金は大きな保磁力及び飽和磁化を有する材料であり、MFM用の探針に応用すれば、高性能のMFMが実現される。
本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
例えば、上述の実施形態では、探針基材1とカンチレバー2が一体化した非導電性探針9に対して導電性金属層3や磁性金属層7を成膜しているが、探針基材1のみに上述の方法で導電性金属層3や磁性金属層7を成膜した後に、探針基材1とカンチレバー2を一体化し、導電性探針10や磁性探針11としてもよい。また、探針基材1のみに上述の方法で導電性金属層3や磁性金属層7を成膜した後に、カンチレバーとは接続せずに、STM等のSPMの探針として用いてもよい。特に磁性探針をSTMの探針として用いると、スピン偏極STMとしての測定が可能となる。
また、探針基材1の形状は、上述の各実施形態のように四角錐形状には限られず、他の多角錐形状や円錐形状等、先端が先鋭化している形状であればよい。
また、導電性金属層3の代わりに、導電性酸化物層としてもよい。例えば、WOx(x=2〜3)が挙げられる。
また、磁性金属層7は、磁性酸化物層としてもよい。
また、導電性金属層3や磁性金属層7の代わりに、それぞれ導電性酸化物層や磁性酸化物層を用いる場合、ALD法による成膜工程において、反応ガス18を構成する酸素原子を、導電性酸化物層や磁性酸化物層の一部とすることができる。即ち、例えば反応ガス18として水(水蒸気)や酸素等の酸素原子を含むものを使用し、この反応ガス18を構成する酸素原子が金属原子14と結合することにより、導電性酸化物層や磁性酸化物層が形成されるような反応が起きるように、前駆体ガス15と反応ガス18を選択することができる(図3参照)。
また、本発明に係る製造方法で製造された導電性探針又は磁性探針は、上述のようにSPMの探針として用いる以外に、例えば、電子顕微鏡の電子源、電界放出ディスプレイの電子源等として用いてもよい。
1…探針基材、1a…探針基材の先端部、3…導電性金属層、7…磁性金属層、10…導電性探針、11…磁性探針。
Claims (4)
- 先端部を有する探針基材の表面に、原子層堆積法により導電性材料を成膜する成膜工程を有する導電性探針の製造方法。
- 先端部を有する探針基材の表面に、原子層堆積法により磁性材料を成膜する成膜工程を有する磁性探針の製造方法。
- 前記成膜工程の前に、前記探針基材の表面に、前記探針基材の先端部を露出させるマスク材を形成するマスク工程を有する請求項2に記載の磁性探針の製造方法。
- 前記成膜工程において、複数の種類の原子層を予め定められた積層順で成膜する請求項2又は3に記載の磁性探針の製造方法。
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Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2001035447A (ja) * | 1999-07-15 | 2001-02-09 | Toshiba Lighting & Technology Corp | 高圧放電ランプ、高圧放電ランプ装置および照明装置 |
JP2010122302A (ja) * | 2008-11-17 | 2010-06-03 | Dainippon Printing Co Ltd | フォトマスク等の欠陥修正方法 |
JP2015227506A (ja) * | 2014-05-30 | 2015-12-17 | ジーエム・グローバル・テクノロジー・オペレーションズ・エルエルシー | 白金族金属および早期遷移金属の合金を調製する方法 |
JP2016204756A (ja) * | 2011-11-24 | 2016-12-08 | 三星ディスプレイ株式會社Samsung Display Co.,Ltd. | 蒸着用マスクおよび蒸着用マスクの製造方法 |
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2006
- 2006-12-21 JP JP2006344916A patent/JP2008157686A/ja not_active Withdrawn
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