JP2008133518A - プラズマ窒化制御方法及びプラズマ窒化システム - Google Patents
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Abstract
【課題】プラズマ窒化中の窒素エネルギーの精密な制御を可能とするシステムの提供。
【解決手段】プラズマ窒化制御方法であって、プラズマ窒化中のプラズマの励起状態を表す信号を計測対象にし、その計測結果に基づきプラズマ電源をフィードバック制御する。プラズマ窒化の際、炉本体5の側面の開口5bから、集光レンズ系3を介してプラズマの励起状態を検出し、検出光を光ファイバ19で発光分光光度計4に導光し、集光ユニット19aで集光する。この光をモノクロメータ17で分光し、ゲート付ICCD検出器18でスペクトルを検出し、その発光スペクトル強度を信号ライン21でコントローラ20に伝える。コントローラ20はインターフェース23及びパーソナルコンピュータ22を備え、このパーソナルコンピュータ22が発光スペクトル強度を計算し、これを操作盤25で設定された設定強度と比較し、その差に応じた制御信号をプラズマ電源8に出力する。
【選択図】図1
【解決手段】プラズマ窒化制御方法であって、プラズマ窒化中のプラズマの励起状態を表す信号を計測対象にし、その計測結果に基づきプラズマ電源をフィードバック制御する。プラズマ窒化の際、炉本体5の側面の開口5bから、集光レンズ系3を介してプラズマの励起状態を検出し、検出光を光ファイバ19で発光分光光度計4に導光し、集光ユニット19aで集光する。この光をモノクロメータ17で分光し、ゲート付ICCD検出器18でスペクトルを検出し、その発光スペクトル強度を信号ライン21でコントローラ20に伝える。コントローラ20はインターフェース23及びパーソナルコンピュータ22を備え、このパーソナルコンピュータ22が発光スペクトル強度を計算し、これを操作盤25で設定された設定強度と比較し、その差に応じた制御信号をプラズマ電源8に出力する。
【選択図】図1
Description
この発明は、プラズマ窒化制御方法及びプラズマ窒化システムに関する。
マイクロパルス・プラズマ窒化は、窒化反応の活性化及び低温化を可能とし、高度な温度制御システムによって、量産性と高品質性を兼備している。アンモニアレスによるプラズマ窒化プロセスは、人と環境に優しい表面改質技術であり、「3ゾーン加熱・冷却」方式により優れた均熱性を実現できる。
また、マイクロパルス・プラズマ窒化では、対流加熱により温度分布が向上、混載や量産処理が可能となり、対流冷却との併用で処理サイクルが短縮化し、直接ワークピースを測温することで信頼性の高い正確な温度測定制御が実現し、そして、マイクロパルス放電制御により、ワークピース表面上はアーク損傷や過熱することなく窒化処理が行われ、平滑性を損なわずに仕上がること等が特徴である。
また、マイクロパルス・プラズマ窒化は、直流・モノパルスそしてバイポーラパルスによる3種類の運転が可能な電源持っている。この電源では、パルス周波数は50[kHz]と高速であり、全ワークピース表面に渡り、均一なプラズマが発生することで、より安定したプラズマ熱処理を可能にした(非特許文献1参照)。
株式会社 ケー・ブラッシュ商会ホームページ、インターネット<URL:http://www.kbrasch.co.jp/CM-Rubig.htm>
株式会社 ケー・ブラッシュ商会ホームページ、インターネット<URL:http://www.kbrasch.co.jp/CM-Rubig.htm>
しかしながら、マイクロパルスプラズマ窒化方法で温度は制御できるが、窒素エネルギーがわからないためプラズマの励起状態がわからず、窒化物の品質、例えば、窒素の含有量や結晶構造等をコントロールすることができない。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、本発明に係るプラズマ窒化制御方法は、プラズマ窒化中のプラズマの励起状態を表す信号を計測対象にし、その計測結果に基づきプラズマ電源をフィードバック制御することを特徴とする。
本発明に係るプラズマ窒化システムは、プラズマ窒化中のプラズマの励起状態を表す信号を計測対象とし、その計測結果に基づきプラズマ電源をフィードバック制御する制御部を備える。
本発明によれば、従来は不可能であったプラズマ窒化中の窒素エネルギーの精密な制御が可能となる。
本発明によれば、従来は不可能であったプラズマ窒化中の窒素エネルギーの精密な制御が可能なプラズマ窒化システムを提供できる。
以下、本発明の実施の形態に係るプラズマ窒化制御方法及びプラズマ窒化システムについて説明する。
まず、図1を参照して、本発明の実施の形態に係るプラズマ窒化制御方法及びプラズマ窒化システム1の説明を行う。プラズマ窒化システム1は、被処理物(ワーク)をプラズマ窒化するプラズマ窒化炉2を備え、まず、このプラズマ窒化炉2の炉本体5内に設置されたプラズマ電極6上に、被処理物7をセットする。被処理物7のセット後、炉本体5の底部5cの開口5dと連通する排気管路16aを介して真空ポンプ16により、炉本体5を排気し、真空圧にする。真空圧にした後、炉本体5に、ガス供給口5aより雰囲気ガス(窒素ガス、水素ガス、アルゴンガス等。)を供給し、外熱ヒータ11により被処理物を外側から加熱する。外熱ヒータ11は、炉本体5内に配置し、ヒータコントローラ12から信号ライン14を介して制御される。被処理物7の温度を、温度センサ13(例えば熱伝対)により検出し、温度センサ13は信号ライン15を介してヒータコントローラ12に接続される。ヒータコントローラ12は、信号ライン27を介して設定温度を設定する操作盤25に接続される。
炉本体5を充分に加熱した後、まず、被処理物7の表面の不導態皮膜を除去するスパッタークリーニングを実施する。このスパッタークリーニングの際、導入ガスがイオン化した水素イオン、アルゴンイオン等が被処理物の表面に衝突することで、被処理物の表面の酸化皮膜が除去される。
次に、水素ガスと窒素ガスの混合ガスを炉本体5に導入し、プラズマ電源8に電圧を印加して−極である被処理物7上にグロー放電を発生させる。プラズマ電源8は−極ライン9がプラズマ電極6に接続され、+極ライン10が炉本体5に接続している。この際、イオン化した窒素が被処理物7の表面に衝突、侵入及び拡散することにより、被処理物7の表面に連続した窒化層が形成される。窒化層の形成と同時に、イオン化した水素と被処理物の表面の酸素が反応する還元反応により、被処理物7の表面に形成された酸化膜が除去される。このように、プラズマ電源8によりプラズマを発生させ、プラズマ電極6上の被処理物をプラズマ窒化する。
プラズマ窒化の際、炉本体5の側面の開口5bから、集光レンズ系3を介してプラズマの励起状態を検出し、検出光を光ファイバ19で発光分光光度計4に導光し、集光ユニット19aで集光する。この光をモノクロメータ17で分光し、ゲート付ICCD検出器18でスペクトルを検出し、その発光スペクトル強度を信号ライン21でコントローラ20に伝える。コントローラ20はインターフェース23及びパーソナルコンピュータ22を備え、このパーソナルコンピュータ22が発光スペクトル強度を計算し、これを操作盤25で設定された設定強度と比較し、その差に応じた制御信号をプラズマ電源8に出力する。このような構成にすることで、従来は不可能であったプラズマ窒化中の窒素エネルギーの精密な制御が可能なプラズマ窒化制御方法及びプラズマ窒化システムを提供できる。
ここで、従来のプラズマ窒化制御方法として、外熱ヒータ制御により温度調節する例を図2(a)に示す。図2(a)は、従来の制御方式を示すシーケンス図である。プラズマ窒化による加熱、及び外熱ヒータにより外側から被処理物を加熱する。熱電対で計測した被処理物の温度を温度調節器にフィードバックし、外熱ヒータをフィードバック制御する。被処理物の温度が設定温度より高い場合には、外熱ヒータの出力を下げて被処理物の温度を下げ、設定温度に近づける。被処理物温度が設定温度より低い場合には、外熱ヒータの出力を上げて被処理物の温度を上げ、設定温度に近づける。この例では、被処理物の温度は一定に制御できるが、窒素のエネルギーまでは制御できない。
従来の制御方法の他の例として、パルス・オフ時間(遮断時間)を可変制御することにより温度調節する例を図2(b)に示す。図2(b)は、従来の制御方式の他の例を示すシーケンス図である。プラズマ窒化による加熱、及び外熱ヒータにより外側から被処理物を加熱する。熱電対で計測した被処理物の温度をプラズマ電源にフィードバックし、プラズマ電源(矩形波マイクロパルスの遮断時間)をフィードバック制御する。被処理物温度が設定温度より高い場合には、パルス・オフ時間を長くすることで、単位時間当たりのプラズマ加熱量を下げて被処理物温度を下げ、設定温度に近づける。被処理物温度が設定温度より低い場合には、パルス・オフ時間を短くすることで、単位時間当たりのプラズマ加熱量を上げて被処理物温度を上げ、設定温度に近づける。この例では、被処理物の温度は一定に制御できるが、窒素のエネルギーまでは制御できない。
本発明の実施の形態に係るプラズマ窒化制御方法では、外熱ヒータ制御による温度調節と、パルス・オフ時間可変制御によるプラズマ励起状態制御とを組み合わせることにより、温度調節を行う。本発明の実施の形態に係るプラズマ窒化制御方法の例を図3に示す。図3(a)は、外熱ヒータ制御による温度調節方式を示すシーケンス図である。図3(b)は、パルス・オフ時間可変制御によるプラズマ励起状態制御方式を示すシーケンス図である。プラズマ窒化による加熱、及び外熱ヒータにより外側から被処理物を加熱する。熱電対で計測した被処理物の温度を温度調節器にフィードバックし、外熱ヒータをフィードバック制御する。被処理物温度が設定温度より高い場合には、外熱ヒータの出力を下げて処理物温度を下げ、設定温度に近づける。被処理物温度が設定温度より低い場合には、外熱ヒータの出力を上げて処理物温度を上げ、設定温度に近づける。加えて、被処理物近傍のプラズマ発光強度をプラズマ電源にフィードバックし、470[nm]発光スペクトル強度が設定値以上となるようプラズマ電源(矩形波マイクロパルスの遮断時間)をフィードバック制御する。被処理物の470[nm]発光スペクトル強度が設定値より小さい場合には、パルス・オフ時間を短くすることで、単位時間当たりのプラズマ生成量を上げ、発光強度を上げる。被処理物の470[nm]発光スペクトル強度が設定値より大きい場合には、パルス・オフ時間を長くすることで、単位時間当たりのプラズマ生成量を下げ、発光強度を下げる。または、パルス・オフ時間を操作せず、被処理物の470[nm]発光スペクトル強度が設定値より大きい値になるように維持する。このように、温度を一定にする制御に加え、発光強度を設定値以上とすることにより、窒素のエネルギー状態を一定値以上に制御したまま、プラズマ窒化することが可能となる。
また、本発明の実施の形態に係るプラズマ窒化制御方法では、パルス・オフ時間を可変制御することによる温度調節と、パルス・オフ時間可変制御によるプラズマ励起状態制御とを組み合わせることにより、温度調節を行っても良い。本発明の他の実施の形態に係るプラズマ窒化制御方法の他の例を図4に示す。図4(a)は、パルス・オフ時間を可変制御することによる温度制御方式を示すシーケンス図である。図4(b)は、パルス・オフ時間可変制御によるプラズマ励起状態制御方式を示すシーケンス図である。プラズマ窒化による加熱、及び外熱ヒータにより外側から被処理物を加熱する。熱電対で計測した被処理物の温度をプラズマ電源にフィードバックし、プラズマ電源(矩形波マイクロパルスの遮断時間)をフィードバック制御する。被処理物温度が設定温度より高い場合には、パルス・オフ時間を長くすることで、単位時間当たりのプラズマ加熱量を下げて処理物温度を下げ、設定温度に近づける。被処理物温度が設定温度より低い場合には、パルス・オフ時間を短くすることで、単位時間当たりのプラズマ加熱量を上げて処理物温度を上げ、設定温度に近づける。加えて、被処理物近傍のプラズマ発光強度をプラズマ電源にフィードバックし、470[nm]発光スペクトル強度が設定値以上となるようプラズマ電源(矩形波マイクロパルスの遮断時間)をフィードバック制御する。被処理物の470[nm]発光スペクトル強度が設定値より小さい場合には、パルス・オフ時間を短くすることで、単位時間当たりのプラズマ生成量を上げ、発光強度を上げる。被処理物の470[nm]発光スペクトル強度が設定値より大きい場合には、パルス・オフ時間を長くすることで、単位時間当たりのプラズマ生成量を下げ、発光強度を下げる。または、パルス・オフ時間を操作せず、被処理物の470[nm]発光スペクトル強度が設定値より大きい値になるように維持する。度を下げる。このように、温度を一定にする制御に加え、発光強度を設定値以上とすることにより、窒素のエネルギー状態を一定値以上に制御したまま、プラズマ窒化することが可能となる。
このように、本発明の実施の形態に係るプラズマ窒化制御方法では、プラズマ窒化中のプラズマの励起状態を表す信号を計測対象にし、その計測結果に基づきプラズマ電源をフィードバック制御する。プラズマ窒化中のプラズマの励起状態を表す信号を帰還させることで、窒素エネルギー及びプラズマの励起状態がわかり、従来は不可能であったプラズマ窒化中の窒素エネルギーの精密な制御が可能となる。
プラズマを発光分光分析して原子状窒素のプラズマ発光スペクトルを計測し、プラズマ発光スペクトルの強度を信号として用いることが好ましい。窒化反応に直接作用する原子状窒素のプラズマ発光スペクトルの強度をフィードバックし、制御するため、プラズマ窒化中の窒素エネルギー状態をより精密に制御できる。
プラズマを発光分光分析して原子状窒素イオンの470[nm]に極大値を有するプラズマ発光スペクトルを計測し、プラズマ発光スペクトルの強度を信号としても良い。図5に、発光分光光度計にて測定された発光スペクトルを示す。図5(a)は波長350〜530[nm]の範囲の発光スペクトルであり、図5(b)は波長600〜680[nm]の範囲の発光スペクトルである。プラズマ発光スペクトルは、主に391[nm]に極大値を有するピーク31と、427[nm]に極大値を有するピーク32と、470[nm]に極大値を有するピーク33と、656[nm]に極大値を有するピーク34を有する。ピーク31は、分子状窒素イオンのピークであり、分解能1200g、ブレーズ波長350[nm]のグレーティングで測定したものである。ピーク32は、鉄イオンまたは分子状窒素イオンのピークであり、分解能600g、ブレーズ波長500[nm]のグレーティングで測定したものである。ピーク33は、原子状窒素イオンのピークであり、分解能600g、ブレーズ波長500[nm]のグレーティングで測定したものである。ピーク34は、原子状窒素イオンまたは原子状水素イオンのピークであり、分解能600g、ブレーズ波長500[nm]のグレーティングで測定したものである。ピーク33は、ピーク31、32と比較して強度が小さいが、470[nm]のスペクトル強度で被処理物の窒素濃度を判断した場合、窒素濃度の高い試料ではスペクトル強度は大きく、窒素濃度の低い試料ではスペクトル強度は小さく観測される傾向が顕著であるため、プラズマ発光スペクトルの470[nm]の強度を信号として用いることが適していることがわかる。このように、窒化反応に直接作用する原子状窒素イオンのプラズマ発光スペクトルの強度をフィードバックし、制御するため、プラズマ窒化中の窒素エネルギー状態をより精密に制御できる。
プラズマの被測定波長と発光分光分析のブレーズ波長とを合わせたグレーティングでプラズマ発光スペクトルの強度を測定することが好ましい。この測定により、よりプラズマ窒化中の窒素エネルギー状態をより精密に制御できる。この際ブレーズ波長は、250〜500[nm]であることが好ましい。
原子状窒素イオンのプラズマ発光スペクトルの強度の平均値と分子状窒素イオンのプラズマ発光スペクトルの強度の平均値との相対比が0.2より大きく0.8以下となるプラズマ状態で窒化することが好ましい。この条件で窒化することにより、窒化品質をコントロールできる。なお、発光スペクトル強度の平均値とは、発光スペクトル強度測定を窒素処理60[分間]にて5〜15[分]間隔で測定し平均値を出した発光スペクトル強度の平均値であるが、これに限定されるものではなく、窒素処理時間60[分]と測定間隔5〜15[分]以外の場合でも、同様の効果が得られる。
プラズマ電源は、10〜1000[μsec]の周期範囲でプラズマ放電時間及び遮断時間を可変に制御できることが好ましい。この場合には、所望の品質の窒化物が得られる。
このように、本発明の実施の形態に係るプラズマ窒化制御方法及びプラズマ窒化システムによれば、プラズマ窒化中のプラズマの励起状態を表す信号を帰還させて、プラズマ電源をフィードバック制御することにより、従来は不可能であったプラズマ窒化中の窒素エネルギーの精密な制御が可能となり、従来は不可能であったプラズマ窒化中の窒素エネルギーの精密な制御が可能なプラズマ窒化システムを提供できる。
以下、本発明の実施の形態に係る遷移金属窒化物の製造方法の実施例1及び比較例1〜比較例2について説明する。これらの実施例は、本発明の有効性を調べたものであり、例示した実施例に限定されるものではない。
<試料の調製>
板厚0.1[mm]、サイズ口100[mm]のオーステナイト系ステンレス鋼(SUS316L、SUS310S)の光輝焼鈍(BA)材を脱脂洗浄して用いた。脱脂洗浄後、両面にプラズマ電源を用いてプラズマ窒化した。プラズマ窒化は、処理温度425[℃]、処理時間60[分]、ガス混合比N2:H2=1:1、処理圧力4[Torr](=532[Pa])で行った。窒化によって、ステンレス鋼基材の表面には遷移金属窒化物からなる窒化層が形成された。
板厚0.1[mm]、サイズ口100[mm]のオーステナイト系ステンレス鋼(SUS316L、SUS310S)の光輝焼鈍(BA)材を脱脂洗浄して用いた。脱脂洗浄後、両面にプラズマ電源を用いてプラズマ窒化した。プラズマ窒化は、処理温度425[℃]、処理時間60[分]、ガス混合比N2:H2=1:1、処理圧力4[Torr](=532[Pa])で行った。窒化によって、ステンレス鋼基材の表面には遷移金属窒化物からなる窒化層が形成された。
窒化後の試料は、以下の方法によって評価された。
<窒化層の窒素濃度の測定>
窒化層の窒素濃度と酸素濃度の測定は、オージェ電子分光分析の深さ方向プロファイルにより、深さ100[nm]間の測定値を平均した。装置は、PHI社製 MODEL4300を用いた。測定は、電子線加速電圧5[kV]、測定領域20[μm]×16[μm]、イオン銃加速電圧3[kV]、スパッタリングレート10[nm/min](SiO2換算値)の条件で行った。
窒化層の窒素濃度と酸素濃度の測定は、オージェ電子分光分析の深さ方向プロファイルにより、深さ100[nm]間の測定値を平均した。装置は、PHI社製 MODEL4300を用いた。測定は、電子線加速電圧5[kV]、測定領域20[μm]×16[μm]、イオン銃加速電圧3[kV]、スパッタリングレート10[nm/min](SiO2換算値)の条件で行った。
<接触抵抗値の測定>
窒化後の試料を30[mm]×30[mm]の大きさに切り出して接触抵抗値を測定した。装置は、アルバック理工製 圧力負荷接触電気抵抗測定装置 TRS−2000SS型を用いた。そして、図6(a)に示すように、電極41とサンプル42との間にカーボンペーパ43を介在させて、図6(b)に示すように、電極41a/カーボンペーパ43a/サンプル42/カーボンペーパ43b/電極41bの構成とした。そして、測定面圧1.0[MPa]にて1[A/cm2]の電流を流した際の電気抵抗を2回測定し、各電気抵抗の平均値を求めて接触抵抗値とした。カーボンペーパは、カーボンブラックで担持した白金触媒を塗布したカーボンペーパ(東レ(株)製カーボンペーパ TGP−H−090 厚さ0.26[mm]、かさ密度0.49[g/cm3]、空隙率73[%]、厚さ方向体積抵抗率0.07[Ω・cm2])を用いた。電極は、直径φ20のCu製電極を用いた。
窒化後の試料を30[mm]×30[mm]の大きさに切り出して接触抵抗値を測定した。装置は、アルバック理工製 圧力負荷接触電気抵抗測定装置 TRS−2000SS型を用いた。そして、図6(a)に示すように、電極41とサンプル42との間にカーボンペーパ43を介在させて、図6(b)に示すように、電極41a/カーボンペーパ43a/サンプル42/カーボンペーパ43b/電極41bの構成とした。そして、測定面圧1.0[MPa]にて1[A/cm2]の電流を流した際の電気抵抗を2回測定し、各電気抵抗の平均値を求めて接触抵抗値とした。カーボンペーパは、カーボンブラックで担持した白金触媒を塗布したカーボンペーパ(東レ(株)製カーボンペーパ TGP−H−090 厚さ0.26[mm]、かさ密度0.49[g/cm3]、空隙率73[%]、厚さ方向体積抵抗率0.07[Ω・cm2])を用いた。電極は、直径φ20のCu製電極を用いた。
窒化後のSUS310S窒化材は、窒化層の窒素濃度は30[at.%]であり、接触抵抗値は43[mΩ・cm2]であった。これに対し、SUS316L窒化材は、窒化層の窒素濃度は25[at.%]であり、接触抵抗値は318[mΩ・cm2]と高い値を示した。このように、窒化によって異なる性能を有するようになるSUS316LとSUS310Sについて、窒化の過程で発光スペクトルの強度を測定した。スペクトルの発光強度の測定は、窒化の間に5〜15[分]間隔で、測定波長と分光器のブレーズ波長を合わせたグレーティングにて行った。測定波長は、427、470及び656[nm]とした。そして、(被測定スペクトル発光強度平均値)/(391[nm]スペクトル発光強度平均値)を被測定スペクトルの発光強度平均値の相対比とした。発光スペクトル強度平均値の相対比を表2に示す。
実施例1では、470[nm]に極大値を有する原子状窒素イオンスペクトルの発光強度測定を行った。プラズマ窒化後、接触抵抗値が低く導電性に優れているSUS310S窒化材のプラズマ窒化過程中の470[nm]に極大値を有するスペクトルの発光強度平均値の相対比は、プラズマ窒化後接触抵抗値が高くなり導電性が悪化したSUS316L窒化材より約4倍大きかった。比較例1では、427[nm]に極大値を有するスペクトルの発光強度測定を行った。SUS310S窒化材とSUS316L窒化材のスペクトル発光強度平均値の相対比は同じくらいだった。SUS310S窒化材とSUS316L窒化材のスペクトル発光強度平均値の相対比は同じくらいだった。
このように、470[nm]に極大値を有する原子状窒素イオンスペクトルの発光強度測定を行った場合、窒化によって接触抵抗値が高くなるSUS316Lは発光スペクトル強度平均値が低いのに対し、SUS310Sは発光スペクトル強度平均値が高く、明らかな強度平均値相対比の差がみられた。よって、470[nm]に極大値を有するスペクトルの発光強度を帰還させて、プラズマ電源をフィードバック制御することにより、プラズマ窒化中の窒素エネルギーの精密な制御が可能となることがわかった。
図7にステンレス鋼をプラズマ窒化する際に出現する相を表した状態図を示す。領域Aに示すように、500[℃]以上の温度で窒化すると、CrNを主体とする窒化物が形成される。領域Bに示すように、300[℃]以上以上500[℃]未満の温度で窒化し、窒素エネルギーがある一定以上であると、M4N型の結晶構造が主体となる窒化物が得られる。領域Cに示すように、300[℃]以上以上500[℃]未満の温度で窒化し、窒素エネルギーをある一定以下であると、窒化物は得られずステンレス鋼のままである。窒素エネルギーと窒化温度を同時に制御することにより、領域Dで示す範囲にあるものよりも品質の良い、領域Eの範囲に属する窒化物が得られる。
なお、本実施例においては、基材としてオーステナイト系ステンレス鋼を用いたが、これに限定されるものではなく、フェライト系もしくはマルテンサイト系ステンレス鋼を用いても同様の効果が得られる。以上、本発明の実施の形態について説明したが、上記の実施の形態の開示の一部をなす論述および図面はこの発明を限定するものであると理解するべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例および運用技術が明らかとなろう。
1 プラズマ窒化システム
2 プラズマ窒化炉
3 集光レンズ系
4 発光分光光度計
5 炉本体
6 プラズマ電極
7 被処理物
8 プラズマ電源
11 外熱ヒータ
12 ヒータコントローラ
13 温度センサ
20 コントローラ
2 プラズマ窒化炉
3 集光レンズ系
4 発光分光光度計
5 炉本体
6 プラズマ電極
7 被処理物
8 プラズマ電源
11 外熱ヒータ
12 ヒータコントローラ
13 温度センサ
20 コントローラ
Claims (8)
- プラズマ窒化中のプラズマの励起状態を表す信号を計測対象にし、その計測結果に基づきプラズマ電源をフィードバック制御することを特徴とするプラズマ窒化制御方法。
- 前記プラズマを発光分光分析して原子状窒素のプラズマ発光スペクトルを計測し、前記プラズマ発光スペクトルの強度を前記信号として用いることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ窒化制御方法。
- 前記プラズマを発光分光分析して原子状窒素イオンの470[nm]に極大値を有するプラズマ発光スペクトルを計測し、前記プラズマ発光スペクトルの強度を前記信号とすることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ窒化制御方法。
- 前記プラズマの被測定波長と前記発光分光分析のブレーズ波長とを合わせたグレーティングで前記プラズマ発光スペクトルの強度を測定することを特徴とする請求項3に記載のプラズマ窒化制御方法。
- 前記ブレーズ波長は、250〜500[nm]であることを特徴とする請求項4に記載のプラズマ窒化制御方法。
- 前記原子状窒素イオンのプラズマ発光スペクトルの強度の平均値と分子状窒素イオンのプラズマ発光スペクトルの強度の平均値との相対比が0.2より大きく0.8以下となるプラズマ状態で窒化することを特徴とする請求項3乃至請求項5のいずれか一項に記載のプラズマ窒化制御方法。
- 前記プラズマ電源は、10〜1000[μsec]の周期範囲でプラズマ放電時間及び遮断時間を可変に制御できることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載のプラズマ窒化制御方法。
- プラズマ窒化中のプラズマの励起状態を表す信号を計測対象とし、その計測結果に基づきプラズマ電源をフィードバック制御する制御部を備えることを特徴とするプラズマ窒化システム。
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