JP2008132524A - 摩擦撹拌用回転工具 - Google Patents

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【課題】鉄鋼材料処理時における摩擦撹拌用の回転工具の磨耗や折損を抑制する。
【解決手段】ショルダー1と、その先端に設けられたプローブ2と、工作機械に取り付けるための取り付け部3とから構成される回転工具Tにおいて、そのプローブ2の直径を、その根元から先端に向かうほど縮径させ、その先端に、そのプローブ2の先端における径以上の曲率の丸め加工を施す。この縮径により、ワークWの改質が完了してこのプローブ2をワークWから引き抜く際に、そのプローブ2をワークWから少しでも引き抜くと両者の間の嵌め込みが解除されるので、その引き抜きがスムーズになされる。また、その根元の部分が太いため、上記引き抜きの際にプローブ2を折損する恐れが小さい。また、この回転工具Tの素材としてタングステンカーバイドをベースとした硬質材料を用いると、この改質の際の磨耗を抑制できる。
【選択図】図1

Description

この発明は、金属等のワークの表面を摩擦してその摩擦熱により軟化したワークを塑性流動させ、そのワークの表面を改質するための摩擦撹拌用の回転工具に関する。
金属等からなるワークの表面近傍の改質を行なうための摩擦撹拌用の回転工具としては、例えば、そのワーク表面に接触させて摩擦熱を生じさせるショルダーと、そのショルダーに突出して設けられ、上記摩擦熱によって軟化した上記ワークに挿入するプローブとから構成され、このプローブを回転軸周りに回転させて、その回転に伴ってこのワークを摩擦撹拌させるものが知られている。
例えば、特許文献1に示す回転工具は、鉄鋼材料等の高融点材料の改質に用いられ、この回転工具のショルダー及びプローブは、ニッケルを主成分とする耐熱合金からなり、その表面が窒化シリコン系のセラミックスでコーティングされている。このセラミックスのコーティングは、上記回転工具が晒される全ての温度範囲において高強度と高硬度を保っているので、特に上記耐熱合金の磨耗や折損が生じやすい1000℃以上の高温領域において、このプローブを保護する役目をもつ。
特開2004−82144号公報
この特許文献1に示す方法は、回転工具にコーティングされたセラミックスが一般的に脆いため、この回転工具の使用中に、その表面からセラミックスが剥離し、剥離したセラミックスが改質を行なった鉄鋼材料等に混入しやすい。このようにして混入したセラミックスは、鉄鋼材料等において不純物となり、その強度や延性等の材料特性に悪影響を及ぼす恐れがある。
そこで、この発明は、上記セラミックスのコーティングを行なわなくとも、高温領域において回転工具のプローブの磨耗や折損を生じないようにすることを課題とする。
上記の課題を解決するため、この発明は、プローブの径をその根元から先端に向かうほど縮径し、その先端に、そのプローブの先端における径以上の曲率の丸め加工を施すこととしたのである。
この発明によると、上記プローブの径がその根元で最も大きく、しかも、その先端に向かうほど縮径しているので、ワークの改質が完了してこのプローブをワークから引き抜く際に、そのプローブをワークから少しでも引き抜くと両者の間の嵌め込みが解除されるので、その引き抜きがスムーズになされる。また、その根元の部分が太いため、上記引き抜きの際にプローブが根元から折損する恐れが小さい。
さらに、そのプローブの先端には、その先端におけるプローブの径以上の曲率の丸め加工が施されているため、その先端における折損も生じにくい。
また、上記プローブの先端が縮径しているので、このプローブを移動させてワークを流動撹拌する際に、そのプローブの移動に対する抵抗が低減され、この抵抗が低減されたことにより磨耗も生じにくい。
この発明は、回転しながらワークの表面に接触するショルダーと、そのショルダーの先端に突出して設けられ、回転軸周りに回転しながら上記ワークWの表面に当接し、その際に発生した摩擦熱によって軟化したワークに挿入されて、その軟化したワークを流動撹拌するプローブとを有する摩擦撹拌用の回転工具において、上記プローブの直径が、その根元よりも先端が縮径し、その先端に、そのプローブの先端における径以上の曲率の丸め加工が施されている構成が採用できる。
上記プローブの他の形態として、そのプローブの根元から先端に向かい階段状に縮径し、その先端に、そのプローブの先端における径以上の曲率の丸め加工が施されている構成も同じく採用できる。
このようにプローブが階段状に縮径していると、上記ワークの改質が完了してこのプローブをワークから引き抜く際に、そのプローブをワークから段差分だけ引き抜くと両者の間の嵌め込みが解除されるので、その引き抜きがスムーズになされる。
上記プローブの階段の段数は少なくとも2段あれば、引き抜きをスムーズにする効果が発揮されるが、その段数を多くするほど段差が小さくなり、両者の間の嵌め込みを解除するための引き抜き量が小さくなるため、その引き抜きが一層スムーズになされる。そのため、この引き抜きの際にプローブを折損する恐れが小さい。
上述した2つの形態のプローブを有する回転工具においては、上記ショルダーにはこのショルダーの外径ほど軸方向に肉厚となっているテーパを形成することもできる。このテーパが形成されたショルダーは、逆すり鉢状に上記ワークに覆い被さり、撹拌の際に、軟化したワークがショルダーの下からショルダーの外に拡がるのを抑制するので、ショルダーに覆われた領域にのみ、軟化したワークが流動する。
このワークとして鉄鋼材料が適用でき、この鉄鋼材料の軟化温度が約1000℃以上と高いため、上記回転工具には耐熱性を有する超硬合金を用いる必要がある。
この超硬合金は、ベース材料のタングステンカーバイドと、結合剤として作用するコバルト又はニッケルとからなり、高温での使用時における酸化を防止するために、クロムカーバイド、タンタルカーバイド、バナジウムカーバイド、チタンカーバイドから選択される少なくとも1種の化合物が必要に応じて添加される。これらの微粉末を上記回転工具をかたどった型枠に充填して成形し、この成形体を焼結することによって、この回転工具が製造される。
図1にこの発明の一実施例を示して説明すると、この回転工具Tは、ショルダー1と、その先端に設けられたプローブ2と、工作機械に取り付けるための取り付け部3とから構成されている。
上記ショルダー1は、上記ワークとの当接面に7度のテーパ4が形成されてすり鉢状を成し、そのテーパ4の形成によって、このショルダー1はその外径ほど、その軸方向に肉厚となっている。
このショルダー1のエッジ5には曲率半径が1mmの丸め面取り加工が施され、この面取り部によって、上記ワークがショルダー1とエッジ5で当接して応力集中が生じるのが避けられるため、この改質の際にエッジ5が欠損するのが防止される。
また、上記プローブ2の長さは5mmであり、その直径は根元で10mmと最も太く、先端で6mmと最も細く、その先端には曲率半径が5.4mmの丸め加工が施されている。
この回転工具Tは、粒径が1μmのタングステンカーバイドをベース材料とし、これに結合剤のコバルトと、クロムカーバイド及びタンタルカーバイドの微粉末を混合し、これを型枠に充填して、それを熱間等方圧加圧法で焼き固めて作成した。この焼き固め後のロックウェル硬度は90.5HRAで、これは高マンガン鋼等の耐磨耗鋼の硬度よりもはるかに高い。そのため、上記耐磨耗鋼の改質においても、その際にこの回転工具Tが損傷を受ける恐れは低い。
この回転工具Tを用いた改質の手順について詳しく説明すると、図2に示すように、この回転工具Tを、垂直軸に対して、この進行方向の後方にφ=0.5度傾斜させて工作機械に取り付け、25mm/分の移動速度vで移動させてワークWの改質を行なった。この改質を行なうことで、改質層6が形成される。この際の回転工具Tの回転速度rは82回転/分とし、ワークW表面への回転工具Tの押し付け圧力pは4851kgとした。
この処理においてはワークWとして、耐磨耗鋼の中で代表的な品種である高マンガン鋼SCMnH11鋼(JIS G5131)を用いた。この鋼材は鋳造によって板状に成形され、そのサイズは、100mm×300mm×10mmである。
上記の条件でこの高マンガン鋼の改質を行なったところ、改質層におけるビッカース硬度が、処理前の約200Hv0.3に対して、処理後は最高で約490Hv0.3まで向上した。
また、この回転工具Tの耐久性に関しては、上記回転工具Tで上記高マンガン鋼を3mの長さに亘って改質を行なったところ、改質後のこの回転工具Tの磨耗量は約0.22mmと非常にわずかであった。
この回転工具を実用に供するには、ワークを少なくとも3mに亘って処理できる程度の耐久性が必要であるが、この成分からなる回転工具Tは、この耐久性を十分有しているといえる。
この改質を行なった高マンガン鋼の軟化が生じた領域を光学顕微鏡で観察したところ、図3に示すように、黒いコントラストとして観察される改質層6が上記領域内において満遍なく確認できた。
次に、この改質によって軟化が生じた領域の結晶組織及びその元素分析を走査電子顕微鏡を用いて詳しく評価したところ、処理前に100μm程度であった結晶の平均粒径が、図4に示すように、処理後には1μm程度まで微細化された微細結晶粒7となっていることが確認できた。また、同じ領域において、同じく1μm程度の大きさのマンガン及びクロムの炭化物8が高密度に観察された。この微細化した結晶粒7、及び、炭化物8の析出によりこの高マンガン鋼の表面層における硬度が増し、耐摩耗性が向上したものと推定される。
また、粒径が1μmのタングステンカーバイドをベース材料とし、これに結合剤のコバルトと、タンタルカーバイド及びバナジウムカーバイドの微粉末を混合し、これを型枠に充填して、それを熱間等方圧加圧法で焼き固めて、成分材料の異なる回転工具Tを別途作成した。この回転工具Tの焼き固め後のロックウェル硬度は92.0HRAで、上述した材料と同じく、高マンガン鋼等の耐磨耗鋼の硬度よりもはるかに高い。そのため、上記耐磨耗鋼の改質においても、その際にこの回転工具Tが損傷を受ける恐れは低い。
また、この回転工具Tの耐久性に関しては、これを用いて上記高マンガン鋼を3mの長さに亘って改質を行なったところ、改質後の磨耗量は約0.07mmであり、非常に高い耐磨耗性を有していた。この成分からなる回転工具Tも実用に耐えうる十分な耐久性を有しているといえる。
さらに、改質層6のビッカース硬度の測定及び走査電子顕微鏡での評価を行なったところ、上述したのと同様に、その領域において微細化した結晶粒7と炭化物8が観察され、改質前と比較してビッカース硬度が大幅に向上していることが確認できた。
また、図5に示す形態の回転工具Tを、上述したタングステンカーバイド等の微粉末を用いて作成した。この回転工具Tを用いて、上述したのと同じ高マンガン鋼の改質を行い、ビッカース硬度と走査電子顕微鏡による組織観察等を行なった。その結果、図1に示した回転工具Tを用いた場合とほぼ同じ改質層が得られ、十分な改質効果を有することが確認できた。
一実施例における回転工具の(a)は斜視図、(b)は側面図 一実施例における回転工具を用いた改質の作用を示す図で、(a)は断面図、(b)は斜視図 一実施例における回転工具を用いた改質を行なった高マンガン鋼の光学顕微鏡写真で、(a)は表層部、(b)は中層部、(c)は底層部であり、(d)は各写真の撮影位置を示す図 一実施例における回転工具を用いた改質を行なった高マンガン鋼の走査電子顕微鏡写真 他の実施例における回転工具の側面図
符号の説明
1 ショルダー
2 プローブ
4 テーパ
T 回転工具
W ワーク

Claims (4)

  1. 回転しながらワーク(W)の表面に接触するショルダー(1)と、そのショルダー(1)の先端に突出して設けられ、回転軸周りに回転しながら上記ワーク(W)の表面に当接し、その際に発生した摩擦熱によって軟化したワーク(W)に挿入されて、その軟化したワーク(W)を流動撹拌するプローブ(2)とを有する摩擦撹拌用の回転工具(T)において、
    上記プローブ(2)の直径が、その根元から先端に向かうほど縮径し、その先端は、そのプローブ(2)の先端における径以上の曲率の丸め加工を施す構成としたことを特徴とする摩擦撹拌用の回転工具。
  2. 回転しながらワーク(W)の表面に接触するショルダー(1)と、そのショルダー(1)の先端に突出して設けられ、回転軸周りに回転しながら上記ワーク(W)の表面に当接し、その際に発生した摩擦熱によって軟化したワーク(W)に挿入されて、その軟化したワーク(W)を流動撹拌するプローブ(2)とを有する摩擦撹拌用の回転工具(T)において、
    上記プローブ(2)はその根元から先端に向かい階段状に縮径し、その先端は、そのプローブ(2)の先端における径以上の曲率の丸め加工を施す構成としたことを特徴とする摩擦撹拌用の回転工具。
  3. 請求項1又は2に記載の摩擦撹拌用の回転工具(T)において、上記ショルダー(1)のワーク(W)との当接面にテーパ(4)が形成され、そのテーパ(4)によって上記ショルダー(1)の外径ほど軸方向に肉厚となっていることを特徴とする摩擦撹拌用の回転工具。
  4. 請求項1から3のいずれかに記載の摩擦撹拌用の回転工具(T)において、その素材がタングステンカーバイドとコバルト、及び、クロムカーバイド、タンタルカーバイド、バナジウムカーバイド、チタンカーバイドから選択される少なくとも1種の化合物とからなることを特徴とする摩擦撹拌用の回転工具。
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