JP2008155567A - 空気入りタイヤの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】トレッドを加硫速度の異なる複数のゴムコンパウンドをタイヤ幅方向に配置するように構成した未加硫タイヤを、それぞれのゴムコンパウンドを最適加硫度になるようにすることを可能にする空気入りタイヤの製造方法を提供する。
【解決手段】加硫速度が互いに異なる複数のゴムコンパウンドA,Bをタイヤ幅方向に配置したトレッド1を有する未加硫タイヤTを加硫金型で、複数のゴムコンパウンドのうち加硫速度が最も速いゴムコンパウンドBの最適加硫度に達する迄の加硫時間と加硫速度が最も遅いゴムコンパウンドAの最適加硫度に達する迄の加硫時間との間で加硫した後、加硫後のタイヤを冷却しながら後加硫を行う際に、ゴムコンパウンドBに対しては自然放冷よりも冷却速度を促進させ、ゴムコンパウンドAに対しては自然放冷よりも冷却速度を遅延させるように行うことを特徴とする。
【選択図】図2
【解決手段】加硫速度が互いに異なる複数のゴムコンパウンドA,Bをタイヤ幅方向に配置したトレッド1を有する未加硫タイヤTを加硫金型で、複数のゴムコンパウンドのうち加硫速度が最も速いゴムコンパウンドBの最適加硫度に達する迄の加硫時間と加硫速度が最も遅いゴムコンパウンドAの最適加硫度に達する迄の加硫時間との間で加硫した後、加硫後のタイヤを冷却しながら後加硫を行う際に、ゴムコンパウンドBに対しては自然放冷よりも冷却速度を促進させ、ゴムコンパウンドAに対しては自然放冷よりも冷却速度を遅延させるように行うことを特徴とする。
【選択図】図2
Description
本発明は、空気入りタイヤの製造方法に関し、さらに詳しくは、トレッドのタイヤ幅方向に加硫速度の異なる複数のゴムコンパウンドを配置して構成した未加硫タイヤを加硫する際に、各ゴムコンパウンドを最適加硫度になるようにする空気入りタイヤの製造方法に関する。
一般に、空気入りタイヤのトレッドの特性は、タイヤ性能に大きな影響を与え、転がり抵抗と湿潤路面の摩擦抵抗との関係や操縦安定性と低騒音性との関係など相反する特性を両立させることが困難な場合が多い。従来、この両立のために、トレッドを特性が異なる複数のゴムコンパウンドをタイヤ幅方向に配置するように組み合わせた多色トレッドの空気入りタイヤが提案がされている。
しかし、このように特性が異なる複数のゴムコンパウンドを組み合わせる場合には、一般にそれぞれのゴムコンパウンドの加硫速度が異なるため、加硫金型で同一条件で加硫を行う限り、全てのゴムコンパウンドが最適加硫度になるように加硫することは不可能である。すなわち、一般に加硫速度の速い側のゴムコンパウンドが過加硫にならないように加硫条件が設定されるため、加硫速度の遅い側のゴムコンパウンドが加硫不足に陥りやすいという問題があった。
一方、トレッドを単一のゴムコンパウンドで構成する場合については、加硫金型内の温度差に起因するタイヤ加硫度の差の発生を改善するため、加硫終了後のタイヤをインフレート状態で冷却させる後加硫工程において、加硫度差に応じて異なる量の冷却用気体を吹き付けて加硫度を均一にすることが提案されている(例えば、特許文献1)。しかし、この方法を多色トレッドを有する空気入りタイヤに単に適用しても加硫速度の異なるゴムコンパウンドのすべてをそれぞれ最適加硫度にすることはできない。
特開2006−205576号公報
本発明の目的は、トレッドを加硫速度の異なる複数のゴムコンパウンドをタイヤ幅方向に配置するように構成した未加硫タイヤを、それぞれのゴムコンパウンドを最適加硫度になるようにすることを可能にする空気入りタイヤの製造方法を提供することにある。
上記目的を達成するための本発明の空気入りタイヤの製造方法は、加硫速度が互いに異なる複数のゴムコンパウンドをタイヤ幅方向に配置したトレッドを有する未加硫タイヤを加硫金型で加硫した後、加硫後のタイヤを冷却しながら後加硫を行う空気入りタイヤの製造方法において、前記加硫金型の加硫を、前記複数のゴムコンパウンドのうち加硫速度が最も速いゴムコンパウンド(B)の最適加硫度に達する迄の加硫時間と加硫速度が最も遅いゴムコンパウンド(A)の最適加硫度に達する迄の加硫時間との間で行い、前記後加硫における冷却を、前記ゴムコンパウンド(B)に対しては自然放冷よりも冷却速度を促進させ、前記ゴムコンパウンド(A)に対しては自然放冷よりも冷却速度を遅延させるように行うことを特徴とする。
ここで、前記後加硫における冷却は、前記加硫金型の加硫温度以下に設定された冷却気体の吹き付けにより行うか、或いは前記加硫金型の加硫温度以下に設定されたヒータの接触又は近接により行うことが好ましい。
本発明によれば、トレッドを加硫速度が互いに異なる複数のゴムコンパウンドをタイヤ幅方向に配置して構成した未加硫タイヤの加硫金型での加硫時間を、複数のゴムコンパウンドのうち加硫速度が最も速いゴムコンパウンド(B)の最適加硫度に達する迄の加硫時間と加硫速度が最も遅いゴムコンパウンド(A)の最適加硫度に達する迄の加硫時間との間に設定して行うため、加硫終了後のタイヤは、ゴムコンパウンド(B)は最適加硫度に達しているのに対して、ゴムコンパウンド(A)は最適加硫度に達していない状態にある。次に、このタイヤを冷却しながら後加硫するとき、ゴムコンパウンド(B)に対しては自然放冷よりも冷却速度を促進させ後加硫の進行を抑制すると共に、ゴムコンパウンド(A)に対しては自然放冷よりも冷却速度を遅延させ後加硫を促進することにより、ゴムコンパウンド(A)及び(B)を両方とも最適加硫度にすることができる。
図1は、本発明の製造方法により製造する空気入りタイヤの一例を示す断面図である。
図1において、空気入りタイヤは、トレッド1、サイドウォール部2及びビード部3からなり、これらの内側にカーカス層5が挿入され、その両端部が左右一対のビードコア4,4間にそれぞれタイヤ内側から外側に巻き上げられている。カーカス層5の外周側には、ベルト層6がタイヤ1周にわたって配置され、さらにベルト層6の外側に、ベルトカバー7,7′が配置されている。
上記トレッド1は、タイヤセンターの左右に加硫速度が異なるゴムコンパウンドA,Bを配置して構成されている。例えば、加硫速度が異なるゴムコンパウンドとしてゴム硬度が異なる2種類を設定する場合は、車両装着時の外側に位置するゴムコンパウンドの硬度を内側のゴムコンパウンドよりも大きくすることで操縦安定性と低騒音性とを両立させることができる。加硫速度が異なるゴムコンパウンドの組み合わせは、このようにタイヤ幅方向に二分割して2種類のゴムコンパウンドを配列するほか、タイヤ幅方向に三つ以上に分割して2種類又は3種類以上のゴムコンパウンドを配置して構成してもよい。
本発明の製造方法は、このようにタイヤ幅方向に加硫速度の異なる複数のゴムコンパウンドを組み合わせたトレッドを持つ空気入りタイヤを製造するに当たり、未加硫タイヤの加硫金型による加硫時間を、複数のゴムコンパウンドのうち加硫速度が最も速いゴムコンパウンドBの最適加硫度に達する迄の加硫時間以上、加硫速度が最も遅いゴムコンパウンドAの最適加硫度に達する迄の加硫時間以下に設定する。このように加硫時間を設定することにより加硫速度が速いゴムコンパウンドBが過加硫になるのを防ぐことができる。
本発明において、それぞれのゴムコンパウンドが最適加硫度になる加硫時間とは、JIS K6300−2「振動式加硫試験機による加硫特性の求め方」に準拠して求められる加硫時間tc(95)以上tc(max)以下の時間である。加硫時間tc(max)とは、レオメータとしてロータレス加硫試験機を使用し、試験温度160℃の条件でトルクを縦軸にし加硫時間を横軸にした加硫曲線において、試験開始からトルクが最大値MHとなる迄の加硫時間であり、加硫時間tc(95)とは、試験開始からトルクがML+95%MEとなる迄の加硫時間である。ここで、MLはトルクの最小値、MEはMLとMHとの差(ME=MH−ML)である。また、加硫時間の経過によりトルクが上がり続けて明確な最大値MHを示さないゴムコンパウンドの場合には、前記規格に「加硫曲線の傾きが安定した領域での特定時間における値を最大値とする」と規定されているため、本発明では特定時間を60分とし、そのときのトルクを最大値MHとする。
加硫金型から取り出した加硫終了後のタイヤは、加硫速度が速いゴムコンパウンドBが最適加硫度に達している一方、加硫速度が遅いゴムコンパウンドAは最適加硫度に達していないため加硫不足の状態にある。このため、本発明は加硫終了後のタイヤを冷却するとき、ゴムコンパウンドA,Bの冷却速度を積極的に制御することにより、最適加硫度に達したゴムコンパウンドBに対しては、自然放冷よりも後加硫を抑制し、加硫が足りないゴムコンパウンドAに対しては、自然放冷よりも後加硫を促進させるようにする。
ここで自然放冷とは、加硫終了後のタイヤを冷却するとき、特別の冷却手段を使用することなく常温の大気中に放置したまま自然冷却させることをいう。加硫終了後のタイヤの冷却速度を制御する手段としては、加硫金型の加硫に使用した加硫温度以下に設定された空気などの冷却気体を吹き付ける方法とか、或いは加硫温度以下に設定されたヒータを接触又は近接させて加温する方法などを採用することができる。冷却気体やヒータの設定温度としては、加硫温度以下であれば特に限定されないが、下限は0℃が好ましい。更に好ましくは30℃以上、特に好ましくは40℃以上にするとよい。
加硫終了後のタイヤを冷却処理するときのタイヤは、カーカスコードに熱収縮性の有機繊維コードが使用されている乗用車用などのタイヤでは、ポストキュアインフレータ(PCI装置)にセットしてインフレートした状態で行い、また、スチールコードなどの熱収縮性でないコードが使用されている重荷重用などのタイヤでは、インフレートさせることなく横置きした状態で行えばよい。
図2は、本発明におけるPCI装置を用いた場合の一例を示す説明図である。
図2において、PCI装置は、加硫終了直後の空気入りタイヤTをビード部3を介して装着するための上下一対のシートリング11,12を備えている。下側のシートリング12は、下部側に立設された支柱13の上端に固定され、上側のシートリング11は、昇降可能な支柱14の下端に固設されている。支柱13内には、気体の供給路16と排出路17が設けられ、シートリング11,12に取り付けた空気入りタイヤTの空洞部15内に空気を供給してインフレートさせるようになっている。
シートリング11,12に装着された空気入りタイヤTの上下両側には、それぞれ上側冷却手段21及び下側冷却手段22として、空気入りタイヤTの外周を一周にわたり取り囲む環状パイプ23,26が設けられ、それぞれ冷却気体の供給源24,27に連結されている。また、環状パイプ23,26の内周側には周方向に沿って複数のノズル25,28が間欠的に設けられ、これらのノズル25,28から冷却気体が空気入りタイヤTのトレッド1に向けて吹き付けられる。
上側冷却手段21及び下側冷却手段22から吹き付ける冷却気体は、空気入りタイヤTのトレッド1を形成する左右のゴムコンパウンドA,Bの加硫速度特性に応じて異なった温度になっている。すなわち、ゴムコンパウンドAが加硫速度が遅い側で、ゴムコンパウンドBが加硫速度が速い側であるとすると、ゴムコンパウンドAに吹き付ける冷却気体の温度はゴムコンパウンドAが自然放冷される場合よりも冷却速度を遅延させる温度に設定され、逆にコンパウンドBに吹き付ける冷却気体の温度はゴムコンパウンドBが自然放冷される場合よりも冷却速度を促進させる温度に設定される。
上述した後加硫の冷却処理により、加硫金型から取り出したときに加硫が足りない状態のゴムコンパウンドAは、後加硫が促進して最適加硫度に達する。一方、既に最適加硫度に達しているゴムコンパウンドBは、後加硫の進行が停滞して過加硫になるのを防ぐことができる。
トレッドのタイヤ幅方向に配置するゴムコンパウンドの種類が3以上の場合には、その数に応じて冷却手段を配置し、それぞれのゴムコンパウンドの加硫速度に従って、加硫速度の速いものは後加硫の進行を抑制し、加硫速度の遅いものは後加硫を促進するように順次冷却速度を制御するようにすればよい。
本発明において、トレッドを構成するゴムコンパウンドA,Bは、タイヤトレッドに用いる一般的なゴムコンパウンドを適用することができる。また、必要に応じてカーボンブラック、各種樹脂、加硫又は架橋剤、加硫又は架橋促進剤、各種オイル、老化防止剤、可塑剤、その他タイヤゴム用に一般的に配合可能な各種添加剤を配合することができる。
以下に、実施例を挙げて本発明を説明するが、これにより本発明の範囲が制限を受けるものではない。
図1のタイヤ構造でタイヤサイズが235/45R17の空気入りタイヤの左右のトレッドを2種類のゴムコンパウンドA,Bで構成し、加硫機金型温度180℃で10分間加硫した後、図2のPCI装置で後加硫することを共通条件にし、後加硫の条件を表1に示すように異ならせた4種類の空気入りタイヤ(実施例1〜3、従来例)を作製した。
得られた空気入りタイヤを24時間静置した後、それぞれ左右のゴムコンパウンドA,Bを切出し、下記の方法により加硫度、硬度及びモジュラスを測定した。
加硫度
各ゴムコンパウンドの加硫度は、それぞれの加硫機金型の加硫条件とPCI装置による後加硫条件とから、事前に求めておいたアレニウス式に基いて算出した。得られた結果を図3における加硫時間[分]に換算し、その結果を表1に示す。
各ゴムコンパウンドの加硫度は、それぞれの加硫機金型の加硫条件とPCI装置による後加硫条件とから、事前に求めておいたアレニウス式に基いて算出した。得られた結果を図3における加硫時間[分]に換算し、その結果を表1に示す。
図3は、表1における2種類のゴムコンパウンドA,Bに対してJIS K6300−2に準拠して求めた160℃における加硫曲線である。これより、ゴムコンパウンドAの加硫時間tc(95)は20分、tc(max)は35分であり、ゴムコンパウンドAが最適加硫度になる加硫時間は20〜35分である。一方、ゴムコンパウンドBの加硫時間tc(95)は9分、tc(max)は15分であり、ゴムコンパウンドBが最適加硫度になる加硫時間は9〜15分である。
硬度
各ゴムコンパウンドの硬度は、JIS K6253に準拠しデュロメータのタイプAにより温度25℃で測定した。得られた結果を、ゴムコンパウンドA,Bの硬度の目標値をそれぞれ100にしたときの指数で表し、その結果を表1に示す。この値が高いほど、硬度が高いことを表す。
各ゴムコンパウンドの硬度は、JIS K6253に準拠しデュロメータのタイプAにより温度25℃で測定した。得られた結果を、ゴムコンパウンドA,Bの硬度の目標値をそれぞれ100にしたときの指数で表し、その結果を表1に示す。この値が高いほど、硬度が高いことを表す。
モジュラス
各ゴムコンパウンドのモジュラスは、JIS K6251に準拠して300%モジュラスを測定した。得られた結果を、ゴムコンパウンドA,Bのモジュラスの目標値をそれぞれ100にしたときの指数で表し、その結果を表1に示す。この値が高いほど、モジュラスが高いことを表す。
各ゴムコンパウンドのモジュラスは、JIS K6251に準拠して300%モジュラスを測定した。得られた結果を、ゴムコンパウンドA,Bのモジュラスの目標値をそれぞれ100にしたときの指数で表し、その結果を表1に示す。この値が高いほど、モジュラスが高いことを表す。
表1より、実施例1〜3により製造された空気入りタイヤは、ゴムコンパウンドA,Bの最適加硫度をtc(95)とすると、前者は20、後者は9であるから、ゴムコンパウンドA,Bは共にほぼ最適加硫度に近い値に加硫され、それぞれの目標物性をほぼ達成することを確認した。これに対し従来例のゴムコンパウンドA,Bを自然放冷により冷却した空気入りタイヤはゴムコンパウンドAが最適加硫度に達していないため硬度、モジュラスが共に所期の目標値を大幅に下回る物性であった。
また、図4は、PCI装置を使用した後加硫の過程において、実施例1の空気入りタイヤの左右のショルダーのゴムコンパウンドA,Bの温度変化を測定したグラフである。コンパウンドAの温度は、加硫金型の加硫温度に近い温度に維持され後加硫が行われ、コンパウンドBの温度は、急速に低下し後加硫を抑制することが認められた。
1 トレッド
A,B ゴムコンパウンド
T 空気入りタイヤ
A,B ゴムコンパウンド
T 空気入りタイヤ
Claims (3)
- 加硫速度が互いに異なる複数のゴムコンパウンドをタイヤ幅方向に配置したトレッドを有する未加硫タイヤを加硫金型で加硫した後、加硫後のタイヤを冷却しながら後加硫を行う空気入りタイヤの製造方法において、
前記加硫金型の加硫を、前記複数のゴムコンパウンドのうち加硫速度が最も速いゴムコンパウンド(B)の最適加硫度に達する迄の加硫時間と加硫速度が最も遅いゴムコンパウンド(A)の最適加硫度に達する迄の加硫時間との間で行い、前記後加硫における冷却を、前記ゴムコンパウンド(B)に対しては自然放冷よりも冷却速度を促進させ、前記ゴムコンパウンド(A)に対しては自然放冷よりも冷却速度を遅延させるように行う空気入りタイヤの製造方法。 - 前記後加硫における冷却を、前記加硫金型の加硫温度以下に設定された冷却気体の吹き付けにより行う請求項1に記載の空気入りタイヤの製造方法。
- 前記後加硫における冷却を、前記加硫金型の加硫温度以下に設定されたヒータの接触又は近接により行う請求項1に記載の空気入りタイヤの製造方法。
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