JP2008144810A

JP2008144810A - ブーツ

Info

Publication number: JP2008144810A
Application number: JP2006330779A
Authority: JP
Inventors: Tomohiko Sato; 智彦佐藤
Original assignee: Toyota Motor Corp
Current assignee: Toyota Motor Corp
Priority date: 2006-12-07
Filing date: 2006-12-07
Publication date: 2008-06-26

Abstract

【課題】ブーツの軸部材およびジョイントへの組み付け時に、ブーツが変形して、その内容積が変化しても、ブーツの内圧の変化を防止する。
【解決手段】ドライブシャフト１の中間軸２に取り付けられるインボードジョイント３に装着され、開口を塞ぐブーツ３５を次のような構成とする。ブーツ３５の大径端部３５ｃの内周側には、径方向内側へ突出するリップ３７ａ，３７ｂ，３７ｃが設けられている。軸方向中央の第１のリップ３７ｂは、径方向内側への突出量Ｌ１が大きく、円周方向の複数箇所に切欠き部３８が設けられている。軸方向両端の第２のリップ３７ａ，３７ｃは、径方向内側への突出量Ｌａ，Ｌｃが上記Ｌ１よりも小さく、切欠き部は設けられていない。
【選択図】図９

Description

本発明は、各種の動力伝達軸に取り付けられる各種のジョイントに装着され、開口を塞ぐために使用されるブーツに関する。このような動力伝達軸として、例えば、自動車などの車両に使用されるドライブシャフト、プロペラシャフト、アクスルシャフトなどが挙げられる。

例えば、自動車などの車両のドライブシャフトなどでは、中間軸の両端にジョイントを取り付けた構造が採用される。具体的には、中間軸のインボード側に取り付けられるインボードジョイントには、例えば、特許文献１に示されるようなトリポード型等速ジョイントなどがある。中間軸のアウトボード側に取り付けられるアウトボードジョイントには、バーフィールド型等速ジョイントなどがある。

そのようなドライブシャフトにおいて、ジョイント内のグリースなどの潤滑剤の外部への漏洩を防止するとともに、ジョイント内への泥水などの浸入を防止するために、開口を塞ぐブーツが用いられる。ブーツは、ドライブシャフトのインボードジョイントとアウトボードジョイントとにそれぞれ用いられる。インボードジョイントとアウトボードジョイントとの両ブーツは、具体的には、軸方向一端側から他端側へ向けて漸次拡径する円錐筒形状に形成された胴部を有し、この胴部がその小径端部側から大径端部側へ向けて波打つような蛇腹形状に形成されている。

そして、両ブーツの小径端部は、中間軸の外周に嵌合されている一方で、両ブーツの大径端部は、両ジョイントに備えられる外筒部材の開口端の外周に嵌合されている。ここで、ブーツの端部と、相手側の部品（中間軸またはジョイントの外筒部材）との間のシール性を確保するために、ブーツの端部の内周側にシール用のリップ（突出部）が形成されるとともに、ブーツの端部の外周側にベルトやバンドなどのクランプ部材が締め付けられる。特許文献２〜４には、ブーツの端部の内周側にリップが形成されたブーツが開示されている。
実開平５−２７３５０号公報特開２００５−２３３３９８号公報特開平２−２２１７６６号公報特許第３１９１１６９号公報

しかし、従来では、ブーツの端部の内周側の全周にわたってリップが設けられていたので、ブーツを軸部材およびジョイントに組み付ける際、次のような問題点が発生する可能性があった。すなわち、リップを全周に設けた場合、ブーツの組み付け時に、ブーツの両端部を相手側の部品に嵌め付けると、バンドなどを締め付けていなくても、そのリップによってシール性が確保され、ブーツの内部が密封空間となる。このため、ブーツが組み付け時に変形して、その内容積が変化すると、これにともなってブーツの内圧が変化するという問題点があった。

そして、ブーツの内外の圧力が異なった状態でジョイントを使用したのでは、ブーツやジョイント部品の劣化を招いてしまう。一方、ブーツの組み付け終了後に、ブーツの内圧を調整する作業を行ったのでは、この内圧調整の作業は手間がかかる困難な作業であり、コストも労力も必要になる。

上述のような問題点は、ブーツが、特に、上記特許文献１に示されるようなトリポード型等速ジョイントなどのように、軸部材へのジョイントの組み付け時にジョイント部品を軸方向に沿ってスライドさせて組み付けを行うように構成されているスライド構造のジョイントに使用される場合に懸念される。

本発明は、そのような問題点を鑑みてなされたものであり、ブーツの軸部材およびジョイントへの組み付け時に、ブーツが変形して、その内容積が変化しても、ブーツの内圧の変化を防止することができるようにすることを目的とする。

本発明は、上述の課題を解決するための手段を以下のように構成している。すなわち、本発明は、軸部材に取り付けられるジョイントに装着され、開口を塞ぐブーツであって、前記軸部材の外周に嵌合される一端部、および、前記ジョイントの開口端側の外周に嵌合される他端部を備え、前記軸部材およびジョイントへの組み付け時には、当該ブーツの内部と外部とを連通する一方、その組み付け終了後には、当該ブーツの内部と外部とを遮断する通気手段を備えていることを特徴としている。

上記構成によれば、ブーツの軸部材およびジョイントへの組み付け時に、ブーツが変形して、その内容積が変化しても、通気手段を介してブーツの内部と外部とが連通されるため、ブーツの内圧の変化を防止して、ブーツの内圧を外部の圧力（大気圧）に維持することができる。

本発明のブーツの通気手段の具体構成として、以下の構成が挙げられる。すなわち、前記通気手段が、前記両端部のうち少なくとも一方の端部の内周側に設けられた径方向内側への複数の突出部として構成されており、前記複数の突出部には、径方向内側への突出量が大きい第１の突出部と、径方向内側への突出量が小さい第２の突出部とが少なくとも１つずつ含まれており、前記第１の突出部には、円周方向の少なくとも１箇所に切欠き部が設けられている。

この構成によれば、ブーツの軸部材およびジョイントへの組み付け時に、ブーツが変形して、その内容積が変化しても、ブーツの端部の第１，第２の突出部を介して、ブーツ内の空気が外部へ流出される。具体的には、突出量が小さい第２の突出部の内周面、および、突出量が大きい第１の突出部の切欠き部が設けられた部分は、軸部材の外周面またはジョイントの開口端側の外周面に密着していないので、突出量が小さい第２の突出部の内周面と軸部材の外周面またはジョイントの開口端側の外周面との隙間、突出量が大きい第１の突出部の切欠き部を通って、ブーツ内の空気が外部へ流出される。これにより、ブーツが組み付け時に変形して、その内容積が変化しても、ブーツの内圧の変化を防止して、ブーツの内圧を外部の圧力に維持することができる。

そして、前記突出量が大きい第１の突出部が複数設けられる場合、軸方向で互いに隣り合う突出部の切欠き部の円周方向の位置が異なっていることが好ましい。このように、第１の突出部に設けられる切欠き部をラビリンス構造とすることで、組み付け時に、ブーツ内の空気が外部へ流出される一方で、ブーツ内の潤滑剤は外部へ流出されにくくなる。これにより、ブーツの組み付け時に、ブーツの内圧の上昇を防止することができるとともに、ブーツ内の潤滑剤の外部への流出量を抑制することができる。

本発明のブーツは、例えば、軸部材への組み付けをジョイント部品を軸方向に沿ってスライドさせて行うように構成されているスライド構造のジョイントに使用することが可能である。また、この場合、前記通気手段を、前記ジョイントの開口端側の外周に嵌合される他端部に設けることが好ましい。そして、このようなスライド構造のジョイントの場合には、ジョイント部品のスライドにともなって、ブーツの内容積が減少しても、ブーツの内圧の上昇を防止して、ブーツの内圧を外部の圧力に維持することができる。

本発明によれば、ブーツの軸部材およびジョイントへの組み付け時に、ブーツが変形して、その内容積が変化しても、通気手段を介してブーツの内部と外部とが連通されるため、ブーツの内圧の変化を防止して、ブーツの内圧を外部の圧力に維持することができる。

本発明を実施するための最良の形態について添付図面を参照しながら説明する。この実施形態では、本発明のブーツの使用対象を、図１に示す自動車などの車両のドライブシャフトとした例について説明する。

まず、ブーツの説明に先立ち、その使用対象となるドライブシャフトの構成について説明する。

図１に示すように、ドライブシャフト１は、軸部材としての中間軸２の一端側（図１では左側）にインボードジョイント３が装着され、中間軸２の他端側（図１では右側）にアウトボードジョイント４が装着された構成になっている。

ドライブシャフト１は、図示していないが、インボードジョイント３が、例えば、前輪駆動式車両の車幅方向中央に配置されるディファレンシャル内に連結されるようになっており、アウトボードジョイント４が、例えば、車輪取り付け用のハブユニットに連結されるようになっている。

この例では、インボードジョイント３として、トリポード型等速ジョイントが採用されている。また、アウトボードジョイント４として、バーフィールド型等速ジョイントが採用されている。これらトリポード型等速ジョイントおよびバーフィールド型等速ジョイントの構成、動作などは、公知であるが、以下で簡単に説明する。

インボードジョイント３は、図２に示すように、内筒部材３１と、外筒部材３２と、複数（この例では、３つ）のローラ３３と、ケージアンドローラタイプのベアリング３４とのジョイント部品によって構成され、その内部にはグリースなどの潤滑剤がブーツ３５によって封入されるようになっている。

内筒部材３１は、中間軸２の一端側外周に嵌合固定されている。内筒部材３１の外径側の円周数箇所（この例では、３箇所）には、径方向外向きに突出するトラニオン３１ａが設けられている。内筒部材３１の各トラニオン３１ａの外周には、ローラ３３がそれぞれベアリング３４を介して回動自在に外装されている。

外筒部材３２は、内筒部材３１の外径側に配置されており、有底のほぼ円筒形に形成されている。外筒部材３２の内径側の円周数箇所（この例では、３箇所）には、軸方向に沿う直線溝３２ａが設けられている。また、外筒部材３２の底部中心には、軸方向に突出する軸部３２ｂが設けられている。そして、外筒部材３２の直線溝３２ａ内にローラ３３が転動可能に収納されている。

アウトボードジョイント４は、図３に示すように、内筒部材４１と、外筒部材４２と、複数（この例では、３つ）のボール４３と、保持器４４とのジョイント部品によって構成され、その内部にはグリースなどの潤滑剤がブーツ４５によって封入されるようになっている。

内筒部材４１は、中間軸２の他端側外周に嵌合固定されている。内筒部材４１の外径側の円周数箇所（この例では、３箇所）には、軸方向に沿うとともに軸方向で湾曲する外側湾曲溝４１ａが設けられている。

外筒部材４２は、内筒部材４１の外径側に配置されており、有底円筒形に形成されている。外筒部材４２の内径側の円周数箇所（この例では、３箇所）には、軸方向に沿うとともに軸方向で湾曲する内側湾曲溝４２ａが設けられている。また、外筒部材４２の底部中心には、軸方向に突出する軸部４２ｂが設けられている。そして、内筒部材４１の外側湾曲溝４１ａと外筒部材４２の内側湾曲溝４２ａとの対向間に、保持器４４によって保持されているボール４３が対応して転動自在に介装されている。

次に、ブーツについて、図２〜図５を用いて詳しく説明する。上記構成のドライブシャフト１では、ブーツ３５，４５は、インボードジョイント３とアウトボードジョイント４とにそれぞれ装着されている。図４は、インボードジョイント３に使用されるブーツ３５の未使用状態（組み付け前の状態）の断面図、図５は、アウトボードジョイント４に使用されるブーツ４５の未使用状態の断面図である。

ブーツ３５，４５は、径方向および軸方向の伸縮性に優れた弾性材で形成されている。弾性材の具体例として、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ふっ素系ゴムなどのゴムや、熱可塑性ポリエステル系エラストマーや適宜のエンジニアリングプラスチックなどのような曲げや引っ張りに対する強度に優れた樹脂などが挙げられる。

ブーツ３５，４５は、軸方向一端側から他端側へ向けて漸次拡径する円錐筒形状の胴部３５ａ，４５ａを有している。胴部３５ａ，４５ａは、その小径端部３５ｂ，４５ｂ側から大径端部３５ｃ，４５ｃ側へ向けて波打つような蛇腹形状に形成されており、ブーツ３５，４５の可撓性が確保されるようになっている。これにより、中間軸２と、この中間軸２に対しインボードジョイント３およびアウトボードジョイント４を介して連結される他の軸部材とが傾くように屈曲動作される際、その動作に対するブーツ３５，４５の追従性が向上する。

ブーツ３５，４５の小径端部３５ｂ，４５ｂの内径は、未使用状態ではドライブシャフト１の中間軸２の外径に比べて若干小径に形成されている。小径端部３５ｂ，４５ｂは、拡径された状態で中間軸２の外周にそれぞれ嵌合される。そして、小径端部３５ｂ，４５ｂの外径側に締め付けバンド６，６がそれぞれ装着されることによって、ブーツ３５，４５の小径端部３５ｂ，４５ｂ側が中間軸２に固定される。締め付けバンド６，６は、小径端部３５ｂ，４５ｂの外周に沿って形成されたバンド装着用の凹部３５ｄ，４５ｄ内にそれぞれ装着される。

ここで、両ブーツ３５，４５の小径端部３５ｂ，４５ｂと中間軸２とがそれぞれ密着状態となっており、シール性が確保されている。具体的には、両ブーツ３５，４５の小径端部３５ｂ，４５ｂの内周側には、径方向内向きに隆起する（突出する）シール用の環状のリップ（突出部）３６，４６が３つずつ形成されている。そして、ブーツ３５，４５の弾性力と締め付けバンド６，６の締め付け力とによって、リップ３６，４６が圧縮変形して中間軸２の外周面に密着している。これにより、両ジョイント３，４内の潤滑剤の外部への漏洩が防止されるとともに、両ジョイント３，４内への泥水などの浸入が防止される。なお、図１〜図３では、リップ３６，４６が圧縮変形して中間軸２の外周面に密着しているため、リップ３６，４６の図示を省略している。

また、ブーツ３５，４５の大径端部３５ｃ，４５ｃの内径は、未使用状態ではジョイント３，４の外筒部材３２，４２の外径に比べて若干小径に形成されている。大径端部３５ｃ，４５ｃは、拡径された状態で外筒部材３２，４２の開口端の外周にそれぞれ嵌合される。そして、大径端部３５ｃ，４５ｃの外径側に締め付けバンド７，７がそれぞれ装着されることによって、ブーツ３５，４５の大径端部３５ｃ，４５ｃ側が外筒部材３２，４２に固定される。締め付けバンド７，７は、小径端部３５ｂ，４５ｂの外周に沿って形成されたバンド装着用の凹部３５ｅ，４５ｅ内にそれぞれ装着される。

ここで、両ブーツ３５，４５の大径端部３５ｃ，４５ｃと外筒部材３２，４２とがそれぞれ密着状態となっており、シール性が確保されている。具体的には、両ブーツ３５，４５の大径端部３５ｃ，４５ｃの内周側には、径方向内向きに隆起する（突出する）シール用の環状のリップ（突出部）３７，４７が３つずつ形成されている。ブーツ３５，４５の弾性力と締め付けバンド７，７の締め付け力とによって、リップ３７，４７が圧縮変形して外筒部材３２，４２の外周面に密着している。これにより、両ジョイント３，４内の潤滑剤の外部への漏洩が防止されるとともに、両ジョイント３，４内への泥水などの浸入が防止される。なお、図１〜図３では、リップ３７，４７が圧縮変形して中間軸２の外周面に密着しているため、リップ３７，４７の図示を省略している。

なお、締め付けバンド６，７は、伸縮性を有するバンドであってもよいし、あるいは、伸縮せずとも締め付け径を大小変更できるような構造のバンドであってもよい。また、両ジョイント３，４の外筒部材３２，４２の外周面が円形ではない場合には、シール性を確保するために、外筒部材３２，４２の開口端側外周面に外径側が円筒形のアダプタを装着する。そして、アダプタの外周面にブーツ３５，４５の大径端部３５ｃ，４５ｃを嵌合装着する。この場合、ブーツ３５，４５の大径端部３５ｃ，４５ｃの内径が、未使用状態でアダプタの外径に比べて若干小径に形成される。アダプタは、例えば、インボードジョイント３の外筒部材３２の外周面が、その内径側の複数の直線溝３２ａそれぞれの間に対応する領域が径方向内向きに窪んでいる場合などに用いられる。ただし、以下では、両ジョイント３，４の外筒部材３２，４２の外周面が円形であることとする。

次に、ブーツに設けられるリップについて、図６〜図９を用いて説明する。以下では、本発明をインボードジョイント３に装着されるブーツ３５の大径端部３５ｃのリップ３７（３７ａ，３７ｂ，３７ｃ）に適用した場合について説明する。この例のブーツ３５の大径端部３５ｃのリップ３７は、以下で説明するように、中間軸２へのインボードジョイント３の組み付け時（組み付け中）には、ブーツ３５の内部と外部とを連通する一方、その組み付け終了後には、ブーツ３５の内部と外部とを遮断する通気手段となっている。図６〜図９では、インボードジョイント３に使用されるブーツ３５の大径端部３５ｃの一部を示しており、図６〜図８には、未使用状態のブーツ３５の大径端部３５ｃのリップを示し、図９には、締め付けバンド装着前の状態のブーツ３５の大径端部３５ｃのリップを示している。

ブーツ３５の大径端部３５ｃの内周には、３つのリップ３７ａ，３７ｂ，３７ｃが軸方向に所定間隔おきに並んで設けられている。軸方向中央に設けられた第１のリップ３７ｂは、その一部が切り欠かれて形成されており、この第１のリップ３７ｂには、複数の切欠き部（凹部）３８，３８，・・・が設けられている。切欠き部３８は、円周方向に所定間隔おきに設けられている。未使用状態では、第１のリップ３７ｂの切欠き部３８が設けられていない部分における径方向内側への突出量Ｌ１が、第１のリップ３７ｂの切欠き部３８が設けられた部分における径方向内側への突出量Ｌ２に比べ大きくなっている（Ｌ１＞Ｌ２）。なお、上記突出量Ｌ２は、「０」であってもよい。

一方、軸方向両端側に設けられた第２のリップ３７ａ，３７ｃには、軸方向中央の第１のリップ３７ｂとは異なって、切欠き部は設けられていない。つまり、第２のリップ３７ａ，３７ｃの径方向内側への突出量Ｌａ，Ｌｃは全周にわたって均一になっている。また、軸方向一端側（ブーツ３５の外部側）に設けられた第２のリップ３７ａの径方向内側への突出量Ｌａと、軸方向他端側（ブーツ３５の内部側）に設けられた第２のリップ３７ｃの径方向内側への突出量Ｌｃとは等しくなっている（Ｌａ＝Ｌｃ）。

ここで、未使用状態では、第１のリップ３７ｂの切欠き部３８が設けられていない部分における突出量Ｌ１が、第２のリップ３７ａ，３７ｃの突出量Ｌａ，Ｌｃよりも大きくなっている（Ｌ１＞Ｌａ＝Ｌｃ）。また、第１のリップ３７ｂの切欠き部３８が設けられた部分における突出量Ｌ２が、第２のリップ３７ａ，３７ｃの突出量Ｌａ，Ｌｃよりも小さくなっている（Ｌ２＜Ｌａ＝Ｌｃ）。

上述のように、ブーツ３５の大径端部３５ｃの内周には、突出量が大きく切欠き部を有する第１の突出部としての第１のリップ３７ｂと、突出量が小さく切欠き部のない第２の突出部としての第２のリップ３７ａ，３７ｃとが設けられているので、ブーツ３５の組み付け時に、次のような作用効果が得られる。

ブーツ３５の組み付けは、ブーツ３５を装着するインボードジョイント３を中間軸２に組み付ける際に併せて行われる。具体的に、組み付け作業は、まず、中間軸２の一端側にブーツ３５の小径端部３５ｂを嵌め付け、締め付けバンド６を締め付けて、ブーツ３５の小径端部３５ｂを中間軸２に固定させる。次に、中間軸２の一端側に、インボードジョイント３の内筒部材３１とローラ３３とベアリング３４とのジョイント部品を組み付ける。

そして、この状態の内筒部材３１とローラ３３とベアリング３４とのジョイント部品に対し、外筒部材３２を軸方向に沿ってＹ１方向に組み付け位置Ｘ１（図２）までスライドさせて組み付けを行う。この際、まず、図１０に示すように、外筒部材３２をスライド前の位置Ｘ２に配置する。この位置Ｘ２は、組み付け位置Ｘ１よりも軸方向で一端側、つまり、Ｙ１方向とは逆側（図１０では左側）に位置している。そして、その位置Ｘ２に外筒部材３２を配置した状態で、ブーツ３５の胴部３５ａを軸方向に伸張させて大径端部３５ｃを外筒部材３２に嵌め付ける。このとき、ブーツ３５の大径端部３５ｃには、締め付けバンド７をまだ締め付けない。なお、ブーツ３５の大径端部３５ｃへの嵌め付け前に、所定量の潤滑剤をブーツ３５の内部および外筒部材３２の内部に封入しておく。

次に、外筒部材３２を位置Ｘ２から組み付け位置Ｘ１まで軸方向に沿ってＹ１方向にスライドさせて、外筒部材３２を組み付け位置Ｘ１に配置する。これにともない、ブーツ３５の胴部３５ａが軸方向に収縮する。そして、ブーツ３５の大径端部３５ｃに締め付けバンド７を締め付けて、ブーツ３５の大径端部３５ｃを外筒部材３２に固定させて組み付け作業を終了する。これにより、図２に示すように、中間軸２の一端側にインボードジョイント３が組み付けられるとともに、ブーツ３５が装着される。

上述したように、ブーツ３５の中間軸２およびインボードジョイント３への組み付け時には、ブーツ３５の内容積が変化するが、この例では、ブーツ３５の大径端部３５ｃに第１，第２のリップ３７ａ，３７ｂ，３７ｃが設けられているので、簡単な構成でありながら、ブーツ３５の内圧（ブーツ３５の内部および外筒部材３２の内部の圧力）の変化を防止することができる。

具体的には、外筒部材３２を位置Ｘ２から組み付け位置Ｘ１までスライドさせたとき、ブーツ３５が収縮して、このブーツ３５の内容積が減少する。この際、締め付けバンド７がまだ締め付けられていないので、ブーツ３５の大径端部３５ｃのリップ３７ａ，３７ｂ，３７ｃを介して、ブーツ３５内の空気が外部へ流出される。つまり、図９に示すように、大径端部３５ｃのリップ３７ａ，３７ｂ，３７ｃのうち、第１のリップ３７ｂの切欠き部３８が設けられていない部分が外筒部材３２の外周面に密着している一方、第２のリップ３７ａ，３７ｃの内周面、および、第１のリップ３７ｂの切欠き部３８が設けられた部分は、外筒部材３２の外周面に密着しておらず、隙間が生じている。これにより、ブーツ３５の内部と外部とが連通される。この状態では、ブーツ３５内の空気が、第２のリップ３７ｃの内周面と外筒部材３２の外周面との隙間、第１のリップ３７ｂの切欠き部３８、第２のリップ３７ａの内周面と外筒部材３２の外周面との隙間を通って、外部へ流出される。

一方、大径端部３５ｃのリップ３７ａ，３７ｂ，３７ｃは、締め付けバンド７を締め付けた組み付け終了後には、圧縮変形されて外筒部材３２の外周面に密着されるため、ブーツ３５の内部と外部とが遮断される。この状態では、リップ３７ａ，３７ｂ，３７ｃを介してのブーツ３５内の空気および潤滑剤の外部への流出が防止される。

したがって、ブーツ３５の組み付け時に、ブーツ３５が収縮して、その内容積が減少しても、ブーツ３５の内圧の上昇を防止して、ブーツ３５の内圧を外部の圧力（大気圧）に維持することができる。その結果、ブーツ３５の組み付け終了後に、ブーツ３５の内圧を調整する作業を行う必要もなく、ブーツ３５の内外の圧力が同じ状態でインボードジョイント３を使用することができ、ブーツ３５およびジョイント部品の劣化を防止できる。

次に、変形例について説明する。

上述した例では、ブーツ３５の大径端部３５ｃに３つのリップ３７ａ，３７ｂ，３７ｃを設けた場合ついて説明したが、リップの数は、径方向内側への突出量が大きく切欠き部を有する第１のリップと、突出量が小さく切欠き部のない第２のリップとが少なくとも１つずつ設けられていれば、特に限定されない。例えば、ブーツの大径端部の内周側に突出量が大きく切欠き部を有する第１のリップと、突出量が小さく切欠き部のない第２のリップとをそれぞれ１つずつ設ける構成としてもよい。この場合、突出量が小さく切欠き部のない第２のリップをブーツの外部側に設け、突出量が大きく切欠き部を有する第１のリップをブーツの内部側に設けることが好ましい。

また、例えば、図１１〜図１４に示すように、ブーツ１３５の大径端部１３５ｃの内周側に４つのリップ１３７ａ，１３７ｂ，１３７ｃ，１３７ｄを設ける構成としてもよい。図１１〜図１４では、両端側の第２のリップ１３７ａ，１３７ｄが、突出量が小さく切欠き部のないリップとなっており、その中間の第１のリップ１３７ｂ，１３７ｃが、突出量が大きく切欠き部を有するリップとなっている。ここで、第１のリップ１３７ｂの切欠き部１３８ｂの円周方向の位置と第１のリップ１３７ｃの切欠き部１３８ｃの円周方向の位置とが互いに異なっている。つまり、軸方向に沿った方向から見ると、第１のリップ１３７ｂの切欠き部１３８ｂと第１のリップ１３７ｃの切欠き部１３８ｃとが互いに重なり合わないようなラビリンス構造となっている。切欠き部１３８ｂ，１３８ｃをラビリンス構造とすることで、ブーツ１３５の組み付け時に、ブーツ１３５内の空気が外部へ流出される一方で、ブーツ１３５内の潤滑剤は外部へ流出されにくくなる。これにより、ブーツ１３５の組み付け時に、ブーツ１３５の内圧の上昇を防止することができるとともに、ブーツ１３５内の潤滑剤の外部への流出量を抑制することができる。なお、突出量が大きく切欠き部を有する第１のリップが３つ以上設けられる場合、軸方向で互いに隣り合う第１のリップの切欠き部の円周方向の位置が異なっていればよく、隣り合っていない第１のリップについては、切欠き部の円周方向の位置が重なり合っていてもよい。

第１，第２のリップの断面形状、径方向内側への突出量、切欠き部の大きさや数などについても、締め付けバンドを締め付ける前に、ブーツ内の空気を外部へ流出可能であれば、特に限定されない。第１，第２のリップの断面形状は、図示するような三角形だけに限られず、例えば、台形や、丸みを帯びた形状であってもよい。また、第１，第２のリップの径方向内側への突出量は、例えば、突出量が小さく切欠き部のない第２のリップが複数設けられる場合、その突出量が異なっていてもよい。また、切欠き部の数についても、円周方向の少なくとも１箇所に設けられていればよい。

また、上述した例では、インボードジョイント３の外筒部材３２の外周面が円形であり、上述したアダプタを用いない場合について説明したが、外筒部材３２の外径側にアダプタを装着し、そのアダプタの外周面にブーツ３５の大径端部３５ｃを嵌合する構成としてもよい。この場合、中間軸２の一端側に組みつけられた内筒部材３１とローラ３３とベアリング３４とのジョイント部品に対し、外筒部材３２とアダプタとを軸方向に沿ってスライドさせて組み付けを行う。

また、インボードジョイント３の外筒部材３２の外周面が円形ではない場合であっても、アダプタを用いずに、ブーツ３５の大径端部３５ｃを嵌合する構成としてもよい。この場合、例えば、上記特許文献２に示されるように、ブーツの大径端部の内周面を外筒部材の外周面に倣う形状に成形する。そして、その大径端部の内周面に、突出量が大きく切欠き部を有する第１のリップと、突出量が小さく切欠き部のない第２のリップとを形成する。

以上では、本発明をインボードジョイントに装着されるブーツの大径端部のリップに適用した場合について説明したが、このブーツの小径端部のリップ（図４の場合、リップ３６）に適用してもよい。また、インボードジョイントに装着されるブーツの両端部のリップに適用することも可能である。ただし、上述したような手順で、ブーツの中間軸およびインボードジョイントへの組み付けを行う場合には、本発明を少なくともブーツの大径端部のリップに適用することが好ましい。

また、ドライブシャフトのインボードジョイントがトリポード型等速ジョイントである場合について説明したが、インボードジョイントはそれ以外の等速ジョイントであってもよい。なお、上述したトリポード型等速ジョイントのように、中間軸への組み付けの際、ジョイント部品を軸方向に沿ってスライドさせて組み付けを行うように構成されているスライド構造のジョイントの場合には、ジョイント部品のスライドにともない、ブーツの内容積が減少するため、本発明を適用することは効果的である。ただし、スライド構造以外のジョイントの場合にも、本発明を適用すれば、ブーツの組み付け時に、ブーツの内圧の上昇を防止することができ、有効である。

さらに、本発明をアウトボードジョイントに装着されるブーツの端部のリップに適用することも可能である。この場合、ブーツの大径端部のリップ（図５の場合、リップ４７）に適用してもよいし、小径端部のリップ（図５の場合、リップ４６）に適用してもよい。また、アウトボードジョイントはバーフィールド型等速ジョイント以外の等速ジョイントであってもよい。なお、アウトボードジョイントについても、スライド構造のジョイントを採用した場合、ジョイント部品のスライドにともない、ブーツの内容積が減少するため、本発明を適用することは効果的である。

上述した例では、ブーツが自動車などの車両のドライブシャフトに備えるジョイントに使用される場合について説明したが、本発明のブーツの使用対象はそれ以外であってもよい。例えば、車両のプロペラシャフトやアクスルシャフト、あるいは、各種の産業機械などに用いる動力伝達軸に備える適宜のジョイントに、本発明のブーツを使用することが可能である。

本発明に係るブーツの使用対象となるドライブシャフトを示す断面図である。図１のインボードジョイント周辺を拡大して示す図である。図１のアウトボードジョイント周辺を拡大して示す図である。インボードジョイントに使用されるブーツを示す断面図である。アウトボードジョイントに使用されるブーツを示す断面図である。インボードジョイントに使用されるブーツを軸方向に沿って大径端部側から見た一部を示す図である。図６のＡ−Ａ断面図であって、未使用状態のブーツの大径端部のリップを示す図である。図６のＢ−Ｂ断面図であって、未使用状態のブーツの大径端部のリップを示す図である。締め付けバンド装着前の状態のブーツの大径端部のリップを示す断面図である。ブーツの中間軸およびインボードジョイントへの組み付け中の状態を示す図である。ブーツに設けられるリップの変形例を示す図であって、ブーツを軸方向に沿って大径端部側から見た一部を示す図である。図１１のＣ−Ｃ断面図である。図１１のＤ−Ｄ断面図である。締め付けバンド装着前の状態のブーツの大径端部のリップを示す断面図である。

符号の説明

１ドライブシャフト
２中間軸
３インボードジョイント
７締め付けバンド
３２外筒部材
３５ブーツ
３５ｂ小径端部
３５ｃ大径端部
３７ｂ第１のリップ（第１の突出部）
３７ａ，３７ｃ第２のリップ（第２の突出部）
３８切欠き部
Ｌ１，Ｌ２，Ｌａ，Ｌｃ突出量

Claims

軸部材に取り付けられるジョイントに装着され、開口を塞ぐブーツであって、
前記軸部材の外周に嵌合される一端部、および、前記ジョイントの開口端側の外周に嵌合される他端部を備え、
前記軸部材およびジョイントへの組み付け時には、当該ブーツの内部と外部とを連通する一方、その組み付け終了後には、当該ブーツの内部と外部とを遮断する通気手段を備えていることを特徴とするブーツ。
前記通気手段が、前記両端部のうち少なくとも一方の端部の内周側に設けられた径方向内側への複数の突出部として構成され、
前記複数の突出部には、径方向内側への突出量が大きい第１の突出部と、径方向内側への突出量が小さい第２の突出部とが少なくとも１つずつ含まれており、
前記第１の突出部には、円周方向の少なくとも１箇所に切欠き部が設けられていることを特徴とする請求項１に記載のブーツ。
前記第１の突出部が複数設けられる場合、軸方向で互いに隣り合う第１の突出部の切欠き部の円周方向の位置が異なっていることを特徴とする請求項２に記載のブーツ。
前記ジョイントが、このジョイントの前記軸部材への組み付けをジョイント部品を軸方向に沿ってスライドさせて行うように構成されていることを特徴とする請求項１〜３のいずれかに記載のブーツ。