以下、本発明の内燃機関の制御装置の一実施形態につき図面を参照しつつ詳細に説明する。
(第1実施形態)
図1から図7を参照して、第1実施形態について説明する。本実施形態は、内燃機関の吸気経路に冷却媒体を供給して吸気を冷却する内燃機関の制御装置に関する。
本実施形態では、吸気の温度が高温である場合に、噴射装置(水インジェクター)により吸気経路に冷却媒体(水)が噴射される。水の噴射は、間欠的に行われる。これにより、吸気経路において、噴射された水の噴霧(以下、水噴霧とする)と次回の水噴霧との間に高温となった吸気の層が挟まれるため、水噴霧と高温の吸気の混合が促進される。このため、連続的に水が噴射される場合に比べて、噴射された水の蒸発が促進されるので、水の気化潜熱による吸気の冷却効果が高まる。
図1は、本実施形態に係る装置の概略構成図である。図1において、符号1は内燃機関(エンジン)を示す。エンジン1は、シリンダブロック2を有する。シリンダブロック2には、シリンダブロック2の内部を往復動可能なピストン4が設けられている。ピストン4の上方には、燃焼室5が形成されている。
シリンダブロック2の上方には、シリンダヘッド3が設けられている。シリンダヘッド3には、吸気ポート6及び排気ポート7が設けられている。燃焼室5と吸気ポート6との接続部には、吸気弁8が設けられている。燃焼室5と排気ポート7との接続部には、排気弁9が設けられている。
シリンダヘッド3には、点火プラグ10及び燃料インジェクター11が設けられている。燃料インジェクター11により燃焼室5に燃料が噴射される。点火プラグ10は、燃焼室5内で圧縮された混合気に点火する。
吸気ポート6には、吸気マニホルド12が接続されている。吸気マニホルド12には、サージタンク13が接続されている。サージタンク13には、吸気経路(吸気管)14が接続されている。吸気管14には、スロットルバルブ15が設けられている。吸気管14におけるスロットルバルブ15の設置位置よりも上流側には、エアクリーナ16が設けられている。
排気ポート7には、排気マニホルド17が接続されている。排気マニホルド17には、排気管18が接続されている。
エンジン1は、過給手段として過給機(ターボチャージャー)30を備えている。ターボチャージャー30は、コンプレッサー30a、タービン30b、回転軸30c及びウェストゲートバルブ30dを備える。コンプレッサー30aは、吸気管14に設けられている。タービン30bは、排気マニホルド17に設けられている。コンプレッサー30aとタービン30bとは回転軸30cにより連結されている。
タービン30bは、排気マニホルド17を通って供給される排気ガスのエネルギーによって駆動されて回転する。タービン30bの回転に伴って、コンプレッサー30aが回転し、吸気が圧縮される。コンプレッサー30aに供給された吸気は、コンプレッサー30aによって圧縮されることにより、温度が上昇して高温となる。吸気管14におけるコンプレッサー30aの設置位置よりも下流側には、吸気を冷却するための空冷式の吸気冷却装置(インタークーラー)31が設けられている。高温の吸気は、インタークーラー31内を流れる間に外気との熱交換により冷却される。
排気マニホルド17には、タービン30bへ供給される排気ガスをバイパスさせるための排気バイパス通路33が接続されている。排気バイパス通路33の一端は、排気マニホルド17における、タービン30bの設置位置よりも上流側に接続されている。排気バイパス通路33の他端は、排気管18に接続されている。排気バイパス通路33には、ウェストゲートバルブ30dが設けられている。ウェストゲートバルブ30dにより、排気バイパス通路33が開閉される。
コンプレッサー30aの回転数が上昇しすぎて圧縮された吸気の圧力が予め定められた所定の給気圧よりも高くなった場合には、ウェストゲートバルブ30dが開かれる。これにより、排気マニホルド17を流れる排気ガスの一部は排気バイパス通路33を通って排気管18へ流れるようになる。この場合、タービン30bに供給される排気ガスの量が減少し、タービン30b及びコンプレッサー30aの回転数の上昇が抑制される。その結果、吸気の圧力が過度に上昇することが抑制される。
吸気管14における、コンプレッサー30aの設置位置とインタークーラー31の設置位置との間には、水インジェクター34が設けられている。水インジェクター34により吸気管14内に水が噴射される。エンジン1が搭載された車両(図示省略)には、水タンク36が設けられている。水タンク36と水インジェクター34とは水配管38を介して接続されている。水配管38には、水ポンプ35が設けられている。水タンク36に貯留された水37は、水ポンプ35により圧送されて水インジェクター34に供給される。
吸気管14におけるコンプレッサー30aの設置位置と水インジェクター34の設置位置との間には、加圧空気温スイッチ39が設けられている。加圧空気温スイッチ39は、吸気の温度に応じてON信号またはOFF信号を出力する。検出された吸気の温度が予め定められた吸気温度の設定値よりも高い場合には、加圧空気温スイッチ39からON信号が出力される。一方、検出された吸気の温度が上記吸気温度の設定値以下である場合には、加圧空気温スイッチ39からOFF信号が出力される。
車両には、車両各部を制御するECU(Electronic Control Unit)を有する車両制御部40が設けられている。車両制御部40には加圧空気温スイッチ39が接続されており、加圧空気温スイッチ39により出力される信号が車両制御部40に入力される。車両制御部40には水インジェクター34が接続されており、水インジェクター34は車両制御部40により制御される。
図2は、本実施形態のタイムチャートである。図3は、本実施形態の動作を示すフローチャートである。
図2において、符号100は、水インジェクター34に対する駆動信号の状態を示す。符号101は、加圧空気温スイッチ39の出力を示す。符号102は、吸気の温度の時間的推移を示す。符号103は、吸気の圧力の時間的推移を示す。符号A0は、予め定められた吸気温度の設定値を示す。符号t1は、車両の加速時にターボチャージャー30による過給が開始される点を示す。
本実施形態では、吸気の温度102が高温の場合に、加圧された吸気の冷却が行われる。吸気の温度102が上記吸気温度の設定値A0よりも高い場合には、車両制御部40からの噴射指令により水インジェクター34から水が噴射される。
符号Tonは、車両制御部40により駆動信号100がONとされている期間(以下、ON時間とする)を示す。ON時間Tonにおいて、ONとされた駆動信号100に応答して水インジェクター34により吸気管14内に水が噴射される。符号Toffは、駆動信号100がOFFとされている期間(以下、OFF時間とする)を示す。OFF時間Toffにおいては水インジェクター34による水の噴射は停止される。
過給時には、図3に示すフローチャートが予め定められた所定の時間間隔で実行される。ステップS10において、加圧空気温スイッチ39からON信号が出力されているか否かが判定される。上記のように、加圧空気温スイッチ39からON信号が出力されるのは、吸気の温度102(図2)が上記吸気温度の設定値A0よりも高い場合である。
図2に示すように、時刻t1において過給が開始されると、吸気の圧力103が上昇し、それに連動して吸気の温度102が上昇し始める。時刻t1において過給が開始されてから時刻t2までの間は、吸気の温度102が上記吸気温度の設定値A0に比べて低い。よって、加圧空気温スイッチ39の出力101はOFFとなる。この場合、ステップS10において否定判定が行われるので、本制御フローはリセットされ、再度図3に示すフローチャートが実行される。
時刻t2において、吸気の温度102が上記吸気温度の設定値A0に達する。これにより、符号101に示すように、時刻t2において加圧空気温スイッチ39から車両制御部40にON信号が出力される。この場合、ステップS10において肯定判定が行われるので、ステップS20へ移行する。
ステップS20では、加圧空気温スイッチ39の出力101がONとされたのに応答して、車両制御部40において、現在は加圧された吸気を冷却すべき期間にあると判定される。図2に示す例では、時刻t2から時刻t6までの期間が、加圧された吸気を冷却すべき期間に設定される。加圧された吸気を冷却すべき期間では、水噴射信号がONとされる。水噴射信号とは、車両制御部40内において、水インジェクター34に対する噴射指令が生成されて水の噴射制御が行われる状態となるための信号である。
以上説明したように、本実施形態では、加圧空気温スイッチ39の出力101に基づいて、ターボチャージャー30により加圧された吸気を冷却するか否か(加圧された吸気を冷却すべき期間)が判定される。加圧された吸気を冷却すべき期間は、冷却期間判定手段(車両制御部40)により判定される。車両制御部40は、加圧空気温スイッチ39の出力101がONである期間を、加圧された吸気を冷却すべき期間として設定する。加圧された吸気を冷却すべき期間において、車両制御部40は、水インジェクター34に対して駆動信号100を出力する。水インジェクター34は、駆動信号100に応答して水を噴射する。
図2に示すように、水インジェクター34に対する駆動信号100は、ONの状態とOFFの状態とが交互に繰り返される。即ち、ON時間Tonにおいて水を噴射した後、OFF時間Toffにおいて水の噴射を停止する動作が繰り返される。これにより、水噴霧は、吸気管14の吸気の流れ方向における水噴霧よりも上流側及び下流側から高温の吸気に挟まれる。このため、水噴霧と高温の吸気の混合が促進される。よって、連続的に水が噴射される場合に比べて、噴射された水の蒸発が促進される。
本実施形態では、水インジェクター34から水が噴射されるON時間Tonは、水インジェクター34に対する駆動信号100がONとされてから、噴射される水の圧力が予め定められた所定の圧力に上昇するまでの時間に設定される。後述するように、上記所定の圧力は、水噴霧の形状が安定した形状となる圧力に設定される。これにより、以下に説明するように水噴霧の広がる角度(噴霧角度)が大きくなるので、水と吸気とが混合しやすくなり、水の蒸発が促進される。また、噴射される水が十分に微粒化されるので、蒸発が促進される。
図4は、水インジェクター34の拡大図である。水インジェクター34は、本体45と、本体45の先端部に設けられた小径部49とを備える。小径部49は、本体45よりも小径に形成されている。小径部49には、水インジェクター34から外部空間に噴射される水の通路である噴孔41が設けられている。本体45の内部には、本体45の軸線方向に往復動可能なバルブ43が設けられている。本体45とバルブ43との間には、水通路46が形成されている。バルブ43は、図示しない駆動機構により、本体45の軸線方向に往復移動される。バルブ43の往復移動する方向において、噴孔41へ向かう方向を矢印Xで示す(以下、この方向をX方向とする)。
本体45と小径部49との接続部における本体45の内周面には、弁座44が設けられている。図4には、バルブ43が弁座44に当接した状態(水噴射の停止時の状態)が示されている。小径部49の内部には、水貯留部42が形成されている。噴孔41は、水貯留部42と水インジェクター34の外部空間とを連通させている。噴孔41は、X方向と概ね直交する方向に開口している。
図5は、水噴射時における水インジェクター34の様子を示す図である。水が噴射される際には、バルブ43が図示しない駆動機構によりX方向と反対の方向に移動される。これにより、バルブ43は弁座44から離れ、水通路46と水貯留部42が連通された状態となる。水ポンプ35(図1)により水配管38(図1)を介して水インジェクター34に圧送された水は、矢印47に示すように、水通路46を通り水貯留部42へ流れ込む。水貯留部42に流れ込んだ高圧の水は、噴孔41を通り外部空間に噴射される。噴射された水は、水噴霧48となる。
符号Yで示す矢印は、吸気の流れ方向(吸気管14における下流側)を示す。本実施形態では、吸気の流れ方向における下流側(エンジン1に近い側)に向けて水が噴射される。符号αは、水噴霧48の噴霧角度を示す。なお、噴霧角度αは、図では上下方向の角度を示しているが、水噴霧48は、水の噴射方向(矢印Yで示す方向)に直交する方向の断面形状が概ね円形となる。このため、水噴霧48の左右方向(紙面に直交する方向)の広がりの角度も符号αで示す値となる。
本実施形態では、上記のように、水インジェクター34に対する駆動信号100がONとされて水が噴射されるON時間Tonは、上記駆動信号100がONとされてから噴射される水の圧力(水貯留部42の圧力)が予め定められた所定の圧力(図6のPw参照)に上昇するまでの時間に設定される。以下に図6を参照して説明するように、上記所定の圧力は、例えば水噴霧48が安定した形状となる最低圧力に設定されることができる。ここで、水噴霧48の形状が安定するとは、噴霧角度αが予め設定された所定の角度(図6のα0参照)となることをいう。
図6は、噴射される水の圧力と噴霧角度αとの関係を示す図である。符号Pwは、上記所定の圧力を示す。符号α0は、上記所定の角度を示す。符号400は、水インジェクター34により噴射される水の圧力と噴霧角度αとの対応関係を示す。符号400に示すように、噴霧角度αは、噴射される水の圧力が上昇するに連れて大きくなる。噴射される水の圧力が上昇して上記所定の圧力Pwに達すると、それ以上に水圧が上昇しても噴霧角度αは変化せず、噴霧角度αが概ね上記所定の角度α0で推移する。上記所定の圧力Pwは、このように噴霧角度αが概ね上記所定の角度α0で推移する圧力の領域における下限値に設定される。
ON時間Tonは、例えば実験の結果に基づいて設定される。ON時間Tonが、上記のように水インジェクター34に対する駆動信号100がONとされてから噴射される水の圧力が上記所定の圧力Pwに上昇するまでの時間に設定されるのは、以下の理由による。
水インジェクター34から水が噴射される場合に、図5に示す噴霧角度αが大きいほど、水の蒸発が促進される。これは、噴霧角度αが大きいほど、噴射された水が広範囲に広がって吸気と混合しやすくなるためである。図6を参照して説明したように、噴霧角度αは水圧が高くなるに連れて大きくなる。このため、ON時間Tonが大きな値に設定されて噴射される水の圧力が大きくなるほど水の蒸発が促進される。また、噴射される水の圧力が高くなると、水が十分に微粒化されるので水の蒸発が促進されるという効果がある。
しかしながら、図6に示すように、噴射される水の圧力が上記所定の圧力Pwよりも高くなっても、噴霧角度αは上記所定の角度α0よりも増加しない。従って、水圧が上記所定の圧力Pwまで上昇する時間よりも長く水の噴射が行われても、噴霧角度αの増加による蒸発効果の向上は期待できない。また、水の噴射が長く行われると、水噴霧48と吸気との混合が行われにくくなる。これは、水の噴射時間が長くなるほど、図5に符号Lで示す水噴霧48の噴射方向の長さが長くなるからである。水噴霧48の噴射方向の長さLが長くなるほど、水噴霧48は、符号Yで示す吸気の流れ方向における水噴霧48よりも上流側及び下流側を流れる高温の吸気と混合されにくくなる。この場合、水噴霧48が蒸発しにくくなってしまう。
そこで、本実施形態では、ON時間Tonは水の噴射が開始されてから噴射される水の圧力が上記所定の圧力Pwに上昇するまでの時間に設定される。これにより、噴霧角度αが十分に大きくなると共に、水インジェクター34から噴射される水の粒子が十分に小さくなるため、噴射された水(水噴霧48)の蒸発が促進される。また、水噴霧48は、吸気管14の吸気の流れ方向における水噴霧48よりも上流側及び下流側を流れる高温の吸気と十分に混合される。このため、水噴霧48の蒸発が促進される。
次に、水の噴射が停止される期間であるOFF時間Toffについて説明する。上記のようにON時間Tonにおいて水の噴射が行われた後で、OFF時間Toffでは水の噴射が停止される。ON時間TonとOFF時間Toffとが交互に繰り返されることで、水が噴射される期間(第1の期間)と次に水が噴射される期間(第3の期間)との間に、水が噴射されない期間(第2の期間)が設けられる。これにより、第1の期間に噴射された水噴霧48と第3の期間に噴射された水噴霧48との間に高温の吸気の層が保たれる。その結果、水噴霧48に高温の吸気が取り込まれやすくなり、蒸発が促進される。OFF時間Toffは、以下に説明するように、より効果的に水の蒸発を促進させる値に設定される。
OFF時間Toffは、様々な要素によって値が変動する。例えば、水インジェクター34による1回のON時間Tonにおける水の噴射量(以下、各回噴射量とする(後述する図7の符号W参照))、エンジン回転数、過給圧、及び吸気の温度の降下量の目標値(以下、目標降下量Ctrgとする)等に応じてOFF時間Toffは異なる値に設定される。OFF時間Toffは、例えば実験の結果に基づいて設定される。この場合、OFF時間Toffは、以下に図7から図9を参照して説明するように、目標降下量Ctrgが実現できる範囲内で単位時間当たりの水の噴射量(以下、単位時間噴射量とする(図7の符号WA参照))が最小となる値に設定される。
OFF時間Toffが変化すると、例えば水噴霧48と吸気との混合しやすさの違い等により、水の蒸発のしやすさ(蒸発に要する時間等)が変化する。OFF時間Toffは、ON時間Tonが終了して水の噴射が停止されてから次回のON時間Tonにおける水の噴射が開始されるまでの時間間隔である。OFF時間Toffが大きな値に設定されるほど、1回目のON時間Tonで噴射される水噴霧48と2回目のON時間Tonで噴射される水噴霧48との間に挟まれる高温の吸気の量が多くなる。このため、OFF時間Toffが大きな値に設定されるほど、水噴霧48の蒸発が促進されて吸気の温度の降下量(以下、吸気温降下量とする(図7の符号C参照))が大きくなると考えられる。
しかしながら、OFF時間Toffが必要以上に大きな値に設定された場合には、高温の吸気の量に対して噴射される水の量が不足するため、十分に吸気の温度を降下させることができなくなる。この場合、吸気温降下量Cは小さな値となってしまう。各回噴射量Wが同じであったとしても、上記のようにOFF時間Toffの値によって、吸気温降下量Cが異なる値となる。従って、図7に示すように、ある任意の各回噴射量Wに対して、吸気温降下量Cの値が最大値(以下、最大降下量Cmaxとする)となるOFF時間Toff(以下、最適OFF時間ZAとする)が存在する。
図7は、各回噴射量W、各回噴射量Wの条件下における最大降下量Cmax、及び最適OFF時間ZAの組合せを示す図である。図7において、符号W1、W2等は、各回噴射量Wの設定値を示す。符号C1、C2等は、各回噴射量Wの条件下における最大降下量Cmaxの値を示す。符号Z1、Z2等は、各回噴射量Wの条件下において最大降下量Cmaxが得られる最適OFF時間ZAの値を示す。
最適OFF時間ZAを求める場合には、以下に説明するように、各回噴射量Wの値がある1つの値に設定された条件の下で、OFF時間Toffの値が様々な値に振られる。その結果、吸気温降下量Cが最大降下量Cmaxとなる最適OFF時間ZAが実験により求められる。
図7においてNo1に示す実験結果が求められる場合を例に、図8を参照して、実験手順について説明する。図8において、符号Z1n(n=1、2、3…)は、OFF時間Toffの設定値を示す。符号C1n(n=1、2、3…)は、OFF時間Toffの設定値Z1nに対して実験の結果得られた吸気温降下量Cの値を示す。
図8に示すように、各回噴射量Wの値がW1に設定された条件下で、OFF時間Toffの設定値Z1nが様々な値に振られる。その結果として得られた吸気温降下量C1nのうちで最大の値C1が最大降下量Cmaxとされる。この場合、吸気温降下量C1nの最大値C1が得られたときのOFF時間Toffの設定値Z1nの値Z1が、最適OFF時間ZAに設定される。最大降下量Cmaxの値C1及び最適OFF時間ZAの値Z1が各回噴射量Wの値W1と対応付けられてNo1の実験結果として記憶される。
図7においてNo2に示す実験結果が求められる場合には、図9に示すように、各回噴射量Wの値がW2に設定された条件下で、上記と同様の手順により、吸気温降下量C2nの最大値C2が求められる。吸気温降下量C2nの最大値C2が、最大降下量Cmaxの値として設定される。また、吸気温降下量C2nの最大値C2が得られたときのOFF時間Toffの設定値Z2nの値Z2が、最適OFF時間ZAの値に設定される。同様にして、上記実験が図7の各回噴射量Wのそれぞれの設定値(W3、W4…)の条件下で行われ、それぞれの実験結果に基づいて図7に示す組合せが設定される。
図7において、符号WA(WA1、WA2等)は、単位時間噴射量を示す。単位時間噴射量WAは、各回噴射量W、ON時間Ton(図示せず)、及び最適OFF時間ZAに基づいて算出される。
次に、OFF時間Toffの決定方法について説明する。加圧された吸気が冷却される場合には、例えば、加圧された吸気の温度に基づいて、目標降下量Ctrgが定められる。目標降下量Ctrgが設定されると、図7に示す各回噴射量W、最大降下量Cmax、及び最適OFF時間ZAの組合せの中から、最大降下量Cmaxの値が目標降下量Ctrgを満足する組合せが選択される。選択された組合せが複数存在する場合には、単位時間噴射量WAの値が最小である組合せが採用される。
例えば、目標降下量Ctrgを実現できる最大降下量Cmaxの値がC1及びC3であったとすると(C1とC3とは同じ値であっても異なる値であってもいずれでもよい)、No1及びNo3の組合せが選択される。この場合に、両者の単位時間噴射量WA同士が比較される。No1の組合せにおける単位時間噴射量WA1に比べてNo3の組合せにおける単位時間噴射量WA3の方が小さな値である場合には、No3の組合せが最終的に選択される。この場合、OFF時間Toffの値は、Z3に設定される。
これにより、目標降下量Ctrgが実現できる範囲内で、単位時間噴射量WAがより少なくて済むようになる。なお、エンジン回転数及び過給圧は、それぞれ図示しないエンジン回転数検出装置及び過給圧検出装置により検出される。
本実施形態によれば、加圧された吸気を冷却すべき期間において、水の噴射が間欠的に行われることにより、噴射された水の蒸発が促進される。また、水が噴射される期間であるON時間Tonは、水の噴射が開始されてから噴射される水の圧力が上記所定の圧力Pwに上昇するまでの時間に設定される。これにより、噴射された水と吸気との混合が促進されると共に噴射される水が十分に微粒化されるので、より効率的に水の蒸発が促進される。その結果、噴射された水が蒸発しないままで吸気管14に残留することが抑制される。
また、本実施形態によれば、加圧された吸気を冷却すべき期間において連続して水が噴射される場合に比べて水の蒸発が促進される。このため、吸気の温度を同じだけ降下させるのに必要とされる水の噴射量は、連続して水が噴射される場合に比べて少なくて済む。さらに、OFF時間Toffが上記のように目標降下量Ctrgに対する単位時間噴射量WAを最小とする値に設定されることで、吸気の温度を同じ量だけ降下させるのに必要な水の噴射量が極力小さな値に設定される。即ち、より少ない水の噴射量で吸気の温度が効率的に降下させられる。消費する水の量が少なくなるため、水タンク36の容量を小さくして重量を減少させることが可能となる。また、水の消費量が少なくなることで、水を補給する頻度が低下し、メンテナンスの手間が減少する。
本実施形態では、インタークーラー31の設置位置よりも上流側で水が噴射されることで、インタークーラー31に流入する吸気の温度が降下する。これにより、インタークーラー31が高温の吸気にさらされて劣化することが抑制される。
本実施形態では、加圧空気温スイッチ39が水インジェクター34の設置位置よりも上流側に設けられている。このため、水が噴射されて水インジェクター34よりも下流側の吸気の温度が低下しても加圧空気温スイッチ39により検出される吸気の温度には影響しない。これにより、コンプレッサー30aから供給される吸気の温度が正確に把握されるので、水の噴射が必要な状態であるか否かが確実に判定される。
本実施形態では、吸気の温度に基づいて加圧された吸気を冷却するか否かが判定される。なお、過給が行われる場合には、吸気の圧力の上昇に伴って温度が上昇するので、加圧された吸気を冷却するか否かの判定を吸気の圧力に基づいて行うことが考えられる。しかしながら、以下に説明するように、吸気の圧力に基づいて上記の判定が行われた場合には、コンプレッサー30aから供給される吸気の温度がまだ十分に下がりきらないうちに水の噴射が終了されてしまうという問題がある。
図2において、符号P0は、吸気の温度102が上記吸気温度の設定値A0に達する時刻t2における吸気の圧力103の値を示す。図2に示すように、エンジン1の負荷の低下により時刻t3において吸気の圧力103が低下し始めても、吸気の温度102はすぐには低下しない。これは、過給時にはコンプレッサー30a及び吸気管14等が高温となるためである。時刻t3において吸気の圧力103が低下し始めても、コンプレッサー30a及び吸気管14等の温度が高温のままであるため、吸気の温度102はすぐには低下せず、吸気の圧力103に比べて低下し始めるタイミング(時刻t4)が遅れる。このため、吸気の圧力103が符号P0で示す圧力に低下する時刻t5において、吸気の温度102は上記吸気温度の設定値A0よりも高い温度A1までしか低下していない。
上記のように、吸気の温度102は吸気の圧力103に対して遅れて低下する。このため、吸気の圧力103が圧力P0以上であるか否かに基づいて加圧された吸気を冷却するか否かが判定された場合には、吸気の温度102がまだ温度A1までしか低下していない状態(時刻t5)において加圧された吸気の冷却が終了されることとなる。このようにまだ加圧された吸気の冷却が必要な状態で加圧された吸気の冷却が終了されてしまうと、ノッキングの抑制が十分に行われなくなる。そこで、本実施形態では、吸気の温度102に基づいて加圧された吸気を冷却するか否かが判定される。これにより、吸気の温度102がまだ十分に下がりきらないうちに加圧された吸気の冷却が終了されてしまうという問題の発生が抑制される。
本実施形態では、上記所定の圧力Pw(図6)は、噴霧角度αが概ね上記所定の角度α0で推移する圧力の領域における下限値に設定されたが、これに代えて、上記所定の圧力Pwは水インジェクター34に供給される水の供給圧に設定されることができる。この場合、噴射される水の圧力が取り得る値の最大値である供給圧となるまで水の噴射が行われる。よって、ON時間Tonにおいて水の噴射が行われている間に、噴霧角度αが確実に取り得る値の最大値となる構成とされる。
本実施形態では、水が吸気管14内に噴射されたが、噴射される冷却媒体は水には限らない。例えば、冷却媒体として燃料が吸気管14内に噴射されることができる。
(第1実施形態の変形例)
本変形例では、OFF時間Toffは、噴射された水(図5の水噴霧48)が蒸発するまでの時間に設定される。これにより、噴射された水が蒸発するまで次回の水の噴射が行われないので、噴射された水が吸気管14に残留することが抑制される。
噴射された水が蒸発するまでの時間は、条件により異なる。本変形例では、吸気の圧力、吸気の温度、噴射される水の量及び噴射される水の温度に基づいてOFF時間Toffが設定される。OFF時間Toffは、例えば実験の結果に基づいて設定される。
(第2実施形態)
図10から図13を参照して第2実施形態について説明する。第2実施形態については、上記第1実施形態と異なる点についてのみ説明する。
上記第1実施形態では、加圧された吸気を冷却すべき期間において水が間欠的に噴射されることで水の蒸発が促進され、吸気管14内に水が残留することが抑制された。本実施形態では、これに加えて、外気温度が低い場合には、噴射された水が蒸発しきれずに吸気管14内に残留することをより確実に抑制するための制御が行われる。これにより、外気温度が低い場合に吸気管14内に残留した水が凍結することが抑制される。
本実施形態では、外気温度に応じて、加圧された吸気を冷却するか否かが判定される際のパラメータが変更される。外気温度が予め定められた所定の外気温度(例えば0℃)よりも高い場合(以下、高外気温時とする)には、上記第1実施形態と同様に吸気の温度に基づいて加圧された吸気の冷却を行うか否かが判定される。一方、外気温度が上記所定の外気温度以下である場合(以下、低外気温時とする)には、吸気の圧力に基づいて上記判定が行われる。
これにより、以下に詳しく説明するように、低外気温時には、加圧された吸気の冷却が開始される時点に比べて、吸気の温度が高い状態で加圧された吸気の冷却が終了されるようになる。このため、水の噴射が終了される時点で吸気管14内に蒸発していない水が存在したとしても、その後に比較的高温の吸気が吸気管14を流れるので、その水の蒸発が促進される。よって、吸気管14内に水が残留することが抑制される。その結果、残留した水が凍結することが好適に抑制される。
図10は、本実施形態に係る装置の概略構成図である。上記第1実施形態の装置(図1)の加圧空気温スイッチ39に代えて、加圧空気温センサ51が設けられている。加圧空気温センサ51により、ターボチャージャー30で加圧された吸気の温度が検出される。吸気管14におけるコンプレッサー30aの設置位置と水インジェクター34の設置位置との間には、加圧空気圧センサ52が設けられている。加圧空気圧センサ52によりターボチャージャー30で加圧された吸気の圧力が検出される。
インタークーラー31の近傍には、外気温度検出手段(外気温センサ)50が設けられている。外気温センサ50により外気の温度が検出される。本実施形態では、外気温センサ50は、インタークーラー31における車両外部に面した側(以下、車両外部側とする)の近傍に配置される。外気温センサ50が上記の位置に設けられるのは、以下に説明するように、インタークーラー31は、水が残留する可能性が高く、かつ残留した水が凍結した場合に影響を受けやすい部分だからである。
インタークーラー31の内部において、吸気の通路は径の小さい複数の通路に分かれている。このため、インタークーラー31内には水が残留する可能性が高い。
また、インタークーラー31は、残留した水が凍結した場合に流路抵抗が増加するなど凍結による影響が出やすい。これは、インタークーラー31の内部において上記のように吸気の通路が狭いことなどによる。
このため、本実施形態では、インタークーラー31における車両外部側の近傍に外気温センサ50が設置される。これにより、水が残留する可能性が高く、かつ残留した水が凍結した場合に影響が出やすいインタークーラー31が低温の外気に晒されているか否かが確実に検出される。
上記第1実施形態の車両制御部40に代えて、車両制御部60が設けられている。外気温センサ50、加圧空気温センサ51及び加圧空気圧センサ52は車両制御部60に接続されており、それぞれの計測結果が車両制御部60に入力される。水インジェクター34は車両制御部60に接続されており、車両制御部60により制御される。
本実施形態では、外気温センサ50により検出される外気温度に基づいて加圧された吸気を冷却するか否かが判定される際のパラメータが変更される。高外気温時には、上記第1実施形態(図2参照)と同様に吸気の温度に基づいて加圧された吸気を冷却するか否かが判定される。一方、低外気温時には、吸気の圧力に基づいて上記判定が行われる。
これにより、次に説明するように、低外気温時には、加圧された吸気の冷却が開始される時点に比べて、吸気の温度が高い状態で加圧された吸気の冷却が終了されるようになる。
図11は、高外気温時において、上記第1実施形態と同様に吸気の温度に基づいて加圧された吸気を冷却するか否かが判定される場合のタイムチャートである。図12は、低外気温時において、吸気の圧力に基づいて加圧された吸気を冷却するか否かが判定される場合のタイムチャートである。
図11の符号200及び図12の符号300は、それぞれ車両制御部60から水インジェクター34に対して出力される駆動信号の状態を示す。第1実施形態(図2)と同様に、ON時間Tonにおいて水インジェクター34により吸気管14に水が噴射される。OFF時間Toffにおいて水インジェクター34による水の噴射は停止される。
図11の符号201及び図12の符号301は、それぞれ水噴射信号の状態を示す。図11の符号202及び図12の符号302は、それぞれ吸気の温度の時間的推移を示す。図11の符号203及び図12の符号303は、それぞれ吸気の圧力の時間的推移を示す。図11及び図12において、符号A2は、予め定められた第2の吸気温度の設定値を示す。第2の吸気温度の設定値A2は、上記第1実施形態における吸気温度の設定値A0と同じ値であることができる。図11及び図12において、符号P1は、予め定められた圧力の設定値である。図11及び図12において、符号t11は、ターボチャージャー30により過給が開始される点を示す。
本実施形態では、高外気温時には、図11に示すように、吸気の温度202に基づいて加圧された吸気を冷却するか否かが判定される。吸気の温度202が上記第2の吸気温度の設定値A2よりも高い場合には、加圧された吸気を冷却すると判定されて、水噴射信号201がONとされる。吸気の温度202が上記第2の吸気温度の設定値A2以下である場合には、水噴射信号201がOFFとされる。
一方、低外気温時には、図12に示すように、吸気の圧力303に基づいて加圧された吸気を冷却するか否かが判定される。吸気の圧力303が上記圧力の設定値P1よりも大きい場合には、加圧された吸気を冷却すると判定されて、水噴射信号301がONとされる。吸気の圧力303が上記圧力の設定値P1以下である場合には、水噴射信号301がOFFとされる。上記圧力の設定値P1は、過給により吸気の圧力303及び吸気の温度302が上昇する際に、吸気の温度302が上記第2の吸気温度の設定値A2に達する時刻t12における吸気の圧力303の値に設定されている。
これにより、本実施形態では、高外気温時及び低外気温時において、加圧された吸気の冷却が開始される際の吸気の温度(図11の202、図12の302)が同じとなる構成とされているが、低外気温時における加圧された吸気の冷却が開始される際の吸気の温度302の値はこれには限定されない。高外気温時と低外気温時とで加圧された吸気の冷却が開始される際の吸気の温度(図11の202、図12の302)が異なる値となるように、上記圧力の設定値P1が設定されることができる。
ここで、低外気温時に吸気の圧力303に基づいて加圧された吸気を冷却するか否かが判定された場合の、加圧された吸気が冷却される期間の開始時と終了時における吸気の温度302の温度差について説明する。エンジン1の負荷の低下に伴って吸気の圧力303が低下する際に、吸気の温度302は吸気の圧力303に比べて遅れて低下する。これは、上記第1実施形態で図2を参照して説明したように、過給時にはコンプレッサー30a及び吸気管14等が高温となるためである。エンジン1の負荷の低下により、吸気の圧力303は、時刻t13においてピークに達した後低下し始め、時刻t15において上記圧力の設定値P1となる。一方、吸気の温度302は、時刻t15において上記第2の吸気温度の設定値A2よりも高い温度A3までしか低下していない。
このように、加圧された吸気の冷却が終了される時刻t15における吸気の温度302の値(A3)は、加圧された吸気の冷却が開始される時刻t12における吸気の温度302の値(上記第2の吸気温度の設定値A2)よりも高くなる。これにより、加圧された吸気の冷却が終了される時刻t15以降に比較的高温の吸気が吸気管14を流れるため、吸気管14に水が残留することが抑制される。
図13は、本実施形態の動作を示すフローチャートである。まず、ステップS110において、外気温センサ50により検出された外気温度が読み込まれる。
次に、ステップS120において、外気温度が予め定められた所定の外気温度よりも高いか否かが判定される。
ステップS120の判定の結果、外気温度が上記所定の外気温度よりも高いと判定された(ステップS120肯定)場合には、ステップS130へ移行する。この場合、上記第1実施形態と同様に吸気の温度202(図11)に基づいて加圧された吸気を冷却するか否かが判定される。
ステップS130では、加圧空気温センサ51により検出された吸気の温度202(加圧空気温)が読み込まれる。次に、ステップS140において、吸気の温度202が上記第2の吸気温度の設定値A2よりも高いか否かが判定される。図11に示すように、吸気の温度202が上記第2の吸気温度の設定値A2よりも高くなるのは、時刻t12から時刻t16の間である。
ステップS140の判定の結果、吸気の温度202が上記第2の吸気温度の設定値A2よりも高いと判定された(ステップS140肯定)場合には、ステップS170へ移行する。ステップS170では、車両制御部60において水噴射信号201がONに設定される。水噴射信号201がONにされると、車両制御部60により水インジェクター34に対する駆動信号200の出力が開始される。水インジェクター34は、駆動信号200に応答して水を噴射する。
一方、ステップS140の判定の結果、吸気の温度202が上記第2の吸気温度の設定値A2以下であると判定された(ステップS140否定)場合には、本制御フローは終了される。
ステップS120の判定の結果、外気温度が上記所定の外気温度以下であると判定された(ステップS120否定)場合には、ステップS150へ移行する。この場合、吸気の圧力303(図12)に基づいて加圧された吸気を冷却するか否かが判定される。
ステップS150では、加圧空気圧センサ52により検出された吸気の圧力303(加圧空気圧)が読み込まれる。次に、ステップS160において、吸気の圧力303が上記圧力の設定値P1よりも大きいか否かが判定される。図12に示すように、吸気の圧力303が圧力の設定値P1よりも大きくなるのは、時刻t12から時刻t15の間である。
ステップS160の判定の結果、吸気の圧力303が上記圧力の設定値P1よりも大きいと判定された(ステップS160肯定)場合には、ステップS170へ移行する。ステップS170では、車両制御部60において水噴射信号301がONに設定される。水噴射信号301がONにされると、車両制御部60により水インジェクター34に対する駆動信号300の出力が開始される。水インジェクター34は、駆動信号300に応答して水を噴射する。
一方、ステップS160の判定の結果、吸気の圧力303が上記圧力の設定値P1以下であると判定された(ステップS160否定)場合には、本制御フローは終了される。
本実施形態では、外気温度が上記所定の外気温度よりも高い場合(ステップS120肯定)には、吸気の温度202に基づいて加圧された吸気を冷却するか否かが判定される(ステップS130、S140)。一方、外気温度が上記所定の外気温度以下である場合(ステップS120否定)には、吸気の圧力303に基づいて加圧された吸気を冷却するか否かが判定される(ステップS150、S160)。
これにより、上記において図12を参照して説明したように、低外気温時には、加圧された吸気の冷却が終了される時刻t15における吸気の温度302の値(A3)は、加圧された吸気の冷却が開始される時刻t12における吸気の温度302の値(上記第2の吸気温度の設定値A2)よりも高くなる。このため、低外気温時には、加圧された吸気の冷却が終了される時刻t15以降に比較的高温の吸気が吸気管14を流れるため、水の蒸発が促進される。よって、水の噴射が終了された後に吸気管14内に水が残留することが抑制される。その結果、残留した水が凍結することによる不具合が抑制される。
本実施形態では、外気温センサ50がインタークーラー31における車両外部側の近傍に設置された。これにより、特に水が残留する可能性が高く、かつ残留した水が凍結した場合に影響を受けやすい部分の近傍の外気温度が検出される(ステップS110)。その外気温度が上記所定の外気温度以下である場合(ステップS120否定)には、吸気の温度302が高い状態で加圧された吸気の冷却を終了させる制御(ステップS150、S160)が行われる。その結果、特に水が残留しやすく、かつ残留した水が凍結した場合に影響を受けやすいインタークーラー31において水が残留すること、及び残留した水が凍結することによる不具合が発生することが抑制される。
本実施形態の制御は、ターボチャージャー30が比較的エンジン回転数が低い状態から高過給が行われるように設定されている場合に高い効果を奏する。上記のようにターボチャージャー30が設定されるのは、例えばエンジン1を低排気量化した際の出力低下分を補う手段として過給が行われる場合である。一般的に、高出力を得るために過給が行われる場合にはエンジン回転数が高い側で過給圧が高くなるような設定とされる。一方、燃費の向上等を目的としてエンジン1が低排気量化される場合に、低排気量化による出力低下分を補うことを目的として過給が行われる場合には、比較的エンジン回転数が低い状態から高過給が行われる設定とされる。
この場合、車速が低速の状態で高過給が行われることが多い。低速走行時には走行風が弱いため、高過給で高温となった吸気に対して、走行風によるインタークーラー31の冷却効果がさほど期待できない。このため、吸気を冷却するための水の噴射の機会が増加することとなり、噴射された水が吸気管14内に残留する可能性が高くなる。また、低速走行の状態からは短時間で車両が停止され、その直後にエンジン1が停止される可能性が高い。高過給かつ低速走行の状態から短時間でエンジン1が停止された場合には、水の噴射が終了されてすぐにエンジン1が停止されることとなり、吸気管14内に水が残留する可能性が高くなる。上記のように吸気管14内に水が残留した場合に、外気温度が低温であると、残留した水が凍結することによる不具合が生じることとなる。
これに対して、本実施形態では、低外気温時には、吸気の温度302が比較的高温の状態で加圧された吸気の冷却が終了されて、水の蒸発を促進する制御が行われる。このため、低排気量化による出力低下分を補うことを目的として過給が行われる場合において、上記のように低速走行の状態から短時間でエンジン1が停止された場合であっても、エンジン1の停止後に水が吸気管14内に残留することが抑制される。その結果、残留した水が凍結することによる不具合の発生が抑制される。
(第2実施形態の変形例)
上記第2実施形態では、低外気温時に、加圧された吸気の冷却の開始時に比べて、吸気の温度302が高い状態で加圧された吸気の冷却を終了させる制御が行われる。その方法として、低外気温時には、吸気の圧力303に基づいて加圧された吸気を冷却するか否かが判定された。これに代えて、本変形例では、低外気温時に、吸気の温度302に基づいて加圧された吸気を冷却するか否かが判定される。加圧された吸気の冷却の終了判定を行う場合の判定値が、加圧された吸気の冷却の開始判定を行う場合の判定値に比べて大きな値に設定される。
高外気温時の制御は、上記第2実施形態と同様である。即ち、図11に示すように、加圧された吸気の冷却を開始する場合(時刻t12)の吸気の温度202の判定値と加圧された吸気の冷却を終了する場合(時刻t16)の吸気の温度202の判定値は同じ値(第2の吸気温度の設定値A2)に設定される。
一方、低外気温時には、加圧された吸気の冷却を開始する場合には、吸気の温度302(図12)の判定値として上記第2の吸気温度の設定値A2が用いられると共に、加圧された吸気の冷却を終了する際には、予め設定された第3の吸気温度の設定値が判定値とされる。上記第3の吸気温度の設定値は、上記第2の吸気温度の設定値A2よりも大きな値に設定される。上記第3の吸気温度の設定値は、例えば、図12に符号A3で示す値に設定されることができる。
この場合、図12に示すように、低外気温時には、加圧された吸気の冷却が終了される際の吸気の温度302の値(第3の吸気温度の設定値A3)が、加圧された吸気の冷却が開始される際の吸気の温度302の値(第2の吸気温度の設定値A2)よりも高くなる。
本実施形態では、水が吸気管14内に噴射されたが、噴射される冷却媒体は水には限らない。例えば、冷却媒体として燃料が吸気管14内に噴射されることができる。