JP2008131879A - 塩化ビニル分解細菌の培養方法、並びに地下水及び/又は土壌の浄化剤及び浄化方法 - Google Patents

塩化ビニル分解細菌の培養方法、並びに地下水及び/又は土壌の浄化剤及び浄化方法 Download PDF

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【課題】優れた塩化ビニル分解能を有するデハロコッコイデス属細菌を選択的に集積できる培養方法等を提供すること。
【解決手段】本発明の培養方法は、塩化ビニル分解細菌の培養方法であって、塩化ビニル分解細菌を含む細菌群を、ギ酸及び/又はその塩を主な炭素源とする集積培地で培養する集積手順を有する。この培養方法により得られる塩化ビニル分解細菌は、塩素化エチレンにより汚染された地下水及び/又は土壌の浄化に使用される。
【選択図】なし

Description

本発明は、塩素化エチレン分解細菌、とりわけ塩化ビニル分解細菌の培養方法に関する。また、本発明は、塩素化エチレンにより汚染された地下水及び/又は土壌の浄化剤及び浄化方法に関する。
近年の科学技術の発展により、有害且つ難分解性の化学物質を含む種々の物質が使用されるに伴って、地下水や土壌の汚染が問題となっている。特に、テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン、シスジクロロエチレン、塩化ビニルといった塩素化エチレンによる汚染は、深刻である。即ち、塩素化エチレンは、水溶性が低く化学的に安定なことから、一旦環境中に放出されると、長期間に亘って土壌や地下水中に残留し蓄積される。
このような背景のもと、塩素化エチレンにより汚染された地下水や土壌の浄化が急務であるが、とりわけ、嫌気性細菌を利用したバイオレメディエーションが、安価な浄化方法として注目されている。欧米では既に実用化された例も報告されており、日本でも実用化に向けた取り組みが活発化している(非特許文献1参照)。
バイオオーグメンテーションに利用する微生物を取得するためには、通常、目的とする機能を有する微生物を環境中からスクリーニングする必要がある。塩素化エチレン分解能を有する微生物の取得においては、炭素源としての有機物と、呼吸基質(電子受容体)としての塩素化エチレンとを含む培地を用いて集積培養を行い、更に継代培養を継続的に行う。ここで一般的に使用できる有機物としては、乳酸、酢酸、プロピオン酸、クエン酸等の有機酸、メタノール等のアルコール、糖類およびタンパク質等が報告されている。
ところで、このような有機物を資化できる微生物は、環境中に多く存在する。このため、集積培養後の継代培養等の過程で、成長が早く雑多な微生物が、系内において、塩素化エチレン分解能を有する細菌に代わって優占化する事態が懸念される。このような場合、微生物群の構成種を正確に把握し、各種が占める割合を維持すること、ひいてはバイオオーグメンテーションに利用する集積培養体の品質管理が困難になる。
従って、バイオオーグメンテーションに利用する微生物としては、塩素化エチレン分解能を有する細菌が純化又は高度に優占化した集積培養体であることが望ましい。実際、非特許文献1においても、バイオオーグメンテーションに利用する微生物は、「高度に限定された微生物で構成され、その構成が継続的に安定していること」という条件を満たすことが望ましいと記されている。
ところで、嫌気性細菌による塩素化エチレンの分解は、一般的に、テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン、シス−1,2−ジクロロエチレン、塩化ビニル、エチレンの順に、還元的に行われる。ここで、塩化ビニルは、発癌性を有することが証明されていることから、エチレンにまで分解することが重要である。塩化ビニルをエチレンにまで分解できる嫌気性細菌として報告されているのは、唯一、デハロコッコイデス(Dehalococcoides)属細菌だけである。
しかし、デハロコッコイデス属細菌の中にも、塩化ビニル分解能を有しないもの、又は分解能を有しても分解速度が非常に遅いものといったように、異なる分解特性を有するものが混在している。このため、優れた塩化ビニル分解能を有するデハロコッコイデス属細菌を選択的に集積できる技術の確立が望まれている。
「微生物によるバイオレメディエーション利用指針」経済産業省及び環境省、2005年3月30日
しかしながら、塩素化エチレンを対象とするバイオオーグメンテーションに利用する微生物の調製方法として、前述した条件を満たす手法は、いまだに確立されていない。まして、優れた塩化ビニル分解能を有するデハロコッコイデス属微生物を選択的に集積できる技術については、何らの報告もなされていない。
本発明は、以上の実情に鑑みてなされたものであり、優れた塩化ビニル分解能を有するデハロコッコイデス属細菌を選択的に集積できる培養方法、この培養方法を利用した、塩素化エチレンにより汚染された地下水及び/又は土壌の浄化剤及び浄化方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、塩素化エチレンにより汚染された地下水や土壌を植種源として、デハロコッコイデス属細菌の培養を行う際、培地の炭素源としてギ酸を利用することにより、塩化ビニル分解能を有するデハロコッコイデス属細菌を簡便かつ高度に集積できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
(1) 塩化ビニル分解細菌の培養方法であって、塩化ビニル分解細菌を含む細菌群を、ギ酸及び/又はその塩を主な炭素源とする集積培地で培養する集積手順を有する培養方法。
(2) 前記集積培地は、ギ酸及び/又はその塩を1mM以上5mM以下含有する(1)記載の培養方法。
(3) 前記集積培地は、水素ガスが気相に添加された液体培地である(1)又は(2)記載の培養方法。
(4) 塩素化エチレンにより汚染された地下水及び/又は土壌を含有する植種源を、ギ酸及びその塩のいずれもが添加されていない条件のもと培養することで、前記細菌群を調製する調製手順を、前記集積手順の前に更に有する(1)から(3)いずれか記載の培養方法。
(5) 前記調製手順において調製された細菌群から、桿菌をろ別するろ別手順を更に有する(4)記載の培養方法。
(6) 塩素化エチレンにより汚染された地下水及び/又は土壌の浄化剤であって、(1)から(5)いずれか記載の培養方法により得られる塩化ビニル分解細菌を含有する浄化剤。
(7) 塩素化エチレンにより汚染された地下水及び/又は土壌の浄化方法であって、(6)記載の浄化剤を前記地下水及び/又は土壌に投入する手順を有する浄化方法。
(8) 塩化ビニル分解細菌を含む細菌群を、ギ酸及び/又はその塩を主な炭素源とする培地条件のもと培養することにより、塩化ビニル分解能を有するデハロコッコイデス属細菌を集積する集積方法。
本発明によれば、塩化ビニル分解細菌を含む細菌群を、ギ酸及び/又はその塩を主な炭素源とする集積培地で培養する手順を設けたので、塩化ビニル分解能が劣るタイプの微生物が排除される。よって、優れた塩化ビニル分解能を有するデハロコッコイデス属細菌を選択的に集積できる。
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれに特に限定されるものではない。
<培養方法>
本発明の培養方法は、塩化ビニル分解細菌を含む細菌群を、ギ酸及び/又はその塩を主な炭素源とする集積培地で培養する集積手順を有することを特徴とする。
細菌群としては、既に調製されたものを使用してもよく、塩素化エチレンにより汚染された地下水及び/又は土壌を含む植種源から新たに調製してもよい。後者の場合、本発明の培養方法は、細菌群を調製する調製手順を集積手順の前に有し、この調製手順において調製された細菌群から桿菌をろ別するろ別手順を更に有してもよい。
以下、本発明の培養方法の手順を、時系列に沿って説明する。
[調製手順]
調製手順は、塩素化エチレンにより汚染された地下水及び/又は土壌を含有する植種源を、ギ酸及びその塩のいずれもが添加されていない条件のもと培養することで、細菌群を調製する手順である。
ここで、「塩素化エチレン」とは、エチレンの水素原子のうち少なくとも1個が塩素原子に置換されている化合物を意味し、テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン、シス−1,2−ジクロロエチレン、及び塩化ビニルを含む。
塩素化エチレンにより汚染された地下水や土壌は、バイオスティミュレーションによる汚染の浄化が進行し且つ浄化の過程においてデハロコッコイデス属細菌が顕著に増殖している汚染現場から採取されたものが好ましい。
デハロコッコイデス属細菌は、偏性嫌気性微生物であるため、酸素の存在下では速やかに死滅する。従って、地下水や土壌の採取、移送、培養容器への添加等の一連の操作において、嫌気性条件を保持することが好ましい。
まず、塩素化エチレンにより汚染された地下水及び/又は土壌を、培養容器に投入する。植種源として地下水を用いる場合、そのまま培養容器に投入してもよいが、水等で希釈した後に投入してもよい。また、植種源として土壌を用いる場合、そのまま培養容器に投入し液体培地中に懸濁してもよいが、適当な溶媒(例えば、水)に懸濁した後に培養容器に投入してもよい。
培養容器は、培地に塩素化エチレンが含有されていることを考慮して、ガラス製であることが好ましい。植種源が投入されると、更に、有機栄養源としてクエン酸、酵母エキス等が添加される。クエン酸の濃度は100〜1000mg/L、酵母エキスの濃度は10〜100mg/Lであることが好ましい。
培地の環境を嫌気性とするために、硫化ナトリウム及び塩化第一鉄が添加されることが好ましい。培地中の硫化ナトリウム及び塩化第一鉄の濃度は、それぞれ、好ましくは5mg/L〜500mg/Lである。なお、培養容器の内部環境の嫌気化は、脱気することによってもよく、窒素ガス、又は窒素ガス及び二酸化炭素の混合ガスで培養容器の内部を充填することによってもよい。
培養容器を蓋で密閉した後、培養を開始する。この蓋としては、ポリテトラフルオロエチレンで被覆されたブチルゴム栓が好ましい。
培養は、静置して行われ、その温度は15〜30℃であることが好ましく、25〜30℃であることがより好ましい。培養は、培地内に含まれるすべてのシス−1,2−ジクロロエチレンがエチレンに分解されるまで、即ち、シス−1,2−ジクロロエチレン及び塩化ビニルのいずれもが検出されなくなるまで、行われる。シス−1,2−ジクロロエチレン及び塩化ビニルの検出は、例えば、培養容器中の気相を少量採取し、ガスクロマトグラフィー分析により行われる。
培養終了後、培養液を、継代培養用の培地が収容された別の培養容器に移植する。この培地は、先程の添加成分と同様に、クエン酸、酵母エキス、硫化ナトリウム、及び塩化第一鉄を含有するとともに、所定の無機塩類を含有する。
代替的に、培地は、乳酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸等の有機酸(ギ酸を除く)、その塩(ギ酸の塩を除く)、メタノール等のアルコール、ショ糖等の糖類等を含んでいてもよい。また、培養容器には、シス−1,2−ジクロロエチレンが添加され、その濃度は、好ましくは1〜100mg/L(10μM〜1mM)、より好ましくは1〜10mg/L(10〜100μM)である。
培地には、嫌気度を調べるための指示薬であるレサズリンが添加されてもよい。培地のpHは、6.0〜8.5程度の中性域であることが好ましい。
なお、上述した培地成分の濃度は、培養時における濃度である。このため、植種源による希釈で濃度が低下することを考慮し、地下水を加える前の培地は、より高濃度であることが好ましい。
継代培養は、シス−1,2−ジクロロエチレン及び塩化ビニルのいずれもが検出されなくなるまで、先程の培養と同様の条件で行われる。シス−1,2−ジクロロエチレン及び塩化ビニルの検出は、例えば、培養容器中の気相を少量採取し、ガスクロマトグラフィー分析により行われる。このような継代培養を、継続的に行うことで、塩化ビニル分解細菌を含む細菌群が調製される。
[ろ別手順]
ろ別手順は、調製手順において調製された細菌群を含有する培養液から、桿菌をろ別する手順である。ろ過されたろ液は、桿菌が除去され塩化ビニル分解細菌を含む細菌群を含有するものであり、以下の集積手順において使用される。ろ別は、所定の孔径を有するフィルタを用いて、培養液を限外ろ過することで行われる。孔径は、特に限定されないが、例えば0.45μm程度であることが好ましい。
[集積手順]
集積手順は、塩化ビニル分解細菌を含む細菌群を、ギ酸及び/又はその塩を主な炭素源とする集積培地で培養する手順である。
ここで、「主な炭素源」とは、ギ酸及び/又はその塩以外の炭素源が、微生物の生育に影響を及ぼす程度には含有されていないことを意味する。即ち、微生物の生育に影響を及ぼさない限りにおいて、他の炭素成分が含有されていてもよい。ただし、炭素源としてギ酸及び/又はその塩のみからなることが、塩化ビニル分解能に劣るデハロコッコイデス属細菌をより効果的に除去できる点で、好ましい。
ギ酸、ギ酸の塩は、一方又は双方が添加されていてもよいが、集積培地のpHを中性域に保持するためには、ギ酸の塩が好ましい。ギ酸の塩は、デハロコッコイデス属細菌の生育を阻害するものでない限りにおいて特に限定されないが、例えば、ギ酸ナトリウムであってよい。
ギ酸及び/又はその塩の濃度は、通常、塩化ビニル分解能に劣るデハロコッコイデス属細菌の除去効果とコスト面とを考慮して、1mM以上5mM以下であることが好ましい。ただし、電子供与体としての水素ガスを培地の気相に添加すれば、ギ酸及び/又はその塩の濃度は、0.1mM程度であってもよい。
炭素源以外の成分については、前述した継代培養用の培地と同様であってよい。また、同様の条件で培養を行い、植え継ぎを所定回数行う。植え継ぎの回数は、特に限定されないが、少なすぎると、塩化ビニル分解能に劣るデハロコッコイデス属細菌が充分には除去できない場合があり、多すぎても、除去効果は飽和しており経済的でない。そこで、通常3〜10回程度であることが好ましい。
このようにして得られる培養液は、優れた塩化ビニル分解能を有するデハロコッコイデス属細菌が高度に優占化した状態にある。
<浄化剤>
本発明の浄化剤は、塩素化エチレンにより汚染された地下水及び/又は土壌の浄化剤であって、集積手順を経て得られる塩化ビニル分解細菌を含有することを特徴とする。浄化剤に含有される塩化ビニル分解細菌は、集積手順を経て得られる培養液の形態であってもよく、適宜加工された形態であってもよい。ただし、デハロコッコイデス属細菌の優占度を維持するため、嫌気的条件のもとで管理、使用されるべきである。
この浄化剤は、優れた塩化ビニル分解能を有するデハロコッコイデス属細菌が高度に優占化した状態にあるため、塩素化エチレンにより汚染された地下水及び/又は土壌を浄化する品質を高いレベルに保持できる。
<浄化方法>
本発明の浄化方法は、塩素化エチレンにより汚染された地下水及び/又は土壌の浄化方法であって、前述の浄化剤を地下水及び/又は土壌に投入する手順を有することを特徴とする。地下水及び/又は土壌は、原位置であってもよく、原位置から揚水され又は掘削されたものであってもよい。
地下水及び/又は土壌に投入される浄化剤の量、投入速度等は、汚染された地下水及び/又は土壌の汚染状況に応じて、適宜設定されてよい。
塩素化エチレンにより汚染された土壌及び地下水の浄化が、バイオスティミュレーションにより行われている現場から、地下水を採取した。この地下水100mLを容積155mLのガラス製バイアルに入れ、表1に示される培地成分を添加し、窒素/二酸化炭素混合(体積比8/2)ガスで気相を置換した。更に、液中濃度が約6mg/L程度となるようcDCEを添加した後、ポリテトラフルオロエチレンで被覆されたブチルゴム栓によりバイアルを密閉した。
続いて、このバイアルを30℃の恒温槽内に静置し、培養を開始した。バイアルの気相200μLを定期的に引き抜き、ガスクロマトグラフを用いてシスジクロロエチレン(cDCE)、塩化ビニル(VC)、エチレンの濃度を各々測定した。シスジクロロエチレン及び塩化ビニルが検出されなくなったことを確認した後、培地の水相を採取した。採取した水相1mLを、表2に示される組成の合成培地を収容する別のバイアルに植え継いだ。同様の手順で、合成培地への植え継ぎを計5回行う継代培養を行った。
得られた培養液の細菌相を、16SrDNAを対象とする末端制限酵素切断断片長多型(Terminal−Restriction Fragment Length Polymorphism:T−RFLP)解析、デハロコッコイデス属細菌および全細菌の16SrDNAを対象としたリアルタイムPCR解析、及び16SrDNAのクローン解析により評価した。この結果、全細菌に占めるデハロコッコイデス属細菌の割合は、1%程度と非常に少ないことが判明した。そこで、デハロコッコイデス属細菌を、より高度に集積するため、以下の手順で培養を引き続き行った。
まず、継代培養後の培養液を、孔径0.45μmのフィルタでろ過し、大部分の桿菌を除去した。ろ液には、塩化ビニル分解活性が保持されていることが確認された。また、ろ液の組成を分析したところ、クエン酸の分解産物として、酢酸とともに微量のギ酸の存在が確認された。そこで、酢酸及びギ酸を有機物として含有する合成培地を用いて、更に継代培養を行うこととした。培地成分は、クエン酸ナトリウム及び酵母エキスの代わりに、ギ酸ナトリウム及び酢酸ナトリウムを各々5mM(それぞれ295mg/L、225mg/Lに相当)の濃度となるように添加した点を除き、基本的には表2に示される通りとした。
また、培養液における炭素源として、ギ酸ナトリウム及び酢酸ナトリウムの代わりに、クエン酸及び酵母エキスを添加した培地、キシロースを添加した培地を、それぞれ比較例として使用した。
各培地を用いて、植え継ぎ5回の継代培養を行った後、16SrDNAを対象とする変性剤濃度勾配ゲル電気泳動(Denaturing Gradient Gel Electrophoresis:DGGE)による解析を行った。ゲル上に観察された主要なバンドを切り出し、塩基配列を決定した結果を併せて、図1に示す。図1におけるレーンAはクエン酸及び酵母エキスを添加した例、レーンBはキシロースを添加した例、レーンCはギ酸ナトリウム及び酢酸ナトリウムを添加した例をそれぞれ表す。
図1に示されるように、レーンAにおいては主要なバンドが多数観察されるが、レーンB及びレーンCにおいては主要なバンド数が低減していた。即ち、キシロース、又はギ酸ナトリウム及び酢酸ナトリウムを炭素源として使用することにより、少数種の微生物が選択的に集積されることが判明した。
塩基配列決定の結果、矢印にて示すバンドは、それぞれ、既に単離されているデハロコッコイデス属細菌である、Dehalococcoides sp. GT株(Appl. Environ. Microbiol., vol. 72, 1980−1987, 2006)、及びD. ethenogenes 195株(Science, vol. 276, 1568−71, 1997)に99%以上の相同性を有していた。そこで、これらのバンドに着目すると、レーンBでは195株の存在のみ観察されたが、レーンCではGT株及び195株のいずれもが観察された。
GT株は塩化ビニル分解能を有し、195株は塩化ビニル分解能を有しない(又は、極めて低い)ことが報告されている。これを踏まえると、キシロースを炭素源として使用した場合では、塩化ビニル分解能を有しない195株タイプのデハロコッコイデス属細菌が集積される一方、ギ酸ナトリウム及び酢酸ナトリウムを炭素源として使用することにより、塩化ビニル分解能に優れたデハロコッコイデス属細菌を含んで集積できることが判明した。
次に、GT株タイプのデハロコッコイデス属細菌をより選択的に集積することを目指し、更なる検討を行うこととした。
まず、前述のギ酸ナトリウム及び酢酸ナトリウムを使用する培養で得られた集積培養体を植種源とし、炭素源として、酢酸ナトリウムのみ(5mM)、ギ酸ナトリウムのみ(5mM)、ギ酸ナトリウム及び酢酸ナトリウムの両方(各5mM)を含有する3種類の合成培地で培養を行った。植え継ぎ5回後に得られた培養液についてDGGE解析を行った。ゲル上に観察された主要なバンドを切り出し、塩基配列を決定した結果を併せて、図2に示す。図2におけるレーンAは酢酸のみを添加した例、レーンBはギ酸のみを添加した例、レーンCはギ酸及び酢酸を添加した例をそれぞれ表す。
図2に示されるように、レーンA及びレーンCにおいては、GT株のみならず195株のバンドもほぼ同様の濃さで観察される一方、レーンBにおいては、GT株のバンドが格段に濃くなるとともに195株のバンドが極めて薄くなっていた。
更に、ギ酸ナトリウムを使用する培養で得られた培養液からDNAを抽出し、16SrDNAを対象とする定量PCR解析を行った。すると、全細菌由来の16SrDNAに対するデハロコッコイデス属細菌の16SrDNAの割合は約24%であり、クエン酸及び酵母エキスによる培養で得られた割合(前述したように約1%)に比べ、格段に高い値であることが確認された。
以上の結果から、ギ酸ナトリウムを主な炭素源とする集積培地で培養することにより、優れた塩化ビニル分解能を有するGT株タイプのデハロコッコイデス属細菌を、選択的に集積できることが判明した。
デハロコッコイデス属細菌について、病原性、ガン原性、及び毒素生産性等が報告された例はない。このため、優れた塩化ビニル分解能を有するデハロコッコイデス属細菌が選択的に集積された浄化剤は、バイオオーグメンテーションにおいて安全に利用できることが期待される。
本発明の一試験例の結果を示す図である。 本発明の一実施例の結果を示す図である。

Claims (8)

  1. 塩化ビニル分解細菌の培養方法であって、
    塩化ビニル分解細菌を含む細菌群を、ギ酸及び/又はその塩を主な炭素源とする集積培地で培養する集積手順を有する培養方法。
  2. 前記集積培地は、ギ酸及び/又はその塩を1mM以上5mM以下含有する請求項1記載の培養方法。
  3. 前記集積培地は、水素ガスが気相に添加された液体培地である請求項1又は2記載の培養方法。
  4. 塩素化エチレンにより汚染された地下水及び/又は土壌を含有する植種源を、ギ酸及びその塩のいずれもが添加されていない条件のもと培養することで、前記細菌群を調製する調製手順を、前記集積手順の前に更に有する請求項1から3いずれか記載の培養方法。
  5. 前記調製手順において調製された細菌群から、桿菌をろ別するろ別手順を更に有する請求項4記載の培養方法。
  6. 塩素化エチレンにより汚染された地下水及び/又は土壌の浄化剤であって、
    請求項1から5いずれか記載の培養方法により得られる塩化ビニル分解細菌を含有する浄化剤。
  7. 塩素化エチレンにより汚染された地下水及び/又は土壌の浄化方法であって、
    請求項6記載の浄化剤を前記地下水及び/又は土壌に投入する手順を有する浄化方法。
  8. 塩化ビニル分解細菌を含む細菌群を、ギ酸及び/又はその塩を主な炭素源とする培地条件のもと培養することにより、塩化ビニル分解能を有するデハロコッコイデス属細菌を集積する集積方法。
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