JP2008145503A - 屈折率変調型回折光学素子の作製方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】特性の改善された屈折率変調型回折光学素子を簡便かつ低コストで作製する。
【解決手段】屈折率変調型回折光学素子の作製方法は、剥離剤(6)を介してDLC膜(2)上に位相格子マスク(3a)を接触させて配置し、その位相格子マスクを介してUV光(4b)によってDLC膜を干渉露光し、それによってDLC膜の局所的な屈折率を高めて屈折率変調型回折格子を形成し、その後に、DLC膜から位相格子マスクを剥離するとともに剥離剤を除去することを特徴としている。
【選択図】図1

Description

本発明は、屈折率変調型回折光学素子の作製方法の改善に関し、特に、特性の改善された屈折率変調型回折光学素子を簡便かつ低コストで作製する方法に関する。
周知のように、回折光学素子は、光の回折現象を利用することによって種々の機能を生じさせ得る光学素子である。より具体的には、波長合分岐、パワー合分岐、偏光合分岐、波長板、光アイソレータ、またはレンズなどの機能を有する回折光学素子が知られている。
一般に、回折光学素子は、透光性基板上に回折格子層を形成することによって作製される。その回折格子層の構造的相違に基づいて、回折光学素子はレリーフ型と屈折率変調型とに大別される。レリーフ型回折光学素子において回折が生じるのは、回折格子層のレリーフにおける厚い部分を通過する光の位相が薄い部分を通過する光の位相に比べて遅れることによって位相差が生じるからである。他方、屈折率変調型回折光学素子において回折が生じるのは、回折格子層の高屈折率領域を通過する光の位相が低屈折率領域を通過する光の位相に比べて遅れることによって位相差が生じるからである。
しかし、屈折率変調型回折光学素子は原理的には作製可能であるが、従来では実用的な屈折率変調型回折光学素子を作製することが困難であった。なぜならば、たとえば石英系ガラスに紫外光やX線のようなエネルギビームを照射することによって屈折率を高め得ることが知られているが、その場合の屈折率変化Δnは0.01以下程度に小さいからである。また、アルゴンレーザなどを用いて約500nmの波長の光をフォトポリマに照射してそれを熱処理することによってその屈折率変化Δnを0.04程度まで高め得ることも知られているが、屈折率差Δnが0.04程度の屈折率変調では良好な回折効率を有する回折光学素子を得るためには未だ不十分である。
ところが、近年において、本発明者らは、透光性DLC(ダイヤモンドライクカーボン:ダイヤモンド状炭素)膜を利用して良好な回折効率を有する屈折率変調型回折光学素子を作製し得ることを特許文献1の特開2004−163892号公報において開示している。すなわち、本発明者らは、イオンビームやSR(シンクロトロン放射)光のようなエネルギビームをDLC膜に照射することによって、その屈折率変化Δnを0.1以上に顕著に高めることができることを確認している。
そのようなDLC膜は、ガラス基板、ポリマ基板、およびその他の種々の透光性基板上にプラズマCVD(化学気相堆積)によって形成することができる。そして、そのようなプラズマCVDによって得られる透光性DLC膜は、通常は1.55程度の屈折率を有している。また、このようなDLC膜の分子的構造を簡単に表現すれば、ダイヤモンド結合とグラファイト結合と水素原子とがランダムに混在して含まれている非晶質炭素系膜であるということができる。
図4から図6は、特許文献1に開示された屈折率変調型回折光学素子の作製過程を図解する模式的な断面図である。なお、本願の図面において、長さや厚さなどの寸法関係は図面の明瞭化と簡略化のために適宜に変更されており、実際の寸法関係を反映してはいない。
図4に示されているように、特許文献1では、たとえばシリカガラス基板1上に、DLC膜2がプラズマCVDによってたとえば2μmの厚さに堆積される。なお、屈折率変調型回折光学素子におけるDLC膜の厚さに特別な制限はなく、任意の厚さに設定し得る。ただし、DLC膜があまりに厚過ぎれば、その膜による光吸収効果が大きくなり過ぎることにおいて好ましくない。また、DLC膜があまりに薄過ぎれば、十分な回折効果を得ることが困難になる傾向にあるので好ましくない。現在利用可能なDLC膜においては、好ましくは0.5〜7μm程度の厚さ範囲内のDLC膜が屈折率変調型回折光学素子に利用される。しかし、より小さな光吸収係数を有するDLC膜が得られればより厚いDLC膜の利用も可能であろうし、屈折率変化Δnをより大きくできればより薄いDLC膜の利用も可能になるであろう。
図5においては、DLC膜2上に、たとえばリフトオフ法によって金マスク3が形成される。この金マスク3においては、たとえば幅0.5μmの金ストライプが0.5μmの間隔を隔てて繰り返し配列される。すなわち、この金マスク3は、ライン・アンド・スペースのパターンを有している。その後、金マスク3の開口部を介して、たとえば800keVの加速電圧の下でHeイオンビーム4がたとえば5×1017/cm2のドース量でDLC膜2内に注入される。
その結果、DLC膜2のうちでHeイオン4が注入されなかった領域2bは1.55の屈折率のままに維持されるが、Heイオン4が注入された領域2aの屈折率はたとえば2.05に高められ得る。すなわち、その屈折率変化Δnは0.6程度もの非常に大きな値になり得る。このようなDLC膜における屈折率変化は石英系ガラスやフォトポリマにおいて得られる屈折率変化に比べてはるかに大きいものであり、十分に回折効率の大きな回折格子層の形成が可能となる。
図6において、最終的に金マスク3がエッチングによって除去され、屈折率変調型回折光学素子が得られる。
しかしながら、上述のようなイオン照射によって屈折率変調型回折光学素子を作製する方法では、そのように高い加速電圧でイオン照射する装置が高価である。そして、そのようなイオン照射装置を良好な状態に維持管理するためにも費用がかかる。また、イオン照射の代わりにSR光照射を利用する場合でも、シンクロトロンという大掛かりで高価な装置を要する。さらに、金マスクもコスト高の要因となるし、そのマスクのリフトオフ法による形成やエッチングによる除去の手間も煩雑である。
このような観点から、本発明らは、位相格子マスクを介してUV(紫外)光をDLC膜に照射することによって屈折率変調型回折光学素子を作製する方法を特許文献2の国際公開第2005/088364号パンフレットにおいて開示している。
図7は、特許文献2に開示された屈折率変調型回折光学素子の作製方法を図解する模式的な断面図である。この作製方法においては、たとえば厚さ100μmのスペーサ5を介して、シリカガラス製のレリーフ型位相格子マスク(回折格子)3aがDLC膜2に対して近接配置される。この状態で、たとえばKrFレーザ光(波長248nm)4aをたとえば16mW/mm2のエネルギ密度で1時間照射することによって、回折光学素子を作製することができる。このとき、位相格子マスク3aからの+1次回折光と−1次回折光との干渉光に露光される領域2aの屈折率が高められる。他方、その干渉光よって露光されない領域2bの屈折率は、成膜されたままの状態に維持される。
この場合、+1次回折光と−1次回折光との干渉光は、レリーフ型位相格子マスク3aの凹凸周期の1/2の周期で現れる。したがって、DLC膜中における所望の高屈折率領域2aの周期に比べて2倍の凹凸周期で形成されたレリーフ型位相格子マスク3aを用いることができる。
なお、図7における屈折率変調型回折光学素子の作製方法では高屈折率領域2aと低屈折率領域2bとの間の境界領域が膜厚方向に平行な場合が例示されているが、望まれる場合には、その境界領域を膜厚方向に対して傾斜させてもよいことは言うまでもない。そのためには、紫外光4aをDLC膜面に対して斜め方向に入射させて、0次回折光と+1次回折光または−1次回折光との干渉光による露光を利用すればよい。ただし、0次回折光と+1次回折光または−1次回折光との干渉光は、位相格子マスク3aの凹凸周期と同じ周期で現れる。したがって、DLC膜中における所望の高屈折率領域2aの周期に比べて同じ周期の凹凸で形成された位相格子マスク3aを用いなければならない。
特開2004−163892号公報 国際公開第2005/088364号パンフレット
図7に示されているように、位相格子マスク3aを介してDLC膜2にUVビーム4aを照射することによって簡便かつ低コストで屈折率変調型回折光学素子を作製し得ることが本発明者らの検討によって分かったが、設計通りの望ましい回折特性を有する屈折率変調型回折光学素子を作製することが容易でないことが判明した。
そこで、本発明は、設計において期待される改善された特性を有する屈折率変調型回折光学素子を簡便かつ低コストで作製する方法を提供することを目的としている。
本発明による屈折率変調型回折光学素子の作製方法においては、剥離剤を介してDLC膜上に位相格子マスクを接触させて配置し、その位相格子マスクを介してUV光によってDLC膜を干渉露光し、それによってDLC膜の局所的な屈折率を高めて屈折率変調型回折格子を形成し、その後に、DLC膜から位相格子マスクを剥離するとともに剥離剤を除去することを特徴としている。
なお、剥離剤は、位相格子マスク上にコーティングされてそれと一体化されてもよい。この場合には、屈折率変調型回折格子を形成した後に、剥離剤は位相格子マスクと一体的にDLC膜から除去される。他方、剥離剤は、DLC膜上に塗布されてもよい。この場合には、屈折率変調型回折格子を形成してDLC膜から位相格子マスクを剥離した後に、剥離剤がDLC膜上から除去される。
DLC膜は、その表面において酸化膜、窒化膜、酸窒化膜、フッ化膜、または水素と炭素を主要成分として含む膜のいずれかからなる保護膜の一層以上を有していることが好ましい。
また、剥離剤は、フッ素系化合物を含むものであることが好ましい。さらに、DLC膜に対するUV光による干渉露光は、希ガス、窒素ガス、またはそれらの混合ガスの雰囲気中で行われることが好ましい。
以上のように位相格子マスクをDLC膜に接触させてUV干渉露光することによって屈折率変調型回折光学素子の作製方法は、DLC膜内においてその干渉露光によって屈折率が局所的に高められた領域がチャープ構造を形成すべき場合に特に好ましい。
以上のような本発明によれば、特性の改善された屈折率変調型回折光学素子を簡便かつ低コストで作製することができる。
まず、本発明者らは、図7の作製方法において、何故に設計通りの望ましい回折特性を有する屈折率変調型回折光学素子を作製することが容易でないのかについて、その原因を解明すべく詳細に検討した。その結果、UVレーザビームの発散角とそのレーザビームの照射によるDLC膜におけるアブレーションとが重大な影響を及ぼしていることが判明した。
前述のように、UVレーザビームとしてKrFレーザビーム(波長248nm)がしばしば利用される。ここで、一般に市販されているKrFレーザ装置におけるビームは、1mrad以上の発散角を有している。
この場合、図7におけるような作製方法において、位相格子マスク3aとDLC膜2との距離が大きければ、位相格子マスクによる干渉パターンにおける強度変化割合がビームの発散角に起因して低下し、DLC膜2中において十分な屈折率変化が得られなくなる。
より具体的には、位相格子マスク3aとDLC膜2との距離が200μm以上であれば、位相格子マスクによる干渉パターンにおける強度変化割合がビームの発散角に起因して顕著に低下し、DLC膜2中において十分な屈折率変化が得られず、実用的な屈折率変調型回折光学素子が得られなくなる。したがって、位相格子マスク3aとDLC膜2との距離は、少なくとも150μm以下であることが望まれる。
他方、一般に位相格子マスクは空気との界面を前提として設計される。すなわち、通常では、位相格子マスク3aとDLC膜2との間に空気層が介在させられる。
これらの事情と、位相格子マスク3aおよびDLC膜2との相互の取り扱いの簡便のために、100μm程度の厚さのスペーサ5が好ましく利用される(図7参照)。このことは、位相格子マスク3aおよびDLC膜2との間に100μm程度の厚さの空気層が存在することを意味する。なお、位相格子マスク3aにおけるレリーフの溝の深さは、僅かに0.1μm程度である。
このような状態において、特許文献2に開示されているようにたとえば16mW/mm2のエネルギ密度でUVレーザビームを1時間照射することによって回折光学素子を作製した場合、DLC膜2の表面にレーザビームによるアブレーションが生じていることが本発明者らによって新たに見出された。
すなわち、このようなアブレーションによって、DLC膜の厚さ減少を生じるとともに、そのような厚さ減少に伴ってDLC膜の表面に微細な凹凸が生じ得る。このようなDLC膜の厚さ減少と表面凹凸の生成は、得られる屈折率変調型回折光学素子の回折特性が設計目標値から大きくずれることを意味する。
以上のような本発明者らによる新たな知見に基づいて、本発明者らは、本発明に密接に関連する参考例として、図8の模式的断面図に示されているような方法によって屈折率変調型回折光学素子を作製した。
(参考例)
図8に示された参考例による方法においては、図7におけるようなスペーサ5を用いずに、シリカガラス製のレリーフ型位相格子マスク(回折格子)3aがDLC膜2に直接に接して配置される。すなわち、位相格子マスク3aとDLC膜2との間で空気層が排除され、位相格子マスク3aにおける深さ0.1μmのレリーフ溝内に僅かな空気が残存するだけである。この状態で、位相格子マスク3aに対して入射角42度のKrFレーザ光(波長248nm)を17mW/mm2のパワー密度で照射することによって、DLC膜2中に0.15以上の屈折率差Δnを含む屈折率変調型回折光学素子を作製することができる。
なお、図8の場合にもDLC膜が厚さ減少を生じ得るが、図8の参考例では図7の場合に比べて厚さ減少が低減させられ得る。また、図8の場合には、図7の場合に比べて、DLC膜の表面凹凸の生成も軽減され得る。このことは、図7の先行技術の場合に比べて、図8の参考例の場合には、より設計値に近い回折特性を有する屈折率変調型回折光学素子を作製し得ることを意味する。
しかしながら、図8に示されているようにDLC膜2に位相格子マスク3aを直接に接して配置した状態でUV光4aを照射した場合、光化学反応によってマスク3aにDLC膜または保護膜が付着してマスクが汚染されるとともに、均一な屈折率変調型回折光学素子の形成が困難であるという問題が生じることを本発明者らが新たに見出した。そこで、本発明においては以下の種々の実施形態におけるように、DLC膜と位相格子マスクとが剥離剤を介して互いに接した状態でUV光が照射される。
(実施形態1)
図1において、本発明の実施形態1による屈折率変調型回折光学素子の作製方法が模式的な断面図で図解されている。図1に示された本実施形態1による方法は、図8に示された参考例の方法に比べて、位相格子マスク3aが剥離剤6を介してDLC膜2上に接触配置されていることのみにおいて異なっている。
そのような剥離剤6として、たとえばダイキン工業(株)から販売されているオプツールDSXのようなフッ素系剥離剤を好ましく利用することができる。剥離剤6は、DLC膜2の表面に塗布されてもよく、位相格子マスク3aの表面に塗布されてもよい。要は、互いに接触させられるDLC膜2と位相格子マスク3aとの間に剥離剤6が介在させられればよいのである。
より具体的には、剥離剤は、位相格子マスク上にコーティングされてそれと一体化されてもよい。この場合には、屈折率変調型回折格子を形成した後に、剥離剤は位相格子マスクと一体的にDLC膜から除去される。他方、剥離剤は、DLC膜上に塗布されてもよい。この場合には、屈折率変調型回折格子を形成してDLC膜から位相格子マスクを剥離した後に、剥離剤がDLC膜上から除去される。
なお、塗布される剥離剤6の厚さとしては、たとえば5nm程度の非常に薄い厚さでも有効である。
このような剥離剤6は、レーザビーム4bの照射によって位相格子マスク3aとDLC膜2が接合することを効果的に防止し得るとともに、レーザビーム4bの照射によるDLC膜2のアブレーションやその表面凹凸の発生を軽減するようにも作用し得る。そして、レーザビーム4bの照射後においては、剥離剤6の効果によって、位相格子マスク3aとDLC膜2とを容易に分離することができ、DLC膜2に付着した剥離剤6を除去することも容易である。
なお、上述の参考例や本実施形態1の場合のように、位相格子マスクに対してレーザビームを斜めに入射させる場合、位相格子マスクの下面において全反射が生じることがある。しかし、参考例や本実施形態1の場合のように位相格子マスクの下面がDLC膜と接している場合には、位相格子マスクの下面が空気層と接している場合に比べて全反射が起こり難くなるので、レーザビームの斜め入射の場合にもそのビームをより有効に利用することができる。
(実施形態2)
図2の模式的な断面図は、本発明の実施形態2による屈折率変調型回折光学素子の作製方法を図解している。図2の方法が図1の方法と異なる点は、DLC膜2がその上面に保護膜7を有していることである。そのような保護膜7として、酸化膜、窒化膜、酸窒化膜、フッ化膜、または水素と炭素を主要成分として含む膜のいずれかを一層以上設けることができる。
このような保護層7は、DLC膜2のUV照射時において酸素や水がその膜と反応することを防止するように作用し、酸素や水に対するバリア膜として機能すると同時に、DLC膜2からの元素の脱離やアブレーションを抑制する効果を期待することができる。より具体的には、保護層として、酸化珪素膜、酸窒化珪素膜、窒化珪素膜、酸化アルミ膜、酸化チタン膜、酸化タンタル膜、フッ化マグネシウム膜、DLC膜より水素含有量が少ない水素化炭素膜、珪素と酸素をも含む水素化炭素膜、またはポリマ膜などが好ましい。これらの膜は、酸素や水に対するバリア性が高いと同時に、光学素子に含める場合に透明性が高い点で優れる。なお、保護膜にはピンホールやクラックがないか極めて少ないことが望ましい。
保護膜の形成には、プラズマCVD、スパッタリング、真空蒸着、イオンビームアシスト蒸着などの気相合成法を適用することができる。また、一部のポリマに関しては、スピンコートによって保護膜を形成することができる。
より具体的には、酸化珪素保護膜、酸化アルミ保護膜などは、プラズマCVD、スパッタリング、真空蒸着、イオンビームアシスト蒸着などのいずれによっても合成することができる。酸窒化珪素保護膜、窒化珪素保護膜などは、主にプラズマCVD法などで合成することができる。酸化チタン保護膜、酸化タンタル保護膜、フッ化マグネシウム保護膜などは、主にスパッタリング、真空蒸着、イオンビームアシスト蒸着法などで合成することができる。
また、DLC膜2より水素量が少ない水素化炭素保護膜は、たとえば前述のプラズマCVD法によってDLC膜2を堆積する場合に比べて高周波パワーを大きくする方法やガス圧力を小さくする方法によって得ることができる。
珪素と酸素を含む水素化炭素保護膜は、DLC膜の成膜と同様の方法において、原料ガスにシロキサンなどを導入することによって得ることができる。シロキサンとは、−Si−O−の周期構造を骨格に持ち、シリコン原子から出る側鎖に水素または炭化水素系の基が付帯した構造を有する材料の総称である(例として、ポリジメチルシロキサン[(CH32SiO]n、ポリジフェニルシロキサン[(C652SiO]n、ポリメチルフェニルシロキサン[(CH3)(H65)SiO]n、ポリ水素メチルシロキサン[(H)(CH3)SiO]nなどがある)。
保護膜7は、DLC膜2にUV光4bを照射する前に形成することによって、その照射時および光学素子としての使用時の両方に保護効果を発揮させることができる。
なお、保護膜7を形成する場合、一般的には、DLC膜2を形成した成膜室内で引き続いてその保護膜を形成することが好ましい。これは、DLC膜2を大気中に取り出すことによって、保護膜7にピンホールなどの欠陥が形成されやすくなるからである。ただし、ポリマなどをスピンコートなどで被覆する場合はこの限りではない。
本実施形態2においては、DLC膜2が保護膜7によって覆われているとともに、その上に剥離剤6を介して位相格子マスク3aが接触配置され、その状態でレーザビーム4bが照射されるので、実施形態1に比べて、位相格子マスク3aとDLC膜2が接合することをさらに効果的に防止し得るとともに、レーザビーム4bの照射によるDLC膜2のアブレーションやその表面凹凸の発生をより確実に防止することができる。
(実施形態3)
本発明による実施形態3においては、実施形態1におけるレーザビーム4bの照射時の大気雰囲気が不活性雰囲気に置き換えられる。すなわち、図1における空気雰囲気が希ガスのHe、Ne、Ar、Kr、もしくはXe、またはN2ガスで置き換えられる。この状態で、実施形態1の場合と同様にKrFレーザ光4bを照射することによって、屈折率変調型回折光学素子を作製することができる。
すなわち、図1の実施形態1における酸素を含む空気雰囲気を希ガスで置き換えた本実施形態3の場合においては、実施形態1に比べて、DLC膜のアブレーションと表面凹凸の発生をより低減しつつ屈折率変調型回折光学素子を作製することができる。なお、本実施形態3においては、図1の実施形態1における酸素を含む空気雰囲気を希ガスまたはN2ガスで置き換える場合が説明されたが、図2の実施形態2における酸素を含む空気雰囲気を希ガスまたはN2ガスで置き換えてもよいことは言うまでもない。
(実施形態4)
図9は、日本ビクター(株)のHV−D50LA1が採用している単一パネル型カラー液晶プロジェクタにおける光学的基本原理を模式的断面図で示している。このカラー液晶プロジェクタは、ガラス基板21の上面上に形成された回折光学膜20からなるカラーフィルタを含んでいる。ガラス基板21の下面上には液晶層23が設けられ、その液晶層23の下面には反射型電極層24が設けられている。反射型電極層24はR(赤)、G(緑)、およびB(青)のそれぞれの光を反射するための反射型画素電極を含んでおり、一組のR、G、およびBの反射型電極が一つの画素を構成している。図9において、複数のR電極が図面に直交する方向に整列されており、同様に複数のG電極および複数のB電極のそれぞれも図面に直交する方向に整列されている。なお、ガラス基板21と液晶層23との間には、R、G、およびBの電極に対向して透明電極(図示せず)が設けられている。
図9のカラー液晶プロジェクタにおいて、光源(図示せず)からの白色光Wが所定の入射角で回折光学膜20に照射される。回折光学膜20は、回折作用によって、白色光Wを赤色R、緑色G、および青色Bの光に波長分離(分光)するとともに、それらの光を対応するR電極、G電極、およびB電極上に集光するマイクロレンズアレイとしての機能を併有している。そして、R電極、G電極、およびB電極のそれぞれによって反射された赤色R、緑色G、および青Bの光は、回折光学膜20の回折条件からずれていてその膜を透過し、投射レンズ(図示せず)によってスクリーン上に投影される。
図10は、先行技術において分光機能とマイクロレンズアレイ機能とを併有する回折格子の一例を示す模式的平面図である。この回折格子は、ガラス基板11上に形成された格子パターンを含んでいる。その格子パターンは互いに平行な複数の帯状領域12を含み、それらの帯状領域12は例えば金属クロム(Cr)膜で形成することができる。もちろんCr膜12は非透光性であって、光は複数の帯状Cr膜12の間のみを透過する。
すなわち、複数の平行な帯状Cr膜領域12が回折格子として作用し、光は帯状Cr膜12の長手方向に直交する方向に回折される。その際に、周知のように回折角には波長依存性があるので、R、G、およびBの光は互いに異なる回折角で回折されることになり、白色光Wをカラー分離することできる。
さらに、図10の回折格子において特徴的なことは、帯状Cr膜領域12の幅と間隔が周期的に変化させられていることである。これは、回折格子にマイクロレンズアレイ作用を生じさせるためである。すなわち、波長が同じである場合に、周知のように回折格子の間隔が小さくなるにしたがって回折角が大きくなるので、回折格子の間隔を徐々に変化させることによってレンズ作用を生じさせることができるのである。このように回折格子の間隔を徐々に変化させた構造は、チャープ構造とも称されている。
なお、図10のチャープ構造を有する回折格子においては、前述のように光は帯状Cr膜12の長手方向に直交する方向のみに回折されるので、レンズ作用もその方向のみにおいて生じ、すなわち線状のフォーカスを有する柱状レンズのように作用する。ただし、望まれる場合には、周知のフレネルゾーンプレートに類似の回折格子を利用することによって、点状のフォーカスを有する円形状レンズまたは正方形状レンズの作用を生じさせ得ることは言うまでもない。
図10の回折格子は互いに平行な複数の柱状マイクロレンズを含んでいるかのように作用し、矢印13で示された領域が一つの柱状マイクロレンズとして作用する。一つの柱状マイクロレンズ領域13内では、右側に比べて左側において帯状Cr膜12の幅と間隔が減少させられている。すなわち、図10の回折格子においては、帯状Cr膜12の幅と間隔が、柱状マイクロレンズ領域13ごとに周期的に変化させられている。
ところで、図9のカラー液晶プロジェクタにおける回折光学膜2の代わりに図10のような回折格子をそのまま適用した場合、帯状Cr膜12は光を透過しないので、光源からの白色光Wの利用効率が低くなる。また、図10の回折格子においては、帯状Cr膜領域12のピッチが非常に小さい。例えば領域13内の中央部において、そのピッチは約0.5μm以下である。したがって、図10のような回折格子は電子ビーム描画を利用して作製しなければならず、工業的量産には適していない。
そこで、図9のカラー液晶プロジェクタにおいては、マスタ回折格子を介して光がガラス基板上のフォトポリマ膜へ照射され、その光照射されたフォトポリマ膜を熱処理することによって回折光学膜20が作製される。その際に、強度の高い光照射を受けた領域ほど屈折率nが高まる。すなわち、フォトポリマからなる回折光学膜20においては、屈折率nが変調されており、屈折率変調型の回折格子として作用する。
しかし、前述のようにフォトポリマからなる屈折率変調型回折光学膜においては屈折率差Δnを十分に高めることができず、回折効率の高い回折光学膜を得ることが困難である。
そこで、本実施形態4においては、図3の模式的な断面図で示されているように、チャープ構造を有する位相格子マスク3bが剥離剤6を介してDLC膜2上に接触配置され、図1または図2の場合と同様にレーザビーム4bが照射される。こうして、高屈折率領域2aと低屈折率領域2bとの幅が徐々に変化させられたチャープ構造を有する回折光学膜2が得られる。
本発明による回折光学膜の作製方法は、このようなチャープ構造を有する回折光学膜の作製において特に好ましい。なぜならば、図3に示されているようなチャープ構造を有する位相格子マスク3bが図7に示されているようにDLC膜2に対して空間を開けて配置された状態でレーザビーム4bが照射されれば、そのチャープ構造を有する位相格子マスク3bもレンズ作用を生じるので、位相格子マスク3bのチャープ構造に対応した間隔周期の屈折率変化としてDLC膜2に転写することができなくなるからである。
なお、図3においてはDLC膜2上に保護膜7が形成されていないが、そのような保護膜を付加的に設けてもよいことは言うまでもない。さらに、本実施形態4においても、レーザビーム4bの照射雰囲気として、希ガス雰囲気またはN2ガス雰囲気を利用してもよいことも言うまでもない。
以上のように、本発明によれば、特性の改善された屈折率変調型回折光学素子を簡便かつ低コストで作製することができる。
本発明の一実施形態による屈折率変調型回折光学素子の作製方法を図解する模式的断面図である。 本発明の他の実施形態による屈折率変調型回折光学素子の作製方法を図解する模式的断面図である。 本発明のさらに他の実施形態による屈折率変調型回折光学素子の作製方法を図解する模式的断面図である。 先行技術による屈折率変調型回折光学素子の作製方法の一例を図解する模式的断面図である。 図4に続く工程を示す模式的断面図である。 図5に続く工程を示す模式的断面図である。 先行技術による屈折率変調型回折光学素子の作製方法の他の例を図解する模式的断面図である。 本発明に密接に関連する屈折率変調型回折光学素子の作製方法の一例を図解する模式的断面図である。 先行技術による単一パネル型カラー液晶プロジェクタにおける光学的基本原理を図解する模式的断面図である。 先行技術において波長分離機能とマイクロレンズ機能とを併有する回折格子の一例を示す模式的平面図である。
符号の説明
1 シリカガラス基板、2 DLC膜、2a 高屈折率領域、2b 低屈折率領域、3 金マスク、3a 位相格子マスク、4 Heイオンビーム、4a、4b UV光、5 スペーサ、6 剥離剤、7 保護膜。

Claims (7)

  1. 剥離剤を介してDLC膜上に位相格子マスクを接触させて配置し、
    前記位相格子マスクを介してUV光によって前記DLC膜を干渉露光し、それによって前記DLC膜の局所的な屈折率を高めて屈折率変調型回折格子を形成し、
    その後に、前記DLC膜から前記位相格子マスクを剥離するとともに前記剥離剤を除去することを特徴とする屈折率変調型回折光学素子の作製方法。
  2. 前記位相格子マスク上に前記剥離剤がコーティングされており、前記屈折率変調型回折格子を形成した後に、前記剥離剤は前記位相格子マスクと一体的に前記DLC膜から除去されることを特徴とする請求項1に記載の屈折率変調型回折光学素子の作製方法。
  3. 前記剥離剤は前記DLC膜上に塗布されており、前記屈折率変調型回折格子を形成して前記DLC膜から前記位相格子マスクを剥離した後に、前記剥離剤が前記DLC膜上から除去されることを特徴とする請求項1に記載の屈折率変調型回折光学素子の作製方法。
  4. 前記DLC膜はその表面において酸化膜、窒化膜、酸窒化膜、フッ化膜、または水素と炭素を主要成分として含む膜のいずれかからなる保護膜の一層以上を有していることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の屈折率変調型回折光学素子の作製方法。
  5. 前記剥離剤はフッ素系化合物を含むことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の屈折率変調型回折光学素子の作製方法。
  6. 前記UV光による前記干渉露光は、希ガス、窒素ガス、またはそれらの混合ガスの雰囲気中で行われることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の屈折率変調型回折光学素子の作製方法。
  7. 前記DLC膜内において前記干渉露光によって屈折率が局所的に高められた領域はチャープ構造を形成していることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の屈折率変調型回折光学素子の作製方法。
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