JP2008141307A - 圧電振動子及びその製造方法ならびに物理量センサー - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、小型で精度の高い圧電振動子と、その圧電振動子を用いた小型で精度の高い物理量センサーを提供することができる。また、生産効率に優れ、生産性の高い圧電振動子の製造方法を提供することができ、さらには、小型で精度の高い圧電振動子の製造方法を提供することができる。
【解決手段】基部と基部から突出する振動脚とを備えた圧電振動片を有し、この圧電振動片に電圧を印加するための電極を備えた圧電振動子において、圧電振動片の電極の上面に絶縁膜が形成されることを特徴とする。また、その製造方法は、圧電材料を加工し、圧電振動片を形成する振動片形成工程と、圧電振動片上に電極を形成する電極形成工程と、圧電振動片に電圧を印加して振動脚を振動させ振動脚の共振周波数を測定する振動測定工程と、電極の上面に絶縁膜を成膜して振動脚が所望の共振周波数になるよう調整する振動調整工程とを有している。
【選択図】図1

Description

所定の振動数で精度良く発振する小型の圧電振動子とその製造方法に関し、さらにはこの圧電振動子を用いた高精度で小型の物理量センサーに関する。
近年、携帯電話やウェアラブル機器に代表される小型携帯機器の需要が高まりつつある。こうした小型携帯機器には振動子が必要不可欠であり、特に高精度で発振する振動子の要求が高まってきている。
従来は、こうした所定の振動数で精度良く発振する信頼性の高い振動子を製造するために以下に示すような製造方法が用いられていた(例えば特許文献1参照。)。
図10は従来の圧電振動子の一形態である水晶振動子の斜視図である。従来の水晶振動子40は、基部120とこの基部120から突出して形成されている2本の振動脚110を有した水晶振動片100と、その水晶振動片100に電圧を加え振動脚110を振動させるための電極200と、振動調整するための粗調用電極252と微調用電極251が、それぞれ配置されている。また、基部120にパターニングされる電極200からは、外部電源や外部回路(図示せず。)とつながるワイヤ600が接続されている。
この粗調用電極252と微調用電極251は、除去加工されることによって水晶振動子40の周波数を例えば32.768kHzに調整するための電極である。粗調用電極252はメッキ法等の成膜方法によって厚く形成され、微調用電極251はスパッタリング法や蒸着法等の成膜方法によって薄く形成される。粗調用電極252も微調用電極251も比重の大きいAu(金)で形成されるのが一般的である。
具体的には、まず、粗調用電極252と微調用電極251を配置した状態で、水晶振動子40を共振回路で発振させ、周波数を測定する。そして、この測定された周波数と目標周波数である32.768KHzとの差を出す。このとき、水晶振動子40の周波数は目標周波数より低くなるように粗調用電極252等が配置されている。
次に、この測定された周波数と目標周波数との差に基づき、粗調用電極252にYAGレーザー60を照射し、粗調用電極252を部分的に除去する。これにより、Auからなる粗調用電極252の付加質量が減じ、水晶振動子40の周波数が高くなるようになっている。
粗調用電極252には、比重の大きいAuが厚く形成されているので、一回のYAGレーザー60の照射による除去量(質量減少量)は大きく、速やかに周波数を上げることができ、具体的には周波数を32.768KHz近傍まで一気に近づけることができる。このようにして、32.768KHz近傍まで周波数を近づけた後、次に微調用電極251に対してYAGレーザー60を照射することにより、目標の周波数になるように水晶振動子40の周波数を合わせ込む。
この時、微調用電極251は薄く形成されているので、一回のYAGレーザー60の照射では除去量(質量減少量)は小さく、その結果、より精密に周波数を調整することができるのである。
またさらに精度良く周波数を調整するために、微調用電極251を一定の間隔を設け
た複数のパターンで形成し、且つ表面側の微調用電極251をレーザー加工した時に裏面側の微調用電極251(図10では隠れて表示されていない。)が一緒に加工されないように、表面側の微調用電極251と裏面側の微調用電極251とを互い違いに配置していた。
さらに水晶振動子を用いた振動型ジャイロセンサーにおいても、同様にレーザー加工による周波数調整が行われていた(例えば特許文献2参照。)。振動型ジャイロセンサーはコリオリ力を利用した角速度センサーであり、詳しくは、一定の周波数で振動している振動脚に回転が加わると、振動している方向に対し垂直な方向にコリオリ力が働く原理を利用した角速度センサーである。
振動型ジャイロセンサーでは、回転が加わっていない状態で振動脚を駆動させた時の振動モードを面内振動と呼び、回転が加わりコリオリ力を検出する時の振動モードを面外振動と呼ぶが、この面内振動の固有振動数と、面外振動の固有振動数を適度に離して設定するのが、振動型ジャイロセンサーの感度と安定性を両立する上で重要である。
通常、面内振動の固有振動数と面外振動の固有振動数の差を離調度と称してその値を厳しく管理し、この離調度を数百Hz程度に設定するのが望ましいとされている。従来の場合、これら面内、面外振動の固有振動数を調整し、離調度を合わせ込む工程においても、レーザー加工法によって調整用電極を除去する方法が用いられていた。
特開2003−133885号公報(第7頁、図1) 特開2006−10659号公報(第7頁、図1)
従来の水晶振動子の製造方法によれば、本来、水晶振動子としての動作上、まったく使われることのない微調用電極251と粗調用電極252を周波数調整のためだけにわざわざ形成する必要があった。
微調用電極251は、精度の高い周波数調整を行うために、微細で精度良くパターニングしなくてはならず、一方、粗調用電極252は、厚く形成するために、メッキ工程を余計に行う必要がある。このように微調用電極251、粗調用電極252とも、それらを形成するのには、多くの手間と時間を労するものである。その結果、従来の水晶振動子の製造方法では生産効率が非常に悪かった。
また、従来は電極200が形成された後の状態でなければ、水晶振動子40を発振させることはできず、周波数調整時に誤って電極200を断線させてしまうことが多々あった。その結果、不良が多発し生産性が悪化してしまうことがあった。
さらに従来の水晶振動子の製造方法では、YAGレーザー60を微調用電極251、粗調用電極252に位置精度良く照射しないと、精度の高い周波数調整ができない。しかしながら水晶振動子40が小型になると、必然的に微調用電極251、粗調用電極252も小さく形成されるため、YAGレーザー60のビームスポットを正確に微調用電極251、粗調用電極252に照射することが難しくなる。よって、従来の方法では水晶振動子40が小型化されればされるほど周波数調整し難くなる。
さらには、従来の水晶振動子の製造方法では、微調用電極251、粗調用電極252を形成するスペースが水晶振動片100の表面に必ず必要とされる。その一方で水晶振動子40として優れた電気特性を得るためには、最低限の電極200を配置するスペースが必
要である。このように従来の場合、これら電極(電極200、微調用電極251、粗調用電極252)すべてを配置するスペースを確保しなければならないため、小型化が非常に難しかった。
本発明の目的は、小型で精度の高い圧電振動子と、その圧電振動子を用いた小型で精度の高い物理量センサーを提供することである。また、生産効率に優れ、生産性の高い圧電振動子の製造方法を提供することにあり、さらには、小型で精度の高い圧電振動子の製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明の圧電振動子は、基部と、この基部から突出する振動脚とを備えた圧電振動片を有し、この圧電振動片に電圧を印加するための電極を備えた圧電振動子において、前記電極の上に、前記振動脚の周波数を調整するための絶縁膜を形成したことを特徴としている。
さらに、圧電振動片は、電極が形成される表面とこの表面に対向し電極が形成される裏面とを備え、絶縁膜は、表面または裏面のどちらか一方における全面に形成されているのが望ましい。
さらに、圧電振動片は、水晶で形成されるのが望ましい。
または、基部と、この基部から突出し、圧電薄膜が形成された振動脚とを備えたシリコンからなる振動片を有し、圧電薄膜に電圧を印加するための電極を振動片に備えた圧電振動子において、振動片は、電極が形成される電極面とこの電極面に対向し前記電極が形成されない非電極面とを備え、電極の上にまたは非電極面の全面に、振動脚の周波数を調整するための絶縁膜を形成したことを特徴としている。
また本発明の物理量センサーは、上記圧電振動子を用いて外部から印加された物理量を検出することを特徴としている。
さらに、物理量センサーは振動型ジャイロセンサーであるのが望ましい。
また本発明の圧電振動子の製造方法は、基部と、この基部から突出する振動脚とを備えた圧電振動片を有し、この圧電振動片に電圧を印加するための電極を備えた圧電振動子の製造方法において、圧電材料を加工し、圧電振動片を形成する振動片形成工程と、圧電振動片に電極を形成する電極形成工程と、圧電振動片に電圧を印加して振動脚を振動させ、この振動脚の共振周波数を測定する振動測定工程と、電極の上に絶縁膜を成膜して、振動脚が所望の共振周波数になるよう調整する振動調整工程を有することを特徴としている。
さらに、圧電振動片は、水晶で形成されるのが望ましい。
または、基部と、この基部から突出し、圧電薄膜が形成された振動脚とを備えたシリコンからなる振動片を有し、圧電薄膜に電圧を印加するための電極を前記振動片に備えた圧電振動子の製造方法において、電極と圧電薄膜とを積層させて形成する圧電薄膜形成工程と、シリコンウェハーをエッチング法で加工し、振動片を形成する振動片形成工程と、圧電薄膜に電圧を印加して振動脚を振動させ、この振動脚の共振周波数を測定する振動測定工程と、電極の上または電極が形成されない非電極面に絶縁膜を成膜して、振動脚が所望の共振周波数になるよう調整する振動調整工程を有することを特徴としている。
さらに、絶縁膜はパウダージェットデポジション法またはエアロゾルデポジション法に
よって成膜されるのが望ましい。
(作用)
本発明の上記手段では、圧電材料からなり基部と基部から突出した振動脚を有する圧電振動片と、圧電振動片に電圧を印加し振動脚を振動させるための電極を備えた圧電振動子において、振動脚に形成される電極の上に振動調整用の絶縁膜を形成している。従来は、微調用電極と粗調用電極は、振動脚を振動させるための電極とは別に設けて、これら微調用電極、粗調用電極を除去する量で振動脚の共振周波数を調整していたが、本発明では絶縁膜を成膜する量、詳しくは成膜する厚さで振動脚の共振周波数を調整している点が大きく異なる点である。
従来は電極の電気的短絡をさけるために、微調用電極、粗調用電極のためのスペースをわざわざ別に設けなければならず、そのために小型化への障害になっていたが、本発明では、電気的絶縁性を有する膜(絶縁膜)を使用するので、電極上に形成しても何ら問題がない。そのため、振動脚の表面に余計なスペースを確保する必要が無く、小型化に適している。
さらに本発明の圧電振動子は電極上に絶縁膜が形成されることで、電極を保護する役目も兼ねている。その結果、従来よりも信頼性を向上させることができる。
さらに、本発明では圧電振動片の電極が形成される表面と裏面のうち、外部回路との接続が無い方の面については、絶縁膜に覆われたとしても導通不良を起こす問題がないため、絶縁膜をパターニングせずに全面に成膜してもかまわない。この場合、絶縁膜のパターニングの工程を省くことができるので、生産性をより向上させることができる。
なお、上記圧電振動片は水晶からなるのが望ましい。水晶はエッチング法によって加工することが容易な圧電材料であり、圧電振動子の小型化に適しているからである。
また、本発明は、シリコンからなり基部と基部から突出した振動脚を有する振動片と、振動脚に形成される圧電薄膜と、圧電薄膜に電圧を印加するための電極を備えた圧電振動子にも利用可能である。この場合でも、絶縁膜は振動調整用として用いられ、絶縁膜を成膜する厚さでシリコンからなる振動脚の共振周波数を調整している。
なお、上記圧電薄膜が振動脚上に形成される圧電振動子の場合、電極は圧電薄膜上に形成されるが、通常、圧電薄膜は振動片の表面か裏面のどちらか一方のみに形成されるので、圧電薄膜が形成されない側の面は、必然的に電極は形成されない。
よって、上記圧電薄膜が振動脚上に形成される圧電振動子の場合においては、周波数調整のための絶縁膜は必ずしも電極上に形成する必要はなく、電極が形成されていない側の非電極面、すなわち圧電薄膜が形成されていない側の面に絶縁膜を形成することが可能であり、この場合でも周波数調整は出来る。
なおこのような構造の圧電振動子を物理量センサーに用いることで、物理量センサーの小型化や信頼性向上にも寄与できる。特に物理量センサーの中でも角速度センサーの一つである振動型ジャイロセンサーに有効である。
振動型ジャイロセンサーでは、回転が加わっていない状態で振動脚を駆動させた時の面内振動と、回転が加わりコリオリ力を検出する時の面外振動という2つの振動モードがあり、それぞれの共振周波数を適度に離して設定することで、振動型ジャイロセンサーの感度と安定性を両立させることが可能である。本発明を用いると、この2つの振動モードを
非常に精度良く調整することができ、その結果、理想的な振動モードに合わせ込むことができる。
本発明の上記製造方法では、圧電材料を加工し、基部と振動脚を有する圧電振動片を形成する振動片形成工程と、圧電振動片上に電極を形成する電極形成工程と、圧電振動片に電圧を印加して振動脚を振動させ振動脚の共振周波数を測定する振動測定工程と、振動脚が所望の共振周波数になるよう調整する振動調整工程によって、圧電振動子を製造している。
これに対し、従来は、この他に微調用電極と粗調用電極を形成する工程が必要であった。特に粗調用電極は、周波数変化量を大きくするために質量を多くする必要があり、厚く形成しなければならず、厚膜形成可能なメッキ法を用いらざるを得なかった。メッキ法は成膜面の前洗浄が必要であったり、処理時間が長時間に及んだりするため、生産性が非常に悪いという欠点がある。
本発明は、このような微調用電極と粗調用電極の形成工程が必要ないので、製造工程が非常に簡略化され、生産性を向上させることができる。
また本発明の製造方法では、振動調整工程における振動脚の共振周波数の調整は、絶縁膜を成膜することによって行っている。詳しくは、成膜される絶縁膜の膜厚を制御することによって振動脚上に付加される絶縁膜の質量を調整し、これにより振動脚の共振周波数を調整している。
従来の振動調整工程では、微調電極、粗調電極をレーザー等で除去することで行っていたが、小型化が進み、微調用電極、粗調用電極が小さくなると、レーザーを位置精度良く微調用電極、粗調用電極に照射することが難しくなり、精度の高い周波数調整はできなかった。また位置精度良くレーザーの照射ができず、振動脚を駆動させるための電極までも除去してしまい、電極の断線不良を発生させることも多々あった。
本発明の製造方法では、絶縁膜の成膜位置は限定されるものではなく、振動脚上であれば特にどの位置であっても問題はない。本発明の製造方法において、周波数調整の精度は主に絶縁膜の膜厚で決定されるので、絶縁膜の膜厚制御さえ正確にできれば圧電振動子が小型化されても、精度の高い周波数調整が可能である。また、電極を断線させる不安はまったくないので、従来あった電極の断線不良をなくすことができる。
さらに、本発明では電極膜上に絶縁膜形成することで、電極膜を保護することができ、信頼性を向上させることができる。
なお、上記圧電振動片は水晶ウェハーをエッチング法で加工して形成されるのが望ましい。水晶はエッチング法によって加工することが容易な圧電材料であり、精度良く且つ微細に加工することができ、圧電振動子の小型化に適しているからである。
また、本発明のシリコンからなる振動片上に圧電薄膜を形成した圧電振動子の製造方法においては、シリコンウェハー上に電極と圧電薄膜とを積層させて形成する圧電薄膜形成工程が別途必要となるが、この工程は電極形成を同時に行っているので、工程上に負担はほとんど無い。
また、絶縁膜はパウダージェットデポジション法またはエアロゾルデポジション法によって成膜されるのが望ましい。パウダージェットデポジション法もしくはエアロゾルデポジション法は、絶縁材料からなる微粒粉体を吹き付けて、その衝撃力によって成膜を行う
方法であり、成膜速度が速い点が大きな特徴である。そのため、絶縁膜を短時間で厚く形成することができるので、生産性が良好である。
さらに、パウダージェットデポジション法またはエアロゾルデポジション法は室温状態で成膜が可能であるので、電極や圧電材料に熱的なダメージを与える心配が無く、その結果、高い信頼性を有する圧電振動子を得ることができる。
さらに、パウダージェットデポジション法もしくはエアロゾルデポジション法は、微粒粉体の吹き付け角度によって成膜速度が異なるという特徴を有しており、面に対して垂直に微粒粉体を吹き付ける場合が最も成膜速度が速く、面に沿って吹き付ける場合にはほとんど成膜されない。
ゆえに、振動脚の電極が形成されている一平面に対して垂直に微粒粉体を吹き付ければ、その一平面にしか絶縁膜は形成されず、振動脚の側面(一平面とは垂直な角度で接している面)にはまったく絶縁膜は形成されない。
その結果、振動脚の一平面上に成膜される絶縁膜の厚みだけを管理すればよく、絶縁膜の厚みを精度良くコントロールすれば周波数を精度良く調整することが可能である。
このように上記手段によれば、生産効率に優れ、生産性の高い圧電振動子と、その製造方法を提供できるようになった。
さらに、小型で精度の高い圧電振動子と、その製造方法を提供できるようになった。
さらに、その圧電振動子を用いた小型で精度の高い物理量センサーを提供できるようになった。
本発明によれば、小型で精度の高い圧電振動子と、その圧電振動子を用いた小型で精度の高い物理量センサーを提供することができる。また、生産効率に優れ、生産性の高い圧電振動子の製造方法を提供することができ、さらには、小型で精度の高い圧電振動子の製造方法を提供することができる。
(第1の実施形態)
図1は本発明の水晶を用いた圧電振動子の外観を示した図である。本発明の圧電振動子10は、基部120と基部120から突出した2本の振動脚110を備えた水晶振動片100と、水晶振動片100の表面にパターニングされ振動脚110に電圧を印加するための電極200と、振動脚110上にパターニングして形成された絶縁膜300とで構成されている。
なお、電極200は水晶振動片100の基部120にも振動脚110にも形成されており、さらには、水晶振動片100の表面とこの表面に対向する裏面を含む複数の面にわたって形成されている。電極200の基部120上に形成される部分にはワイヤ600が接続され、このワイヤ600を介して外部電源や外部回路(図示せず。)と接続がなされる。一方、電極200の振動脚110上に形成される部分は振動脚110に電圧を印加し振動脚110を振動させるために用いられる。
本実施形態の圧電振動子10では、振動脚110上に形成される電極200の上部に、電極200を覆うようにして絶縁膜300が形成されている。なお本第1の実施形態にお
いて絶縁膜300は、図1に示すように、ワイヤ600が接続する表面と同一面上に成膜される。ワイヤ600の電極200との接続工程は絶縁膜300が成膜された後に行われるため、仮に絶縁膜300が振動脚110だけでなく基部120にも成膜されてしまうと、ワイヤ600と電極200の電気的な接続を阻害してしまうことになる。そのため、本実施形態では絶縁膜300をパターニングして振動脚110上のみに形成されるようにした。
図2は本発明の圧電振動子の製造方法を示した図である。図2は図1のB−B断面を示している。以下に本実施形態の圧電振動子10の製造方法について説明する。まず、図2(a)に示すように、水晶ウェハー1000の両方の面に水晶のエッチング液に対して耐食性を有する材料で所定の形状のマスク層400を形成する。
本実施形態では、板厚が200μmの水晶ウェハー1000の両面に基部120と基部120から突出する2本の振動脚110の外形形状をかたどった下層がクロム(Cr)膜で上層が金(Au)膜からなる二層構造のマスク層400を形成した。具体的には、真空成膜法の一つであるスパッタリング法を用いて、水晶ウェハー1000上に0.03μm厚のCr膜を成膜し、さらにそのCr膜上に0.15μm厚のAu膜を成膜した後、フォトリソグラフィー法とエッチング法を用いて水晶振動片100の外形形状にパターニングした。
フォトリソグラフィー法とエッチング法を用いたパターニング方法は一般にLSI分野で広く用いられており、ミクロン以下の非常に高い精度でのパターニングが可能であることが一般にも知られている。
なお本実施形態では、下層がCr膜で上層がAu膜からなる二層構造のマスク層400を形成したが、Cr膜は水晶ウェハー1000とAu膜との密着性を高めることを目的としたものであり、一方、Au膜はこの後のエッチング工程で使用されるフッ酸やフッ化アンモニウム等のエッチング液から水晶ウェハー1000を保護するための膜である。
ただし、必ずしもCr膜とAu膜を使う必要はない。下層膜として水晶ウェハー1000との密着性が良好なニッケル(Ni)膜やチタン(Ti)膜を密着層として使ってもかまわないし、上層膜としてエッチング液に対して耐食性の高い材料であればAu膜以外の膜を使用してもかまわない。
なお本実施形態では、マスク層400の成膜にスパッタリング法を用いたが成膜方法に関してもスパッタリング法だけに限られるわけではない。この他にも、蒸着法やCVD法、さらにはメッキ法やスプレーコーティング法など、多様な成膜方法が利用可能である。
さらにパターニング方法に関しても、フォトリソグラフィー法とエッチング法の組合せに限られるわけではなく、インクジェット法やレーザープリント法やナノインプリント法など、いかなるパターニング法を用いてもかまわない。
次に、水晶ウェハー1000のマスク層400に覆われていない部分をウェットエッチング法によってエッチングして、2本の振動脚110を備えた水晶振動片100を形成する(図2(b))。ウェットエッチング法は、ミクロン以下の精度で加工できるという利点だけでなく、水晶振動片100内に加工歪み(加工による内部応力)をほとんど発生させないという利点もある。本実施形態では、フッ酸とフッ化アンモニウムの混合物からなるバッファードフッ酸をエッチング液として用い、ウェットエッチングを行った。
なお、図2(a)、図2(b)では一枚の水晶ウェハー1000から2本の振動脚11
0を備えた水晶振動片100を一個しか形成していないかのように描かれているが、当然のごとく、一枚の水晶ウェハー1000から多数の水晶振動片100を形成した方が生産効率の点で望ましい。本実施形態においても一枚の水晶ウェハー1000から多数の水晶振動片100を形成した。
なお、この時、複数の水晶振動片100を個別に分割してしまう必要はなく、各々を部分的に繋がらせておき、もとの水晶ウェハー1000と同じ程度の大きさのままにしておく方が望ましい。なぜなら、その方が取り扱い上、便利であるからである。取り扱いに便利な大きさ(振動片100が繋がった状態)で後工程を流し、最終工程付近の工程で一つ一つの水晶振動片100に分割させれば、生産性は非常に良くなる。
なお本発明の圧電振動子の製造方法では、以上の図2(a)から図2(b)までに示す工程を振動片形成工程と称している。
次に、図2(c)に示すように、水晶振動片100の振動脚110、及び基部120(基部120は図2(c)には図示せず。)上に電極200を所望の形状で形成する。なお、電極200の一部は、Au膜とCr膜とで構成されるマスク層400を再度パターニングすることによって形成することも可能であるが、本実施形態では、マスク層400をエッチング法によって除去した後、水晶振動片100上に0.15μm厚のAu膜(上層)と0.03μm厚のCr膜(下層)をもう一度スパッタ法によって成膜し、その膜を用いてフォトリソグラフィー法によって電極200を形成した。なお本発明の圧電振動子の製造方法では、この電極200を形成する工程を電極形成工程と呼んでいる。
次に、図2(d)に示すように、電極200に電圧を印加し、水晶の圧電効果を使って、振動脚110を振動させ、この時点での振動脚110の共振周波数f1′を測定する。本発明の圧電振動子の製造方法では、本工程を振動測定工程と称している。
なお本振動測定工程の時点で、測定した共振周波数f1′が所望とする設計通りの共振周波数f1になることは非常にまれである。なぜなら共振周波数には振動脚110の形状が大きく起因しており、振動脚110の長さ、幅、厚みのすべてが設計通りに作られていないと設計通りの共振周波数にはならないからである。
本実施形態では水晶振動片100の形成に高精度の加工が可能なウェットエッチング法を使っているため、振動脚110の幅と長さについては非常に精度良く加工できているが、厚みについては水晶ウェハー1000の厚みのばらつきが、そのまま振動脚110の厚みのばらつきとして残ってしまうため、圧電振動子10に要求されるppmオーダーの共振周波数の規格に入れることは難しいのである。
そこで本発明では、図2(e)に示すように、測定された共振周波数f1′に応じて厚みを制御しながら絶縁膜300の成膜を行い、所望とする設計通りの共振周波数f1になるように調整した。本発明の圧電振動子の製造方法では、本工程を振動調整工程と称している。
なお本実施形態では、アルミナ(Al)からなる絶縁膜300をエアロゾルデポジション(AD)法によって成膜した。AD法は、1μm以下の大きさの微粒粉体をノズルから成膜面に吹き付けて、その衝撃力で微粒粉体の材料からなる膜を成膜する方法であり、常温下で、短時間にミクロンオーダーの厚い膜を成膜することが可能な方法である。
よって、AD法を使えば、水晶振動片100や電極200に熱的ダメージを与えることがなく、且つ振動脚110の共振周波数が変化する程度の質量変化をもたらす厚い膜を短
時間で成膜することができ、圧電振動子10の信頼性及び生産性を向上させるのに非常に有効な手段である。
また、AD法であれば、微粒粉体を噴出するノズルの位置を制御することによって、図1に示すように振動脚110上にのみ、成膜することができるので、絶縁膜300のパターニングも容易に行うことができる。
なお、AD法は、微粒粉体の吹き付け角度によって成膜速度が異なるという特徴を有している。詳しくは、面に対して垂直に微粒粉体を吹き付ける場合が最も成膜速度が速く、面に沿った角度で吹き付ける場合にはほとんど成膜されない。
ゆえに、振動脚110の電極200が形成されている所定の面に対して垂直に微粒粉体を吹き付ければ、その面にしか絶縁膜300は形成されず、振動脚の所定の面に対し垂直な角度で接している側面にはまったく絶縁膜300は形成されない。
その結果、振動脚110の一平面上に成膜される絶縁膜300の厚みだけを管理すれば絶縁膜300の質量は管理でき、共振周波数f1を精度良く調整することが可能である。
なお、本発明では、以上のような利点があることからAD法を用いて絶縁膜300の成膜を行ったが、本発明の絶縁膜300の成膜方法はこれに限られるわけではない。大気雰囲気中でAD法と同様の方法で成膜を行うパウダージェットデポジション法や、インクジェット法、スパッタリング法など厚みの制御が可能な成膜方法であればいかなる成膜法を用いてもかまわない。
また、本実施形態では絶縁膜300としてAlを利用したが、絶縁膜であれば、特に材料は問われず、酸化シリコン(SiO)、酸化チタン(TiO)、窒化シリコン(SiN)等を使用しても何ら問題はない。
このようにして本実施形態では、AD法によってAlからなる絶縁膜300を2μm成膜することによって、共振周波数を約200Hz変化させることができ、その結果、所望の共振周波数f1に調整することができた。
その後、部分的に繋がっていた水晶振動片100を一つ一つに分断した後、圧電振動子10を封入するパッケージに実装し、ワイヤボンディング法によって、電極200とワイヤ600を接続して完成に至る。
以上のようにして製造された本発明の圧電振動子10(図1)には、従来の水晶振動子40(図10)では必要とされていた微調用電極251と粗調用電極252を形成する必要がなくなった。従来はこれら微調用電極251、粗調用電極252を形成するために多くの手間と時間を労しており、本発明ではこれらの形成工程がなくなったことで非常に生産性が上がった。
また、本実施形態では電極200を形成した後に電極200の上に絶縁膜300を成膜して共振周波数の調整を行っている。従来の製造方法のように、電極200を形成した後、除去加工がなされるわけではない。よって、従来は多く発生していた除去加工ミスによる電極200の断線不良が、まったく発生しなくなった。さらには、絶縁膜300が電極200を覆うことによって保護膜の役目をなすため、後工程においても電極200の損傷不良は低減し、その結果、信頼性を格段に向上させることができた。
また、本発明では、絶縁膜300が形成される場所は、振動脚110上であればどこで
あってもかまわず、場所の制限は特にない。従来のように振動脚110上に微調用電極251、粗調用電極252を形成するためのスペースをわざわざ設ける必要がないので、小型化に適している。
さらに、従来のように振動脚110上に微調用電極251、粗調用電極252を形成する必要がないため、その空いたスペースの分だけ電極200を振動脚110の先端方向にまで延ばすことが可能である。その結果、水晶振動片100のクリスタルインピーダンス(CI)値を低減させることができ、優れた振動特性を得ることができる。
なお、本実施形態では、水晶を用いた圧電振動子10を一例に挙げたが、水晶以外の圧電材料、例えばニオブ酸リチウム(LiNbO)等の圧電材料で振動片を形成しても、本発明の効果は同様に得ることができる。
(第2の実施形態)
図3は本発明の水晶を用いた別の圧電振動子の外観と振動脚の断面を示した図である。図3(a)は圧電振動子11の外観を示した図で、図3(b)は図3(a)に示す圧電振動子11のC−C断面を示した図である。本発明の別の圧電振動子11は、基部120と基部120から突出した2本の振動脚110を備えた水晶振動片100と、水晶振動片100の表面にパターニングされ振動脚110に電圧を印加するための電極200と、水晶振動片100の裏面における基部120から振動脚110に渡った全面に形成された絶縁膜310とで構成されている。
なお、電極200は水晶振動片100の基部120にも振動脚110にも形成されており、さらには、水晶振動片100の表面と裏面を含む複数の面にわたって形成されている。よって、図3(a)に示す絶縁膜310が形成されている裏側の裏面にも電極は形成されており、図3(b)に示すように絶縁膜310は水晶からなる振動脚110上に形成された電極200のさらにその上を覆うように形成されている。
本実施形態の圧電振動子11は、基部120の一方の面(表面)に形成された電極200にワイヤ600が接続され、基部120の他方側の面(裏面)にはワイヤ600は接続しない構成になっている。よって、ワイヤ600が接続されない基部120の裏面(図3における下側の面)には絶縁膜310を形成しても何ら問題は生じない。
よって、本実施形態では絶縁膜310をパターニングすることなく裏面における基部120から振動脚110に渡った全面に形成させることができた。本第2の実施形態では、絶縁膜310をパターニングする手間を省き生産性をさらに向上させた点が大きな特徴である。
なお、本実施形態の圧電振動子11も、図2に示すような、水晶ウェハー1000をエッチング法で加工して水晶振動片100を形成する振動片形成工程と、水晶振動片100上に電極200を形成する電極形成工程と、水晶振動片100に電圧を印加して振動脚110を振動させ、振動脚110の共振周波数f1′を測定する振動測定工程と、膜厚を制御しながら絶縁膜300(本実施形態では絶縁膜310)を成膜して、振動脚110が所望の共振周波数f1になるよう調整する振動調整工程とで製造することができる。
(第3の実施形態)
図4は本発明の水晶を用いた溝付き圧電振動子の外観と振動脚の断面を示した図である。図4(a)は圧電振動子12の外観を示した図で、図4(b)は図4(a)に示す圧電振動子12のD−D断面を示した図である。本発明の溝付き圧電振動子12は、基部120と基部120から突出した溝700を有する2本の振動脚110を備えた水晶振動片1
00と、水晶振動片100の表面及び振動脚110に形成された溝700の内側にパターニングされた電極200と、基部120から振動脚110に渡った一面および溝内部に形成された絶縁膜320とで構成されている。
本実施形態の圧電振動子12のように、振動脚110に溝700を設け、その内部に電極200を形成する構造は、クリスタルインピーダンス(CI)値を低減して優れた振動特性が得られるということが一般的に知られており、よく利用される振動子構造である。本発明は、このような溝付き圧電振動子12にも利用可能であり、小型で高い精度と信頼性を有する溝付き圧電振動子12を提供することができる。
なお、本実施形態の圧電振動子12も、図2に示すような、水晶ウェハー1000をエッチング法で加工して水晶振動片100を形成する振動片形成工程と、水晶振動片100上に電極200を形成する電極形成工程と、水晶振動片100に電圧を印可して振動脚110を振動させ、振動脚110の共振周波数f1′を測定する振動測定工程と、膜厚を制御しながら絶縁膜300(本実施形態では絶縁膜320)を成膜して、振動脚110が所望の共振周波数f1になるよう調整する振動調整工程とによって製造される。
(第4の実施形態)
図5は本発明の圧電薄膜を用いた圧電振動子の外観と振動脚の断面を示した図である。図5(a)は圧電振動子30の外観を示した図で、図5(b)は図5(a)に示す圧電振動子30のE−E断面を示した図である。
本発明の圧電薄膜を用いた圧電振動子30は、シリコン(Si)からなる基部120と基部120から突出した2本の振動脚110を備えたSi振動片150と、Si振動片150の一方の面(電極面)上に形成された下部電極220と、下部電極220上にパターニングして形成された圧電薄膜500と、圧電薄膜500上に形成された上部電極210と、Si振動片150の圧電薄膜500が形成されていない他方の面(非電極面)に基部120から振動脚110に渡って全面に形成された絶縁膜330とで構成されている。
本実施形態の圧電振動子30において、圧電薄膜500は上部電極210と下部電極220に挟まれた構造になっており、上部電極210と下部電極220の間に電圧をかけることで、圧電効果で圧電薄膜500を撓ませることができる。撓んだ圧電薄膜500はその下部にある振動脚110を撓ませ、その結果、振動脚110を振動させることができる。
なお上部電極210、下部電極220は基部120上でワイヤ600とつながっており、このワイヤ600を介して外部電源や外部回路(図示せず。)と接続がなされる。
図6は本発明の圧電薄膜を用いた圧電振動子の製造方法を示した図である。本実施形態の圧電薄膜を用いた圧電振動子30は、以下に示す製造方法で製造することが可能である。
まず、図6(a)に示すように、板厚が200μmのSiウェハー2000の一方の面(電極面)上に下部電極220、圧電薄膜500、上部電極210を所望の形状で形成する。本実施形態では、スパッタリング法により、0.05μm厚の白金(Pt)からなる下部電極220と、2μm厚のチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)からなる圧電薄膜500と、0.15μm厚の金(Au)からなる上部電極210を連続して成膜した後、ドライエッチング法によってパターニングした。本実施形態に示す圧電振動子30の製造方法では本工程を圧電薄膜形成工程と称している。
次に、図6(b)に示すように、感光性材料をフォトリソグラフィー法にパターニングし、基部120と基部120から突出する2本の振動脚110の外形形状をかたどったマスク層410を形成する。
その後、図6(c)に示すように、ドライエッチング法によってSiウェハー2000を加工し、2本の振動脚110を有するSi振動片150を形成する。なお、本実施形態に示す圧電振動子30の製造方法では、図6(b)から図6(c)までの工程を振動片形成工程と称している。
次に、図6(d)に示すように、マスク層410を除去した後、圧電薄膜500に電圧を印加し、振動脚110を振動させ、この時点での振動脚110の共振周波数f1′を測定する。本実施形態に示す圧電振動子30の製造方法では、本工程を振動測定工程と称している。
なお、本振動測定工程の時点で、測定した共振周波数f1′が所望とする設計通りの共振周波数f1になることは非常にまれである。なぜなら共振周波数には振動脚の形状が大きく起因しており、振動脚の長さ、幅、厚みのすべてが設計通りに作られていないと設計通りの共振周波数にはならないからである。
そこで本発明では、図6(e)に示すように、圧電薄膜500の形成されていない側の面(非電極面)に、測定された共振周波数f1′に応じて厚みを制御しながら絶縁膜330を成膜し、所望とする設計通りの共振周波数f1になるように調整した。本実施形態の圧電振動子30の製造方法では、本工程を振動調整工程と称している。
なお本実施形態では、AD法によってAlからなる絶縁膜330を1μm厚だけ成膜し、振動脚110の共振周波数をf1に調整することができた。
なお、本実施形態では、Si振動片150上に圧電薄膜500を形成した圧電振動子30を一例に挙げたが、Si以外の材料、例えばAlやガラス等のセラミック材料で振動片を形成しても、本発明の効果は同様に得ることができる。
(第5の実施形態)
本実施形態では、本発明により製造された水晶を用いた圧電振動子を利用して物理量センサーの一つである振動型ジャイロセンサーを作製した。図7は本発明の振動型ジャイロセンサーに用いられる3本脚の圧電振動子の外観と断面を示した図である。図7(a)は3本脚の圧電振動子20の外観を示した図で、図7(b)は図7(a)に示す圧電振動子20のF−F断面を示した図である。
本発明の振動ジャイロセンサーに利用される3本脚の圧電振動子20は、図7(a)に示すように、基部112から3本の振動脚(2本の駆動用振動脚111と1本の検出用振動脚112)が突出してなる水晶振動片105と、水晶振動片105の表面にパターニングされ駆動用振動脚111に電圧を印加し検出用振動脚112の検出信号を伝達するための電極200と、表面に対向した裏面における基部120から駆動用振動脚111、検出用振動脚112に渡った全面に形成された絶縁膜340とで構成されている。なお、この3本の振動脚の内の同じ大きさの2本が駆動用振動脚111であり、大きさの異なる1本が検出用振動脚112である。
電極200は水晶振動片105の基部120にも駆動用振動脚111にも検出用振動脚112にも形成されており、これらは水晶振動片105の表面と裏面とを含む複数の面にわたって形成されている。図7(a)では隠れて見えていないが、水晶振動片105の絶
縁膜340が形成されている裏面にも電極200は形成されており、図7(b)に示すように絶縁膜340は水晶からなる駆動用振動脚111、検出用振動脚112上に形成された電極200のさらにその上面を覆うようにして形成されている。
また、本実施形態の圧電振動子20は、基部120に形成された電極200にワイヤ600が接続され、外部電源や外部回路との電気的やり取りが行われる。
図8は3本脚の圧電振動子を用いた振動型ジャイロセンサーの動作原理を示した図である。図8を用いて、3本脚の圧電振動子20を用いたジャイロセンサーの動作原理を説明する。本発明の3本脚の圧電振動子20を用いたジャイロセンサーでは、図8(a)に示すように、駆動用振動脚111を水晶振動片105の平面方向に沿って振動させる(振動fd)。
一般にこのような方向の振動モードを面内振動と呼んでいる。この状態で、圧電振動子20に回転ωが加わるとコリオリ力によって検出用振動脚112が振動fdと垂直な方向に振動し始める(振動fs)。この回転が加わった時の検出用振動脚112が振動する方向の振動モードを、一般に面外振動と呼んでいる。
一般にジャイロセンサーは、この面外振動の振動fsを検出することによって、コリオリ力を逆算し、回転中の角速度を検出している。なお、このような振動を利用して角速度を検出するジャイロセンサーを、特に振動型ジャイロセンサーと称している。
一般に、振動型ジャイロセンサーの測定の感度と測定の安定性を両立するためには、駆動用振動脚111の面内振動の共振周波数f2と検出用振動脚112の面外振動の共振周波数f3を適度に離してやる(一般には数百Hz程度)のが望ましいとされている。なぜなら、共振周波数f2と共振周波数f3が近すぎるとちょっとした外乱でお互いが共振してしまい安定した測定ができなくなってしまうからである。一方、共振周波数f2と共振周波数f3が離れすぎているとコリオリ力によって発生する振動がうまく伝わらず感度が低下してしまうからである。
そこで、振動型ジャイロセンサーに用いられる圧電振動子20を製造するにあたり、共振周波数f2と共振周波数f3の差を厳しく管理して製造しなければならない。なお、面内振動の共振周波数f2と面外振動の共振周波数f3の差のことを、一般的には離調度と称している。
本発明の振動型ジャイロセンサーに用いられる3本脚の圧電振動子20も、基本的には図2に示す製造方法と同様の工程で製造することができる。その工程とは、水晶ウェハー1000をエッチング法で加工して3本脚の水晶振動片105を形成する振動片形成工程と、水晶振動片105の表面上に電極200を形成する電極形成工程と、水晶振動片105に電圧を印加して駆動用振動脚111と検出用振動脚112の共振周波数を測定する振動測定工程と、膜厚を制御しながら絶縁膜340を成膜して、駆動用振動脚111の共振周波数f2と検出用振動脚112の共振周波数f3の差(離調度)が所望の離調度になるよう調整する振動調整工程からなる4つの工程である。
なお、なぜ絶縁膜340を成膜することで、離調度を変えられるかというと、同じ厚みの絶縁膜340を成膜しても、駆動用振動脚111の共振周波数f2と検出用振動脚112の共振周波数f3とでその影響力が異なるためである。
図7(b)に示す振動型ジャイロセンサーに用いられる3本脚の圧電振動子20では、駆動用振動脚111と検出用振動脚112とは断面形状が異なっており、同じ厚みの絶縁
膜340を成膜した場合、検出用振動脚112の方が駆動用振動脚111よりも、幅に対して厚み方向の増加の割合が大きく共振周波数の変化が大きいのである。
よって、図7に示すように絶縁膜340を水晶振動片105の表面か裏面に形成する場合(本実施形態では裏面に絶縁膜340が形成されている。)には、検出用振動脚112の共振周波数f3は絶縁膜340の厚みに応じて大きく変化するが、駆動用検出脚111の共振周波数f2はあまり変化しない。その結果、駆動用振動脚111の共振周波数f2と検出用振動脚112の共振周波数f3の差である離調度が変化するのである。
本実施形態では、AD法によって2μm厚のAlからなる絶縁膜340を成膜することによって、元の離調度が100Hzであったものを、適度な離調度である300Hzに調整することができた。
(第6の実施形態)
本発明における振動調整工程は、振動型ジャイロセンサーに用いられる圧電振動子の離調度を調整する目的だけに限られるものではない。不必要な振動を無くして、より信頼性の高い圧電振動子を製造するのにも利用可能である。
図9は本発明の振動型ジャイロセンサーにおける振動バランスの調整工程を示した図である。振動型ジャイロセンサーに用いられる圧電振動子20は、図9にも示されるように、回転運動がない場合(図8(a))には、検出用振動子112は停止しており、回転ωが加わった場合(図8(b))にだけ、検出用振動子112は振動fsを生じさせなくてはならない。そうでなくては、回転運動がない時にも回転しているものと判断し、誤った角速度を示してしまうからである。
しかしながら、圧電振動子20をいくら精度良く加工して製造しようとしても、加工誤差が必ず生じてしまうため、振動バランスが完全に平衡状態にあるものは製造不可能である。よって、製造された圧電振動子20は、図9(a)に示すように、駆動用振動脚111を振動させても面内振動に対して傾いた振動fd′を発生させ、回転運動が加わっていない状態であるにもかかわらず、この傾いた分だけ検出用振動脚112に面外振動の振動fs′を発生させてしまう。
本発明における振動調整工程では、圧電振動子20の振動バランスを平衡状態になるように調整し、不必要な振動である振動fs′を除去することも可能である。
詳しくは以下に示す方法によって行われる。まず、あらかじめ水晶振動片105に電圧を印加して検出用振動脚112の振動fs′を測定する(振動測定工程)。その後、図9(b)に示すように、振動fdが面内振動になり振動fs′が無くなるように、成膜位置と厚みを制御しながら絶縁膜350を形成し、圧電振動子20の振動バランスを平衡状態にする(振動調整工程)。
このようにすれば、振動バランスが完全に平衡状態にある圧電振動子20を製造することができ、非常に安定して精度の高い角速度の検出ができるようになる。このように本発明によれば、高い信頼性と高い測定精度を有する振動型ジャイロを提供することができる。
なお、本発明は振動型ジャイロセンサーだけでなく、振動を利用して物理量を検出する多くの物理量センサー、例えば加速度センサー、QCMセンサー、さらにはマイクロタス等、に利用可能である。
本発明の水晶を用いた圧電振動子の外観を示した図である。 本発明の水晶を用いた圧電振動子の製造方法を示した図である。 本発明の水晶を用いた別の圧電振動子の外観と振動脚の断面を示した図である。 本発明の水晶を用いた溝付き圧電振動子の外観と振動脚の断面を示した図である。 本発明の圧電薄膜を用いたSi振動子の外観と振動脚の断面を示した図である。 本発明の圧電薄膜を用いた圧電振動子の製造方法を示した図である。 本発明の振動型ジャイロセンサーに用いられる3本脚の圧電振動子の外観と断面を示した図である。 3本脚の圧電振動子を用いた振動型ジャイロセンサーの動作原理を示した図である。 本本発明の振動型ジャイロセンサーにおける振動バランスの調整工程を示した図である。 従来の圧電振動子の一形態である水晶振動子の外観を示した図である。
符号の説明
10、11、12、20、30 圧電振動子
40 水晶振動子
60 YAGレーザー
100、105 水晶振動片
110 振動脚
111 駆動用振動脚
112 検出用振動脚
120 基部
150 Si振動片
200 電極
210 上部電極
220 下部電極
251 微調用電極
252 粗調用電極
300、310、320、330、340、350 絶縁膜
400、410 マスク層
500 圧電薄膜
600 ワイヤ
700 溝
1000 水晶ウェハー
2000 Siウェハー

Claims (10)

  1. 基部と、
    この基部から突出する振動脚とを備えた圧電振動片を有し、
    この圧電振動片に電圧を印加するための電極を備えた圧電振動子において、
    前記電極の上に、前記振動脚の周波数を調整するための絶縁膜を形成したことを特徴とする圧電振動子。
  2. 前記圧電振動片は、前記電極が形成される表面とこの表面に対向し前記電極が形成される裏面とを備え、前記絶縁膜は、前記表面または前記裏面のどちらか一方における全面に形成されることを特徴とする請求項1に記載の圧電振動子。
  3. 前記圧電振動片は、水晶で形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の圧電振動子。
  4. 基部と、
    この基部から突出し、圧電薄膜が形成された振動脚とを備えたシリコンからなる振動片を有し、
    前記圧電薄膜に電圧を印加するための電極を前記振動片に備えた圧電振動子において、
    前記振動片は、前記電極が形成される電極面とこの電極面に対向し前記電極が形成されない非電極面とを備え、
    前記電極の上にまたは前記非電極面の全面に、前記振動脚の周波数を調整するための絶縁膜を形成したことを特徴とする圧電振動子。
  5. 前記請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の圧電振動子を用いて外部から印加された物理量を検出することを特徴とする物理量センサー。
  6. 前記物理量センサーは、振動型ジャイロセンサーであることを特徴とする請求項5に記載の物理量センサー。
  7. 基部と、
    この基部から突出する振動脚とを備えた圧電振動片を有し、
    この圧電振動片に電圧を印加するための電極を備えた圧電振動子の製造方法において、
    圧電材料を加工し、前記圧電振動片を形成する振動片形成工程と、
    前記圧電振動片に前記電極を形成する電極形成工程と、
    前記圧電振動片に電圧を印加して前記振動脚を振動させ、この振動脚の共振周波数を測定する振動測定工程と、
    前記電極の上に絶縁膜を成膜して、前記振動脚が所望の共振周波数になるよう調整する振動調整工程を有することを特徴とする圧電振動子の製造方法。
  8. 前記圧電振動片は、水晶で形成されることを特徴とする請求項7に記載の圧電振動子の製造方法。
  9. 基部と、
    この基部から突出し、圧電薄膜が形成された振動脚とを備えたシリコンからなる振動片を有し、
    前記圧電薄膜に電圧を印加するための電極を前記振動片に備えた圧電振動子の製造方法において、
    前記電極と前記圧電薄膜とを積層させて形成する圧電薄膜形成工程と、
    シリコンウェハーをエッチング法で加工し、前記振動片を形成する振動片形成工程と、
    前記圧電薄膜に電圧を印加して前記振動脚を振動させ、この振動脚の共振周波数を測定する振動測定工程と、
    前記電極の上または前記電極が形成されない非電極面に絶縁膜を成膜して、前記振動脚が所望の共振周波数になるよう調整する振動調整工程を有することを特徴とする圧電振動子の製造方法。
  10. 前記絶縁膜はパウダージェットデポジション法またはエアロゾルデポジション法によって成膜されることを特徴とする請求項7から請求項9のいずれか一項に記載の圧電振動子の製造方法。
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