JP2008138811A - 摺動部材及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】摺動部材1の内周面のCrめっき皮膜15にクラックを形成することなく、所望の摺動特性が得られるようにする。
【解決手段】プラトー部及び凹部が形成された摺動部材1の内周面の上にCrめっき皮膜15が形成され、このCrめっき皮膜15表面におけるプラトー部12の面積率が60%以上85%以下となるようにする。
【選択図】図5
【解決手段】プラトー部及び凹部が形成された摺動部材1の内周面の上にCrめっき皮膜15が形成され、このCrめっき皮膜15表面におけるプラトー部12の面積率が60%以上85%以下となるようにする。
【選択図】図5
Description
本発明は、摺動部材及びその製造方法に関する。
ロータリーピストンエンジンの燃焼室を構成するローターハウジングにおいては、シール部材(アペックスシール)が摺動する長円形状の内周面(トロコイド面)に、その耐摩耗性向上のためにHv1000程度の硬さを有するCrめっき皮膜が形成されている。例えば、特許文献1には、上記トロコイド面にCrめっき皮膜を形成するとともに、逆電処理を行なうことによってCrめっき皮膜表面に幅0.1〜0.3μm程度の微細クラックを400〜1300本/cm形成することが記載されている。このような微細クラックを多数形成すると、潤滑油が摺動面に供給され易くなって油切れを生じ難くなるとともに、シールの摺動に伴ってCrめっき皮膜表面に生ずる摩擦熱がクラックに存する潤滑油に放散され易くなるため、局部的な異常昇温が防止される。
また、上記ロータハウジングは一般には、鋼板製ライナーをアルミ合金製ハウジング本体に鋳ぐみ、そのライナーの加工後にCrめっきを施すことによって形成されている。
特開2006−219756号公報
上記Crめっき皮膜にクラックを形成すると低摩擦の摺動特性を得る上では有利になるものの、クラックの形成にはめっき浴中で逆電処理を行なう必要があり、しかも、摺動特性の向上に有効なクラックを形成することは難しい。すなわち、めっき浴中での正電処理によるCrめっき皮膜の形成と逆電処理によるクラックの形成とを繰り返していくと、めっき浴の組成がだんだん変化していくことから、Cr源や触媒を適宜添加していくことになる。しかし、めっき浴の組成を一定に保つことは難しく、しかも設備の老朽化の問題もあり、同じクラック幅及びクラック数密度にすることが難しい。このため、一定品質の摺動部材を量産することが難しいというのが実情である。
これに対して、Crめっき後に例えばフォトマスクによってエッチングし、所望パターンの溝等の凹部を形成することが考えられるが、そのための工程数の大幅な増加が必要になり、コスト高になる。
そこで、本発明は、Crめっき皮膜にクラックを形成することなく、所望の摺動特性が得られるようにすることを課題とする。
本発明は、このような課題を解決するために、摺動部材用ワークの摺動面にプラトー部と凹部とを形成しておいてCrめっきを施すようにした。
請求項1に係る発明は、表面にCrめっき皮膜が形成された内周面を備え、該内周面をシール部材が流体潤滑剤の存在下で摺動する摺動部材であって、
上記内周面には、プラトー部と、該プラトー部に対して相対的に凹んだ凹部とが形成され、
上記Crめっき皮膜は、上記プラトー部及び凹部が形成された上記内周面の上に形成され、
上記Crめっき皮膜表面におけるプラトー部の面積率が60%以上85%以下であることを特徴とする。
上記内周面には、プラトー部と、該プラトー部に対して相対的に凹んだ凹部とが形成され、
上記Crめっき皮膜は、上記プラトー部及び凹部が形成された上記内周面の上に形成され、
上記Crめっき皮膜表面におけるプラトー部の面積率が60%以上85%以下であることを特徴とする。
従って、このような摺動部材であれば、Crめっき皮膜のプラトー部がシール部材の摺動面となり、凹部が流体潤滑剤(以下、「潤滑剤」又は「潤滑油」と称す。)の溜まり部となる。プラトー部の面積率が60%以上85%以下であるから、摩擦係数の低下が図れ、シール部材の摩耗防止にも有利になる。この場合、当該面積率が60%未満になると、相対的に凹部の面積率が大きくなるから、潤滑剤の保持には有利になるものの、そのことはプラトー部から凹部への潤滑剤が逃げ易くなること、つまり、潤滑膜が薄くなることを意味する。よって、境界潤滑の割合が増大し、摩擦力が大きくなるとともに、摩耗量も多くなる。また、プラトー部の面積率が85%を超えると、潤滑膜が形成される面は増大するものの、潤滑剤の保持量は少なくなる。よって、局所的な当たり(境界潤滑)を生じた場合、潤滑剤による潤滑が図れ難くなるとともに、当該境界潤滑部で生じた摩擦熱を潤滑剤に伝えて放熱する効果が十分に得られなくなる。これにより、摩擦力が大きくなるとともに、摩耗量も多くなる。
そうして、本発明によれば、Crめっき皮膜にクラックを形成する場合とは違って、上記凹部は機械加工又はエッチングにより、規則正しく形成することができ、品質(摺動特性)が安定した摺動部材を得ることができる。
請求項2に係る発明は、請求項1において、
上記内周面で囲まれた孔の軸心が略水平となるように設けられ、上記シール部材が上記内周面を周方向に摺動するようになされていて、
上記プラトー部は菱形に形成され、
上記凹部として、相隣るプラトー部間の、上記周方向に対して一方向に斜めに延びる周方向に間隔をおいた多数の傾斜溝と、該傾斜溝に交差して他方向に斜めに延びる周方向に間隔をおいた多数の傾斜溝とを備え、
上記内周面のうち上記孔を挟んで水平に相対する部位は、上記孔を挟んで上下に相対する部位に比べて、上記周方向に対する上記傾斜溝の傾斜角度が大きくなっていることを特徴とする。
上記内周面で囲まれた孔の軸心が略水平となるように設けられ、上記シール部材が上記内周面を周方向に摺動するようになされていて、
上記プラトー部は菱形に形成され、
上記凹部として、相隣るプラトー部間の、上記周方向に対して一方向に斜めに延びる周方向に間隔をおいた多数の傾斜溝と、該傾斜溝に交差して他方向に斜めに延びる周方向に間隔をおいた多数の傾斜溝とを備え、
上記内周面のうち上記孔を挟んで水平に相対する部位は、上記孔を挟んで上下に相対する部位に比べて、上記周方向に対する上記傾斜溝の傾斜角度が大きくなっていることを特徴とする。
すなわち、上記内周面のうち上記孔を挟んで水平に相対する部位では、流体潤滑剤がその自重で垂れて潤滑膜が薄くなりやすい。そこで、本発明では、当部位の傾斜溝の傾斜角度を大きくする(水平に近付ける)ことにより、流体潤滑剤が傾斜溝に留まり易くなるようにしてその垂れを抑制し、流体潤滑性を高めるようにしている。当該傾斜角度は55度以上75度以下とすることが好ましい。
一方、上記内周面のうち上記孔を挟んで上下に相対する部位では、上記水平に相対する部位に比べて、上記傾斜溝の傾斜角度を小さくする(周方向に近付ける)ことにより、流体潤滑剤が傾斜溝に逃げ易くしている。これにより、流体潤滑に基いて潤滑膜に生ずる圧力が傾斜溝に解放されて低圧の状態になり、潤滑膜が薄くなる。その結果、当該上下に相対する部位において、シール部材の摺動速度が速くな場合においても、潤滑膜の剪断に必要な力が軽減され、摩擦低減が図れる。当該傾斜角度は15度以上35度以下とすることが好ましい。
請求項3に係る発明は、表面にCrめっき皮膜が形成された内周面を備え、該内周面をシール部材が流体潤滑剤の存在下で摺動する摺動部材の製造方法であって、
摺動部材用ワークの内周面に、機械加工によって凹凸を形成し、
上記内周面の相対的に凹んだ凹部が残るように、相対的に突出した凸部を削ってプラトー部を形成し、
しかる後に、上記内周面に上記プラトー部と凹部内面とを含む全面にわたってCrめっき皮膜を形成することにより、該Crめっき皮膜表面に占めるプラトー部の面積率が60%以上85%以下となるようにすることを特徴とする。
摺動部材用ワークの内周面に、機械加工によって凹凸を形成し、
上記内周面の相対的に凹んだ凹部が残るように、相対的に突出した凸部を削ってプラトー部を形成し、
しかる後に、上記内周面に上記プラトー部と凹部内面とを含む全面にわたってCrめっき皮膜を形成することにより、該Crめっき皮膜表面に占めるプラトー部の面積率が60%以上85%以下となるようにすることを特徴とする。
すなわち、例えば摺動部材の摺動面を構成するライナー部材表面にプラトー部及び凹部を形成しておいて、このライナー部材を摺動部材本体に接合することも考えられる。しかし、その場合は、当該接合後に摺動面の粗加工及びCrめっきを施したとき、粗加工代が加工場所によって異なるから、凹部の深さにバラツキを生じ、摺動特性の安定化が図れない。また、Crめっき後にフォトマスクによってエッチングし、所望パターンの凹部を形成することが考えられるが、そのための工程数の大幅な増加が必要になり、コスト高になる。
そこで、本発明においては、摺動部材用ワークの内周面に機械加工によって凹凸を形成し、凹部が残るように、相対的に突出した凸部を削ってプラトー部を形成し、しかる後にCrめっきを行なうようにしたものである。これにより、Crめっき後にクラック形成のための逆電処理をすることが不要になり、しかも工程数の大幅な増加を招くことなく、Crめっき皮膜表面に占めるプラトー部の面積率が60%以上85%以下となった、摺動特性の安定した摺動部材を製作することができ、品質の高い摺動部材を量産する上で有利になる。
請求項1に係る発明によれば、プラトー部及び凹部が形成された摺動部材内周面の上にCrめっき皮膜が形成され、このCrめっき皮膜表面におけるプラトー部の面積率が60%以上85%以下であるから、Crめっき皮膜表面にクラックを形成することなく、摩擦係数が低く、シール部材の摩耗が抑制された摺動面が得られ、品質(摺動特性)が安定した摺動部材を得る上で有利になる。
請求項2に係る発明によれば、上記内周面で囲まれた孔の軸心が略水平となるように設けられていて、周方向に対して互いに逆方向に延びる多数の傾斜溝によって菱形プラトー部が形成され、上記内周面のうち上記孔を挟んで水平に相対する部位は、上記孔を挟んで上下に相対する部位に比べて、上記周方向に対する傾斜溝の傾斜角度が大きくなっているから、水平に相対する部位では流体潤滑剤の垂れが抑制されて流体潤滑性が高まり、上下に相対する部位では潤滑膜を薄くなって潤滑膜の剪断に必要な力が軽減され、摩擦低減が図れる。
請求項3に係る発明によれば、摺動部材用ワークの内周面に機械加工によって凹凸を形成し、上記内周面の相対的に凹んだ凹部が残るように、相対的に突出した凸部を削ってプラトー部を形成し、しかる後に、上記内周面に上記プラトー部と凹部とを含む全面にわたってCrめっき皮膜を形成することにより、該Crめっき皮膜表面に占めるプラトー部の面積率が60%以上85%以下となるようにしたから、Crめっき後のクラック形成のための逆電処理が不要になり、工程数の大幅な増加を招くことなく、摺動特性の安定した摺動部材を製作することができ、品質の高い摺動部材を量産する上で有利になる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は実施形態に係るロータリーピストンエンジンの概略図である。同図において、1は摺動部材としてのロータハウジング、2は内部流体(ガス)をシールする流体シール部材としてのアペックスシールである。ロータハウジング1のトロコイド状内周面(長円形状内周面)3を、出力軸を回転させるロータ5の各頂部に装着されたアペックスシール2が摺動するようになっている。このエンジンでは、吸気口6からオイルを含む燃料が空気と共に作動室7に吸入され、ロータ5の回転に伴って圧縮されつつ矢印8の方向に移動した燃料が点火プラグ9A,9Bにより着火されて膨張し、燃焼ガスの圧力によって出力軸に回転を与えた後、排気口10から排気される、という一連の行程が繰り返されることになる。
ロータハウジング1は、図2に示すように、トロコイド状内周面3が形成された例えば高張力鋼板製のライナー11の背面に目立てが施され、このライナー11がアルミ合金製ハウジング本体に鋳ぐるまれるなどして製作される。そのライナー11の内周面3は、アペックスシール2が摺動するため、高い耐熱性、耐摩耗性、低摩擦性が要求される。そのため、内周面3には表面にプラトー部(平坦部)と凹部とを有するCrめっき皮膜(CrMo合金めっき皮膜を含む)が形成されている。
ロータハウジング1は、その内周面で囲まれた孔(作動室7)の軸心が略水平になるように設けられている。そのため、上記プラトー部及び凹部の形成パターンは内周面3の全体にわたって一定ではなく、アペックスシール2の摺動条件が異なる部位には異なるパターンを採用している。
図3は内周面3のうちロータハウジング1の孔を挟んで上下に相対する部位(以下、「長軸側内周面」という。)3aのプラトー部・凹部パターンを示す。図4は内周面3のうちロータハウジング1の孔を挟んで水平に相対する部位(以下、「短軸側内周面」という。)3bのプラトー部・凹部パターンを示す。本実施形態では、長軸側内周面3aのプラトー部12a及び短軸側内周面3bのプラトー部12bのいずれも、その形状は菱形であり、相隣るプラトー部間が凹部に形成されている。すなわち、長軸側内周面3a及び短軸側内周面3b各々の凹部として、上記内周面3の周方向に対して一方向に斜めに延びる周方向に間隔をおいた多数の傾斜溝13a,13bと、該傾斜溝に交差して他方向に斜めに延びる周方向に間隔をおいた多数の傾斜溝13a,13bとを備えている。
図3に示すように長軸側内周面3aでは、傾斜溝13aの周方向に対する傾斜角度αが15度以上35度以下になされている。一方、短軸側内周面3bでは、図4に示すように、傾斜溝13bの周方向に対する傾斜角度βが長軸側内周面3aの上記傾斜角度よりも大きく、55度以上75度以下になされている。傾斜溝13a,13bの深さは15μm以上50μm以下であることが好ましい。Crめっき皮膜表面におけるプラトー部12a,12bの面積率は60%以上85%以下、プラトー数密度(単位面積当たりのプラトー部の個数)は5個/mm2以上30個/mm2以下であることが好ましい。
<製法>
上記ロータハウジング1の製法を説明する。
上記ロータハウジング1の製法を説明する。
(製法例1)
まず、摺動面を構成する鋼板製ライナーをアルミ合金製ハウジング本体に鋳ぐるんでなるロータハウジング用ワークを形成する。次にこのワークの内周面を粗加工によって所定のプロフィール(トロコイド形状)に仕上げるとともに、該内周面にNC粗切削によって凹凸を形成する。すなわち、図5Aに示すように、ワーク1Aの内周面に上記傾斜溝13a,13bに対応する深溝14を形成する。次にNC仕上げ切削によって、図5Bに示すように、深溝14が残るように、相対的に突出した凸部を鎖線位置まで除去してプラトー部を形成する。
まず、摺動面を構成する鋼板製ライナーをアルミ合金製ハウジング本体に鋳ぐるんでなるロータハウジング用ワークを形成する。次にこのワークの内周面を粗加工によって所定のプロフィール(トロコイド形状)に仕上げるとともに、該内周面にNC粗切削によって凹凸を形成する。すなわち、図5Aに示すように、ワーク1Aの内周面に上記傾斜溝13a,13bに対応する深溝14を形成する。次にNC仕上げ切削によって、図5Bに示すように、深溝14が残るように、相対的に突出した凸部を鎖線位置まで除去してプラトー部を形成する。
しかる後に、当該ワークの内周面にCrめっきを施し、図5Cに示すように、上記プラトー部と深溝14の内面とを含む内周面全面にわたってCrめっき皮膜15を形成する。そうして、Crめっき皮膜15表面の最終仕上げ加工(ホーニング)を行なう。上記NC仕上げ切削においては、Crめっき皮膜表面15に占めるプラトー部12の面積率が60%以上85%以下となるように、上記凸部の切削を行なう。同図において、符号13は傾斜溝(凹部)である。
(製法例2)
上記ロータハウジング用ワークの内周面を粗加工によって所定のプロフィールに仕上げるとともに、図6に示すように当該ワーク1Aの内周面にローレット加工具によって上記傾斜溝13a,13bに対応する傾斜溝を形成する。
上記ロータハウジング用ワークの内周面を粗加工によって所定のプロフィールに仕上げるとともに、図6に示すように当該ワーク1Aの内周面にローレット加工具によって上記傾斜溝13a,13bに対応する傾斜溝を形成する。
すなわち、ローレット加工具は、中央の回転体16と、該回転体16に装着された一対のローレット17,17とを備えてなる。このローレット17の周面に上記傾斜溝を形成するための対応する傾斜突条が形成されている。回転体16には、その軸心に対して直交する互いに逆方向に開口したシリンダ部18,18が形成されており、各シリンダ部18にローレット17を回転自在に保持するロッド状ホルダ19が進退自在に挿入されている。
ローレット加工にあたっては、図6に示すように、ローレット加工具をワーク1Aの孔内に挿入し、回転体16の軸心をワーク孔の軸心に一致させ、シリンダ部18にオイルを供給することにより、油圧でローレット17,17をワーク1Aの内周面に押当てる。その状態で回転体16を回転させることにより、ローレット17によってワーク1Aの内周面に傾斜溝を形成する。
図6は長軸側内周面3aに上記傾斜角度の小さな傾斜溝を形成する例を示しており、短軸側内周面3bに傾斜溝を形成するときは、傾斜角度の大きな傾斜溝を形成するローレットを装着した同様のローレット加工具を用いる。ローレット17として、交差した傾斜突条を周面に有するものを用いると、交差した傾斜溝を同時に形成することができるが、片傾斜の突条を有するローレットを用い、一方に傾斜した傾斜溝を形成した後、他方に傾斜した傾斜溝を形成するようにしてもよい。
上記ローレット加工後、仕上げ加工によってプラトー部の表面粗さを調整する。次いで、Crめっきを行なって、上記プラトー部と傾斜溝内面とを含む内周面全面にわたってCrめっき皮膜を形成する。そうして、Crめっき皮膜表面の最終仕上げ加工(ホーニング)を行なう。
なお、ローレット加工に代えて、加圧面に傾斜突条を有するプレス型を内周面に押し当てるプレス加工を採用してもよい。
<プラトー面積率について>
プラトー面積率(=プラトー部面積/(プラトー部面積+凹部(傾斜溝)の開口面積))を種々に変えたテストピースを作成し、図7に示す試験器を用いて摩擦試験を行ない、摩擦係数及びシール摩耗量を測定した。同図において、21は円板状のテストピース、22はチル鋳鉄製摺動片23を固定した円板状の回転支持台である。テストピース21の下面に周縁近傍を周回するようにCrめっき層24が環状に設けられている。テストピース21の中心部には該テストピース21を貫通するエア供給孔25が形成されている。テストピース21の周縁近傍にはCrめっき層24の部位で該テストピース21を貫通する潤滑油供給孔26が形成されている。回転支持台22には3個のシール部材23が周方向に120度の角度間隔をおいて固定され、各シール部材23の上端が支持台22より上方へ突出している。この3個の摺動片23にテストピース21が載せられている。
プラトー面積率(=プラトー部面積/(プラトー部面積+凹部(傾斜溝)の開口面積))を種々に変えたテストピースを作成し、図7に示す試験器を用いて摩擦試験を行ない、摩擦係数及びシール摩耗量を測定した。同図において、21は円板状のテストピース、22はチル鋳鉄製摺動片23を固定した円板状の回転支持台である。テストピース21の下面に周縁近傍を周回するようにCrめっき層24が環状に設けられている。テストピース21の中心部には該テストピース21を貫通するエア供給孔25が形成されている。テストピース21の周縁近傍にはCrめっき層24の部位で該テストピース21を貫通する潤滑油供給孔26が形成されている。回転支持台22には3個のシール部材23が周方向に120度の角度間隔をおいて固定され、各シール部材23の上端が支持台22より上方へ突出している。この3個の摺動片23にテストピース21が載せられている。
摩擦試験は、エア供給孔25からエアを供給し且つ潤滑油供給孔26から温度100℃の潤滑油を供給しながら行なった。潤滑油としては、0W−20のエンジンオイルを用いた。荷重は100N、摺動片23の周速は12.5m/sとした。試験結果を表1に示す。
プラトー面積率60%の実施例1及びプラトー面積率85%の実施例2は、それよりもプラトー面積率が小さい比較例1及びプラトー面積率が大きい比較例2よりも、摩擦係数が小さく、シール摩耗量(シール部材の高さ摩耗量)が少ない。従って、プラトー面積率は60%以上85%以下にすることが好ましいということができる。
<プラトー数密度について>
摺動部材内周面のプラトー数密度を変えてスカッフ(内周面の潤滑膜が切れ、直接接触したシール部材によって引っかき傷ができる現象)の発生度合いを調べた。結果を図8に示す。同図に示すように、プラトー数密度が5個/mm2未満になると、或いは30個/mm2を超えると、スカッフの発生が急に多くなる。このことから、プラトー数密度は5個/mm2以上30個/mm2以下であることが好ましいということができる。
摺動部材内周面のプラトー数密度を変えてスカッフ(内周面の潤滑膜が切れ、直接接触したシール部材によって引っかき傷ができる現象)の発生度合いを調べた。結果を図8に示す。同図に示すように、プラトー数密度が5個/mm2未満になると、或いは30個/mm2を超えると、スカッフの発生が急に多くなる。このことから、プラトー数密度は5個/mm2以上30個/mm2以下であることが好ましいということができる。
なお、本発明はロータリーピストンエンジンのロータハウジングに限らず、シール部材が摺動する長円形状内周面を有し且つ摺動負荷が長軸側内周面と短軸側内周面とで相異なる油圧ポンプやコンプレッサのハウジングにも適用することができる。
また、凹部としては傾斜溝等の溝に限らず多数の独立した穴(窪み)であってもよい。
1 ロータハウジング(摺動部材)
1A ワーク
2 シール部材
3 内周面
3a 長軸側内周面
3b 短軸側内周面
12,12a,12b プラトー部
13,13a,13b 傾斜溝(凹部)
14 深溝
15 Crめっき皮膜
1A ワーク
2 シール部材
3 内周面
3a 長軸側内周面
3b 短軸側内周面
12,12a,12b プラトー部
13,13a,13b 傾斜溝(凹部)
14 深溝
15 Crめっき皮膜
Claims (3)
- 表面にCrめっき皮膜が形成された内周面を備え、該内周面をシール部材が流体潤滑剤の存在下で摺動する摺動部材であって、
上記内周面には、プラトー部と、該プラトー部に対して相対的に凹んだ凹部とが形成され、
上記Crめっき皮膜は、上記プラトー部及び凹部が形成された上記内周面の上に形成され、
上記Crめっき皮膜表面におけるプラトー部の面積率が60%以上85%以下であることを特徴とする摺動部材。 - 請求項1において、
上記内周面で囲まれた孔の軸心が略水平となるように設けられ、上記シール部材が上記内周面を周方向に摺動するようになされていて、
上記プラトー部は菱形に形成され、
上記凹部として、相隣るプラトー部間の、上記周方向に対して一方向に斜めに延びる周方向に間隔をおいた多数の傾斜溝と、該傾斜溝に交差して他方向に斜めに延びる周方向に間隔をおいた多数の傾斜溝とを備え、
上記内周面のうち上記孔を挟んで水平に相対する部位は、上記孔を挟んで上下に相対する部位に比べて、上記周方向に対する上記傾斜溝の傾斜角度が大きくなっていることを特徴とする摺動部材。 - 表面にCrめっき皮膜が形成された内周面を備え、該内周面をシール部材が流体潤滑剤の存在下で摺動する摺動部材の製造方法であって、
摺動部材用ワークの内周面に、機械加工によって凹凸を形成し、
上記内周面の相対的に凹んだ凹部が残るように、相対的に突出した凸部を削ってプラトー部を形成し、
しかる後に、上記内周面に上記プラトー部と凹部内面とを含む全面にわたってCrめっき皮膜を形成することにより、該Crめっき皮膜表面に占めるプラトー部の面積率が60%以上85%以下となるようにすることを特徴とする摺動部材の製造方法。
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2006
- 2006-12-04 JP JP2006327232A patent/JP2008138811A/ja active Pending
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