JP2008133259A - 固体分散体の固形製剤及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
できる固体分散体の固形製剤及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 難溶性薬物、水溶性ポリマー及び崩壊剤を含む固体分散体の固形製剤であって、該崩壊剤が、平均粒子径が10〜100μmであり、かつBET法で測定した比表面積が1.0m2/g以上の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースである固体分散体の固形製剤を提供する。また、崩壊剤として平均粒子径が10〜100μmであり、かつBET法で測定した比表面積が1.0m2/g以上の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを混合した粉末に、難溶性薬物を分散又は溶解した水溶性ポリマー溶液を噴霧し、造粒、乾燥することを含んでなる固体分散体の固形製剤の製造方法を提供する。
【選択図】 なし
Description
具体的には、本発明は、難溶性薬物、水溶性ポリマー及び崩壊剤を含む固体分散体の固形製剤であって、該崩壊剤が、平均粒子径が10〜100μmであり、かつBET法で測定した比表面積が1.0m2/g以上の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースである固体分散体の固形製剤を提供する。固体分散体の固形製剤は、好ましくは賦形剤を含んでもよい。また、崩壊剤として平均粒子径が10〜100μmであり、かつBET法で測定した比表面積が1.0m2/g以上の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを混合した粉末に、難溶性薬物を分散又は溶解した水溶性ポリマー溶液を噴霧し、造粒、乾燥することを含んでなる固体分散体の固形製剤の製造方法を提供する。
本発明に用いる難溶性薬物は、水に対する溶解度が非常に低く、通常経口投与では吸収性の悪い薬物である。例えば、日本薬局方第15改正に定められている「ほとんど溶けない」又は「極めて溶けにくい」とされる薬物をいう。日本薬局方第15改正における薬物の「溶解性」とは、薬物が固形の場合には粉末とした後、溶媒中に入れ、20±5℃で5分毎に30秒間振り混ぜるときに30分以内に溶ける度合いをいい、「ほとんど溶けない」とは、薬物1g又は1mlを溶かすのに要する溶媒量(ここでは水)が10,000ml以上、「極めて溶けにくい」とは、薬物1g又は1mlを溶かすのに要する溶媒量が1,000ml以上、10,000ml未満の性状をいう。
溶媒の添加量は、固形分濃度が好ましくは3〜18質量%、特に好ましくは3.5〜12質量%溶液になる量である。
なお、賦形剤の含有量は、難溶性薬物、水溶性ポリマー及び後述の崩壊剤を除く量(残部)が好ましい。
本発明の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの平均粒子径は、10〜100μm、好ましくは20〜60μm程度である。10μm未満では微粉化により凝集性が増し、粉体の流動性が低下する恐れがあり、100μmを超えると薬物との混合性が低下して不均一となる恐れがある。平均粒子径は、レーザー回折法粒度分布測定であるHELOS&RODOS(シンパック社製)を用いて測定することができる。
更に、本発明の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの比表面積は1.0m2/g以上である。これ未満では高い結合性が得られない場合があるからである。
一般的に粉体の比表面積が高い程、結合性が高い粉体となることが知られている。比表面積分析は、粉体粒子表面に吸着占有面積の判った分子を液体窒素の温度で吸着させ、その量から試料の比表面積を求める方法であり、不活性気体の低温低湿物理吸着によるBET法を用いることができる。例えば、MICROMERITICS GEMINI 2375(島津製作所社製)を用いて測定できる。
一般的には平均粒子径を小さくすることにより比表面積を増大させることができるが、上記記載のように平均粒子径が小さくなり過ぎると粉体の凝集性が増し、粉体の流動性が低下する恐れがある。本発明においては、圧密摩砕により、粉体の流動性が得られる平均粒子径でありながら高い比表面積を持つ粉体ができる。
ここで、「ゆるめ嵩密度」とは、疎充填の状態の嵩密度をいい、直径5.03cm、高さ5.03cm(容積100ml)の円筒容器(材質:ステンレス)へ試料をJISの24メッシュの篩を通して、上方(23cm)から均一に供給し、上面をすり切って秤量することによって測定される。これらの操作は、ホソカワミクロン社製パウダーテスター(PT−D)を使用することにより測定できる。
弾性回復率は、粉体の圧縮成形性を示す指標である。粉体を錠剤径11.3mmであって、接触面が平面である平杵(タブレッティングテスター(三協パウテック社製))を用いて、錠剤質量480mg、圧縮圧50MPaで圧縮成型した時の錠剤厚みより、次式から求めることができる。
弾性回復率={(30秒後の錠剤厚み−最小錠剤厚み)/(最小錠剤厚み)}×100
ここで、「最小錠剤厚み」は、下杵が固定された平杵を用いて上杵にて粉体を圧縮した時の最下点、すなわち錠剤が最も圧縮された時の厚みをいい、「30秒後の錠剤厚み」は、上杵が上方に開放されてから30秒後の錠剤厚みをいう。
膨潤体積増加率は、粉体を打錠圧1tで直径15mmの平面を有する錠剤に成型し、その後上杵の代わりに導管を持つ杵を取り付け、この導管を通じて臼に入った状態の錠剤に水を滴下することにより、錠剤が10分間吸水したときの膨潤体積増加率として得られる。水は、1ml/分の速度で10分間滴下する。体積の増加は、錠剤の厚み変化から以下の式により求めることができる。
膨潤体積増加率=(水添加前後の錠剤厚みの差/水添加前の錠剤厚み)×100
なお、上式中、「水添加前後の錠剤厚みの差」は、10分間の水添加後の錠剤厚みから水添加前の錠剤厚みを引いたものである。
また、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース粉末の膨潤体積増加率は、崩壊剤として重要な特性である膨潤特性の点から、300%以上が好ましい。膨潤体積増加率が300%未満だと製剤化した場合に崩壊時間が延長する場合がある。
膨潤体積増加速度は、上記方法と同様の条件で膨潤体積増加率を測定したとき、水添加開始から30秒後の初期膨潤率を意味し、以下の式から求めることができる。
膨潤体積増加速度=(初期水添加前後の錠剤厚みの差/水添加前の錠剤厚み)×100/0.5
上式中、「初期水添加前後の錠剤厚みの差」は、水添加開始から30秒後の錠剤厚みから水添加前の錠剤厚みを引いたものである。
本発明の低置換度ヒドロキシプロピルセルロース粉末の膨潤体積増加速度は、崩壊剤として重要な特性である膨潤特性の点から、100%/分以上が好ましい。膨潤体積増加速度が100%/分未満であると、製剤化したときに崩壊時間が延長する場合がある。
アルカリセルロースを製造する工程は、好ましくは、上記粉末状のパルプに苛性ソーダ水溶液を滴下又は噴霧して混合することにより行う。この際、苛性ソーダはエーテル化反応の触媒として作用する。アルカリセルロースの製造は、好ましくは、内部撹拌型の反応機内で混合を行い、引き続いてエーテル化反応を行うか、他の混合機内で調製したアルカリセルロースを反応機内に仕込んでエーテル化反応を行うか何れの方法を用いても良い。
また、アルカリセルロース中の苛性ソーダ量は、反応効率への影響のみではなく、最終製品の膨潤特性及び結合性に影響を与えることが解った。アルカリセルロース中の最適な苛性ソーダ量は、無水セルロース(パルプ中の水分を除いたものをいう。)に対する苛性ソーダの質量比で0.1〜0.3である。0.1未満では膨潤特性の特に吸水膨潤時の体積増加率が低くなり、崩壊性が低下し、結合性も低下する場合がある。また、0.3を超えると後述の吸水時の膨潤体積増加率及び膨潤体積増加速度も低くなり、結合性も低下する場合がある。
苛性ソーダは、好ましくは20〜40質量%の水溶液として添加される。
なお、エーテル化反応を行う工程の後、必要に応じて溶解工程を行うことができる。溶解工程は、エーテル化反応後の粗反応物の一部又は全部を水又は熱水に溶解することにより行われる。水又は熱水の使用量は、粗反応物の溶解量によって異なるが、粗反応物の全部を溶解させるときの水の量は、通常、粗反応物中の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースに対して質量比で0.5〜10である。
後述の洗浄・脱水工程における負荷及び低置換度セルロースエーテル結合性の更なる向上を考慮すると、この溶解工程を行わない方がより好ましい。
使用する酸は、塩酸、硫酸、硝酸等の鉱酸やギ酸、酢酸等の有機酸が挙げられる。
また、製品の結合性の観点から繊維状形態のものを使用して粉砕した方が得られた製品の比表面積が高く、結合性の高いものが得られる。
上記で得られた脱水物を乾燥する乾燥工程は、好ましくは、流動乾燥機、ドラムドライヤー等の乾燥機を用いて60〜120℃にて行うことができる。
この圧密摩砕には、ローラーミル、ボールミル、ビーズミル、石臼型粉砕機等の粉砕機が利用できる。ローラミルは、ローラー又はボールが、その回転運動に伴う遠心力や重力荷重により、ミル壁の被粉砕物を圧縮・剪断しながら転がる粉砕機で、石川島播磨重工業社製ISミル、栗本鐵工所社製VXミル、増野製作所社製MSローラーミル等が利用できる。ボールミルは、鋼球、磁性ボール、玉石及びその類似物を粉砕媒体とする粉砕機で、栗本鉄工社製ボールミル、大塚鉄工社製チューブミル、FRITSCH社製遊星ボールミル等が利用できる。ビーズミルはボールミルと類似するが、使われるボールの径が小さく、機器内部が高速回転することにより、ボールの加速度をより高めることができる点で異なり、例えばアシザワ製作所社製のビーズミルが利用できる。石臼型粉砕機は、石臼が狭いクリアランスで高速回転することにより粉体を摩砕することができる機械で、例えば増幸産業社製のセレンディピターが利用できる。
特に金属異物の混入が少なく、設置面積が小さく、生産性の高いローラーミルが好ましい。
粉砕原料である繊維状形態の粒子は、圧密摩砕を繰り返すことにより、原料パルプ由来の繊維状で中空の管状形態が消失することにより、1次粒子を小さくすることができるため、比表面積が増大する。また、原料パルプ由来の繊維状形態が消失し、粒子形状の揃った粉体が得られる。
なお、従来の衝撃粉砕より製造される低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの結合性は、繊維状形態の絡み合いにより発現されると言われてきた。そのため、結合性を高めるために繊維状粒子を多くすると流動性は低下してしまった。しかし、圧密摩砕より製造される低置換度ヒドロキシプロピルセルロース粉末は、圧密摩砕されることにより繊維状形態が消失しているにも拘わらず、驚くべきことに高い結合性を示すものであった。
このようにして得られた低置換度ヒドロキシプロピルセルロース粉末は、原料パルプ由来の繊維状形態にも拘わらず流動性が高く、結合性に優れ、更に膨潤特性に優れるものである。また、結合性及び崩壊性に優れるため、錠剤中の添加量を削減でき錠剤のサイズを小さくできるだけではなく、錠剤作成時における圧縮成型圧を低めにすることができるため、工程中に固体分散体が再結晶する等の物理的影響を低減できるという利点も有する。
固形製剤が錠剤の場合には、必要に応じて滑沢剤を添加することができる。滑沢剤としては、例えばステアリン酸マグネシウム、ショ糖脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、タルク、ステアリン酸等が挙げられる。
本発明の固体分散体の固形製剤が造粒物の場合は、好ましくは、賦形剤及び崩壊剤の混合粉末に難溶性薬物が分散又は溶解した水溶性ポリマー溶液を噴霧、造粒した後、乾燥することによって得られる。具体的には、賦形剤及び崩壊剤の混合粉末を造粒装置内で流動させ、これに予め調製した難溶性薬物が分散又は溶解した水溶性ポリマー溶液を噴霧、造粒して、乾燥後、整粒する。
造粒装置としては、流動層造粒装置、高速撹拌造粒装置、転動造粒装置、乾式造粒装置等が挙げられるが、造粒物に対して機械的シェアがかからない点で、流動層造粒装置が特に好ましい。
本発明の固体分散体の固形製剤の製造方法は、平均粒子径が10〜100μmであり、かつBET法で測定した比表面積が1.0m2/g以上の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを崩壊剤として用いる以外は、特に限定されるものではなく、例えば、以下の方法により行うことができる。
水溶性ポリマーをエタノール/水等の上述の溶媒に完全に溶解した後、難溶性薬物を投入して固体分散体溶液を得る。なお、固体分散体溶液を構成する成分を一度に溶媒に投入しても良いが、水溶性ポリマーを先に溶解した方が、最終的に得られる固形製剤中での薬物の安定性及び難溶性薬物の溶解時間の短縮化の観点から、より好適である。固体分散体溶液の濃度は特に制限されないが、噴霧することを考慮すると、400mPa・s以下、特に100mPa・s以下である。
そして、崩壊剤をはじめとする各種成分の混合物を例えば流動層造粒装置中で流動させながら、上記固体分散体溶液を噴霧し、造粒、乾燥して造粒物を得ることができる。噴霧・造粒工程の給気温度は、有機溶媒を使用する場合を考慮して、150℃以下、特に100℃以下が好ましい。
排気温度は30℃以上、特に40℃以上、スプレー速度は50g/分以下、特に30g/分以下、スプレーエアー圧250kPa以下、特に200kPa以下が好ましい。また、噴霧後は得られた造粒物中に溶媒が残留しないように行う乾燥工程の給気温度は150℃以下、特に100℃以下、乾燥時間は10〜60分が好ましい。
得られた造粒物は、そのままでも良いが篩過、粉砕等することによりより均一な粒度分布を有する固形製剤とすることも可能である。例えば、500μmの目開きの篩を介して整粒することができる。
打錠に用いる装置は、例えば、ロータリー打錠機、単発打錠機等が用いられるが、これに限定されず、特殊仕様の打錠機も使用できる。打錠の際の成形圧力は、1〜130kg/cm2であり、特に10〜100kg/cm2である。
また、得られた固体分散体の錠剤は、日本薬局方第15改正に記載された「崩壊試験」により評価した場合に、投与後10分以内に崩壊し、日本薬局方第15改正に記載された「溶出試験第2法」により評価した場合に、投与後10分以内の薬物溶出濃度が投与量の70%以上となり、高い崩壊性及び溶出性を示すことができる。
合成例1〜3
低置換度ヒドロキシプロピルセルロース粉末の合成例
806gの粉末状のパルプ(無水換算750g)を10L内部撹拌型反応機に仕込み26%苛性ソーダ303gを反応機に仕込み45℃で30分間混合して、無水セルロースに対する苛性ソーダの質量比が0.105のアルカリセルロースを得た。次に、窒素置換を実施し、そこにプロピレンオキサイドを123g(セルロースに対して0.164質量部)添加して、ジャケット温度60℃で1.5時間反応を行い、無水グルコース単位あたりヒドロキシプロポキシル基置換モル数0.28のヒドキシプロピルセルロース粗反応物1232gを得た。エーテル化効率は61.4%であった。
次に、10L内部撹拌型反応機に50質量%の酢酸236gを添加混合して中和を行った。この中和物をバッチ式遠心分離機を用いて回転数3000rpmの条件で、90℃の熱水にて洗浄、脱水を行った。脱水物の含水率は58.2質量%であった。この脱水物を棚段乾燥機で80℃、一昼夜乾燥を行った。
乾燥物をバッチ式遊星ボールミルFRITSH社製P−5を用いて255rpmで60分間粉砕を実施した。得られた粉砕物を目開き38、75及び180μmの篩にて篩過してヒドロキシプロポキシル基含有率10.9質量%の低置換度ヒドロキシプロピルセルロース粉末(それぞれ、試料1〜3)を得た。この粉体の平均粒子径、比表面積、ゆるめ嵩密度、安息角、弾性回復率、結合性、膨潤体積増加率、膨潤体積増加速度を前記の方法で評価した。評価結果を表1に示す。
表2に示す所定量のニフェジピン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)(ヒドロキシプロポキシル基8.7質量%、メトキシル基28.8質量%、6mPa・s)をエタノール:水=8:2(質量比)の混合溶媒中に溶解し、固体分散体溶液を調製した。そして、表2に示す所定量の低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L−HPC)と、乳糖(DMV社製Pharmatose)及びコーンスターチ(日本食品加工社製コーンスターチW)の混合物を流動層造粒装置(POWREX社製Multiplex MP−01)中で流動させて固体分散体溶液を噴霧・造粒・乾燥した後、30メッシュ(目開き500μm)の篩で整粒して造粒物を得た。この際の噴霧・造粒及び乾燥条件は以下のとおりである。
給気温度:60℃、排気温度:40℃、
スプレー速度:10g/分、スプレーエアー圧:200kPa、
乾燥工程の給気温度:75℃、乾燥時間:15分。
実施例1の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを除いた各種粉体を表2の組成で調製した以外は、実施例1と同様の方法で造粒物を製造した。
実施例1の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L−HPC)(ヒドロキシプロポキシル基10.9質量%、平均粒子径44μm、比表面積0.92m2/g、ゆるめ嵩密度0.44g/ml、安息角39度、弾性回復率3.8%、膨潤体積増加率250%、膨潤体積増加速度200%/分)に代えた以外は、実施例1と同様の方法で造粒物を製造した。
表2に示す通り、試料1〜3を用いた実施例1〜3の造粒物は流動性に優れていたが、比較例1又は2では実施例1〜3と比較し、造粒物の流動性は劣っていた。また、比較例3では、工程中に造粒末の流動性が低下し、層内でブロッキングを発生したため最後まで造粒することが不可能であった。
実施例1〜3及び比較例1、2により得られた造粒物ついて、造粒物1800mg(ニフェジピンとして90mg含有)を日本薬局方第15改正の溶出試験のパドル法に従って試験を行った。溶出試験の条件は、回転数100rpm、試験液には水900mlを用いた。また、参考のためにニフェジピン原末90mgについても同様の操作で試験を行った。その結果を表3に示す。
実施例1〜3の造粒物は、何れも比較例の造粒物より高い溶出性を示した。一方、比較例2の造粒物では、崩壊剤を添加しない場合(比較例1)と比較して溶出性の向上はみられたものの、その度合いは実施例に比べて小さなものであった。逆に崩壊剤が多い場合(比較例3)では、流動層造粒中にブロッキングを発生し、良好な造粒を行うことが困難であった。
以上のことから本願発明の固体分散体の造粒物は、迅速で高い薬物溶出性が認められた
。
実施例1〜3において調整した造粒物を打錠末とし、この打錠末に対して滑沢剤としてステアリン酸マグネシウム0.5質量%を加えて混合し、ロータリー打錠機(菊水製作所社製Vergo)にて成形圧力20kg/cm2で201mgの錠剤を製造した(実施例4〜6)。比較例として比較例1、2において調整した造粒物を打錠末として、実施例4と同様の方法により錠剤を製造した(比較例4、5)。得られた錠剤について硬度及び崩壊試験を行い、その結果を表4に示す。
実施例4〜6により得られた錠剤では、適切な硬度と優れた崩壊性を示した。一方、比較例4、5により得られた錠剤では、適切な硬度は得られたものの、崩壊時間が遅延した。
実施例4〜6及び比較例4、5により得られた錠剤1809mg(ニフェジピンとして90mg含有)について、実施例1〜3と同様の溶出試験を行った。また、参考のためにニフェジピン原末90mgについても同様の操作で試験を行った。その結果を表5に示す。
実施例4〜6により得られた錠剤は、造粒物からの溶出率と遜色無い結果を得た。一方、崩壊剤である低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを添加しない場合(比較例4)及び比較例5により得られた錠剤では、溶出性の向上はほとんど見られなかった。
以上のことから本願発明の固体分散体の錠剤は、優れた崩壊性及び迅速で高い溶出性が
認められた。
表6に示す所定量のニフェジピン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、乳糖(DMV社製Pharmatose)及びコーンスターチ(日本食品加工社製コーンスターチW)を用いて、実施例1〜3と同様の方法により表6に示す混合割合で造粒物を得た。
実施例7〜10で得られた造粒物について、造粒物1800mg(ニフェジピンとして90mg含有)を実施例1〜3と同様の方法で評価した。その結果を表7に示す。
実施例7〜10の造粒物は何れも、迅速で高い薬物溶出性を示していた。
実施例7及び8において調整した造粒物を打錠末とし、この打錠末に対して滑沢剤としてステアリン酸マグネシウム0.5質量%を加えて混合し、実施例4〜6と同様の方法で錠剤を製造した(実施例11,12)。得られた錠剤について、実施例4〜6と同様の方法で硬度測定、崩壊試験を行い、その結果を表8に示す。
実施例11、12により得られた錠剤では、適切な硬度と優れた崩壊性を示した。
実施例11及び12の錠剤1890mg(ニフェジピンとして90mg含有)について、実施例4〜6と同様の方法を用いて、錠剤からの溶出試験を行った。その結果を表9に示す。
実施例11、12により得られた錠剤は、造粒末からの薬物溶出率と遜色ない結果を示した。また、崩壊剤の添加量を増加させることにより溶出性の向上が見られた。
以上のことから、本願発明の固体分散体の錠剤は、優れた崩壊性及び迅速で高い溶出性が認められた。
Claims (9)
- 難溶性薬物、水溶性ポリマー及び崩壊剤を含む固体分散体の固形製剤であって、該崩壊剤が、平均粒子径が10〜100μmであり、かつBET法で測定した比表面積が1.0m2/g以上の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースである固体分散体の固形製剤。
- さらに、賦形剤を含んでなる請求項1に記載の固体分散体の固形製剤。
- 上記崩壊剤が、ヒドロキシプロポキシル基5〜16質量%を有する低置換度ヒドロキシプロピルセルロースである請求項1又は請求項2に記載の固体分散体の固形製剤。
- 上記崩壊剤が、ゆるめ嵩密度が0.30g/ml以上の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースである請求項1〜3のいずれかに記載の固体分散体の固形製剤。
- 上記崩壊剤が、圧縮圧50MPaで圧縮成型した時の弾性回復率が7%以下の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースである請求項1〜4のいずれかに記載の固体分散体の固形製剤。
- 上記崩壊剤が、吸水時の膨潤体積増加率が300%以上で、膨潤体積増加速度が100%/分以上の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースである請求項1〜5のいずれかに記載の固体分散体の固形製剤。
- 上記崩壊剤が、安息角が42o以下の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースである請求項1〜6のいずれかに記載の固体分散体の固形製剤。
- 上記水溶性ポリマーが、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルアルキルセルロース、ポリビニルアルコール及びポリビニルピロリドンから選ばれる請求項1〜7のいずれかに記載の固体分散体の固形製剤。
- 崩壊剤として平均粒子径が10〜100μmであり、かつBET法で測定した比表面積が1.0m2/g以上の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの粉末に、難溶性薬物を分散又は溶解した水溶性ポリマー溶液を噴霧し、造粒、乾燥することを含んでなる固体分散体の固形製剤の製造方法。
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