JP2008142768A - 中空スタビライザの溶接方法および中空スタビライザ - Google Patents
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Abstract
【課題】中空スタビライザ本体の端部に溶接接合される取付用フランジとの溶接ビート面を一度の溶接工程で、溶接ビード止端部を滑らかに形成して、新たな溶接ビート面の仕上げ加工を不要とし、加工工数の短縮を図るとともにコスト低減を達成できる中空スタビライザの溶接方法を提供するとともに、溶接溶接止端部における応力集中を防止して溶接強度を向上した中空スタビライザを提供すること。
【解決手段】接合部を上方から溶接するように溶接トーチ21を位置させ、パイプ部材の中心軸線Xを中心に溶接治具15にセットしたパイプ部材3および取付用フランジ5を回転させてパイプ部材3の全周にわたってアルゴン(Ar)と二酸化炭素(CO2)との混合ガスをシールドガスとするマグ溶接によって接合することを特徴とする。
【選択図】図2
【解決手段】接合部を上方から溶接するように溶接トーチ21を位置させ、パイプ部材の中心軸線Xを中心に溶接治具15にセットしたパイプ部材3および取付用フランジ5を回転させてパイプ部材3の全周にわたってアルゴン(Ar)と二酸化炭素(CO2)との混合ガスをシールドガスとするマグ溶接によって接合することを特徴とする。
【選択図】図2
Description
本発明は、キャブオーバ型トラックのキャブ装架装置に用いられる中空スタビライザの取付用フランジと中空パイプを溶接によって形成された中空スタビライザに関するものである。
チルトキャブはエンジン、クラッチ、変速機等の点検整備に便利であるため、いわゆるキャブオーバ型トラックに採用されており、またキャブ自体の振動、操縦安定性を向上するためにキャブ用の懸架ばねやスタビライザを備えたキャブサスペンションが使用されている。
このスタビライザを用いたキャブサスペンション構造の一例を図6に簡単に示す。この図6は、キャブサスペンション構造においてシャシフレーム01とキャブフレーム03との間に空気バネ05を設けた場合を示す。シャシフレーム01の前部上面にキャブマウントブラケット07が立設され、左右のシャシフレーム01、01のそれぞれに立設された左右のキャブマウントブラケット07、07間にチルト中心軸線Cに沿って車幅方向にスタビライザ09が延設される。
一方、キャブフレーム03側には、チルト中心軸線Cより後方位置に左右にブラケット011、011を垂下し、該両ブラケット011、011間にスタビライザ09と一体的に連結されたリンク013をピン015で軸支している。
このスタビライザを用いたキャブサスペンション構造の一例を図6に簡単に示す。この図6は、キャブサスペンション構造においてシャシフレーム01とキャブフレーム03との間に空気バネ05を設けた場合を示す。シャシフレーム01の前部上面にキャブマウントブラケット07が立設され、左右のシャシフレーム01、01のそれぞれに立設された左右のキャブマウントブラケット07、07間にチルト中心軸線Cに沿って車幅方向にスタビライザ09が延設される。
一方、キャブフレーム03側には、チルト中心軸線Cより後方位置に左右にブラケット011、011を垂下し、該両ブラケット011、011間にスタビライザ09と一体的に連結されたリンク013をピン015で軸支している。
また、前記スタビライザ09前方の、シャシフレーム01のクロスメンバとキャブフレーム03との間に設けられたレベリングバルブ017によってシャシフレーム01とキャブフレーム03との間の変位量を検知して、該変位量に応じて前記空気バネ05の空気圧が調整されるようになっている。
そして、車両走行時のキャブの左右方向の振動ないし捩れは、車両左右のリンク013、013によるスタビライザ09の捩れを生じ、その反発力によって振動ないしは捩れが抑えられるようになっている。
このスタビライザ09の詳細構造を、図7(a)、(b)、(c)に示す。パイプ状のスタビライザ本体019と、そのスタビライザ本体019の両端部分に溶接固定されて、スタビライザ本体019をキャブマウントブラケット07やリンク013に取付けるためのボルト孔021、021が設けられた板状の取付用フランジ023とを有している。
スタビライザ本体019と取付用フランジ023とは一般的にCO2アーク溶接によって、パイプ全周に取付用フランジ023の両面を溶接している。CO2アーク溶接の溶接状態は図7(c)に示すように、溶接ビード025の断面形状が凸形状になっているため、溶接ビード止端部027に形状変化が大きく現れ、その溶接ビード止端部027に応力集中が生じやすくなる問題があった。
スタビライザ本体019と取付用フランジ023とは一般的にCO2アーク溶接によって、パイプ全周に取付用フランジ023の両面を溶接している。CO2アーク溶接の溶接状態は図7(c)に示すように、溶接ビード025の断面形状が凸形状になっているため、溶接ビード止端部027に形状変化が大きく現れ、その溶接ビード止端部027に応力集中が生じやすくなる問題があった。
このような溶接ビード止端部を滑らかにして応力集中を防止して溶接強度を高めるものとして特開平6−227372号公報(特許文献1)が知られている。
特許文献1には、図8に示すように、アクスルハウジング031の外周にブレーキフランジ033を溶接する技術が示され、ブレーキフランジ033をアクスルハウジング031の円筒部外周に外嵌して、ブレーキフランジ033の両面側をアクスルハウジング031の円筒部全周に溶接した後、アクスルハウジング031側およびブレーキフランジ033側の溶接ビード止端部035、035にショットピーニング装置037を用いてショット039を高速投射する溶接方法について示されている。
ショットピーニング処理を行うことによって、溶接ビード止端部035、035に残留圧縮応力が発生し、且つ、溶接ビード止端部035、035の表面形状が滑らかとなって強度向上が図れるものが示されている。
特許文献1には、図8に示すように、アクスルハウジング031の外周にブレーキフランジ033を溶接する技術が示され、ブレーキフランジ033をアクスルハウジング031の円筒部外周に外嵌して、ブレーキフランジ033の両面側をアクスルハウジング031の円筒部全周に溶接した後、アクスルハウジング031側およびブレーキフランジ033側の溶接ビード止端部035、035にショットピーニング装置037を用いてショット039を高速投射する溶接方法について示されている。
ショットピーニング処理を行うことによって、溶接ビード止端部035、035に残留圧縮応力が発生し、且つ、溶接ビード止端部035、035の表面形状が滑らかとなって強度向上が図れるものが示されている。
また、中空のスタビライザの両端部に溶接接合される部品との溶接強度を向上しようとするものとして、特開平11−333586号公報(特許文献2)が知られている。
この特許文献2には、図9に示すように、中空スタビライザ本体041の両端部にすえ込みを施して肉厚043にし、取付用パイプ045に加圧力048を加えて抵抗溶接により結合した後に、その抵抗溶接によって中空スタビライザ本体041の端部が軟化して押し潰されて内外周にはみ出した部分047を含めてアーク溶接049をする方法が示されており、抵抗溶接とアーク溶接との二重溶接を施すことによって結合力向上を図る技術が示されている。
特開平6−227372号公報
特開平11−333586号公報
この特許文献2には、図9に示すように、中空スタビライザ本体041の両端部にすえ込みを施して肉厚043にし、取付用パイプ045に加圧力048を加えて抵抗溶接により結合した後に、その抵抗溶接によって中空スタビライザ本体041の端部が軟化して押し潰されて内外周にはみ出した部分047を含めてアーク溶接049をする方法が示されており、抵抗溶接とアーク溶接との二重溶接を施すことによって結合力向上を図る技術が示されている。
しかし、特許文献1に記載のような、溶接ビード止端部035、035にショットピーニング装置037を用いてショット039を高速投射する溶接方法では、溶接ビード止端部035、035にショット039を高速投射するために新たにショットピーニング装置037が必要であり、接合工数の増加およびコスト増の問題を生じる。
また、特許文献2に記載のような、中空スタビライザ本体041への取付用パイプ045の溶接方法では、抵抗溶接とアーク溶接049との二度の溶接を行わなくてはならず、接合工数の増加およびコスト増の問題を有している。
そこで、本発明は、このような背景に鑑みなされたものであり、中空スタビライザ本体の端部に溶接接合される取付用フランジとの溶接ビート面を一度の溶接工程で、溶接ビード止端部を滑らかに形成して、新たな溶接ビート面の仕上げ加工を不要とし、加工工数の短縮を図るとともにコスト低減を達成できる中空スタビライザの溶接方法を提供するとともに、溶接溶接止端部における応力集中を防止して溶接強度を向上した中空スタビライザを提供することを課題とする。
前記課題を解決するため、本発明は、キャブサスペンションを構成するパイプ部材からなる中空スタビライザの両端部分に板状の取付用フランジを溶接接合する中空スタビライザの溶接方法において、前記ハイプ部材の中心軸線を水平より傾斜させた状態でパイプ部材の端部に前記取付用フランジを前記中心軸線に対して直角に配置して溶接治具にセットし、接合部を上方から溶接するように溶接トーチを位置させ、前記中心軸線を中心に前記溶接治具にセットした前記パイプ部材および取付用フランジを回転させてパイプ部材の全周にわたってアルゴン(Ar)と二酸化炭素(CO2)との混合ガスをシールドガスとするマグ溶接によって接合することを特徴とする。
かかる発明によれば、アルゴン(Ar)と二酸化炭素(CO2)との混合ガスをシールドガスとするマグ溶接によって溶接するため、アルゴン(Ar)が混在したシールドガスの雰囲気下では、二酸化炭素(CO2)だけのシールドガスの場合に比べてアークによる溶接ワイヤや溶接棒の溶融金属の飛び方がより液状化し、流動性を有するため、溶接ビードの表面粗度がよくなるとともに、直角状態に接合されるパイプ部材と取付用フランジとの直角の接合部分において、凹形状の溶接ビード断面形状を形成することができる。すなわち、溶接ビードの断面形状を凸状に突出せずに脚長が長く、のど厚さを薄くした凹形状とすることができる。
その結果、溶接ビード止端部にショットを高速投射して平坦にするような加工が不要となり、中空スタビライザ本体の端部に溶接接合される取付用フランジとの溶接ビート面を一度の溶接工程で、溶接ビード止端部を滑らかに形成することができ、加工工数の短縮を図るとともにコスト低減を達成することができる。
また、中空スタビライザのパイプ部材の中心軸線を水平より傾斜させた状態でパイプ部材の端部に前記取付用フランジを前記中心軸線に対して直角に配置して溶接治具にセットし、接合部を上方から溶接するように溶接トーチを位置させるため、前述したように流動性の富む溶融金属がパイプ部材の外周に沿って上方から下方へ流れるようにして接合部に付着するため、溶接ビードの凹断面形状の形成を確実に行なうことができる。
好ましくは、前記パイプ部材の中心軸線を水平より略45度傾斜し、前記溶接トーチを上方から前記パイプ部材と取付用フランジとの交差部を向くように配置するとともに、前記回転方向において前記中心軸線に対して片側にオフセットして配置することを特徴とする。
このようにパイプ部材の中心軸線を水平より略45度傾斜させ、溶接トーチが上方からパイプ部材と取付用フランジとの交差部を向くように配置される構成によって、溶接トーチから発生されるアークがパイプ部材と取付用フランジとの接合部に向かって確実に形成される。
さらに、前記溶接トーチが前記回転方向において前記中心軸線に対して片側にオフセットして配置されるため、アークによる溶融金属が回転中心軸線から片側にずれていることで、パイプ部材の外周面に沿って溶融金属が垂れるように溶着するため、溶接ビードの断面形状が凹形状になりやすい。
さらに、前記溶接トーチが前記回転方向において前記中心軸線に対して片側にオフセットして配置されるため、アークによる溶融金属が回転中心軸線から片側にずれていることで、パイプ部材の外周面に沿って溶融金属が垂れるように溶着するため、溶接ビードの断面形状が凹形状になりやすい。
また、前記溶接の始点および終点の位置を一定位置として溶接の繋ぎ目の位置を、パイプ部材に接合される前記取付用フランジの全ての溶接箇所において一定にすることを特徴とする。
このような構成によって、溶接欠陥となりやすい溶接の始点と終点との繋ぎ目の位置を、パイプ部材に接合される取付用フランジの全ての溶接箇所で一定にすることによって、パイプ部材の両端部に接合される左右の取付用フランジの強度および耐久性のバラツキを抑えることができる。
このような構成によって、溶接欠陥となりやすい溶接の始点と終点との繋ぎ目の位置を、パイプ部材に接合される取付用フランジの全ての溶接箇所で一定にすることによって、パイプ部材の両端部に接合される左右の取付用フランジの強度および耐久性のバラツキを抑えることができる。
さらに、溶接ビードの断面形状のビート脚長(L)とビードのど厚(H)との関係が、H/L<1/√2の関係になるように形成することを特徴とする。
このような構成によって、溶接ビードの断面形状を凸状に突出せずに脚長が長く、のど厚さを薄くした凹形状とすることができ、その結果、溶接ビード止端部にショットを高速投射して平坦にするような加工が不要となり、中空スタビライザ本体の端部に溶接接合される取付用フランジとの溶接ビート面を一度の溶接工程で、溶接ビード止端部を滑らかに形成することができ、加工工数の短縮を図るとともにコスト低減を達成することができる。
このような構成によって、溶接ビードの断面形状を凸状に突出せずに脚長が長く、のど厚さを薄くした凹形状とすることができ、その結果、溶接ビード止端部にショットを高速投射して平坦にするような加工が不要となり、中空スタビライザ本体の端部に溶接接合される取付用フランジとの溶接ビート面を一度の溶接工程で、溶接ビード止端部を滑らかに形成することができ、加工工数の短縮を図るとともにコスト低減を達成することができる。
また、本発明はキャブサスペンションを構成するパイプ部材からなる中空スタビライザの両端部分に板状の取付用フランジを溶接接合してなる中空スタビライザであって、前記取付用フランジが前記パイプ部材の外周に嵌合されるとともに前記取付用フランジの両側面を前記請求項1乃至4のいずれか1項に記載の溶接方法で溶接接合されて構成されることを特徴とする。
かかる発明によれば、前記した中空スタビライザの溶接方法を用いてパイプ部材に取付用フランジを溶接接合することによって、溶接止端部における応力集中を防止して溶接強度を向上した中空スタビライザを得ることができるとともに、さらに溶接欠陥となりやすい溶接の始点と終点との繋ぎ目の位置を、パイプ部材に接合される取付用フランジの全ての溶接箇所で一定にすることによって、ハイプ部材の両端部に接合される左右の取付用フランジの強度および耐久性のバラツキを抑えた中空スタビライザを得ることができる。
本発明によれば、中空スタビライザ本体の端部に溶接接合される取付用フランジとの溶接ビート面を一度の溶接工程で、溶接ビード止端部を滑らかに形成して、新たな溶接ビート面の仕上げ加工を不要とし、加工工数の短縮を図るとともにコスト低減を達成できる中空スタビライザの溶接方法を提供するとともに、溶接止端部における応力集中を防止して溶接強度を向上した中空スタビライザを提供することができる。
以下、図面を参照して本発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。但しこの実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
本発明の実施の形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
参照する図面において、図1は本発明の中空スタビライザを示す説明図であり、(a)は側面図、(b)は正面図、(c)は(b)のA部拡大断面図である。図2は本発明の中空スタビライザの溶接方法を説明するための溶接装置の概要説明図であり、(a)は側面図、(b)は正面図である。図3は試験装置の概要説明図である。図4は溶接確認計測位置の説明図であり、(a)はパイプ部材の周方向の位置を示し、(b)は溶接ビードの断面形状の計測位置を示す。図5は疲労試験結果を示す説明図。図6はキャブサスペンションの構造を示す概略説明図である。
参照する図面において、図1は本発明の中空スタビライザを示す説明図であり、(a)は側面図、(b)は正面図、(c)は(b)のA部拡大断面図である。図2は本発明の中空スタビライザの溶接方法を説明するための溶接装置の概要説明図であり、(a)は側面図、(b)は正面図である。図3は試験装置の概要説明図である。図4は溶接確認計測位置の説明図であり、(a)はパイプ部材の周方向の位置を示し、(b)は溶接ビードの断面形状の計測位置を示す。図5は疲労試験結果を示す説明図。図6はキャブサスペンションの構造を示す概略説明図である。
本発明の実施の形態に係る中空スタビライザ1は、図1(a)、(b)に示すように、円筒鋼材のパイプ部材3がスタビライザ本体を構成し、このパイプ部材3の両端部に板状の取付用フランジ5、5が溶接される。この取付用フランジ5、5は、略菱形形状をなし中心部にはパイプ部材3の外周に嵌合する貫通孔7が設けられ、その取付用フランジ5の両端部には対称位置にキャブマウントブラケット等への取付用のボルト孔9、9が穿設されている。
本発明は後述するようにパイプ部材3への取付用フランジ5の溶接方法が従来技術とは異なり、図7(c)の溶接ビード025のような凸形状ではなく、図1(c)の溶接ビード11のようにパイプ部材3の全周にわたり断面形状が凹形状になっており、溶接ビード止端部13がパイプ部材3および取付用フランジ5に滑らかにつながるように形成されている。
なお、中空スタビライザ1は、図6で示したキャブサスペンションのスタビライザとして用いられるものであり、キャブサスペンション構造については説明を省略する。
なお、中空スタビライザ1は、図6で示したキャブサスペンションのスタビライザとして用いられるものであり、キャブサスペンション構造については説明を省略する。
次に、中空スタビライザ1を構成するパイプ部材3と取付用フランジ5との溶接方法について図2を参照して説明する。
図2(a)は、溶接治具15の載置面17上に載置されたパイプ部材3と取付用フランジ5との側面図を示す。
この図2(a)に示すように、溶接治具15の載置面17上に、取付用フランジ5と該取付用フランジ5の貫通孔7に嵌合したパイプ部材3とを、載置面17上に図示しないクランプによって位置決めして固定する。さらに載置面17には位置決めピン19が突設されており、パイプ部材3の内周に挿入してパイプ部材3を載置面17に対して直角方向に位置決めしている。
図2(a)は、溶接治具15の載置面17上に載置されたパイプ部材3と取付用フランジ5との側面図を示す。
この図2(a)に示すように、溶接治具15の載置面17上に、取付用フランジ5と該取付用フランジ5の貫通孔7に嵌合したパイプ部材3とを、載置面17上に図示しないクランプによって位置決めして固定する。さらに載置面17には位置決めピン19が突設されており、パイプ部材3の内周に挿入してパイプ部材3を載置面17に対して直角方向に位置決めしている。
そして、パイプ部材3の中心軸線Xは水平面に対して45度傾斜した状態でセットされている。溶接トーチ21は図2(a)に示すようにパイプ部材3と取付用フランジ5との交差部Pを指向して配置されている。
また、溶接治具15は中心軸線Xを中心に図示しない回転機構によって回転されるように構成されている。
また、溶接治具15は中心軸線Xを中心に図示しない回転機構によって回転されるように構成されている。
図2(b)は、溶接治具15の載置面17上に載置されたパイプ部材3と取付用フランジ5との正面図を示す。
この図に示すように、溶接トーチ21は、溶接治具15の回転方向nに対して反対側にmだけオフセットし、パイプ部材3と取付用フランジ5との交差部Pを向くように傾斜角α度傾斜して配置されている。
そして、このような溶接トーチ21の位置において、溶接治具15を回転しながら、パイプ部材3の外周に沿ってパイプ部材3と取付用フランジ5との接合部を溶接する。
この図に示すように、溶接トーチ21は、溶接治具15の回転方向nに対して反対側にmだけオフセットし、パイプ部材3と取付用フランジ5との交差部Pを向くように傾斜角α度傾斜して配置されている。
そして、このような溶接トーチ21の位置において、溶接治具15を回転しながら、パイプ部材3の外周に沿ってパイプ部材3と取付用フランジ5との接合部を溶接する。
溶接の開始位置と終了位置とはそれぞれ図1(a)に示す点Qの位置に定めて、図1(b)に示す左右のそれぞれの取付用フランジ5、5における両側面の溶接を全て同一の点Qの位置から溶接の開始と終了とを行い溶接の繋ぎ目の位置を統一している。
このように、溶接欠陥となりやすい溶接の始点と終点との繋ぎ目の位置を、パイプ部材3に接合される取付用フランジ5の全ての溶接箇所で一定にすることによって、パイプ部材3の両端部に接合される左右の取付用フランジ5、5の強度および耐久性のバラツキを抑えることができる。
このように、溶接欠陥となりやすい溶接の始点と終点との繋ぎ目の位置を、パイプ部材3に接合される取付用フランジ5の全ての溶接箇所で一定にすることによって、パイプ部材3の両端部に接合される左右の取付用フランジ5、5の強度および耐久性のバラツキを抑えることができる。
溶接は、パイプ部材3の全周にわたってアルゴン(Ar)と二酸化炭素(CO2)との混合ガスをシールドガスとするマグ溶接によるアーク溶接によって行う。
このマグ溶接とは、シールドガスに不活性ガスと炭酸ガス(二酸化炭素ガス)とを混合したものを使用するアーク溶接のことをいい、本実施の形態においては、アルゴン(Ar)を80%と二酸化炭素(CO2)を20%の混合ガスを用いて溶接を行う。
このマグ溶接とは、シールドガスに不活性ガスと炭酸ガス(二酸化炭素ガス)とを混合したものを使用するアーク溶接のことをいい、本実施の形態においては、アルゴン(Ar)を80%と二酸化炭素(CO2)を20%の混合ガスを用いて溶接を行う。
アルゴン(Ar)が混在したシールドガスの雰囲気下では、二酸化炭素(CO2)だけのシールドガスの場合に比べて、スパッタ(飛散する金属微粒子)が少なく溶接ビード表面が滑らかである。即ち、アークによる溶接ワイヤや溶接棒の溶融金属の飛び方がより液状化し、流動性を有するため、溶接ビードの表面粗度がよくなるとともに、その結果、直角状態に接合されるパイプ部材と取付用フランジとの直角の接合部分において、凹形状の溶接ビード断面形状を形成することができる。
すなわち、図1(c)に示すように、溶接ビード11の断面形状を凸状に突出せずに脚長Lが長く、のど厚さHを薄くした凹形状とすることができる。
すなわち、図1(c)に示すように、溶接ビード11の断面形状を凸状に突出せずに脚長Lが長く、のど厚さHを薄くした凹形状とすることができる。
なお、脚長Lとのど厚さHとの関係は、H/L<1/√2の関係になるように形成することが好ましく、このような寸法関係に形成することによって、従来の図7(c)に示すような溶接ビード11の断面形状を凸状に突出せずに、脚長Lが長く、のど厚さHを薄くした凹形状とすることができる。
図1(c)に示すような凹形状とすることができる結果、溶接ビード止端部にショットを高速投射して平坦にするような加工が不要となり、パイプ部材3の端部に溶接接合される取付用フランジ5との溶接ビード11形状を一度の溶接工程で、溶接ビード止端部13を滑らかに形成することができ、加工工数の短縮を図るとともにコスト低減を達成することができる。
また、図2(a)に示すようにパイプ部材3の中心軸線Xを水平より略45度傾斜させ、溶接トーチ21が上方からパイプ部材3と取付用フランジ5との交差部を向くように配置される構成によって、溶接トーチ21から発生されるアークがパイプ部材3と取付用フランジ5との接合部に向かって確実に形成される。すなわち流動性の富む溶融金属がパイプ部材3の外周に沿って上方から下方へ流れるようにして接合部に付着するため、溶接ビード11の凹断面形状の形成を確実に行なうことができる。
さらに、溶接トーチ21が回転方向n対して反対側にオフセットして配置されて、アークによる溶融金属が回転中心軸線Xから片側にずれているため、パイプ部材3の外周面沿って垂れるように溶着するため、溶接ビード11の凹断面形状をより形成しやすくなる。
以上のように、本実施の形態によれば、アルゴン(Ar)と二酸化炭素(CO2)との混合ガスをシールドガスとするマグ溶接によって溶接するため、アルゴン(Ar)が混在したシールドガスの雰囲気下では、二酸化炭素(CO2)だけのシールドガスの場合に比べてアークによる溶接ワイヤや溶接棒の溶融金属の飛び方がより液状化し、流動性を有するため、溶接ビードの表面粗度がよくなるとともに、直角状態に接合されるパイプ部材3と取付用フランジ5との直角の接合部分において、凹形状の溶接ビード形状を形成することができる。すなわち、溶接ビード11の断面形状を凸状に突出せずに脚長が長く、のど厚さを薄くした凹形状とすることができる。
その結果、溶接ビード止端部にショットピーニングを高速投射して平坦にするような加工が不要となり、パイプ部材3の端部に溶接接合される取付用フランジ5との溶接ビード11形状を一度の溶接工程で、溶接ビード止端部13を滑らかに形成することができ、加工工数の短縮を図るとともにコスト低減を達成することができる。
次に、前記のアルゴン(Ar)と二酸化炭素(CO2)との混合ガスをシールドガスとするマグ溶接によるアーク溶接と、従来の二酸化炭素(CO2)だけのシールドガスによるアーク溶接との強度比較について説明する。
図3に試験装置の概要を示す。図に示すように鋼板23にパイプ25を全周溶接し、そのパイプ25に横荷重を負荷して溶接ビード止端部Sでの亀裂発生について、疲労強度評価試験を行った。
パイプ25の溶接は、二酸化炭素(CO2)だけのシールドガスによるアーク溶接による場合も、アルゴン(Ar)と二酸化炭素(CO2)との混合ガスをシールドガスとするマグ溶接によるアーク溶接の場合も、図2に示す溶接方法によって全周溶接を行って試験片を作成した。
アルゴン(Ar)と二酸化炭素(CO2)との混合ガスをシールドガスとする本発明によるマグ溶接後の溶接ビードの断面形状について、計測結果の一例を表1に示す。
この表1の数値は、図4(a)のパイプ25の円周上の4箇所の計測位置で、(b)の溶接ビート27の断面形状の計測値を示す。
アルゴン(Ar)と二酸化炭素(CO2)との混合ガスをシールドガスとする本発明によるマグ溶接後の溶接ビードの断面形状について、計測結果の一例を表1に示す。
この表1の数値は、図4(a)のパイプ25の円周上の4箇所の計測位置で、(b)の溶接ビート27の断面形状の計測値を示す。
表1に示すように、溶接ビードの断面形状は脚長Lが長く、のど厚さHを薄くした凹形状となっていることが確認された。
また、図5に疲労試験結果を示す。横軸に繰り返し回数を示し、縦軸に横荷重の負荷を示す。図中の黒丸が従来の二酸化炭素(CO2)だけのシールドガスによるアーク溶接による場合を示し、白丸がアルゴン(Ar)と二酸化炭素(CO2)との混合ガスをシールドガスとするマグ溶接によるアーク溶接の場合を示す。
そして、黒丸、白丸の位置において、溶接ビード止端部Sでの亀裂発生が見られ、矢印黒丸、矢印白丸には亀裂の発生は見られなかったことを示している。
この結果から、縦軸の横荷重の負荷が約3.5(KN)から5(KN)に向上し、約30%の疲労強度の向上が確認された。
そして、黒丸、白丸の位置において、溶接ビード止端部Sでの亀裂発生が見られ、矢印黒丸、矢印白丸には亀裂の発生は見られなかったことを示している。
この結果から、縦軸の横荷重の負荷が約3.5(KN)から5(KN)に向上し、約30%の疲労強度の向上が確認された。
従って、従来の二酸化炭素(CO2)だけのシールドガスによるアーク溶接に比べて、溶接ビード11の部分の疲労強度が向上するため、中空スタビライザ1の捩じり方向入力E、車両ヨー方向入力Fに対する耐久性が向上する。
本発明によれば、中空スタビライザ本体の端部に溶接接合される取付用フランジとの溶接ビート面を一度の溶接工程で、溶接ビード止端部を滑らかに形成して、新たな溶接ビート面の仕上げ加工を不要とし、加工工数の短縮を図るとともにコスト低減を達成できる中空スタビライザの溶接方法を提供するとともに、溶接溶接止端部における応力集中を防止して溶接強度を向上した中空スタビライザを提供することができるので、車両用中空スタビライザへの適用に際して有益である。
1 中空スタビライザ
3 パイプ部材
5 取付用フランジ
7 貫通孔
11 溶接ビート
13 溶接ビード止端部
15 溶接治具
17 載置面
19 位置決めピン
21 溶接トーチ
3 パイプ部材
5 取付用フランジ
7 貫通孔
11 溶接ビート
13 溶接ビード止端部
15 溶接治具
17 載置面
19 位置決めピン
21 溶接トーチ
Claims (5)
- キャブサスペンションを構成するパイプ部材からなる中空スタビライザの両端部分に板状の取付用フランジを溶接接合する中空スタビライザの溶接方法において、
前記パイプ部材の中心軸線を水平より傾斜させた状態でパイプ部材の端部に前記取付用フランジを前記中心軸線に対して直角に配置して溶接治具にセットし、接合部を上方から溶接するように溶接トーチを位置させ、前記中心軸線を中心に前記溶接治具にセットした前記パイプ部材および取付用フランジを回転させてパイプ部材の全周にわたってアルゴン(Ar)と二酸化炭素(CO2)との混合ガスをシールドガスとするマグ溶接によって接合することを特徴とする中空スタビライザの溶接方法。 - 前記パイプ部材の中心軸線を水平より略45度傾斜し、前記溶接トーチを上方から前記パイプ部材と取付用フランジとの交差部を向くように配置するとともに、前記回転方向において前記中心軸線に対して片側にオフセットして配置することを特徴とする請求項1記載の中空スタビライザの溶接方法。
- 前記溶接の始点および終点の位置を一定位置として溶接の繋ぎ目の位置を、パイプ部材に接合される前記取付用フランジの全ての溶接箇所において一定にすることを特徴とする請求項1または2記載の中空スタビライザの溶接方法。
- 溶接ビードの断面形状のビード脚長(L)とビードのど厚(H)との関係が、H/L<1/√2の関係になるように形成することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の中空スタビライザの溶接方法。
- キャブサスペンションを構成するパイプ部材からなる中空スタビライザの両端部分に板状の取付用フランジを溶接接合してなる中空スタビライザであって、前記取付用フランジが前記パイプ部材の外周に嵌合されるとともに前記取付用フランジの両側面を前記請求項1乃至4のいずれか1項に記載の溶接方法で溶接接合されて構成されることを特徴とする中空スタビライザ。
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JP2006336437A JP2008142768A (ja) | 2006-12-13 | 2006-12-13 | 中空スタビライザの溶接方法および中空スタビライザ |
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-
2006
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