以下、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図2は、流路内の気流が層流速度分布の場合に粒子が凝集する様子を模式的に示す図である。
図2に示すように、流路1内には矢印の方向に気体Pが流入する。流路1内の気流Qが層流である場合、流路1の壁2の内面の摩擦と内部を流通する気体の粘性の影響で、気流Q内に速度差が生じ、境界層の速度勾配4が発達する。気体Pとともに流路1内に流入した塵埃5aと、塵埃5aよりも遅れて流路1内に流入した塵埃5bは、気流Q内に生じた速度差によって、塵埃5aと塵埃5bが二点鎖線で示すように近付いて、粒子同士が接触し、凝集する。
流路1内の流れが乱流である場合には、乱流の不均一な速度分布に加えて、乱流速度の時間的変動に対する粒子の追従性が粒子の慣性力により異なるために粒子が凝集する。乱流の不均一な速度分布は、層流の場合と同様の現象が部分的に起きることによって生じているものと考えられる。
いずれの場合においても、塵埃中の粒子どうしの接触確率増大のメカニズムにおいては、流れのせん断が支配的であるため、気流に速度分布を積極的に与えることで粒子同士の凝集を促進させることができる。
しかしながら、流路の流れが層流である場合、粒子径の大きさによって、速度分布が粒子に及ぼす力の大きさと向きとが異なる。そのため、流路内には様々な大きさの粒子が均一に分布せず、粒子の径によって分布に偏りができる。このような流路中での粒子径分布は、粒子どうしの接触確率に影響を及ぼす。このことを以下に説明する。
図3は、流路内の気流が層流速度分布の場合に、径の大きい粒子が速度勾配より受ける影響を示した模式図である。
図3に示すように、流路1の中央部付近では気流Qの速度が大きいため、粒子5に生じる抗力も大きい。一方、流路1の壁2に近付くほど気流Qの速度が小さくなるため、粒子5に生じる抗力も小さい。流路1内に気体Pとともに流入した塵埃中の粒子5の径が大きい場合、粒子5は流路1内に生成された速度勾配4の影響を強く受ける。すなわち、粒子5の中央部側に働く抗力が大きく、粒子5の壁側に働く抗力が小さいため、粒子5において中央部と壁側に生じる抗力の差によって、粒子5には、流路1の中央から壁面方向に向かう回転力が加わる。その結果、粒子5が方向Vの向き、すなわち、流路1の壁2の方向に移動する。その結果、流路1の壁2側には径の大きい粒子が集まる。
図4は、流路内の気流が層流速度分布の場合に、径の小さい粒子が速度勾配より受ける影響を示した模式図である。
図4に示すように、粒子5の径が小さい場合、粒子5の周囲の気流Qには速度の差があまりない。そのため、粒子5に働く流路1内に生成された速度勾配4の影響が弱く、粒子5は、流路1に流入した時の位置を大きく変えずに、方向Vの向きにそのまま直進する。そのため、流路1の中央部には、相対的に径の小さい粒子が集まる。
その結果、流路1の中央部における径の小さい粒子同士が接触する確率は低くなる。さらに、流路1の中央部には径の小さい粒子、流路1の壁2の付近には径の大きい粒子、というように、径の異なる粒子がそれぞれ分離しているため、表面積の大きい径の大きい粒子に径の小さい粒子が接触する確率も低くなり、全体的に粒子同士の接触確率が低下する。
以上のことから、粒子どうしの凝集効率向上のためには、以下の3点が重要であるといえる。
(1)乱流速度場を形成する。
(2)速度分布を積極的に与える。
(3)粒子径の分布を均一にする。
これらを全て同時に満足するためには、気流に乱れを発生させる手段、すなわち渦発生手段を流路内に設けることが考えられる。
一方、粒子どうしが衝突すると、衝突した粒子は、粒子間に生じる力により凝集するものと考えられる。この力は一般的に粒子間距離の累乗に反比例するため、粒子間の距離が小さくなるとその値は非常に大きくなるものと考えられる。そのため一度接触した粒子の凝集を分散するためには粒子の衝突時に生じた力以上の外力が必要となるものと考えられるため、凝集状態を保持し続けるものと考えられる。
さらに、上記の力は、粒子が巨大化するほど、より大きな引力として働くため、径の大きい粒子と接触した径の小さい粒子の分散はさらに生じにくい。
また、粒子どうしの凝集が生じると、見かけ上、径の大きな粒子が増加するため、さらに粒子同士の接触確率が増加する。
このような考察に基づいて、以下に本発明の実施形態を説明する。
(第1実施形態)
図5は、この発明の一つの実施の形態として、塵埃凝集路の全体を示す図である。
図5に示すように、塵埃凝集路200は、流路201と、壁202と、帯電部210と、渦発生手段として突起203と、フィルタ204を備える。流路201は、円筒状の壁202によって形成されている。塵埃(微細粒子)220を含む空気その他の流体は、図示しない駆動源(例えば、ファンやブロアなど)の駆動によって流路201内を流通する。帯電部210は、流路201を流通する気体に含まれる塵埃220を正に帯電する電極として第1帯電部211aと、流路を流通する気体に含まれる塵埃を負に帯電する電極として第2帯電部211bとを含み、第1帯電部211aと第2帯電部211bとが対向するように配置されている。第1帯電部211aと第2帯電部211bは、それぞれ電源212に接続されている。塵埃凝集路200においては、流路201の上流側に帯電部210が配置され、下流側に突起203が配置され、流路201の下流端にフィルタ204が配置されている。
渦発生手段としては、後述する実施形態A〜実施形態Cのいずれかの旋回部もしくは実施形態D〜実施形態Kのいずれかの突起が適用される。
帯電部210は、コロナ放電等により、第1帯電部211aと第2帯電部211bにおいて電極間にかかる電位差によって電極間に存在する気体に絶縁破壊を生じて電子を放出し、電子を付近の空気分子と衝突させることで正の空気イオン213および負の空気イオン214を生成する。流路201中に正の空気イオン213および負の空気イオン214を充満させることで、流入してきた塵埃220と衝突させ、塵埃220を帯電させることができる。そのため、効率よく塵埃塊(クラスタ)を形成させるためには、塵埃220と衝突させる前の空気イオン(213,214)同士の衝突を避け、できるだけ多くの空気イオン(213,214)を塵埃220と衝突させることが必要である。空気イオン(213,214)同士の衝突を避けるためには、帯電部210における気流は層流状態が理想的であるため、帯電部210は、突起203の上流側に配置することが望ましい。
従って、塵埃凝集路200においては、帯電部200は流路201の上流側に配置され、突起203は流路201の下流側に配置されている。このようにすることにより、効率よく塵埃塊(クラスタ)を形成させることができる。
帯電部210を突起203の下流側に配置する場合、突起203により生成される渦230に、正の空気イオン213および負の空気イオン214が取り込まれ、塵埃220に衝突する以前に空気イオン同士が衝突し電荷を失う確率が高くなるため、相対的に空気イオン(213,214)の存在数が減少し、塵埃220を帯電させる効率が低下する。
また、壁202面または突起203の材質が、塵埃220を正および負に帯電できる機能材料で形成されている場合、塵埃220は壁202面または突起203との接触により帯電されるため、接触回数を増加させることが必要となり、気流は乱流状態が理想的となる。そのため、塵埃220を接触帯電させる場合は、突起203の下流側を機能材料で形成することが望ましい。
このようにすることにより、塵埃凝集路200に流入する気体は、以下の段階を経ながら塵埃凝集路200を通過する。すなわち、塵埃220が気流によって流路201内に導かれる段階と、塵埃220が直進する気流によって流路201内部を搬送される段階と、塵埃220が流路201の壁202面に沿って流通する段階と、塵埃220が帯電部210により帯電される段階と、塵埃220が突起203の下流に生ずる渦230流に巻き込まれて流通する段階と、複数の塵埃220が渦230流により互いに衝突する段階と、衝突した複数の塵埃220が塵埃塊(クラスタ)を形成する段階と、塵埃塊が気流によって流路201内部を搬送される段階とを順次経る。
このとき、第1帯電部211aおよび第2帯電部211bを流通する気流は、以下に示すように制御される。すなわち、塵埃220が気流によって流路201内部を搬送されるときに、塵埃220を帯電させたのち、塵埃220同士を衝突させる気流制御を行うとともに、衝突した複数の塵埃220が塵埃塊(クラスタ)を形成させる期間が設けられている。
このようにすることにより、第1帯電部211aで正に帯電された塵埃と、第1帯電部211aで帯電していない塵埃との衝突が促進される。それらの塵埃が衝突すると、前者の塵埃の電荷により後者の塵埃の表面に誘電分極が生じ、静電気力により前者の塵埃と後者の塵埃との間に強い結合力が生ずる。この結合力により、複数の塵埃が凝集した第1の塵埃塊が生ずる。第1の塵埃塊は、全体として正に帯電している。また、第1の塵埃塊と同様のメカニズムにより、第2帯電部211bにより全体として負に帯電している第2の塵埃塊が生ずる。
そして、さらに、第1帯電部211aにより生成した正に帯電されている第1の塵埃塊と、第2帯電部211bにより生成した負に帯電されている第2の塵埃塊とを衝突させるように気流制御を行うとともに、衝突した第1の塵埃塊と第2の塵埃塊が静電気力により結合してさらに大きな塵埃塊(大クラスタ)を形成させる期間が設けられている。
このように気流制御を行うことにより、全体として正に帯電している第1の塵埃塊と、全体として負に帯電している第2の塵埃塊との衝突が促進される。
第1の塵埃塊と第2の塵埃塊とが衝突すると、前者の塵埃塊のもつ正の電荷と、後者の塵埃塊のもつ負の電荷とから生ずる強い静電気力により前者の塵埃塊と後者の塵埃塊との間にさらに強い結合力が生ずる。この結合力により複数の塵埃塊がさらに凝集した大塵埃塊が生ずる。
このような気流制御を行うことにより、微細な塵埃が衝突により凝集を繰り返し、大きな塵埃塊(大クラスタ)となる。
このように、塵埃凝集路200は、気体が流通する流路201と、流路201を形成する壁202と、流路201を流れる気体中に渦を発生させる突起203と、流路201を流れる気体中に含まれる塵埃220を正と負に帯電するための帯電部210を備え、帯電部210は、電源212に接続される、流路201を流れる気体中に含まれる塵埃220を正に帯電するための第1帯電部211aと流路201を流れる気体中に含まれる塵埃220を負に帯電するための第2帯電部211bを含み、突起203は、壁202付近の気体の流れに不均一な速度分布を与えるように、壁202の内面に配置されている。
流路201内に流入した気体は、流路201の壁202に配置されている突起203によって、壁202付近の気体の流れに不均一な速度分布を与えるように、渦230を形成する。これにより、気体中に含まれる塵埃220は、互いに衝突し、凝集して塵埃塊(クラスタ)を形成する。
本発明においては、効果的に渦230を形成するため、剥離が生ずる部分だけでなく、剥離が消失した部分にも突起203を形成する。
また、塵埃220を正と負に帯電させる帯電部210により、塵埃220が気流によって流路201を搬送されるとき、塵埃220が帯電され、正もしくは負に帯電された塵埃に塵埃塊(クラスタ)を形成させることができる。これにより正もしくは負に帯電した塵埃を静電気作用で相互に吸着させることにより、塵埃塊(クラスタ)を形成させることができる。
このようにすることにより、簡単な構造で、塵埃中の粒子どうしの衝突回数を増加させて凝集を促し、粒子数を低減させるとともに見かけ上の粒子径を大きくすることが可能な塵埃凝集路200を提供することができる。
以上のように、本発明は、微粒子を凝集する機構に関するものである。本機構を利用して微粒子の捕集効率を向上させる事が可能となるため、本発明の塵埃凝集路を掃除機、空気清浄機、空気調和機等へ適用することができる。
本発明の塵埃凝集路の渦発生手段の具体的な形態としては、以下の実施形態Aから実施形態Kの渦発生手段を適用する。実施形態Aから実施形態Kの塵埃凝集路は、第1実施形態と同様の帯電部を備える。実施形態Aから実施形態Kにおいては、塵埃凝集路のうち、渦発生手段が配置されている部分について述べる。
(実施形態A)
図6は、この発明の実施形態Aの塵埃凝集路を示す図である。
図6に示すように、塵埃凝集路10は、流路11と、壁12と、渦発生手段として旋回部13とを備える。流路11は、円筒状の壁12によって形成されている。被凝集粒子(塵埃その他の微細粒子)を含む空気その他の流体は、図示しない駆動源(例えば、ファンやブロアなど)の駆動によって流路11内を流通する。
図7は、この発明の実施形態Aの塵埃凝集路の正面を示す図である。
図6と図7に示すように、旋回部13は、旋回部13の壁部として、面13a、面13b、面13c、面13dの4つの面を含む。面13a、面13b、面13c、面13dは、流路1の上流側から見て反時計回りに、90°ずつ間隔を開けて配置されている。それぞれの面は、壁12の内面から垂直に形成されて、流路11の中心で互いに接続されており、正面から見た旋回部13は十字型である。旋回部13の隣り合う二つの面と、壁12の内面とで区切られた空間が流路11を形成している。
旋回部13のそれぞれの面(13a、13b、13c、13d)は、十字形状断面のねじれ角が流れの上流から下流に向かって徐々に大きくなるように構成されている。
また、旋回部13の流れ方向に垂直な面における流路幅の代表長さ(正方形流路の場合は流路の一辺の長さ、円形流路の場合は流路の直径)をDとすると、十字形状断面のねじれ角は、流れ方向に距離Dだけ進む間に、進行方向に時計回りに1/4回転(90°回転)する。この実施形態においては、気流の旋回方向は上流側から見て時計回りになるが、気流の旋回方向は時計回りと反時計回りのどちらになってもよい。
図8は、この発明の実施形態Aの塵埃凝集路の側断面を示す図である。気体は図の左側から流路内に流入する。
図8に示すように、流路11に沿った方向については、流路11は、流入部X、助走区間Y、旋回区間Zの3つの区間を有する。また、旋回部13の流れ方向の長さは2D(流路幅の代表長さの2倍)に設定されている。
流路11内に流入した気体は、まず、流入部Xを通過する。流入部Xは、抵抗が少ない状態で気流を旋回部13に流入させるための区間である。次に、気体は、助走区間Yを通過する。
助走区間Yは、旋回部13に流入した気流が、壁12と面(13a、13b、13c、13d)に安定して付着し、急激な変化を抑制するための区間である。その後、気体は、旋回区間Zを通過する。旋回区間Zは、気流にせん断力を加えるための区間である。旋回区間Zの十字形状断面のねじれ角は流れの上流から下流に向かって徐々に大きくなっている。気体が壁12に近づくほど移動距離が大きくなるため、加えられる旋回力が大きくなる。
図9は、本発明の実施形態Aの旋回部により発生する渦の様子を模式的に示した図である。図9(A)は、流路を正面から見た図であり、図9(B)は、流路を側面から見たときの図である。
図9に示すように、旋回部13に流入した気体Pは、旋回区間Zの形状に沿って流路11の内部全体を矢印の方向に、二点鎖線で示すように旋回するように進む。
このように、旋回区間Zに流入した粒子は、常に流れのせん断力を加え続けられるため、下流に生じる渦の強度を最大にすることができる。流路11内の気体に含まれる粒子の衝突確率は、流れのせん断力の影響を大きく受けるため、このように常に流れのせん断力を加え続けて、下流に生じる渦の強度を最大にすることによって、効果的に粒子同士の接触確率を増加することができる。さらに、壁12の付近ではより大きな速度勾配が形成されるため、壁12の付近では粒子同士の衝突確率が最も高い。
実施形態Aの旋回部13によると、旋回区間Zにより流路11内の径方向全体に大きく旋回する渦を形成することができる。そのため、流路11の中心部を流れる粒子に遠心力を加えることができるため、粒子を壁12側に拡散することが可能となり、流路11の中央部と壁12の付近に分離している異なる径の粒子を混合することができる。
このようにして、表面積の大きい粒子に小さい粒子を衝突させることが可能となり、飛躍的に粒子同士の接触確率を増加することができる。
このようにすることにより、流路11内を流通する気体と気体中に含まれる塵埃は、塵埃が気流によって流路11内に導かれる段階と、塵埃が直進する気流によって流路11内部を搬送される段階(流入部X)と、塵埃が流路11の壁12に沿って流通する段階(助走区間Y)と、塵埃が流路11の壁12から突出した旋回部13に衝突する段階(旋回区間Z)と、塵埃が旋回部13の下流に生ずる渦流に巻き込まれて流通する段階(旋回区間Z)と、塵埃が渦流により複数回にわたって流路の壁面に衝突する段階(旋回区間Z)と、複数の塵埃が渦流により互いに衝突する段階(旋回区間Z内の下流部分)と、衝突した複数の塵埃が塵埃塊(クラスタ)を形成する段階(旋回区間Z内の下流部分)と、塵埃塊が気流によって流路内部を搬送される段階(旋回区間Zと旋回区間Zよりも下流)と、を順次経る。
このように、塵埃凝集路10は、気体が流通する流路11と、流路11を形成する壁12と、流路11を流れる気体中に渦を発生させる渦発生手段とを備え、渦発生手段は壁12の内面に配置されて、渦発生手段は、流路11内の気体の流れを旋回させるように壁12の内面から流路11内に突出した壁部を有する旋回部13を含むことによって、簡単な構造で、塵埃中の粒子の衝突回数を増加させて凝集を促し、粒子数を低減させるとともに見かけ上の粒子径を大きくすることが可能な塵埃凝集路を提供することができる。
また、本実施形態の乱れ発生部を、別の観点から捉えると、流路11の内部を面(13a、13b、13c、13d)で分割することによって、見かけ上、面によって区分された別個の小流路が形成され、それぞれの小流路が互いに最短の距離で配置されているように考えられる。言い換えれば、複数の小流路が一本に束ねられて形成されている。
このように、塵埃凝集路10においては、面は、複数の面(13a、13b、13c、13d)から形成され、複数の面(13a、13b、13c、13d)によって、流路11が複数の独立した小流路に分割されて、小流路は、気体の流れを旋回させるように気体の流れに沿ってねじられて形成されている。
このようにすることにより、流路を小流路に分割しない場合と比べると、気体が壁面から受けるせん断力の影響が大きくなり、塵埃の凝集力を高めることが可能である。また、それぞれの小流路で形成された旋回流どうしが小流路終端部の下流側で衝突し、その結果、旋回流の中に取り込まれている粒子どうしを効率よく衝突させることができる。
また、塵埃凝集路10においては、小流路のねじり角は、上流側で小さく、下流側に進むにつれて次第に増大する。
このようにすることにより、気体の旋回力を大きくすることができる。
流路11を分割する方法としては、本実施形態においては平板四枚を直角に配置し、流路11に沿ってねじることで壁部を形成したが、この方法に限定されるものではなく、例えば平板の枚数を増やして壁部が格子状となるような流路を形成したり、円形の断面を有する小流路の集合体、ハニカム構造、コルゲート等、用途により適切な形状を選択することができる。
(実施形態B)
図10は、この発明の実施形態Bとして、塵埃凝集路の要部を示す斜視図である。
図10に示すように、塵埃凝集路20は、流路21と、壁22と、渦発生手段として旋回部23とを備える。流路21は、円筒状の壁22によって形成されている。
図11は、この発明の実施形態Bの塵埃凝集路の正面を示す図である。
図10と図11に示すように、旋回部23は、旋回部23の壁部として、面23a、面23b、面23c、面23dの4つの面を含む。面23a、面23b、面23c、面23dは、流路21の上流側から見て反時計回りに、90°ずつ間隔を開けて配置されている。それぞれの面は、壁22の内面から垂直に形成されて、流路21の中心で互いに接続されて、正面から見ると十字型である。隣り合う二つの面と、壁22の内面とで区切られた空間が流路21を形成している。
図12は、この発明の実施形態Bの塵埃凝集路の側断面を示す図である。気体は図の左側から流路内に流入する。
図12に示すように、旋回部23のそれぞれの面(23a、23b、23c、23d)は、十字形状断面のねじれ角が流れの上流から下流に向かって不変であるように構成されている。
また、旋回部23の流れ方向に垂直な面における流路幅の代表長さ(正方形流路の場合は流路の一辺の長さ、円形流路の場合は流路の直径)を距離Dとすると、十字形状断面のねじれ角は、流れ方向に距離Dだけ進む間に、進行方向に時計回りに1/4回転(90°回転)する。この実施形態においては、気流の旋回方向は上流側から見て時計回りになるが、気流の旋回方向は時計回りと反時計回りのどちらになってもよい。
実施形態Bの旋回部23においては、実施形態Aと同様に、旋回部23に流入した気流は旋回部23の形状に沿って流路内全体を旋回するように進む。旋回部23においては、実施形態Aの旋回部13に比べ、乱れ発生部の下流に生じる渦の強さは小さくなるものの、圧力損失は大幅に低下する。
従って、旋回部23の内部を流通する流れを発生させる駆動源(例えば、ファンやブロアなど)の出力や静圧上昇が小さい場合、駆動源が圧力損失に弱い場合などには、塵埃凝集路20を用いることによって、実施形態Aの塵埃凝集路10を用いる場合に比べて、塵埃凝集路20と駆動源を含めたシステム全体のパフォーマンスを向上させることができる。
また、近年の低消費電力化の促進により、電気掃除機などにおいて消費電力を低減しつつ風量を維持させる必要があるため、流路におけるロスは最小にすることが求められている。本発明の実施形態Bの塵埃凝集路20を電気掃除機の延長管などに用いることによって、風量を維持しながら、延長管の内部で塵埃を効率よく凝集させて、低消費電力で塵埃の捕集効率のよい電気掃除機を提供することが可能である。
流路21の内部を流通する流れが旋回部23によってねじられる、すなわち旋回部23が流れに旋回を付与する際、塵埃凝集路20においては、十字形状断面のねじれ角が上流から下流に向かって不変であるため、旋回部23は流れに対してねじれ角よりも大きな旋回角を付与されないので、旋回部23の流れ方向の長さは、流路21の内部を流通する流れが旋回部23の十字形状断面のねじれ角と略同一の流れ方向が得られる位置までで十分である。旋回部23をそれ以上流れ方向に延長すると、壁22との摩擦により圧力損失がいたずらに上昇するので望ましくない。
このような理由から、実施形態Bにおいては、旋回部23の流れ方向の長さは2Dに設定されているが、旋回部23の内部を流通する流れの流速や流体の粘性その他の固有の物性値により好適な寸法は異なる。なお、旋回部23の長さを0.5D〜3D程度に設定すれば、概ね良好な塵埃凝集性能を得ることができる。
また、このような理由から、十字形状断面のねじれ角は、流れ方向にD進む間に進行方向に1/6回転(60°回転)から1/3回転(120°回転)に設定されるのが望ましい。ねじれ角が流れ方向にD進む間に進行方向に1/6回転(60°回転)より小さく設定される場合には、流れに効果的な旋回を与えることができない。また、ねじれ角が流れ方向にD進む間に進行方向に1/3回転(120°回転)より大きく設定される場合には、気体の流れがせき止められてしまうような非常に大きな圧力損失となるため、塵埃凝集路20と駆動源を含むシステム全体のパフォーマンスが大幅に低下してしまう。
このように、塵埃凝集路20は、気体が流通する流路21と、流路21を形成する壁22と、流路21を流れる気体中に渦を発生させる渦発生手段とを備え、渦発生手段は壁22の内面に配置されて、渦発生手段は、流路21内の気体の流れを旋回させるように壁22の内面から流路21内に突出した壁部を有する旋回部23を含むことによって、簡単な構造で、塵埃中の粒子の衝突回数を増加させて凝集を促し、粒子数を低減させるとともに見かけ上の粒子径を大きくすることが可能な塵埃凝集路を提供することができる。
(実施形態C)
図13は、この発明の実施形態Cの塵埃凝集路の要部を示す斜視図である。
図13に示すように、実施形態Cにおいては、実施形態Aの旋回部13に替えて、旋回部33が設けられている。旋回部33は、旋回部13の十字形状断面の中央がくり貫かれた形状になっており、塵埃凝集路30の流路31の壁32の内面には旋回部33が存在するが、流路31の中央部には旋回部33が存在しない形状となっている。流路31は、旋回部33によって4つの小流路に分割されている。4つの小流路は、流路31の中央で連通している。
図14は、この発明の実施形態Cの塵埃凝集路の要部を示す正面図である。
図14に示すように、旋回部33の壁32の内面からの高さhは、流路31の流れ方向に垂直な面における流路幅の代表長さ(正方形流路の場合は一辺の長さ、円形流路の場合は直径)をDとして、h=(1/8)Dに設定されている。その他の部分は実施形態Aの塵埃凝集路10と同様である。
図15は、本発明の実施形態Cの旋回部により発生する渦の様子を模式的に示した図である。図15(A)は、流路を正面から見た図であり、図15(B)は、流路を側面から見たときの図である。
図15に示すように、流路31に流入した気体Pは旋回部33の形状に沿って流路31の内部全体を矢印の方向に、二点鎖線で示すように旋回しながら進む。
塵埃凝集路30によると、流路31の壁32の内面近傍を流通する気流は、旋回部33により旋回を与えられて大きく旋回するが、流路31の中央部を流通する気流は、旋回部33によって与えられる旋回が小さい。したがって、実施形態Aの塵埃凝集路10と実施形態Bの塵埃凝集路20に比べて、旋回部33の下流に生じる渦の強さは小さくなるものの、旋回部33によって生じる圧力損失は大幅に低下する。
このように、塵埃凝集路30においては、複数の小流路は、流路31の中央で連通していることにより、流路31における圧力損失を大幅に低下させることができる。
従って、旋回部33の内部を流通する流れを発生させる駆動源(例えば、ファンやブロアなど)の出力や静圧上昇が小さい場合、駆動源が圧力損失に弱い場合などには、実施形態Aの塵埃凝集路10または実施形態Bの塵埃凝集路20を用いる場合に比べて、塵埃凝集路30と駆動源を含めたシステム全体のパフォーマンスが向上する。
また、近年の低消費電力化の促進により、電気掃除機などにおいて消費電力を低減しつつ風量を維持させる必要があるため、流路におけるロスは最小にすることが求められている。本発明の実施形態Cの塵埃凝集路30を電気掃除機の延長管などに用いることによって、風量を維持しながら、延長管の内部で塵埃を効率よく凝集させて、低消費電力で塵埃の捕集効率のよい電気掃除機を提供することが可能である。
なお、旋回部33の壁32からの高さhは次の理由により上記寸法に設定されている。
流路31を流通する流れの流速分布は、流路31の壁32の内面の摩擦と内部を流通する流体の粘性の影響で、流路31の中央部付近が速く、流路31の壁32の内面付近が遅いといった、流路31の壁32の内面付近に境界層が生ずることによる、不均一な流速分布が生ずる。特に被凝集粒子(塵埃その他の微細粒子)の大きさがミクロンオーダーのものに集中しているような場合、次のようなことが生ずる。すなわち、被凝集粒子は、空気の分子に継続的に衝突され続けることにより力を受けて上流側から下流側へ運ばれるが、その際に、1つの被凝集粒子に衝突する空気の分子の速度は、流路中央部側は速く、流路壁面側は遅い。すると、被凝集粒子は、流路壁面側方向に向かう力を受ける。この流れのせん断力により、被凝集粒子の分布密度は、流路中央部付近が低く、流路壁面付近が高くなる。つまり、被凝集粒子の多くが流路壁面近傍を流通する。上述のように被凝集粒子の大きさがミクロンオーダーのものに集中しているような場合、流路幅の代表長さがDの流路であれば、流路の壁面からの距離が(1/8)Dまでの位置において特に被凝集粒子の分布密度が高くなる現象が見られる。したがって、流路の壁面からの距離が(1/8)Dまでの位置に旋回部33を設けると、最も気流の乱れを発生させる効果を発揮することができる。
このように、塵埃凝集路30においては、旋回部33は、壁32からの高さが、流路31の気体が流れる方向に垂直な断面の代表長さの八分の一であることにより、異物が旋回部33に引っかかりにくくなる。
実施形態Cの塵埃凝集路30によると、被凝集粒子の流通が多い流路壁面付近の流れに旋回を与えることができる。また、被凝集粒子の流通が少ない流路中央部の流れには旋回を与えない。このようにすることにより、被凝集粒子に対して効果的に旋回を与えることができるとともに、流体の流れが最も速い流路中央部には圧力損失を生じさせるものを配置しないため、凝集性能を損なわず、旋回部33により生じる圧力損失を大幅に削減することができる。
このように、塵埃凝集路30は、気体が流通する流路31と、流路31を形成する壁32と、流路31を流れる気体中に渦を発生させる渦発生手段とを備え、渦発生手段は壁32の内面に配置されて、渦発生手段は、流路31内の気体の流れを旋回させるように壁32の内面から流路31内に突出した壁部を有する旋回部33を含むことによって、簡単な構造で、塵埃中の粒子の衝突回数を増加させて凝集を促し、粒子数を低減させるとともに見かけ上の粒子径を大きくすることが可能な塵埃凝集路を提供することができる。
(実施形態D)
図16は、この発明の実施形態Dの塵埃凝集路の要部を示す斜視図、図17は実施形態Dの塵埃凝集路の要部を示す正面図、図18は、実施形態Dの塵埃凝集路の側断面を示す図である。
図16から図18に示すように、塵埃凝集路40は、流路41と、壁42と、渦発生手段として複数の突起43とを備える。流路41は、円筒状の壁42によって形成されている。突起43は、翼形状の突起である。突起43の形状は、流路41の流れ方向に垂直な面における流路幅の代表長さ(正方形流路の場合は一辺の長さ、円形流路の場合は直径)をDとして、翼弦長C=(3/8)D、食違角(翼弦と流れ方向の成す角)が上流側から下流側に見て反時計回りに22.5°、最大そり位置が前縁より0.65C位置、下流側に凸、高さh=(1/8)Dの形状をなす。突起43の配置は、流れ方向に垂直な方向の同一面に、等間隔で6個、つまり、円管状の流路41の壁42の内面に60°おきに設置されている。
図19は、実施形態Dの塵埃凝集路における突起の周囲の気体の流れを模式的に示す図である。
図19(A)に示すように、翼形状を呈する突起43の凹側面に沿う流れの流速V1は、突起43への流れの衝突のため、せき止められて、流路41内を流通する流体の流速に対しやや遅くなる。逆に、突起43の凸側面に沿う流れの流速V2は、流路内を流通する流体の流速に対しやや速くなる。そのため、図19(B)に示すように、突起43の周囲において、流路41内を流通する流体の流速を基準とした相対速度を考えると、凸側面においては流路41の上流側から下流側へ、凹側面においては流路41の下流側から上流側へ、突起43の周りを回転する循環V3が生ずる。
図20は、突起の周囲に生じる渦を模式的に示す図である。
図20に示すように、図19(B)に示す突起43の周囲の循環V3により、翼形状を呈する突起43の翼端部から強い馬蹄渦V4が発生し、その馬蹄渦V4は突起43の下流側の流路41の壁42に沿って下流へ移動する。この馬蹄渦V4は突起43の下流を流通する流れに強い旋回を与える。
実施形態Dの塵埃凝集路40においては、突起43の翼高さhは、h=(1/8)Dであるので、馬蹄渦V4の発生直後の馬蹄渦V4の直径は、流路41内を流通する流体の流速にもよるが、(1/8)Dか、またはそれよりもやや大きいサイズになる。前述のように被凝集粒子の大きさがミクロンオーダーに集中しているような場合、径がDの流路41の壁42の内面からの距離が(1/8)Dまでの位置において特に被凝集粒子の分布密度が高くなる現象が見られるので、突起43は、特に被凝集粒子の分布密度が高くなる流路41の壁42から(1/8)Dまでの位置を、馬蹄渦V4によって積極的に攪拌するように設定されている。
このように、塵埃凝集路40においては、突起43は、壁42からの高さが、流路41の気体が流れる方向に垂直な断面の代表長さの八分の一であることにより、異物が突起43に引っかかりにくくなる。
図21は、本発明の実施形態Dの突起により発生する渦の様子を模式的に示した図である。図21(A)は、流路を正面から見た図であり、図21(B)は、流路を側面から見たときの図である。
図21に示すように、塵埃凝集路40においては、気体Pが流路41内に流入すると、流路41の壁42の内面に、6か所に突起43を等間隔に設置しているので、流路41の壁42の内面近傍に6本の同一回転方向の馬蹄渦V4が略等間隔に生ずる。また、隣合う渦同士は同一方向に回転しているため、渦と渦の接面における流れは、流れ方向に垂直な面における流線ベクトルを考えると、一方は流路中央部から壁面部へ向かう方向、他方は流路壁面部から中央部へ向かう方向となり、衝突しあう方向となるため、それぞれの渦の流れに運ばれる微細塵は、より衝突確率が高められる。
このように、塵埃凝集路40においては、突起43が複数配置されていることにより、流路41内に多数の渦を発生させて、塵埃凝集の効果を高めることができる。
従って、実施形態Dの塵埃凝集路40を用いれば、実施形態Cの塵埃凝集路30よりも、流れにより運ばれる微細塵の衝突確率がより高められるので、塵埃の凝集能力は大幅に高められる。なお、突起43の高さは、実施形態Cの旋回部33と同じであるため、圧力損失もまた実施形態Cの塵埃凝集路30と略同一となる。したがって、本発明の実施形態Dの塵埃凝集路40によると、実施形態Cの塵埃凝集路30よりもさらに高いパフォーマンスを得ることができる。
このように、塵埃凝集路40においては、渦発生手段は突起43を含み、突起43は、突起43の周囲を通過する気体の速度を不均一にするように壁42の内面から突出して形成されている。
このようにすることにより、塵埃凝集路40を流通する塵埃は、塵埃が気流によって流路41内に導かれる段階と、塵埃が直進する気流によって流路41内部を搬送される段階と、塵埃が流路41の壁42から突出した突起43の下流に生ずる渦流に巻き込まれて流通する段階と、複数の塵埃が渦流により互いに衝突する段階と、衝突した複数の塵埃が塵埃塊(クラスタ)を形成する段階と、塵埃塊が気流によって流路41内部を搬送される段階を順次経る。
このようにすることにより、簡単な構造で、塵埃中の粒子どうしの衝突回数を増加させて凝集を促し、粒子数を低減させるとともに見かけ上の粒子径を大きくすることが可能な塵埃凝集路40を提供することができる。
(実施形態E)
図22は、この発明の実施形態Eの塵埃凝集路の要部を示す斜視図、図23は実施形態Eの塵埃凝集路の要部を示す正面図、図24は、実施形態Eの塵埃凝集路を示す側断面図である。
図22から図24に示すように、実施形態Eの塵埃凝集路50においては、実施形態Dの突起43に替えて、突起53が設けられている。1つの突起53は、実施形態Dの突起43と同一形状の翼形状突起により形成されているが、配置が異なる。
塵埃凝集路50においては、流路方向に隣り合う2つの突起53が、流れの上流側から下流側に向かって、階段状に配置される。階段状に配置された2つの突起53は、上流側から見て一部が重なって配置される、すなわち、上流側に配置された突起53の終端から下流に気流の仮想線を描くと、仮想線が下流側に配置された突起53に交差するように配置される。実施形態Eの塵埃凝集路50のその他の部分は、実施形態Dの塵埃凝集路40と同様である。
実施形態Eの塵埃凝集路50においては、上流側に配置された突起53において発生した馬蹄渦を、下流側に配置された突起53において、さらに増強することにより、より強い馬蹄渦が生成される。渦は下流に移動するに従って徐々に減衰するが、塵埃凝集路50において生成する渦は、塵埃凝集路40において生成する渦よりも渦の強度が強いので、渦が減衰するまでの距離(到達距離)が長く、より下流にまで渦の影響を及ぼすことができる。流路51の壁52の内面近傍には、6本の同一回転方向の馬蹄渦が略等間隔に生ずる。
図25は、実施形態Eの塵埃凝集路における突起の周囲の気体の流れを模式的に示す図である。
図25に示すように、2つの突起53を階段状に配置しているため、上流側で発生した馬蹄渦V5は、下流側の突起53によって生じる渦に取り込まれて、効果的に強い馬蹄渦V6を生成できる。
さらに、隣合う渦同士は同一方向に回転しているため、渦と渦の接面における流れは、流れ方向に垂直な面における流線ベクトルを考えると、一方は流路中央部から壁面部へ向かう方向、他方は流路壁面部から中央部へ向かう方向となる。このように、流れどうしが衝突しあう方向となるため、それらの流れに運ばれる微細塵は、より衝突確率が高められる。
従って、実施形態Eの塵埃凝集路50を用いれば、より強い渦を生成できるので、渦の到達距離が長く、その分、流れにより運ばれる微細塵の衝突確率がより高められるので、塵埃の凝集能力は大幅に高められる。また、実施形態Dの塵埃凝集路40よりも、流れの摩擦が低減されるので、より圧力損失を低減することができる。
なお、実施形態Eの塵埃凝集路50によれば、圧力損失は実施形態Dの塵埃凝集路40と同等でありながら、微細塵の衝突確率は実施形態Dの塵埃凝集路40に対して約30%向上するため、塵埃凝集路50によると、さらに高性能の塵埃凝集路を得ることができる。
(実施形態F)
図26は、この発明の実施形態Fの塵埃凝集路の要部を示す斜視図、図27は実施形態Fの塵埃凝集路の要部を示す正面図、図28は、実施形態Fの塵埃凝集路を示す側断面図である。
図26から図28に示すように、実施形態Fの塵埃凝集路60においては、実施形態Eの突起53に替えて、突起63a、突起63b、突起63c、突起63dが設けられている。突起(63a、63b、63c、63d)は、突起53と同一形状の翼形状突起により形成されており、設置個数も同一であるが、隣合う突起63aと突起63c、突起63bと突起63dは、食違角(翼弦と流れ方向の成す角)が互いに逆になるように配置されている。すなわち、突起(63a、63b、63c、63d)は、凹部を形成するように湾曲した形状を有し、気体の流れる方向に交差する方向において隣り合う二つの突起は、それぞれ二つの凹部が互いに対向するように配置されている。流路61内の壁62においては、気流の方向と垂直に交差する断面の周の方向には、3つの突起63aを、食違角が上流側から下流側に見て時計回りに22.5°になるように等間隔に配置し、その3つの突起63aのそれぞれの間に、3つの突起63cを、食違角が上流側から下流側に見て反時計回りに22.5°になるように配置する。また、突起63aと突起63cの下流側に、気流の方向と垂直に交差する断面の周の方向に、3つの突起63bを、食違角が上流側から下流側に見て時計回りに22.5°になるように等間隔に配置し、その3つの突起63bのそれぞれの間に、3つの突起63dを、食違角が上流側から下流側に見て反時計回りに22.5°になるように配置する。気流の流れる方向に沿っては、突起63aの下流側に突起63bを配置し、突起63cの下流側に突起63dを配置する。4つの突起は、突起63aと突起63cの凹部どうしの間の距離が、突起63bと突起63dの凹部どうしの間の距離よりも大きくなるように配置されている。
実施形態Fの塵埃凝集路60においては、それぞれの突起(63a、63b、63c、63d)においては、実施形態Dの突起43と同様の馬蹄渦が発生し、馬蹄渦がその下流側の流路61の壁62に沿って下流へ移動するため、突起の下流を流通する流れに強い旋回を与える。
図29は、実施形態Fの塵埃凝集路の突起の周囲に発生する渦の様子を模式的に示す図である。
図29に示すように、実施形態Fの塵埃凝集路60の流路61内においては、12個の突起を、それぞれが互い違いの方向を向くように配置している。そのため、流路61の壁62の内面近傍において、隣合う渦同士がそれぞれ逆方向に回転する、6本の馬蹄渦V7が生ずる。上流側の突起63aと突起63cで発生した馬蹄渦V7は、下流側の突起63bと突起63dの間を流れる気流に取り込まれ、強い馬蹄渦V8を生成する。さらに、突起63bと突起63dを互い違いに配置しているため、下流側の突起63bと突起63dで生成された渦がそれぞれ強めあうように働くため、より強い馬蹄渦V8を生成することができる。
また、隣合う渦同士はそれぞれ逆方向に回転しているため、渦と渦の接面における流れは、流れ方向に垂直な面における流線ベクトルを考えると、一方が流路中央部から壁面部へ向かう方向ならば他方も同方向の流れとなり、一方が流路壁面部から中央部へ向かう方向ならば他方も同方向の流れとなるので、スムーズに合流する方向となり、流れの粘性による摩擦抵抗が減少する。そのため、実施形態Fの流路61においては、実施形態Eの流路51に比べて、渦による圧力損失が低減する。
このように、塵埃凝集路60においては、突起(63a、63b、63c、63d)は、凹部を形成するように湾曲した形状を有し、気体の流れる方向に交差する方向において隣り合う二つの突起は、それぞれ二つの凹部が互いに対向するように配置されている。このようにすることにより、隣り合う突起で生成された渦は、互いに逆方向に回転しながら下流に進む。そのため、隣り合う渦と渦との接面においては、これらの渦を形成している気流は、同じ方向に進む流れとなる。したがって、隣り合う突起で生成された渦は、スムーズに合流し、流れの粘性による摩擦抵抗が減少する。このようにして、流路61内の圧力損失を減少することができる。
従って、実施形態Fの塵埃凝集路60を用いれば、実施形態Dの塵埃凝集路40よりも、流れの摩擦が低減されるので、より圧力損失を低減することができる。なお、流れの摩擦による微細塵の衝突確率は実施形態Dの塵埃凝集路40に対して約5%低下するが、圧力損失は実施形態Dの塵埃凝集路40に対して約10%低下するため、実施形態Fによると、実施形態Dの塵埃凝集路40よりもさらに高いパフォーマンスの塵埃凝集路60を得ることができる。
(実施形態G)
図30は、この発明の実施形態Gの塵埃凝集路の要部を透視した斜視図であり、図31は、実施形態Gの塵埃凝集路の要部を示す正面図である。
図30と図31に示すように、この発明の実施形態Gの塵埃凝集路70においては、実施形態Dの突起43に替えて、流路71の壁72の内面に、複数の突起73aと突起73bが設けられている。突起73aと突起73bは、底面が三角形の突起である。
図32は、実施形態Gの突起を示す図である。図32(A)は、突起の底面図、図32(B)は、突起の側面図、図32(C)は、突起の正面図である。流路の上流側を正面とする。
図32に示すように、突起73aの底面部△EFGの各辺の長さがEF:FG:GE=1:2:√3となる直角三角形を成し、直角三角形の各頂角のうち、30°を成す角Gが、流れの上流側に配置され、60°と90°の角に挟まれる辺EFは、流れ方向に対して垂直になるように配置されて、突起73aの底面部△EFGが流路71の壁72の内面と接合されている。突起73aの残りの一つの頂点Iは、壁72から流路71内に突出するように形成されている。
突起73aは、流路71の流れ方向に垂直な面における流路幅の代表長さ(正方形流路の場合は一辺の長さ、円形流路の場合は直径)をDとすると、流れ方向の長さGE=(3/8)D、流れ方向と斜辺のなす角が、上流側から下流側に見て時計回りに30°、突起73aの高さhがh=(1/8)Dである形状をなしている。突起73aに隣り合う突起73bにおいては、流れ方向と斜辺のなす角は上流側から下流側に見て反時計回りに30°である。流路71の壁72上では、4つの突起73aが等間隔に配置され、4つの突起73aのそれぞれの間に突起73bが4つ配置されて、突起73aと突起73bがいわゆる互い違いの方向を向けて配置されている。
図33は、実施形態Gの突起の周囲の気流の様子を模式的に示す図である。
図33に示すように、突起73aの斜辺GIに沿う流れの流速V9は、突起73aの流れの衝突のため、せき止められて、流路71内を流通する流体の流速Pに対しやや遅くなる。一方、突起73aの流れ方向の辺GEに沿う流れの流速V10は、流路71内を流通する流体の流速Pと略同等となる。そのため、突起73aの周りの、流路71内を流通する流体の流速を基準とした相対速度を考えると、流れ方向の辺GE上においては流路71の上流側から下流側へ、斜辺FG上においては流路71の下流側から上流側へ、突起73aの周りを回転する循環が生ずる。この循環により、三角錐状を呈する突起73aの頂点から馬蹄渦V11が発生し、その馬蹄渦V11は突起73aの下流側の流路71の壁72に沿って下流へ移動する。この馬蹄渦11は突起73aの下流を流通する流れに旋回を与える。突起73bにおいても、突起73aと同様に馬蹄渦が形成されるが、馬蹄渦の回転の向きは逆向きである。
実施形態Gにおいては、突起73aと突起73bの高さhはh=(1/8)Dであるので、馬蹄渦発生直後の馬蹄渦V11の直径は、流路71の内部を流通する流体の流速にもよるが、(1/8)Dか、またそれよりもやや大きいサイズになる。前述のように被凝集粒子の大きさがミクロンオーダーのものに集中しているような場合、径がDの流路71の壁72からの距離が(1/8)Dまでの位置において、特に被凝集粒子の分布密度が高くなる現象が見られるので、実施形態Gの突起73aと突起73bは、特に被凝集粒子の分布密度が高くなる流路71の壁72から(1/8)Dまでの位置を通過する気体を、馬蹄渦を発生させることによって積極的に攪拌する。
このように、塵埃凝集路70においては、突起73aと突起73bは、壁72からの高さが、流路71の気体が流れる方向に垂直な断面の代表長さの1/8であることにより、異物が突起73aと突起73bに引っかかりにくくなる。
図34は、本発明の実施形態Gの突起により発生する渦の様子を模式的に示した図である。図34(A)は、流路を正面から見た図であり、図34(B)は、流路を側面から見たときの図である。
図34に示すように、流路71の壁72の近傍に、隣合う渦同士はそれぞれ逆方向に回転する、8本の馬蹄渦V11が生ずる。なお、隣合う渦同士はそれぞれ逆方向に回転しているため、渦と渦の接面における流れは、流れ方向に垂直な面における流線ベクトルを考えると、一方が流路中央部から壁面部へ向かう方向ならば他方も同方向の流れとなり、一方が流路壁面部から中央部へ向かう方向ならば他方も同方向の流れとなるので、スムーズに合流する方向となるため、流れの粘性による摩擦抵抗が減少し、そのため、実施形態Gの塵埃凝集路70においては、渦による圧力損失が低減する。
流路71を流通する流体に、長さD、太さ0.05Dといった棒状の異物その他が混入していた場合、例えば実施形態Aから実施形態Fにおいては、塵埃凝集路の旋回部と突起の形状が湾曲構造を成しており、特に突起は上流側が凹、下流側が凸の形状を成しているため、棒状の異物の一端が1つの渦発生手段に引っ掛かり、棒状の異物の他端が他の渦発生手段に引っ掛かった場合、塵埃凝集路の内部に異物がつまってしまうといった不具合が生ずる可能性がある。一方、実施形態Gの塵埃凝集路70においては、突起73aに凹部は無く、例えば実施形態Dの突起43の凹面に代わり、突起73aと突起73bにおいては斜辺面が形成されているため、前述のような棒状の異物その他は突起に引っ掛かりにくい。
このように、塵埃凝集路70においては、気体の流れる方向に垂直な方向の突起73aと突起73bの断面積は、上流側で小さく下流側で大きい。このようにすることにより、異物が突起73aと突起73bに引っかかりにくくなる。
従って、実施形態Gの塵埃凝集路70を用いれば、実施形態Eと略同等の効果が得られるとともに、実施形態Aから実施形態Fの塵埃凝集路よりも、例えば、流れに棒状の異物その他が混入する可能性のある場合には、棒状の異物が乱れ発生部に引っ掛かってつまるといった不具合を未然に防止することができるため、信頼性の高い塵埃凝集路を得ることができる。
(実施形態H)
図35は、この発明の実施形態Hの塵埃凝集路の要部を透視した斜視図であり、図36は実施形態Hの塵埃凝集路の要部を示す正面図、図37は、実施形態Hの塵埃凝集路の側断面を示す図である。
図35から図37に示すように、実施形態Hは、実施形態Gの突起73aと突起73bに替えて、複数の突起83が設けられている。突起83は、三角錐状の突起である。
図38は、実施形態Hの突起を上から見た形状(A)と横から見た形状(B)を示す図である。
図38に示すように、突起83の形状は、三角錐の底面部△JKLの底辺KL:高さJM=1:2となる二等辺三角形を成し、底面部二等辺三角形の最小の角Jが流れの上流側に配置され、底辺KLが流れ方向に対して垂直になるように配置され、底面部にて流路壁面と接合されている。また、三角錐状突起の頂角をNとして、頂角Nから底面部二等辺三角形に下ろした垂線はMを通過する、つまり、NMは、JM、KLに対してそれぞれ垂直になるように構成されている。そして、流路81の流れ方向に垂直な面における流路幅の代表長さ(正方形流路の場合は一辺の長さ、円形流路の場合は直径)をDとして、流れ方向の長さJM=(1/2)D、三角錐高さNM=(1/8)Dである形状をなしている。
また、流路81の壁82の内面には、多数の突起83が規則的に配置されている。塵埃凝集路80においては、複数の突起83を、流れ方向に(3/2)JM、流れに垂直な方向に(3/2)KLおきに配置するとともに、1つの突起83に対して、流れ方向に(3/4)JM、流れに垂直な方向に(3/4)KLずれた位置にさらに配置し、またそれに対して複数の突起83を、流れ方向に(3/2)JM、流れに垂直な方向に(3/2)KLおきにさらに配置するといった配列に設定されている。つまり、流れ方向の1ピッチを(3/2)JM、流れに垂直な方向の1ピッチを(3/2)KLとすると、流れ方向、流れに垂直な方向ともに、半ピッチずつずらした位置された、いわゆる千鳥配置に複数かつ多段に配置される。
これらの突起83を上流側から投影すると、複数の突起83は互いに完全には重なり合わず、かつ、隣同士の突起83は、ある一定分だけ重なり合うように配置されている。その他の部分は実施形態Eと同様である。
実施形態Hの塵埃凝集路80によると、流路81の壁82の内面近傍を流通する流れは、三角錐突起を成す突起83の面JNKおよび面JNLの傾斜により三角錐底面部に対して頂角N側に持ち上げられ、流路中央側に巻き上げられるとともに、頂角Nの下流側に弱い双子渦を発生させる。実施形態Hの塵埃凝集路80を流通する流れは、最初に出会う突起83の作る弱い双子渦により攪乱され、下流に流通して、次に出会う突起83の作る弱い双子渦によりまた攪乱され、更に下流に流通して、更に次に出会う突起83の作る弱い双子渦によりまた更に攪乱され、といった具合に、次々と攪乱される。このような攪乱が、複数の突起83の箇所にてそれぞれ生ずる。前述のように被凝集粒子の大きさがミクロンオーダーのものに集中しているような場合、径がDの流路であれば、流路81の壁82から(1/8)Dの距離までの位置において特に被凝集粒子の分布密度が高くなる現象が見られるので、実施形態Hの複数かつ多段に配置された突起83は、特に被凝集粒子の分布密度が高くなる流路の壁面から(1/8)Dまで距離の位置を、複数の双子渦にて積極的に攪乱する。
このように、塵埃凝集路80においては、突起83は、壁82からの高さが、流路81の気体が流れる方向に垂直な断面の代表長さの1/8以下であることにより、異物が突起83に引っかかりにくくなる。
また、上流側から投影すると、複数の突起83は互いに完全には重なり合わず、かつ、上流側から投影すると、隣同士の突起83は、ある一定分だけ重なり合うように配置されているので、流路81の壁82に沿って流通する流れは、必ず突起83に出会う。その後、流路81の壁82に沿って流通する流れは、下流に流通するに従い、何度も何度も突起83に出会いながら、塵埃凝集路80内を通過する。
このように、塵埃凝集路80においては、突起83は、流路81内において気体が流れる方向に沿って複数配置され、それぞれの突起83は、流路81の上流側から下流側に向かって突起83を投影したときにそれぞれの突起83の一部が重なり合うように配置されている。このようにすることにより、流路81に沿って流れる気体が突起83の周囲を通過しやすくなり、効率よく渦を発生させることができる。
したがって、実施形態Hの塵埃凝集路80においては、流路81の壁82から(1/8)Dの距離までの位置を流通する気流に対して最も効率的に攪乱できるとともに、発生する双子渦の数を多くすることができる。
このように、塵埃凝集路80において、突起83は、流路81内において気体が流れる方向に沿って複数配置され、それぞれの突起83は、流路81の上流側から下流側に向かって突起83を投影したときにそれぞれの突起の一部が重なり合うように配置されていることにより、流路81に沿って流れる気体が突起83の周囲を通過しやすくなり、効率よく渦を発生させることができる。
また、塵埃凝集路80を流通する流体に、例えば柔軟な素材でできた布状のものであって流路81の径と同程度の大きさの異物(例えば布状や網目状の素材、例えばハンカチやパンティーストッキングといったもの)その他が混入していた場合、例えば実施形態Aから実施形態Gにおいては、塵埃凝集路の渦発生手段である旋回部と突起の形状が湾曲構造または矩形を成しており、布状の異物が渦発生手段に引っ掛かりやすく、そのため塵埃凝集路の内部に異物がつまってしまうといった不具合が生ずる可能性があるが、実施形態Hにおいては、突起83は流れの上流側に滑らかな三角錐突起を成しているため、前述の布状の異物その他は引っ掛かりにくい。
従って、実施形態Hの塵埃凝集路80を用いれば、多数の双子渦の攪乱により、十分な凝集性能を得ながら、実施形態Aから実施形態Gの塵埃凝集路よりも、例えば、流れに布状の異物その他が混入する可能性のある場合には、布状の異物が乱れ発生部に引っ掛かってつまるといった不具合を未然に防止することができるため、信頼性の高い塵埃凝集路80を得ることができる。
(実施形態I)
図39は、実施形態Iの塵埃凝集路の要部を透視した斜視図であり、図40は実施形態Iの塵埃凝集路の要部を示す正面図、図41は、実施形態Iの塵埃凝集路の要部の側断面を示す図である。
図39から図41に示すように、実施形態Iの塵埃凝集路90においては、実施形態Hの突起83に替えて、複数の突起93が流路91の壁92の内面上に設けられている。それぞれの突起93は、実施形態Hの突起83と同一形状の三角錐突起により形成されており、その配列または配置が異なる。すなわち、実施形態Iにおいては、実施形態Hの突起83の個数に対して1/3の個数の突起93が、上流側から投影すると突起83の配列と一致するように配置される。つまり、上流側から投影すると、複数の突起93は互いに完全には重なり合わず、かつ、上流側から投影すると、隣同士の突起93は、ある一定分だけ重なり合うように配置されている。また、流れ方向に垂直な方向の面内には、なるべく多くの突起93が配置されず、かつ、流れ方向に垂直な方向の同一面内に配置された複数の突起93は、なるべく互いを遠い距離に配置するように設定される。その他の部分は実施形態Hと同様である。
この発明の実施形態Iの塵埃凝集路90によると、突起93により、実施形態Hの突起83において生じた渦と略同一の双子渦が生ずる。また、上流側から投影すると、複数の突起93は互いに完全には重なり合わず、かつ、上流側から投影すると、隣同士の突起93は、ある一定分だけ重なり合うように配置されているので、流路91の壁92に沿って流通する流れは、必ず突起93を通過する。但し、実施形態Hの突起83に対して、突起93の個数は1/3としているので、流路91の壁92に沿って流通する流れが乱れ突起93に出会う回数も、発生する双子渦の数も1/3となり、被凝集粒子同士の衝突確率は低下する。
しかしながら、実施形態Iの突起93は、次のような利点がある。すなわち、実施形態Hの塵埃凝集路80においては、流れ方向に垂直な方向の面内に、多数の突起83が配置されており、また、流れ方向に垂直な方向の面であって突起83の面△NKLの位置における流路81の面積は、他の流れ方向に垂直な方向の面の位置における流路81の面積に対して、(流れ方向に垂直な方向における同一面内に配置された突起83の数)×(面△NKLの面積)の分だけ小さくなる。故に、流れ方向に垂直な方向における同一面内に配置された突起83の数が多ければ多いほど、その部分における流路面積の減少幅が大きくなるので、塵埃凝集路80の圧力損失は大きくなる。それに対して、実施形態Iの塵埃凝集路90においては、流れ方向に垂直な方向の面内に、なるべく多くの突起93が配置されず、かつ、流れ方向に垂直な方向の同一面内に配置された複数の突起93は、なるべく互いを遠い距離に配置するように設定されているので、突起93が配置されている位置における流路面積の減少が小さく、その分、塵埃凝集路90の圧力損失も小さくなる。
つまり、例えば、実施形態Iの流路91の流れ方向の長さを3倍に設定して、実施形態Iの突起93の個数を、実施形態Hの突起83の個数と同一に設定すれば、被凝集粒子同士の衝突確率については実施形態Hの塵埃凝集路80とほぼ同一になるが、突起93が配置される位置における流路面積の減少幅が小さい分、長さを3倍に設定した塵埃凝集路90の方が圧力損失も小さい。
従って、実施形態Iの塵埃凝集路90を用いれば、大きな圧力損失の低減効果が得られる。例えば、長さを3倍に設定した塵埃凝集路90を用いれば、実施形態Hの塵埃凝集路80に対して、被凝集粒子同士の衝突による凝集性能を損なわず、圧力損失を低減できるので、流路91の内部を流通する流れを発生させる駆動源(例えば、ファンやブロアなど)の出力や静圧上昇が小さい場合、駆動源が圧力損失に弱い場合などには、塵埃凝集路90と駆動源を含むシステム全体のパフォーマンスが向上する。
(実施形態J)
図42は、実施形態Jの塵埃凝集路の要部を透視した斜視図であり、図43は実施形態Jの塵埃凝集路の要部を示す正面図、図44は、実施形態Jの塵埃凝集路の側断面を示す図である。
図42から図44に示すように、実施形態Jの塵埃凝集路100においては、実施形態Iの突起93に替えて、複数の突起103が流路101の壁102の内面上に設けられている。それぞれの突起103は、実施形態Hの突起83と同一形状の三角錐状突起により形成されており、その配列または配置が異なる。すなわち、上流側から投影すると、複数の突起103は互いに重なり合わず、かつ、上流側から投影すると、隣同士の突起103は、一定の間隔をあけられて配置されている。また、流れ方向に垂直な方向の面内に、複数の突起103が配置されない配列でもよい。その他の部分は実施形態Hと同様である。
実施形態Jの塵埃凝集路100によると、突起103により、実施形態Hの突起83によって生じる渦と略同一の双子渦が生ずる。但し、実施形態Hの突起83に対して、個数が少なく、また、上流側から投影すると、複数の突起103は互いに重なり合わない配列になっているため、流路101の壁102に沿って流通する流れの多くは突起103に一度だけ出会い、突起103と突起103の間を流通する流れは、突起103に一度も出会わない。故に、実施形態Jの塵埃凝集路100においては、流れに与えることができる攪乱は実施形態Hの塵埃凝集路80に比べ、大幅に低下する。
しかしながら、実施形態Jの塵埃凝集路100は、成型方法が極めて容易となる利点がある。すなわち、上流側から投影すると、複数の突起103は互いに重なり合わず、かつ、上流側から投影すると、隣同士の突起103は、一定の間隔をあけられて配置されているため、例えば、塵埃凝集路100を樹脂成型する場合、塵埃凝集路100の上流側を金型の可動側に設定し、塵埃凝集路100の下流側を金型の固定側に設定し、金型を構成すれば、複雑な金型構成を必要とせず、塵埃凝集路100を一体で成型することができる。
また、塵埃凝集路100内を流通する流体に、例えば流路101の断面と同程度の面積を持つ板状の異物(例えば牛乳キャップといったもの)その他が混入していた場合、例えば実施形態Cから実施形態Iの塵埃凝集路においては、流れ方向に垂直な方向の面内に、複数の乱れ発生部が配置しているため、流路の断面と同程度の面積を持つ板状の異物の端部が同時に複数の突起に引っ掛かる可能性が高く、そのため塵埃凝集路の内部に異物がつまってしまうといった不具合が生ずる可能性があるが、実施形態Jにおいては、突起103は流れ方向に垂直な方向の面内に、複数の突起103が配置されない配列に設定されるため、流路101の断面と同程度の面積を持つ板状の異物その他は引っ掛かりにくい。
従って、実施形態Jの塵埃凝集路100を用いれば、極めて成形性が良いとともに、例えば、流れに流路の断面と同程度の面積を持つ板状の異物その他が混入する可能性のある場合には、異物が乱れ発生部に引っ掛かってつまるといった不具合を未然に防止することができる。このようにして、極めて高い成形性と極めて高い信頼性の両方を同時に有する塵埃凝集路を得ることができる。
図45から図49は、実施形態Jにかかる突起の他の配列を模式的に示す図である。(A)流路方向に垂直な方向に見た図と、(B)その流れの上流側から投影した模式図である。
図45に示すように、流れ方向に垂直な方向の面の周上に、複数の突起103が配置されるが、それぞれの突起は互いに近い箇所、円筒状の流路の場合には、望ましくは90°程度の範囲に、流れ方向に垂直な方向の面内に配置された複数の突起103が集まっていれば、極めて高い成形性と極めて高い信頼性の両方を同時に得られる。
図46に示すように、隣り合う突起103が互いに重ならないように多少ずらして配置し、突起によって生じる異物のつまりを防止したものや、さらに同様の効果を得るものとして、図47のように、突起をいくつかグループに分けて、そのグループを互いに流路方向にずらして配置したものや、図48と図49のように鋸歯状配列が例示できる。これらはいずれも極めて高い成形性が得られる。
図50は、実施形態Jの塵埃凝集路における隣接した突起の配置を示す図である。
図50に示すように、流れ方向と平行な方向から見た投影面内に突起103が重ならないように配置したとき、隣り合う突起103の距離を距離Wとすると、次の式によりWを表すことができる。
W=2α+γtanβ (ただしα、β、γは任意の正の整数)
突起103においてα、βをそれぞれ3mm以上、γ(mm)を任意の数とする。
気流に平行な方向Sに分離した金型を用いて塵埃凝集路100を作製すると、流路101と突起103を一度に成型することができる。このようにすることにより、成型コストを大幅に削減することができる。突起103間の距離については、最低限W(mm)確保することによって、気流に垂直となる投影面内に突起が互いに重なり合わないように配置し、また、突起と突起の間に入る金型の強度を確保することができる。
(実施形態K)
図51は実施形態Kの塵埃凝集路の要部を透視した斜視図であり、図52は実施形態Kの塵埃凝集路の要部を示す正面図、図53は、実施形態Kの塵埃凝集路の側断面を示す図である。
図51から図53に示すように、本発明の実施形態Kにおいては、実施形態Hの突起83に替えて、複数の突起113が流路111の壁112の内面上に設けられている。突起113は、実施形態Hの突起83と比べて、大きさが1/2(流れ方向の長さ:JM=(1/4)D、三角錐高さ:NM=(1/16)D)の相似形の三角錐状突起により形成されており、設置に関しても1/2の相似で配置される。なお、三角錐状突起の個数は実施形態Hの約4倍に設定されている。その他の部分は実施形態Hと同様である。
実施形態Kの塵埃凝集路110によると、突起113により、実施形態Hの突起83に対してスケールが1/2の略相似形の双子渦が生ずる。1つの突起113により生ずる双子渦は、実施形態Hの突起83により生ずる双子渦と比較して、強度は弱くなるが、その分突起113の個数を多く設定しているため、略同様の攪乱を流れに与えることができる。
但し、前述のように被凝集粒子の大きさがミクロンオーダーのものに集中しているような場合、径がDの流路111の壁面から(1/8)Dまでの位置において特に被凝集粒子の分布密度が高くなる現象が見られるが、実施形態Kの複数かつ多段に配置された突起113は、高さが(1/16)Dに設定されているため、特に被凝集粒子の分布密度が高くなる流路111の壁112から(1/8)Dまでの距離の位置のうち、積極的に攪乱を与えることができるのは約半分の領域のみに限られる。
しかしながら、実施形態Kの突起113には、次のような利点がある。即ち、実施形態Kの突起113の高さは、(1/16)Dに設定されており、実施形態Hの突起83の高さに比べて1/2のため、流れ方向に垂直な方向における同一面内に配置された突起113による流路面積の減少幅が1/4になるので、その分、塵埃凝集路110の圧力損失は実施形態Hの塵埃凝集路80に比べて格段に小さくなる。
さらに、実施形態Kの突起113の高さは、(1/16)Dに設定されているため、突起113により発生する双子渦が塵埃凝集路110の流路111の壁112に発達する速度の境界層に影響を与え、境界層厚みを薄くする効果が得られる。
一般に、流路の壁面部近傍には、流路内部を流通する流体の粘性により、速度の境界層ができる。境界層内部の流速は、流路中央部に比べて風速が遅く、その領域は流れに対する抵抗が大きい。即ち、境界層が発達して境界層の厚みが厚くなると、それだけ流れやすい領域の面積が減少し、見かけ上、流路の断面積が小さくなったような挙動を示す。従って、境界層が発達して境界層の厚みが厚くなると、その流路の圧力損失は増大する。
実施形態Kの突起113により発生する双子渦は、渦のスケールが小さく、また、より壁面部近傍に発生するため、突起113により発生する双子渦が上記の境界層の発達を抑制し、そのため、流路壁面の流れに対する抵抗が小さくなり、流路111の圧力損失が大幅に低下する。
例えば、流路111の径DがD=40mm、流れの代表流速が25m/秒、常温常圧の場合、実験結果によると、(乱れ発生部による圧力損失)<(乱れ発生部による境界層の発達抑制効果)となり、多数の突起113が存在するにもかかわらず、突起のない流路よりも圧力損失が小さい塵埃凝集路110が得られた。
また、塵埃凝集路110を流通する流体に、異物その他が混入していた場合においても、突起113は、実施形態Hの突起83に対して高さが1/2のため、突起113は、実施形態Hの突起83に対して異物がより一層引っ掛かりにくい。
従って、実施形態Kの塵埃凝集路110を用いれば、多数の双子渦の攪乱により、十分な凝集性能を得ながら、さらに、管路摩擦抵抗を低減することができるため、圧力損失を大幅に低減した塵埃凝集路110を得ることができる。また、例えば、流れに異物その他が混入する可能性のある場合においても、異物が突起113に引っ掛かってつまるといった不具合を略完全に防止することができるため、極めて信頼性の高い塵埃凝集路110を得ることができる。
また、各実施形態では省略したが、乱れ発生部を構成する各辺に1mmのアールを形成することで、大幅にごみ詰まりを低減することができる。さらに、鋭角的な溝を排除することでメンテナンス性能のよい塵埃凝集路を形成することができる。
以上のように、本発明は、微粒子を凝集する機構に関するものである。本機構を利用して微粒子の捕集効率を向上させる事が可能となるため、本発明の塵埃凝集路を掃除機、空気清浄機、空気調和機等へ適用することができる。
(第2実施形態)
図54は、本発明の第2実施形態として、本発明の塵埃凝集路を備える電気掃除機の全体を示す図であり、図55は、本発明の塵埃凝集路を備える電気掃除機の本体の構成の説明図である。
図54と図55に示すように、吸込口501は、延長管502、取手を有する接続管503、折り曲げ自在のサクションホース504と順次連結され、連結部505を経由して掃除機本体506に接続されている。掃除機本体506には、電動送風機567、集塵部561、集塵ケース563、HEPAフィルター570、コードリール(図示せず)、電動送風機567と塵埃凝集路の帯電部の通電を制御する制御回路(図示せず)等が収容されている。電動送風機567が駆動すると、吸込口501から空気が吸引され、塵埃を含む空気が、通風路となる本発明の塵埃凝集路を備える延長管502、接続管503、サクションホース504を通り、掃除機本体506へと搬送される。掃除機本体506に吸引された塵埃は、集塵部561、電動送風機567、HEPAフィルター570を通り排気部571より排出される。このようにして吸込口501より吸引された塵埃の中でサイズの大きい塵埃は、集塵部561に集積される。また、塵埃が捕集され清浄になった空気は、電動送風機567を冷却するために電動機569内部を通過し、掃除機本体506の外に排気される構造となっている。また、掃除機本体506の側面には、回転自在に設けられ、掃除機本体506を床面508上にて移動自在に支持する車輪507が備えられている。
電動送風機567が駆動すると、ファン568により、吸い込みの気流が発生し、サクションホース504、本体接続部505より掃除機本体506に塵埃を含む空気が流入し、接続部562、集塵フィルター564、接続部565、ファン568、電動機本体569、HEPAフィルター570、排気口571、に向けて送風が行われる。このとき、細塵、塵埃塊を含む空気は搬送される途中で気流が混合されながら搬送されるので、接触、吸引、吸着が行われ、本発明による塵埃塊が更に大きく成長する。
大きく成長した塵埃塊は、集塵フィルター564の目の大きさより大きくなるので、集塵フィルター564に捕集される。帯電部を複数個所設けたり、細塵と帯電部の接触を多く出来るような構成を取れば、集塵塊は集塵フィルター564の目の大きさより大きくなるので、HEPAフィルター570は不要とすることができる。
なお、ここで塵埃塊が集塵フィルター564の目の大きさよりも大きく成長されなかった場合は、フィルター564を通過することもある。このような場合は、HEPAフィルター570を設けて捕集してもよい。
このように、電気掃除機が、電動送風機567と、吸込口501から電動送風機567に連通する延長管502と、集塵部561とを有し、電動送風機567により発生した気流により塵埃を吸込口501から吸引し、延長管502を通る塵埃を集塵部561に集塵する電気掃除機において、延長管502が本発明のいずれかの実施形態の塵埃凝集路を有することにより、電気掃除機の延長管502内において、吸引した塵埃を凝集させて塵埃塊(クラスタ)を形成させることができる。この塵埃塊を適度に成長させることで、塵埃塊の質量を増加させ、クラスタを大きくすることができる。塵埃塊の質量を大きくすることで、例えば、サイクロン掃除機においては遠心分離による塵埃塊の捕集が可能となる。また、フィルター式の掃除機においては、フィルターの目よりも塵埃塊を大きくすることができるので、目の大きいフィルターによっても集塵することが可能となる。いずれの場合も、吸気において圧力損失が生じにくいので、電気掃除機本体の吸塵力(仕事率)が低下しにくくなる。
10,20,30,40,50,60,70,80,90,100,110,200:塵埃凝集路、11,21,31,41,51,61,71,81,91,101,111,201:流路、12,22,32,42,52,62,72,82,92,102,112,202:壁、13,23,33:旋回部、13a,13b,13c,13d,23a,23b,23c,23d:面、43,53,63a,63b,63c,63d,73a,73b,83,93,103,113,203:突起、210:帯電部、211a:第1帯電部、211b:第2帯電部、212:電源、501:吸込口、502:延長管、561:集塵部、567:電動送風機。